説明

尿汚水浄化装置およびその浄化方法

【課題】 尿汚水をシャワー状に散水して空気に触れつつ尿汚水浄化微生物と接触させることにより、尿汚水の有機物等を分解除去して、効率よく浄化させることができる尿汚水浄化装置およびその浄化方法を提供する。
【解決手段】 尿汚水が流入する流入口2およびこの尿汚水の処理水を流出させる流出口3が設けられ、上部に開口1aを有した尿汚水処理槽1と、この尿汚水処理槽1の底部側に配置された散気管9cに空気を送気する送気手段9aと、前記開口1a側に複数の散水口が向けられて前記尿汚水処理槽1の上方に配設された散水部7に前記尿汚水処理槽1内の尿汚水を給水する給水ポンプ5を備えた散水手段4と、尿汚水浄化微生物が付着された多孔材を載置する網体および散水孔が複数形成された散水板を離間させて筒体内に保持した尿汚水浄化手段10とを備え、この尿汚水浄化手段10が前記開口1aの上方において前記各散水口の直下にそれぞれ配置されてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は畜産動物またはその飼育場から排出される尿を含む尿汚水を浄化する尿汚水浄化装置およびその浄化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
牛、馬、豚、鶏、羊等の畜産動物を飼育する飼育場からは、畜産動物の糞尿混合物、飼育場等の洗浄水およびこれらの混合水が尿汚水として排水される。
この尿汚水は、汚れの元である有機物を多く含んでいるので、浄化施設で生物化学的酸素要求量(BOD)を1,200mg/L程度にまで希釈して浄化し、河川に放流するのが一般的であった。
しかしながら、このような希釈法によると、浄化施設が必然的に大型化するので、畜産農家に設置場所の確保と高額の負担を強いるという難点があった。
【0003】
そこで、菌群等を小型の反応装置で反応させて汚水等を処理することを目的とした菌群等の反応方法が提案されている(例えば、特許文献1)。
この反応方法に用いられる反応装置は、液体(汚水)の移動が可能な溢流管を設けたボート形の容器と、菌群等を担持した多孔質体とを組み合わせて多段にし、容器間に空間部分を生じさせた状態で、密閉された反応槽内に収納した構成となっている。
【0004】
なお、多孔質体は、セラミック、スポンジ、不織布等からなり、糸状菌、酵母、細菌といったが菌群等が担持されている。
また、空間部分は、多孔質体の間に形成された気体の移動できる流通孔を介してつながっており、所望成分の気体で満たしておいて、液体を多孔質体に供給し反応させるようになっている。
【0005】
これにより、汚水を上段の容器に供給すると、重力により自然に上段の多孔質体から下段の多孔質体へと移動するので、圧力をかける必要なく反応し、菌群等の反応装置を小型化することができる。
また、所望の成分の気体は、多孔質体内を通って移動することがなく、多孔質体と接触するのがその表面のみとなるので、多孔質体に担持されている菌群等が剥離することなく反応するというものである。
【特許文献1】特開平4−267997公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記特許文献1の菌群等の反応方法は、その反応装置の容器間に空間部分を生じさせているが、各容器内に菌群等を担持した多孔質体を収納している。
よって、汚水が容器内を移動すると、多孔質体が水没状態となり、汚水中での反応となることから、酸素の接触が殆どなく、有機物等の分解が活性化されず、尿汚水の汚れ浄化や脱臭には一定の限界があった。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたもので、尿汚水をシャワー状に散水して空気に触れつつ尿汚水浄化微生物と接触させることにより、尿汚水の有機物等を分解除去して、効率よく浄化させることができる尿汚水浄化装置およびその浄化方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明に係る請求項1の尿汚水浄化装置は、畜産動物またはその飼育場から排出される尿を含む尿汚水が流入する流入口およびこの尿汚水の処理水を流出させる流出口が設けられ、上部に開口を有した尿汚水処理槽と、この尿汚水処理槽の底部側に配置された散気管に空気を送気する送気手段と、前記開口側に複数の散水口が向けられて前記尿汚水処理槽の上方に配設された散水部に前記尿汚水処理槽内の尿汚水を給水する給水ポンプを備えた散水手段と、尿汚水浄化微生物が付着された多孔材を載置する網体および散水孔が複数形成された散水板を離間させて筒体内に保持した尿汚水浄化手段とを備え、この尿汚水浄化手段が前記開口の上方において前記各散水口の直下にそれぞれ配置されてなることを特徴としている。
【0009】
また、請求項2の尿汚水浄化装置は、前記筒体が円形管や略方形管により形成されてなることを特徴としている。
【0010】
また、請求項3の尿汚水浄化装置は、前記筒体内に前記網体と散水板とが1対保持され、この筒体が上下方向に複数個連結されて前記尿汚水浄化手段が構成されてなることを特徴としている。
【0011】
また、請求項4の尿汚水浄化装置は、前記尿汚水浄化手段が、前記散水口の近傍に吊下げられてなることを特徴としている。
【0012】
また、請求項5の尿汚水浄化装置は、前記多孔材が、ガラス材を焼成して発泡させたガラス発泡材であることを特徴としている。
【0013】
また、請求項6の尿汚水浄化方法は、請求項1ないし5の何れかに記載の尿汚水浄化装置を用いる尿汚水浄化方法であって、(1)畜産動物またはその飼育場から排出される尿を含む尿汚水が、流入口を介して尿汚水処理槽に流入し所用量が貯留されると、散水手段の給水ポンプが前記尿汚水処理槽の尿汚水を散水部に給水し、この散水部の散水口から尿汚水が散水されると、この散水口の直下に配置された尿汚水浄化手段に落下し、この汚水浄化手段の筒体内に保持された散水板と尿汚水浄化微生物が付着された多孔材を通過して前記尿汚水処理槽に戻された後、前記給水ポンプにより再び前記散水部側に給水する循環処理、(2)この循環処理時に、送気手段から前記尿汚水処理槽の底部側に配置された散気管に空気が送気されて尿汚水を曝気する曝気処理、(3)前記循環処理時に、前記尿汚水が前記尿汚水浄化手段を通過するとき、前記散水板の散水孔によりシャワー状に分散されて空気に触れつつ多孔材の尿汚水浄化微生物に接し、尿汚水に含まれる有機物等が微生物により分解されて浄化する浄化処理を含み、この処理水が前記尿汚水処理槽の流出口から浄化水として排出されることを特徴としている。
【発明の効果】
【0014】
以上説明したように、本発明による請求項1の尿汚水浄化装置は、尿汚水が尿汚水処理槽に所用量貯留されると、散水手段の給水ポンプにより散水部に給水し、この散水部の散水口の直下に配置された尿汚水浄化手段に落下し、この汚水浄化手段に保持された多孔材を通過して前記尿汚水処理槽に戻された後、前記給水ポンプにより再び前記散水部側に給水する循環処理を行うので、装置全体の構成が簡単であり、尿汚水浄化装置を小型に設計製作できる。そして、前記尿汚水の循環処理時に、送気手段から前記尿汚水処理槽の底部側に配置された散気管に空気が送気されて尿汚水の曝気を促進するので、効率よく曝気処理を行うことができる。
さらに、前記循環処理時に、前記尿汚水が前記尿汚水浄化手段を通過するとき、前記散水板の散水孔によりシャワー状に分散されて多孔材の尿汚水浄化微生物に対する酸素の供給量が増加して活性化されるので、尿汚水に含まれる有機物等が効果的に分解される。よって、従来のように、尿汚水中に尿汚水浄化微生物を水没させて有機物等を分解する場合に比して浄化作用が格段に向上する。これにより、希釈を行う必要がなくなるので、尿汚水浄化装置が大型化することなく、設置コストを大幅に低減できる、といった効果がある。
【0015】
また、請求項2の尿汚水浄化装置は、前記筒体が円形管や略方形管により形成するので、入手し易い材料を用いて前記尿汚水浄化手段を製作できる。
【0016】
また、請求項3の尿汚水浄化装置は、前記筒体内に前記網体と散水板とが1対保持され、この筒体が上下方向に複数個連結されて前記尿汚水浄化手段が構成されており、前記筒体間を尿汚水が通過するとき、散水板の散水孔によりシャワー状に分散され、かつ空間の空気に触れつつ多孔材の尿汚水浄化微生物に接するので、尿汚水に含まれる有機物等を微生物により効率よく分解することができる。
【0017】
また、請求項4の尿汚水浄化装置は、前記尿汚水浄化手段が、前記散水口の近傍に吊下げられているので、特別な設備を備える必要なく、前記尿汚水浄化手段を散水口の直下に配置させることができる。
【0018】
また、請求項5の尿汚水浄化装置は、前記多孔材が、ガラス材を焼成して発泡させたガラス発泡材であることから、安価なガラス材を使用したり、廃ガラスを用いることにより、製作が容易で廉価な多孔材を提供することができる。
【0019】
また、請求項6の尿汚水浄化方法は、装置全体の構成が簡単であり、尿汚水浄化装置を小型に設計製作できる。
そして、前記尿汚水循環処理時に尿汚水を曝気するので、効率よく曝気処理を行うことができる。
さらに、前記循環処理時に前記尿汚水が前記尿汚水浄化手段を通過するとき、シャワー状に分散されて多孔材の尿汚水浄化微生物に対する酸素の供給量が増加して活性化されるので、尿汚水に含まれる有機物等が効果的に分解される。よって、従来のように、尿汚水中に尿汚水浄化微生物を水没させて有機物等を分解する場合に比して浄化作用が格段に向上する、といった効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明に係る尿汚水浄化装置およびその浄化方法の実施形態について、図面を参照しながら詳述する。
図1は本発明の尿汚水浄化装置の概要構成を示す断面図、図2は尿汚水浄化部の実施例1に係る側面図、図3は同尿汚水浄化部の縦断面図である。
【0021】
本実施形態の尿汚水浄化装置は、主要部として尿汚水処理槽1、散水装置4、尿汚水浄化部10および操作盤等を備えており、尿汚水を処理してから曝気槽18や沈殿槽20を通し、浄化水として河川に放流させる構成となっている。
【0022】
ここで、尿汚水とは、牛、馬、豚、鶏、羊等の畜産動物を飼育する飼育場から排水される汚水であり、畜産動物の糞尿混合物、飼育場等の洗浄水並びにこれらの混合水をも含む。
【0023】
尿汚水処理槽1は、図1に示すように、円筒状で上部に開口1aを有し、下部の側周面に給水管4aが接続され、この給水管4aの反対側の側周面には、送気管9bが接続されている。また、上部の側周面にバルブ2aを備えた送水管2が接続され、この送水管2の反対側の側周面には、排水管3が接続されている。
前記送気管9bの一端には、排気孔を多数設けた送気ヘッド9cが接続される一方、他端はエアコンプレッサ9aに接続されている。
【0024】
このエアコンプレッサ9aは、後述の給水ポンプ5とともに、不図示の制御部により運転が制御され、起動時に圧縮空気を送気ヘッド9cに送気する。
送気ヘッド9cは、尿汚水処理槽1の底部側に配置されており、エアコンプレッサ9aからの圧縮空気を排気孔から排気して、尿汚水処理槽1に貯留された尿汚水を曝気する。これにより、尿汚水処理槽1内で最初の尿汚水浄化がなされる。
【0025】
送水管2は、畜産動物の飼育場から排出される尿を含む尿汚水を尿汚水処理槽1に導入する。
排水管3は、他端が曝気槽18の側周面に接続されており、尿汚水処理槽1からの処理水を曝気槽18に送水する。この曝気槽18は、下部の側周面に前記送気管9bが接続されている。
【0026】
この送気管9bの一端は、曝気槽18の底部側に配置された前記送気ヘッド9dに接続され、他端は前記エアコンプレッサ9aに接続されている。これにより、エアコンプレッサ9aからの空気を排気孔から排気して、曝気槽18に貯留された処理水を曝気する。この曝気により、尿汚水処理槽1からの処理水をさらに浄化することができる。
【0027】
また、曝気槽18は、上部の側周面に排水管19が接続されている。この排水管19は、他端が沈殿槽20の側周面に接続されており、曝気槽18からの処理水を沈殿槽20に送水する。
この沈殿槽20は、排水管19の反対側の側周面に排水管21が接続されている。この排水管21は、例えば、河川に延出しており、沈殿槽20で不純物が沈殿除去された処理水を浄化水として、河川に放流するようになっている。
【0028】
散水装置4は、散水管7、支柱8および給水ポンプ5等を備えて構成されている。散水管7は、強度に優れたステンレス又はビニール製のパイプであって、その側周面に複数の散水口7aを形成してある(図4参照)。
支柱8は、尿汚水処理槽1の開口1aの周縁に立設され、尿汚水処理槽1の上方において各散水管7を支持している。この散水管7は、後述の尿汚水浄化部10に合わせた本数が備えられており、各基端を配水部6に接続して開口1全体に拡がるように配管されている。
【0029】
給水ポンプ5は、吸入側が尿汚水処理槽1側の給水管4aに接続され、吐出側が給水管4bを介して前記配水部6に接続されている。なお、給水管4bには、流量調整用のバルブ4cが設けられている。
この給水ポンプ5は、制御部により運転が制御され、起動時に尿汚水処理槽1の貯留尿汚水を汲み出して、配水部6に送水し各散水管7に給水する。これにより、尿汚水が各散水管7の散水口7aから、各尿汚水浄化部10に向けて落下する。
【0030】
尿汚水浄化部10は、図2〜図4に示すように、円筒体11、網体15、散水板16および多孔材(ガラス発泡材)17等を備えて構成されている。
円筒体11は、対向する側周面の縦方向に略円形の挿入口11aが各3個形成されており、この挿入口11aを介して、多孔材17の収納や交換を可能としている。
【0031】
また、この円筒体11は、全体に多数の小孔11dが開けられている暗渠排水管などが好適に使用される。長さは、この使用例では、約30cmである。これにより、尿汚水浄化部10の通気性が高められて、円筒体11内を尿汚水が通過するときに大量の酸素が取り入れられ、後述の尿汚水浄化微生物の活性化を促進することができる。
【0032】
また、この円筒体11は、上端と下端とに連結孔11bがそれぞれ4個形成されている。この連結孔11bに紐部材12が挿通されて、円筒体11が連結される。本例では、図1に示すように、3個の円筒体11を直列に連結するようになっている。
そして、連結孔11bのうち、上段の連結孔11bに紐部材13が挿通されて、図1、図4に示す如く前記散水管7に吊下げられる。この際は、散水管7の各散水口7aの位置に吊下げることにより、尿汚水浄化部10を散水口7aの直下に配置させ、散水口7aからの散水を上段の尿汚水浄化部10側に落下可能とする。
【0033】
従って、複数個の尿汚水浄化部10が、尿汚水処理槽1の開口1aの上方において、貯留尿汚水との間に間隙を有して配置される。
これにより、各尿汚水浄化部10は、円筒体11の内部、円筒体11相互、貯留尿汚水との間に空気層がそれぞれ形成される。
なお、この尿汚水浄化部10は、散水管7に吊下げる以外に、尿汚水処理槽1の開口1aの上部に網状の架台を設け、この架台に載置して各散水口の直下に配置する構成としてもよい。
【0034】
また、前記円筒体11は、内周面の上下方向における4箇所に保持部14を突設してあり、網体15および散水板16を保持している。
網体15は、図5に示す如く円形金網であって、上方から1番目、3番目、4番目の保持部14に保持される。そして、各網体15にガラス発泡材17が載置されるようになっている。
尚、この保持部14に代えて、各網体15に引っ掛けを設けて、この引っ掛けを挿入口11aに引っ掛けるようにしても良い。
【0035】
ガラス発泡材17は、ガラス材(例えば、廃ガラス)を900℃〜1000℃で焼成して発泡させたガラス発泡材であり、表面に無数の窪みを生じている。そして、この窪みに尿汚水浄化微生物を膜状に付着させている。
【0036】
この尿汚水浄化微生物は、尿汚水中の有機物を酸化分解する好気性の硝化菌やバクテリア等が用いられる。
この微生物は、空気中に曝されることによって酸素との接触量が増え、有機物等の分解が活性化され、尿汚水の汚れ浄化や脱臭が促進される特徴を有している。
【0037】
散水板16は、図6に示すように、円形の平板であり、多数の散水孔16aが形成されている。この散水板16は、上方から2番目の保持部14に保持され、前記散水口7aから第1段目の金網15上のガラス発泡材17と接触しながら通過して落下する散水を均等に分散し、シャワー状にして下段のガラス発泡材17に滴下させる。
【0038】
これにより、ガラス発泡材17の尿汚水浄化微生物に対する酸素の供給量が増加して活性化されるので、尿汚水に含まれる有機物等を効果的に分解可能となる。
以上のように構成された尿汚水浄化部10は、小型コンパクトであるから、飼育場の規模および尿汚水処理槽1の容量に合わせて設置数を加減することが可能であり、尿汚水浄化装置全体を小型に設計製作することができる。
【0039】
次に、上記尿汚水浄化装置による尿汚水浄化方法について、図を参照しつつ説明する。
但し、図1に示す尿汚水処理槽1に、飼育場からの尿汚水が送給されて、開口1a近傍のレベルまで貯留されているものとする。
【0040】
オペレータが、図示しない操作盤の操作スイッチをオン操作すると、操作盤に設けられた制御部がエアコンプレッサ9aを起動させる。
これに伴い、尿汚水処理槽1内の送気ヘッド9cに圧縮空気が送られて、尿汚水の曝気がなされる。また、圧縮空気は曝気槽18の送気ヘッド9dにも送られて、処理水の曝気がなされる。
【0041】
続いて、制御部が給水ポンプ5を起動させると、尿汚水処理槽1の尿汚水を散水管7に給水し、この散水管7の散水口7aから尿汚水が散水される。
すると、尿汚水浄化部10に落下し散水板16とガラス発泡材17を通過して尿汚水処理槽1に戻される。
また、尿汚水処理槽1の尿汚水は、給水ポンプ5により再び散水管7に給水されて、図4に示す如く散水口7aから尿汚水浄化部10に散水されることにより、尿汚水が循環する。これにより、尿汚水が繰り返し浄化処理されるので、浄化が促進される。併せて、送気ヘッド9dによる曝気も維持されて浄化が一層促進される。
【0042】
また、尿汚水が図2および図3に示す尿汚水浄化部10を通過するとき、散水板16の散水孔16aによりシャワー状に分散される。また、円筒体11の多数の小孔11dから大量の酸素が取り入れられる。
これにより、ガラス発泡材17の尿汚水浄化微生物に対する酸素の供給量が増加して活性化されるので、尿汚水に含まれる有機物等が効果的に分解され、浄化される。
【0043】
この処理水は、尿汚水処理槽10から曝気槽18に送られて曝気された後、沈殿槽20に送られて不純物が沈殿除去される。そして、この沈殿槽20の浄化水が、河川に放流されるので、河川環境が保護される。
【0044】
次に、前記尿汚水浄化装置による尿汚水の浄化結果を表1に基づいて説明する。

(表1)尿汚水浄化装置による尿汚水の浄化結果

尚、発泡材通過後とは、尿汚水処理層1の出口の各濃度をいう。最終処理水とは、沈殿槽20の出口の濃度をいう。
【0045】
原尿汚水とガラス発泡材との接触時間は、1時間当たり60L(60L/1h)である。
排水基準は、水質汚濁防止法第三条第一項、排水基準を定める省令第一条別表第二の規定である。BODは生物化学的酸素要求量、CODは化学的酸素要求量である。
【0046】
表1に示すように、この尿汚水浄化装置による最終処理水を排水基準と比較すると、BODは55で基準の160以下、CODは81で基準の160以下、全窒素は42で基準の120以下、全リンは14で基準の16以下となり、全ての項目が排水基準を満たすことが明らかとなった。
【0047】
図7は、尿汚水浄化部の実施例2に係る斜視図である。
この尿汚水浄化部22は、前記円筒体11を方形筒体23に形成したもので、基本的構成は前記実施例1の尿汚水浄化部10と略同一である。
即ち、方形筒体23は、前記円筒体11と同じく全体に多数の小孔又は隙間或いは通気空間を形成してあり、通気性を高めている。また、上端に連結孔23aが4個形成されており、この連結孔23aに前記紐部材12が挿通されて、3個の方形筒体23が連結される。
そして、連結孔23aのうち、最上段となる方形筒体23の連結孔23aに紐部材13が挿通されて、前記散水管7に吊下げられる。
【0048】
また、この方形筒体23は、前記円筒体11と同じく内周面の4箇所に不図示の保持部を突設してあり、網体と散水板とを保持している。
この網体および散水板は、方形筒体23の内径に合わせて略方形に形成してあり、円筒体11と同様に、上方から2番目の保持部に散水板が保持され、上方から1番目、3番目、4番目の保持部に網体が保持される。そして、各網体に前記ガラス発泡材17が載置される。
【0049】
これにより、前記円筒体11を備えた尿汚水浄化部10と同じく、散水口7aから落下した尿汚水が、酸素の供給量の増加により活性化された尿汚水浄化微生物に接し、尿汚水に含まれる有機物等が効果的に分解され、浄化される。
【0050】
図8は、尿汚水浄化部の実施例3に係る斜視図である。
この尿汚水浄化部24は、前記実施例1の円筒体11を短くして円筒枠体25を形成し、1対の網体および散水板と、ガラス発泡材17を保持したものである。この円筒枠体25は、前記網体15および散水板16を1組収納可能な長さにしてある。
【0051】
各円筒枠体25は、上端に連結孔25aが4個形成されており、この連結孔25aに紐部材26が挿通されて、4個の円筒枠体25が連結される。
そして、連結孔25aのうち、最上段となる円筒枠体25の連結孔25aに紐部材13が挿通されて、前記散水管7に吊下げられる。
また、この円筒枠体25は、図示省略しているが、内周面の2箇所に保持部を突設してあり、前記網体15および散水板16を保持している。
【0052】
これにより、円筒枠体25相互の間、各円筒枠体25内における散水板16とガラス発泡材17との間に空気層が生じる。
よって、前記実施例1および2と同様、散水口7aから落下した尿汚水が、酸素の供給量の増加により活性化された尿汚水浄化微生物に接し、尿汚水に含まれる有機物等が効果的に分解され、浄化される。
【0053】
図9は、尿汚水浄化部の実施例4に係る斜視図である。
この尿汚水浄化部27は、前記実施例2の方形筒体22を短くして方形枠体28を形成し、前記実施例3の円筒枠体25と同じく1対の網体および散水板と、ガラス発泡材17を保持したものである。
【0054】
即ち、方形枠体28は、網体および散水板を1組収納可能な長さにしてある。各方形枠体28は、上端に連結孔28aが4個形成されており、この連結孔28aに紐部材26が挿通されて、4個の方形枠体27が連結される。
そして、連結孔28aのうち、最上段となる方形枠体27の連結孔28aに紐部材13が挿通されて、前記散水管7に吊下げられる。
これにより、前記実施例3の円筒枠体25を備えた尿汚水浄化部24等と同様の作用効果を有する。
【0055】
図10は、尿汚水浄化部の実施例5に係る斜視図である。
この尿汚水浄化部29は、前記実施例4の方形枠体28を逆台形状の略方形にして略方形枠体30を形成し、前記実施例3の円筒枠体25や実施例4の方形枠体28と同じく1対の網体および散水板と、ガラス発泡材17とを保持したものである。
【0056】
この略方形枠体30も、上端に連結孔30aが4個形成されており、この連結孔30aに紐部材26が挿通されて、5個の略方形枠体30が連結される。
そして、連結孔30aのうち、最上段となる略方形枠体30の連結孔30aに紐部材13が挿通されて、前記散水管7に吊下げられる。
これにより、前記実施例3の円筒枠体25や実施例4の方形枠体28を備えた尿汚水浄化部24,27等と同様の作用効果を有する。
【0057】
なお、上記尿汚水浄化装置は、尿汚水処理槽1にて尿汚水を処理してから曝気槽18や沈殿槽20を通し、浄化水として河川に放流させるようにしたが、既設の曝気槽に前記散水装置4や尿汚水浄化部10等を配設し、この曝気槽を尿汚水処理槽に兼用して尿汚水を浄化する構成としてもよい。
また、前記沈殿槽20に尿汚水浄化部10を多数個配設し、曝気槽18からの処理水をさらに浄化したうえ、不純物を沈殿除去する構成としてもよい。
また、本実施の形態で示した尿汚水浄化装置は、本発明に係る装置の一態様に過ぎず、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で適宜設計変更できることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の一実施形態である尿汚水浄化装置を一部断面で示す害要綱製図である
【図2】実施例1に係る尿汚水浄化部を示す側面図である。
【図3】同尿汚水浄化部の縦断面図である。
【図4】同尿汚水浄化部の吊下げ配置を示す斜視図である。
【図5】網体を示す斜視図である。
【図6】散水板を示す斜視図である。
【図7】実施例2に係る尿汚水浄化部を示す斜視図である。
【図8】実施例3に係る尿汚水浄化部を示す斜視図である。
【図9】実施例4に係る尿汚水浄化部を示す斜視図である。
【図10】実施例5に係る尿汚水浄化部を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0059】
1 尿汚水処理槽
1a 開口
2 流入口
3 流出口
4 散水手段
5 給水ポンプ
7 散水部
9 送気管
9c 散気管
10 尿汚水浄化手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
畜産動物またはその飼育場から排出される尿を含む尿汚水が流入する流入口およびこの尿汚水の処理水を流出させる流出口が設けられ、上部に開口を有した尿汚水処理槽と、
この尿汚水処理槽の底部側に配置された散気管に空気を送気する送気手段と、
前記開口側に複数の散水口が向けられて前記尿汚水処理槽の上方に配設された散水部に前記尿汚水処理槽内の尿汚水を給水する給水ポンプを備えた散水手段と、
尿汚水浄化微生物が付着された多孔材を載置する網体および散水孔が複数形成された散水板を離間させて筒体内に保持した尿汚水浄化手段とを備え、
この尿汚水浄化手段が前記開口の上方において前記各散水口の直下にそれぞれ配置されてなることを特徴とする尿汚水浄化装置。
【請求項2】
前記筒体が円形管や略方形管により形成されてなることを特徴とする請求項1に記載の尿汚水浄化装置。
【請求項3】
前記筒体内に前記網体と散水板とが1対保持され、この筒体が上下方向に複数個連結されて前記尿汚水浄化手段が構成されてなることを特徴とする請求項1または2に記載の尿汚水浄化装置。
【請求項4】
前記尿汚水浄化手段が、前記散水口の近傍に吊下げられてなることを特徴とする請求項1または3の何れかに記載の尿汚水浄化装置。
【請求項5】
前記多孔材が、ガラス材を焼成して発泡させたガラス発泡材であることを特徴とする請求項1に記載の尿汚水浄化装置。
【請求項6】
請求項1ないし5の何れかに記載の尿汚水浄化装置を用いる尿汚水浄化方法であって、
(1)畜産動物またはその飼育場から排出される尿を含む尿汚水が、流入口を介して尿汚水処理槽に流入し所用量が貯留されると、散水手段の給水ポンプが前記尿汚水処理槽の尿汚水を散水部に給水し、この散水部の散水口から尿汚水が散水されると、この散水口の直下に配置された尿汚水浄化手段に落下し、この汚水浄化手段の筒体内に保持された散水板と尿汚水浄化微生物が付着された多孔材を通過して前記尿汚水処理槽に戻された後、前記給水ポンプにより再び前記散水部側に給水する循環処理、
(2)この循環処理時に、送気手段から前記尿汚水処理槽の底部側に配置された散気管に空気が送気されて尿汚水を曝気する曝気処理、
(3)前記循環処理時に、前記尿汚水が前記尿汚水浄化手段を通過するとき、前記散水板の散水孔によりシャワー状に分散されて空気に触れつつ多孔材の尿汚水浄化微生物に接し、尿汚水に含まれる有機物等が微生物により分解されて浄化する浄化処理を含み、
この処理水が前記尿汚水処理槽の流出口から浄化水として排出されることを特徴とする尿汚水浄化方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−142708(P2010−142708A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−320891(P2008−320891)
【出願日】平成20年12月17日(2008.12.17)
【出願人】(592072791)鳥取県 (19)
【Fターム(参考)】