説明

屋内環境制御システム

【課題】 ビルなどの建物内の空調や照明などの屋内環境を建物内の人の配置に応じて効率的にかつ人間工学的に制御できる屋内環境制御システムを提供する。
【解決手段】 各個人のID情報がそれぞれ格納された複数のRFIDタグt1〜t4と、屋内の或る領域内において当該領域を構成する複数のエリア(1)〜(6)にそれぞれ対応して設けられ、それぞれの検知範囲D1〜D6が各エリアをそれぞれカバーするとともに、RFIDタグt1〜t4からの信号を検知してID情報を読み取る複数のRFIDタグリーダR1〜R6と、各RFIDタグリーダR1〜R6の読取結果に基づいて、エリアごとの屋内環境を制御するコントローラMCおよびC1〜C4とから屋内環境制御システムを構築する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビルなどの建物内において空調や照明などの屋内環境を自動的に制御するための屋内環境制御システムに関し、詳細には、IDタグを用いて建物内の人の配置を検出することにより、建物内の屋内環境を効率的にかつ人間工学的に管理して省エネを実現するためのシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
ビル内の空調や照明を管理するシステムとして、たとえば特開平2−85986号公報に示すビル管理システムが提案されている。このシステムは、ビル内の職場に勤務する者が出退勤時にタイムレコーダやIDカードリーダに打刻した際に、制御部が、当該打刻情報を予め記憶された情報と照合して、その照合結果に基づいてビル内の空調および照明を制御するというものである。
【特許文献1】特開平2−85986号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、前記従来のシステムでは、職場全体の空調および照明を管理するだけであって、職場内の或る限られたエリアにしか人がいない場合でも、職場全体の空調や照明がオンされることになるため、省エネ効果に乏しい。また、エリアごとに個別に空調機器や照明器具を配置するようにしても、各機器や器具のスイッチを手動で操作するのは非常に面倒である。
【0004】
本発明は、このような従来の実情に鑑みてなされたものであり、本発明が解決しようとする課題は、建物内の空調や照明などの屋内環境を建物内の人の配置に応じて効率的にかつ人間工学的に制御することができる屋内環境制御システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1の発明に係る屋内環境制御システムは、個人のID情報が格納されたIDタグと、屋内の或る領域内において当該領域を構成する少なくとも一つのエリアに対応して設けられ、その検知範囲が前記エリアをカバーするとともに、IDタグからの信号を検知してID情報を読み取るIDタグ読取手段と、IDタグ読取手段の読取結果に基づいて、エリアの屋内環境を制御する制御手段とを備えている。
【0006】
請求項1の発明によれば、人がIDタグを携帯したまま、屋内の領域内の或るエリアに入ると、当該エリアに設けられたIDタグ読取手段がIDタグからの信号を検知してID情報を読み取る。これにより、屋内の領域内において、どのエリアに人が居るか、また何人の人が居るか、さらには誰がどのエリアに居るかなどの情報(プレゼンス情報)が制御手段に入力される。制御手段は、IDタグ読取手段の読取結果に基づいて、エリアの屋内環境を制御する。すなわち、制御手段は、たとえば、人が居るエリアについてのみ空調や照明をオンにするとともに、人数に応じてそのエリアの温度や湿度、照度などを調整する。このようにして、建物内の屋内環境を効率的にかつ人間工学的に制御できるようになる。
【0007】
請求項2の発明においては、ID情報が、個人の識別番号、性別、年齢または特性のいずれか一つまたは二つ以上の情報を有している。
【0008】
この場合には、制御手段が、IDタグ読取手段により読み取られた個人の識別番号、性別、年齢または特性に応じて、人が居るエリアの温度や湿度、照度などを調整する。
【0009】
ID情報が個人の性別である場合には、たとえばトイレまたは更衣室の入口付近に設けられたIDタグ読取手段が、接近する人の性別を読み取ることにより、その性別に応じて紳士用または婦人用のいずれか一方の部屋の照明および空調がオンにされる。また、ID情報が個人の年齢である場合には、IDタグ読取手段により読み取られた年齢が、予め設定された一定年齢以上のときに、たとえば空調が効きすぎないように空調が弱めに調整される。さらに、ID情報が個人の特性(たとえば暑がりか寒がりかなど)である場合には、IDタグ読取手段により読み取られた個人の特性に応じて、空調が調整される。
【0010】
IDタグは、請求項3の発明に記載されているように、RFID(radio frequency identification)タグが好ましく、より好ましくは、請求項4の発明に記載されているように、RFIDタグの中でもアクティブタグがよい。
【0011】
このアクティブRFIDタグの場合には、電池を内蔵していて自ら電波を発するので、受信距離を長くとることができる。また、電池を内蔵していることでセンサを取り付けることが可能であり、これにより、アクティブRFIDタグが置かれている環境の変化に応じて、屋内環境をリアルタイムで細やかに調整できるようになる。
【0012】
請求項5の発明においては、IDタグが、温度センサ、湿度センサまたは光センサを備えたセンサ付IDタグである。
【0013】
この場合には、上述したように、IDタグが存在する環境(温度、湿度、照度)の変化に応じて、屋内環境をリアルタイムで細やかに調整できるようになる。
【0014】
屋内環境は、すでに説明しているように、屋内の温度、湿度または照度などのいずれか一つであるが、これらの二つ以上の環境要素が組み合わされていてもよい(請求項6の発明参照)。
【0015】
請求項7の発明においては、IDタグ読取手段が、IDタグからの信号強度または信号到達時間をさらに検出している。
【0016】
この場合には、各IDタグ読取手段の読取結果において、信号強度の変化や信号到達時間の変化の有無により、IDタグを携帯している人が移動しているのか、または同じ場所に留まっているのかが分かるため、そのような人の動きに応じた屋内環境の調整が可能になる。また、この場合には、各IDタグ読取手段の読取結果(すなわち、信号強度または信号到達時間の差)により、IDタグを携帯している人の位置座標を正確に算出できるようになるので、より細やかな屋内環境制御が行えるようになる。
【0017】
請求項8の発明においては、エリアに対応して設けられた空調機器を備えており、制御手段は、IDタグ読取手段の読取結果に基づいて、エリア内の人数に応じて、空調機器をオンしたりオフしたり、または空調機器の空調を強めたり弱めたりしている。
【0018】
この場合には、人が居るエリアのみの空調機器が駆動されることになるので、建物内の空調を効率的に管理して省エネを実現できるようになるばかりでなく、エリア内に人が多ければ空調機器の風量が強められ、人が少なければ風量が弱められることになるので、建物内の空調をより効率的に管理して一層の省エネを実現できるようになる。
【0019】
請求項9の発明においては、エリアが複数であって、当該各エリアに対応して設けられた複数の空調機器を備えており、制御手段は、各IDタグ読取手段の読取結果に基づいて、相対的に人が多いエリアの空調機器の空調を強めるとともに、相対的に人が少ないエリアの空調機器の空調を弱めるよう、各空調機器を制御している。
【0020】
この場合には、人が多いエリアにおける空調機器についてのみ、風量が強められるので、建物内の空調を効率的に管理して省エネを実現できるようになる。
【0021】
請求項10の発明においては、エリアに対応して設けられた空調機器を備えており、制御手段は、IDタグ読取手段の読取結果に基づいて、人が移動しているエリアの空調機器の空調を強めるとともに、人が移動していないエリアの空調機器の空調を弱めるよう、空調機器を制御している。
【0022】
この場合には、人が移動しているエリアにおける空調機器についてのみ、風量が強められるので、建物内の空調を効率的に管理して省エネを実現できるようになる。
【0023】
請求項11の発明においては、エリアに対応して設けられた照明器具を備えており、制御装置は、人が居るエリアの照明器具をオンとし、人が居ないエリアの照明器具をオフとするよう、照明器具を制御している。
【0024】
この場合には、人が居るエリアのみの照明器具がオンされることになるので、建物内の照明を効率的に管理して省エネを実現できるようになる。
【0025】
請求項12の発明においては、照明器具が調光機能を有しており、制御装置が、エリアの照度に応じて照明器具の輝度(光度)を調整するよう照明器具を制御している。
【0026】
この場合には、各エリアの照度に応じて照明器具の輝度が調整されるので、建物内の照明をリアルタイムで細やかに管理できるようになって、省エネを実現できる。
【0027】
請求項13の発明においては、照明器具がLED照明器具であり、制御装置が、エリアの照度に応じてLED照明器具の輝度を調整し、または季節に応じてLED照明器具の色温度を調整するよう、LED照明器具を制御している。
【0028】
この場合には、エリアの照度に応じてLED照明器具の輝度が調整されるので、建物内の照明をリアルタイムで細やかに管理できるようになって、省エネを実現できる。また、この場合には、LED照明器具の色光をたとえば夏場は寒色系の蛍光色とし、冬場は暖色系の昼光色とするなどして、季節に応じてLED照明器具の色温度が調整されるので、人間工学的に快適な屋内環境を実現できる。
【0029】
請求項14の発明においては、各個人のID情報に優先順位が付けられており、制御手段は、同じエリア内に複数の人が存在している場合に、この優先順位に基づいて当該エリアの屋内環境を制御している。
【0030】
この場合には、ID情報の優先順位に基づいて、すなわち、たとえば年配の人を優先するなどして、エリアの屋内環境が制御されることになるので、より細やかな調整が可能になる。
【0031】
請求項15の発明においては、エリア内に人が存在することをIDタグ読取手段とは別の方法によって検知するセンサ手段をエリア内にさらに備えており、制御手段が当該センサ手段の検知結果に基づいて制御を行っている。
【0032】
請求項15の発明によれば、IDタグ読取手段からの読取結果に不具合があった場合でも、別のセンサ手段の検知結果により、その不具合を補うようにエリアの屋内環境を制御できるようになる。
【発明の効果】
【0033】
以上のように、本発明に係る屋内環境制御システムによれば、IDタグを携帯した人が屋内の領域内の或るエリアに入ると、当該エリアのIDタグ読取手段がIDタグからの信号を検知してID情報を読み取り、その読取結果(たとえば、どのエリアに何人の人が居るか、誰がどのエリアに居るかなど)に基づいて、制御手段がエリアごとの屋内環境(たとえば温度や湿度、照度など)を制御するようにしたので、建物内の人の配置に応じて建物内の屋内環境を効率的にかつ人間工学的に制御できるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下、本発明の実施例を添付図面に基づいて説明する。
図1ないし図6は、本発明の一実施例による屋内環境制御システムを説明するための図であって、図1は本実施例による屋内環境制御システムが適用された建物の屋内の或る領域を示す平面概略図、図2は図1の領域を6つのエリアに区画した例を示す平面概略図、図3は図1の詳細図、図4はエリア内における人の正確な位置を算出するための手法を説明するための図、図5は本システムの概略ブロック構成図、図6は本システムによる制御フローを説明するためのフローチャートである。
【0035】
図1に示すように、建物1の内部において、一点鎖線で囲まれた領域2に本実施例による屋内環境制御システムが適用された場合を例にとって説明する。領域2は、仕切壁などで仕切られていないオープンスペース(つまり連続した一つの空間)であるが、図2の一点鎖線に示すように、たとえば6つに区画されたエリア(1)〜(6)から構成されている。
【0036】
各エリア(1)〜(6)の中央には、図1および図3に示すように、IDタグリーダとしてのRFID(radio frequency identification)タグリーダR1〜R6がそれぞれ配置されている。各RFIDタグリーダR1〜R6は、それぞれのエリア内において天井の中央に取り付けられている。これらのRFIDタグリーダR1〜R6は、IDタグとしてのRFIDタグt1〜t4から発せられた電波を受信して、各RFIDタグt1〜t4にそれぞれ格納された各個人のID情報を読み取るための装置である。図1および図3中、各RFIDタグリーダR1〜R6の検知範囲をそれぞれD1〜D6の円で示しており、各検知範囲D1〜D6は、各エリア(1)〜(6)(図2)をそれぞれ実質的にカバーしている。図1および図3に示す例では、RFIDタグt1は、RFIDタグリーダR1の検知範囲D1内に位置しており、RFIDタグt2〜t4は、RFIDタグリーダR3およびR4の検知範囲D3およびD4内に位置している。
【0037】
また、図4に示す例では、RFIDタグt5が、RFIDタグリーダR1、R2およびR3のそれぞれの検知範囲D1、D2およびD3内に位置している。この場合、RFIDタグt5から発した電波の強度(信号強度)または受信時間(信号到達時間)をRFIDタグリーダR1、R2およびR3でそれぞれ検出することにより、RFIDタグt5の正確な位置座標を、RFIDタグリーダR1、R2、R3からのそれぞれ距離d、d、dを用いて、3点測距法で容易に算出できる。
【0038】
なお、図1および図4のいずれの例においても、RFIDタグリーダが受信するRFIDタグからの信号の強度が変化している場合や、信号到達時間が変化している場合には、RFIDタグを携帯している人が移動していることが分かり、これとは逆に、信号強度や信号到達時間に変化がなければ、RFIDタグを携帯している人が同じ場所に留まっていることが分かる。
【0039】
RFIDタグには、個人の識別番号(ID番号)、性別、年齢または特性のいずれか一つまたは二つ以上の情報が格納されている。RFIDタグとしては、アクティブタグが好ましい。このアクティブRFIDタグの場合には、電池を内蔵していて自ら電波を発するので、受信距離を長くとることができる。また、電池を内蔵していることで、温湿度センサや光センサなどのセンサを取り付けることが可能であり、これにより、アクティブRFIDタグが置かれている環境(温度、湿度、照度など)の変化に応じて、屋内環境(屋内の温度、湿度または照度などのいずれか一つまたはこれらの二つ以上の組合せ)をリアルタイムで細やかに調整できるようになる。
【0040】
図2に示すように、領域2内において、エリア(1)および(2)の中央にエアコンA1が配置され、エリア(3)および(4)の中央にエアコンA2が配置され、エリア(5)および(6)の中央にエアコンA3が配置されている。各エアコンA1、A2、A3はそれぞれのエリアの天井に取り付けられている。また、エリア(1)、(2)の天井にはLED照明L1が、エリア(3)、(4)の天井にはLED照明L2が、エリア(5)、(6)の天井にはLED照明L3が、それぞれ設けられている。ここでは、各LED照明L1、L2、L3は、たとえば、それぞれ赤(R)、緑(G)および青(B)の3色からなるマルチチップの照明灯を多数配列したものが用いられている。
【0041】
図5は、この屋内環境制御システムの概略ブロック構成図である。同図に示すように、本システムは、メインコントローラ(パソコン)MCによって制御される。メインコントローラMCには、それぞれコントローラC1〜C4が接続されている。
【0042】
コントローラC1には、RFIDタグリーダR1〜R6が接続されている。これらのRFIDタグリーダR1〜R6は、RFIDタグt1〜t4から発せられた電波を受信する受信装置を有している。
【0043】
コントローラC2には、エアコンA1、A2、A3が接続されている。コントローラC3には、LED電源回路P1を介してLED照明L1が接続され、LED電源回路P2を介してLED照明L2が接続され、LED電源回路P3を介してLED照明L3が接続されている。各LED電源回路P1、P2、P3には、各LED照明L1、L2、L3が所望の色温度を発するように、色温度デバイスが組み込まれている。コントローラC4には、照度センサS1、S2および温湿度センサS3、S4などの各種センサが接続されている。
【0044】
次に、本システムによる屋内環境制御方法について、図6のフローチャートを用いて説明する。
プログラムがスタートすると、まず、メインコントローラMCおよびコントローラC1、C2、C3のデータを初期化する等の初期設定がなされる。このとき、メインコントローラMCにおいては、さらに、現在が春夏秋冬のいずれであるのかを示す季節データの読み込みや、室内に設けられた温湿度センサからの温湿度データや照度センサからの照度データの読み込みも併せて行われる。
【0045】
次に、RFIDタグを携帯した人が領域2(図1)内に入ると、RFIDタグリーダR1〜R6がRFIDタグからの電波を受信し、受信された各IDタグ信号がコントローラC1に入力される。ここでは、RFIDタグが温湿度センサおよび光センサを有しているので、これらのセンサからのセンサ信号も併せてコントローラC1に入力される。
【0046】
図1および図3に示す例では、RFIDタグリーダR1がRFIDタグt1からの電波を受信し、RFIDタグリーダR3およびR4がRFIDタグt2、t3、t4からの電波を受信している。したがって、この場合、コントローラC1には、RFIDタグt1のIDタグ信号およびセンサ信号がRFIDタグリーダR1から入力されるとともに、RFIDタグt2、t3、t4の各IDタグ信号および各センサ信号がRFIDタグリーダR3およびR4から入力される。また、このとき、RFIDタグt1を携帯する人がRFIDタグリーダR1の付近に存在し、RFIDタグt2、t3、t4を携帯する人がRFIDタグリーダR3およびR4の間に存在しているというプレゼンス情報も併せて入力される。
【0047】
次に、コントローラC1は、各RFIDタグリーダR1〜R6から入手した各ID情報および各センサ情報をメインコントローラMCに出力する。メインコントローラMCは、入手したID情報およびセンサ情報ならびに温湿度データに基づいてエアコン(AC)駆動制御信号を作成して、コントローラC2に出力する。コントローラC2は、入力されたAC駆動制御信号に基づいて、エアコンA1、A2、A3を駆動制御する。
【0048】
メインコントローラMCにより作成されるAC駆動制御信号は、次のような法則にしたがって作成される。
i)人が居るエリアのエアコンをオンにし、人が居ないエリアのエアコンをオフにする。
ii) エアコンが配置されたエリアの人数が設定人数を超えた場合に、エアコンの空調を強める(つまり、風量を「強」にする)。これとは逆に、設定人数以下の場合には、エアコンの空調を弱める(つまり、風量を「弱」にする)。
iii)エアコンが配置されたエリア内の人が移動している場合に、エアコンの空調を強める(つまり、風量を「強」にする)。これとは逆に、人が同じ場所に留まっている場合には、エアコンの空調を弱める(つまり、風量を「弱」にする)。
iv) ID情報に優先順位が付けられている場合には、上記ii)およびiii)よりも、優先順位を優先する。
【0049】
図1および図3に示す例では、領域2のエリア(1)および(2)に一人の人が、エリア(3)および(4)に3人の人がそれぞれ存在しており、エリア(5)および(6)には人が存在していないので、法則i)にしたがって、エアコンA1およびA2をオンにし、エアコンA3をオフにする。この場合には、人が居るエリアのみのエアコンが駆動されることになるので、建物内の空調を効率的に管理して省エネを実現できるようになる。
【0050】
また、この例では、エリア内の設定人数を2名にした場合、エリア(1)および(2)内の人数は設定人数より少なく、エリア(3)および(4)内の人数は設定人数よりも多いため、法則ii)にしたがって、エアコンA1の風量は「弱」に設定され、エアコンA2の風量は「強」に設定される。このようにして、建物内の空調を効率的に管理して省エネを実現できるようになる。ただ、この場合において、もしエリア(1)および(2)内の人が移動している場合には、法則iii)にしたがって、エアコンA1の風量も「強」に設定される。これにより、建物内の空調をより効率的に管理できるようになる。
【0051】
さらに、この場合において、エリア(3)および(4)内の3人の人の各ID情報に優先順位が付けられている場合には、上記ii)およびiii)の法則よりも優先して、当該優先順位にしたがって、エアコンA2の駆動制御が行われる。たとえば、優先順位が付けられているID情報が個人の年齢である場合、或る一定年齢以上の人が含まれているときには、空調が効きすぎないように空調が弱めに調整される。また、優先順位が付けられているID情報が個人の特性(たとえば暑がりか寒がりかなど)である場合、冷暖房の空調が弱めに空調が調整される。
【0052】
図4に示す例では、領域2のエリア(1)および(2)に一人の人が存在しており、エリア(3)、(4)およびエリア(5)、(6)には人が存在していないので、法則i)にしたがって、エアコンA1のみをオンにし、エアコンA2、A3をオフにする。また、法則ii)にしたがって、エアコンA1の風量を「弱」にする。ただ、この場合において、もしエリア(1)および(2)内の人が移動している場合には、法則iii)にしたがって、エアコンA1の風量は「強」に設定される。
【0053】
図6において、メインコントローラMCは、入手したID情報およびセンサ情報ならびに季節データおよび照度データに基づいてLED駆動制御信号を作成して、コントローラC3に出力する。コントローラC3は、入力されたLED駆動制御信号に基づいて、LED電源回路P1、P2、P3を駆動制御する。
【0054】
メインコントローラMCにより作成されるLED駆動制御信号は、次のような法則にしたがって作成される。
i)人が居るエリアのLED照明をオンにし、人が居ないエリアのLED照明をオフにする。このとき、エリアの照度に応じて、LED照明の輝度を調整する。
ii) 季節データに基づいて、夏場は蛍光色に、冬場は昼光色になるように、LED照明の色温度デバイスを制御して色温度を調整する。
iii)LED照明が設けられたエリアの人数が設定人数を超えた場合に、LED照明の輝度を高めにする。これとは逆に、設定人数以下の場合には、LEDの輝度を低めにする。
iv) ID情報に優先順位が付けられている場合には、上記iii)よりも、優先順位を優先する。
【0055】
図1および図3に示す例では、領域2のエリア(1)および(2)に一人の人が、エリア(3)および(4)に3人の人がそれぞれ存在しており、エリア(5)および(6)には人が存在していないので、法則i)にしたがって、LED照明L1およびL2をオンにし、LED照明L3をオフにする。この場合には、人が居るエリアのみのLED照明がオンされることになるので、建物内の照明を効率的に管理して省エネを実現できるようになる。また、このとき、エリアの照度に応じて、LED照明L1およびL2の輝度を調整する。すなわち、たとえば外光がエリア内に差し込んで照度が明るい場合には、輝度を下げる。これにより、建物内の照明をリアルタイムで細やかに管理できるようになって、省エネを実現できる。
【0056】
さらに、法則ii)にしたがって、LED照明L1およびL2が夏場は蛍光色に、冬場は昼光色になるように、色温度を調整する。これにより、夏場は涼しげな色で照明されるとともに、冬場は暖かみのある色で照明されることになって、当該エリアの人に快適な空間を提供できるので、人間工学的に快適な屋内環境を実現できる。
【0057】
また、この例では、エリア内の設定人数を2名にした場合、エリア(1)および(2)内の人数は設定人数より少なく、エリア(3)および(4)内の人数は設定人数よりも多いため、法則iii)にしたがって、LED照明L1の輝度は低めに設定され、LED照明L2の輝度は高めに設定される。
【0058】
なお、この場合において、エリア内の設定人数を4名にした場合には、エリア(3)および(4)内の人数も設定人数より少なくなるため、法則iii)にしたがって、LED照明L2の輝度は低めに設定されるが、このとき、エリア(3)および(4)内の3人の人の各ID情報に優先順位が付けられている場合には、上記iii)の法則よりも優先して、当該優先順位にしたがって、LED照明L2の駆動制御が行われる。たとえば、優先順位が付けられているID情報が個人の年齢である場合、或る一定年齢以上の人が含まれているときには、離れている文字がよく見えるように、輝度が高めに設定される。
【0059】
図4に示す例では、領域2のエリア(1)および(2)に一人の人が存在しており、エリア(3)、(4)およびエリア(5)、(6)には人が存在していないので、法則i)にしたがって、LED照明L1のみをオンにし、LED照明L1、L2をオフにする。また、法則ii)にしたがって、LED照明L1の輝度を低めにする。
【0060】
このような本実施例によれば、人がRFIDタグを携帯したまま、建物内の或るエリアに入ると、当該エリアのRFIDタグリーダがRFIDタグからの信号を検知してID情報を読み取る。これにより、どのエリアに人が居るか、また何人の人が居るか、さらには誰がどのエリアに居るかなどの情報(プレゼンス情報)がメインコントローラMCに入力される。メインコントローラMCは、当該プレゼンス情報に基づいて、エリアごとの屋内環境を制御する。すなわち、メインコントローラMCは、人が居るエリアについてのみ空調や照明をオンにするとともに、人数や人の性別、年齢、特性に応じてそのエリアの温度や湿度、照度などを調整する。このようにして、建物内の屋内環境を効率的にかつ人間工学的に制御できるようになる。
【0061】
本システムでは、図6に示す制御フローを一定時間(たとえば1分間)ごとに繰り返す。これにより、RFIDタグを携帯した人の現在位置情報(誰がどのエリアに居るのか、各エリアに何人の人が居るのか、人が移動中であるか否かなど)に応じて建物内の空調および照明などの屋内環境をリアルタイムで制御できるようになる。
【0062】
前記実施例では、RFIDタグとして、温湿度センサや光センサを備えたセンサ付RFIDタグが用いられるので、RFIDタグが置かれている環境(温度、湿度、照度など)の変化に応じて、屋内環境をリアルタイムで細やかに調整できるようになる。
【0063】
前記実施例では、RFIDタグリーダが、RFIDタグからの信号強度または信号到達時間を読み取っているので、信号強度の変化や信号到達時間の変化の有無により、RFIDタグを携帯している人が移動しているのか、または同じ場所に留まっているのかが分かるため、そのような人の動きに応じた屋内環境の調整が可能になる。また、この場合、各RFIDタグリーダの読取結果(すなわち、信号強度または信号到達時間の差)により、RFIDタグを携帯している人の位置座標を正確に算出できるようになるので、より細やかな屋内環境制御が行えるようになる。
【0064】
前記実施例では、ID情報の優先順位に基づいて、エリアの屋内環境を制御できるので、より細やかな調整が可能になる。
【0065】
なお、前記実施例では、建物内部の領域を構成するエリアが複数の場合を例にとって説明したが、本発明の適用はこれには限定されず、エリアは一つでもよい。
【0066】
前記実施例では、RFIDタグリーダを天井(したがって同一平面内)にのみ設けて3点測距法を実現する場合を例にとって説明したが、天井と床との間の位置(したがって同一平面以外の位置)にさらにRFIDタグリーダを設けることにより、4点測距法を実現できるようにして、3次元的にRFIDタグの位置座標を算出するようにしてもよい。
【0067】
前記実施例では、RFIDタグとして、RFIDタグが用いられた場合を例にとって説明したが、本発明は、無線LANや超音波、GPSまたはこれらに類するものを用いたIDタグを使用する場合にも同様に適用できる。
【0068】
前記実施例では、エリア内に人が居ることをRFIDタグリーダのみによって検知するようにした例を示したが、本発明の適用においては、RFIDタグリーダとは別の方法によってエリア内の人を検知するセンサ手段をさらに設け、当該センサ手段の検知結果に基づいて制御手段が制御を行うようにしてもよい。
【0069】
すなわち、たとえば、センサ手段として人の体温を検知するいわゆる人感センサ(たとえば焦電センサ)と組み合わせることにより、たとえば、人がRFIDタグを身体から外して放置してその場所から立ち去っているとき、RFIDタグリーダがRFIDタグを検知するという不具合が生じた場合でも、人感センサが人を検知していないために、人がその場所に居ないと判断されることになり、これにより、屋内環境を適切に制御できるようになる。
【0070】
前記実施例では、本システムが通常の職場または会議室に適用された例を示したが(図3参照)、本発明は、トイレや更衣室などにも適用可能である。この場合、ID情報として読み込まれた個人の性別を利用することにより、トイレや更衣室の入口付近に設けられたRFIDタグリーダが、接近する人の性別を読み取ることにより、その性別に応じて紳士用または婦人用のいずれか一方の部屋の照明および空調がオンにされるとともに、各部屋内で照明および空調が制御される。
【0071】
前記実施例では、LED照明が用いられた例を示したが、照明器具としては、LED照明以外の照明器具を用いるようにしてもよく、この場合、調光機能を有しているものが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明の一実施例による屋内環境制御システムが適用された建物の内部の或る領域を示す平面概略図である。
【図2】図1の領域を6つのエリアに区画した状態を示す平面概略図である。
【図3】図1の詳細図である。
【図4】エリア内における人の正確な位置を算出するための手法を説明するための図である。
【図5】本システムの概略ブロック構成図である。
【図6】本システムによる制御フローを説明するためのフローチャートである。
【符号の説明】
【0073】
1: 建物
2: 領域
(1)〜(6): エリア

t1〜t5: RFIDタグ
R1〜R6: RFIDタグリーダ(IDタグ読取手段)
D1〜D6: 検知範囲
A1〜A3: エアコン(空調機器)
L1〜L3: LED照明(証明器具)
P1〜P3: LED電源回路
S1,S2: 照度センサ
S3,S4: 温湿度センサ
C1〜C4: コントローラ(制御手段)
MC: メインコントローラ(制御手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
屋内環境制御システムであって、
個人のID情報が格納されたIDタグと、
屋内の或る領域内において当該領域を構成する少なくとも一つのエリアに対応して設けられ、その検知範囲が前記エリアをカバーするとともに、前記IDタグからの信号を検知して前記ID情報を読み取るIDタグ読取手段と、
前記IDタグ読取手段の読取結果に基づいて、前記エリアの屋内環境を制御する制御手段と、
を備えた屋内環境制御システム。
【請求項2】
請求項1において、
前記ID情報が、個人の識別番号、性別、年齢または特性のいずれか一つまたは二つ以上の情報を有している、
ことを特徴とする屋内環境制御システム。
【請求項3】
請求項1において、
前記IDタグが、RFIDタグである、
ことを特徴とする屋内環境制御システム。
【請求項4】
請求項3において、
前記RFIDタグが、アクティブタグである、
ことを特徴とする屋内環境制御システム。
【請求項5】
請求項1において、
前記IDタグが、温度センサ、湿度センサまたは光センサを備えたセンサ付IDタグである、
ことを特徴とする屋内環境制御システム。
【請求項6】
請求項1において、
前記屋内環境が、屋内の温度、湿度または照度のいずれか一つまたは二つ以上の環境要素である、
ことを特徴とする屋内環境制御システム。
【請求項7】
請求項1において、
前記IDタグ読取手段が、前記IDタグからの信号強度または信号到達時間をさらに検出している、
ことを特徴とする屋内環境制御システム。
【請求項8】
請求項1において、
前記エリアに対応して設けられた空調機器を備え、前記制御手段は、前記IDタグ読取手段の読取結果に基づき、エリア内の人数に応じて、空調機器をオンしたりオフしたり、または空調機器の空調を強めたり弱めたりしている、
ことを特徴とする屋内環境制御システム。
【請求項9】
請求項1において、
前記エリアが複数であって、当該各エリアに対応して設けられた複数の空調機器を備え、前記制御手段は、前記各IDタグ読取手段の読取結果に基づいて、相対的に人が多いエリアの空調機器の空調を強めるとともに、相対的に人が少ないエリアの空調機器の空調を弱めるよう、各空調機器を制御している、
ことを特徴とする屋内環境制御システム。
【請求項10】
請求項1において、
前記エリアに対応して設けられた空調機器を備え、前記制御手段は、前記IDタグ読取手段の読取結果に基づいて、人が移動しているエリアの空調機器の空調を強めるとともに、人が移動していないエリアの空調機器の空調を弱めるよう、空調機器を制御している、
ことを特徴とする屋内環境制御システム。
【請求項11】
請求項1において、
前記エリアに対応して設けられた照明器具を備え、前記制御装置は、人が居るエリアの照明器具をオンとし、人が居ないエリアの照明器具をオフとするよう、各照明器具を制御している、
ことを特徴とする屋内環境制御システム。
【請求項12】
請求項11において、
前記照明器具が調光機能を有しており、前記制御装置が、前記エリアの照度に応じて前記照明器具の輝度を調整するよう前記照明器具を制御している、
ことを特徴とする屋内環境制御システム。
【請求項13】
請求項11において、
前記照明器具がLED照明器具であり、前記制御装置が、前記エリアの照度に応じて前記LED照明器具の輝度を調整し、または季節に応じて前記LED照明器具の色温度を調整するよう、前記LED照明器具を制御している、
ことを特徴とする屋内環境制御システム。
【請求項14】
請求項1において、
各個人のID情報に優先順位が付けられており、前記制御手段は、同じエリア内に複数の人が存在している場合に、前記優先順位に基づいて当該エリアの屋内環境を制御している、
ことを特徴とする屋内環境制御システム。
【請求項15】
請求項1において、
前記エリアに設けられ、前記IDタグ読取手段とは別の方法によって前記エリア内に人が存在することを検知するセンサ手段をさらに備え、
前記制御手段は、当該センサ手段の検知結果に基づいて制御している、
ことを特徴とする屋内環境制御システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−281239(P2008−281239A)
【公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−123895(P2007−123895)
【出願日】平成19年5月8日(2007.5.8)
【出願人】(000000309)IDEC株式会社 (188)
【Fターム(参考)】