説明

屋根の補修構造および補修工法

【課題】簡易な構造であって、しかも特別な動力を使わず室内の換気を行うことができる屋根の補修構造等を提供する。
【解決手段】この屋根の補修構造は、傾斜を有する屋根板15Aの上に波状の凹凸を備えたカバールーフ15Bを重ねて形成されるものである。そして、屋根板15Aの棟部Aを開口して形成される開口部17と、その開口部17の上に設けられ、カバールーフ15Bを介してこの開口部17を閉塞する通気閉塞部材21とを有している。カバールーフ15Bは金属製であって凹部と凸部が交互に形成され、通気閉塞部材21とカバールーフ15Bの凹部及び凸部とによって通気領域21aが画成され、屋根の下に設けられた室内は開口部17及びその通気領域21aを介して外気と連通している。
を特徴とする

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば工場や倉庫といった既設建物の屋根の補修構造および補修工法に関し、特には、簡易な構造であって、しかも特別な動力を使わず室内の換気を行うことができる屋根の補修構造および補修工法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1には、工場等の温熱環境を改善するために、建物の壁および屋根を内面と外面とかならなる二重構造(ダブルスキン)とするとともに、屋根の棟部に換気手段を設けた構造が開示されている。この構造によれば、夏季においては、内面と外面との間の通気路内の熱気が自ずと上昇し、棟部の換気手段を通じて外部に排出され、換気効果が得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−235677
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の構造では、二重構造の壁を実現するために既設の壁や屋根等に対して新たに壁材を設ける必要があり、構造が複雑であり、作業も大がかりなものとなる。
【0005】
他方で、例えば工場等に関しては、近年、その屋根の老朽化が進んでいるものも多く、簡易な構造で補修することができ、しかも同時に室内環境の改善を図ることもできる補修構造の開発が望まれている。
【0006】
本発明は上述のような課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、簡易な構造であって、しかも特別な動力を使わず室内の換気を行うことができる屋根の補修構造および補修工法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための本発明の屋根の補修構造は、
傾斜を有する屋根板の上に、波状の凹凸を備えたカバールーフを重ねて形成される屋根の補修構造であって、
前記屋根板の棟部を開口して形成される開口部と、
前記開口部の上に設けられ、前記カバールーフを介してこの開口部を閉塞する通気閉塞部材と
を有し、
前記カバールーフは金属製であって、凹部と凸部が交互に形成され、
前記通気閉塞部材と前記カバールーフの凹部及び凸部とで画成された通気領域を備え、
前記屋根の下に設けられた室内が、前記開口部及び前記通気領域を介し、外気と連通すること
を特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、簡易な構造であって、しかも特別な動力を使わず室内の換気を行うことができる屋根の補修構造および補修工法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】補修後の棟部の断面形状を模式的に示す断面図である。
【図2】補修後の屋根のX−X方向(図3参照)断面の模式図である。
【図3】既設の工場を模式的に示す外観斜視図である。
【図4】上部カバーを模式的に示す外観斜視図である。
【図5】本実施形態の補修工法の作業工程の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の実施の一形態について説明する。
本発明に係る屋根の補修工法は、例えば図3のような工場の屋根10を補修するためのものである。この屋根10は、傾斜した屋根板15A、15Aと棟部Aを有している。なお、図1では、図示の簡略のため、屋根板15AをC型鋼13に固定している公知の固定具などは示していない。
【0011】
図1、図2に示すように、本実施形態の補修構造は、既設の屋根板15Aと、その上に配置されたカバールーフ15Bと、棟部Aに形成された開口部17(詳細下記)を覆うように配置された上部カバー21とを備えている。
【0012】
屋根板15Aは例えば波形スレートであり、この例では、工場の梁11にC型鋼13およびアングル12を介して固定されている。なお、補修前は、図3に示すように、左右の屋根板15A、15Aが棟部Aまで延在したような形態となっており、棟部Aには不図示の曲棟が配置されている。
【0013】
図1に示すように、補修後は、屋根板15A、15Aの間に開口部17が形成される。この開口部17は、工場の屋内空間に開口している。棟部Aの全長(図3のX−X方向)にわたって1つの開口部17が形成されてもよいし、または、棟部Aに沿って幾つかの開口部17が形成されてもよい。
【0014】
図2に示すように、屋根板15A上に配置されるカバールーフ15Bには波状の凹凸が形成されている。限定されるものではないが、カバールーフ15Bの凹凸のピッチは、屋根板15Aのピッチと同一または実質的に同一である。このようなカバールーフ15Bは、カバールーフ15Bを屋根板15A上に良好に位置決めできる点で好ましい。
【0015】
カバールーフ15Bの凹凸は屋根板15Aの凹凸よりも緩やかであり、これにより、カバールーフ15Bを屋根板15Aに載せた状態では両者の間に複数の通気路25が形成される。この通気路25は、図1では模式的に破線で描かれており、その一端側は開口部17側に開口し、他端側(不図示)は軒先側に開口している。
【0016】
上部カバー21は、開口部17を覆うためのものであり、一例として金属製で図4に示すような形態をしている。上部カバー21は、上に凸となる逆V字型の断面形状を有しており、棟部A全体を覆うような長さに形成されている(一例)。上部カバー21の両側には通気領域21aが形成されている。なお、この通気領域21aに、図1に示すようなハニカム構造22(一例)が設けられていてもよい。
【0017】
通気領域21aは、後述するように、室内の空気を外に逃がす機能と、通気路25からの空気を外に逃がす機能とを備えるものであれば、形状やサイズは種々変更可能である。図4では、上部カバー21に通気領域21aが形成されているが、これに限らず、上部カバー21とカバールーフ15Bの凹部及び凸部とによって通気領域21aが画成されてもよい。
【0018】
上部カバー21は、図1に示すように、一例として止めビス28によって屋根板15Aおよびカバールーフ15Bを貫通してC型鋼13に取り付けられる。上部カバー21によって、開口部17が閉塞される。なお、必要に応じて、上部カバー21とカバールーフ15Bとの間に雨水等が浸水するのを防止するための水止面戸29(テープ等の防水部材)が貼られてもよい。止めビス28の位置は特に限定されるものではない。
【0019】
図1に示すように、補修後は、開口部17および通気領域21aを通じて工場室内と外部とが連通する。このような構成により、夏季の室内の熱気を、開口部17および通気領域21aを通じて外に逃がすことができる。
【0020】
さらに、本実施形態では、屋根板15Aとカバールーフ15Bとの間の通気路25も、開口部17および通気領域21aを通じて外部に連通している。このような構成によれば、通気路内25内の熱気をも開口部17および通気領域21aを通じて外に逃がすことができるので、室内の温度上昇をさらに抑えることができる。
【0021】
次に、既設の工場屋根に対する補修工程について、図5を参照しつつ説明する。なお、下記に説明する作業工程はあくまで一例であって、作業の順番等は適宜変更可能である。
【0022】
まず、図5(a)に示すように、既設の工場屋根10の棟部Aの曲棟(不図示)を撤去して開口部17を設ける。この状態では、屋根板15A、15Aは残っており、その間に開口部17が形成されている。
【0023】
次いで、図5(b)に示すように、それぞれの屋根板15Aの上にカバールーフ15Bを配置する。この工程では、例えば、既設のフックボルト(不図示)を切断する、屋根板15上に安全ネット(不図示)を配設する、屋根板15A上に所定の固定金具(不図示)を取り付ける等の作業が行われてもよい。カバールーフ15Bを配置することにより、図2に示すように、カバールーフ15Bと屋根板15Aとの間に複数の通気路25が形成される。
【0024】
次いで、図5(c)に示すように、開口部17を上方から覆うように上部カバー21を取り付ける。一例として、上部カバー21は止めビス28を用いてC型鋼13に固定される。さらに、必要に応じて、カバールーフ15Bの縁部分に水止面戸29(上記参照)を貼ってもよい。
【0025】
上記一連の工程により、図1に示すような補修構造が完成する。
【0026】
以上説明した本実施形態に係る補修構造および補修工法は以下の通りである。
(1)
傾斜を有する屋根板15Aの上に波状の凹凸を備えたカバールーフ15Bを重ねて形成される屋根の補修構造であって、
前記屋根板15Aの棟部Aを開口して形成される開口部17と、
前記開口部17の上に設けられ、前記カバールーフ15Bを介してこの開口部17を閉塞する通気閉塞部材(21)と
を有し、
前記カバールーフ15Bは金属製であって、凹部と凸部が交互に形成され、
前記通気閉塞部材(21)と前記カバールーフ15Bの凹部及び凸部とで画成された通気領域21aを備え、
前記屋根10の下に設けられた室内が、前記開口部17及び前記通気領域21aを介し、外気と連通すること
を特徴とする屋根の補修構造。
【0027】
金属製のカバールーフ15Bを用いて補修を行う場合、日光によりカバールーフ15Bが熱せられて室内温度が過度に上昇する。そのため、通気領域21aと開口部17を介して室内と外気を連通させることにより、簡易な構成で、夏季室内温度を下げることに有効に働き、動力を使わず、室内環境を改善することができる。
【0028】
(2)本実施形態の屋根の補修構造は、また、前記屋根板15Aがスレート板であることを特徴とする。
本発明は、このようなストレート板の屋根に対しても良好に適用することができ、上記と同様の作用効果を得ることができる。
【0029】
(3)本実施形態の屋根の補修工法は、
傾斜を有する屋根板15Aの上に、波状の凹凸を備えたカバールーフ15Bを重ねて行われる屋根の補修工法であって、
前記屋根板15Aの棟部Aを開口して開口部17を形成する開口部形成工程と、
前記開口部17の上に通気閉塞部材(21)を設け、前記カバールーフ15Bを介してこの開口部17を閉塞する通気閉塞部材設置工程と
を有し、
前記カバールーフ15Bは金属製であって、凹部と凸部が交互に形成され、
前記閉塞部材(21)と、前記カバールーフ15Bの凹部及び凸部で画成された通気領域21aを形成し、この通気領域21a及び前記開口部17を介し、前記屋根の下に設けられた室内と外気とを連通させること
を特徴とする。
【0030】
このような工法によれば、既設の屋根10に対して煩雑な作業を要することなく、簡単に図1に示したような本実施形態の補修構造を設けることができる。
【0031】
(4)本実施形態の屋根の補修工法は、また、前記屋根板がスレート板であることを特徴とする。
本発明は、このようなストレート板の屋根に対しても良好に適用することができる。
【符号の説明】
【0032】
10 屋根
11 梁
12 アングル
13 C型鋼
15A 屋根板
15B カバールーフ
17 開口部
21 上部カバー
21a 通気領域
25 通気路
28 止めビス
29 水止面戸
A 棟部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
傾斜を有する屋根板の上に、波状の凹凸を備えたカバールーフを重ねて形成される屋根の補修構造であって、
前記屋根板の棟部を開口して形成される開口部と、
前記開口部の上に設けられ、前記カバールーフを介してこの開口部を閉塞する通気閉塞部材と
を有し、
前記カバールーフは金属製であって、凹部と凸部が交互に形成され、
前記通気閉塞部材と前記カバールーフの凹部及び凸部とで画成された通気領域を備え、
前記屋根の下に設けられた室内が、前記開口部及び前記通気領域を介し、外気と連通すること
を特徴とする屋根の補修構造。
【請求項2】
請求項1に記載の屋根の補修構造において、
前記屋根板は、スレート板であること
を特徴とする屋根の補修構造。
【請求項3】
傾斜を有する屋根板の上に、波状の凹凸を備えたカバールーフを重ねて行われる屋根の補修工法であって、
前記屋根板の棟部を開口して開口部を形成する開口部形成工程と、
前記開口部の上に通気閉塞部材を設け、前記カバールーフを介してこの開口部を閉塞する通気閉塞部材設置工程と
を有し、
前記カバールーフは金属製であって、凹部と凸部が交互に形成され、
前記閉塞部材と、前記カバールーフの凹部及び凸部で画成された通気領域を形成し、この通気領域及び前記開口部を介し、前記屋根の下に設けられた室内と外気とを連通させること
を特徴とする屋根の補修工法。
【請求項4】
請求項3に記載の屋根の補修工法において、
前記屋根板は、スレート板であること
を特徴とする屋根の補修工法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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