説明

履物および履物底

【課題】 歩行の際の労力を軽減する。
【解決手段】 運動靴1は、被覆部11および靴底部13を有している。図1Bに示すように、靴底部13は、外形部131、緩衝部132、弾性板133、つま先側保持部135、かかと側保持部137、支点軸138、及び屈曲軸139を有している。靴底部13のつま先で地面を蹴る前は、弾性板133のつま先側の端部133Tはつま先側保持部135と、かかと側の端部133Hはかかと側保持部137と、それぞれ係合している。ユーザが歩行を開始すると、靴底部13が撓み、弾性板133には復元力が蓄えられる。靴底部13のつま先で地面を蹴る際には、弾性板133の端部133Tとつま先側保持部135との係合が解放される。これにより、弾性板133は蓄えていた復元力を放出する。弾性板133による地面の叩打が、歩行の際の補助的な推進力をユーザーに提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、履物・履物底に関するものであり、特に、歩行の際の補助推進力を発生する機能を有するものに関する。
【背景技術】
【0002】
これまでの履物について、図31を用いて説明する。図31には、履物100が示されている。履物100は、固定板101、平板102、およびコイルバネ105を有している。また、平板102は、バネ固定具104および緩衝材110を有している。さらに、固定板101はおよび収納庫103を有している。
【0003】
履物100の踵にあたる部分には、窪み118が設けられている。固定板101にはコイルバネ105の収納庫103が設けられている。固定板101の上部には、平板102が設けられている。平板102は、コイルバネ105を固定するためのバネ固定具104が設けられている。また、平板102の単部には、履物の周囲を傷めない様に緩衝剤110が設けられている。
【0004】
このように履物100の踵の部分にコイルバネ105を設けることによって、人間が履物100を履いて歩く時に体重を前に移動させるために必要となるかかとを持ち上げる力を補充することができる。
【0005】
【特許文献1】特開平10−262706号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の履物100には以下に示すような問題点がある。歩行の際には、かかとを持ち上げる力だけではなく、つま先で地面を蹴る力が必要である。このつま先による蹴りの力が、歩行のスピードの主要因である。お年寄り等は、このつま先による蹴りの力が減少するため、歩行の際のスピードが低下し、結果的に、若者と比較して、同じ距離を歩くにしても時間がかかり、疲労が多くなる。つまり、歩行の際の労力が多くかかる。
【0007】
従来の履物100では、このつま先による蹴りの力に対しては、直接的に作用するものではない。したがって、歩行の際の労力を直接的に軽減するものではないという問題点がある。
【0008】
本発明は、歩行の際の労力を直接的に軽減することができる履物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に関する課題を解決するための手段および発明の効果を以下に示す。
【0010】
本発明に係る補助推進力生成機能付き履物および補助推進力生成機能付き履物底は、蓄えられた力を解放することによって歩行の際の補助推進力を生成する蓄積部、前記蓄積部との係合を形成し、及び、前記係合を解放をするつま先側係合部、前記蓄積部との係合を形成し、及び、前記係合を解放をするかかと側係合部、を有し、初期状態において、蓄積部の一端とつま先側係合部とが係合しており、前記履物底部のかかとが地面と接する際に、蓄積部の他端とかかと側係合部との係合が形成され、前記履物底部のつま先が地面から離れる際に、前記かかと側係合部と前記蓄積部との係合を維持したまま、前記つま先側係合部と前記蓄積部との係合を解放し、前記履物底部のかかとが地面と再び接するまでに、前記つま先側係合部と前記蓄積部の一端との係合を形成し、かつ、前記かかと側係合部と前記蓄積部との係合を解放する。
【0011】
これにより、かかとが着地する際に蓄積した蓄積部の復元力をつま先で地面を蹴る際に放出することができる。つまり、歩行の際の補助的な推進力を容易に生成することができ、歩行の際の労力を直接的に軽減することができる。
【0012】
本発明に係る補助推進力生成機能付き履物および履物底において、蓄積部は、弾性に基づく力を復元力として蓄積することができる板状体又は棒状体である。これにより、蓄積した復元力を利用して、歩行の際の補助推進力を容易に生成することができる。
【0013】
本発明に係る補助推進力生成機能付き履物および履物底において、かかと側係合部は、前記外形部に設けられるかかと側凸状部材を有しており、さらに、前期かかと側凸状部材と前記蓄積部との係合を解放する際より、係合を形成する際の方が容易となるものである。これにより、蓄積部に容易に復元力を蓄積することができるとともに、蓄積した復元力を不用意に放出させることがないようにすることができる。
【0014】
本発明に係る補助推進力生成機能付き履物および履物底においては、つま先側係合部は、前記外形部に設けられるつま先側凸状部材を有しており、さらに、前期つま先側凸状部材と前記蓄積部との係合を解放する際より、係合を形成する際の方が容易となるものである。これにより、蓄積部とつま先側係合部との係合を容易に行うことができるとともに、蓄積した復元力を不用意に放出させることがないようにすることができる。
【0015】
本発明に係る補助推進力生成機能付き履物および履物底において、前記かかと側係合部による前記蓄積部との係合は、電磁気力によって形成及び解放されるものである。これにより、かかと側係合部による蓄積部との係合を確実に容易に達成することができる。
【0016】
本発明に係る補助推進力生成機能付き履物および履物底において、つま先側係合部による前記蓄積部との係合は、電磁気力によって形成及び解放されるものである。これにより、つま先側係合部による蓄積部との係合を確実に容易に達成することができる。
【0017】
本発明に係る補助推進力生成装置では、外形部に納められる蓄積部であって、蓄えられた力を放出することによって補助推進力を生成する蓄積部、前記外形部の推進方向側に形成される第1の係合部であって、前記蓄積部との係合を形成し、及び前記係合を解放する第1の係合部、前記外形部の推進方向と反対側に形成される第2の係合部であって、前記蓄積部との係合を形成し、及び前記係合を解放する第2の係合部、を有する補助推進力生成装置において、初期状態において、蓄積部の一端と第1の係合部との係合が形成されており、前記外形部の前記推進方向と反対側の端部が地面と接する際に、蓄積部の他端と第2の係合部との係合が形成され、前記外形部の前記推進方向側の端部が地面から離れる際に、前記第2の係合部と前記蓄積部との係合を維持したまま、前記第1の係合部と前記蓄積部の係合を解放し、前記外形部の推進方向と反対側の端部が地面と再び接するまでに、前記第1の係合部と前記蓄積部の一端との係合を形成し、かつ、前記第2の係合部と前記蓄積部との係合を解放する。
【0018】
これにより、歩行の際に補助的な推進力を容易に生成することができる。つまり、歩行時の労力を直接的に軽減することができる。
【0019】
本発明に係る補助推進力生成方法では、歩行時に、つま先非着地・かかと着地状態にて、地面から靴底に作用する押圧力によって靴底内部の変形部材を変形させ、つま先着地・かかと非着地状態になるまでこの変形状態を保持しておき、靴がつま先着地・かかと着地状態を経た後、前記つま先着地・かかと非着地状態となると、前記変形部材の変形状態の保持を解除させて、補助推進力を得る。
【0020】
これにより、かかとを着地させるときに靴底に作用する反作用の力をつま先で地面を蹴るときの補助推進力として利用することができる。
【0021】
さらに、本発明に係る補助推進力生成方法では、歩行時のつま先非着地・かかと非着地状態において、板状体又は棒状体である変形部材の一端とつま先側突起部とが係合しており、つま先非着地・かかと着地状態における前記変形部材の変形は、地面から靴底に作用する押圧力によって、前記変形部材の他端とかかと側突起部とを係合させることによって行い、前記変形部材の変形状態の保持を解除することによる補助推進力の獲得は、前記変形部材の他端と前記かかと側突起部との係合を保持したまま、前記つま先側突起部と前記変形部材との係合を解除させることによって行う。
【0022】
これにより、歩行の際の補助推進力を板状体又は棒状体の弾性力によって容易に生成することができる。
【0023】
「係合」とは、「ある物体がある方向へ移動しようとする際に、その移動が阻止される若しくは阻止される可能性がある状態をいう。本実施例においては、例えば、弾性板133のつま先側の一端133Tがつま先側係合部1351より上に存在し、両者が接している状態(図6B参照)、及び、弾性板133のつま先側の一端133Tがつま先側係合部1351より上に存在するが、両者が接していない状態(図6A参照)をも含む概念である。
【0024】
「歩行」とは、「所定の方向へ移動すること」を意とするものであり、単に歩く場合だけでなく走る等の動作を含む概念である。
【0025】
「かかとが地面と接する際」とは、「靴底のかかと付近が地面と接してから、靴底の中央部付近が地面と接地するまでの間」を意とするものである。
【0026】
「つま先が地面と離れる際」とは、「ある方向への推進力を得ようとする動作を行う際」ということを意とするものである。
【0027】
「つま先非着地・かかと着地状態」とは、「靴底のかかと付近が地面と接しており、靴底の中央部付近が地面と接していない状態」を意とするものである。
【0028】
「つま先着地・かかと着地状態」とは、「靴底の中央部付近が地面と接地若しくは最も近接する状態」を意とするものであり、靴底のつま先付近、かかと付近の何れか一方、若しくは両方が地面と接していない状態も含む概念である。
【0029】
「つま先着地・かかと非着地状態」とは、「靴底の中央部付近が地面から離れており、靴底のつま先付近が地面と接している状態はもとより、靴底の中央部付近が地面と接しており、靴底のつま先付近が地面と接している状態」をも意とするものである。
【0030】
「つま先非着地・かかと非着地状態」とは、「靴底のかかと付近、靴底の中央部付近、および靴底のつま先付近のいずれもが地面から離れている状態」を意とするものである。
【0031】
「弾性に基づく力」とは、弾性によって生ずる全ての力を意味するものであり、本実施形態においては、弾性板133に生ずる復元力が該当する。
【0032】
ここで、請求項における構成要素と実施例における構成要素との対応関係を示す。外形部は外形部131に、蓄積部は弾性板133に、それぞれ対応する。
【0033】
また、つま先側係合部はつま先側保持部135、235、835に、かかと側係合部はかかと側保持部137、237、337、437、537、637、837に、それぞれ対応する。
【0034】
さらに、かかと側凸状部材は移動棒1371、上側保持板2371、保持板3371、保持板4371、保持板5371、保持板6371、かかと側ストッパー8371に、つま先側凸状部材は移動棒1351、つま先側係合部2351、つま先側ストッパー8351に、それぞれ対応する。
【0035】
さらに、変形部材は、弾性板133に対応する。かかと側突起部は、移動棒1371、上側保持板2371、保持板3371、保持板4371、保持板5371、保持板6371、かかと側ストッパー8371に、つま先側突起部は、移動棒1351、つま先側係合部2351、つま先側ストッパー8351に、それぞれ対応する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
本発明を実施するための最良の形態を以下に示す。
【実施例1】
【0037】
1. 構成
1.1. 全体構成
本発明に係る補助推進力生成機能付き履物の実施例1である運動靴1を図1に基づいて説明する。図1Aは、運動靴1の外観図を示したものである。また、図1Bは、図1Aにおける面H1での運動靴1の断面図を示したものである。
【0038】
図1Aに示すように、運動靴1は、被覆部11および靴底部13を有している。また、図1Bに示すように、靴底部13は、外形部131、緩衝部132、弾性板133、つま先側保持部135、かかと側保持部137、梃子の支点を形成する支点部材たる支点軸138、及び屈曲軸139を有している。
【0039】
被覆部11は、運動靴1を使用するユーザーの足を被覆する。靴底部13は、被覆部11の下に位置し、地面と接する。
【0040】
外形部131は、靴底部13の外形を形成する。弾性板133は、弾性を有している。従って弾性板133は、曲げによって、弾性に基づく力である復元力を蓄えることができる。また、外形部131は、弾性板133を収納するための開口部A131を有している。開口部A131から弾性板133の一部が露出する。この結果、弾性板133の一部は、靴底の一部を形成することになる。なお、弾性板133は、かかと側に形成される接着領域A133に接着されている。
【0041】
緩衝部132は、外形部131のかかと側の背面に設けられ、靴底部13のかかとに加わる圧力状態によって伸縮する。
【0042】
つま先側保持部135は、つま先側において、弾性板133との係合状態の形成・解放を行う。かかと側保持部137は、かかと側において弾性板133との係合状態の形成・解放を行う。なお、つま先側保持部135及びかかと側保持部137の構成・動作については後述する。
【0043】
支点軸138は、弾性板133の下側に位置するように外形部131に取り付けられている。
【0044】
屈曲軸139は、弾性板133の上側に位置するように外形部131に取り付けられている。
【0045】
1.2. かかと側保持部137の構成
図2を用いてかかと側保持部137を説明する。図2は、図1におけるH3平面での靴底部13の断面を、靴底の下側から見た状態を示したものである。
【0046】
かかと側保持部137は、移動棒1371、送り側ブロック1373及び受け側ブロック1377を有している。また、送り側ブロック1373は長孔1375を、受け側ブロック1377には短孔1379を、それぞれ有している。移動棒1371は、磁石により構成されている。長孔1375には、電磁石を形成する電磁石コイル1376が埋設されている。さらに、弾性板133の端部133Hが上方向に移動し、外形部131の天井部分と接触する所定の位置に接触センサー1370が設けられている。
【0047】
移動棒1371は、電磁石コイル1376により長孔1375内を矢印a21、a23方向に移動可能に構成されている。移動棒1371は、長孔1375を矢印a21方向へ移動し、最終的には、短孔1379に嵌合するように構成されている。なお、この移動棒1371の移動について後述する。
【0048】
このように、移動棒1371が短孔1379と嵌合している状態を、かかと側保持部137が閉じた状態という。かかと側保持部137が閉じた状態では、弾性板133のかかと側の端部133Hは、移動棒1371によって移動範囲が制限されるため、移動棒1371を超えるような移動はできない。つまり、弾性板133の端部133Hは、かかと側保持部137を通過することができない。
【0049】
移動棒1371が短孔1379と嵌合していない状態を、かかと側保持部137が開いた状態という。かかと側保持部137が開いた状態においては、移動棒1371による移動範囲の制限がないため、弾性板133の端部133Hは、かかと側保持部137を通過することができる。
【0050】
1.3. つま先側保持部135の構成
図3を用いてつま先側保持部135を説明する。図3は、図1におけるH3平面での、つま先側保持部135の断面を被覆部側から見た状態を示したものである。なお、図3には、外形部131の靴底を一部において溝状にえぐった断面、及びつま先の一部断面も合わせて示している。
【0051】
つま先側保持部135は、移動棒1351、固定部1352、送り側ブロック1353及び受け側ブロック1357を有している。送り側ブロック1353は長孔1355を、受け側ブロック1357は短孔1359を、それぞれ有している。移動棒1351は、磁石により構成されている。長孔1355には、電磁石を形成する電磁石コイル1356が埋設されている。さらに、外形部131のつま先には圧力センサー1350が設けられている。また、弾性板133が通過したか否かを検出するために、光センサー1354(発光部と受光部により構成されている)が、外形部131の開口部A131に面して設けられている。なお、移動棒1351の移動のメカニズムについては、後述する。
【0052】
固定部1352は、弾性板133のつま先側の端部133Tが靴底部側から被覆部側へ所定範囲以上、移動しないようにするストッパーとして設けられている。これにより、固定部1352は、弾性板133の端部133Tが固定部1352を超えて、被覆部側へ移動することを防止する。
【0053】
1.4. つま先側の移動棒1351の移動
まず、つま先側保持部135の移動棒1351の移動について説明する。移動棒1351の移動は、磁力による引力、反発力を利用して行う。この磁力を発生する構成の概略図を図4に示す。電磁石コイル1356は、切り換えスイッチS1、S2、電源E1、切換回路C1、つま先側圧力センサー1350及び光センサー1354と接続されている。切換回路C1は、外形部131のつま先に設けられているつま先側圧力センサー1350が検知する圧力値及び光センサー1354からの信号に基づいて、切り換えスイッチS1、S2の切り換えを行う。切り換えスイッチS1、S2は連動して動作するように構成されており、切り換えスイッチS1がマイナス(−)方向に切り換えられれば、切り換えスイッチS2はプラス(+)方向へ切り換えられる。このように、切り換えスイッチS1、S2を連動して切り換えるようにすることによって、電磁石コイル1356の端部のS極、N極を切り換えることができる。
【0054】
なお、電源E1はボタン電池により構成されてる。切り換えスイッチS1、S2、電源E1、切換回路C1は、外形部の所定の位置(例えば、固定部1352の上方)に設置されている。
【0055】
つま先側保持部135に設けられている移動棒1351の移動は、圧力センサー1350の圧力値及び光センサー1354に基づいて計数されるつま先側カウンタ値の状態によって決定される。切換回路C1には、圧力センサー1350の圧力値に関する所定のしきい値が設定されている。このしきい値は、人間が歩行する際につま先にかかる圧力から計算された値である。しきい値については、予め設定しておいてもよく、また、ユーザーに合わせて、使用の都度、設定するようにしてもよい。切換回路C1は、圧力センサー1350の圧力値に関して、しきい値以上であるか否かの二つの状態を判断する。
【0056】
また、切換回路C1は、光センサー1354から発せされた信号を計数する。光センサー1354は、弾性板133が光センサー1354を通過する毎に信号を発生する。なお、歩行前における弾性板133の端部133Tがつま先側の移動棒1351と係合している状態(つまり図3の状態)での切換回路C1のつま先側カウンタ値を「0」と設定している。弾性板133の端部133Tがつま先側の移動棒1351と係合している状態から、弾性板133と移動棒1351との係合が解放され、弾性板133が下方向へ移動すると、光センサー1354を通過することになり、光センサー1354は信号を発生する。切換回路C1は、光センサー1354からの信号を検知し、つま先側カウンタ値を「1」とする。そして、弾性板133は、上方向へ戻ってくるときに、再度、光センサー1354を通過し、この時に光センサー1354は信号を発生する。切換回路C1は、この信号を検知し、つま先側カウンタ値を「0」とする。つまり、弾性板133が光センサ1354を下方向へ通過する時には、切換回路C1のつま先側カウンタ値は「1」となり、光センサ1354を上方向へ通過する際にはつま先側カウンタ値は「0」となる。本実施形態においては、つま先側カウンタ値は「0」か「1」の2つの状態を有する。カウンター値が「0」の場合は、弾性板133の端部133Tは、移動棒1351より上側にあることを意味し、カウンター値が「1」の場合は、弾性板133の端部133Tが移動棒1351より下側にあることを意味する。つまり、カウンター値によって、弾性板133の端部133Tと移動棒1351との間の相対的な位置関係を検出している。
【0057】
本実施形態においては、圧力センサー1350の圧力値について2つの状態(圧力値がしきい値以上であるか否か)、つま先側カウンタ値について2つの状態(「0」であるか「1」であるか)を有しており、これらの組合せによって、つま先側保持部の開閉状態が決定される。図5に圧力値及びつま先側カウンタ値の状態とつま先側保持部の開閉状態を示す。本実施形態においては、つま先側圧力センサー1350が所定のしきい値以上の圧力値を検知した場合には、切換回路C1は、移動棒1351と電磁石コイル1356との間に引力が発生するように切り換えスイッチS1、S2を切り換える。これにより、つま先側保持部135を開いた状態とすることができる。なお、圧力センサー1350の圧力値がしきい値以上となった場合には、切換回路C1は、光センサー1354に基づくつま先側カウンタ値を問題としない。
【0058】
一方、つま先側圧力センサー1350がしきい値未満となる場合は、つま先側カウンタ値の状態によって、移動棒1351の状態が決定される。つま先側カウンタ値が「1」の場合には、切換回路C1は、移動棒1351と電磁石コイル1356との間に引力が発生するように切り換えスイッチS1、S2を設定する。これにより、つま先側保持部135は開いた状態となる。つま先側カウンタ値が「0」の場合には、切換回路C1は、移動棒1351と電磁石コイル1356との間に反発力が発生するように切り換えスイッチS1、S2を設定する。これにより、つま先側保持部135を閉じた状態とすることができる。
【0059】
1.5. かかと側の移動棒1371の移動
次に、かかと側保持部137の移動棒1371の移動について説明する。移動棒1371の移動も、移動棒1351の移動と同様に、磁力による引力、反発力を利用して行う。この磁力を発生する構成の概略図を図4に示す。電磁石コイル1376は、切り換えスイッチS3、S4、電源E2、切換回路C2、および接触センサー1370が接続されている。切り換えスイッチS3、S4の動作については、つま先側の切り換えスイッチS1、S2と同様である。なお、本実施形態においては、電源E2はボタン電池により構成されており、外形部の所定の位置(例えば、送り側ブロック1373内)に設置されている。
【0060】
接触センサー1370は、弾性板133の接触を検知する毎に接触信号を発生する。かかと側保持部137が開いた状態において、切換回路C2は、接触信号を受信すると、かかと側保持部137を閉じた状態とする。つまり、切換回路C2は、移動棒1371と電磁石コイル1376との間に反発力が発生するように、切り換えスイッチS3、S4を切り換える。
【0061】
一方、かかと側保持部137が閉じた状態において、切換回路C2は、接触信号を受信すると、かかと側保持部137を開いた状態とする。つまり、切換回路C2は、移動棒1371と電磁石コイル1376との間に引力が発生するように、切り換えスイッチS3、S4を切り換える。
【0062】
2. 補助推進力生成メカニズムの概要
本実施形態における補助推進力の生成メカニズムについて、図6、7を用いて説明する。
【0063】
図6Aは、運動靴1の初期状態を示している。初期状態とは、ユーザーが当該運動靴を使用して、歩行等を開始する前の状態をいう。初期状態においては、運動靴1の靴底面には圧力はかかっていない。このとき、圧力センサー1350の圧力値は予め設定されたしきい値未満であり、また、つま先側カウンタ値は「0」である。初期状態においては、つま先側保持部135は閉じた状態であり、かかと側保持部137は開いた状態である。また、弾性板133の端部133Tは、つま先側の移動棒1351と係合している。
【0064】
ユーザーが運動靴1を使用して歩行し始め、外形部131のかかとが地面と接し、かかとに圧力がかかった状態を図6Bに示す。ユーザーが地面に対してかかとを踏み込むことによって、緩衝部132が圧縮される。このとき、かかと側保持部137は開いた状態であるので、弾性板133の端部133Hは、上側に移動し、かかと側保持部137を通過する。そして、弾性板133の端部133Hは、最終的には接触センサー1370に接触する。
【0065】
弾性板133が接触センサー1370に接触すると、当該接触センサー1370は接触信号を発生する。接触信号を受信した切換回路C2(図示せず)は、かかと側保持部137を閉じた状態とする。これにより、弾性板133の端部133Hは、移動棒1371と係合することになる。つまり、弾性板133の端部133Hは下方向への移動が抑制され、結果、当該弾性板133は所定の位置に固定される。
【0066】
このように、弾性板133の端部133Hが移動棒1371と係合し、また、弾性板133の中間部分は屈曲軸139によって上側への動きが制限されていることから、弾性板133はU字状に変形する。つまり、弾性板133には、U字状の曲げ変形による復元力が蓄積されている。
【0067】
ユーザーが歩行動作を続けると、圧力がかかる靴底部13の位置は、かかと部分から方向に徐々に移動していく。その時のつま先に圧力がかかる前の運動靴1の状態を図6Cに示す。弾性板133の端部133Tはつま先側保持部135と、弾性板133の端部133Hはかかと側保持部137と、それぞれ係合を維持したままである。なお、弾性板133の端部133Hがかかと側保持部137と係合したままであるので、緩衝部132は圧縮されたままである。
【0068】
さらに、ユーザーが歩行動作を続けると、圧力がかかる位置はつま先に移動する。その時の運動靴1の状態を図7Aに示す。この時、つま先部に配置されているつま先側圧力センサー1350が圧力を検知する。圧力が所定のしきい値以上になると、つま先側保持部135を開いた状態とする。これにより、弾性板133の端部133Tとつま先側保持部135との係合が解放され、弾性板133は蓄えていた復元力を放出する。この復元力の放出により、弾性板133の端部133Tは、下方向(矢印a61方向)へ移動し、地面を叩打する。
【0069】
本実施形態では、弾性板133の端部133Tによる地面の叩打とユーザーが地面をける動作との相乗効果によって、歩行の際における前方への推進力が生成される。
【0070】
ユーザーが地面を蹴り終えると、運動靴1は空中を移動することになる。この時の状態を示したものが図7Bである。弾性板133には、当該弾性板133が接した支点軸138を中心とする回転力が働く。つまり、弾性板133の端部133Tには矢印a63方向の回転力が働き、弾性板133の端部133Hには矢印a65方向の回転力が働く。これにより、弾性板133の端部133Hは、上方へ移動し、接触センサー1370に当たる。
【0071】
弾性板133の端部133Hが接触センサー1370に当たると、当該接触センサー1370は接触信号を発生する。これまでかかと側保持部137は閉じた状態であったので、接触信号を受信した切換回路C2(図示せず)は、かかと側保持部137を開いた状態とする。弾性板133の端部133Hは、接触センサー1370に当たった反動と圧縮されていた緩衝部132の復元力により矢印a67方向へ移動する。かかと側保持部137は開いた状態となっていることから、弾性板133の端部133Hは、かかと側保持部137を通過し、初期状態時の位置へ戻る(図6A参照)。
【0072】
また、弾性板133の端部133Hが矢印a67方向へ移動することから、弾性板133の端部133Tは支点軸138を中心として同方向に回転、つまり矢印a69方向へ移動する。つま先側保持部135は開いた状態であるので、弾性板133の端部133Tは、つま先側保持部135を通過することができる。これにより、弾性板133の端部133Tは初期状態時の位置へ戻る(図6A参照)。
【0073】
なお、弾性板133の端部133Tはつま先側保持部135を通過する際に光センサー1354が信号を発し、つま先側カウンタ値は「0」となる。このとき、圧力センサー1350の圧力値がしきい値以下であり、また、カウンタ値が「0」となることから、つま先側保持部135は閉じた状態となる。弾性板133の端部133Tは、つま先側保持部135の移動棒1351と係合した状態となる。
【0074】
これにより、つま先側保持部135は閉じた状態、かかと側保持部137は開いた状態、さらに、弾性板133の端部133Tがつま先側の移動棒1351と係合している状態となり、運動靴1は、初期状態に戻ることになる。この一連の動作を繰り返すことによって、歩行の際の補助推進力を連続的に生成していく。
【0075】
このように、運動靴1は、かかとが着地する際に弾性板133に蓄積した復元力を、つま先が地面を蹴る動作に合わせて放出することによって、補助推進力を生成するものである。
【実施例2】
【0076】
1. 構成
1.1. 全体構成
本発明に係る補助推進力生成機能付き履物の実施例2である運動靴2を図8に基づいて説明する。図8は、図1Aにおける面H1での運動靴2の断面図を示したものである。
【0077】
図8に示すように、運動靴2は、被覆部11および靴底部23を有している。靴底部23は、外形部131、緩衝部132、弾性板133、つま先側保持部235、かかと側保持部237、支点軸138、及び屈曲軸139を有している。本実施形態においては、つま先側保持部235及びかかと側保持部237の構成が、実施例1とは相違する。その他の構成については、実施例1と同様である。以下においては、相違点を中心に説明する。
【0078】
1.2. かかと側保持部237の構成
図9を用いてかかと側保持部237を説明する。図9は、図1AにおけるH3平面での靴底部23のかかと側の断面を、靴底の下側から見た状態を示したものである。
【0079】
かかと側保持部237は、上側保持板2371及び下側保持板2373を有している。上側保持板2371及び下側保持板2373は、外形部131の背面部131Bに固定されている。これにより、上側保持板2371及び下側保持板2373は片持ち梁として機能する。また、上側保持板2371及び下側保持板2373は、弾性に基づく復元力を蓄積する性質を有する。
【0080】
上側保持板2371は、下側保持板2373より上側(被覆部側)に設けられている。上側保持板2371は、下側保持板2373より、運動靴2の縦方向(矢印a81方向)に長くなるように形成されている。また、図11に示すように、運動靴2が初期状態において、弾性板133の端部133Hと背面部131Bとの距離L2よりも、上側保持板2371の長さL1は長く、下側保持板2373の長さL3は短くなるように構成されている。このように上側保持板2371の下に下側保持板2373を設けることによって、上側保持板2371は上側に曲がりやすく、下側に曲がりにくくすることができる。
【0081】
なお、上側保持板2371と下側保持板2373とは、別個のものとして設けられており、それぞれ独立した動作が可能である。
【0082】
1.3. つま先側保持部235の構成
図10を用いてつま先側保持部235を説明する。図10は、図1AにおけるH1平面でのつま先側保持部235の断面を示したものである。
【0083】
つま先側保持部235は、つま先側係合部2351、押圧部2353を有している。つま先側係合部2351は、一端を外形部131と接続し、上方向への一方向のみ動作する蝶番構造を有している。この蝶番構造は、以下に示す特徴を有している。まず第一に、つま先側係合部2351は、弾性板133の端部133Tがつま先側係合部2351に対して下から上方向(矢印a73方向)へ移動する場合には抵抗とならない、という特徴を有している。第二に、つま先側係合部2351は、弾性板133の端部133Tがつま先側係合部2351に対して上から下方向(矢印a71方向)へ移動する場合には抵抗となる、という特徴を有している。すなわち、弾性板133の端部133Tの上から下方向へのスムーズな移動は阻止され、弾性板133の端部133Tとつま先側係合部2351とが係合することになる。第三に、弾性板133の端部133Tとつま先側係合部2351とが係合した状態で、さらに所定以上の押圧を受けた場合には、弾性板133の端部133Tが、つま先側係合部2351を超えて矢印a73方向へ移動することができる程度の柔軟さを有している。ここで所定の圧力は、押圧部2353によって加えられるものであり、人が歩行の際につま先で地面をける過程で発生する押圧である。
【0084】
押圧部2353は、外形部131のつま先において、下方向(矢印a71方向)へ突出する凸状形状を有している。押圧部2353は、上側から矢印a91方向への圧力を受け、弾性板133の端部133Tを押圧し、弾性板133の端部133Tとつま先側係合部2351との係合を解放する。
【0085】
2. 補助推進力生成メカニズムの概要
本実施形態における補助推進力の生成のメカニズムは、基本原理において、実施例1と同様である。つまり、当該メカニズムは、かかとが着地する際に弾性板133に蓄積した復元力を、つま先が地面を蹴る動作に合わせて放出することによって、補助推進力を生成するものである。
【0086】
ただし、本実施形態におけるつま先側保持部235及びかかと側保持部237の構成は実施例1と異なる。よって、本実施形態と実施例1とでは弾性板133の端部133T、弾性板133の端部133Hとつま先側保持部235、かかと側保持部237との係合の実現方法が異なる。以下において、この異なる点を説明する。
【0087】
2.1. 初期状態
弾性板133の端部133T、弾性板133の端部133Hとつま先側保持部235、かかと側保持部237との係合の実現方法を説明する前に、運動靴2の初期状態を図11を用いて説明する。
【0088】
初期状態においては、運動靴2の靴底面には圧力はかかっていない。このとき、弾性板133、上側保持版2371及び下側保持版2373はほぼまっすぐな状態に保持される。また、弾性板133の端部133Tは、つま先側係合部2351の上側にあり、つま先側係合部2351と係合している。弾性板133の端部133Hは、下側保持板2373より下側に位置し、つま先側係合部2351と係合していない。
【0089】
2.2. かかと側の端部133Hとかかと側保持部237との係合形成
弾性板133の端部133Hとかかと側保持部237とが係合するメカニズムを図12A〜Dを用いて説明する。なお、図12A〜Dにおいては、簡単のため靴底部23のつま先側および支点軸138の記載は省略している。
【0090】
図12Aに示すように、ユーザーが地面に対してかかとを踏む込むことによって、緩衝部132が圧縮される。このとき、弾性板133の端部133Hは、上側に移動する。そして、弾性板133の端部133Hは上側保持板2371の端部2371Tを押し上げる。この時、上側保持板2371と下側保持板2373との長さの関係から、弾性板133の端部133Hは下側保持板2373と接することはない。
【0091】
弾性板133は、矢印a101方向の圧力によって撓み、上側保持板2371は弾性板133によって撓まされる。両者のたわみが進むと、端部133Hと端部2371Tとの重なり距離が減少する。端部133Hと端部2371Tとの接点がなくなるまで両者が撓むと(図12B参照)、弾性板133は上側保持板2371より上側に位置する(図12C参照)。一方、上側保持板2371の端部2371Tは、弾性板133の端部133Hによる下からの押し上げがなくなるため、元の位置に戻る。
【0092】
ユーザーが歩行を続け、かかとにかかっていた圧力がつま先側に移動し始めた状態を図12Dに示す。この時、弾性板133の端部133Hが下側へ移動しようとする力を上側保持板2371と下側保持板2373とが受け止めている。
【0093】
このように、弾性板133の端部133Hが上側に移動する際には、弾性板133の端部133Hは上側保持板2371のみを押し上げればよい。一方、弾性板133の端部133Hが下側に戻ろうとする際には、弾性板133の端部133Hは上側保持板2371及び下側保持板2373を押し下げる必要があり、弾性板133の端部133Hが下側に戻ろうとする力より、上側保持板2371と下側保持板2373との受け止める力を大きくすることにより、かかと側保持部237と弾性板133の端部133Hとの係合を形成できる構成となっている。
【0094】
2.3. 弾性板133の端部133Tとつま先側保持部235との係合解放
弾性板133の端部133Tとつま先側保持部235との係合が解放されるメカニズムを図13を用いて説明する。ユーザーが歩行の際に地面を蹴る直前の運動靴2の状態を図13Aに示す。ユーザーがつま先部分で地面を蹴る過程で、つま先に対して矢印a112方向から大きい押圧がかかる。この押圧により、押圧部2353が、弾性板133の端部133Tを押し下げる。これにより、弾性板133の端部133Tとつま先側係合部2351との係合が解放され、弾性板133は蓄えていた復元力を放出する。この復元力の放出により、弾性板133の端部133Tは、下方向(矢印a111方向)へ移動し、地面を叩打する。
【0095】
そして、ユーザーが地面を蹴り終えた直後の運動靴2の状態を図13Bに示す。押圧部2353からの押圧によって係合が解放された弾性板133の端部133Tは、下方向(矢印a112方向)へ移動する。
【0096】
本実施形態では、弾性板133の端部133Tによる地面の叩打とユーザーが地面をける動作との相乗効果によって、歩行の際の前方への推進力が生成される。
【0097】
2.4. 初期状態の回復
弾性板133の端部133Tとつま先側保持部235との係合が解放され、運動靴2が空中を移動し始めた状態を図14Aに示す。弾性板133には、当該弾性板133が接した支点軸138を中心とする回転力が働く。弾性板133の端部133Tには矢印a113方向の回転力が働き、弾性板133の端部133Hには矢印a115方向の回転力が働く。これにより、弾性板133の端部133Hは、上方へ移動する。そして、弾性板133は、復元力を全て放出すると真っ直ぐな状態となる。また、弾性板133の端部133Hによって上側保持板2371と下側保持板2373とに加わっていた圧力がなくなり、上側保持板2371と下側保持板2371との復元力により、上側保持板2371と弾性板133の端部133Hとが、跳ね上がる。その状態を図14Bに示す。弾性板133は、支点軸138を中心として矢印a115方向へ回転する。また、上側保持板2371の端部2371Tは、矢印a135方向へ移動する。
【0098】
弾性板133の端部133Hは、靴底の上部に衝突し、衝突した反動と圧縮されていた緩衝部132の復元力によって矢印a116方向へ移動する。弾性板133の端部133Hは、上側保持板2371の端部2371Tが自らのもとの位置に戻るより早く、上側保持板2371の端部2371Tのもとの位置を通過する。なお、これまでの上側保持板2371および弾性板113の動きは、上側保持板2371及び下側保持板2373の弾性の大きさ等を調整することによって実現することができる。弾性板133の端部133Hが上側保持板2371の端部2371Tより早く、上側保持板2371の初期状態の位置を通過した状態を図15Aに示す。このように弾性板133の端部133Hが上側保持板2371の初期状態の位置を通過した後に、上側保持板2371の端部2371Tは、矢印a136方向へ移動する。
【0099】
弾性板133の端部133Tは、弾性板133の端部133Hが支点軸138を中心に矢印a116方向へ回転するのと同一方向の回転、つまり矢印a114方向へ回転し、上方へ移動する。そして、弾性板133の端部133Tがつま先側係合部2351と接触する。弾性板133の端部133Tがつま先側係合部2351に接触し、つま先側係合部2351を押し上げている状態を図15Bに示す。つま先側係合部2351を形成する蝶番構造は前述のように下側からの物体の移動に対しては抵抗となることはなく、つま先側係合部2351は、矢印a151方向へ移動する。弾性板133の端部133Tは、つま先側係合部2351を超えて矢印a114方向へ移動する。
【0100】
弾性板133の端部133Tがつま先側係合部2351を完全に超えた状態を図16Aに示す。つま先側係合部2351は、弾性板133の端部133Tが通過した後には下から押し上げる力がなくなるので、矢印a152方向へ移動する。一方、弾性板133の端部133Tは、つま先側係合部2351を超えた後、今度は初期状態に落ち着くべく矢印a117方向へ移動する。最終的に、弾性板133の端部133Tは、初期状態の位置に落ち着いた状態を図16Bに示す。
【0101】
これにより、運動靴2は、初期状態に戻ることになる。この一連の動作を繰り返すことによって、歩行の際の補助推進力を連続的に生成していく。
【0102】
このように、運動靴2は、かかとが着地する際に弾性板133に蓄積した復元力を、つま先が地面を蹴る動作に合わせて放出することによって、補助推進力を生成するものである。
【実施例3】
【0103】
前述の実施例2は、片持ち梁である上側保持板2371に対して下側に下側保持板2373を設けることによって、かかと側保持部237と弾性板133との係合の形成・解放を行うものである。本実施形態は、前述の実施例2における係合形成・解放と同じ原理を利用して補助推進力を生成するものであるが、かかと側保持部237の構成が異なる。
【0104】
1. 構成
1.1. 全体構成
本発明に係る補助推進力生成機能付き履物の実施例3である運動靴3を図17に基づいて説明する。図17は、図1Aにおける面H1での運動靴2の断面図を示したものである。
【0105】
図17に示すように、運動靴3は、被覆部11および靴底部33を有している。靴底部33は、外形部131、緩衝部132、弾性板133、つま先側保持部235、かかと側保持部337、支点軸138及び屈曲軸139を有している。本実施形態においては、かかと側保持部337の構成が、実施例2とは相違する。その他の構成については、実施例2と同様である。以下においては、相違点を中心に説明する。
【0106】
1.2. かかと側保持部237の構成
図18を用いてかかと側保持部337を説明する。図18は、図1AにおけるH3平面でのかかと部23の断面を、靴底の下側から見た状態を示したものである。
【0107】
かかと側保持部337は、保持板3371及び保持棒3373を有している。保持板3371は、弾性に基づく復元力を蓄積できるものである。保持板3371の端部は、外形部131の背面部131Bに固定されている。保持棒3373は、外形部131を横断するように設けられており、かつ、保持板3371の下面P151に接するように設けられている。このように保持板3371の下に保持棒3373を設けることによって、保持板3371は上側に曲がりやすく、下側に曲がりにくくすることができる。
【実施例4】
【0108】
前述の第2、3の実施形態における運動靴2、3では、初期状態を回復するために上側保持板2371若しくは保持板3371を弾性板133より早く落下させることが必要である。従って、前述の第2、3の実施形態においては、上側保持板2371、下側保持板2373若しくは保持板3371の弾性等によって、初期状態の回復を可能とした。一方、本実施形態においては、強制的に弾性板133の落下開始時を早くさせることによって初期状態の回復を可能とするものである。
【0109】
1. 構成
1.1. 全体構成
本発明に係る補助推進力生成機能付き履物の実施例4である運動靴4を図19に基づいて説明する。図19は、図1Aにおける面H1での運動靴4の断面図を示したものである。
【0110】
図19に示すように、運動靴4は、被覆部11および靴底部43を有している。靴底部43は、外形部131、緩衝部132、弾性板133、つま先側保持部235、かかと側保持部437、支点軸138及び屈曲軸139を有している。本実施形態においては、かかと側保持部437の構成が、実施例2とは相違する。その他の構成については、実施例2と同様である。以下においては、相違点を中心に説明する。
【0111】
1.2. かかと側保持部437の構成
図20を用いてかかと側保持部437を説明する。図20は、図1AにおけるH3平面での靴底部43の断面を、靴底の下側から見た状態を示したものである。
【0112】
かかと側保持部437は、保持板4371及び移動制限棒4373を有している。保持板4371は、外形部131の背面部131Bに設けられている。移動制限棒4373は、外形部131を横断するように設けられている。移動制限棒4373を配置する位置によって、弾性板133の落下開始時を調整することができる
2. 補助推進力生成メカニズムの概要
本実施形態における補助推進力の生成のメカニズムは、基本原理において、実施例2と同様である。ただし、本実施形態におけるかかと側保持部437の構成は、実施例2におけるそれらと相違するため、弾性板133の端部133Hとかかと側保持部437との係合の形成及び解放の実現方法が異なる。以下において、この異なる点を説明する。
【0113】
弾性板133の端部133Tとつま先側保持部235との係合が解放され、運動靴2が空中を移動し始めた状態(図14A参照)における靴底部43のかかと側の断面を図21Aに示す。弾性板133には、当該弾性板133が接した支点軸138を中心とする回転力が働く。弾性板133の端部133T(図示せず)には矢印a413方向の回転力が働き、弾性板133の端部133Hには矢印a415方向の回転力が働く。これにより、弾性板133の端部133Hは、上方へ移動する。そして、弾性板133は、復元力を全て放出すると真っ直ぐな状態となる。また、弾性板133の端部133Hによって保持板4371に加わっていた圧力が解放され、保持板4371の復元力は弾性板133の端部133Hを跳ね上げる力としても働く。
【0114】
次に、弾性板133の端部133Hが、移動制限棒4373に衝突した状態を図21Bに示す。弾性板133の端部133Hは、移動制限棒4373に衝突した反動と圧縮されていた緩衝部132の復元力によって矢印a416方向へ回転し始める。弾性板133の端部133Hは、保持板4371の端部4371Tがもとの位置に戻るより早く、その位置を通過する。なお、弾性板133の端部133Hが保持板4371の端部4371Tのもとの位置を通過するタイミングは、保持板4371と移動制限棒4373との位置関係等を調整することによって実現することができる。
【0115】
弾性板133の端部133Hが保持板4371の端部4371Tより早く、保持板4371の初期状態の位置を通過した状態を図21Cに示す。このように、弾性板133の端部133Hが保持板4371の初期状態の位置を通過した後に、保持板4371の端部4371Tは、矢印a436方向へ移動する。これにより、図21Dに示すように、かかと側保持部437は、初期状態に戻ることができる。
【0116】
一方、弾性板133の端部133Tとつま先側係合部235との係合の形成については、実施例2と同様である。
【0117】
これにより、運動靴4は、初期状態に戻ることになる。この一連の動作を繰り返すことによって、歩行の際の補助推進力を連続的に生成していく。
【0118】
このように、運動靴4は、かかとが着地する際に弾性板133に蓄積した復元力を、つま先が地面を蹴る動作に合わせて放出することによって、補助推進力を生成するものである。
【実施例5】
【0119】
1. 構成
1.1. 全体構成
本発明に係る補助推進力生成機能付き履物の実施例5である運動靴8を図22に基づいて説明する。図22は運動靴8の縦断面図である。
【0120】
図22に示すように、運動靴8は、被覆部81および靴底部83を有している。靴底部83は、外形部831、弾性蓄積補助部材たるかかと側押上部832、弾性板833、つま先側保持部835、かかと側保持部837、屈曲軸838、支点軸839を有している。また、靴底部83は、反発板841、弾性板833の移動を制限する移動制限部材たるガイドレール843、及び固定磁石845を有している。
【0121】
本実施形態における実施例1との主な相違点は、つま先側保持部835及びかかと側保持部837の構成である。なお、図22〜図27においては、各構成要素は実際の大きさとは異なって示している。これは、各構成要素の動作をより解りやすいように説明するためである。
【0122】
1.2. かかと側保持部837の構成
かかと側保持部837は、かかと側ストッパー8371、弾性板833とかかと側凸状部材との係合解放を助ける解放補助部材たるバネ8373、及びかかと側凸状部材の移動領域となるかかと側移動領域部材たる移動溝8375を有している。かかと側ストッパー8371は、本体部8371Bと突出部8371Sとを有している。本体部8371Bは、移動溝8375の内部を矢印a801方向へ移動することができる。突出部8371Sは、移動溝8375から靴底部83の内部空間83Aへ突出するように構成されている。
【0123】
バネ8373は、移動溝8375の最下部に納められている。かかと側ストッパー8371に重力以外の外力がかかっていない場合では、バネ8373は前述の最下部に位置する状態でかかと側ストッパー8371と接する。このとき、バネ8373はかかと側ストッパー8371の自重のみを受けている。
【0124】
移動溝8375は、外形部831の内部に設けられている。また、移動溝8375は、地面に対して垂直に設けられるのではなく、上部において後方に傾くように斜めに設けられている。
【0125】
1.3. つま先側保持部835の構成
つま先側保持部835は、つま先側ストッパー8351及びつま先側凸状部材の移動領域となるつま先側移動領域部材たる移動溝8355を有している。つま先側ストッパー8351は、本体部8351Bと突出部8351Sとを有している。本体部8351Bは、移動溝8375の内部を矢印a803方向へ移動することができる。突出部8351Sは、移動溝8355から靴底部83の内部空間83Aへ突出するように構成されている。
【0126】
移動溝8355は、外形部831の内部に設けられている。また、移動溝8355は、地面に対して垂直に設けられるのではなく、上部において前方に傾くように斜めに設けられている。これにより、つま先側ストッパー8351に自重以外の外力が生じていない場合には、当該つま先側ストッパー8351は、自重により移動溝8355の最下部に位置することになる。
【0127】
1.4. その他の特徴的構成
外形部831のつま先には、つま先上がりとなる傾斜面P8(以下、つま先面P8とする。)が形成されている。また、弾性板833の端部833H付近にガイドレール用孔H1が形成されている。このガイドレール用孔H1には、ガイドレールが通される。従って、弾性板833の端部833Hは、ガイドレール843に沿った動きのみが可能である。
【0128】
2. 補助推進力生成メカニズムの概要
本実施形態における補助推進力の生成のメカニズムは、基本原理において、実施例1と同様である。つまり、弾性板833の端部833T、833Hが保持された状態から、弾性板833の端部833Tを解放し、弾性板833に蓄積された復元力を放出することによって、歩行の際の補助的な推進力を生成しようとするものである。
【0129】
ただし、本実施形態におけるつま先側保持部835及びかかと側保持部837の構成は、実施例1におけるそれらと相違するため、弾性板833の端部833T、833Hとつま先側保持部835、かかと側保持部837との係合の実現方法が異なる。以下において、この異なる点を説明する。
【0130】
2.1. 初期状態
図22は、運動靴8の初期状態を示したものである。初期状態において、弾性板833は、真っ直ぐの状態、つまりエネルギーは蓄積されていない状態である。また、弾性板833の端部833Hは、かかと側ストッパー8371の突出部8371Sより下に位置し、かかと側ストッパー8371の突出部8371Sと係合していない。また、弾性板833の端部833Tは、つま先側ストッパー8351の突出部8351Sより上に位置し、つま先側ストッパー8351の突出部8351Sと係合している。
【0131】
なお、弾性板833の端部833Hには金属片が設けられている(図示せず)。これにより、弾性板833は、初期状態において、固定磁石845に固定される。
【0132】
2.2. 弾性板833の端部833Hとかかと側保持部837との係合及び弾性板833の端部833Tとつま先側保持部835との係合形成
弾性板833の端部833Hとかかと側保持部837とが係合するメカニズムを図23〜27を用いて説明する。
【0133】
ユーザーの歩行動作により運動靴8のかかとが接地した状態を図23Aに示す。運動靴8のかかとが接地すると、かかと側押上部832が矢印a805方向へ押し込まれる。この結果、弾性板833の端部833Hが矢印a805方向へ押し上げられ、弾性板833が屈曲軸838と接する。弾性板833の端部833Tは、矢印a807方向へ押し下げられるが、つま先側ストッパー8351の突出部8351Sが障害となり下方向への移動ができない(弾性板833が点線の位置に移動する)。つまり、弾性板833の端部833Tとつま先側保持部835との係合した状態である。
【0134】
さらに、かかと側押上部832により弾性板833の端部833Hが押し上げられた状態を図23Bに示す。弾性板833の端部833Hも矢印a808方向へ押し上げられる。弾性板833の端部833Hは、かかと側ストッパー8371の突出部8371Sと接っし、そして、突出部8371Sを矢印a809方向へ押し上げる。このとき、弾性板833の端部833Hの最先端部は、ガイドレール843に沿う軌跡を描きながら移動する(図23B:点線C1参照)。一方、かかと側ストッパー8371は、移動溝8375に沿って移動する(図23B:一点鎖線C3参照)。
【0135】
図23Bの状態から、さらに、かかと側押上部832により弾性板833の端部833Hが押し込まれた状態を図24Aに示す。弾性板833の端部833Hと突出部8371Sとは、弾性板833の端部833Hの最先端部の軌跡(点線C1)と突出部8371Sの軌跡(一点鎖線C3)との交点Xを境として、互いに接することがなくなる。この状態では、突出部8371Sは、弾性板833の端部833Hによる下からの支えを失うため、矢印a811方向へ移動(自然落下)する。一方、弾性板833の端部833Hは、かかと側押上部832による押上により、さらに矢印a813方向へ移動する。
【0136】
弾性板833の端部833Hが最も押し上げられた状態を図24Bに示す。この状態では、弾性板833の端部833Hは、かかと側ストッパー8371より上に位置している。
【0137】
図24Bの状態から歩行動作を続け、運動靴8のかかと部分が地面から離れ始めた状態を図25Aに示す。弾性板833の端部833Hは、ガイドレール843に沿う軌跡(点線C1)に従って矢印a815方向へ移動する。そして、弾性板833の端部833Hは、かかと側ストッパー8371の突出部8371Sと接する。弾性板833には復元力が蓄えられていることから、弾性板833の端部833Hは、突出部8371Sを矢印a817方向へ押圧し、弾性板833の端部833Hと突出部8371Sとが係合する。この結果、バネ8373が圧縮され、かかと側ストッパー8371はバネ8373が圧縮された分だけ矢印a817方向へ移動する。
【0138】
2.3. 弾性板833の端部833Tとつま先側保持部835との係合解放
さらに、歩行を続けて、靴底部83のつま先面P8が地面と接した状態を図25Bに示す。図25Aの状態から歩行を続け、つま先側ストッパー8351の本体部8351Bが地面と接すると、つま先側ストッパー8351は、矢印a819方向へ押し込まれる。つま先側ストッパー8351の矢印a819方向への移動にともなって、弾性板833の端部833Tも矢印a821方向へ移動する。
【0139】
つま先側ストッパー8351が押し込まれることによって、つま先側ストッパー8351の端部8351Sの移動は前方斜め上方向の軌跡をたどり、一方、弾性板833の端部833Tの移動は屈曲軸838を中心とした円の軌跡をたどる。このため、つま先側ストッパー8351が押し込まれている途中でつま先側ストッパー8351の端部8351Sと弾性板833の端部833Tとの接点がなくなり、つま先側ストッパー8351と弾性板833の端部833Tとの係合が解放され、弾性板833の復元力が放出される。弾性板833の端部833Tは、矢印a823方向へ移動し、地面を叩打する。この地面の叩打により、歩行の際の補助的推進力が生成される。
【0140】
2.4. 初期状態の回復
つま先面P8が地面から離れる直前の状態を図26Aに示す。弾性板833が復元する過程において、弾性板833の端部833Tには支点軸839を中心とした矢印a824方向への回転力が働き、弾性板833の端部833Hは、支点軸839を中心とした同方向へ回転、つまり矢印a827方向へ移動する。また、弾性板833の回転にともない、弾性板833の端部833Hによるかかと側ストッパー8371の突出部8371Sに対する押圧力が消失する。押圧力がなくなると、圧縮されたばね8373の復元力によりかかと側ストッパー8371を矢印a825方向へ跳ね飛ばす。弾性板833の端部833Hは、弾性板833の回転力とばね8373の復元力によって、外形部831に設けられている反発板841に衝突する。
【0141】
弾性板833の端部833Hが反発板841に衝突した後の状態を図26Bに示す。反発板841に衝突した弾性板833の端部833Hは、矢印a829方向へ跳ね返り、一方、かかと側ストッパー8371は、移動溝8375内を所定の位置まで上昇した後、矢印a831方向へ下降する。なお、弾性板833の端部833Hは、かかと側ストッパー8371の突出部8371Sのもとの位置をかかと側ストッパー8371の突出部8371Sが戻ってくる前に通過する。なお、弾性板833の端部833Hがかかと側ストッパー8371の突出部8371Sのもとの位置を通過するタイミングは、ばね8373がかかと側ストッパー8371を跳ね上げる力や反発板841の位置等の調整により設定される。
【0142】
弾性板833の端部833Hは、ガイドレール845に沿って初期状態の位置に戻る。なお、固定磁石845が弾性板833の端部833Hを固定する。
【0143】
一方、弾性板833の端部833Hが矢印a829方向へ移動する過程で、支点軸839を中心とした回転力が働き、もう一方の弾性板833の端部833Tは矢印a833方向へ移動する。そして、弾性板833の端部833Tは、つま先側ストッパー8351の突出部8351Sを押し上げる。このため、つま先側ストッパー8351は、移動溝8355内を矢印a835方向へ移動する。つま先側ストッパー8351は移動溝8355内を移動し、つま先側ストッパー8351と弾性板833の端部833Tとの接点がなくなると、つま先側ストッパー8351に対する弾性板833の端部833Tによる下からの押し上げがなくなる。この状態を図27に示す。
【0144】
つま先側ストッパー8351の突出部8351Sは、弾性板833の端部833Tによる下からの支えを失うため、つま先側ストッパー8351は、矢印a837方向へ移動する。これにより、弾性板833の端部833Tとつま先側ストッパー8351との位置関係において、弾性板833の端部833Tはつま先側ストッパー8351より上側に位置し、初期状態に回復することができる。
【0145】
以上により、弾性板833の端部833Hは、かかと側ストッパー8371の突出部8371Sより下に位置した状態、また、弾性板833の端部833Tは、つま先側ストッパー8351より上に位置した状態とすることができる。つまり、運動靴8は初期状態を回復することができる。
【0146】
[その他の実施例]
前述の第1〜4の実施形態においては、履物として運動靴1〜4を例示した。しかし、履物であればこれに限定されない。例えば、被覆部が足を全面的に覆うものではないサンダルやパンプス等であってもよい。
【0147】
また、前述の第1〜4の実施形態においては、履物である運動靴1〜4に履物底である靴底部13〜43を適用したが、ロボットの足部に補助推進力生成装置として靴底部13〜43を利用してもよい。この場合、ロボットは、二足歩行型、四足歩行型等に限定されず、所定の方向への推進力で移動するものであればよい。
【0148】
さらに、前述の実施例4において、弾性板133と保持板4371との係合をより容易にするために、互いの端部に突起を設けるようにしてもよい。この突起を設けた状態を図28に示す。保持板4371の端部には突起4371dが設けられている。また、弾性板133の端部133Hにも突起133dが設けられている。両者が係合することによって、弾性板133と保持板4371との係合をより容易、かつ、確実に行うことができる。なお、この突起の形成は実施例4に限定されるものではなく、他の実施例において同様の突起を形成するようにしてもよい。
【0149】
さらに、実施例2における上側保持板2371及び下側保持板2373に代えて、保持板と蝶番とを設けるようにしてもよい。このように蝶番を設けた状態を図29に示す。蝶番5372は、背面131Bに設置され、保持板5372は蝶番に接合している。また、蝶番5372は、水平面から矢印a231方向へは自由に回転することができるが、矢印a233方向へは回転ができないように構成されている。つまり、保持板5371は、水平面から矢印a231方向へは容易に回転移動することができるが、矢印a233方向へは回転できない。これにより、弾性板133が上方向(矢印a235方向)へ移動する際において、保持板5371は矢印a231方向へは自由に回転することができるので、弾性板133の上方向(矢印a235方向)への移動に対しては、保持板5371は障害とならない。一方、弾性板133が下方向(矢印a237方向)へ移動する際には、保持板5371は下方向(矢印a233方向)へは回転することができないことから、弾性板133の下方向(a237方向)への移動に対しては、保持板5371が障害となる。これにより、かかと側保持部537と弾性板133との係合を形成できる。なお、本実施形態は、実施例4に限定されるものではなく、他の実施例においても同様に適用することができる。
【0150】
さらに、実施例2における上側保持板2371及び下側保持板2373を有するかかと保持部237に代えて、保持板、バネ及び上下方向に回転可能な蝶番とを有するかかと保持部を設けるようにしてもよい。このようなかかと保持部を設けた状態を図30Aに示す。蝶番6372は、外形部131の背面131Bに設けられている。保持板6371は、蝶番6372に取り付けられている。バネ6373は、保持板6371の下側であって、所定の位置に取り付けられている。なお、蝶番6372は、水平面から矢印a251方向及び矢印a253方向へ自由に回転することができる。これにより、弾性板133が上方向(矢印a255方向)へ移動する際において、蝶番6372は矢印a251方向へは自由に回転することができるので、弾性板133の上方向(矢印a255方向)への移動に対して、抵抗力は発生しない。一方、図30Bに示すように、弾性板133が下方向(矢印a257方向)へ移動する際には、バネ6373に支えられている保持板5371が障害となる。よって、弾性板133は、当該弾性板133が下方向へ移動しようとする力とバネ6373の圧縮による復元力とが釣り合った位置より下方向(矢印a253方向)へは回転することができない。これにより、かかと側保持部637と弾性板133との係合を容易に形成することができる。
【0151】
さらに、前述の第1〜4の実施形態においては、蓄積部として弾性板133を例示した。しかし、弾性力を有するものであればこれに限定されない。例えば、板バネ、ゴム板等であってもよい。また、板状体に限定されるものではなく、棒状体であってもよい。さらに、弾性板133の材質は、ゴム、カーボン等であってもよい。
【0152】
さらに、前述の第1〜4の実施形態及びその他の実施例において、各実施形態を組み合わせて利用するようにしてもよい。例えば実施例2に実施例3を組み合わせる等のようにしてもよい。
【0153】
さらに、前述の実施例1において、光センサー1354、接触センサー1370を用いて弾性板133の状態を特定したが、弾性板133の状態を特定できるものでればこれに限定されない。
【0154】
さらに、図1等において、弾性板133は靴底に対して、一方向に片寄って配置されているが、弾性板133の位置はこれに限定されない。例えば、靴底に対して、弾性板133を配置するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0155】
【図1】本発明における補助推進力生成機能付き履物の一実施形態である運動靴1を示す図であり、図1Aは運動靴1の全体図を、図1Bは図1Aの面Hにおける断面図を示したものである。
【図2】図1におけるかかと側保持部137を説明するための図である。
【図3】図1におけるつま先側保持部135を説明するための図である。
【図4】磁力発生のための構成を説明するための図である。
【図5】圧力センサー値及びカウンタ値の状態とつま先側保持部の状態との関係を示す図である。
【図6】実施例1における補助推進力の生成メカニズムを説明するための図である。
【図7】実施例1における補助推進力の生成メカニズムを説明するための図である。
【図8】本発明における補助推進力生成機能付き履物の一実施形態である運動靴2を示す図である。
【図9】図8におけるかかと側保持部237を説明するための図である。
【図10】図8におけるつま先側保持部235を説明するための図である。
【図11】図8におけるつま先側保持部235を説明するための図である。
【図12】実施例2における補助推進力の生成メカニズムを説明するための図である。
【図13】実施例2における補助推進力の生成メカニズムを説明するための図である。
【図14】実施例2における補助推進力の生成メカニズムを説明するための図である。
【図15】実施例2における補助推進力の生成メカニズムを説明するための図である。
【図16】実施例2における補助推進力の生成メカニズムを説明するための図である。
【図17】本発明における補助推進力生成機能付き履物の一実施形態である運動靴3を示す図である。
【図18】図17におけるかかと側保持部337の構成を説明するための図である。
【図19】本発明における補助推進力生成機能付き履物の一実施形態である運動靴4を示す図である。
【図20】図19におけるかかと側保持部437の構成を説明するための図である。
【図21】弾性板133の端部133Hと、かかと側保持部437との係合の解放について説明するための図である。
【図22】本発明における補助推進力生成機能付き履物の一実施形態である運動靴8の断面図である。
【図23】実施例5における補助推進力の生成メカニズムを説明するための図である。
【図24】実施例5における補助推進力の生成メカニズムを説明するための図である。
【図25】実施例5における補助推進力の生成メカニズムを説明するための図である。
【図26】実施例5における補助推進力の生成メカニズムを説明するための図である。
【図27】実施例5における補助推進力の生成メカニズムを説明するための図である。
【図28】他の実施例を説明するための図であり、弾性板133と保持板4371との係合をより容易にすべく、互いの端部に突起を設けた状態を示した図である。
【図29】他の実施例を説明するための図であり、蝶番を設けた状態を示した図である。
【図30】他の実施例を説明するための図であり、保持板、バネ及び上下方向に回転可能な蝶番とを設けた状態を示した図である。
【図31】従来の補助推進力生成機能付き履物を示した図である。
【符号の説明】
【0156】
1・・・・・運動靴
11・・・・・被覆部
13・・・・・靴底部
131・・・・・外形部
132・・・・・緩衝部
133・・・・・弾性板
135・・・・・つま先側保持部
137・・・・・かかと側保持部
138・・・・・支点軸
139・・・・・屈曲軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
足を覆う被覆部、
前記被覆部の下に位置し、地面と接する履物底部を有する補助推進力生成機能付き履物であって、
前記履物底部は、
蓄えられた力を解放することによって歩行の際の補助推進力を生成する蓄積部、
前記蓄積部との係合を形成し、及び、前記係合を解放をするつま先側係合部、
前記蓄積部との係合を形成し、及び、前記係合を解放をするつかかと側係合部、
を有し、
初期状態において、蓄積部の一端とつま先側係合部とが係合しており、
前記履物底部のかかとが地面と接する際に、蓄積部の他端とかかと側係合部との係合が形成され、
前記履物底部のつま先が地面から離れる際に、前記かかと側係合部と前記蓄積部との係合を維持したまま、前記つま先側係合部と前記蓄積部との係合を解放し、
前記履物底部のかかとが地面と再び接するまでに、前記つま先側係合部と前記蓄積部の一端との係合を形成し、かつ、前記かかと側係合部と前記蓄積部との係合を解放すること、
を特徴とする補助推進力生成機能付き履物。
【請求項2】
蓄えられた力を解放することによって歩行の際の補助推進力を生成する蓄積部、
前記蓄積部との係合を形成し、及び、前記係合を解放をするつま先側係合部、
前記蓄積部との係合を形成し、及び、前記係合を解放をするかかと側係合部、
を有する補助推進力生成機能付き履物底であって、
初期状態において、蓄積部の一端とつま先側係合部との係合が形成されており、
前記履物底のかかとが地面と接する際に、蓄積部の他端とかかと側係合部との係合が形成され、
前記履物底のつま先が地面から離れる際に、前記かかと側係合部と前記蓄積部との係合を維持したまま、前記つま先側係合部と前記蓄積部との係合を解放し、
前記履物底のかかとが地面と再び接するまでに、前記つま先側係合部と前記蓄積部の一端との係合を形成し、かつ、前記かかと側係合部と前記蓄積部との係合を解放すること、
を特徴とする補助推進力生成機能付き履物底。
【請求項3】
請求項1に係る履物又は請求項2に係る履物底のいずれかにおいて、
前記蓄積部は、
弾性に基づく力を蓄積することができる板状体又は棒状体であること、
を特徴とするもの。
【請求項4】
請求項3に係る履物又は履物底のいずれかにおいて、
前記かかと側係合部は、
前記外形部に設けられるかかと側凸状部材を有しており、
前記かかと側係合部は、さらに、
前期かかと側凸状部材と前記蓄積部との係合を解放する際より、係合を形成する際の方が容易となるものであること、
を特徴とするもの。
【請求項5】
請求項3〜4に係る履物又は履物底のいずれかにおいて、
前記つま先側係合部は、
前記外形部に設けられるつま先側凸状部材を有しており、
前記つま先側係合部は、さらに、
前期つま先側凸状部材と前記蓄積部との係合を解放する際より、係合を形成する際の方が容易となるものであること、
を特徴とするもの。
【請求項6】
請求項1〜3に係る履物又は履物底のいずれかにおいて、
前記かかと側係合部と前記蓄積部との係合は、
電磁気力によって形成及び解放されるものであること、
を特徴とするもの。
【請求項7】
請求項1〜3、6に係る履物又は履物底のいずれかにおいて、
前記つま先側係合部と前記蓄積部との係合は、
電磁気力によって形成及び解放されるものであること、
を特徴とするもの。
【請求項8】
外形部に納められる蓄積部であって、蓄えられた力を解放することによって補助推進力を生成する蓄積部、
前記外形部の推進方向側に形成される第1の係合部であって、前記蓄積部との係合を形成し、及び前記係合を解放する第1の係合部、
前記蓄積部との係合を形成し、及び前記係合を解放する第2の係合部、
を有する補助推進力生成装置において、
初期状態において、蓄積部の一端と第1の係合部との係合が形成されており、
前記外形部の推進方向と反対側の端部が地面と接する際に、蓄積部の他端と第2の係合部との係合が形成され、
前記外形部の推進方向側の端部が地面から離れる際に、前記第2の係合部と前記蓄積部との係合を維持したまま、前記第1の係合部と前記蓄積部の係合を解放し、
前記外形部の推進方向と反対側の端部が地面と再び接するまでに、前記第1の係合部と前記蓄積部の一端との係合を形成し、かつ、前記第2の係合部と前記蓄積部との係合を解放すること、
を特徴とする補助推進力生成装置。
【請求項9】
歩行時に、つま先非着地・かかと着地状態にて、地面から靴底に作用する押圧力によって靴底内部の変形部材を変形させ、つま先着地・かかと非着地状態までこの変形状態を保持しておき、
靴がつま先着地・かかと着地状態を経た後、前記つま先着地・かかと非着地状態となると、前記変形部材の変形状態の保持を解除させて、補助推進力を得る補助推進力生成方法。
【請求項10】
請求項9に係る補助推進力生成方法において、
歩行時のつま先非着地・かかと非着地状態において、板状体又は棒状体である変形部材の一端とつま先側突起部とが係合しており、
つま先非着地・かかと着地状態における前記変形部材の変形は、
地面から靴底に作用する押圧力によって、前記変形部材の他端とかかと側突起部とを係合させることによって行い、
前記変形部材の変形状態の保持を解除することによる補助推進力の獲得は、
前記変形部材の他端と前記かかと側突起部との係合を保持したまま、前記つま先側突起部と前記変形部材との係合を解除させることによって行うこと、
を特徴とする補助推進力生成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【公開番号】特開2006−311(P2006−311A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−178764(P2004−178764)
【出願日】平成16年6月16日(2004.6.16)
【出願人】(504232619)
【Fターム(参考)】