説明

履物および履物底

【課題】 着用者の足を揺り動かす機能と耐久性とを両立する。
【解決手段】履物底20は、外殻30と、柔軟部材32とを有する。柔軟部材32は、外殻30内部に収容される。柔軟部材32は、弾性力により荷重を支える。柔軟部材32は、外殻30よりも柔らかい。外殻30が、基部40と、曲面部42とを有する。曲面部42は基部40から張出す。柔軟部材32は、支持部62を有する。支持部62は、外殻30内部で立つ。支持部62は、弾性力により荷重を支える。支持部62は、荷重を支える際には曲がる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、履物および履物底に関し、特に、着用者の足を揺り動かす機能と耐久性とを両立できる、履物および履物底に関する。
【背景技術】
【0002】
「ロッカーボトムシューズ」その他様々な名称を有する履物が存在する。その履物を履くと、履物を履いた者(着用者)の足が揺り動かされる。足が揺り動かされるので、通常あまり動かされない筋肉が働かされる。その結果、通常あまり働かされない筋肉が鍛えられる。このことは、着用者の姿勢を良くする。
【0003】
特許文献1は、姿勢を良くするために利用できる履物を開示する。この履物は、本来、地面からの衝撃を緩和させる履物である。この履物は、履物底本体と、衝撃緩和部とを備える。履物底本体は、地面に触れるシューズ底面の上部に厚い弾性部材を設けたものである。衝撃緩和部は履物底本体の上部に設けられる。衝撃緩和部は足裏全体を覆う。衝撃緩和部は、中敷部と、枠部と、弾性部を有する。中敷部は、履物底本体との間に空間を介するように設けられる。枠部は中敷部を内部に収容する。枠部は、履物底本体の外周内面上部に設けられる。弾性部は、枠部の上部と中敷部とを連結させることにより中敷部を支持する。弾性部は弾性体からなる。
【0004】
特許文献1に開示された履物は、地面からの衝撃を足裏全体で緩和させることができる。枠部の上部と中敷部とが弾性部によって連結されており、かつ、これらと履物底本体との間に空間が設けられているためである。地面からの衝撃を足裏全体で緩和させることができるので、特許文献1に開示された履物は、弾力性に富む十分な履き心地を得ることができる。さらに、特許文献1に開示された履物は、着用者の足をわずかに揺り動かすことができる。その足をわずかに揺り動かすことができるので、特許文献1に開示された履物は、着用者の足の筋肉を鍛える。足の筋肉が鍛えられるので、着用者の姿勢は良くなる。
【0005】
特許文献2は、履物底にエアバッグが設けられた履物を開示する。履物底に設けられるエアバッグは、ブロー成形によってエアチェンバーを成形して、エアチェンバーの開口を封止することにより形成される。履物底に複数のエアバッグを設けることにより、ジョギング時の足に対する衝撃および傷害を緩和できる。履物底に複数のエアバッグが設けられているので、特許文献2に開示された履物は、着用者の足を揺り動かすことができる。その足を揺り動かすことができるので、特許文献2に開示された履物は、着用者の足の筋肉を鍛える。足の筋肉が鍛えられるので、着用者の姿勢は良くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実用新案登録第3160381号公報
【特許文献2】実用新案登録第3157908号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に開示された履物および特許文献2に開示された履物には、着用者の足を揺り動かす機能と耐久性とを両立し難いという問題があった。以下、この問題を詳細に説明する。
【0008】
特許文献1に開示された履物は、枠部の上部と中敷部とが弾性部によって連結されている。つまり、特許文献1に開示された履物は、主として履物底から着用者の足へ向かう方向の衝撃を緩和する構造になっている。その方向に直交する方向の衝撃を緩和することに関するその履物の能力は高くない。しかしながら、着用者の筋肉を鍛えるためには、履物底から着用者の足へ向かう方向に対して直交する方向へ着用者の足を揺り動かすことが好ましい。
【0009】
特許文献2に開示されているように履物底にエアバッグを設けると、履物底から着用者の足へ向かう方向に対して直交する方向へ着用者の足をある程度揺り動かすことができる。しかしながら、エアバックは特許文献1に開示された衝撃緩和部に比べて耐久性に劣る。エアバックは一度孔があくと機能を果たさなくなるためである。
【0010】
本発明は、このような問題点を解消するためになされたものであり、その目的とするところは、着用者の足を揺り動かす機能と耐久性とを両立できる、履物および履物底を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
図面を参照して本発明の履物および履物底を説明する。なお、この欄で図中の符号を使用したのは、発明の内容の理解を助けるためであって、内容を図示した範囲に限定する意図ではない。
【0012】
上記目的を達成するために本発明のある局面に従うと、履物10は、履物底20を備える。履物底20が、外殻30と、柔軟部材32とを有する。柔軟部材32は、外殻30内部に収容される。柔軟部材32は、弾性力により荷重を支える。柔軟部材32は、外殻30よりも柔らかい。外殻30が、基部40と、曲面部42とを有する。曲面部42は基部40から張出す。
【0013】
本発明にかかる履物10を着用者が履いた場合、履物底が平板状の履物を履いた場合に比べ、着用者は安定して立ち難くなる。本発明にかかる履物10を履いた場合、柔軟部材32が受けた荷重を曲面部42が支えることになるためである。柔軟部材32は、外殻30よりも柔らかい。つまり柔軟部材32は外殻30より変形しやすい。このことが、安定して立つことをさらに難しくしている。しかも、荷重はまず柔軟部材32の弾性力により支えられるので、履物底にエアバッグを設けた場合に比べ、耐久性は高い。その結果、着用者の足を揺り動かす機能と耐久性とを両立できる、履物10を提供できる。
【0014】
また、上述した柔軟部材32が、支持部62を有することが望ましい。支持部62は、外殻30内部で立つ。支持部62は、弾性力により荷重を支える。支持部62は、荷重を支える際には曲がる。
【0015】
曲がっている状態の支持部62は、曲がらず荷重を支える柔軟部材32に比べ、着用者の足を揺り動き易くする。荷重を受けて曲がる支持部62は、曲がらず荷重を支える柔軟部材32に比べ、着用者の足が揺り動き易い方向へ容易に動くためである。
【0016】
もしくは、上述した支持部62が、支持壁70,70を有していることが望ましい。支持壁70,70は、外殻30内部で立つ。支持壁70,70は、弾性力により荷重を支える際には曲がる。支持壁70,70は、格子状に配置される。
【0017】
支持壁70,70が格子状に配置されると、これらが曲がる際、互いに反力を与えることとなる。互いに反力を与えると、反力が与えられない場合に比べ、支持壁70,70が外殻30の内部で倒れず曲がったままでいる可能性が高くなる。その可能性を高くすることで、着用者の足を揺り動かす機能をよく維持できる。
【0018】
本発明の他の曲面にしたがうと、履物底20は、外殻30と、柔軟部材32とを有する。柔軟部材32は、外殻30内部に収容される。柔軟部材32は、弾性力により荷重を支える。柔軟部材32は、外殻30よりも柔らかい。外殻30が、基部40と、曲面部42とを有する。曲面部42は基部40から張出す。これにより、着用者の足を揺り動かす機能と耐久性とを両立できる、履物底20を提供できる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、着用者の足を揺り動かす機能と耐久性とを両立できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施形態にかかるサンダルの斜視図である。
【図2】本発明の実施形態にかかるサンダルの断面図である。
【図3】本発明の実施形態にかかる履物底の構成を示す図である。
【図4】本発明の実施形態にかかる柔軟部材の平面図である。
【図5】本発明の実施形態にかかる柔軟部材のA−A断面図である。
【図6】本発明の実施形態にかかるサンダルを着用者が履いている際のそのサンダルの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同一である。したがって、それらについての詳細な説明は繰返さない。
【0022】
[サンダルの構成]
図1は、本実施形態にかかるサンダル10の斜視図である。図2は、サンダル10の断面図である。図1と図2とを参照しつつ、サンダル10の構成を説明する。
【0023】
サンダル10は、履物底20と、甲被22と、接足材24とを備える。履物底20は、着用者がそのサンダル10を履いたとき、地面に接触する。甲被22は、着用者がそのサンダル10を履いたとき、着用者の足の一部を覆う。接足材24は、着用者がそのサンダル10を履いたとき、着用者の足の裏に接触する。
【0024】
[履物底の構成]
図3は、本実施形態にかかる履物底20の構成を示す図である。図1ないし図3を参照しつつ、本実施形態にかかる履物底20の構成を説明する。履物底20は、外殻30と、柔軟部材32とを有する。
【0025】
外殻30は履物底20の外殻となる。本実施形態において外殻30は柔らかい樹脂によって形成されている。このため、外殻30は、着用者がサンダル10を履くことにより荷重を受けた場合には弾性変形する。外殻30は、基部40と、曲面部42とを有する。本実施形態の場合、曲面部42が直接地面に接触することとなる。基部40は、接足材24の縁が取付けられる部分である。基部40に接足材24の縁が取付けられることによって、履物底20に接足材24が取付けられることとなる。曲面部42は、基部40から張出す。本実施形態の場合、曲面部42の形状は、接足材24から履物底20の方へ丸く盛り上がったような形状である。外殻30の開口50は、履物底20に接足材24が取付けられることにより、塞がれる。
【0026】
柔軟部材32は、外殻30の内部に、より具体的に説明すると上述した曲面部42の内側に、収容される。本実施形態の場合、柔軟部材32は、履物底20に接足材24が取付けられることにより、外殻30の内部に密封されることとなる。
【0027】
[柔軟部材の構成]
図4は、柔軟部材32の平面図である。図5は、図4に示した柔軟部材32のA−A断面図である。本実施形態の場合、柔軟部材32は、外殻30よりも柔らかい。したがって、柔軟部材32は、荷重を受けると、外殻30よりも容易に弾性変形する。本実施形態の場合、支持部62は、エストラマーによって形成されている。図3ないし図5を参照しつつ、柔軟部材32の構成を説明する。
【0028】
図3と図4とから明らかなように、本実施形態にかかる柔軟部材32は、表皮部60と、支持部62とを有する。表皮部60は、外殻30に密着する。図5から明らかなように、支持部62は、表皮部60の内側から開口50に向かって立っている。そのため、支持部62は、外殻30内部で立っていることとなる。本実施形態の場合、表皮部60と支持部62とは一体となっている。
【0029】
図4から明らかなように、支持部62は、支持壁70,70が格子状に交わって配置されているものである。本実施形態の場合、支持壁70,70は、履物底20の踵72から爪先74へ向かう方向に対して斜めに交差するよう配置されている。互いに対向する支持壁70,70の間には空間90が形成されている。
【0030】
なお、支持壁70,70の交点80の間隔は、踵72から爪先74に向かう方向に沿っているもの同士の間隔の方が、その方向に直交する方向に沿っているもの同士の間隔より狭い。つまり、支持壁70,70は、直交している訳ではない。
【0031】
[甲被および接足材の構成]
本実施形態にかかる甲被22と接足材24との構成は周知である。それらの機能も周知である。したがって、ここではその詳細な説明は繰返さない。
【0032】
[履物底の機能]
図6は、着用者がサンダル10を履いたときの履物底20の変形状況を示す断面図である。図6を参照しつつ、本実施形態にかかる履物底20の機能を説明する。
【0033】
着用者がサンダル10を履いて歩いたとき、着用者の足100を介して接足材24に荷重がかかる。その荷重は履物底20に伝わる。荷重は、履物底20の柔軟部材32に伝わる。
【0034】
上述したように、柔軟部材32は表皮部60と支持部62とを有する。支持部62は支持壁70,70が格子状に交わって配置されているものである。互いに対向する支持壁70,70の間には空間90が形成されている。空間90が存在するので、支持壁70の先端は曲がることができる。そのため、空間90が存在しない場合に比べると、支持部62は変形しやすい。しかも、本実施形態の場合、支持部62は、エストラマーによって形成されている。エストラマーによって形成されているので、支持部62は柔らかい。その点からも、支持部62は変形しやすい。
【0035】
荷重は、柔軟部材32と接足材24とを介して外殻30にも伝わる。荷重を受けたことにより、外殻30は弾性変形する。外殻30が弾性変形し、かつ、柔軟部材32の支持部62が容易に変形するので、履物底20は、着用者が足100を介して接足材24に荷重をかけるたびに、よく変形することとなる。よく変形するので、履物底20は、従来の履物に比べて不安定な状態で着用者を支えることとなる。
【0036】
また、外殻30は曲面部42を有する。本実施形態の場合、曲面部42が地面および床面に直接接触する。これにより、履物底20は、従来の履物に比べて不安定な状態で着用者を支えることとなる。
【0037】
つまり、本実施形態にかかる履物底20は、よく変形することと曲面部42が地面および床面に直接接触することとにより、不安定な状態で着用者を支えることとなる。
【0038】
[本実施形態にかかるサンダルの効果]
以上のようにして、本実施形態にかかる履物底20は、不安定な状態で着用者を支えることとなる。履物底20が不安定な状態で着用者を支えるので、その着用者は、安定して立つことが難しくなる。これにより、着用者は、従来から用いられている靴を履く場合に比べ、普段使わない筋肉を多く使うこととなる。これにより、その着用者の筋肉が鍛えられる。
【0039】
しかも、本実施形態にかかる履物底20において荷重はまず柔軟部材32の弾性力により支えられる。荷重が柔軟部材32の弾性力により支えられるので、エアバッグを用いて気体の圧力により荷重を支える場合に比べ、柔軟部材32の耐久性は高い。その結果、着用者の足を揺り動かす機能と耐久性とを両立できる、サンダル10を提供できる。
【0040】
しかも、支持壁70,70は荷重を受けて容易に曲がる。容易に曲がるので、曲がらない場合に比べ、支持壁70,70は着用者の足が揺り動き易い方向へも容易に曲がる。容易に曲がるので、着用者の足を揺り動かす機能をよく維持できる。
【0041】
しかも、支持壁70,70は、格子状に配置されているので、これらが曲がる際、これらは、互いに反力を与えることとなる。互いに反力を与えると、反力が与えられない場合に比べ、支持壁70,70が外殻30の内部で倒れず曲がったままでいる可能性が高くなる。その可能性を高くすることで、支持壁70,70と表皮部60との間に摩擦力が生じることを防いでいる。摩擦力の発生を防ぐことにより、着用者の足を揺り動かす機能をよく維持できる。
【0042】
しかも、本実施形態にかかる履物底20では、支持壁70,70が履物底20の踵72から爪先74へ向かう方向に対して斜めに交差するよう配置されているので、支持壁70,70が履物底20の踵72から爪先74へ向かう方向に平行または直交している場合に比べ、支持壁70,70が外殻30の内部で倒れず曲がったままでいる可能性が高くなる。そのため、着用者の足を揺り動かす機能をよりよく維持できる。
【0043】
[変形例の説明]
今回開示された実施形態はすべての点で例示である。本発明の範囲は上述した実施形態に基づいて制限されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更をしてもよいのはもちろんである。
【0044】
例えば、外殻30は、曲面部42を有していなくてもよい。すなわち、履物底は、上述した外殻30に代えて、平らな底を有する筒形の外殻を有していてもよい。
【0045】
支持壁70,70の配置は、上述したものに限定されない。すなわち、支持壁70,70は、履物底20の踵72から爪先74へ向かう方向に対して斜めに交差しないものであってもよい。
【0046】
支持壁70,70の交差角は、図4に示したものに限定されない。その交差角は直交していてもよい。
【0047】
支持部62は、支持壁70,70が格子状に配置されるものに限定されない。
【0048】
柔軟部材32は、上述したものに限定されない。例えば、柔軟部材32は、ごく柔らかい均質な塊であってもよい。
【0049】
接足材24は、外殻30の開口50を完全に塞いでいる必要はない。接足材24の材質と構造とは特に限定されない。
【0050】
履物底20は、サンダル10ではなく靴に用いられてもよい。本発明にかかる履物はサンダル10に限定されない。
【符号の説明】
【0051】
10…サンダル、20…履物底、22…甲被、24…接足材、30…外殻、32…柔軟部材、40…基部、42…曲面部、50…開口、60…表皮部、62…支持部、70…支持壁、72…踵、74…爪先、80…交点、90…空間、100…足

【特許請求の範囲】
【請求項1】
履物底を備える履物であって、
前記履物底が、
外殻と、
前記外殻内部に収容され、弾性力により荷重を支え、かつ、前記外殻よりも柔らかい、柔軟部材とを有しており、
前記外殻が、
基部と、
前記基部から張出す曲面部とを有していることを特徴とする履物。
【請求項2】
前記柔軟部材が、前記外殻内部で立ち、前記弾性力により前記荷重を支え、かつ、前記荷重を支える際には曲がる、支持部を有することを特徴とする、請求項1に記載の履物。
【請求項3】
前記支持部が、前記外殻内部で立ち、前記弾性力により前記荷重を支える際には曲がり、かつ、格子状に配置される、支持壁を有していることを特徴とする、請求項2に記載の履物。
【請求項4】
履物底であって、
外殻と、
前記外殻内部に収容され、弾性力により荷重を支え、かつ、前記外殻よりも柔らかい、柔軟部材とを有しており、
前記外殻が、
基部と、
前記基部から張出す曲面部とを有していることを特徴とする履物底。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−187238(P2012−187238A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−52418(P2011−52418)
【出願日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【出願人】(511048960)
【Fターム(参考)】