説明

履物底部材及び履物

【課題】 雪上を歩行した場合であっても防滑作用が低下することを防止し得る履物底部材及び履物を提供する。
【解決手段】 履物底部材Bのつま先部10及び土踏まず部30は第1防滑部1,1になしてあり、また踏付け部20及び踵部40は第2防滑部2,2になしてある。第2防滑部2は、天然ゴム又は合成ゴム等にて構成された基材に天然繊維及び/又はガラス繊維等の繊維材が混入してある複数の含繊維防滑層21,21,…と、この含繊維防滑層21,21,…に付着しようとする雪片といった付着物を剥離・排除させるための複数の排除用層22,22,…とを、履物底部材Bの略長手方向へ交互に配してなり、各含繊維防滑層21,21,…及び各排除用層22,22,…は波形状になしてある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、履物の底部に用いる履物底部材、及び該履物底部材を設けてなる履物に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、冬季に積雪又は氷結した路上を歩行する機会が多い地方にあっては、歩行中の転倒を防止すべく、スパイクといった金属片を底部材に固定又は着脱可能に設けてなる履物が利用されている。
【0003】
しかし、金属片を配した履物にあっては乾燥した屋内での歩行が困難であるため、積雪又は凍結した路面、濡れた路面及び乾燥した路面のいずれであっても安全・容易に歩行することができる履物底本体が開発されている。
【0004】
そのようなものとして後記する特許文献1には、カーボランダム又はコランダム等の砥粒をフェノール樹脂といった結合剤で結合・成形してブロック状の不滑部材を得、ゴム、ポリ塩化ビニール及び/又はポリウレタン等を成形してなる靴底本体の接地部の複数位置に前記不滑部材をそれぞれ、各不滑部材の一面が接地面に表れるように埋設してなる履物底部材が開示されている。(例えば、特許文献1参照。)
【0005】
このような履物底部材にあっては、砥粒が混入された不滑部材を靴底本体に埋設して構成してあるため、屋内での歩行に支障を来たさず、積雪又は凍結した路面、及び乾燥した路面のいずれであっても容易に歩行することができるものの、砥粒は種々の立体形状をなしているため、十分な防滑作用を得ることができないという問題があった。
そのため、後記する特許文献2には、複数のガラス繊維を圧延方向に配向させ、各ガラス繊維が接地面に対して略垂直になるようになした敷物底部材が開示されている。
【特許文献1】特開平4−292102号公報
【特許文献2】実開昭62−21905号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、後述した履物底部材にあっては、接地面に対して略垂直になした複数のガラス繊維によって、凍結した路面をしかっり保持することができるため、十分な防滑作用を得ることができるものの、雪上を歩行した場合、履物底部材が雪面に押圧される力により、相隣る各ガラス繊維の間隙に雪片が付着し易いため、防滑作用が急激に低下するという問題があった。
【0007】
本発明は、斯かる事情に鑑みてなされたものであって、雪上を歩行した場合であっても防滑作用が低下することを防止し得る履物底部材、及び該履物底部材を備える履物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1) 本発明に係る履物底部材は、履物の接地部分に適用され、路面上での滑動を防止する防滑部を備える履物底部材において、前記防滑部は、複数の繊維を接地面に対して略垂直に配向させてなる複数の含繊維防滑層と、各含繊維防滑層への付着物の付着を排除するための複数の排除用層とを接地面内に交互に配してなり、前記各含繊維防滑層及び各排除用層は波形状になしてあることを特徴とする。
【0009】
本発明の履物底部材は、複数の繊維を接地面に対して略垂直に配向させてなる複数の含繊維防滑層と、各含繊維防滑層への付着物の付着を排除するための複数の排除用層とを接地面内に交互に配して構成してある。
【0010】
各含繊維防滑層にあっては、接地面に対して略垂直に配向された複数の繊維の端部が接地面から僅かに突出しており、この突出端部のエッジ効果により凍結した路面上でも十分な防滑作用を奏する。
【0011】
一方、雪上を歩行する際に、雪面に圧接されて防滑部に雪片といった付着物が複数の含繊維防滑層に亘って付着しようとするが、かかる場合であっても、繊維が混入されていない排除用層の接地面は平滑であるため、排除用層には付着物が付着しない。これに加え、歩行中の排除用層の撓み等によって、前記付着物は各排除用層を基点として防滑部から剥離・排除される。これによって、防滑部に付着物が付着することが防止され、雪上を歩行した場合であっても防滑作用が低下することが防止される。
【0012】
更に、本発明の履物底部材は、各含繊維防滑層及び各排除用層は波形状になしてあるので、各層の長手方向において、含繊維防滑層と排除用層とが交互に現れる。これによって、前述した排除用層による付着物の剥離作用が、各層を交互に配設した配設方向のみならず、各層の長手方向においても奏され、付着物の付着防止作用が向上する。
【0013】
(2) 一方、本発明に係る履物底部材は必要に応じて、前記防滑部は、つま先領域、踏付け領域、土踏まず領域及び踵領域からなる履物底部の少なくとも踏付け領域に対応する部分に配設してあることを特徴とする。
【0014】
本発明の履物底部材は、つま先領域、踏付け領域、土踏まず領域及び踵領域からなる履物の少なくとも踏付け領域に対応する部分に防滑部が配設してある。このように、履物の比較的鉛直方向に荷重が加えられる部分である踏付け領域に防滑部が配設してあるため、前述した含繊維防滑層によるエッジ効果が効果的に作用し、至適な状態で防滑作用が奏される。
【0015】
一方、前述したように防滑部は、複数の含繊維防滑層と複数の排除用層とを接地面内に交互に配して構成してあるため、付着物は各排除用層を基点として防滑部から剥離・排除され、防滑部に付着物が付着することが防止される。
【0016】
(3) また、本発明に係る履物底部材は必要に応じて、履物における重心移動領域に対応する部分に沿って、1又は複数の防滑部が配設してあることを特徴とする。
本発明の履物底部材は、履物における重心移動領域に対応する部分に沿って、1又は複数の防滑部が配設してある。歩行中、重心移動領域にあっては履物の比較的鉛直方向に荷重が加えられる。このように、履物の比較的鉛直方向に荷重が加えられる部分に防滑部が配設してあるため、前述した含繊維防滑層によるエッジ効果が効果的に作用し、至適な状態で防滑作用が奏される。
【0017】
一方、前述したように防滑部は、複数の含繊維防滑層と複数の排除用層とを接地面内に交互に配して構成してあるため、付着物は各排除用層を基点として防滑部から剥離・排除され、防滑部に付着物が付着することが防止される。
【0018】
(4) 更に、本発明に係る履物底部材は必要に応じて、前記防滑部の含繊維防滑層及び排除用層は、履物における重心移動方向と略直交するように配してあることを特徴とする。
本発明の履物底部材は、防滑部の含繊維防滑層及び排除用層は、履物における重心移動方向と略直交するように配してあるため、履物底部材の長手方向の各位置において、蹴り出し力を確実に受け止め、的確な防滑効果を奏する。
【0019】
(5) 一方、本発明に係る履物底部材は必要に応じて、前記防滑部の含繊維防滑層の層幅寸法と排除用層の層幅寸法との比は、1:0.1〜0.7になしてあることを特徴とする。
本発明の履物底部材は、防滑部の含繊維防滑層の層幅寸法と排除用層の層幅寸法との比は、1:0.1〜0.7になしてあるため、含繊維防滑層による防滑作用及び排除用層による雪片除去作用という相反する作用がバランス良く奏され、含繊維防滑層に付着する雪片を確実に剥離・除去させつつ、雪面上での滑動が防止され、雪上を安全に歩行することができる。
【0020】
(5) ところで、本発明に係る履物は、前述したいずれかの履物底部材を備えることを特徴とする。
本発明の履物は、前述したいずれかの履物底部材を備えるので、前述した各作用及び効果を奏し、雪上を歩行した場合であっても防滑作用が低下することを防止し得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
(第1の実施形態)
図1は、本発明に係る履物の一例としての靴の外観斜視図であり、図中、Sはソール、Uはアッパーである。アッパーUは男性用又は女性用、ロング又はショート等種々の形態になすことができるが、図1に示した場合にあっては、紐なしの男性用ビジネスタイプの形状になしてあり、その表面は雪上歩行に対応して撥水加工してある。
【0022】
一方、ソールSは、接地部たるアウトソールSSと靴内側の中底との間にクッション材たるミッドソールを介装させて構成してある。
なお、本発明に係る履物底部材は、このような構成のソールSも含まれるが、中底及び/又はミッドソールを具備しなくてもよく、更にアウトソールSSの接地面に貼着させる後付けタイプものも含まれる。
【0023】
図2は、図1に示した靴のアウトソールSSに適用する履物底部材の底面図である。かかる履物底部材Bは、靴の底部に応じた形状に才断した後、アウトソールSS又はその一部として固着させる。なお、図2は左足用の靴に適用するものであり、右足用の靴にあっては図2に示した形態と対称の形態になせばよいので図面を省略する。
【0024】
図2に示した如く、履物底部材Bには、人の各足指に対向するつま先部10、人の各中足骨に対向し、前記つま先部10と後記土踏まず部30との間の踏付け部20、土踏まず部30及び踵部40がこの順に成形してあり、履物底部材Bの接地面には防滑作用を奏する複数の溝部50,50,…が形成してある。そして、つま先部10及び土踏まず部30は後述する第1防滑部1,1になしてあり、また踏付け部20及び踵部40は第2防滑部2,2になしてある。
【0025】
第1防滑部1,1は、天然ゴム又は合成ゴム等にて構成された基材に、卵殻及び/又はガラス等の防滑材を数百μmから数mm程度のサイズに破砕してなる防滑片粒11,11,…を混練させ、この混練物を5mm程度の厚さに圧延して得られた板状の第1防滑部用板材を用いて構成されている。なお、合成ゴムとしては、例えば低ニトリルゴム等、0℃以下の温度でも可撓性を有する材料を用いることができる。
【0026】
このような第1防滑部1,1にあっては、防滑片粒11,11,…の一部が接地面に突出しており、かかる防滑片粒11,11,…の突出部分は種々の立体形状をなしているため、接地面においていずれの方向からの応力に対して防滑作用を発揮する。
【0027】
一方、第2防滑部2,2は、天然ゴム又は合成ゴム等にて構成された基材に天然繊維及び/又はガラス繊維等の繊維材が混入してある複数の含繊維防滑層21,21,…と、この含繊維防滑層21,21,…に付着しようとする雪片といった付着物を剥離・排除させるための複数の排除用層22,22,…とを、履物底部材Bの略長手方向へ交互に配して構成してある。
【0028】
かかる含繊維防滑層21,21,…は、繊維材中の各繊維が接地面に対して略直角な向きになるように基材に混入させてあり、接地面内に位置する複数の繊維の端部を接地面から、数μmから数百μmまでの長さ範囲になるように突出させてある。
【0029】
このような含繊維防滑層21,21,…にあっては、接地面内に位置する複数の繊維の端部が接地面から突出しているため、各突出部分のエッジ効果により鉛直方向の荷重に対して第1防滑部1,1より高い防滑作用を奏する。
一方、排除用層22,22,…は、天然ゴム、合成ゴム等の基材によって構成してあり、排除用層22,22,…の接地面は平滑になしてある。
【0030】
このような排除用層22,22,…にあっては、雪面に圧接されて第2防滑部2,2に雪片といった付着物が複数の含繊維防滑層21,21,…に亘って付着しようとするが、かかる場合であっても、排除用層22,22,…の接地面が平滑であるため、排除用層22,22,…には前記付着物が付着しない。これに加え、排除用層22,22,…は雪上においても可撓性を有するため、歩行中の蹴り出し力及び排除用層22,22,…の撓み・伸張等によって、前記付着物は各排除用層22,22,…を基点として第2防滑部2,2から剥離される。
これによって、第2防滑部2,2に付着物が付着することが防止される。
【0031】
このとき、図2に示した如く、第2防滑部2,2の含繊維防滑層21,21,…及び排除用層22,22,…は波形状になしてあり、これによって履物底部材Bの幅方向において、含繊維防滑層21,21,…と排除用層22,22,…とが交互に現れるようになしてある。
【0032】
このような第2防滑部2,2にあっては、履物底部材Bの幅方向において、含繊維防滑層21,21,…と排除用層22,22,…とが交互に現れるため、前述した排除用層22,22,…による付着物の剥離・除去作用が、履物底部材Bの長手方向のみならず、履物底部材Bの幅方向においても奏され、付着物の付着防止作用が向上する。
【0033】
次に、このような履物底部材を製造する方法について説明する。
図3は、本発明に係る履物底部材の製造工程を説明する説明図である。
前述した第1防滑部1及び第2防滑部2となる第1防滑部用板材及び第2防滑部用板材を各別に製造する(3(a))。なお、いずれの製造工程でも同種の機器を用いることができるので、図3では両工程を合わせて記載してある。
【0034】
第1防滑部用板材は、例えば低ニトリルゴム等、0℃以下の温度でも可撓性を有する材料にて構成された基材に、卵殻及び/又はガラス等の防滑材を数百μmから数mm程度のサイズに破砕してなる防滑片粒を、例えば基材100質量部に対して25質量部になるように添加してロール又はニーダ等の混練機70によって混練する。そして、この混練物を圧延機80によって、5mm程度の厚さに圧延し、得られた帯材を適宜の長さずつ切断して複数の板状の第1防滑部用板材a,a,…を得る。
【0035】
一方、第2防滑部用板材は、次のようにして製造することができる。
すなわち、真竹又は孟宗竹等の竹類の桿を物理的処理及び/又は化学的処理によって直径が0.05mm〜0.6mm程度に分離加工する。この分離加工工程により当該繊維はその長手方向の複数の箇所で切断され短繊維状に加工される。
【0036】
この短繊維状の竹繊維の内部にフェノール処理液を十分に浸透させた後、加熱処理することによって、竹繊維を疎水化する。これによって、竹繊維の撥水性及び耐水性が格段に向上する。
【0037】
一方、ガラス繊維としては直径が数十μmのものを用いることができる。
これらの繊維を単独で、又は混合して基材に添加し、混練機70で混練する。
【0038】
基材としては、天然ゴム、スチレンブタジエンゴム、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、ニトリルブタジエンゴム等の一種又は複数種を用いることができ、更に充填材として炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、シリカ(ホワイトカーボン)、又はカーボンブラック等を添加してもよい。
【0039】
例えば、このような基材100質量部に対して、前述した如く疎水処理した竹繊維が10質量部、及びガラス繊維が50質量部となるように添加し、混練機70によって混練する。かかる混練操作中、基材の粘弾力及びせん断力によって、竹繊維及びガラス繊維は5mm程度の長さにせん断され、基材中に略均一に分散される。
【0040】
そして、かかる混練物を圧延機80により圧延して2.5mm〜3.5mm程度の厚さに圧延し、得られた帯材を適宜の長さずつ切断して複数の板状の含繊維防滑層用板材b1,b1,…を得る。
【0041】
含繊維防滑層用板材b1,b1,…をかかる寸法範囲の厚さになすことによって、後述する加熱・圧接による波形処理を施す際に、含繊維防滑層用板材b1,b1,…の中途箇所に破断といった欠陥が生じず、連続した波形状の各含繊維防滑層21,21,…が形成されるので、履物底部材の幅方向で間断のない防滑効果が奏される。
なお、かかる混練・圧延操作によって、竹繊維及びガラス繊維は圧延方向と平行な方向に配向される。
【0042】
一方、前述した繊維を添加していない基材を混練し、1.0mm〜1.7mm程度の厚さに圧延し、得られた帯材を適宜の長さずつ切断して複数の板状の排除用層用板材b2,b2,…を得る。即ち、排除用層用板材b2,b2,…の厚さ寸法は含繊維防滑層用板材b1,b1,…の厚さ寸法より小さくしてあり、これによって、含繊維防滑層用板材b1,b1,…にて形成される含繊維防滑層21,21,…に付着した雪片を含繊維防滑層21,21,…から確実に剥離させることができる。
なお、第2帯状材の基材としては、天然ゴム、合成ゴム等、0℃以下の温度であっても十分な可撓性を有する材料を用いている。
【0043】
図3(b)に示したように、含繊維防滑層用板材b1,b1,…及び排除用層用板材b2,b2,…を交互に厚さ方向へ積層させた後、積層させた高さ方向と平行に5mm程度の幅寸法ずつ切断することによって、複数の第2防滑部用板材b,b,…を得る。
【0044】
そして、前述した第1防滑部用板材aをつま先部10及び土踏まず部30の形状に応じた形状にそれぞれ切断して複数の切断片を得、また第2防滑部用板材bを踏付け部20及び踵部40の形状に応じた形状にそれぞれ切断して切断片を得、得られた各切断片を、図3(c)に示したように、溝を形成させる適宜模様の凸部が形成されたモールド90内に、つま先部10、踏付け部20、土踏まず部30及び踵部40に応じて配列し、その状態で加熱・圧接させることによって各切断片を互いに固着させて、図3(d)に示したように、履物底部材Bを得るとともに、第1防滑部1,1及び第2防滑部2,2に適宜の溝部50,50,…を形成させる。このとき、第2防滑部2を構成する各含繊維防滑層21,21,…及び各排除用層22,22,…は複数の箇所で褶曲され、連続した波形状の層になされる。
【0045】
このとき、第2防滑部2の含繊維防滑層21,21,…の層幅寸法と排除用層22,22,…の層幅寸法との比は、1:0.1〜0.7になっている。これによって、含繊維防滑層21,21,…による防滑作用及び排除用層22,22,…による雪片除去作用という相反する作用がバランス良く奏され、含繊維防滑層21,21,…に付着する雪片を確実に剥離・除去させつつ、雪面上での滑動が防止され、雪上を安全に歩行することができる。
このようにして製造された履物底部材Bは、図1に示した如く、面一な底面の靴にあっては当該靴の輪郭に応じてその周囲を切断し、アウトソールSSとして固着させる。
【0046】
一方、図4に示した如く、踵部を高くなして土踏まず部との間に段差を設けた靴にあっては、土踏まず部を除く、つま先部、踏付け部及び踵部に応じた適宜の形状に切断し、それらをアウトソールSSとして固着させてもよい。
【0047】
このように、本発明に係る履物にあっては、履物の比較的鉛直方向に荷重が加えられる部分である踏付け部及び踵部に、第2防滑部2,2が配設してあるため、前述した第2防滑部2,2の含繊維防滑層21,21,…によるエッジ効果が効果的に作用し、至適な状態で防滑作用が奏される。
【0048】
一方、履物の種々の方向に対して荷重が加えられる部分であるつま先部に、第1防滑部1が配設してあるため、種々の方向からの応力に対応して防滑作用を奏することができる。
このように、つま先部に第1防滑部1を配設し、踏付け部及び踵部に、第2防滑部2,2が配設してあるので、歩行時における履物の動きに応じて適切な防滑作用が奏される。
【0049】
なお、前述した各排除用層22,22,…には、卵殻及び/又はガラス等の防滑材を数百μmから数mm程度のサイズに破砕してなる防滑片粒を適量混練させておいてもよい。かかる防滑片粒にあっては、接地面から突出する部分の形状は不定形であり、接地面から突出する部分の密度も低いので、防滑片粒を混練させた排除用層にあっても、防滑片粒を混練させてない排除用層22,22,…と同様な作用を奏する。
なお、本発明に係る他の履物底部材にあっては、その全領域を第2防滑部2で構成してもよい。
【0050】
(第2の実施形態)
図5は、本発明の第2の実施形態に係る履物底部材の底面図であり、第2防滑部2,2,…の配置を変更してある。なお、図中、図2に示した部分に対応する部分は同じ番号を付してその説明を省略する。
【0051】
図5に示したように、履物底部材Bの接地面には、適宜の大きさの島状に成形した複数の第2防滑部2,2,…が、履物に適用された場合の重心移動領域に応じた部分Rに沿って略S字上に、互いに適宜の距離を隔てて配設してある。
【0052】
ここで、重心移動領域とは、履物を履いたユーザの歩行中、当該履物においてユーザの重心が移動する軌跡の集合をいう。重心移動領域は、任意のユーザに対応して適宜の幅が設定してある。この場合、第2防滑部2,2,…は、重心移動領域の全幅を覆うことができる幅寸法になすとよい。
【0053】
歩行中、重心移動領域にあっては履物の比較的鉛直方向に荷重が加えられる。このように、履物の比較的鉛直方向に荷重が加えられる部分である重心移動領域に対応する部分に沿って第2防滑部2,2,…が配設してあるため、前述した含繊維防滑層21,21,…によるエッジ効果が効果的に作用し、至適な状態で防滑作用が奏される。
【0054】
一方、各第2防滑部2,2,…は、前述した如く、含繊維防滑層21,21,…と排除用層22,22,…とが交互に配設されているため、各第2防滑部2,2,…に雪片といった付着物が付着することが防止される。
【0055】
なお、本実施の形態にあっては、重心移動領域に対応する部分Rに沿って複数の第2防滑部2,2,…を配設した場合について示したが、本発明はこれに限らず、重心移動領域に対応する部分Rに沿って帯状の第2防滑部を設けるようにしてもよいことはいうまでもない。
【0056】
更に、図6に示した如く、各第2防滑部2,2,…の含繊維防滑層21,21,…及び排除用層22,22,…を、重心移動領域に対応する部分Rにおける重心移動方向に略直交するように配するようにしてもよい。
【0057】
このように各含繊維防滑層21,21,…が重心移動方向に略直交するように配されているので、履物底部材の長手方向の各位置において、蹴り出し力を確実に受け止め、的確な防滑作用を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明に係る履物の一例としての靴の外観斜視図である。
【図2】図1に示した靴のアウトソールに適用する履物底部材の底面図である。
【図3】本発明に係る履物底部材の製造工程を説明する説明図である。
【図4】本発明に係る他の履物の底部を示す平面図である。
【図5】本発明の第2の実施形態に係る履物底部材の底面図である。
【図6】本発明の第2の実施形態に係る他の履物底部材の底面図である。
【符号の説明】
【0059】
1 第1防滑部
2 第2防滑部
10 つま先部
20 踏付け部
21 含繊維防滑層
22 排除用防滑層
30 土踏まず部
40 踵部
50 溝
a 第1防滑部用板材
b 第2防滑部用板材
B 履物底部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
履物の接地部分に適用され、路面上での滑動を防止する防滑部を備える履物底部材において、
前記防滑部は、複数の繊維を接地面に対して略垂直に配向させてなる複数の含繊維防滑層と、各含繊維防滑層への付着物の付着を排除するための複数の排除用層とを接地面内に交互に配してなり、前記各含繊維防滑層及び各排除用層は波形状になしてあることを特徴とする履物底部材。
【請求項2】
前記防滑部は、つま先領域、踏付け領域、土踏まず領域及び踵領域からなる履物底部の少なくとも前記踏付け領域に対応する部分に配設してある請求項1記載の履物底部材。
【請求項3】
前記防滑部は、履物における重心移動領域に対応する部分に沿って、1又は複数配設してある請求項1又は2記載の履物底部材。
【請求項4】
前記防滑部の含繊維防滑層及び排除用層は、履物における重心移動方向と略直交するように配してある請求項3記載の履物底部材。
【請求項5】
前記防滑部の含繊維防滑層の層幅寸法と排除用層の層幅寸法との比は、1:0.1〜0.7になしてある請求項1から4のいずれかに記載の履物底部材。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載の履物底部材を備えることを特徴とする履物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−240406(P2009−240406A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−87944(P2008−87944)
【出願日】平成20年3月28日(2008.3.28)
【出願人】(000002989)株式会社ムーンスター (10)
【Fターム(参考)】