説明

巻回体収容箱及び巻回体入り収容箱

【課題】破損の発生を抑制する巻回体収容箱及び巻回体入り収容箱提供する。
【解決手段】巻回体収容箱1は、巻回体を収容する本体部10と、側蓋片25を有する蓋部20とを備える。側蓋片25は、基本長方形から下後交点Aまわりの角部が除去されて形成された切除辺25tが、最内境界線INLと最外境界線EXLとに挟まれた領域内に形成されている。最内境界線INLは、交点25bと交点25cとを結ぶ仮想直線であり、最外境界線EXLは、下後交点Aから天側辺25q側に前辺25pの長さの20%移動した点Eと、下後交点Aから前辺25p側に天側辺25qの長さの20%移動した点Fと、を結ぶ仮想直線である。而して、側蓋片25の浮き上がりが大きくなる部分の面積が少なくなって側蓋片25の引っかかりが低減され、巻回体収容箱1の破損の発生を抑制することができる。巻回体入り収容箱は、巻回体と、巻回体収容箱1とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は巻回体収容箱及び巻回体入り収容箱に関し、特に破損の発生を抑制する巻回体収容箱及び巻回体入り収容箱に関する。
【背景技術】
【0002】
台所まわりで頻繁に使われるものに、食材や料理あるいは皿などの食器を料理ごと包む食品用ラップフィルムや、調理の際の水切りあるいは油切りのために食材を包んだり食材の下に敷いたりするキッチンペーパー等がある。ラップフィルムやキッチンペーパー等の長尺物は、ロール状に巻かれた巻回体とされたうえで、長い直方体の収容箱に収容されて販売されるのが一般的である。収容箱として、巻回体を収容する一面が開口された箱本体と、箱本体の後板に回動可能に連接されて開口された一面を塞ぐ蓋板と、蓋板に連接されて蓋板を閉じたときに後板に対向する箱本体の前板の上部を覆う掩蓋片と、蓋板に連接されて蓋板を閉じたときに後板及び前板に直交する箱本体の脇板の上部を覆う側蓋片とを備え、側蓋片は掩蓋片に直交して連接する接合片の上に重ねられて接合され、脇板はその上端辺に連接されて箱本体の外側下方に向けて折り曲げられたフラップ片を有しており、蓋板を閉じたときにフラップ片が接合片と係合してスナップ音が発生するように構成されたものがある(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−035301号公報(図1等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のような収容箱は、1枚の原紙を型抜きしたものを折り曲げて組み立てられるのが一般的である。組み立てられたときに、側蓋片は、最も外側に配置され、面積が比較的小さいうえに、掩蓋片に片持ち状に連接された接合片に接合されているため、蓋板及び掩蓋片から離れた端部が外側に開きやすく、この開いた部分に、輸送の際の梱包用段ボール箱の蓋が重ねられて生じた段差部分や、店舗に陳列される際の棚あるいは他の収容箱が引っかかり、収容箱が破損してしまうことがあった。
【0005】
本発明は上述の課題に鑑み、破損の発生を抑制する巻回体収容箱及び巻回体入り収容箱提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の第1の態様に係る巻回体収容箱は、例えば図1及び図2(A)に示すように、長尺物91fが巻かれた巻回体91rを収容する直方体状に形成された本体部10であって、巻回体91rが収容されたときに巻回体91rの軸線91aと平行になる4つの長方形面のうちの1つが開口した開口面10hに形成されると共に、開口面10hに直交する2つの長方形面のうちの一方を構成する後板14と、後板14に対向する長方形面を構成する前板12と、4つの長方形面に直角で直方体状の端面を構成する脇板15と、を有する本体部10と;後板14の開口面10hと交わる端辺である後板端辺18に回動可能に連接された蓋部20であって、蓋部20を閉じたときに、開口面10hを覆う天板21と、天板21に連接されて前板12の一部を覆う掩蓋片22と、天板21に連接されて脇板15の一部を覆う側蓋片25と、を有する蓋部20とを備え;側蓋片25は、天板21に連接する天側辺25qと、掩蓋片22に隣接する前辺25pとを有する基本形状の長方形から、天側辺25qに対向する下辺25sと、前辺25pに対向する後辺25rとが交わる下後交点Aまわりの角部が除去されて形成され;基本形状の長方形において、天側辺25qと後辺25rとの交点25bと、前辺25pと下辺25sとの交点25cと、を結ぶ仮想直線を最内境界線INLとし、下後交点Aから後辺25rに沿って天側辺25q側に前辺25pの長さの20%移動した点Eと、下後交点Aから下辺25sに沿って前辺25p側に天側辺25qの長さの20%移動した点Fと、を結ぶ仮想直線を最外境界線EXLとしたときに、下後交点Aまわりの角部が除去された部分の輪郭を構成する切除辺25tが、最内境界線INLと最外境界線EXLとに挟まれた領域内に形成されている。
【0007】
このように構成すると、側蓋片の浮き上がりが大きくなる部分の面積が少なくなって側蓋片の引っかかりが低減され、巻回体収容箱の破損の発生を抑制することができる。
【0008】
典型的には、例えば図1に示すように、側蓋片25は、掩蓋片22に連接された接合片22jに重なって接着されて、天板21と側蓋片25との交線である天側辺25qに接合片22jが接しないように接合片22jの外側に設けられることにより、天側辺25qと接合片22jとの間に凹部25dが形成され;脇板15は、脇板15の開口面10hと交わる端辺である脇板端辺15sに設けられて本体部10の外側に突き出る凸部15pであって、蓋部20を閉じたときに凹部25dに嵌る凸部15pを有する。
【0009】
脇板端辺に凸部が設けられた状況下では、凸部によって側蓋片を外側へ開こうとする力が作用するため、側蓋片がより外側に開きがちになるが、このような状況下でも、切除辺が最内境界線と最外境界線とに挟まれた領域内に形成されていることで、側蓋片の引っかかりによる破損の発生を少なくすることができる。
【0010】
また、本発明の第2の態様に係る巻回体収容箱は、例えば図2(B)に示すように、上記本発明の第1の態様に係る巻回体収容箱において、切除辺25tが下後交点A側に凸の曲線状に形成されている。
【0011】
このように構成すると、切除辺と後辺及び/又は下辺とが交わる角部の引っかかりを低減することができる。
【0012】
また、本発明の第3の態様に係る巻回体収容箱は、例えば図1に示すように、上記本発明の第1の態様又は第2の態様に係る巻回体収容箱1において、掩蓋片22は、天板21に連接した折曲辺21fに対向する先端辺22tが、先端辺22tの中点から先端辺22tの端の側に移動するに連れて、折曲辺21fに直交する方向における折曲辺21fと先端辺22tとの距離が短くなるように構成されている。
【0013】
このように構成すると、長尺物の切断方法の選択の幅を増やすことができる。なお、本発明の第3の態様に係る巻回体収容箱のように、掩蓋片の脇板に隣接する部分の、折曲辺に直交する方向における折曲辺と先端辺との距離が短いほど、当該方向における接合片と側蓋片とが接合する距離が短くなるため、側蓋片が外側に開きがちになるが、このような状況下でも、切除辺が最内境界線と最外境界線とに挟まれた領域内に形成されていることで、側蓋片の引っかかりによる破損の発生を少なくすることができる。
【0014】
また、本発明の第4の態様に係る巻回体入り収容箱は、例えば図1に示すように、長尺物が巻かれた巻回体91rと;上記本発明の第1の態様乃至第3の態様のいずれか1つの態様に係る巻回体収容箱1とを備える。
【0015】
このように構成すると、破損の発生が少ない巻回体入り収容箱となる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、側蓋片の浮き上がりが軽減され、側蓋片の引っかかりによる破損の発生を少なくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施の形態に係るラップカートンを含むラップ入りカートンの斜視図である。
【図2】(A)は本発明の実施の形態に係るラップカートンの側面図、(B)は本発明の実施の形態の変形例に係るラップカートンの部分側面図である。
【図3】(A)〜(C)は本発明の実施例に係るラップカートンの側面図、(D)は比較例に係るラップカートンの側面図である。
【図4】実施例における各種のラップカートンの試験結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。なお、各図において互いに同一又は相当する部材には同一あるいは類似の符号を付し、重複した説明は省略する。
【0019】
まず図1を参照して、本発明の実施の形態に係る、巻回体収容箱としてのラップカートン1、及びラップカートン1に巻回体としてのラップロール91rが収容された巻回体入り収容箱としてのラップ入りカートン100を説明する。図1は、ラップ入りカートン100の斜視図である。図1は、開蓋状態を示している。ラップロール91rは、薄膜状の長尺物としてのラップフィルム91fが円筒状の巻芯に軸線91aまわりに巻かれてロール状に形成されたものである。以下の説明において、ラップロール91rとラップフィルム91fとの外観形状の区別をしない場合は、「ラップ91」と総称する。ラップフィルム91fは、本実施の形態では、ポリ塩化ビニリデンを原料として厚さが5〜20μmに形成されている。ラップカートン1は、ラップロール91rを収容する本体部10と、本体部10に連接された蓋部20とを備えている。
【0020】
本体部10は、未使用のラップロール91rを収容できる大きさの直方体に対して、細長い面の1つが開口面10hとなっている箱である。本体部10の大きさは、収容した未使用のラップロール91rを軸線91a回りに回転させるのを妨げない隙間が形成される一方で、できるだけ小さく形成されており、幅及び高さは各々概ね30〜60mm、長さは概ね200〜400mmの範囲内で形成されているとよく、本実施の形態では幅44mm、高さ44mm、長さ310mmの大きさに形成されている。本体部10は、開口面10hと協働して直方体の側面を構成する前板12、底板13、後板14と、直方体の端面を構成する2つの脇板15とを有している。底板13は、開口面10hに対向している。前板12及び後板14は、開口面10h及び底板13に直交している。脇板15は、前板12、底板13、後板14の各々よりも面積が小さく、典型的には正方形に形成されているが、縦横の長さが異なる矩形であってもよい。以下の説明においては、水平な面に底板13が載置された状態を基準として、底板13側を下、開口面10h側を上として説明する場合もある。
【0021】
脇板15の上端の辺である脇板端辺15sの中央部分には、3mm程度上方に延びた小片が外側に折り返されて形成された凸部としての突起15pが設けられている。突起15pは、2つあるそれぞれの脇板15の上端に設けられている。また、本体部10は、前板端辺19で前板12と連続する副板16を有している。前板端辺19は、前板12と開口面10hとが交わる部分の前板12の端辺である。副板16は、前板12と略同じ大きさであるが底板13とは接しておらず、前板12よりも本体部10の内側に設けられている。副板16は、底板13側の端辺が、長手方向に沿って前板12に接着されている。
【0022】
蓋部20は、本体部10の開口面10hを塞ぐ部材である。蓋部20は、天板としての蓋板21と、掩蓋片22と、切断刃23と、側蓋片25とを有している。蓋板21は、開口面10hと略同じ大きさの矩形平板状部材であり、蓋板21を開口面10hに合わせることで本体部10を閉塞した直方体とすることができるようになっている。蓋板21が開口面10hと略同じ大きさとは、蓋板21が、掩蓋片22の厚さ及び側蓋片25の厚さの分大きく、蓋部20の開閉を妨げない隙間が形成される程度大きい場合を含むことを意味している。蓋板21は、長手方向の一辺が、本体部10の後板端辺18で連接している。換言すれば、本体部10と蓋板21とは、後板端辺18を介して連接している。後板端辺18は、後板14と開口面10hとが交わる部分の後板14の端辺である。蓋板21は、後板端辺18を回転軸線として、本体部10に対して回動することができるように構成されている。
【0023】
掩蓋片22は、折曲辺21fを介して蓋板21と直交し、蓋部20を閉じたときに底板13に向かって延びるように設けられている。掩蓋片22は、ラップロール91rの軸線91aが延びる方向(以下「軸線方向D」という。)の両端における高さ(長方形の前板12の短辺方向の長さ)が、前板12の短辺方向の長さの約1/2で、軸線方向Dの中央部の高さが、前板12の短辺方向の長さの約3/4となっている。折曲辺21fに対向する先端辺22tは、軸線方向Dにおける中央からそれぞれの端部に移動するに連れて、軸線方向Dに直交する方向における折曲辺21fと先端辺22tとの距離が短くなるように形成されている。このような構成により、先端辺22tがV字状に形成されることとなる。掩蓋片22は、蓋部20が閉じられたときに、前板12に沿って前板12の外側に重なり、前板12の上部を五角形状に覆うこととなる。掩蓋片22の先端辺22tには、ラップフィルム91fを切断するための切断刃23が取り付けられている。切断刃23は、刃先が先端辺22tから出るように、先端辺22tに沿ってV字状に設けられている。
【0024】
側蓋片25は、蓋板21及び掩蓋片22の双方に直交して設けられている。側蓋片25は、蓋板21(掩蓋片22)の両端に合計2つ設けられている。側蓋片25は、掩蓋片22に連接された接合片22jに接着剤で固定されている。接合片22jは、側蓋片25よりも小さく、側蓋片25に包含される大きさに形成されている。接合片22jは、蓋板21と側蓋片25との交線である天側辺25qに対して、大部分が隙間を空けて平行になるように配設されている。これにより、側蓋片25の内側には、接合片22jと蓋板21(天側辺25q)との間に、凹部25dが形成されている。凹部25dには、蓋部20を閉じたときに、脇板15の上端に設けられた突起15pが嵌ることとなる。
【0025】
ここで図2(A)を併せて参照して、側蓋片25の構成をより詳しく説明する。側蓋片25は、基本形状が、長辺が蓋板21の短辺と同じ長さで、短辺が掩蓋片22の中央部における高さ(V字状の先端から折曲辺21fまでの最短距離)と略同じ長さの長方形に形成されている。基本形状の長方形(以下、単に「基本長方形」という。)は、上述の天側辺25qと、後板14側の辺である後辺25rと、底板13側の辺である下辺25rと、前板12側の辺である前辺25pとを輪郭とする四角形である。この基本長方形を基に、側蓋片25は、下辺25sの延長線と後辺25rの延長線とが交わる点である下後交点Aの周辺の角部が取り除かれている。図2(A)では、基本長方形の取り除かれた角部が二点鎖線で示されている。以下の説明では、便宜上、基本長方形を対象とする場合と、基本長方形が変形した側蓋片25の輪郭を対象とする場合との双方において、天側辺25q、後辺25r、下辺25s、前辺25pのうちの対応する部分については、同一の称呼を用いることとする(これにより、下後交点Aを、下辺25sと後辺25rとが交わる点と見ることができる)。側蓋片25は、下後交点Aまわりの角部が除去されることで、切除辺25tが形成される。切除辺25tは、側蓋片25の輪郭の一部である。切除辺25tは、端部が、下辺25s及び後辺25rにそれぞれ接続されている。
【0026】
切除辺25tは、最内境界線INLと最外境界線EXLとに挟まれた領域に形成されている。最内境界線INLは、基本長方形における、天側辺25qと後辺25rとの交点25bと、前辺25pと下辺25sとの交点25cとを結ぶ仮想の直線である。最外境界線EXLは、点Eと点Fとを結ぶ仮想の直線である。点Eは、基本長方形における、下後交点Aから交点25bに向かって後辺25r上を後辺25rの長さの20%移動した点である。点Fは、基本長方形における、下後交点Aから交点25cに向かって下辺25s上を下辺25sの長さの20%移動した点である。切除辺25tは、その延長線と後辺25rとが交わる点を切除辺一端25eと、その延長線と下辺25sとが交わる点を切除辺他端25fとしたときに、切除辺一端25eが、下後交点Aを基準として、後辺25rの長さの20%〜100%の間で位置決定され、切除辺他端25fが、下後交点Aを基準として、下辺25sの長さの20%〜100%の間で位置決定されるように構成されている。好ましくは、切除辺一端25eは後辺25rの長さに対して、切除辺他端25fは下辺25sの長さに対して、それぞれ下後交点Aを基準として25%〜50%の間で位置決定されるとよい。本実施の形態では、切除辺一端25e及び切除辺他端25fが共に50%の位置に決定されたうえで、切除辺25tと後辺25r及び下辺25sとで形成された角が面取りされ(丸みが付けられ)ている。
【0027】
再び図1を主に参照しつつ適宜図2(A)を参照して、ラップカートン1の構成の説明を続ける。本体部10及び蓋部20は、本実施の形態では、約0.45〜0.7mm厚のコートボール紙が加工されて形成されている。本実施の形態では、説明の便宜上、本体部10と蓋部20とを機能の観点から区別しているが、本体部10及び蓋部20は、1枚の原紙を切り出して組み立てられて一体に形成されている。ラップカートン1の組み立て、及びラップ入りカートン100の製造は、典型的にはカートニングマシンによって自動で行われる。本体部10を構成する脇板15等や、蓋部20を構成する側蓋片25等の形成は、切り出された原紙が適時にプロペラによって折り曲げられることにより行われる。本体部10及び蓋部20の表面は、消費者の購買意欲を惹起するようなデザインが印刷されたうえで、全体に表面処理が施されている。このとき、表面処理としてOPニスを塗布してもよい。OPニスを塗布すると、すべり性が向上するため、カートニングマシンにおける成形の際の生産性を向上させることができる。
【0028】
ラップカートン1は、前板12の上部中央に、フラップ12fが形成されている。フラップ12fは、本実施の形態では、軸線方向Dの長さが前板12(以下、単に前板12というときは、フラップ12f等を含めた長方形の前板12全体をいう。)の長さの約1/3、高さ方向の長さが前板12の長さの約1/2に形成されている。フラップ12fは、輪郭が、前板端辺19を概ね3等分する点の一方から、底板13側かつ遠い方の脇板15側に進みつつ、上記概ね3等分する点の他方に至るように、前板12の面内が切断されることで形成されている。フラップ12fの下側の辺は、3つの凸部ができるような波形に形成されている。フラップ12fは、前板端辺19で副板16と連接しており、前板端辺19を回転軸線として回動することができるように構成されている。フラップ12fの概ね図心部分には、保持部12fsが設けられている。保持部12fsは、UVニスが塗布されることで形成されている。保持部12fsを形成するUVニスは、ラップフィルム91fに対して付着するが、紙や埃等は付着しない特性を有している。フラップ12fは、蓋部20を閉じたときに掩蓋片22に覆われて外面に表れない大きさに形成されている。なお、蓋部20を閉じたときに掩蓋片22に覆われる前板12の部分全体に、UVニスを塗布することとして、ラップフィルム91fの巻き戻り防止効果を向上させてもよい。なお、保持部12fsは、UVニスを塗布するほかに、ラップフィルム91fが粘着する構成のフィルムやラベル等で形成されていてもよい。
【0029】
引き続き図1及び図2(A)を参照して、ラップ入りカートン100の作用を説明する。ラップカートン1の作用は、ラップ入りカートン100の作用の一環として説明する。工場で製造されたラップ入りカートン100は、複数本が梱包用の段ボール箱(不図示)に詰められて小売店等に輸送される。工場においてラップ入りカートン100が段ボール箱に詰められる際、通常は、脇板15から段ボール箱の開口に挿入され、その後に段ボール箱の蓋を折り畳んで開口が閉じられる。段ボール箱の蓋を折り畳むと、蓋が折り重なった部分に段差が生じる。ラップカートン1は、組み立てられる際の原紙が折り曲げられた後の復元力、及び/又は、脇板端辺15sに設けられた突起15pが外側に開こうとする力により、側蓋片25が脇板15から開き気味になり、特に、構造上本体部10に付着していない後辺25r及び下辺25sの部分の開きが大きくなりがちである。
【0030】
脇板15から開き気味になりになった側蓋片25は、段ボール箱の蓋の重なり部分に生じた段差に引っかかりやすく、引っかかると側蓋片25が接合片22jから剥がれてしまい、ラップカートン1の破損に至る場合も考えられる。しかしながら、ラップカートン1は、側蓋片25の構成として、基本長方形の下後交点Aまわりの角部が除去されて形成された切除辺25tが最内境界線INLと最外境界線EXLとに挟まれた領域内に形成されているので、段ボール箱の蓋部分に生じた段差に引っかかることがなく、ラップカートン1の破損を抑制することができる。換言すれば、ラップカートン1は破壊に対する耐性、つまり強度が向上することとなる。脇板15から開き気味になりになった側蓋片25が他の物に引っかかることは、店舗等によっても生じ得るが、上述のように、ラップカートン1は、側蓋片25の下辺25sと後辺25rとが交わる角部が他の物に引っかかることがほとんどなく、破損を抑制することができる。
【0031】
消費者の手に渡った未開封のラップ入りカートン100を初めて使用する際は、掩蓋片22の先端辺22tにミシン目(不図示)を介して連接されて前板12の下部に貼り付けられている切取片(不図示)を、前板12から剥がしつつミシン目(不図示)で切断して掩蓋片22から分離する。このようにラップカートン1を開封することで、蓋部20が本体部10に対して後板端辺18まわりに回動可能な状態となる。開封されたラップ入りカートン100は、蓋部20を開けると、本体部10の中にラップロール91rが入っている。ラップロール91rには、ラップフィルム91fの先端に引出シール(不図示)が貼り付けられており、引出シール(不図示)を摘んで引き出すことでラップフィルム91fの先端がラップロール91rから剥離し、容易にラップフィルム91fを引き出すことができる。
【0032】
ラップフィルム91fを使用する際は、ラップカートン1を片手で持ち、もう一方の手でラップフィルム91fの先端を摘み、ラップロール91rからラップフィルム91fを必要な長さ分引き出して切断刃23で切断する。このとき、ラップフィルム91fを必要な長さ分引き出した状態で蓋部20を閉じ、ラップフィルム91fを前板12と掩蓋片22とで挟み、掩蓋片22の図心を親指で押さえ、切断刃23の中央を引き出されたラップフィルム91fに食い込ませるようにラップ入りカートン100を軸線91aまわりにひねると、ラップフィルム91fがよじれることなくきれいに切断することができ、好適である。なお、蓋部20を閉じる際は、脇板端辺15sに設けられた突起15pが凹部25dに落ちたときに「カチッ」というスナップ音が生じるので、蓋部20が閉じたことが分かる。
【0033】
切断された後に前板12と掩蓋片22との間に挟まれているラップフィルム91fは、保持部12fsに付着しているため、ラップロール91rへの巻き戻りが防止される。なお、蓋部20を閉じたときに掩蓋片22に覆われる前板12の部分全体にUVニスが塗布されている場合は、ラップフィルム91fの巻き戻り防止効果が一層高まることとなる。また、次回ラップフィルム91fを使用する際に、蓋部20を開けると、フラップ12fが前板12から浮いているので、保持部12fsに付着しているラップフィルム91fの先端も前板12から浮くこととなり、摘みやすい。
【0034】
以上の説明では、側蓋片25の輪郭の一部である切除辺25tが、下後交点Aを基準として、基本長方形における、後辺25rの長さの50%に位置に決定された切除辺一端25eと、下辺25sの長さの50%の位置に決定された切除辺他端25fとを結んだ直線状に形成されているとしたが、図2(B)に示すラップカートン1Rのように、下後交点A側に膨らんだ(凸になった)曲線(円弧又は楕円の弧)状に形成されていてもよい。このようにすると、側蓋片25と接合片22jとの接触面積を大きくすることができる。切除辺25tが曲線状に形成された場合であっても、切除辺25tは、全体が最内境界線INLと最外境界線EXLとに挟まれた領域内に収まるように形成される。
【実施例】
【0035】
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。以下の説明においてラップカートン1の構成に言及しているときは、適宜図1及び図2(A)を参照することとする。以下に示す実施例では、切除辺25tを形成する位置を変えた4種類のラップカートンに対して、切除辺25tをプッシュプルゲージで引き上げて、側蓋片25が破断したときの力を計測した。なお、側蓋片25の破断は、側蓋片25と接合片22jとの接着が剥がれるか、接合片22jが側蓋片25に接着したままで掩蓋片22から分断したことをもって判断した。
【0036】
図3に、試験に用いた各種のラップカートンの側面を示す。図3(A)は第1の実施例に係るラップカートン1A、図3(B)は第2の実施例に係るラップカートン1B、図3(C)は第3の実施例に係るラップカートン1C、図3(D)は比較例に係るラップカートン9を示している。ラップカートン1Aは、下後交点Aを基準として、切除辺一端25eが基本長方形における後辺25rの長さに対して、切除辺他端25fが基本長方形における下辺25sの長さに対して、それぞれ33%の位置として、切除辺25tAが直線で形成されている。ラップカートン1Bは、下後交点Aを基準として、切除辺一端25eが基本長方形における後辺25rの長さに対して、切除辺他端25fが基本長方形における下辺25sの長さに対して、それぞれ66%の位置として、切除辺25tBが直線で形成されている。ラップカートン1Cは、下後交点Aを基準として、切除辺一端25eが基本長方形における後辺25rの長さに対して、切除辺他端25fが基本長方形における下辺25sの長さに対して、それぞれ100%の位置として、切除辺25tCが直線で形成されている(切除辺25tが最外境界線EXL上にある)。ラップカートン9は、切除辺25t9が、基本長方形における後辺25rの長さの40%を半径とする1/4円の円弧である、下後交点Aまわりの切除態様となっている。ラップカートン9の切除辺25t9は、全体が、最内境界線INLと最外境界線EXLとに挟まれた領域の外にある。試験は、各ラップカートン1A、1B、1C、9について、それぞれ5回ずつ行った。
【0037】
図4に試験結果を示す。ラップカートン1Aは、平均1.42kgの力で破断に至った。ラップカートン1Bは、平均1.10kgの力で破断に至った。ラップカートン1Cは、平均1.09kgの力で破断に至った。ラップカートン9は、平均0.42kgの力で破断に至った。上記の試験結果から分かるように、切除辺25tが最内境界線INLと最外境界線EXLとに挟まれた領域に形成されている側蓋片25をもつラップカートン1A、1B、1Cが破断に対する耐性に優れており、その中でも、切除辺一端25eは基本長方形における後辺25rの長さに対して、切除辺他端25fは基本長方形における下辺25sの長さに対して、それぞれ下後交点Aを基準として25%〜50%の間で位置決定された切除辺25tをもつラップカートン1Aがより破断に対する耐性に優れていることが確認できた。
【符号の説明】
【0038】
1 ラップカートン
10 本体部
10h 開口面
12 前板
13 底板
14 後板
15 脇板
15p 突起
15s 脇板端辺
18 後板端辺
20 蓋部
21 蓋板
21f 折曲辺
22 掩蓋片
22t 先端辺
22j 接合片
25 側蓋片
25d 凹部
25p 前辺
25q 天側辺
25r 後辺
25s 下辺
25t 切除辺
91a 軸線
91f 長尺物
91r 巻回体
100 ラップ入りカートン
A 下後交点
EXL 最内境界線
INL 最外境界線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺物が巻かれた巻回体を収容する直方体状に形成された本体部であって、前記巻回体が収容されたときに前記巻回体の軸線と平行になる4つの長方形面のうちの1つが開口した開口面に形成されると共に、前記開口面に直交する2つの前記長方形面のうちの一方を構成する後板と、前記後板に対向する前記長方形面を構成する前板と、前記4つの長方形面に直角で前記直方体状の端面を構成する脇板と、を有する本体部と;
前記後板の前記開口面と交わる端辺である後板端辺に回動可能に連接された蓋部であって、前記蓋部を閉じたときに、前記開口面を覆う天板と、前記天板に連接されて前記前板の一部を覆う掩蓋片と、前記天板に連接されて前記脇板の一部を覆う側蓋片と、を有する蓋部とを備え;
前記側蓋片は、前記天板に連接する天側辺と、前記掩蓋片に隣接する前辺とを有する基本形状の長方形から、前記天側辺に対向する下辺と、前記前辺に対向する後辺とが交わる下後交点まわりの角部が除去されて形成され;
前記基本形状の長方形において、前記天側辺と前記後辺との交点と、前記前辺と前記下辺との交点と、を結ぶ仮想直線を最内境界線とし、前記下後交点から前記後辺に沿って前記天側辺側に前記前辺の長さの20%移動した点と、前記下後交点から前記下辺に沿って前記前辺側に前記天側辺の長さの20%移動した点と、を結ぶ仮想直線を最外境界線としたときに、前記下後交点まわりの角部が除去された部分の輪郭を構成する切除辺が、前記最内境界線と前記最外境界線とに挟まれた領域内に形成された;
巻回体収容箱。
【請求項2】
前記切除辺が前記下後交点側に凸の曲線状に形成された;
請求項1に記載の巻回体収容箱。
【請求項3】
前記掩蓋片は、前記天板に連接した折曲辺に対向する先端辺が、前記先端辺の中点から前記先端辺の端の側に移動するに連れて、前記折曲辺に直交する方向における前記折曲辺と前記先端辺との距離が短くなるように構成された;
請求項1又は請求項2に記載の巻回体収容箱。
【請求項4】
長尺物が巻かれた巻回体と;
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の巻回体収容箱とを備える;
巻回体入り収容箱。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−79080(P2013−79080A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−218427(P2011−218427)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(000001100)株式会社クレハ (477)
【Fターム(参考)】