説明

帯域外放射の除去

帯域外放射の除去のための送信信号前処理方法及び装置が開示される。帯域内のN個のサブチャネルのそれぞれについて、0から1までの範囲内の計算値によりN個のサブチャネルのシンボルのそれぞれを重み付けることが実行される、ユニタリー行列による乗算により、N×1の行列として構成されたこのN個の重み付けられたシンボルをプリコーディングすることが実行される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マルチバンド無線通信システムに関し、特に帯域外放射(out-of-band emission)の除去(cancellation)に関する。
【背景技術】
【0002】
無線スペクトルリソースの不足及び高速データ送信の需要のため、無線通信システムは、高いスペクトル効率と、高い電力及びコスト効率とを実現することが求められている。デジタル信号処理及び無線技術の進展により、マルチバンドシステムは、高いデータレートを実現するための広いスペクトルに対応でき、既存の周波数帯域の柔軟且つ適応的な使用を提供できるため、ますます魅力的になっている。
【0003】
直交周波数分割多重(OFDM:orthogonal frequency division multiplexing)は、無線ローカルエリアネットワーク(WLAN:wireless local area network)及び3GPP(3rd Generation Partnership Project;www.3gpp.org)のLTE(Long Term Evolution)システムのように、最近において様々なシングルバンド通信システムで広く使用されている。OFDMは、直交性を示す帯域内での隣接するサブチャネルにより特徴付けられる。OFDMはまた、サブキャリア割り当ての柔軟性及び高速フーリエ変換(FTT:fast Fourier transform)での実装の簡潔さのため、マルチバンドシステムでの使用に適した変調技術である。この理由は、周波数帯域は、帯域割り当てに従って帯域内に入るサブキャリアをオン又はオフにすることにより、動的に選択又は選択解除できるからである。しかし、OFDMは、サブキャリアの緩やかなサイドローブの減衰(side lobe roll-off)のため、帯域外放射を示す。このことは、送信マスクの要件を満たすための更なる低減がなければ、チャネル間干渉を生じ得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
OFDMに基づくマルチバンドシステムにおいて帯域外放射の低減のための既存の技術が存在する。第1の簡単な技術は、未割り当ての帯域にノッチフィルタを適用することである。しかし、このフィルタのデジタルでの実装は、かなり処理の複雑性を増加させ、アナログでの実装は、動的な帯域割り当てを実現するのに高コスト且つ困難である。
【0005】
第2の技術は、送信信号帯域の端にガードバンドを導入することである。不都合なことに、これはスペクトル効率を犠牲にし、割り当てられた周波数帯域に使用されるかなり多くの数のサブキャリアを有さなければ、十分な保護を提供することができない可能性がある。
【0006】
第3の技術は、時間領域で送信信号に対してウィンドウ化(windowing)を実行することである。これは、余分な信号電力を備えた拡張OFDMシンボルを必要とし、シンボル間干渉を生じる。十分な帯域外の低減を確保するために、ウィンドウ化と共にガードバンドも使用される必要がある(例えば、IEEE Standard 802.11a-1999,“Part 11: Wireless LAN Medium Access Control (MAC) and Physical Layer (PHY) Specifications: High-speed Physical Layer in the 5 GHz Band”参照)。
【0007】
第4の技術は、干渉除去サブキャリアを構成し、これらを送信信号帯域の端に配置することである。この技術は、スペクトル効率を低減するだけでなく、受信機において有効信号対雑音比(SNR:signal-to-noise ratio)を劣化させる。この理由は、除去のために余分な信号電力が費やされるからである(例えば、S. Brandes, I. Cosovic, and M. Schnell,“Reduction of Out-of-Band Radiation in OFDM Systems by Insertion of Cancellation Carriers,” IEEE Communications Letters, Vol. 10, No. 6, June 2006, pp.420-422参照)。
【0008】
従って、既知の手法の問題を実質的に回避できる帯域外放射の除去技術の必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
帯域外放射の除去のための送信信号前処理方法が開示され、帯域内のN個のサブチャネルのそれぞれについて、0から1までの範囲内の計算値によりN個のサブチャネルのシンボルのそれぞれを重み付け、ユニタリー行列による乗算により、このN個の重み付けられたシンボルをプリコーディング(precode)することを有する。
【0010】
更に、帯域外放射の除去のための送信信号前処理方法が開示され、帯域内のN個のサブチャネルのそれぞれについて、0から1までの範囲内の計算値によりN個のサブチャネルのシンボルのうち少なくともn個を重み付け、n×nのユニタリー行列による乗算により、n×1の行列として構成されたこの重み付けられたシンボルをプリコーディングすることを有する。
【0011】
更に、帯域外放射の除去のための受信信号処理方法が開示され、ユニタリー行列の乗算により受信シンボルをプリコーディング解除(de-precoding)し、ただし、受信ユニタリー行列は送信で使用されるプリコーディング行列の転置であり、送信で使用されるそれぞれの重みにより除算することにより、このプリコーディング解除されたシンボルを重み付け解除(de-weighting)することを有する。
【0012】
更に、帯域外放射の除去方法が開示され、時間領域のデータシンボルへの入力データビットのマッピングを実行し、この時間領域のシンボルを複数のサブチャネルに変換し、帯域内のN個のサブチャネルのそれぞれについて、0から1までの範囲内の計算値によりN個のサブチャネルのシンボルのそれぞれを重み付け、ユニタリー行列による乗算により、このN個の重み付けられたシンボルをプリコーディングし、このプリコーディングされたサブチャネルを直交時間領域のサブチャネルに変換し、この時間領域のサブチャネルを送信することを有する。
【0013】
更に、送信機が開示され、時間領域のデータシンボルへの入力データビットのマッピングを実行するモジュールと、この時間領域のシンボルを複数のサブチャネルに変換するモジュールと、帯域内のN個のサブチャネルのそれぞれについて、0から1までの範囲内の計算値によりN個のサブチャネルのシンボルのそれぞれを重み付けるモジュールと、ユニタリー行列による乗算により、このN個の重み付けられたシンボルをプリコーディングするモジュールと、このプリコーディングされたサブチャネルを直交時間領域のサブチャネルに変換するモジュールと、この時間領域のサブチャネルを送信する無線周波数モジュールとを有する。
【0014】
更に、受信機が開示され、複数の時間領域の直交サブチャネルを受信する無線周波数モジュールと、この受信したサブチャネルを周波数領域のサブチャネルに変換するモジュールと、N個のサブチャネルのそれぞれについて、ユニタリー行列の乗算により受信シンボルをプリコーディング解除し、ただし、受信ユニタリー行列は送信で使用されるプリコーディング行列の転置であり、送信で使用されるそれぞれの重みにより除算することにより、このプリコーディング解除されたシンボルを重み付け解除するモジュールと、この重み付け解除されたシンボルをシンボルの系列に変換するモジュールと、出力データビットへのこのシンボルの系列のマッピングを実行するモジュールとを有する。
【0015】
更に、前述の送信機及び受信機を有するトランシーバが開示される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明を具現する広い方法のブロック図
【図2】送信元及び宛先ノードでのOFDMに基づく例示的なマルチバンドトランシーバの概略ブロック図
【図3】例示的なトランシーバの概略ブロック図
【図4】例示的なマルチバンド構成
【図5】帯域外放射の除去を備えた例示的な送信機の概略ブロック図
【図6】帯域外放射の除去に適合した例示的な受信機の概略ブロック図
【図7】片側の帯域外放射の除去の性能
【図8】両側の帯域外放射の除去の性能
【図9】図4に示すマルチバンド構成での未割り当ての帯域での帯域外放射
【発明を実施するための形態】
【0017】
添付図面のうちいずれか1つ以上において同じ参照符号を有するステップ及び/又は特徴に言及が行われる場合、これらのステップ及び/又は特徴は、反対の意図がない限り、この説明の目的では同じ機能又は動作を有する。
【0018】
以下では、“モジュール”という表現は、回路素子の一般用語として理解されるべきである。回路素子は、プロセッサで実行するソフトウェア、デジタル領域におけるファームウェア及びFPGA、並びにアナログ領域でのディスクリート回路(discrete circuit)のように、多くの都合の良いフォーマットで実装されてもよい。また、コード又は回路で実装された場合の行列代数は、当業者に明らかなように、乗算及び加算演算を含み、多くの都合の良い方法で行われてもよい。
【0019】
図1は、本発明を具現した帯域外放射の除去のための広い送信前処理方法100のブロックフロー図である。ステップ102において、帯域内のN個のサブチャネルのそれぞれについて、N個のサブチャネルのシンボルのそれぞれは、0から1までの範囲内の計算値により重み付けられる。ステップ104において、重み付けられたシンボルは、ユニタリー行列による乗算によりプリコーディング(precode)される。
【0020】
OFDMに基づくマルチバンド無線通信システム200が図2に示されている。システム200は、2つの通信ノードを有する。一方は送信元ノード202であり、他方は宛先ノード204である。送信元ノード202は、複数の周波数帯域でデータ情報を送信し、宛先ノード204は、順方向パス206を介して複数の周波数帯域のうち少なくとも1つからデータ情報を受信する。宛先ノード204はまた、チャネル状態情報(CSI:channel state information)を送信元ノード202に提供してもよく、受信したデータパケットを受信確認してもよく、及び/又は逆方向パス208を介して少なくとも1つの周波数帯域で送信元ノードにデータ情報を送信してもよい。送信元ノード及び宛先ノード202、204の双方は、単一素子のアンテナ又はアンテナアレイ210、212をそれぞれ備える。(送信元トランシーバ及び宛先トランシーバ214、216内の)受信機でのチャネル間干渉を低減するために、他のユーザに割り当てられたいずれかの周波数帯域からの信号は、関係するユーザに割り当てられた周波数帯域へのできるだけ小さい放射(emission)を生成しなければならない。周波数帯域について許容される送信電力スペクトル密度は、しばしば送信マスクと呼ばれる。データシンボルがOFDM技術を使用して周波数帯域の複数のサブキャリアで変調される場合、帯域外放射は相当になり、典型的な送信マスクは、サブキャリアの緩やかなサイドローブの減衰(side lobe roll-off)のため、しばしば満たされない。このことは、前述のように、隣接帯域で動作するユーザにとって過度の干渉をもたらす可能性がある。
【0021】
図3に示すように、送信元ノード202又は宛先ノード204のトランシーバ214、216は、データパケットを形成するように入力データビット304を構成し、複数の周波数帯域でOFDM変調を使用してデータパケットを送信する送信機302と、複数の周波数帯域でOFDM復調を使用してCSI、受信確認(ACK:acknowledgement)情報及び/又はデータパケット308を受信する受信機306と、送信機302と受信機306との間の信号パスを切り替えるダイプレクサ310とを含む。
【0022】
送信機302及び受信機306は、異なるノードについて異なる周波数帯域構成を有してもよい。図4は、送信機302のマルチバンド構成400の例を示しており、8個の帯域(1〜8の番号)が収容可能であるが、6個の帯域(1、3、4、6、7及び8の番号)のみが1人のユーザに割り当てられており、帯域2及び5が異なるユーザに割り当てられている(すなわち、第1のユーザにとって“未割り当て”である)。受信機306は、“割り当てられた帯域”のうち1つ以上から信号を受信する。いずれかの送信帯域は、いずれかの“未割り当ての帯域”での他のユーザの送信と干渉しないように、特定の送信マスクの要件を満たさなければならない。
【0023】
帯域外放射の除去を提供する送信機302の概略ブロック図が図5に示されている。まず、入力データビット304は、シンボルマッピングモジュール502により、BPSK(binary phase shift keying)、QPSK(quadrature phase shift keying)又はQAM(quadrature amplitude modulation)のようなシンボルコンステレーションマッピング(symbol constellation mapping)技術を使用してデータシンボル(すなわち、複素数)にマッピングされる。次に、データシンボルは、直並列変換(S/P:serial-to-parallel conversion)モジュール504を通過した後に、M個の割り当てられた帯域のそれぞれのN個のサブキャリアに割り当てられる(未割り当ての帯域のサブキャリアはヌルにされる)。(以下に説明するグループ化されたモジュール506により)帯域外放射の除去が実行された後に、逆高速フーリエ変換(IFFT:inverse fast Fourier transform)がIFFTモジュール508により実行され、続いてモジュール510により並直列変換(P/S:parallel-to-serial conversion)が実行され、周波数領域のシンボルを時間領域のサンプルに変換する。モジュール512によるサイクリックプレフィクスの挿入の後に、OFDM信号514が形成され、送信アンテナ210、212により送信される。明瞭にするために、CP挿入モジュール512の後のRF回路チェーンは示されていないが、アンテナの前にIF及び/又はRF段階が存在することが分かる。N個のサブキャリアをそれぞれ有する合計でMの周波数帯域が存在するため、IFFTサイズはMNである。それにも拘らず、それぞれの(割り当てられた)帯域は、異なる数のサブキャリアを有してもよい。
【0024】
帯域外放射の除去は、全ての割り当てられた帯域(例えば、1、3-4及び6-8)に適用される。前処理は、サブチャネル毎に前処理モジュール506により実行される2つの段階を含む。従って、サブチャネル毎に、シンボル重み付けモジュール516は、0から1までの範囲内の実数値を有する重みにより、N個のシンボルの系列のそれぞれを乗算する。0の値の限界の重みは、シンボルが送信されないことを意味し、1の値の限界の重みは、完全な電力(フルパワー)でシンボルが送信されることを意味する。プリコーディングモジュール518は、ユニタリー行列により、重み付けられたシンボルを乗算する。この前処理は、帯域外放射を除去するのに有効である。ここでは、“除去(cancel)”は、絶対的な意味ではなく、効果的な技術的な意味であり、“取るに足らなくなるまで低減すること”等と同義である。
【0025】
他の形式では、帯域内のN個のサブチャネルの一部nのみが前処理を受ける。n個のサブチャネルは、帯域の端の一方又は双方に直接隣接するものであり、1≦n≪Nである。
【0026】
重み付けの選択及びプリコーディング行列の選択の2つの実施例について説明する。一方の実施例は、片側の帯域外放射の除去であり、他方の実施例は、両側の帯域外放射の除去である。片側の帯域外放射の除去は、連続する大きい帯域を形成するように複数の帯域が相互に隣接しており、大きい帯域の両側の帯域のみが帯域外放射の除去に使用される場合に使用されてもよい。両側の帯域外放射の除去は、両側の未割り当ての帯域で帯域が単独である場合に使用されてもよい。しかし、両側の帯域外放射の除去はまた、連続する大きい帯域の全ての帯域により使用されてもよい。
【0027】
<片側の帯域外放射の除去>
片側の帯域外放射の除去では、重み及びプリコーディング行列は、以下のように選択される。
【0028】
1.N×1のベクトルを規定する。
【数1】

ただし、w>0はサブキャリア間隔により正規化された周波数である。wを除去距離と呼ぶ。この理由は、これは送信帯域の端と、帯域外放射が除去される帯域の一方の除去点との間の距離であるからである。c1の要素
【数2】

(i=0,1,...,N-1)は、送信帯域におけるサブキャリアiの中心から除去点までのスペクトル減衰を表す。c1を片側スペクトル減衰ベクトルと呼ぶ。
【0029】
2.行列
【数3】

の特異値分解を実行する。ただし、INはオーダーNの単位行列である。すなわち、
【数4】

であり、ただし、U1及びV1は(N×N)のユニタリー行列であり、W1は正の対角線成分を有する(N×N)の対角行列である。隣接する他のユーザの帯域(未割り当ての帯域)において取るに足らなくなるように、関係するサブチャネルで適切な電力低減を生じることにより有効に帯域外の除去を実現するのは、(2)の左側の減算補正項である。
【0030】
3.片側の帯域外放射の除去のために、W1の対角線成分は、重みとして利用され、U1はプリコーディング行列として利用される。
【0031】
(2)から、W1から判定された重みが1つのゼロを除いて全て1に等しくなることは明らかである。このことは、1つのデータシンボルが送信できないことを意味する(この理由は、
【数5】

のランクが1であり、唯一のゼロでない固有値1を有するからである)。換言すると、N個のサブキャリアのそれぞれは、N-1個のデータシンボルのみを送信できる。
【0032】
データシンボルs0,s1,...,sN-1がベクトルs=(s0,s1,...,sN-1)Tとして表され得ることを仮定する。シンボルの重み付け及びプリコーディング処理は、数学的にU1W1sとして行列代数で表され得る。すなわち、N個のシンボルは、列行列として構成され、W1により乗算され、次にU1により乗算される。
【0033】
また、(2)から、重み及びプリコーディング行列は、送信帯域のサブキャリアの数N及び所定の除去距離wのみにより判定される点に留意すべきである。換言すると、帯域外の除去は、容易に知られる又は選択されるこれらの2つの変数のみの関数として実現されてもよい。重み及びプリコーディング行列は、リアルタイムではなく、送信の前に計算されてもよい。このことは、データ送信目的の処理時間を確保するのに有利である。
【0034】
<両側の帯域外放射の除去>
両側の帯域外放射の除去では、重み及びプリコーディング行列は、以下のように選択される。
【0035】
1.N×2のベクトルを規定する。
【数6】

ただし、w>0はサブキャリア間隔に対して正規化された周波数であり、除去距離とも呼ばれる。この場合、除去点は送信帯域の両側に対称的に位置する。c2を両側スペクトル減衰ベクトルと呼ぶ。
【0036】
2.行列
【数7】

の特異値分解を実行する。ただし、INはオーダーNの単位行列である。すなわち、
【数8】

であり、ただし、U2及びV2はユニタリー行列であり、W2は正の対角線成分を有する対角行列である。
【0037】
3.両側の帯域外放射の除去のために、W2の対角線成分は、重みになり、U2はプリコーディング行列になる。(4)から、W2から判定された重みが0より大きく1未満の2つの値を除いて全て1に等しくなることは明らかである。このことは、全てのデータシンボルが送信されるが、そのうちの2つは低減した電力で送信されることを意味する(この理由は、
【数9】

のランクが2であり、2つのみのゼロでない固有値を有するからである)。更なる帯域外放射の低減のため、1に等しくない重みはゼロに設定されてもよい。このことは、2つのデータシンボルが送信できないことを意味する。
【0038】
同様に、シンボルの重み付け及びプリコーディング処理は、数学的にU2W2sとして数学的に表され得る。
【0039】
帯域外放射の除去の後に送信機302により生成された信号514を受信するための対応する受信機306が図6に示されている。まず、受信したOFDMシンボルのCPは、CP除去モジュール602により除去される。結果のOFDMシンボルは、S/Pモジュール604及び高速フーリエ変換(FFT:Fast Fourier transform)モジュール606を通過した後に、周波数領域に変換される。それぞれ割り当てられた帯域のサブキャリアは、伝搬効果を補うために、各チャネル等化モジュール608により等化される。送信機302で実行されたプリコーディングを補うために、ユニタリー行列U1T(U1が送信機で使用される場合)又はU2T(U2が送信機で使用される場合)が各プリコーディング解除(de-precoding)モジュール610で使用される。送信データシンボルは、各シンボル重み付け解除(de-weighting)モジュール612を通過した後に回復される。重み付け解除モジュール612は、重みがゼロではない場合、データシンボルの対応する重みにより除算することを含む。全ての回復したデータシンボル618は、P/Sモジュール614及びシンボルデマッピングモジュール616を通過した後に、データビットに戻される。
【0040】
開示された帯域外放射の除去技術の性能を示すために、図7及び8は、それぞれ片側の帯域外放射の除去及び両側の帯域外放射の除去の後の、N=32のサブキャリアを有する周波数帯域での送信信号の正規化された電力スペクトル密度を示している。両側の帯域外放射の除去では、1に等しくない2つの重みはゼロに設定される。パラメータwは(N+1)/2として選択される。これは、除去点が隣接帯域の中心に設定されることを意味する。片側の帯域外放射の除去を使用して、除去のないものと比べて電力スペクトル密度が約10dBだけ低減され、両側の帯域外放射の除去を使用して、電力スペクトル密度が約20dBだけ低減されたことが分かる。
【0041】
図4に示すマルチバンド構成はまた、送信機が複数の帯域で信号を送信する場合に、未割り当ての帯域での帯域外放射を判定するために使用される。図9は、帯域外放射の除去技術がある場合及びない場合で、帯域1、3、4、6、7及び8で送信される信号の正規化された電力スペクトル密度を示している。同じパラメータN=32及びw=(N+1)/2が使用される。未割り当ての帯域2及び5の放射は、帯域外放射の除去がない場合に各帯域の中心で約-20dBであり、開示された両側の帯域外放射の除去技術がある場合に各帯域の中心で-48.5dBより下まで低減されることが分かる。
【0042】
開示された帯域外放射の除去技術は、複数の周波数帯域及びチャネルを集約し、スペクトル効率を改善して送信データレートを増加させるために、無線バックホールのような固定ポイント・ツー・ポイント無線リンクで使用されてもよい。これらはまた、動的な帯域割り当てを可能にし、最適なシステム性能を実現するために、複数の周波数帯域を含むコグニティブ(cognitive)無線ネットワークで使用されてもよい。例えば、スペクトル可用性が図4で示される無線アクセスネットワークのセルについて検討する。チャネル/帯域2及び5は利用可能ではない。高度なRFフィルタを負担することなくスペクトル効率を最大化するため、図9に示すスペクトル密度を備えた信号を生成するために提案の方法が使用される。
【0043】
開示された技術は、ガードバンド又は専用の周波数領域又は時間領域の除去シンボルを使用しないため、他の技術と比べて、システムのスペクトル効率及び電力効率が改善される。
【0044】
開示された技術は、複数の周波数帯域を使用する柔軟性が必要である数ギガビット無線バックホール及びコグニティブ無線アクセスシステムに特に適用可能である。この技術はまた、3GPPのLTEシステムのような直交周波数分割多重アクセス(OFDMA:orthogonal frequency division multiple access)を使用する如何なる移動通信システムで使用されてもよい。当然に他の用途も可能である。
【0045】
前述の説明は、例示的であり本発明の範囲に対して限定的ではない幾つかの実施例を記載している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯域外放射の除去のための送信信号前処理方法であって、
帯域内のN個のサブチャネルのそれぞれについて、
0から1までの範囲内の計算値によりN個のサブチャネルのシンボルのそれぞれを重み付けるステップと、
ユニタリー行列による乗算により、前記N個の重み付けられたシンボルをプリコーディングするステップと
を有する方法。
【請求項2】
直交周波数分割多重(OFDM)方式で実行される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記N個のサブチャネルのシンボルは、N×1の行列に構成され、
前記計算値は、N×Nの対角線行列に構成され、
前記重み付けは、前記シンボルの行列及び前記対角線行列を乗算することにより実行される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記対角線行列及び前記ユニタリー行列は、オーダーNの単位行列及び補正式から判定される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記単位行列及び前記補正式は、前記対角線行列及び前記ユニタリー行列を与えるために特異値分解の対象となる、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記単位行列(IN)及び前記補正式は、
【数10】

の形式になり、ただし、
【数11】

であり、wはサブチャネルキャリア間隔により正規化された周波数である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記単位行列及び前記補正式は、
【数12】

の形式になり、ただし、
【数13】

である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
帯域外放射の除去のための送信信号前処理方法であって、
帯域内のN個のサブチャネルのそれぞれについて、
0から1までの範囲内の計算値によりN個のサブチャネルのシンボルのうち少なくともn個を重み付けるステップと、
n×nのユニタリー行列による乗算により、n×1の行列として構成された前記重み付けられたシンボルをプリコーディングするステップと
を有する方法。
【請求項9】
周波数における前記n個のサブチャネルは、帯域の端に直接隣接して位置する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
帯域外放射の除去のための受信信号処理方法であって、
ユニタリー行列の乗算により受信シンボルをプリコーディング解除するステップであり、ただし、受信ユニタリー行列は送信で使用されるプリコーディング行列の転置であるステップと、
送信で使用されるそれぞれの重みにより除算することにより、前記プリコーディング解除されたシンボルを重み付け解除するステップと
を有する方法。
【請求項11】
帯域外放射の除去方法であって、
時間領域のデータシンボルへの入力データビットのマッピングを実行するステップと、
前記時間領域のシンボルを複数のサブチャネルに変換するステップと、
帯域内のN個のサブチャネルのそれぞれについて、
0から1までの範囲内の計算値によりN個のサブチャネルのシンボルのそれぞれを重み付けるステップと、
ユニタリー行列による乗算により、前記N個の重み付けられたシンボルをプリコーディングするステップと、
前記プリコーディングされたサブチャネルを直交時間領域のサブチャネルに変換するステップと、
前記時間領域のサブチャネルを送信するステップと
を有する方法。
【請求項12】
直交周波数分割多重(OFDM)方式で実行される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記N個のサブチャネルのシンボルは、N×1の行列に構成され、
前記計算値は、N×Nの対角線行列に構成され、
前記重み付けは、前記シンボルの行列及び前記対角線行列を乗算することにより実行される、請求項11又は12に記載の方法。
【請求項14】
前記対角線行列及び前記ユニタリー行列は、オーダーNの単位行列及び補正式から判定される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記単位行列及び前記補正式は、前記対角線行列及び前記ユニタリー行列を与えるために特異値分解の対象となる、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記単位行列(IN)及び前記補正式は、
【数14】

の形式になり、ただし、
【数15】

であり、wはサブチャネルキャリア間隔により正規化された周波数である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記単位行列及び前記補正式は、
【数16】

の形式になり、ただし、
【数17】

であり、wはサブチャネルキャリア間隔により正規化された周波数である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
時間領域のデータシンボルへの入力データビットのマッピングを実行するモジュールと、
前記時間領域のシンボルを複数のサブチャネルに変換するモジュールと、
帯域内のN個のサブチャネルのそれぞれについて、
0から1までの範囲内の計算値によりN個のサブチャネルのシンボルのそれぞれを重み付けるモジュールと、
ユニタリー行列による乗算により、前記N個の重み付けられたシンボルをプリコーディングするモジュールと、
前記プリコーディングされたサブチャネルを直交時間領域のサブチャネルに変換するモジュールと、
前記時間領域のサブチャネルを送信する無線周波数モジュールと
を有する送信機。
【請求項19】
前記変換するモジュールは、逆高速フーリエ変換回路である、請求項18に記載の送信機。
【請求項20】
前記N個のサブチャネルのシンボルは、N×1の行列に構成され、
前記計算値は、N×Nの対角線行列に構成され、
前記重み付けは、前記シンボルの行列及び前記対角線行列を乗算することにより実行される、請求項18又は19に記載の送信機。
【請求項21】
前記対角線行列及び前記ユニタリー行列は、オーダーNの単位行列及び補正式から判定される、請求項20に記載の送信機。
【請求項22】
前記単位行列及び前記補正式は、前記対角線行列及び前記ユニタリー行列を与えるために特異値分解の対象となる、請求項21に記載の送信機。
【請求項23】
前記単位行列(IN)及び前記補正式は、
【数18】

の形式になり、ただし、
【数19】

であり、wはサブチャネルキャリア間隔により正規化された周波数である、請求項22に記載の送信機。
【請求項24】
前記単位行列及び前記補正式は、
【数20】

の形式になり、ただし、
【数21】

であり、wはサブチャネルキャリア間隔により正規化された周波数である、請求項23に記載の送信機。
【請求項25】
複数の時間領域の直交サブチャネルを受信する無線周波数モジュールと、
前記受信したサブチャネルを周波数領域のサブチャネルに変換するモジュールと、
N個のサブチャネルのそれぞれについて、
ユニタリー行列の乗算により受信シンボルをプリコーディング解除し、ただし、受信ユニタリー行列は送信で使用されるプリコーディング行列の転置であり、送信で使用されるそれぞれの重みにより除算することにより、前記プリコーディング解除されたシンボルを重み付け解除するモジュールと、
前記重み付け解除されたシンボルをシンボルの系列に変換するモジュールと、
出力データビットへの前記シンボルの系列のマッピングを実行するモジュールと
を有する受信機。
【請求項26】
請求項18ないし24のうちいずれか1項に記載の送信機と、請求項25に記載の受信機とを有するトランシーバ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2013−509112(P2013−509112A)
【公表日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−535542(P2012−535542)
【出願日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際出願番号】PCT/AU2010/001356
【国際公開番号】WO2011/050392
【国際公開日】平成23年5月5日(2011.5.5)
【出願人】(590003283)コモンウェルス サイエンティフィック アンドインダストリアル リサーチ オーガナイゼーション (11)