説明

干渉縞の形成方法および干渉縞形成装置ならびに干渉縞形成媒体の製造方法

【課題】本発明は、干渉縞の位置ずれを抑制することができる干渉縞の形成方法および干渉縞形成装置ならびに干渉縞形成媒体の製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】複数のレーザ光を記録層21内で干渉させて、記録層21内に干渉縞S1を形成する干渉縞の形成方法であって、記録層21(表面21a)の位置を検出する第1工程と、第1工程で検出した記録層21の位置に基づいて、レーザ光の位相を変化させることで、干渉縞S2の形成位置をずらす第2工程と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光の干渉縞を媒体に形成するための干渉縞の形成方法および干渉縞形成装置ならびに干渉縞が形成された干渉縞形成媒体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、2本のコヒーレントな平面波の光を、フォトポリマーなどの光・屈折率変調材料に照射し、この材料内で2本の光を干渉させて干渉縞を形成することで、この干渉縞の光強度に応じて屈折率の縞を形成する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。このような干渉縞は、グレーティング(回折格子)として機能するため、干渉縞が形成された媒体(干渉縞形成媒体)は、光学部材として利用されたり、情報記録媒体として利用されたりしている。
【0003】
【特許文献1】特開2005−071557号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記した従来技術では、フォトポリマーへの露光を続けると、材料の重合により材料が収縮してしまい、干渉縞の位置がずれてしまうおそれがあった。
【0005】
そこで、本発明は、干渉縞の位置ずれを抑制することができる干渉縞の形成方法および干渉縞形成装置ならびに干渉縞形成媒体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決する本発明は、複数のレーザ光を記録層内で干渉させて、前記記録層内に干渉縞を形成する干渉縞の形成方法であって、前記記録層の位置を検出する第1工程と、前記第1工程で検出した前記記録層の位置に基づいて、前記レーザ光の位相を変化または前記記録層を移動させることで、干渉縞の形成位置をずらす第2工程と、を備えたことを特徴とする。
【0007】
ここで、「記録層の位置を検出する」とは、記録層の面を直接検出する意味を含む他、記録層以外の層(例えば、記録層を挟持する基板等)の面を検出することで間接的に記録層の面を検出する意味をも含む。
【0008】
本発明によれば、複数のレーザ光を記録層内で干渉させて干渉縞を形成する際に、記録層が収縮すると、この収縮に伴って移動する記録層の位置が第1工程で検出される。そして、第2工程において、第1工程で検出した記録層の位置に基づいて、レーザ光の位相を変化または記録層を移動させることで、干渉縞の形成位置をずらす。これにより、記録層の収縮により干渉縞を形成する位置がずれたとしても、この位置を調整して、干渉縞の位置ずれを抑えることができる。
【0009】
なお、前記した干渉縞の形成方法は、干渉縞が形成される記録層を有した干渉縞形成媒体の製造方法に利用できる。ここで、干渉縞形成媒体としては、例えば光ディスクや、偏光板などの光学部材が挙げられる。
【0010】
また、本発明に係る干渉縞形成装置は、レーザ光を出射する光源と、前記光源から出射されたレーザ光を分岐させるビームスプリッタと、前記ビームスプリッタで分岐した一方のレーザ光を反射または通過させることで、前記一方のレーザ光を記録層に照射する第1光学系と、前記ビームスプリッタで分岐した他方のレーザ光を反射または通過させることで、前記他方のレーザ光を前記記録層に照射する第2光学系と、前記記録層の位置を検出する位置センサと、前記位置センサで検出する前記記録層の位置に基づいて、前記第1光学系および前記第2光学系の少なくとも1つを制御することで、前記レーザ光の位相を変化させて干渉縞の形成位置をずらす制御装置と、を備えたことを特徴とする。
【0011】
これによれば、位置センサで検出された記録層の位置が変化した場合には、制御装置が、例えば第1光学系を制御することで、レーザ光の位相を変化させて干渉縞の形成位置をずらす。これにより、記録層の収縮により干渉縞を形成する位置がずれたとしても、この位置を調整して、干渉縞の位置ずれを抑えることができる。
【0012】
また、前記第1光学系は、前記ビームスプリッタで分岐した一方のレーザ光を透過させる第1ハーフミラーと、前記第1ハーフミラーを透過した前記一方のレーザ光を、前記第1ハーフミラーに跳ね返すことで、前記一方のレーザ光を前記第1ハーフミラーの反射面によって記録層に反射させる第1反射板と、を備え、前記第2光学系は、前記ビームスプリッタで分岐した他方のレーザ光を透過させる第2ハーフミラーと、前記第2ハーフミラーを透過した前記他方のレーザ光を、前記第2ハーフミラーに跳ね返すことで、前記他方のレーザ光を前記第2ハーフミラーの反射面によって前記記録層に反射させる第2反射板と、を備え、前記第1反射板または前記第2反射板は、移動装置によって光軸方向に移動自在に構成され、前記制御装置は、前記位置センサで検出する前記記録層の位置に基づいて、前記移動装置を制御することで、前記レーザ光の位相を変化させて干渉縞の形成位置をずらすように構成されていてもよい。
【0013】
これによれば、位置センサで検出された記録層の位置が変化した場合には、制御装置が、移動装置を制御して、例えば第1反射板を移動させることで、レーザ光の位相を変化させて干渉縞の形成位置をずらす。これにより、記録層の収縮により干渉縞を形成する位置がずれたとしても、この位置を調整して、干渉縞の位置ずれを抑えることができる。
【0014】
また、前記第1光学系および前記第2光学系の少なくとも一方には、印加される電圧の変化により屈折率を変化させる屈折率調整素子が設けられ、前記制御装置は、前記位置センサで検出する前記記録層の位置に基づいて、前記屈折率調整素子に印加する電圧を制御することで、前記レーザ光の位相を変化させて干渉縞の形成位置をずらすように構成されていてもよい。
【0015】
これによれば、位置センサで検出された記録層の位置が変化した場合には、制御装置が、屈折率調整素子に印加する電圧を制御して、屈折率調整素子の屈折率を変化させることで、レーザ光の位相を変化させて干渉縞の形成位置をずらす。これにより、記録層の収縮により干渉縞を形成する位置がずれたとしても、この位置を調整して、干渉縞の位置ずれを抑えることができる。
【0016】
また、本発明に係る干渉縞形成装置は、記録層を支持する支持台と、前記記録層に複数のレーザ光を照射可能な照射装置と、を備えた干渉縞形成装置であって、前記記録層の位置を検出する位置センサと、前記支持台を移動させる移動装置と、前記位置センサで検出する前記記録層の位置に基づいて、前記移動装置を制御することで、前記記録層を移動させて干渉縞の形成位置をずらす制御装置と、を備えたものであってもよい。
【0017】
この場合も、制御装置によって適宜支持台に支持された記録層を移動させることができるので、記録層の収縮により干渉縞を形成する位置がずれたとしても、この位置を調整して、干渉縞の位置ずれを抑えることができる。
【0018】
また、本発明に係る干渉縞形成装置は、記録層を支持する支持台と、前記記録層に複数のレーザ光を出射する複数の光源と、を備えた干渉縞形成装置であって、前記記録層の光入射面の位置を検出する位置センサと、前記光源を前記レーザ光の光軸方向に移動させる移動装置と、前記位置センサで検出する前記記録層の光入射面の位置情報に基づいて、前記移動装置を制御することで、前記レーザ光の位相を変化させて干渉縞の形成位置をずらす制御装置と、を備えたものであってもよい。
【0019】
この場合も、制御装置によって適宜光源を移動させることができるので、記録層の収縮により干渉縞を形成する位置がずれたとしても、この位置を調整して、干渉縞の位置ずれを抑えることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、記録層の光入射面の位置に基づいてレーザ光の位相や記録層の位置を変化させることで、干渉縞の形成位置をずらすことができるため、干渉縞の位置ずれを抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
次に、本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。参照する図面において、図1は、本発明の一実施形態に係る光記録装置を示す構成図である。
【0022】
図1に示すように、干渉縞形成装置の一例としての光記録装置1は、干渉縞形成媒体の一例としての光記録媒体2中でレーザ光を干渉させることで干渉縞を記録する装置である。
【0023】
ここで、光記録媒体2は、記録層21およびガラス基板22を備えて構成されている。
【0024】
記録層21は、レーザ光の照射(詳しくは、情報光と参照光との干渉)によって反応することで、干渉縞を記録するものである。この記録層21は、主に記録材を有しており、この記録材が情報光と参照光との干渉によって反応(例えば、重合反応)することで、干渉縞が形成される際に収縮する。なお、記録層21を構成する記録材の材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、(1)光照射で重合反応が起こり高分子化するフォトポリマー、(2)フォトリフラクティブ効果(光照射で空間電荷分布が生じて屈折率が変調する)を示すフォトリフラクティブ材料、(3)光照射で分子の異性化が起こり屈折率が変調するフォトクロミック材料、(4)ニオブ酸リチウム、チタン酸バリウム等の無機材料、(5)カルコゲン材料、などが挙げられる。
【0025】
ガラス基板22は、記録層21を支持する層である。なお、記録層21を支持する層としては、ガラスに限らず、セラミックス、樹脂、などであってもよい。
【0026】
光記録装置1は、光源11、ビームスプリッタ12、第1ハーフミラー13、第1反射板14、第2ハーフミラー15、第2反射板16、支持台17、位置センサの一例としての距離センサ18および制御装置19を主に備えて構成されている。
【0027】
光源11は、所定の波長のレーザ光を出射するものである。そして、光源11から出射されたレーザ光は、ビームスプリッタ12に出射される。
【0028】
ビームスプリッタ12は、例えば、2つのプリズムを僅かな隙間を介して向かい合わせて構成したものであり、光源11からのレーザ光の光軸上に配設されている。そして、このビームスプリッタ12は、レーザ光を直進する光(例えば参照光)と、直角に反射されて曲げられる光(例えば情報光)とに分けている。
【0029】
第1ハーフミラー13は、一方向からくるレーザ光の少なくとも一部を透過可能であり、他方向からくるレーザ光の少なくとも一部を反射可能なミラーである。そして、第1ハーフミラー13は、ビームスプリッタ12を透過(分岐)した一方のレーザ光を第1反射板14側に透過するように配置されている。また、第1ハーフミラー13の反射面は、第1反射板14で跳ね返されたレーザ光を、支持台17に支持された光記録媒体2に跳ね返す向きに配置されている。
【0030】
第1反射板14は、レーザ光を反射するミラーであり、第1ハーフミラー13を透過したレーザ光を、そのまま第1ハーフミラー13に跳ね返すように配置されている。すなわち、第1反射板14は、第1ハーフミラー13を透過したレーザ光の光軸に直交するように配置されている。そして、この第1反射板14は、移動装置の一例としての微動ステージ14Aによって光軸方向に移動自在に支持されている。なお、図示においては、第1反射板14に入射してくるレーザ光と、第1反射板14で反射したレーザ光とをずらして描いているが、実際に、反射されるレーザ光は、入射してくるレーザ光と同軸上に反射される(後述する第2反射板16でも同様)。
【0031】
第2ハーフミラー15は、第1ハーフミラー13と同様のミラーであり、ビームスプリッタ12で反射された他方のレーザ光を第2反射板16側に透過するように配置されている。また、第2ハーフミラー15の反射面は、第2反射板16で跳ね返されたレーザ光を、支持台17に支持された光記録媒体2に跳ね返す向きに配置されている。
【0032】
第2反射板16は、レーザ光を反射するミラーであり、第2ハーフミラー15を透過したレーザ光を、そのまま第2ハーフミラー15に跳ね返すように配置されている。すなわち、第2反射板16は、第2ハーフミラー15を透過したレーザ光の光軸に直交するように配置されている。
【0033】
なお、前記した第1ハーフミラー13および第1反射板14は、第1光学系に相当し、前記した第2ハーフミラー15および第2反射板16は、第2光学系に相当する。
【0034】
支持台17は、光記録媒体2を支持する台であり、第1ハーフミラー13および第2ハーフミラー15から反射されてくる各レーザ光が、光記録媒体2の表面21aに所定の入射角で入射するように配置されている。
【0035】
距離センサ18は、光記録媒体2の記録層21の表面21a(光入射面)の位置を測定するセンサである。この距離センサ18としては、例えば、記録層21の表面21aに超音波を照射して跳ね返ってきた超音波の時間に基づいて、記録層21の表面21aと距離センサ18間の距離(記録層21の表面位置に換算可能な情報)を測定するものを採用することができる。ただし、正確性と機構の簡便性の観点から、距離センサ18としては、マッハツェンダー干渉方式や共焦点方式を採用するのが好ましい。そして、距離センサ18で検出した記録層21の表面位置情報は、制御装置19に出力される。
【0036】
制御装置19は、距離センサ18で検出した表面位置情報に基づいて、微動ステージ14Aを制御するものである。具体的に、制御装置19は、微動ステージ14Aを制御して第1反射板14の位置を変化させることで、記録層21に照射する2本のレーザ光のうち一方の位相を変化させて、記録層21内における干渉縞の形成位置をずらすように作動する。ここで、微動ステージ14Aを制御する方法としては、例えば、実験やシミュレーションなどによって得られる、距離センサ18で検出する表面位置の変化量と、微動ステージ14Aによる第1反射板14の移動量との関係を示すマップを記憶装置に記憶させておき、この記録したマップを参照して表面位置の変化量から微動ステージ14Aの制御量を決定する方法などが挙げられる。なお、この方法では、距離センサ18から取得した表面位置情報と前回の表面位置情報とから変化量を算出し、この変化量とマップとに基づいて制御量(移動量)を取得して、第1反射板14の位置を適宜変更できる。
【0037】
次に、本実施形態に係る光記録装置1による光記録媒体2の製造方法について説明する。参照する図面において、図2は、光記録媒体の製造方法を示す図であり、2本のレーザ光を照射して干渉縞を形成する工程を示す説明図(a)と、記録層の収縮後に従来の方法で干渉縞を形成した状態を示す説明図(b)と、2本のレーザ光の一方の位相をずらす工程を示す説明図(c)である。
【0038】
図2(a)に示すように、光記録装置1により光記録媒体2の記録層21に対して2本のレーザ光を照射し、干渉させると、記録層21内に、2本のレーザ光の各光軸間の角度を二等分する方向に沿うように干渉縞S1が形成される。そして、このように記録層21内で干渉縞S1が形成される際には、記録層21内の記録材が反応(例えば、重合反応)することで、図2(b)に示すように、記録層21が厚み方向において収縮する。これにより、記録層21に形成した干渉縞S1は、元の角度(図2(a)参照)よりも寝た状態となる。
【0039】
そして、このように干渉縞S1の形成角度が変化した後において、さらに干渉縞を形成する場合、従来のようなレーザ光の位相を変化させることができない装置では、レーザ光の位相が変わらないことにより、図2(b)に示すように、記録層21の収縮により寝た状態となる干渉縞S1とは異なる角度で干渉縞S2が形成される。これにより、収縮後に形成された干渉縞S2と収縮前に形成された干渉縞S1は、記録層21の光入射面側において大きくずれてしまう。
【0040】
これに対し、本実施形態の構造においては、記録層21が収縮すると、変化した記録層21の表面位置が距離センサ18で検出される(第1工程)。そして、このように距離センサ18で検出される表面位置情報が変化することで、制御装置19は、その変化量とマップに基づいて、第1反射板14の移動量を取得し、この移動量に基づいて微動ステージ14Aを制御して第1反射板14を所定量移動させる(第2工程)。これにより、図2(c)に示すように、2本のレーザ光のうち一方のレーザ光の位相が変化して、収縮後の干渉縞S2の形成位置を、元の干渉縞S1の位置に近づけるようにずらすことができる。そのため、従来のような製造方法に比べて、収縮前の干渉縞S1と収縮後の干渉縞S2との最大ずれ量を極力小さく抑えることができる。
【0041】
以上によれば、本実施形態において以下のような効果を得ることができる。
記録層21の表面21aの位置に基づいてレーザ光の位相を変化させることで、干渉縞S2の形成位置をずらすことができるため、干渉縞S2の位置ずれを抑制することができる。
【0042】
なお、本発明は前記実施形態に限定されることなく、以下に例示するように様々な形態で利用できる。
前記実施形態では、記録層21に照射するレーザ光に情報を埋め込んでいないが、本発明はこれに限定されず、公知の空間位相変調器やDMD素子を光路上に適宜設けることで記録層21に照射する2本のレーザ光の一方に情報を埋め込んでもよい。なお、情報を埋め込まない場合には、光記録媒体2は偏光板などの光学素子として利用でき、情報を埋め込む場合には、光記録媒体2は光ディスクとして利用できる。
【0043】
前記実施形態では、第1反射板14を移動させるようにしたが、本発明はこれに限定されず、第2反射板16に微動ステージを設けて、第2反射板16を光軸方向に移動させてもよい。この場合も、2本のレーザ光のうち一方の位相を変化させて、干渉縞の形成位置を適宜変化させることができる。
【0044】
また、第1反射板14等のミラーを移動させる代わりに、媒質の屈折率を電圧で変化させる屈折率調整素子を用いて、レーザ光の位相を変化させてもよい。具体的には、例えば図3に示すように、図1に示した実施形態におけるハーフミラー13,15の代わりに、通常のミラー131,151を設け、各ミラー131,151と光記録媒体2(記録層21)との間に、屈折率調整素子132,152を設ければよい。そして、この場合、制御装置191は、距離センサ18で検出する表面位置の変化量と、各屈折率変調素子132,152の屈折率との関係を示すマップを記憶装置に記憶させており、このマップに基づいて各屈折率変調素子132,152に印加する電圧を制御している。なお、この形態におけるミラー131および屈折率調整素子132は第1光学系に相当し、ミラー151および屈折率調整素子152は第2光学系に相当する。これによれば、距離センサ18で検出された記録層21の位置が変化した場合には、制御装置191が、各屈折率調整素子132,152に印加する電圧を制御して、各屈折率調整素子132,152の屈折率を例えばそれぞれ異なる屈折率n1,n2に変化させることで、レーザ光の位相を変化させて干渉縞の形成位置をずらす。これにより、記録層の収縮により干渉縞を形成する位置がずれたとしても、この位置を調整して、干渉縞の位置ずれを抑えることができる。なお、屈折率調整素子は、必ずしも図3の形態のように第1光学系および第2光学系の両方に設ける必要はなく、第1光学系および第2光学系の少なくとも一方に設ければよい。
【0045】
また、図3の形態において、ミラー131,151はいずれか一方だけ設けるようにしてもよい。例えばミラー131を無くす場合には、ビームスプリッタ12を透過するレーザ光の光軸上に、屈折率調整素子132、光記録媒体2をこの順に設け、ミラー151の角度を光記録媒体2に向くように設定し、ミラー151で反射するレーザ光の光軸上に屈折率調整素子152を配置すればよい。
【0046】
また、レーザ光の位相を変化させる代わりに、記録層21の表面位置を変化させることで、干渉縞の形成位置を変化させてもよい。具体的には、例えば、図4に示すような光記録装置3で干渉縞を形成すればよい。ここで、この光記録装置3は、図1に示した実施形態と同様の光源11、ビームスプリッタ12、支持台17および距離センサ18を備えている。また、この光記録装置3は、図1の実施形態とは異なり、ビームスプリッタ12を透過したレーザ光を光記録媒体2に反射する第1ミラー31と、ビームスプリッタ12で反射されたレーザ光を光記録媒体2に反射する第2ミラー32と、支持台17を記録層21の収縮方向に移動させる微動ステージ17Aと、微動ステージ17Aを制御する制御装置33とを備えている。そして、制御装置33では、距離センサ18で検出する表面位置の変化量と、微動ステージ17Aによる支持台17の移動量との関係を示すマップを記憶装置に記憶させており、このマップに基づいて微動ステージ17Aを制御している。なお、この形態における光源11、ビームスプリッタ12、第1ミラー31および第2ミラー32は、照射装置の一例に相当する。
【0047】
このような光記録装置3では、図5(a)〜(b)に示すように、干渉縞S1を形成した際に記録層21が収縮すると、図1の実施形態と同様に、距離センサ18から制御装置33に出力される表面位置情報が変化することで、制御装置33は、その変化量とマップに基づいて、支持台17の移動量を取得し、この移動量に基づいて微動ステージ17Aを制御する。これにより、図5(c)に示すように、記録層21が収縮方向に移動して、干渉縞S2の形成位置を、元の干渉縞S1の位置に近づけるようにずらすことができる。そのため、従来のような製造方法に比べて、収縮前に形成した干渉縞S1と収縮後に形成する干渉縞S2との最大ずれ量を極力小さく抑えることができる。
【0048】
なお、図4の形態では、支持台17を記録層21の収縮方向(厚み方向)に移動させるように構成したが、本発明はこれに限定されず、例えば図6(a),(b)で示すように記録層21の収縮により干渉縞S1が寝た状態に形成された記録層21(光記録媒体2)を、図6(c)に示すように、その面方向に沿って移動させるように構成してもよい。この場合も、従来のような製造方法に比べて、収縮前に形成した干渉縞S1と収縮後に形成する干渉縞S2との最大ずれ量を極力小さく抑えることができる。
【0049】
前記実施形態では、干渉させるレーザ光を2本としたが、本発明はこれに限定されず、何本であってもよいが、特に、2本〜4本が好ましい。この理由は、本数が多いと、それらを調整して1点に集めるのが困難となるからであり、また、1本では干渉が起こらないからである。そのため、光学系をシンプルで、かつ、安定させるためには、2本〜4本が好ましい。なお、参照光と情報光とを同軸上においてまとめて記録層に照射するコリニア記録方法においても、レーザ光の数は2本と数える。
【0050】
前記実施形態では、第1反射板14および第2反射板16に入射してくるレーザ光(以下、「入射光」という。)を、入射光と同軸上に反射させたが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、図7に示すように、第1反射板14や第2反射板16の反射面をL字状に形成することで、入射光を、入射光の光軸と平行であり、かつ、前記光軸からずれた軸上に反射させてもよい。
【0051】
前記実施形態では、光記録媒体2を、記録層21と、この記録層21を支持するガラス基板22とで構成したが、本発明はこれに限定されず、例えば、図8に示すように、記録層21を一対のガラス基板22で挟むことで光記録媒体2’を構成してもよい。また、図8に示すように、光記録媒体2’の光入射面(レーザ光が入射される面)側を、中央に孔171が形成された支持台172で支持する場合には、記録層21の光入射面(表面21a)ではなく、光入射面とは反対側の面21bの位置を距離センサ18で検出してもよい。なお、距離センサ18で検出する面は、記録層21を支持するガラス基板22の表面であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の一実施形態に係る光記録装置を示す構成図である。
【図2】光記録媒体の製造方法を示す図であり、2本のレーザ光を照射して干渉縞を形成する工程を示す説明図(a)と、記録層の収縮後に従来の方法で干渉縞を形成した状態を示す説明図(b)と、2本のレーザ光の一方の位相をずらす工程を示す説明図(c)である。
【図3】レーザ光の位相を変化させる他の形態を示す構成図である。
【図4】支持台を移動させて記録層の表面位置を変化させる形態を示す構成図である。
【図5】図4に示す光記録装置による光記録媒体の製造方法を示す図であり、2本のレーザ光を照射して干渉縞を形成する工程を示す説明図(a)と、干渉縞の形成により記録層が収縮した状態を示す説明図(b)と、記録層の表面位置を厚み方向に移動させる工程を示す説明図(c)である。
【図6】図5の変形例を示す図であり、2本のレーザ光を照射して干渉縞を形成する工程を示す説明図(a)と、干渉縞の形成により記録層が収縮した状態を示す説明図(b)と、記録層の表面位置を面方向に移動させる工程を示す説明図(c)である。
【図7】第1反射板や第2反射板の反射面をL字状にした形態を示す構成図である。
【図8】距離センサで検出する面を変更した形態を示す構成図である。
【符号の説明】
【0053】
1 光記録装置
2 光記録媒体
11 光源
12 ビームスプリッタ
13 第1ハーフミラー
14 第1反射板
14A 微動ステージ
15 第2ハーフミラー
16 第2反射板
17 支持台
18 距離センサ
19 制御装置
21 記録層
21a 表面
S1,S2 干渉縞

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のレーザ光を記録層内で干渉させて、前記記録層内に干渉縞を形成する干渉縞の形成方法であって、
前記記録層の位置を検出する第1工程と、
前記第1工程で検出した前記記録層の位置に基づいて、前記レーザ光の位相を変化または前記記録層を移動させることで、干渉縞の形成位置をずらす第2工程と、を備えたことを特徴とする干渉縞の形成方法。
【請求項2】
レーザ光を出射する光源と、
前記光源から出射されたレーザ光を分岐させるビームスプリッタと、
前記ビームスプリッタで分岐した一方のレーザ光を反射または通過させることで、前記一方のレーザ光を記録層に照射する第1光学系と、
前記ビームスプリッタで分岐した他方のレーザ光を反射または通過させることで、前記他方のレーザ光を前記記録層に照射する第2光学系と、
前記記録層の位置を検出する位置センサと、
前記位置センサで検出する前記記録層の位置に基づいて、前記第1光学系および前記第2光学系の少なくとも1つを制御することで、前記レーザ光の位相を変化させて干渉縞の形成位置をずらす制御装置と、を備えたことを特徴とする干渉縞形成装置。
【請求項3】
前記第1光学系は、
前記ビームスプリッタで分岐した一方のレーザ光を透過させる第1ハーフミラーと、
前記第1ハーフミラーを透過した前記一方のレーザ光を、前記第1ハーフミラーに跳ね返すことで、前記一方のレーザ光を前記第1ハーフミラーの反射面によって記録層に反射させる第1反射板と、を備え、
前記第2光学系は、
前記ビームスプリッタで分岐した他方のレーザ光を透過させる第2ハーフミラーと、
前記第2ハーフミラーを透過した前記他方のレーザ光を、前記第2ハーフミラーに跳ね返すことで、前記他方のレーザ光を前記第2ハーフミラーの反射面によって前記記録層に反射させる第2反射板と、を備え、
前記第1反射板または前記第2反射板は、移動装置によって光軸方向に移動自在に構成され、
前記制御装置は、前記位置センサで検出する前記記録層の位置に基づいて、前記移動装置を制御することで、前記レーザ光の位相を変化させて干渉縞の形成位置をずらすように構成されていることを特徴とする請求項2に記載の干渉縞形成装置。
【請求項4】
前記第1光学系および前記第2光学系の少なくとも一方には、印加される電圧の変化により屈折率を変化させる屈折率調整素子が設けられ、
前記制御装置は、前記位置センサで検出する前記記録層の位置に基づいて、前記屈折率調整素子に印加する電圧を制御することで、前記レーザ光の位相を変化させて干渉縞の形成位置をずらすように構成されていることを特徴とする請求項2に記載の干渉縞形成装置。
【請求項5】
記録層を支持する支持台と、
前記記録層に複数のレーザ光を照射可能な照射装置と、を備えた干渉縞形成装置であって、
前記記録層の位置を検出する位置センサと、
前記支持台を移動させる移動装置と、
前記位置センサで検出する前記記録層の位置に基づいて、前記移動装置を制御することで、前記記録層を移動させて干渉縞の形成位置をずらす制御装置と、を備えたことを特徴とする干渉縞形成装置。
【請求項6】
複数のレーザ光の干渉により干渉縞が形成された記録層を有する干渉縞形成媒体の製造方法であって、
前記記録層の位置を検出する第1工程と、
前記第1工程で検出した前記記録層の位置に基づいて、前記レーザ光の位相を変化または前記記録層を移動させることで、干渉縞の形成位置をずらす第2工程と、を備えたことを特徴とする干渉縞形成媒体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−47795(P2009−47795A)
【公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−212155(P2007−212155)
【出願日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】