説明

平面基板およびその製造方法

【課題】パターンをランダムに配置する平面基板およびその製造方法を提供する。
【解決手段】本発明に係る平面基板は、ランダムに配置された多数のパターン1を有し、パターンの全体は、仮想的な単位形状となる閉領域Uが、平面基板上に敷き詰められることによって形成され、閉領域の内部には、パターンが、予め規定された仮想的な第1の許容領域Aci内に形成されていると共に、第1の許容領域内のランダムな位置に1つずつ配置されることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、干渉ムラを抑えた平面基板およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
平面基板の表面に反射防止効果を得るためには、微細パターンを一定の密度で配置する必要がある。ところが、一定の密度で配置するために隣り合うパターンを等間隔に配置すると、隣接するパターン同士による反射光の干渉効果によって、表面が色づいて見える、いわゆる「干渉ムラ」が生じるという問題がある。
【0003】
図6は、微細パターン31が、平坦な基板32上に規則的に配置された従来の平面基板を示している。しかし、上述のとおり、このような規則的なパターンの配置では、隣り合うパターンによる反射光の干渉が起こり、干渉ムラが生じやすい。
【0004】
そこで、特許文献1では、反射型液晶表示装置などに適用される、「面に凹凸形状を有する反射板において、凹部又は凸部の一部が所定の規則に従って配置され、任意の直線状断面における凹凸形状が不規則である反射板」を開示している(請求項1)。この構成によれば、「反射光の干渉による色付きのない反射板を得る」(第8段落)などの効果を奏する。
【0005】
また、特許文献2では、偏光板などに適用される防眩性フィルムにおいて、「凸部となるパターンをランダムに配置するために、インクジェットヘッド部に微細な振動を与えること」等を開示している(第45段落参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−14211号公報
【特許文献2】特開2004−333976号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、従来のように、単にパターンをランダムに配置するだけでは、パターン同士が極めて近く接近して配置されるおそれがある。すなわち、ランダムに配置するとしても、そこには一定の制限が必要であり、確実に干渉を抑えるという最も重要なかつ基本的な条件を備える一方で、パターン設計の容易さを考慮したものは、知られていない。
【0008】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、光の干渉を確実に抑ることができる微細パターンを形成した平面基板およびその製造方法を提供することを主たる技術課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る平面基板は、ランダムに配置された多数のパターン1を有し、パターンの全体は、仮想的な単位形状となる閉領域Uが、平面基板上に敷き詰められることによって形成され、閉領域の内部には、パターンが、予め規定された仮想的な第1の許容領域Aci内に形成されていると共に、第1の許容領域内のランダムな位置に1つずつ配置されることを特徴とする。
【0010】
本発明によると、隣り合うパターンの間隔がランダムに配置されるため、反射光が相互干渉することなく、干渉ムラが発生しない。しかも、このパターンは仮想的な単位形状となる閉領域Uが平面基板上に規則正しく敷き詰めたものであるが、許容領域以外のいわゆる禁則領域にはパターンが形成されていないため、理論的に確実に干渉を抑えることができる。しかも、基板全体でみれば閉領域を繰り返し単位としているため、パターン設計が極めて容易である。
【0011】
ここで、許容領域内のランダムな位置は、例えば、コンピュータ等でその都度乱数を発生させ、その乱数を用いて特定される許容領域内の座標である。乱数はその都度ランダムに値を異にするため、許容領域毎に乱数を発生させると、許容領域毎に許容領域に対する相対的な座標を異にすることができる。
【0012】
本発明に係る平面基板では、閉領域Uを単位とする領域において、パターン1を、一定の密度で、かつ、ランダムに配置して構成することができる。
【0013】
本発明に係る平面基板において、パターンは、パターンの位置を特定する基準点を備え、第1の許容領域は、予め規定された仮想的な第2の許容領域Aceを含み、基準点が、第2の許容領域内のランダムな位置に1つずつ配置されるようにしてもよい。このようにすると、パターンの位置は、基準点だけを考慮して配置すれば良いため、パターンの取り扱いが容易となる。
【0014】
本発明に係る平面基板において、閉領域と第2の許容領域をいずれも正方形とすると共に、両者の中心が一致するように配置してもよい。このようにすると、閉領域および第2の許容領域を簡易な正方形に固定でき、閉領域と第2の許容領域との相対的な位置関係を特定できるため、パターンの配置する領域が簡略化され、パターンの配置が容易となる。
【0015】
本発明に係る平面基板において、閉領域の中心に配置された第2の許容領域の1辺の長さp’は、下記式(1)を満たすようにしてもよい。
(式1)
p’=p−(R+2d)
但し、pは前記閉領域の1辺の長さ、Rは前記円の直径、dは前記閉領域の1辺と前記円との距離の最小値
【0016】
このようにすると、パターンは、たとえ領域毎にランダムに配置されたとしても、各領域では、閉領域と少なくともd以上離間してその閉領域内に配置される。
【0017】
本発明に係る平面基板において、パターンは多角形の平面形状であってもよい。例えば、本発明に係る平面基板は、まず、仮想的な円を上記と同様にしてランダムに配置し、次に、パターンの多角形をその円内に配置して構成してもよい。多角形は円形のような対称性を有しないため、多角形の配置では、向きも決定する必要がある。多角形の向きは、基準軸を設けて、閉領域U毎に一定にしてそれぞれ配置してもよく、ランダムにそれぞれ配置してもよい。また、パターンは多角形を底面とする柱形状又は錐形状を含む立体形状であってもよく、多角形の平面形状と同様にして平面基板の表面に底面を配置することができる。
【0018】
本発明に係る平面基板の製造方法は、ランダムに配置された多数のパターンを有する平面基板の製造方法であって、平面基板の表面を、単位形状となる閉領域で仮想的に隙間無く区画し、閉領域の内部に、パターンの配置が許容される許容領域を設定し、許容領域内において、パターンの位置を、許容領域毎にランダムに1つ決定し、パターンを位置にそれぞれ配置する、各ステップを含むように構成する。
【0019】
このような構成によると、光の干渉を抑えた平面基板を簡単に製造することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る平面基板では、平面基板の表面に、閉領域を単位とする領域において、パターンを、一定の密度で、かつ、ランダムに配置しているため、この平面基板を用いると、確実に光の干渉を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】平面基板の構成例の一部を示す図。
【図2】図1の領域U1を示す図。
【図3】図1においてパターンを円柱状とし矢印の方向に見たV−Vの断面図。
【図4】円形のパターンをランダムに配置した実施例を示す図。
【図5】パターンを三角錐とする平面基板の一部を側方から見た図。
【図6】従来のパターンの配置を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1は、平面基板の構成例の一部を示す図である。図1は、円形状のパターン1が形成された平坦な基板2の表面を上方から見た図である。
【0023】
図1に示すように、この平面基板10には、実際には見えない仮想的な単位形状として、矩形状(例えば正方形)からなる閉領域(U)が、平面基板上に敷き詰められることによって形成されている。現実に存在するのはパターン1だけであり、パターン1は、それぞれの閉領域(U)の内部に必ず一つずつ存在する。また、閉領域の周辺部には禁則領域が設けられており、パターン1は、禁則領域よりも内側に設けられた許容領域Aci内にのみ、配置することが許されている。
【0024】
パターン1の位置は、許容領域Aci内の任意の座標に配置される。パターン1を配置する際には、コンピュータに乱数を発生させることで許容領域内のランダムな配置を実施する。
【0025】
図2は、図1に示す閉領域Uの一つU1を示す図である。領域U1の許容領域の内部に円形状のパターン1が形成されている。パターン1の許容領域Aciよりも更に内側にはパターン1の中心Cについての中心点許容領域Aceが存在することになる。
【0026】
具体的には、図2に示すように、領域U1は、原点Oを基準として、1辺をx軸上に長さpxとし、他の1辺をy軸上に長さpyとする正方形(但し、px=py)である。パターン1の平面形状は、直径Rの円形であり、その中心Cは、座標(dx+R/2,dy+R/2)に配置される。中心点許容領域Aceは、1辺をx軸と平行に長さpx’とし、他の1辺をy軸に平行に長さpy’とする矩形であり、領域U1の中心に配置される。
【0027】
ここで、パターン1と領域U1の各辺との距離の最小値d(x方向をdx、y方向をdyとあらわす)とすると、許容領域Aceの1辺の長さpx’および許容領域Aceの他の1辺の長さpy’は下記式2であらわされる。
【0028】
(式2)
px’=px−(R+2dx)、
py’=py−(R+2dy)
【0029】
許容領域Aceの各辺の長さを上記式1で規定すると、パターン1の中心Cが許容領域Ace内にランダムに配置されるとしても、パターン1は、領域U1と、x方向でdx以上およびy方向でdy以上離間して許容領域Aci内に配置できる。
【0030】
最も計算量が少ないのは、領域U1を1辺の長さpの正方形とし、パターン1と領域U1の各辺との距離の最小値をx方向およびy方向共にd(すなわちpx’=py’)とする場合である。このとき、許容領域Aceの1辺の長さpx’および許容領域Aceの他の1辺の長さpy’は、上記式2より、上記式1と同じく、
px’=py’=p−(R+2d)
となる。
【0031】
パターン1は、例えば円柱又は円錐等の立体形状であってもよい。パターン1が円柱又は円錐である場合、パターン1の底面は円形であるため、底面を平面基板上に配置するようにすると、上記の円形の配置と同様にして配置することができる。
【0032】
図3は、図1においてパターンを円柱とし矢印の方向に見たV−Vの断面図を示す。この図に示すように、パターン1は一定の厚みが存在する円柱である。パターン1は、各領域U1、U2、U3、・・・内でランダムに1つずつ配置されており、図面に向かって、領域U1では左奥に、領域U2では底面の円形の直径を断面の1辺として少し右よりに、領域U3では表示されていないが中央手前にそれぞれ配置されている。
【0033】
図4は、円柱のパターンをランダムに配置した実施例を示す図である。図4は、閉領域Uを正方形とし、上記式2を用いて閉領域Uの中心に許容領域Aceを規定し、パターンの中心を許容領域Ace内にランダムに配置して拡大した図である。具体的には、閉領域Uを1辺を25μmの正方形とし、パターンの底面の直径を10μmとし、パターンと閉領域の1辺との距離の最小値をx方向およびy方向で1μmとする。この場合、上記式2より許容領域Aceとして1辺を13μmとする正方形を、閉領域Uの中心に規定することができる。なお、パターンの円柱の高さは3μmである。
【0034】
閉領域Uは、1辺を5μm〜100μm、望ましくは15μm〜30μmとする正方形を、パタ−ンは、底面の直径を2μm〜20μm、高さを1μm〜10μmとする円柱を用いることができる。
【0035】
以上のような実施形態の構成によると、パターン1は、平面基板10の全体を巨視的にみると一定の密度でランダムに配置されているにもかかわらず、微視的には禁則領域が設けられることによって光の干渉や局所的なパターンのムラを確実に排除することができる。また、パターン1は、閉領域Uという繰り返し単位で構成されるため、設計も容易である。
【0036】
なお、閉領域Uは、正方形に限らず、許容領域の設定を適切に行えば長方形でもよいし、その他二次元平面上に隙間無く敷き詰めることが可能な形状であればよく、理論的には例えば正三角形、正六角形などでもよい。
【0037】
パターン1は、円形状に限らず、三角形、四角形、五角形、六角形、・・・、n角形(nは正の整数)などの多角形であってもよい。例えば、パターン1が多角形の平面形状である場合、その多角形の位置を特定する基準点とその許容領域を設けて、その基準点を許容領域内にランダムに配置してもよい。このとき、多角形の向きは、閉領域Uの一辺等の基準軸を設けて、閉領域U毎に一定にしてそれぞれ配置してもよく、ランダムにそれぞれ配置してもよい。
【0038】
さらに、パターン1は多角形を底面とする柱形状又は錐形状を含む立体形状であってもよく、多角形の平面形状と同様にして平面基板の表面に底面を配置することができる。
【0039】
パターン1は、実際、形成プロセス中にパターンの一部欠けや変形等により閉領域によってその形状や大きさを異にすることがある。そのため、理論的には、パターン1は、円形若しくは多角形の平面形状又は柱形状若しくは錐形状の立体形状で規定しているが、それらの近似形、略円形若しくは略多角形の平面形状又は略柱形状若しくは略錐形状の立体形状であってもよい。
【0040】
図5は、パターンを三角錐とする平面基板の一部を示す図であり、側方から見た図である。パターン1は底面を三角形とする三角錐である。パターン1は底面の三角形の中心を用いて平面基板の表面に底面を配置することができる。
【0041】
このようなパターン1の形成方法としては、マスクプロセス等を含む公知のフォトリソ技術或いはナノインプリント技術等が挙げられ、その製法については限定するものではない。例えば、露光強度の変更等によっても形成することができる。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明によれば、一定の密度で、ランダムにパターンを配置した平面基板を構成することで、反射光や散乱光の干渉を抑えることができ、例えば、表示装置などに用いると視認性を向上させることができる。
【符号の説明】
【0043】
1 パターン
2 基板
10、30 平面基板
U 仮想的な単位形状となる閉領域
U1,U2,U3 閉領域の一つ
Aci パターン1の許容領域
Ace パターン1の底面の中心Cの中心許容領域
C パターン1の中心
O 原点
R パターン1の直径

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ランダムに配置された多数のパターン(1)を有する平面基板であって、
前記パターンの全体は、
仮想的な単位形状となる閉領域(U)が、前記平面基板上に敷き詰められることによって形成され、
前記閉領域の内部には、
前記パターンが、
予め規定された仮想的な第1の許容領域(Aci)内に形成されていると共に、
前記第1の許容領域内のランダムな位置に1つずつ配置された平面基板。
【請求項2】
前記パターンは、前記パターンの位置を特定する基準点を備え、
前記第1の許容領域は、予め規定された仮想的な第2の許容領域(Ace)を含み、
前記基準点が、
前記第2の許容領域内のランダムな位置に1つずつ配置される
ことを特徴とする請求項1記載の平面基板。
【請求項3】
前記閉領域と前記第2の許容領域をいずれも正方形とすると共に、両者の中心が一致するように配置された請求項2記載の平面基板。
【請求項4】
前記パターンは、円であり、
前記基準点が前記円の中心(C)である請求項3に記載の平面基板。
【請求項5】
前記第2の許容領域の1辺の長さp’は、下記式(1)
(式1)
p’=p−(R+2d)
但し、pは前記閉領域の1辺の長さ、Rは前記円の直径、dは前記閉領域の1辺と前記円との距離の最小値
を満たす請求項4記載の平面基板。
【請求項6】
前記パターンは、多角形である
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の平面基板。
【請求項7】
前記パターンは、柱形状又は錐形状を含む立体形状である
ことを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに1項に記載の平面基板。
【請求項8】
前記立体形状の底面は、前記円又は前記多角形である
ことを特徴とする請求項7記載の平面基板。
【請求項9】
ランダムに配置された多数のパターンを有する平面基板の製造方法であって、
前記平面基板の表面を、
単位形状となる閉領域で仮想的に隙間無く区画し、
前記閉領域の内部に、
前記パターンの配置が許容される許容領域を設定し、
前記許容領域内において、
前記パターンの位置を、前記許容領域毎にランダムに1つ決定し、
前記パターンを前記位置にそれぞれ配置する、
各ステップを含む平面基板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−186253(P2011−186253A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−52459(P2010−52459)
【出願日】平成22年3月10日(2010.3.10)
【出願人】(302003244)株式会社エスケーエレクトロニクス (31)
【Fターム(参考)】