説明

床暖房用ヒータパネル

【課題】従来の床暖房用ヒータパネルと比較して、サーモスタットの断続による加熱変動
の不快感を少なくすることができ、さらに電磁波の発生も少なくすることのできる床暖房
用ヒータパネルを提供する。
【解決手段】木質基材11の裏面に電源線1,2と電源線に接続するヒータ回路を組み込
んでなる床暖房用ヒータパネル10において、ヒータ回路を、それぞれにサーモスタット
6を備えた2つ以上の独立したヒータ回路で構成し、各独立したヒータ回路を電源線に並
列接続する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木質基材の裏面に電源線と前記電源線に接続するヒータ回路を組み込んでなる床暖房用ヒータパネルに関する。
【背景技術】
【0002】
木質基材の裏面に電源線と前記電源線に接続するヒータ回路を組み込んでなる床暖房用ヒータパネルは知られており、床暖房用ヒータパネルの複数枚を電気的に接続しながら床下地面に敷き詰めて電気式床暖房フロアとされる(特許文献1,2等参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2008−157611号公報
【特許文献2】特開2007−170708号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の床暖房用ヒータパネルは、最も一般的には、ほぼ1818×303mmの長方形状のものであり、床暖房用ヒータパネルを構成する木質基材の裏面に電源線と、該電源線に直列に接続するようにして、サーモスタットを備えた1つのヒータ回路が組み込まれている。従来の床暖房用ヒータパネルの場合、熱閉塞によりサーモスタットが作動したときに、ヒータ回路への電源供給は切断され、当該床暖房用ヒータパネルの全域において、加熱が中断する。そのために、使用者は不快感を持つ場合がある。また、床暖房用ヒータパネルにも、ヒータ回路から発生する電磁波を低減することも求められている。
【0005】
さらに、床暖房を施工するフロアによっては、床暖房用ヒータパネルの全面にヒータ回路を配置したいわゆる全面ヒータパネルと、床暖房用ヒータパネルの半面にのみヒータ回路を配置したいわゆる半面ヒータパネルの双方が用いられる場合があるが、全面ヒータと半面ヒータではワット密度が異なるため、別々の抵抗値の異なるヒータ線を用意することが必要となる場合もあった。
【0006】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、従来の床暖房用ヒータパネルと比較して、サーモスタットの断続による加熱変動の不快感を少なくすることができ、さらに電磁波の発生も少なくすることのできる床暖房用ヒータパネルを提供することを第1の課題とする。また、全面ヒータパネルと半面ヒータパネルにおいて、ヒータ線を共通化することのできる構成を備えた床暖房用ヒータパネルを提供することを第2の課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による床暖房用ヒータパネルは、木質基材の裏面に電源線と前記電源線に接続するヒータ回路を組み込んでなる床暖房用ヒータパネルであって、前記ヒータ回路は、それぞれにサーモスタットを備えた2つ以上の独立したヒータ回路からなり、各独立したヒータ回路は前記電源線に並列接続していることを特徴とする。
【0008】
上記の床暖房用ヒータパネルでは、1枚の床暖房用ヒータパネルのいずれかの箇所において熱閉塞が発生したときに、そこに最も近い位置にあるサーモスタットが作動し、当該サーモスタットを備えた独立したヒータ回路のみが給電断の状態となり、他の独立したヒータ回路には給電が継続して暖房状態がそのまま維持される。すなわち、本発明による床暖房用ヒータパネルでは、サーモスタットの作動でヒータがON/OFFするのは、1枚の床暖房用ヒータパネルの限られた領域のみとなり、使用者がヒータのON/OFFによって不快を感じる程度を、従来の床暖房用ヒータパネルと比較して、大きく低減することができる。
【0009】
また、本発明による床暖房用ヒータパネルでは、1枚の床暖房用ヒータパネルに流れる総電流量は複数の独立したヒータ回路に分割されるので、各独立したヒータ回路を流れる電流量は、従来の1回路構成のヒータ回路を持つ床暖房用ヒータパネルと比較して小さな値となり、電磁波発生量も抑制できる。
【0010】
本発明による床暖房用ヒータパネルの好ましい態様では、前記各独立したヒータ回路は等しい発熱量を持つようにされる。より具体的には、各独立したヒータ回路でのヒータ線として、単位長さ当たりの抵抗値が等しくかつ長さの等しいヒータ線を用いる。この態様では、1枚の床暖房用ヒータパネル内において、ほぼ均等な加熱状態を得ることができ、また、ヒータ線も同じものを共通に使用することができる。
【0011】
1つの具体例として、本発明による床暖房用ヒータパネルは、長手方向に等しく分割された2つ以上のゾーンを持ち、前記2つ以上のゾーンのいずれか1つまたは2つ以上、またはすべてに前記独立したヒータ回路が配置されていることを特徴とする。
【0012】
上記のように、本発明による床暖房用ヒータパネルでは、2つ以上の独立したヒータ回路で全体のヒータ回路を構成するようにしており、並列接続した各独立したヒータ回路のヒータ長さを等しくすることで、ヒータ線のワット密度を同じくすることができる。すなわち、前記のようにヒータ線の共用化が可能となる。そのために、同じヒータ線を用いて加熱領域の異なる複数種の床暖房用ヒータパネル、例えばヒータ4分割パネルやヒータ2分割パネルを容易に製造することが可能となり、床暖房の施工現場の状況に合わせて、最
も好適な床暖房フロアを施工することが容易となる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、従来の床暖房用ヒータパネルと比較して、サーモスタットの断続による加熱変動の不快感を少なくすることができ、さらに電磁波の発生も少なくすることのできる床暖房用ヒータパネルが得られる。また、全面ヒータパネルと半面ヒータパネル等、加熱領域の異なる複数種の床暖房用ヒータパネルにおいて、ヒータ線を共通化することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら、本発明を実施の形態により説明する。図1および図2は、本発明による床暖房用ヒータパネルのヒータ回路を説明するための2つ図であり、図3および図4は、本発明による床暖房用ヒータパネルの2つの例を断面で示す図である。
【0015】
図1に示す床暖房用ヒータパネル10は、木質基材11が長手方向に4つのゾーンa,b,c,dに分けられており、各ゾーンの面積はほぼ等しくされている。ゾーンaとゾーンbの間には、短手方向に電源線用の溝が形成されており、そこに従来知られたようにして2本の電源線1,2が配線されている。各電源線の両端には雌雄のコネクタ3,4が接続されている。また、各ゾーンには、後記するヒータ線5およびリード線7のための溝が
形成されている。
【0016】
各ゾーンa,b,c,dには、単位長さ当たりの抵抗値が等しくかつ長さの等しいヒータ線5a,5b,5c,5dが、各ゾーン内をほぼ均等に走るようにして配置されており、各ヒータ線5a,5b,5c,5dの一方端は、前記電源線1,2にリード線を介して接続し、他方端はサーモスタット6a,6b,6c,6dおよびリード線を介して、前記電源線1,2の他方に接続している。
【0017】
具体的には、ゾーンaでは、ヒータ線5aの一端はリード線7aを介して電源線2に接続し、他端はリード線7a、サーモスタット6aおよびリード線7aを介して電源線1に接続している。ゾーンbでは、ヒータ線5bの一端はリード線7bを介して電源線1に接続し、他端はリード線7b、サーモスタット6bおよびリード線7bを介して電源線2に接続している。
【0018】
さらに、ゾーンcでは、ヒータ線5cの一端はリード線7cを介して電源線1に接続し、他端はリード線7c、サーモスタット6cおよびリード線7cを介して電源線2に接続している。ゾーンdでは、ヒータ線5dの一端はリード線7dを介して電源線1に接続し、他端はリード線7d、サーモスタット6dおよびリード線7dを介して電源線2に接続している。
【0019】
すなわち、この態様の床暖房用ヒータパネル10では、木質基材11の裏面に電源線1,2に接続する4つの独立したヒータ回路が組み込まれており、また、各独立したヒータ回路はサーモスタット6a〜6dを備えており、各独立したヒータ回路は電源線1,2に並列接続している。そして、各ヒータ回路の発熱量は等しくされている。
【0020】
図2に示す床暖房用ヒータパネル10Aは、前記ゾーンaとゾーンbに、図1に示した床暖房用ヒータパネル10と同じようにして、ヒータ回路が形成されているが、ゾーンcとゾーンdには、ヒータ回路が形成されていない。なお、図2において、図1におけると同じ部材には同じ符号を付しており、説明は省略する。すなわち、図1に示す床暖房用ヒータパネル10はヒータ4分割の全面ヒータパネルであり、図2に示す床暖房用ヒータパネル10Aはヒータ2分割の半面ヒータパネルである。
【0021】
本発明による床暖房用ヒータパネルにおけるその他の構成は任意であり、特に制限はない。図3はその一例を示し、図示される床暖房用ヒータパネル10において、前記した木質基材11は、周囲に雄実12と雌実13が形成された長尺状の単位ピース14が組み付けられて、1つの木質基材11とされている。各単位ピース14は合板もしくは表層に極薄のMDFが練り合わされた合板からなる複合基材であり、各単位ピース14の表面には突板または化粧シート等の表面化粧材(不図示)が好ましくは積層される。各単位ピース14の裏面には、前記した電源線1,2のための凹溝が形成され、また、前記した各ゾーンa〜dには、ヒータ線5およびリード線7や、サーモスタット6のために凹溝が形成される。なお、図3では、ヒータ線5のための凹溝15のみが示される。
【0022】
また、木質基材11の裏面には、コネクタ3,4の収容部を除いて、全面に緩衝材18が貼り付けられており、この例において、緩衝材18は、クッション材としての不織布層16と断熱材として機能する軟質樹脂発泡体層17との2層構成であり、軟質樹脂発泡体層17が外側となるようにして木質基材11の裏面側に面して貼り付けられている。さらに、図3には示されないが、各単位ピース14の裏面には、凹溝15に交差するようにして単位ピース15の短辺に平行な多数の遮音溝が形成されている。このような構成を備えることにより、床暖房用ヒータパネル10を敷き詰めた電気式床暖房フロアは高い遮音機能を備えることことに加えて、高い歩行感と高い断熱性も得られる。
【0023】
図4は、本発明による床暖房用ヒータパネルの他の例を示している。この例では、木質基材11の裏面にヒータ回路を収容するための凹所21が形成されている。また、木質基材11の表面には、突板または化粧シート等の表面化粧材22が好ましくは積層される。前記凹所21には、ウレタン発泡体のような適宜の断熱材23が挿入、固定される。断熱材23の表面は、図1に示した木質基材11の裏面側と同様、長手方向の4つのゾーンに分けられており、各ゾーンには、図1に示したと同様にして、ヒータ線5およびリード線7や、サーモスタット6が埋め込まれる。なお、図4では、ヒータ線5とサーモスタット6のみが示される。
【0024】
上記の床暖房用ヒータパネル10,10Aでは、いずれかの箇所において熱閉塞が発生したときに、そこに最も近い位置にあるサーモスタット(図1において、サーモスタット6bと仮定する)が作動し、該サーモスタット6bを備えたゾーンbに配置した独立したヒータ回路のみが給電断の状態となり、他のゾーンの3つの独立したヒータ回路には給電が継続し暖房状態がそのまま維持される。そのために、サーモスタット6bの作動でのヒータがON/OFFは、ゾーンbのヒータ線5bだけとなり、他の3つのゾーンa,c,dでのヒータ線5a,5c,5dでは、ヒータのON/OFFは生じない。それにより、ヒータのON/OFFによって不快を感じる程度を、1つのヒータ回路で形成されている従来の床暖房用ヒータパネルと比較して、大きく低減することができる。
【0025】
さらに、本発明による床暖房用ヒータパネル10では、1枚の床暖房用ヒータパネルに流れる総電流量は4つの複数の独立したヒータ回路に分割されるので、各独立したヒータ回路を流れる電流量はそれぞれ1/4となり、従来の1回路構成のヒータ回路を持つ床暖房用ヒータパネルと比較して、電磁波発生量も抑制される。
【0026】
また、前記各独立したヒータ回路は等しい発熱量を持つように、4つの独立したヒータ回路でのヒータ線5a〜5dとして、単位長さ当たりの抵抗値が等しくかっ長さの等しいヒータ線を用いている。この態様では、1枚の床暖房用ヒータパネル内において、ほぼ均等な加熱状態を得ることができる。さらに、図1に示すような、ヒータ4分割の全面ヒータパネルである床暖房用ヒータパネル10と、図2に示すような、ヒータ2分割の半面ヒータパネルである床暖房用ヒータパネル10Aを、同じヒータ線5を用いて作ることができる。図示しないが、独立したヒータ回路が1個のみの床暖房用ヒータパネル、および独立したヒータ回路が3個の床暖房用ヒータパネルも、同じヒータ線5を用いて作ることができる。それにより、床暖房の施工現場の状況に合わせて、各形態の床暖房用ヒータパネルを適宜組み合わせ、最も好適な床暖房フロアを施工することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明による床暖房用ヒータパネルのヒータ回路の一例を説明するための図。
【図2】本発明による床暖房用ヒータパネルのヒータ回路の他の例を説明するための図。
【図3】本発明による床暖房用ヒータパネルの一例を断面で示す図。
【図4】本発明による床暖房用ヒータパネルの他の例を断面で示す図。
【符号の説明】
【0028】
1,2…電源線、
3,4…コネクタ、
5…ヒータ線、
6…サーモスタット、
7…リード線、
10,10A…床暖房用ヒータパネル、
11…木質基材、
14…単位ピース、
15…ヒータ線のための凹溝、
16…クッション材としての不織布層、
17…断熱材として機能する軟質樹脂発泡体層、
18…緩衝材、
21…ヒータ回路を収容するための凹所、
22…表面化粧材、
23…断熱材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
木質基材の裏面に電源線と前記電源線に接続するヒータ回路を組み込んでなる床暖房用ヒータパネルであって、前記ヒータ回路は、それぞれにサーモスタットを備えた2つ以上の独立したヒータ回路からなり、各独立したヒータ回路は前記電源線に並列接続していることを特徴とする床暖房用ヒータパネル。
【請求項2】
各独立したヒータ回路は等しい発熱量を持つことを特徴とする請求項1に記載の床暖房用ヒータパネル。
【請求項3】
床暖房用ヒータパネルは長手方向に等しく分割された2つ以上のゾーンを持ち、前記2つ以上のゾーンのいずれか1つまたは2つ以上、またはすべてに前記独立したヒータ回路が配置されていることを特徴とする請求項2に記載の床暖房用ヒータパネル。
【請求項4】
床暖房用ヒータパネルは長手方向に等しく分割された4つのゾーンを持ち、各ゾーンには前記独立したヒータ回路が配置されていることを特徴とする請求項3に記載の床暖房用ヒータパネル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−151408(P2010−151408A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−332318(P2008−332318)
【出願日】平成20年12月26日(2008.12.26)
【出願人】(000000413)永大産業株式会社 (243)
【Fターム(参考)】