説明

座薬挿入器具

【課題】衛生的かつ容易に座薬を挿入することができるとともに、何度も使いまわすことが可能な座薬挿入器具を提供する。
【解決手段】座薬挿入器具1は、前端および後端に開口h1を有する筒状体3と、筒状体3内に押し込み可能に配置されたプランジャ5と、内部に座薬Mを収容し、後端が筒状体3に着脱自在に保持され、前端にプランジャ5によって押された座薬Mを外部に排出する排出開口h2を有するカートリッジ7と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、体内へ座薬を挿入する際に用いる座薬挿入器具に関する。
【背景技術】
【0002】
座薬は、医薬品を基剤に混和して一定の形状に成型した固形の外用剤で、肛門や膣内に挿入して適用するものであるが、体内で速やかに融解し、有効成分を放出できるよう、有効成分が体温で融解する基剤の中に分散されている。通常、座薬は包装から取り出し、座薬の後部を指先でつまんで肛門内に挿入するが、しっかりと奥まで挿入されないと肛門の括約筋による収縮圧によって座薬が押し戻されることがあり、座薬の挿入に手間がかかって面倒であるとともに、指が肛門に直接触れることから、非衛生的である。
【0003】
そのため、特許文献1では、内部に座薬を納める筒状体と、筒状体内に摺動自在に挿入され座薬を筒状体の先端から押し出すプランジャとからなる座薬挿入具を提案しており、この座薬挿入具は、筒状体を体内に挿入した状態においてプランジャを押し込むことにより座薬を体内に注入するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−261158号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述したような従来の挿入具は、衛生状態を保つために使い捨てを前提としており、一回の座薬の挿入ごとに新たな挿入具が必要となるため使用者への金銭的負担が大きく、廃棄物が増えるという問題も生じる。
【0006】
それゆえ、この発明は、衛生的かつ容易に座薬を挿入することができるとともに、何度も使いまわすことが可能な座薬挿入器具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、この発明の座薬挿入器具は、前端および後端に開口を有する筒状体と、前記筒状体内に押し込み可能に配置されたプランジャと、内部に座薬を収容し、後端が前記筒状体に着脱自在に保持され、前端にプランジャによって押された座薬を外部に排出する排出開口を有するカートリッジと、を備えることを特徴とするものである。
【0008】
なお、この発明の座薬挿入器具にあっては、前記カードリッジは、前記筒状体に装着、保持される装着基部と、該装着基部から前方に延びて座薬を覆う被覆部とからなることが好ましい。
【0009】
また、この発明の座薬挿入器具にあっては、前記被覆部は、前記排出開口から後方に向けて延びるスリットを有することが好ましい。
【0010】
さらに、この発明の座薬挿入器具にあっては、前記装着基部は、前記筒状体の外壁を覆う延長壁を有することが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
この発明の座薬挿入器具によれば、座薬が納められたカートリッジの後端を筒状体に装着した後、カートリッジを肛門等に挿入し、プランジャを押し込むことでカートリッジの排出開口を通じて座薬を容易に体内に注入することができ、しかも肛門等に指が触れないから衛生的である。また、注入が終了した後には、カートリッジを筒状体から取り外し、カートリッジのみを廃棄すればよいので廃棄物を減らすことができるとともに、筒状体およびプランジャは何度も使いまわして使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】この発明に従う一実施形態の座薬挿入器具の断面図である。
【図2】図1の座薬挿入器具におけるカートリッジを示す斜視図である。
【図3】図1の座薬挿入器具において、カートリッジを筒状体に装着した状態を示す断面図である。
【図4】図3の状態からプランジャを押し込んで座薬を注出する様子を説明する断面図である。
【図5】この発明に従う他の実施形態の座薬挿入器具を示し、(a)はそのカートリッジの断面図であり、(b)は座薬挿入器具全体の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、この発明に従う実施の形態の座薬挿入器具を図面に基づき詳細に説明する。なお、この明細書において、「前方」、「後方」とは、座薬の挿入方向でみて前方、後方を指すものとする。また、座薬の「挿入方向」は、座薬挿入器具の軸方向に沿う、後述のプランジャの押し込み方向を指す。
【0014】
図1に示すように、座薬挿入器具1は、前端および後端に開口(すなわち、軸方向Sに貫通する開口)h1を有する筒状体3と、筒状体3内に押し込み可能(摺動可能)に配置されたプランジャ5と、内部に座薬Mを収容し、後端が筒状体3に着脱自在に保持され、前端にプランジャ5によって押し出された座薬Mを外部に排出する排出開口h2を有するカートリッジ7と、を備えている。座薬挿入器具1は、合成樹脂により製造することができ、特に、カートリッジ7はポリプロピレン製またはポリエチレン製とすることができる。座薬Mは、使用直前に包装容器(図示省略)から取り出して、カートリッジ7の後端の開口を通じてカートリッジ7内にセットすることができる。あるいは、カートリッジ7に一回の使用量分の座薬Mを納めた状態にて包装容器(図示省略)内に密閉して流通、保存することが可能である。
【0015】
筒状体3は、この例では、前端部の外壁に、後述するカートリッジ7の嵌合溝9内に嵌合される嵌合突起3aが複数個(ここでは4つ)設けられている。嵌合突起3aは等間隔に配置されている。また、筒状体3の後端部の外壁には、プランジャ5の押し込み時に指を掛けるためのフランジ3bが設けられている。筒状体3の内壁には、プランジャ5を抜け止め保持する段差3cが全周にわたって形成されている。
【0016】
プランジャ5は、断面十字状をなし前端を座薬Mへの当接面とするロッド部5aと、ロッド部5aの後端に設けられ、使用者が指で押すことができる押圧部5bとからなる。ロッド部5aには、筒状体3の内壁に形成された上記段差3cに係合してプランジャ5の筒状体3からの引き抜きを防止するアンダーカット5cが設けられている。アンダーカット5cはこの例では、ロッド部5aの対向する2箇所に設けているが、アンダーカット5cは少なくとも1つあればよく、3つ以上設けてもよい。
【0017】
カートリッジ7は、筒状体3に装着、保持される装着基部7aと、該装着基部7aから前方に延びて座薬Mを覆う被覆部7bとからなり、被覆部7bの前端には上述の排出開口h2が形成されている。装着基部7aは、ここでは、筒状体3の外壁に装着される。装着基部7aの内壁には、上述の嵌合突起3aが嵌入される略L字状の嵌合溝9が設けられている。各嵌合溝9は、詳細には、軸方向S(座薬Mの挿入方向)に沿って延び嵌合突起3aを導入する導入溝部9aと、導入溝部9aに対して直角に延び嵌合突起3aを軸方向Sに対して係止する係止溝部9bとからなる。
【0018】
被覆部7bは、内部に収容される座薬Mの形状に概ね対応した形状を有しており、この例では、座薬Mが砲弾状であるから被覆部7bの形状も先端に向かって先細りとなる砲弾状に形成されている。また、被覆部7bには、図2により明瞭に見ることができるように、排出開口h2から後方に向けて延びる4本のスリット11が等間隔に形成されている。被覆部7bは、プランジャ5を押し込んだ際に座薬Mの接触によって容易に押し広げられるよう装着基部7aに比べて薄肉に形成されている。
【0019】
かかる構成を有する座薬挿入器具1によれば、図3に示すように、座薬Mが納められたカートリッジ7の後端を筒状体3に装着した後、カートリッジ7を肛門等に挿入し、図4に示すように、プランジャ5を押し込むことでカートリッジ7の排出開口h2を通じて座薬Mを容易に体内に注入することができ、しかも肛門等に指が触れないから衛生的である。また、注入が終了した後には、カートリッジ7を筒状体3から取り外し、カートリッジ7のみを廃棄すればよいので廃棄物を減らすことができるとともに、筒状体3およびプランジャ5は何度も使いまわして使用することができる。
【0020】
また、上述の実施形態の座薬挿入器具1によれば、カートリッジ7の被覆部7bに、排出開口h2から後方に向けて延びるスリット11を設けたことから、座薬Mをプランジャ5で押し出す際に被覆部7bの排出開口h2の周辺を容易に拡開することができ、座薬Mの注入をよりスムーズに行うことができる。
【0021】
次いで、この発明に従う他の実施形態の座薬挿入器具について図5(a),(b)を参照して説明する。なお、前述の実施形態の座薬挿入器具1と重複する部分についてはその詳細な説明を省略する。
【0022】
この実施形態では、座薬挿入器具1は、カートリッジ7の装着基部7aが筒状体3の外壁の略全体を覆う延長壁13を有している。カートリッジ7の嵌合溝9は、装着基部7aの後端部に配置され、これに伴って筒状体3の嵌合突起3aは、筒状体3の後端部(フランジ3bの前方直近)に配置されている。
【0023】
かかる座薬挿入器具1は、カートリッジ7の装着基部7aに延長壁13を設けた分、座薬挿入時にカートリッジ7をより深く挿入することができるため、座薬Mをより確実に注入することができ、また、筒状体3が延長壁13で覆われていることから、座薬挿入時に筒状体3が肛門等に触れる虞がなく、より衛生的である。
【0024】
以上、図示例に基づき説明したが、この発明は上述の例に限定されるものでなく、特許請求の範囲の記載範囲内で適宜変更することができるものであり、例えば、カートリッジに嵌合突起を設けるとともに筒状体に該嵌合突起と嵌合する嵌合溝を設けることにより、カートリッジを筒状体に装着するよう構成してもよい。また、上記の例では、カートリッジの装着基部を筒状体の外壁に装着すると説明したが、カートリッジの装着基部を筒状体内に挿入して保持するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0025】
かくしてこの発明により、衛生的かつ容易に座薬を挿入することができるとともに、何度も使いまわすことが可能な座薬挿入器具を提供することが可能となった。
【符号の説明】
【0026】
1 座薬挿入器具
3 筒状体
5 プランジャ
7 カートリッジ
7a 装着基部
7b 被覆部
11 スリット
h2 排出開口
M 座薬

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前端および後端に開口を有する筒状体と、
前記筒状体内に押し込み可能に配置されたプランジャと、
内部に座薬を収容し、後端が前記筒状体に着脱自在に保持され、前端にプランジャによって押された座薬を外部に排出する排出開口を有するカートリッジと、を備えることを特徴とする座薬挿入器具。
【請求項2】
前記カードリッジは、前記筒状体に装着、保持される装着基部と、該装着基部から前方に延びて座薬を覆う被覆部とからなる、請求項1に記載の座薬挿入器具。
【請求項3】
前記被覆部は、前記排出開口から後方に向けて延びるスリットを有する、請求項2に記載の座薬挿入器具。
【請求項4】
前記装着基部は、前記筒状体の外壁を覆う延長壁を有する、請求項2または3に記載の座薬挿入器具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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