説明

廃棄物の再資源化方法および再資源化装置

【課題】コンピュータ、携帯電話機、電線や混合ごみ等の廃棄物を、過熱蒸気を用いて再資源化処理する再資源化方法および再資源化装置の提供。
【解決手段】過熱蒸気を吹き込むことにより炉内温度を200℃〜800℃に維持したキルン炉12内に廃棄物を供給し、熱処理する。コンピュータ、携帯電話機、電線や混合ごみ等の廃棄物は、レアメタル、鉄、銅、鉛やアルミニウム等の金属を除く炭素のみが炭化または気化される。したがって、廃棄物が金属と樹脂成形品等の複合物であっても、そのままキルン炉内に供給することで、樹脂成形品等の炭素のみが炭化または気化され、金属のみまたは金属と炭化物との混合物が得られ、金属のみを容易に分別して取り出し、金属または炭化物として再資源化することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンピュータ、携帯電話機、電線や混合ごみ等の廃棄物を、過熱蒸気を用いて再資源化処理する再資源化方法および再資源化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
都市で大量に廃棄されるコンピュータや携帯電話機等の電化製品の中には、レアメタル等の希少資源の他、鉄、銅、鉛やアルミニウム等の有用資源が含まれており、これを再資源化して有効活用することが望まれている。これらの有用資源の再資源化のためは、電化製品のプリント配線基板のような金属と樹脂成形品との複合物から、金属と樹脂成形品とを分別回収することが必要となる。
【0003】
ところが、実際にはこのような複合材からの分別回収は容易ではなく、特に、携帯電話機等の小型の電化製品から細かな有用資源を回収することは困難である。そのため、従来、再資源化には膨大な人件費が掛かり、人件費に見合う分の利益の回収が見込めないことから、回収を断念しているのが実情である。
【0004】
ところで、本出願人は、過熱蒸気をキルン炉内に吹き込むことにより、処理対象物を乾燥または熱分解する熱処理装置を開発している(特許文献1参照。)。この熱処理装置では、キルン炉から排出される排気ガス中の可燃分を燃焼させる際の燃焼熱によりキルン炉の予熱を外周面から行い、キルン炉内の温度を所定温度以上に維持して、過熱蒸気の吹き込みによる乾燥または熱分解を効率良く行うことが可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2009/054034号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述のように、従来、有用資源の再資源化には、まず廃棄物から金属と樹脂成形品等のように資源を分別する必要があり、人件費に見合う分の利益の回収が見込めない。そのため、再資源化は断念され、埋め立て処分されているという問題がある。
【0007】
一方、本出願人は、特許文献1に記載の熱処理装置を開発しており、この熱処理装置では一般家庭、工場や料理店等で発生する生ごみ、使用済み紙おむつ、廃プラスチックおよびその他のプラスチック等を炭化することが可能である。
【0008】
そこで、本発明においては、この特許文献1に記載のような熱処理装置を応用して、コンピュータ、携帯電話機、電線や混合ごみ等の廃棄物を、過熱蒸気を用いて再資源化処理する再資源化方法および再資源化装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の廃棄物の再資源化方法は、過熱蒸気を吹き込むことにより炉内温度を200℃〜800℃に維持したキルン炉内に廃棄物を供給し、熱処理することを特徴とする。また、本発明の廃棄物の再資源化装置は、過熱蒸気を吹き込むことにより炉内温度が200℃〜800℃に維持され、供給される廃棄物を熱処理するキルン炉を有するものである。
【0010】
これらの発明によれば、コンピュータ、携帯電話機、電線や混合ごみ等の廃棄物は、レアメタル、鉄、銅、鉛やアルミニウム等の金属を除く炭素のみが熱分解されて炭化または気化される。あるいは、炭素を含まない無機物が熱分解または気化される。すなわち、本発明の廃棄物の再資源化方法によれば、廃棄物が金属と樹脂成形品等の複合物であっても、そのままキルン炉内に供給することで、樹脂成形品等の炭素のみが炭化または気化され、あるいは無機物が熱分解または気化される。これにより、金属のみを容易に分別して取り出し、金属や炭化物として再資源化することが可能となる。また、気化した炭素は回収して再資源化することが可能となる。
【0011】
ここで、さらにキルン炉から排出される排気ガスをキルン炉の外周面に備える燃焼炉に導入し、排気ガス中の可燃分を燃焼させて脱臭を行う構成とすることが望ましい。これにより、排気ガスの燃焼熱によりキルン炉の予熱を外周面から行い、キルン炉内の温度を所定温度以上に維持して、過熱蒸気の吹き込みによる廃棄物の熱処理を効率良く行うことができる。
【0012】
ここで、廃棄物がセルロースを含むものであり、炉内温度を200℃〜300℃とすれば、廃棄物に含まれるセルロースをセルロース炭化物として再資源化することができる。
【0013】
また、廃棄物が油分またはプラスチックを含むものであり、炉内温度を300℃〜450℃として油分またはプラスチックを気化させることで、金属から可燃物である油分またはプラスチックを分離することができ、金属のみを容易に取り出して再資源化することが可能となる。また、気化した油分またはプラスチックは回収して再資源化することができる。
【0014】
また、炉内温度を450℃〜800℃として廃棄物に含まれる炭素を炭化すれば、廃棄物に含まれる炭素はリグニン分解され、完全に炭化し、炭化物として再資源化することができる。
【発明の効果】
【0015】
(1)過熱蒸気を吹き込むことにより炉内温度を200℃〜800℃に維持したキルン炉内に廃棄物を供給し、熱処理することにより、廃棄物が金属と樹脂成形品等の複合物であっても、そのままキルン炉内に供給することで、金属のみを容易に分別して取り出し、金属や炭化物として再資源化することが可能となり、低コストでの再資源化を実現できる。
【0016】
(2)キルン炉から排出される排気ガスをキルン炉の外周面に備える燃焼炉に導入し、排気ガス中の可燃分を燃焼させて脱臭を行うことにより、キルン炉内の温度を所定温度以上に維持して、過熱蒸気の吹き込みによる廃棄物の熱処理を効率良く行い、燃焼熱を有効に利用することが可能となるので、省エネルギでの再資源化を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施の形態における廃棄物の再資源化装置の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1において、本発明の実施の形態における廃棄物の再資源化装置1は、水を加熱して蒸気を発生させる蒸気発生装置としてのボイラ10と、このボイラ10により発生させた蒸気を加熱して超高温の過熱蒸気を発生させる蒸気加熱器としてのスーパーヒータ11と、処理しようとする廃棄物を熱処理するキルン炉12と、キルン炉12へ廃棄物を供給する原料供給装置としてのホッパ13と、乾燥または熱分解処理された廃棄物を排出する排出装置14と、キルン炉12から排出される排気ガス中の可燃分を燃焼させて脱臭を行う脱臭炉15とを備える。
【0019】
ボイラ10は、水を加熱して10kg/cm2以下の蒸気を発生するものである。ボイラ10により発生させた蒸気は、蒸気配管20によって蒸気加熱器11へ供給される。蒸気加熱器11は、蒸気配管20によって供給された蒸気をさらに加熱して200〜1000℃の超高温の過熱蒸気とするものである。
【0020】
蒸気加熱器11により発生させた過熱蒸気は、過熱蒸気配管21によってキルン炉12へ供給され、炉内温度を200℃〜800℃に維持する。なお、ボイラ10および蒸気加熱器11には、それぞれの排気ガスを吸引して排気筒16から排気するための吸引ファン17が接続されている。なお、図示しないが、吸引ファン17の手前には、集塵機、または、集塵機およびスクラバーを設け、煤塵、塩素や硫黄等を除去するようにしている。
【0021】
過熱蒸気配管21は、キルン炉12内の出口側(排出装置14側)から入口側(ホッパ13側)にかけて軸心に平行に設けられたノズル配管22に接続されている。ノズル配管22は、周囲に所定間隔で熱ガス噴出口(図示せず。)を有し、蒸気加熱器11により発生させた過熱蒸気をこの熱ガス噴出口からキルン炉12内に供給している。なお、ノズル配管22は、軸心に平行に設ける必要はなく、例えばジグザグ状に配管しても良い。
【0022】
また、キルン炉12内にはホッパ13から廃棄物としてのコンピュータ、携帯電話機、電線や混合ごみ等が供給される。なお、これらの廃棄物は予めシュレッダにより1辺の長さが20mm以下程度に細かく裁断しておくことが望ましい。キルン炉12内に供給された廃棄物は、ノズル配管22から供給される超高温の過熱蒸気により高温加熱され、廃棄物中に含まれる炭素が炭化(熱分解)または気化される。
【0023】
排出装置14は、熱処理された廃棄物を無酸素状態で、その温度を大気中で燃えない温度(すなわち、非自燃温度)まで下げて外部に排出するものである。図示しないが、排出装置14は、例えば、全長が約3mのスクリュコンベアによって構成され、加熱された廃棄物を徐々に冷却しながら搬送し、非自燃温度以下に降温して排出する。
【0024】
一方、キルン炉12内で利用された過熱蒸気は120℃〜400℃となり、吸引配管23によって脱臭炉15へと供給される。この排気ガス中には廃棄物が過熱分解されることによって発生する可燃性ガス(乾留ガス)を含んでいる。
【0025】
脱臭炉15は、キルン炉12の外周面を一壁面として形成されており、キルン炉12から排出される排気ガス中の可燃分を燃焼させて脱臭を行う。脱臭炉15には補助バーナ18が設けられており、キルン炉12に供給された排気ガス中の可燃分は全部燃焼する。これによって、脱臭炉15の内部を約800〜1000℃(好ましくは、850〜900℃)にし、排気ガス中に含まれる臭い等の略完全な除去を行う。なお、脱臭炉15には、必要に応じて一次燃焼用空気または酸素の供給を1〜3kPaで行うためのファン(図示せず。)が設けられている。
【0026】
また、この脱臭炉15は、キルン炉12の外周面を一壁面として形成されているので、この排気ガスを燃焼させた際に発生する熱により、キルン炉12の外周面が約800〜1000℃で加熱される。すなわち、この排気ガスの燃焼熱によりキルン炉12が予熱されることになり、キルン炉12内の温度が所定温度以上に維持される。
【0027】
また、この脱臭炉15を出た850〜900℃近傍の燃焼排気ガスは、集塵機19を介して吸引配管24によりボイラ10および蒸気加熱器11へと供給され、その保有熱を利用してボイラ10および蒸気加熱器11で熱交換され、高温および超高温の過熱蒸気を発生させる。ボイラ10および蒸気加熱器11を通った排気ガスは、吸引ファン17により吸引され、排気筒16から大気放出される。なお、この排気ガスにはさらに保有熱を有しているので、水を予熱する等のエネルギ源として使用することが可能である。
【0028】
上記構成の廃棄物の再資源化装置1において、予め細かく裁断されたコンピュータ、携帯電話機、電線や混合ごみ等の廃棄物をホッパ13に投入すると、この廃棄物がホッパ13からキルン炉12内へ供給される。キルン炉12内には、過熱蒸気配管21を通じて過熱蒸気が供給されている。
【0029】
ここで、炉内温度を450℃〜800℃に維持すると、廃棄物に含まれるレアメタル、鉄、銅、鉛やアルミニウム等の金属を除く炭素のみが炭化される。このとき、この炉内温度範囲では、廃棄物に含まれる炭素はリグニン分解されるので、完全に炭化し、炭化物となる。なお、排出装置14からは金属と炭化物との混合物が排出されるが、この混合物を叩くことで炭化物は簡単に砕けるので、簡単に金属と炭化物とを分離することができる。
【0030】
また、廃棄物がセルロースを含むものである場合、炉内温度を200℃〜300℃とすれば、廃棄物に含まれるセルロースをセルロース炭化物として再資源化することができる。また、廃棄物が油分またはプラスチックを含むものである場合、炉内温度を300℃〜450℃とすれば、油分またはプラスチックを気化させることが可能である。したがって、金属から可燃物である油分またはプラスチックを分離することができ、金属のみを容易に取り出して再資源化することが可能である。
【0031】
また、気化した油分またはプラスチックは、前述のように可燃性ガスとして排気ガス中に含まれることになるので、脱臭炉15での燃料として利用され、補助バーナ18からの燃料を著しく節約できるようになる。なお、この可燃性ガスは、回収して別途再資源化することも可能である。
【0032】
また、無機物と金属等とからなる廃棄物の場合も同様に処理することができ、同様に過熱蒸気により炉内温度を200℃〜800℃に維持したキルン炉12内で処理することで、無機物が熱分解あるいは気化され、金属のみを容易に取り出すことが可能である。
【0033】
また、本実施形態における再資源化装置1では、キルン炉12から排出される排気ガス中の可燃分を燃焼させる際の燃焼熱によりキルン炉12の予熱を外周面から行い、キルン炉12内の温度を所定温度以上に維持して、過熱蒸気の吹き込みによる熱処理を効率良く行うことができ、燃焼熱を有効に利用することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明の廃棄物の再資源化方法および再資源化装置は、コンピュータ、携帯電話機、電線や混合ごみ等の廃棄物を再資源化してレアメタル等の希少資源の他、鉄、銅、鉛やアルミニウム等の有用資源および炭化物を得る方法および装置として有用である。
【符号の説明】
【0035】
1 再資源化装置
10 ボイラ
11 蒸気加熱器
12 キルン炉
13 ホッパ
14 排出装置
15 脱臭炉
16 排気筒
17 吸引ファン
18 補助バーナ
19 集塵機
20 蒸気配管
21 過熱蒸気配管
22 ノズル配管
23,24 吸引配管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
過熱蒸気を吹き込むことにより炉内温度を200℃〜800℃に維持したキルン炉内に廃棄物を供給し、熱処理することを特徴とする廃棄物の再資源化方法。
【請求項2】
さらに、前記キルン炉から排出される排気ガスを前記キルン炉の外周面に備える燃焼炉に導入し、前記排気ガス中の可燃分を燃焼させて脱臭を行うことを特徴とする請求項1記載の廃棄物の再資源化方法。
【請求項3】
前記廃棄物はセルロースを含むものであり、前記炉内温度を200℃〜300℃とすることを特徴とする請求項1または2に記載の廃棄物の再資源化方法。
【請求項4】
前記廃棄物は油分またはプラスチックを含むものであり、前記炉内温度を300℃〜450℃として前記油分またはプラスチックを気化させることを特徴とする請求項1または2に記載の廃棄物の再資源化方法。
【請求項5】
前記炉内温度を450℃〜800℃として前記廃棄物に含まれる炭素を炭化することを特徴とする請求項1または2に記載の廃棄物の再資源化方法。
【請求項6】
過熱蒸気を吹き込むことにより炉内温度が200℃〜800℃に維持され、供給される廃棄物を熱処理するキルン炉を有する廃棄物の再資源化装置。
【請求項7】
さらに、前記キルン炉の外周面に、前記キルン炉から排出される排気ガスが導入され、この排気ガス中の可燃分を燃焼させて脱臭を行う燃焼炉を有する請求項6記載の廃棄物の再資源化装置。

【図1】
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【公開番号】特開2011−178850(P2011−178850A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−42967(P2010−42967)
【出願日】平成22年2月26日(2010.2.26)
【出願人】(510054636)株式会社アイピーエム (1)
【出願人】(308010332)ワールド環境設計株式会社 (1)
【Fターム(参考)】