説明

建材取付金具、取付構造及び取付工法

【課題】建材同士の縦継目が柱スパン間に位置する場合であっても該建材の横ズレを防止することができる建材の取付金具及び取付構造を提供する。
【解決手段】取付金具1は、取付金具本体20と横長材10とからなる。取付金具本体20の係止部24によって下段側の建材50の上部を係止し、支持部26によって上段側の建材50を支承する。取付金具本体20は横長材10の左端又は右端にビス15によりビス留めされている。横長材10はビス2により柱又は間柱の縦銅縁54に固着されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は建材の取付金具と、それを用いて建材を柱に取り付けた構造及び工法に関するものである。詳しくは、柱に対し複数の板状建材を上下に多段に取り付ける場合に採用される取付金具と、この取付金具を用いた建材の取付構造及び取付工法とに関するものである。さらに詳しくは、この取付金具が建材の横ずれ防止機構を備えたものに関する。
【背景技術】
【0002】
板状の建材を建築物の外壁等の壁面に対し、上下に多段に且つ水平左右方向に並列させて取付施工する場合、建材の上辺及び下辺を金具で支承することが多い。この金具として、下段側の建材の上辺を支持する支持部と、上段側の建材の下辺を係止する係止部を有し、釘又はビスによって壁面に固定されるものが用いられている。
【0003】
第6図はかかる取付金具の従来の一例(特開平8−120894号)を示す斜視図である。この取付金具(同号公報では接合金具と指称している)80は、基台82と、該基台82上に立設される幹板部84と、該幹板部84の上縁から両側に延設される枝板部85A,85Bとからなる。88Aはビス穴、88Bは釘穴である。この枝板部85Aによって下段側の建築板の上辺を支承し、枝板部86Bによって上段側の建築板の下辺を支承する。
【0004】
このように板状建材(建築板)の上辺と下辺とを支承した場合、強風、地震、振動その他の外力が加えられたときに、建材が横ずれするおそれがある。この横ずれを防止するために、上記の特開平8−120894号においては、第6図の通り、基台82の一側縁から係止板87を前方に突設している。
【0005】
ところで、従来、取付金具を用いて建材を柱に取付施工するに際し、第7図の通り、建材50同士の縦継目Jが柱52の胴縁54の前方に来る場合、通常の取付金具60にて建材を柱に留め付けることができる。なお、第7図において、柱52の前面に防水シート56が張られ、胴縁54が釘留めされ、板状建材50が下段側から順次に取付施工される。この建材の上辺には雄実50aが設けられ、下辺には雌実50bが設けられている。
【0006】
下段側の建材50の雄実50aに取付金具60を係合させ、この取付金具60を釘又はビスにより胴縁54に留め付ける。次いで、下段側建材50の雄実50aに上段側建材50の雌実50bを係合させると共に、この雌実50bを取付金具60に係合させる。以下、この手順を繰り返すことにより壁面が構築される。
【0007】
ところが、建材の左右寸法が柱スパンの整数倍でない場合などには、建材同士の縦継目が柱同士のスパン間に来ることになり、この場合には、前記第6図の取付金具60では縦継目を挟んで隣り合う建材を跨ぐことができず、両建材の出入りに差が生じることになる。
【0008】
かかる短所を克服するものとして、特開2004−270341号公報には、柱同士の間にレールを架設し、該レールにストッパ片付き建材取付金具をスライド可能に取り付け、該建材取付金具をレールに沿ってスライドさせてストッパ片を建材の側面同士の間に入り込ませた後、建材取付金具をレールに固定することが記載されている。
【特許文献1】特開平8−120894号公報
【特許文献2】特開2004−270341号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
この特開2004−270341号公報では、レールに建材取付金具をスライド自在に装着しており、構成が若干複雑であり、コスト高である。
【0010】
本発明は、上記従来の問題点を解決し、建材同士の縦継目が柱スパン間に位置する場合に該建材の横ズレを防止することができる建材の取付金具及び取付構造を安価に提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1の建材取付金具は、建物の柱に対し板状の建材を取り付けるための取付金具であって、柱の前面に取り付けられる横長板状の横長材と、下段側建材の上部を前後移動不能に係止する係止部、上段側の建材の下部が載荷され、該建材下部を前方移動不能に支持する支持部、及び、該下段側建材の側面に当接して建材の横移動を阻止するストッパ片を有する取付金具本体と、を有する建材取付金具において、該取付金具本体が前記横長材の長手方向の一端側に固着されていることを特徴とするものである。
【0012】
請求項2の建材取付金具は、請求項1において、前記横長材の長手方向の長さが250〜500mmであることを特徴とするものである。
【0013】
請求項3の建材取付金具は、請求項1又は2において、前記横長材は平板状であることを特徴とするものである。
【0014】
請求項4の建材取付金具は、請求項3において、該横長材の長手方向の縁部に沿ってリブが折り立てられていることを特徴とするものである。
【0015】
請求項5の建材の取付構造は、壁面の柱列に対し複数枚の板状の建材を取付金具によって取り付けた建材の取付構造において、少なくとも一部の該建材同士の縦継目が柱同士のスパン間に位置しており、該柱に請求項1ないし4のいずれか1項に記載の取付金具の横長材が固定され、該取付金具の取付金具本体に建材が留め付けられ、該取付金具本体のストッパ片が建材同士の縦継目間に差し込まれていることを特徴とするものである。
【0016】
請求項6の建材の取付工法は、壁面の柱列に対し複数枚の板状の建材を取付金具によって取り付ける建材の取付工法において、少なくとも一部の該建材同士の縦継目が柱同士のスパン間に位置する場合に請求項1ないし4のいずれか1項に記載の取付金具を用いる工法であって、該取付金具の取付金具本体によって建材を留め付けると共に、該取付金具本体のストッパ片を建材同士の縦継目間に差し込むように該取付金具の横長材を該柱に固定することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明の建材取付金具は、横長材と取付金具本体とを有し、この横長材に取付金具本体が固着されている。このため、横長材に対し取付金具本体をスライド自在に装着するための機構が不要であり、構造が簡易で安価なものとなる。
【0018】
この横長材は、例えば極めて安価な平板状のもので足りる。平板の縁部にリブを折り立てて剛性を高くしてもよく、この場合でも、著しく安価である。この横長材の長手方向の長さは250〜500mmと短くて足り、これによっても原価を低減することができる。
【0019】
本発明の建材取付金具は、ストッパ片を下段側建材同士の継目に差し込み、横長材を1つの柱に取り付けるようにして建材取り付けに用いられる。
【0020】
なお、吾国の建築構造では、柱・間柱(スタッド)間隔は最大でも500mmである。従って、建材同士の縦継目が柱からずれたとしても、このずれ幅は、最寄りの柱から250mm以下となる。従って、横長材の長さを250〜500mmとし、横長材の端部に最端部に取付金具本体を固着しておくことにより、建材同士の縦継目が如何なる位置にあっても、ストッパ片を建材同士の縦継目に差し込んでその横ズレを防止することができる。
【0021】
本発明の構造及び工法にあっては、取付金具本体の位置を合わせた後、横長材を建物の片方の柱に固定するようにするため、施工が簡単である。従来のように取付金具本体の両側にある柱両方に取付金具本体を止めつける場合に比べ、本発明の場合、柱への固定位置と金具本体の位置の微妙な調整も必要ないため極めて施工が容易である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、図面を参照して実施の形態について説明する。
【0023】
第1図は実施の形態に係る取付金具の正面図、第2図はこの取付金具本体の分解斜視図、第3図は取付金具本体の斜視図、第4図はこの取付金具を用いた建材取付構造を示す斜視図、第5図はこの構造における第3図のV−V線断面図である。
【0024】
この取付金具1は、長手方向の長さが好ましくは250〜500mm、特に好ましくは300〜350mmの横長板状の横長材10と、この横長材10の長手方向の一端側に固着された取付金具本体20とからなる。この実施の形態では、取付金具本体20はリベット15によって横長材10に固着されているが、ビス留めや溶接であってもよい。
【0025】
横長材10は、長方形の板材の一長手辺(上辺)を直角に折り立ててリブ11を形成したものである。取付金具本体20は、その上辺を該リブ11に当接させてリベット留めされている。
【0026】
次に、取付金具本体20の構成について詳細に説明する。
【0027】
該取付金具本体20は、柱又は間柱に固定されるベース部22と、このベース部22から切り起こしにより形成された、下段側の建材の上辺を係止する係止部24及び上段側の建材の下辺を支持する支持部26と、該ベース部22に設けられたストッパ片40の差込み用の開口28と、該ベース部22を固定するためのビス15が挿通されるビス孔30とを有している。この実施の形態では左右方向に3個のビス孔が設けられており、そのうちの中央の孔30にリベット15が挿通されている。
【0028】
該ベース部22は柱又は間柱に沿って配置されたときにその前面が全体として該柱又は間柱から所定距離前方に位置する板状のものである。該ベース部22の下縁部及び左右の側縁部からは、脚片部32,34が後方に立設されている。
【0029】
該開口28は、ベース部22の左右幅方向の中央付近の下縁部に沿って設けられている。
【0030】
係止部24は、該開口28の切り抜き残片を折曲させた下向きL形片であり、該開口22の上縁部から前方に延出している。支持部26は上向きL形片よりなり、支持部26の左右の両サイドに配置されている。なお、この実施の形態では、ベース部22の左右両側縁部の下部に、下段側の建材の裏面に食い込んだり、側面に当接したりすることが可能な爪片38が突設されている。該爪片38の上下両側にスリット38a,38bが形成されることにより舌片部38cがベース部22に設けられている。このベース部22の先端に爪片38が設けられている。この舌片部38cは後方に向って変形可能である。
【0031】
前記ストッパ片40は、該開口28の下側の縁部を形成する脚片部32を弾性的に挟持する弾性挟持部42と、該弾性挟持部42から下方に垂下した垂下片44を有している。この垂下片44に、係止同士の間に差し込まれるストッパ片本体44aが一体に設けられている。該ストッパ片40は、該弾性挟持部42が脚片部32を挟持することによりベース部22に装着される。
【0032】
この取付金具本体20及び横長材10よりなる取付金具1を用いた建材の取付構造について第4,5図を参照して説明するなお、第4,5図では、第7図と同一部分には同一符号を付してある。
【0033】
柱と間柱がスパン455mmにて立設されており、建材50が柱に沿って下段側から順次に取り付け施工される。この取り付け手順は、取付金具として本発明のものを用いること以外は従来と同様である。なお、第4図でも防水シート56が張設されている。これらの建材50及び防水シート56の構成は第7図と同様である。
【0034】
取付金具本体20の係止部24が下段側建材50の上辺の雄実50aに係合され、ストッパ片本体44aが該建材50の側面に当接される。その後、この取付金具1の横長材10がビス2によって柱52又は間柱前面の胴縁54に対し固定される。これにより、建材50の上部は前方への移動が拘束される。
【0035】
なお、第4図では建材50,50の縦継目が柱52の右側に近接しているので、第1図(a)に示すように横長材10の右端に取付金具本体20を固着した取付金具1を用いているが、縦継目が柱52の左側に近接しているときには、第1図(b)に示すように横長材10の左端に取付金具本体20を固着した取付金具1を用いる。
【0036】
次いで、この建材50に水平に隣接する建材50を施工する。下段側のすべての建材50の施工が終了した後、上段側の建材50の施工を行う。この場合、上段側の建材50の下辺の雌実50bを支持部26に載置する。これにより、建材50が支承されると共に、建材50の下部の前方への移動が拘束される。上段側の建材50の上辺は、取付金具1を用いて上記と同様にして柱又は間柱の胴縁54に留め付けられる。
【0037】
なお、建材同士の縦継目が柱又は間柱に重なるときには、横長材10を連結しない取付金具本体20を用いれば足りる。
【0038】
上記のように、この実施の形態では横長材10と取付金具本体20とからなる取付金具1を用いているので、建材50の縦継目Jが柱、間柱の胴縁54から外れていても左右に隣接する建材50を面出入りを揃えて取付施工することができる。しかも、取付金具1のストッパ片40により、建材50の横ズレも防止される。
【0039】
この取付金具1は、板状の横長材10と取付金具本体20とからなるものであり、構成が簡易で安価である。なお、取付金具本体20としては、横長材10を水平に取り付け可能なものであれば、市販品を用いることができる。
【0040】
上記実施の形態は本発明の一例であり、本発明は図示以外の形態をもとりうる。
【0041】
上記実施の形態では、本柱、間柱に建材が取付施工されているが、鉄骨や既存外壁に取付施工されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の実施の形態に係る建材の取付金具の正面図である。
【図2】図1の取付金具の分解斜視図である。
【図3】取付金具本体の斜視図である。
【図4】実施の形態に係る建材取付構造を示す斜視図である。
【図5】図3のV−V線に沿う断面図である。
【図6】従来の取付金具を示す斜視図である。
【図7】従来例を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0043】
1 取付金具
10 横長材
15 リベット
20 取付金具本体
24 係止部
26 支持部
40 ストッパ片
44a ストッパ片本体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の柱に対し板状の建材を取り付けるための取付金具であって、
柱の前面に取り付けられる横長板状の横長材と、
下段側建材の上部を前後移動不能に係止する係止部、上段側の建材の下部が載荷され、該建材下部を前方移動不能に支持する支持部、及び、該下段側建材の側面に当接して建材の横移動を阻止するストッパ片を有する取付金具本体と、
を有する建材取付金具において、
該取付金具本体が前記横長材の長手方向の一端側に固着されていることを特徴とする建材取付金具。
【請求項2】
請求項1において、前記横長材の長手方向の長さが250〜500mmであることを特徴とする建材取付金具。
【請求項3】
請求項1又は2において、前記横長材は平板状であることを特徴とする建材取付金具。
【請求項4】
請求項3において、該横長材の長手方向の縁部に沿ってリブが折り立てられていることを特徴とする建材取付金具。
【請求項5】
壁面の柱列に対し複数枚の板状の建材を取付金具によって取り付けた建材の取付構造において、
少なくとも一部の該建材同士の縦継目が柱同士のスパン間に位置しており、
該柱に請求項1ないし4のいずれか1項に記載の取付金具の横長材が固定され、該取付金具の取付金具本体に建材が留め付けられ、該取付金具本体のストッパ片が建材同士の縦継目間に差し込まれていることを特徴とする建材の取付構造。
【請求項6】
壁面の柱列に対し複数枚の板状の建材を取付金具によって取り付ける建材の取付工法において、
少なくとも一部の該建材同士の縦継目が柱同士のスパン間に位置する場合に請求項1ないし4のいずれか1項に記載の取付金具を用いる工法であって、
該取付金具の取付金具本体によって建材を留め付けると共に、該取付金具本体のストッパ片を建材同士の縦継目間に差し込むように該取付金具の横長材を該柱に固定することを特徴とする建材の取付工法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−70943(P2007−70943A)
【公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−260927(P2005−260927)
【出願日】平成17年9月8日(2005.9.8)
【出願人】(000000479)株式会社INAX (1,429)
【Fターム(参考)】