建物の排水管配管構造
【課題】 排水の流下が円滑に行われ、ごみや土砂のつまりが防止され、メンテナンスも簡単になり、かつ安価な排水管配管構造を提供する。
【解決手段】 建物床下の基礎コンクリート層13を貫通して、建物内部の排水設備からの排水を建物外部に排出する排水管配管構造であり、基礎コンクリート層13には外側直管15が貫設されており、外側直管15の内部には内側直管12が挿通されており、外側直管15と、内側直管12との間には、1個または2個以上の抜け止め手段18,20が介在されており、内側直管12の内端には建物内部の排水設備に接続する排水管14Aが接続されており、内側直管12の外端には建物外部の排水管14Bが接続されている。
【解決手段】 建物床下の基礎コンクリート層13を貫通して、建物内部の排水設備からの排水を建物外部に排出する排水管配管構造であり、基礎コンクリート層13には外側直管15が貫設されており、外側直管15の内部には内側直管12が挿通されており、外側直管15と、内側直管12との間には、1個または2個以上の抜け止め手段18,20が介在されており、内側直管12の内端には建物内部の排水設備に接続する排水管14Aが接続されており、内側直管12の外端には建物外部の排水管14Bが接続されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物内部の排水設備から建物外部に排水を排出する排水管配管構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の上記排水管配管構造にあっては、図7に示すように、建物2の床下基礎コンクリート層13に外側管であるさや管15を貫設し、上記さや管15内に、内側管である蛇腹式の可撓管12を挿通し、上記可撓管12の内端と外端とには、管接続継手26,27を介して内側排水管24Aと、外側排水管24Bとを接続した構成が採用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−150889号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来構成にあっては、外側管であるさや管15は曲管であるから、それに対応して内側管を湾曲可能な蛇腹式の可撓管12としているが、このように湾曲した管路にあっては、排水の流下性能が悪くなり、可撓管12内において、ごみ、土砂等のつまりが生ずるおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記従来の課題を解決するための手段として、建物床下の基礎コンクリート層を貫通して、建物内部の排水設備からの排水を建物外部に排出する排水管配管構造であって、上記基礎コンクリート層には、外側直管が貫設されており、上記外側直管の内部には内側直管が挿通されており、上記外側直管と、上記内側直管との間には、1個または2個以上の抜け止め回り止め手段が介在されており、上記内側直管の内端には上記建物内部の排水設備に接続する排水管が接続されており、上記内側直管の外端には上記建物外部の排水管が接続されていることを特徴とする建物の排水管配管構造を提供するものである。
例えば、上記外側直管と、上記内側直管との抜け止め回り止め手段は、上記外側直管の内周面又は上記内側直管の外周面に周方向へ延びるように凹設されている1個または2個以上の係止溝と、上記内側直管の外周面又は上記外側直管の内周面に突設されている1個または2個以上の係止突起と、からなり、上記係止溝の一端は開口され、他端は閉鎖されている構成からなるものであり、その場合は上記外側直管の内周面又は上記内側直管の外周面には、上記係止溝の開口されている一端に繋がる案内縁を有するように、突出部が形成されていることが望ましく、また上記係止溝は、上記外側直管の周壁を外側へ膨出させることによって形成されていることが望ましい。
更に上記外側直管と上記内側直管との抜け止め回り止め手段は、上記外側直管の内周面又は上記内側直管の外周面に形成されている雌ねじ部と、上記内側直管の外周面又は上記外側直管の内周面に形成され、上記雌ねじ部に螺合する雄ねじ部と、からなるものであってもよい。
【発明の効果】
【0006】
〔作用〕
本発明にあっては、排水を建物内部から建物外部に導出するための排水管配管構造において、建物2の床下の基礎コンクリート13に貫設される外側直管15を直管とし、これに対応して、上記外側直管15内部に挿通され、建物内外の排水管14Aが接続する内側直管12も直管とされているので、排水の流下が円滑になり、ごみ、土砂等のつまりが生じにくい。
また可撓管の製造には複雑な成形方法が採用されるが、直管であれば、簡単な成形方法で製造出来る。
更に外側管が曲管であると、該曲管内に挿入される可撓管が、該曲管内で湾曲しやすくするために、該曲管内周と該可撓管外周との間に、ある程度の余裕をもたせることが必要であるが、本発明にあっては外側管も内側管も直管であるから、このような余裕は必要としないので、外側管の外形をその分小さくすることが出来、その分外側管貫設部分の基礎コンクリート13の厚みを増加することが出来るので、該基礎コンクリート13の強度が向上する。
本発明にあっては、上記外側直管15と内側直管12との間には、1個または2個以上の抜け止め手段が介在されており、上記内側直管12は、上記外側直管15に対して抜け止め、つまり軸線方向への移動を抑制されているから、該内側直管12の内外端に、内側排水管14Aを接続するための管接続継手16,17を取り付ける作業が容易になる。
また、上記抜け止め手段を、上記外側直管15の内周面又は上記内側直管12の外周面に凹設されている1個または2個以上の係止溝18と、上記内側直管の外周面又は上記外側直管15の内周面に突設されている1個または2個以上の係止突起20とし、該係止溝18の一端を開口し、他端を閉鎖した構成では、上記係止突起20,20を上記係止溝18,18に嵌入し、該係止突起20,20を該係止溝18,18の閉鎖端18Aに当接させて抜け止めを行うが(請求項2)、上記係止溝18,18の開口されている一端である開口端18Aに繋がる案内縁19Aを有するように、上記外側直管15の内周面又は上記内側直管12の外周面に突出部19,19が形成されていると、上記外側直管15内に上記内側直管12を挿入する際、上記係止突起20,20が上記突出部19の案内縁19Aによって上記係止溝18の開口端18Aに案内されるから、上記係止突起20,20を上記係止溝18に嵌入する作業が容易になる(請求項3)。
さらに上記係止溝18を、上記外側直管15の周壁を外側へ膨出させることによって形成すれば、該係止溝18を形成したことによる凹凸状の段部が該外側直管15の外周面上に形成され、該段部が基礎コンクリート13に引っ掛かることで、該外側直管15の該基礎コンクリート13に対する軸線方向の位置ずれを抑制することができるようになり、例えば該外側直管15に上記内側直管12を挿通する際の該外側直管15のぐらつき等を抑えられるので、上記内側直管12の挿通作業が容易になる(請求項4)。
また上記外側直管15の内周に雌ねじ部21を形成し、該雌ねじ部21に上記内側直管12の外周に形成した雄ねじ部22を螺合することによっても、上記内側直管12は、外側直管15に対して抜け止めされる(請求項5)。
【0007】
〔効果〕
本発明では、建物の排水管配管構造において、外側管、内側管共に直管を使用するから、排水の流下が円滑に行われ、管内につまりが生じにくくなる。また直管は曲管や可撓管よりもはるかに簡単に製造されるから、安価に提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本実施形態の配管構造を示す断面図。
【図2】(a),(b)は外側直管を示す正面図と断面図、(c)は内側直管を示す正面図。
【図3】外側直管の内周面形状を示す展開図。
【図4】別形態の外側直管の内周面形状を示す展開図。
【図5】(a),(b)は別形態の外側直管を示す正面図と断面図
【図6】(a)は別形態の外側直管を示す断面図、(b)は別形態の内側直管を示す正面図。
【図7】従来の配管構造を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明を図1〜図3に示す一実施例によって説明する。
図1に示すように、建物2の床下の基礎コンクリート13には、さや管である外側直管15が貫設されている。上記外側直管15の内部には内側直管12が挿通されている。上記内側直管12には上記外側直管15の内外端外出部において、管接続継手16,17を介して建物内排水管14Aと、建物外排水管14Bと、がそれぞれ接続されている。
図2(a),(b)に示すように、上記外側直管15の内周面で所定個所には、相対して2個の係止溝18,18が周方向へ延びるように凹設されている。上記係止溝18,18は、開口された一端として開口端18Aと、閉鎖された他端として閉鎖端18Bと、を有している。上記係止溝18,18の建物内部側(上流側)直近にはV字状の突出部19,19が形成されている。上記突出部19,19は、その両側縁が案内縁19A,19Aとされ、該案内縁19A,19Aが上記係止溝18,18の開口端18A,18Aと繋がるように、形成されている。
上記係止溝18,18は、上記外側直管15の周壁を外側へ膨出させることによって形成されている。係止溝18,18を、外側直管15の周壁を外側へ膨出させて形成することにより、該外側直管15の外周面上には凹凸状の段部が形成され、該外側直管15が基礎コンクリート13に対して軸方向へ位置ずれしようとする際には、該段部が基礎コンクリート13に引っ掛かり、このような位置ずれが抑制されるようになる。
また上記突出部19,19は、上記外側直管15の周壁を内側へ膨出させることによって形成されており、上記係止溝18,18と同様に該外側直管15の外周面上に凹凸状の段部を形成することで、該外側直管15の基礎コンクリート13に対する軸方向への位置ずれを抑制している。
図2(c)に示すように、上記内側直管12の外周面で所定個所には相対した2個の係止突起20,20が突設されている。これら係止突起20,20は、平面視で円形状に形成されている(図1参照)。
【0010】
なお、上記係止溝18,18や上記突出部19,19は、上記外側直管15の周壁を膨出させて形成することに限定されず、例えば上記外側直管15の内周面に係止溝18,18を凹設したり、あるいは上記突出部19,19を凸設したりしてもよい。
また上記係止溝18,18を外側直管15の内周面に凹設し、上記係止突起20,20を内側直管12の外周面に突設することに限らず、外側直管15の内周面に上記のような係止突起を突設し、内側直管12の外周面に上記のような係止溝を凹設してもよい。
【0011】
上記構成にあっては、上記基礎コンクリート13に貫設されている上記外側直管15内に、上流側から上記内側直管12を挿通する。この内側直管12の挿通作業においては、内側直管12が直管(直線形状の管)であり、外側直管15もまた直管であるので、通常の曲管のように引っ掛かったりすることがなく、また無理矢理に押し込んだりする必要がないので、該挿通作業が非常に簡易化される。
さらに、上記したように外側直管15の外周面上には、係止溝18,18を形成したことによる凹凸状の段部が形成されており、内側直管12の挿通時に外側直管15が軸線方向に位置ずれしようとしても、該段部が上記基礎コンクリート13に引っ掛かって位置ずれが防止されるので、該外側直管15が上記基礎コンクリート13にしっかりと固定され、挿通作業を確実に行うことができる。
また通常の曲管であれば、挿通作業での引っ掛かり等を防止するために、外側直管15の内周面と、内側直管12の外周面との間の隙間を広くする必要があるが、直管である外側直管15と、内側直管12とは、挿通作業で引っ掛かることがほぼ無いので、該隙間を小さくすることができる。その結果、外側直管15の外径を小さくすることが出来るので、基礎コンクリート13のかぶり厚を大きく取ることができ、該基礎コンクリート13の強度向上を図ることができる。
【0012】
図3は、上記外側直管15の周壁を平面状に展開したうえで内周面から見た状態を示す展開図である。上記内側直管12の挿通過程において、上記内側直管12の係止突起20は、上記外側直管15の突出部19の案内縁19Aに当接する(位置A)。上記内側直管12を更に矢印αに示すように上記外側直管15内に挿入していくと、上記内側直管12の係止突起20は、上記外側直管15の突出部19の案内縁19Aによって矢印βに示す方向に案内されて、上記係止溝18の開口端18Aに達する(位置B)。この状態で上記内側直管12を矢印γに示す方向に回転させ、上記係止突起20を上記係止溝18の閉鎖端18Bに至らしめる(位置C)。
上記突出部19,19は、略二等辺三角形状に形成されている。また突出部19の底辺の長さは、上記外側直管15の半径をrとすれば、πrであり、つまり上記外側直管15の円周の長さの2分の1に設定される。従って、図3中に二点鎖線で示すように、上記係止突起20は、上記内側直管12を上記外側直管15内に挿入さえすれば、該突出部19に対して何れの位置にあっても必ず案内縁19Aに案内されて、上記係止溝18の開口端18Aに達する。
【0013】
上記の位置Cの状態で上記内側直管12は、上記外側直管15に対して抜け止めされており、軸線方向への移動を規制される。さらに、上記内側直管12は上記外側直管15に対して、所定方向(矢印γと反対方向であり、内側直管12の挿通過程における回転方向と逆方向)への回転を規制される。従って、上記内側直管12の上記外側直管15に対する挿通と固定は、外側直管15内に内側直管12を単純に挿入し、特に目視等する必要もなく、該内側直管12を止まるまで回転させるのみで、簡易かつ確実に行われる。
上記外側直管15へ挿通した後の上記内側直管12の両端には、管接続継手16,17を介して建物内排水管14A(上流側排水管)と建物外排水管14B(下流側排水管)とがそれぞれ接続される(図1参照)。
これら管接続継手16,17の接続作業においては、内側直管12が軸線方向への移動を規制された状態にあるので、該内側直管12がぐらついたり、不用意に回転したりすることがないので、該接続作業が非常に行いやすい。また内側直管12が挿通され、固定されている外側直管15もまた、上記係止溝18,18の形成による凹凸状の段部によって上記基礎コンクリート13にしっかりと固定されているので、管接続継手16,17の接続作業を確実に行うことができる。
【0014】
上記構成において、直管である外側直管15と、内側直管12とは、例えば押出成形やブロー成形等といった非常に簡単な成形方法で成形することができ、製造コストや部品コスト等を安価なものとすることができる。
また通常の曲管であれば、流下性能が湾曲部分で低下してしまうので、詰まり等の原因となってしまうが、直管である内側直管12は、流下性能が非常に優れているので、詰まり等の不具合が生じにくい。
さらに、上記構成は、非常に簡易な構成でありながら、流下性能に優れるので、維持管理性に優れたものとなる。
【0015】
本発明は、上記した構成に限定されるものではなく、以下のように変更してよい。
図4、図5(a),(b)に示すように、上記突出部19,19を、上記外側直管15の周方向に延びる直線状のものとしてもよい。この場合、上記内側直管12を矢印αに示すように上記外側直管15内に挿入していくと、上記内側直管12の係止突起20が、上記外側直管15の突出部19の案内縁19Aに当接し(位置A)、上記内側直管12の挿入が一旦止まる。この状態から上記内側直管12を矢印βに示す方向に回転させつつ、矢印γに示すように上記外側直管15内に押し込んでいくと、上記内側直管12の係止突起20が上記係止溝18の開口端18Aに達して(位置B)、上記内側直管12の挿入が再び止まる。この状態で上記内側直管12を矢印δに示す方向に回転させ、上記係止突起20を上記係止溝18の閉鎖端18Bに至らしめる(位置C)と、該内側直管12の軸線方向への移動規制がなされる。
図6に示すように、上記外側直管15の内周面上に雌ねじ部21を設け、上記内側直管12の外周面上に該雌ねじ部21と螺合する雄ねじ部22を設けてもよい。このように、上記外側直管15に上記内側直管12を螺入し、雌ねじ部21に雄ねじ部22を螺合する構成としても、上記内側直管12は、上記外側直管15に対して軸線方向への移動を規制される。
【産業上の利用可能性】
【0016】
本発明の排水管配管構造にあっては、排水の流下が円滑に行われ、ごみや土砂のつまりが防止されるから、メンテナンスも簡単になり、かつ直管を使用するから安価に提供出来るから、産業上の利用可能性がある。
【符号の説明】
【0017】
12 内側直管
15 外側直管
18 係止溝
19 突出部
19A 案内縁
20 係止突起
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物内部の排水設備から建物外部に排水を排出する排水管配管構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の上記排水管配管構造にあっては、図7に示すように、建物2の床下基礎コンクリート層13に外側管であるさや管15を貫設し、上記さや管15内に、内側管である蛇腹式の可撓管12を挿通し、上記可撓管12の内端と外端とには、管接続継手26,27を介して内側排水管24Aと、外側排水管24Bとを接続した構成が採用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−150889号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来構成にあっては、外側管であるさや管15は曲管であるから、それに対応して内側管を湾曲可能な蛇腹式の可撓管12としているが、このように湾曲した管路にあっては、排水の流下性能が悪くなり、可撓管12内において、ごみ、土砂等のつまりが生ずるおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記従来の課題を解決するための手段として、建物床下の基礎コンクリート層を貫通して、建物内部の排水設備からの排水を建物外部に排出する排水管配管構造であって、上記基礎コンクリート層には、外側直管が貫設されており、上記外側直管の内部には内側直管が挿通されており、上記外側直管と、上記内側直管との間には、1個または2個以上の抜け止め回り止め手段が介在されており、上記内側直管の内端には上記建物内部の排水設備に接続する排水管が接続されており、上記内側直管の外端には上記建物外部の排水管が接続されていることを特徴とする建物の排水管配管構造を提供するものである。
例えば、上記外側直管と、上記内側直管との抜け止め回り止め手段は、上記外側直管の内周面又は上記内側直管の外周面に周方向へ延びるように凹設されている1個または2個以上の係止溝と、上記内側直管の外周面又は上記外側直管の内周面に突設されている1個または2個以上の係止突起と、からなり、上記係止溝の一端は開口され、他端は閉鎖されている構成からなるものであり、その場合は上記外側直管の内周面又は上記内側直管の外周面には、上記係止溝の開口されている一端に繋がる案内縁を有するように、突出部が形成されていることが望ましく、また上記係止溝は、上記外側直管の周壁を外側へ膨出させることによって形成されていることが望ましい。
更に上記外側直管と上記内側直管との抜け止め回り止め手段は、上記外側直管の内周面又は上記内側直管の外周面に形成されている雌ねじ部と、上記内側直管の外周面又は上記外側直管の内周面に形成され、上記雌ねじ部に螺合する雄ねじ部と、からなるものであってもよい。
【発明の効果】
【0006】
〔作用〕
本発明にあっては、排水を建物内部から建物外部に導出するための排水管配管構造において、建物2の床下の基礎コンクリート13に貫設される外側直管15を直管とし、これに対応して、上記外側直管15内部に挿通され、建物内外の排水管14Aが接続する内側直管12も直管とされているので、排水の流下が円滑になり、ごみ、土砂等のつまりが生じにくい。
また可撓管の製造には複雑な成形方法が採用されるが、直管であれば、簡単な成形方法で製造出来る。
更に外側管が曲管であると、該曲管内に挿入される可撓管が、該曲管内で湾曲しやすくするために、該曲管内周と該可撓管外周との間に、ある程度の余裕をもたせることが必要であるが、本発明にあっては外側管も内側管も直管であるから、このような余裕は必要としないので、外側管の外形をその分小さくすることが出来、その分外側管貫設部分の基礎コンクリート13の厚みを増加することが出来るので、該基礎コンクリート13の強度が向上する。
本発明にあっては、上記外側直管15と内側直管12との間には、1個または2個以上の抜け止め手段が介在されており、上記内側直管12は、上記外側直管15に対して抜け止め、つまり軸線方向への移動を抑制されているから、該内側直管12の内外端に、内側排水管14Aを接続するための管接続継手16,17を取り付ける作業が容易になる。
また、上記抜け止め手段を、上記外側直管15の内周面又は上記内側直管12の外周面に凹設されている1個または2個以上の係止溝18と、上記内側直管の外周面又は上記外側直管15の内周面に突設されている1個または2個以上の係止突起20とし、該係止溝18の一端を開口し、他端を閉鎖した構成では、上記係止突起20,20を上記係止溝18,18に嵌入し、該係止突起20,20を該係止溝18,18の閉鎖端18Aに当接させて抜け止めを行うが(請求項2)、上記係止溝18,18の開口されている一端である開口端18Aに繋がる案内縁19Aを有するように、上記外側直管15の内周面又は上記内側直管12の外周面に突出部19,19が形成されていると、上記外側直管15内に上記内側直管12を挿入する際、上記係止突起20,20が上記突出部19の案内縁19Aによって上記係止溝18の開口端18Aに案内されるから、上記係止突起20,20を上記係止溝18に嵌入する作業が容易になる(請求項3)。
さらに上記係止溝18を、上記外側直管15の周壁を外側へ膨出させることによって形成すれば、該係止溝18を形成したことによる凹凸状の段部が該外側直管15の外周面上に形成され、該段部が基礎コンクリート13に引っ掛かることで、該外側直管15の該基礎コンクリート13に対する軸線方向の位置ずれを抑制することができるようになり、例えば該外側直管15に上記内側直管12を挿通する際の該外側直管15のぐらつき等を抑えられるので、上記内側直管12の挿通作業が容易になる(請求項4)。
また上記外側直管15の内周に雌ねじ部21を形成し、該雌ねじ部21に上記内側直管12の外周に形成した雄ねじ部22を螺合することによっても、上記内側直管12は、外側直管15に対して抜け止めされる(請求項5)。
【0007】
〔効果〕
本発明では、建物の排水管配管構造において、外側管、内側管共に直管を使用するから、排水の流下が円滑に行われ、管内につまりが生じにくくなる。また直管は曲管や可撓管よりもはるかに簡単に製造されるから、安価に提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本実施形態の配管構造を示す断面図。
【図2】(a),(b)は外側直管を示す正面図と断面図、(c)は内側直管を示す正面図。
【図3】外側直管の内周面形状を示す展開図。
【図4】別形態の外側直管の内周面形状を示す展開図。
【図5】(a),(b)は別形態の外側直管を示す正面図と断面図
【図6】(a)は別形態の外側直管を示す断面図、(b)は別形態の内側直管を示す正面図。
【図7】従来の配管構造を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明を図1〜図3に示す一実施例によって説明する。
図1に示すように、建物2の床下の基礎コンクリート13には、さや管である外側直管15が貫設されている。上記外側直管15の内部には内側直管12が挿通されている。上記内側直管12には上記外側直管15の内外端外出部において、管接続継手16,17を介して建物内排水管14Aと、建物外排水管14Bと、がそれぞれ接続されている。
図2(a),(b)に示すように、上記外側直管15の内周面で所定個所には、相対して2個の係止溝18,18が周方向へ延びるように凹設されている。上記係止溝18,18は、開口された一端として開口端18Aと、閉鎖された他端として閉鎖端18Bと、を有している。上記係止溝18,18の建物内部側(上流側)直近にはV字状の突出部19,19が形成されている。上記突出部19,19は、その両側縁が案内縁19A,19Aとされ、該案内縁19A,19Aが上記係止溝18,18の開口端18A,18Aと繋がるように、形成されている。
上記係止溝18,18は、上記外側直管15の周壁を外側へ膨出させることによって形成されている。係止溝18,18を、外側直管15の周壁を外側へ膨出させて形成することにより、該外側直管15の外周面上には凹凸状の段部が形成され、該外側直管15が基礎コンクリート13に対して軸方向へ位置ずれしようとする際には、該段部が基礎コンクリート13に引っ掛かり、このような位置ずれが抑制されるようになる。
また上記突出部19,19は、上記外側直管15の周壁を内側へ膨出させることによって形成されており、上記係止溝18,18と同様に該外側直管15の外周面上に凹凸状の段部を形成することで、該外側直管15の基礎コンクリート13に対する軸方向への位置ずれを抑制している。
図2(c)に示すように、上記内側直管12の外周面で所定個所には相対した2個の係止突起20,20が突設されている。これら係止突起20,20は、平面視で円形状に形成されている(図1参照)。
【0010】
なお、上記係止溝18,18や上記突出部19,19は、上記外側直管15の周壁を膨出させて形成することに限定されず、例えば上記外側直管15の内周面に係止溝18,18を凹設したり、あるいは上記突出部19,19を凸設したりしてもよい。
また上記係止溝18,18を外側直管15の内周面に凹設し、上記係止突起20,20を内側直管12の外周面に突設することに限らず、外側直管15の内周面に上記のような係止突起を突設し、内側直管12の外周面に上記のような係止溝を凹設してもよい。
【0011】
上記構成にあっては、上記基礎コンクリート13に貫設されている上記外側直管15内に、上流側から上記内側直管12を挿通する。この内側直管12の挿通作業においては、内側直管12が直管(直線形状の管)であり、外側直管15もまた直管であるので、通常の曲管のように引っ掛かったりすることがなく、また無理矢理に押し込んだりする必要がないので、該挿通作業が非常に簡易化される。
さらに、上記したように外側直管15の外周面上には、係止溝18,18を形成したことによる凹凸状の段部が形成されており、内側直管12の挿通時に外側直管15が軸線方向に位置ずれしようとしても、該段部が上記基礎コンクリート13に引っ掛かって位置ずれが防止されるので、該外側直管15が上記基礎コンクリート13にしっかりと固定され、挿通作業を確実に行うことができる。
また通常の曲管であれば、挿通作業での引っ掛かり等を防止するために、外側直管15の内周面と、内側直管12の外周面との間の隙間を広くする必要があるが、直管である外側直管15と、内側直管12とは、挿通作業で引っ掛かることがほぼ無いので、該隙間を小さくすることができる。その結果、外側直管15の外径を小さくすることが出来るので、基礎コンクリート13のかぶり厚を大きく取ることができ、該基礎コンクリート13の強度向上を図ることができる。
【0012】
図3は、上記外側直管15の周壁を平面状に展開したうえで内周面から見た状態を示す展開図である。上記内側直管12の挿通過程において、上記内側直管12の係止突起20は、上記外側直管15の突出部19の案内縁19Aに当接する(位置A)。上記内側直管12を更に矢印αに示すように上記外側直管15内に挿入していくと、上記内側直管12の係止突起20は、上記外側直管15の突出部19の案内縁19Aによって矢印βに示す方向に案内されて、上記係止溝18の開口端18Aに達する(位置B)。この状態で上記内側直管12を矢印γに示す方向に回転させ、上記係止突起20を上記係止溝18の閉鎖端18Bに至らしめる(位置C)。
上記突出部19,19は、略二等辺三角形状に形成されている。また突出部19の底辺の長さは、上記外側直管15の半径をrとすれば、πrであり、つまり上記外側直管15の円周の長さの2分の1に設定される。従って、図3中に二点鎖線で示すように、上記係止突起20は、上記内側直管12を上記外側直管15内に挿入さえすれば、該突出部19に対して何れの位置にあっても必ず案内縁19Aに案内されて、上記係止溝18の開口端18Aに達する。
【0013】
上記の位置Cの状態で上記内側直管12は、上記外側直管15に対して抜け止めされており、軸線方向への移動を規制される。さらに、上記内側直管12は上記外側直管15に対して、所定方向(矢印γと反対方向であり、内側直管12の挿通過程における回転方向と逆方向)への回転を規制される。従って、上記内側直管12の上記外側直管15に対する挿通と固定は、外側直管15内に内側直管12を単純に挿入し、特に目視等する必要もなく、該内側直管12を止まるまで回転させるのみで、簡易かつ確実に行われる。
上記外側直管15へ挿通した後の上記内側直管12の両端には、管接続継手16,17を介して建物内排水管14A(上流側排水管)と建物外排水管14B(下流側排水管)とがそれぞれ接続される(図1参照)。
これら管接続継手16,17の接続作業においては、内側直管12が軸線方向への移動を規制された状態にあるので、該内側直管12がぐらついたり、不用意に回転したりすることがないので、該接続作業が非常に行いやすい。また内側直管12が挿通され、固定されている外側直管15もまた、上記係止溝18,18の形成による凹凸状の段部によって上記基礎コンクリート13にしっかりと固定されているので、管接続継手16,17の接続作業を確実に行うことができる。
【0014】
上記構成において、直管である外側直管15と、内側直管12とは、例えば押出成形やブロー成形等といった非常に簡単な成形方法で成形することができ、製造コストや部品コスト等を安価なものとすることができる。
また通常の曲管であれば、流下性能が湾曲部分で低下してしまうので、詰まり等の原因となってしまうが、直管である内側直管12は、流下性能が非常に優れているので、詰まり等の不具合が生じにくい。
さらに、上記構成は、非常に簡易な構成でありながら、流下性能に優れるので、維持管理性に優れたものとなる。
【0015】
本発明は、上記した構成に限定されるものではなく、以下のように変更してよい。
図4、図5(a),(b)に示すように、上記突出部19,19を、上記外側直管15の周方向に延びる直線状のものとしてもよい。この場合、上記内側直管12を矢印αに示すように上記外側直管15内に挿入していくと、上記内側直管12の係止突起20が、上記外側直管15の突出部19の案内縁19Aに当接し(位置A)、上記内側直管12の挿入が一旦止まる。この状態から上記内側直管12を矢印βに示す方向に回転させつつ、矢印γに示すように上記外側直管15内に押し込んでいくと、上記内側直管12の係止突起20が上記係止溝18の開口端18Aに達して(位置B)、上記内側直管12の挿入が再び止まる。この状態で上記内側直管12を矢印δに示す方向に回転させ、上記係止突起20を上記係止溝18の閉鎖端18Bに至らしめる(位置C)と、該内側直管12の軸線方向への移動規制がなされる。
図6に示すように、上記外側直管15の内周面上に雌ねじ部21を設け、上記内側直管12の外周面上に該雌ねじ部21と螺合する雄ねじ部22を設けてもよい。このように、上記外側直管15に上記内側直管12を螺入し、雌ねじ部21に雄ねじ部22を螺合する構成としても、上記内側直管12は、上記外側直管15に対して軸線方向への移動を規制される。
【産業上の利用可能性】
【0016】
本発明の排水管配管構造にあっては、排水の流下が円滑に行われ、ごみや土砂のつまりが防止されるから、メンテナンスも簡単になり、かつ直管を使用するから安価に提供出来るから、産業上の利用可能性がある。
【符号の説明】
【0017】
12 内側直管
15 外側直管
18 係止溝
19 突出部
19A 案内縁
20 係止突起
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物床下の基礎コンクリート層を貫通して、建物内部の排水設備からの排水を建物外部に排出する排水管配管構造であって、
上記基礎コンクリート層には、外側直管が貫設されており、
上記外側直管の内部には内側直管が挿通されており、
上記外側直管と、上記内側直管との間には、1個または2個以上の抜け止め手段が介在されており、
上記内側直管の内端には上記建物内部の排水設備に接続する排水管が接続されており、
上記内側直管の外端には上記建物外部の排水管が接続されている
ことを特徴とする建物の排水管配管構造。
【請求項2】
上記外側直管と、上記内側直管との抜け止め手段は、
上記外側直管の内周面又は上記内側直管の外周面に周方向へ延びるように凹設されている1個または2個以上の係止溝と、
上記内側直管の外周面又は上記外側直管の内周面に突設されている1個または2個以上の係止突起と、
からなり、上記係止溝の一端は開口され、他端は閉鎖されている
請求項1に記載の建物の排水管配管構造。
【請求項3】
上記外側直管の内周面又は上記内側直管の外周面には、上記係止溝の開口されている一端に繋がる案内縁を有するように、突出部が形成されている
請求項2に記載の建物の排水管配管構造。
【請求項4】
上記係止溝は、上記外側直管の周壁を外側へ膨出させることによって形成されている
請求項2又は請求項3に記載の建物の排水管配管構造。
【請求項5】
上記外側直管と上記内側直管との抜け止め回り止め手段は、
上記外側直管の内周面又は上記内側直管の外周面に形成されている雌ねじ部と、
上記内側直管の外周面又は上記外側直管の内周面に形成され、上記雌ねじ部に螺合する雄ねじ部と、
からなる
請求項1に記載の建物の排水管配管構造。
【請求項1】
建物床下の基礎コンクリート層を貫通して、建物内部の排水設備からの排水を建物外部に排出する排水管配管構造であって、
上記基礎コンクリート層には、外側直管が貫設されており、
上記外側直管の内部には内側直管が挿通されており、
上記外側直管と、上記内側直管との間には、1個または2個以上の抜け止め手段が介在されており、
上記内側直管の内端には上記建物内部の排水設備に接続する排水管が接続されており、
上記内側直管の外端には上記建物外部の排水管が接続されている
ことを特徴とする建物の排水管配管構造。
【請求項2】
上記外側直管と、上記内側直管との抜け止め手段は、
上記外側直管の内周面又は上記内側直管の外周面に周方向へ延びるように凹設されている1個または2個以上の係止溝と、
上記内側直管の外周面又は上記外側直管の内周面に突設されている1個または2個以上の係止突起と、
からなり、上記係止溝の一端は開口され、他端は閉鎖されている
請求項1に記載の建物の排水管配管構造。
【請求項3】
上記外側直管の内周面又は上記内側直管の外周面には、上記係止溝の開口されている一端に繋がる案内縁を有するように、突出部が形成されている
請求項2に記載の建物の排水管配管構造。
【請求項4】
上記係止溝は、上記外側直管の周壁を外側へ膨出させることによって形成されている
請求項2又は請求項3に記載の建物の排水管配管構造。
【請求項5】
上記外側直管と上記内側直管との抜け止め回り止め手段は、
上記外側直管の内周面又は上記内側直管の外周面に形成されている雌ねじ部と、
上記内側直管の外周面又は上記外側直管の内周面に形成され、上記雌ねじ部に螺合する雄ねじ部と、
からなる
請求項1に記載の建物の排水管配管構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【公開番号】特開2013−2211(P2013−2211A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−136602(P2011−136602)
【出願日】平成23年6月20日(2011.6.20)
【出願人】(000000505)アロン化成株式会社 (317)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年6月20日(2011.6.20)
【出願人】(000000505)アロン化成株式会社 (317)
【Fターム(参考)】
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