説明

建物の排水管配管構造

【課題】 基礎コンクリート層内におけるさや管の周囲の隙間を利用したシロアリの建物内への侵入を抑制することができる建物の排水管配管構造を提供する。
【解決手段】 建物の排水管配管構造において、建物10の床下の基礎コンクリート層11を貫通して、建物内部の排水設備からの排水を建物外部の屋外排水管15Aへ送る排水管配管構造であって、基礎コンクリート層11には、さや管12が、両端の開口が建物10の内部と外部とで開放された状態で、埋設され、さや管12の内部には、排水管13が挿通され、排水管13の一端に排水設備から延びる屋内排水管14Aが接続されるとともに、 排水管13の他端に屋外排水管15Aが接続され、さや管12の外周面上には、少なくとも基礎コンクリート層11に埋設されることになる一部に、凹凸状の粗面部18が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物内部の排水設備から建物外部の屋外排水管へ排水を送るための排水管配管構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の排水管配管構造として、例えば特許文献1に示されるように、建物の床下の基礎コンクリート層に屈曲管からなるさや管を埋設し、該さや管の内部に可撓管からなる排水管を挿通し、該排水管の両端に管接続継手を介して内側排水管及び外側排水管を接続する構成が採用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−54203号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、上記従来の排水管配管構造にあっては、上記さや管を建物の内部と外部との間で基礎コンクリート層を貫通するようにして埋設する必要があるが、該基礎コンクリート層の構築時にコンクリートが収縮することで、該基礎コンクリート層内でさや管の周囲に隙間が形成されてしまう場合があり、該隙間が建物内への侵入路としてシロアリに利用されてしまうおそれがあった。
本発明は、このような従来技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その目的とするところは、基礎コンクリート層内におけるさや管の周囲の隙間を利用したシロアリの建物内への侵入を抑制することができる建物の排水管配管構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記従来の問題点を解決する手段として、請求項1に記載の建物の排水管配管構造の発明は、建物の床下の基礎コンクリート層を貫通して、建物内部の排水設備からの排水を建物外部の屋外排水管へ送る排水管配管構造であって、上記基礎コンクリート層には、さや管が、両端の開口が上記建物の内部と外部とで開放された状態で、埋設され、上記さや管の内部には、排水管が挿通され、上記排水管の一端に上記排水設備から延びる屋内排水管が接続されるとともに、上記排水管の他端に上記屋外排水管が接続され、上記さや管の外周面上には、少なくとも上記基礎コンクリート層に埋設されることになる一部に、凹凸状の粗面部が設けられていることを要旨とする。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の建物の排水管配管構造の発明において、上記さや管の内部に上記排水管が挿通された状態で、上記さや管の内周面と、上記排水管の外周面と、の間に形成される間隙を塞ぐ封止手段を有していることを要旨とする。
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の建物の排水管配管構造の発明において、上記粗面部は、砂付け加工によって形成されたものであることを要旨とする。
請求項4に記載の発明は、請求項1から請求項3の何れか一項に記載の建物の排水管配管構造の発明において、上記さや管と、上記排水管と、が直管からなることを要旨とする。
【発明の効果】
【0006】
〔作用〕
本発明にあって、さや管の外周面上には、少なくとも基礎コンクリート層に埋設されることになる一部に凹凸状の粗面部が設けられることで、基礎コンクリート層との接触面積を広げられており、さらに該粗面部の凹凸にコンクリートが入り込むことで、該凹凸による係止効果が生じるので、コンクリートが収縮してもさや管の周囲に隙間が生じにくくなり、該隙間を利用したシロアリの建物内への侵入を抑制することができる。
またさや管の内周面と排水管の外周面との間に形成される間隙を封止手段によって塞ぐことで、該間隙を利用したシロアリやゴキブリ等の害虫やネズミ等の害獣の建物内への侵入を抑制することができる。
また上記粗面部は、砂付け加工によって形成されることで、コンクリートとの親和性を向上させることができるので、シロアリが入り込めるような上記隙間が形成されることを好適に抑制することができる。
また直管からなるさや管と排水管とを使用する場合、上記従来の曲管や屈曲管からなるさや管と可撓管からなる排水管とを使用した場合に比べ、さや管内に排水管を撓ませながら挿入する必要がないので、排水管の挿通作業時に該排水管が引っ掛かりにくく、さや管内への排水管の挿通作業を容易に行うことができる。さらに排水管を撓ませる余裕を設ける必要がない分、さや管の内周面と排水管の外周面との間に形成される間隙を小さくすることができ、該間隙へ害虫等が侵入しにくくすることができる。
【0007】
〔効果〕
本発明では、建物の排水管配管構造において、基礎コンクリート層に接触するさや管の外周面上に粗面部が形成されているので、基礎コンクリート層内でさや管の周囲に隙間が形成されにくく、該隙間を利用したシロアリの建物内への侵入を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本実施形態の配管構造を示す断面図。
【図2】本実施形態のさや管を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明を具体化した一実施形態を説明する。
図1に示すように、建物10において床下には、コンクリートが打設されることによって基礎コンクリート層11が形成されている。
上記基礎コンクリート層11には、さや管12が、その両端の開口が建物10の内部(屋内)と建物10の外部(屋外)とで開放されるように、該基礎コンクリート層11を貫通して埋設されている。
上記さや管12の内部には、排水管13が挿通されており、該排水管13の一端である屋内側端部と、他端である屋外側端部は、それぞれさや管12の端部から外側へ突出している。
そして、排水管13の屋内側端部には、建物の内部の排水設備から延びる屋内排水管14Aが管接続継手14Bを介して接続されており、排水管13の屋外側端部には、建物の外部に敷設等された屋外排水管15Aが管接続継手15Bを介して接続されている。
【0010】
上記さや管12には、直管、つまりは直線状の管材が用いられている。該さや管12は、上記排水管13で上記屋内排水管14A及び上記屋外排水管15Aを繋ぐことが出来るように、所定の角度で斜めに配されたうえで、上記基礎コンクリート層11内に埋設されている。
なお、本実施形態では上記さや管12の屋外側端部は、上記基礎コンクリート層11の外面に合わせて斜めに切断されている(図1参照)が、必ずしも切断しなくてもよい。
【0011】
上記排水管13には、上記さや管12と同様に直管が用いられている。従って、該排水管13の上記さや管12内への挿入作業は、該排水管13を真っ直ぐに挿入するのみでよく、非常に容易でかつ短時間なものとなる。また直管からなる上記排水管13は、直管からなる上記さや管12内への挿入作業が簡易であるうえ、挿入時に該さや管12の内周面に引っ掛かりにくいので、該さや管12の内周面と該排水管13の外周面との間に形成される間隙17を極僅かなものに抑えることができる。結果、ネズミ等といった害獣が該間隙17を利用して建物10内に侵入することを防止することができる。
【0012】
なお上記構成において、直管からなるさや管12と、直管からなる排水管13とは、例えば押出成形やブロー成形等といった非常に簡単な成形方法で成形することができ、製造コストや部品コスト等を安価なものとすることができる。
また通常の可撓管からなる排水管であれば、湾曲された部分で流下性能が低下してしまうので、詰まり等の原因となってしまうが、直管からなる排水管13は、流下性能が非常に優れているので、詰まり等の不具合が生じにくい。
さらに、上記構成は、非常に簡易な構成でありながら、流下性能に優れるので、維持管理性に優れたものとなる。
【0013】
上記さや管12の屋内側端部において、内周面には、O−リング16が嵌着されている。該O−リング16は、上記排水管13が上記さや管12の内部へ挿通された状態において、上記さや管12の内周面と上記排水管13の外周面との間で押し潰されて、各面に密着することにより、上記間隙17を塞ぐ封止手段を構成している。このような封止手段であるO−リング16を設けることで、該間隙17がほぼ完全に塞がれるので、結果、ゴキブリ等といった害虫が該間隙17を利用して建物10内に侵入することを防止することができる。
なお封止手段は、上記O−リング16を上記さや管12の屋内側端部の内周面に嵌着することに限らず、上記間隙17を塞ぐことが可能であれば、何れの構成としてもよい。例えば、上記O−リング16をさや管12の屋外側端部の内周面に嵌着してもよく、上記排水管13の外周面に上記O−リング16を嵌着してもよく、上記O−リング16に代えて粘着テープを上記排水管13の外周面上に巻いたり、あるいは上記間隙17に充填剤等を流し込んだりしてもよい。
【0014】
図1及び図2に示すように、上記さや管12の外周面上には粗面部18が設けられている。
上記粗面部18は、シボ加工、砂付け加工等によって形成されるが、コンクリートとの親和性の向上を図ることができるという観点から、砂付け加工によって形成されることが望ましい。該砂付け加工は、上記さや管12の外周面に粘着剤や接着剤等を塗布したうえで、ケイ砂等の砂材を付着させて、砂材による凹凸を形成する加工方法である。
上記粗面部18が外周面上に形成されたさや管12は、凹凸によって基礎コンクリート層11を形成するコンクリートとの接触面積が広がり、また凹凸にコンクリートが入り込むことで該凹凸による係止効果が生じる。そして、上記基礎コンクリート層11の構築時にコンクリートが収縮しても、上記粗面部18への該コンクリートの接触が保たれており、さや管12の周囲に隙間が形成されなくなる。結果、該隙間を利用したシロアリの建物10内への侵入を防止することができる。
上記粗面部18は、上記さや管12の外周面全体に設けてもよいが、例えば図2に示すように、上記基礎コンクリート層11に埋設される部位に形成されることが望ましい。これは、例えば上記さや管12を埋設した後、切断等による廃棄部分が生じた際に、該廃棄部分でケイ砂等の砂材をさや管12の外周面上から分別することが難しくなるからであり、廃棄が煩雑になる可能性がある。
なお上記さや管12は、上記粗面部18が設けられたものであれば、直管からなるものに限らず、曲管や屈曲管からなるものを用いてもよい。また曲管や屈曲管からなるさや管を用いる場合は、排水管13に可撓管を使用してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0015】
本発明の排水管配管構造にあっては、基礎コンクリート層内でさや管の周囲に隙間が形成されにくく、該隙間を利用した害虫や害獣の建物内への侵入を抑制出来るから、産業上の利用可能性がある。
【符号の説明】
【0016】
10 建物
11 基礎コンクリート層
12 さや管
13 排水管
16 O−リング
17 間隙
18 粗面部



【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の床下の基礎コンクリート層を貫通して、建物内部の排水設備からの排水を建物外部の屋外排水管へ送る排水管配管構造であって、
上記基礎コンクリート層には、さや管が、両端の開口が上記建物の内部と外部とで開放された状態で、埋設され、
上記さや管の内部には、排水管が挿通され、
上記排水管の一端に上記排水設備から延びる屋内排水管が接続されるとともに、
上記排水管の他端に上記屋外排水管が接続され、
上記さや管の外周面上には、少なくとも上記基礎コンクリート層に埋設されることになる一部に、凹凸状の粗面部が設けられている
ことを特徴とする建物の排水管配管構造。
【請求項2】
上記さや管の内部に上記排水管が挿通された状態で、上記さや管の内周面と、上記排水管の外周面と、の間に形成される間隙を塞ぐ封止手段を有している
請求項1に記載の建物の排水管配管構造。
【請求項3】
上記粗面部は、砂付け加工によって形成されたものである
請求項1又は請求項2に記載の建物の排水管配管構造。
【請求項4】
上記さや管と、上記排水管と、が直管からなるものであり、
上記さや管は、斜めに配された状態で上記基礎コンクリート層に埋設されるようになっている
請求項1から請求項3の何れか一項に記載の建物の排水管配管構造。



【図1】
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【図2】
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