建築物の制振構造及び制振機能付き胴縁
【課題】地震時に、躯体フレーム側と壁パネルの間に介在させた粘弾性体に、振動エネルギーを有効に伝達させ、制振効果を高めた建築物の制振構造を提供すること。
【解決手段】建築物の躯体フレーム側と壁パネルの間に粘弾性体を介在させた構造において、薄板、粘弾性体、帯板をこの順で積層接着した複数本の制振機能付き胴縁を、互いに平行に、薄板を躯体フレーム側として設けた構造であって、前記制振機能付き胴縁の長手方向と前記壁パネルの長さ方向が直交するように配した壁パネルを、前記帯板に固定することにより、粘弾性体を介して間接的に前記薄板に対して固定した構造とし、前記帯板を所要長さで割付け、割付けた帯板1枚ごとが躯体フレームに対して面内方向に回転可能なように、かつ該帯板を躯体フレームに対して面外方向に拘束して構成したことを特徴とする。
【解決手段】建築物の躯体フレーム側と壁パネルの間に粘弾性体を介在させた構造において、薄板、粘弾性体、帯板をこの順で積層接着した複数本の制振機能付き胴縁を、互いに平行に、薄板を躯体フレーム側として設けた構造であって、前記制振機能付き胴縁の長手方向と前記壁パネルの長さ方向が直交するように配した壁パネルを、前記帯板に固定することにより、粘弾性体を介して間接的に前記薄板に対して固定した構造とし、前記帯板を所要長さで割付け、割付けた帯板1枚ごとが躯体フレームに対して面内方向に回転可能なように、かつ該帯板を躯体フレームに対して面外方向に拘束して構成したことを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物の制振構造およびその構造に用いる制振機能付き胴縁に関するものである。
【背景技術】
【0002】
これまで、建築物の制振を目的として、躯体フレーム側と壁パネルの間に粘弾性体を介在させた構造として、特開2001−323685号公報(特許文献1)、特開2002−61316号公報(特許文献2)、特開2005−290819号公報(特許文献3)に記載された技術がある。
【0003】
特許文献1に記載された建築物の制振構造は、躯体フレーム側と壁パネルの間に粘弾性体を介在させ、粘弾性体を躯体フレームと壁パネルに直接粘着あるいは接着する構造である。
【0004】
また、特許文献2に記載された建築物の制振構造は、躯体フレームに粘弾性体テープを介して壁パネルを木ネジによって固定する技術である。
【0005】
さらに、特許文献3に記載された建築物の制振構造は、躯体フレーム側と壁パネルの間に2枚の金属板で挟まれた粘弾性体を介在させ、躯体フレームおよび壁パネルに金属板を接着剤により接合した技術である。
【0006】
特許文献1から特許文献3にあるように、これらの技術は、躯体フレーム側と壁パネルの間に粘弾性体を介在させた構造とすることにより、地震時に、壁パネルと躯体フレームの間に相対変位が生じ、粘弾性体に振動エネルギーが伝達させることにより、粘弾性体の内部摩擦によって制振効果を発揮させようとするものである。
【0007】
【特許文献1】特開2001−323685号公報
【特許文献2】特開2002−61316号公報
【特許文献3】特開2005−290819号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献1の技術では、粘弾性体を躯体フレームと壁パネルに直接接着するため、躯体フレームや壁パネルの精度が悪く、例えば、躯体フレームが面外方向に変形している場合などでは、粘弾性体の厚さを所定の寸法に管理した上で、接着することが難しかった。また、壁パネルに大きな面外力が作用する場合には、粘弾性体と躯体フレームや壁パネルとの接着面にも大きな面外力が作用するため、長期の接着力確保に不安があった。
【0009】
また、特許文献2の技術では、粘弾性体テープの長さ方向にわたって、複数の木ネジによって壁パネルを躯体フレームに固定するため、地震時に、躯体フレームと壁パネルとの間に相対変位が生じる際、複数の木ネジに力が作用し、それによって粘弾性体テープに振動エネルギーが伝達されにくく、十分な制振効果が得られにくいという問題があった。
【0010】
さらに、特許文献3の技術では、躯体フレーム側と壁パネルの間に2枚の金属板で挟まれた粘弾性体を介在させているが、特許文献1の技術と同様に、躯体フレーム(木製の枠材)や壁パネルの精度が悪いと、粘弾性体の厚さを所定の寸法に管理した上で、金属板を躯体フレームに接着することが難しかった。特に、特許文献3の技術は、木造軸組構造の壁部分に適用することを想定した技術であり、木造の軸組は、木材で形成されており、初期あるいは長期的にも反り変形などをおこしやすく、粘弾性体の厚さを所定の寸法に管理して構成しにくい場合があった。また、特許文献3の技術では、壁パネルに大きな面外力が作用する場合には、粘弾性体と金属板との接着面、あるいは金属板と躯体フレームや壁パネルとの接着面にも大きな面外力が作用するため、長期の接着力確保にやはり不安があった。このため、金属板と躯体フレームや壁パネルを仮止め釘で仮止めしておき、完全な接着強度が発現するまでには、数日〜十数日かかるとされていた。
【0011】
本発明は前記課題を解決するものであり、その目的とするところは、地震時に、躯体フレーム側と壁パネルの間に介在させた粘弾性体に、振動エネルギーを有効に伝達させ、制振効果を高めた建築物の制振構造を提供することである。
【0012】
また、壁パネルに作用する面外力に対して、粘弾性体や接着面を介さずとも、躯体フレーム側に面外力を伝達することが可能な建築物の制振構造を提供することを目的とする。
【0013】
更に、本発明は、これらの建築物の制振構造に用いることが可能で、上記目的を容易に達成することが可能な制振機能付き胴縁を提供することも目的としている。
【0014】
更に、本発明は、これらの建築物の制振構造で、壁パネルの外表面に釘頭などが露出しない、美観を備えた構造とすることも目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前記目的を達成するための本発明に係る建築物の制振構造の第1構成は、建築物の躯体フレーム側と壁パネルの間に粘弾性体を介在させた構造において、薄板、粘弾性体、帯板をこの順で積層接着した複数本の制振機能付き胴縁を、互いに平行に、薄板を躯体フレーム側として設けた構造であって、前記制振機能付き胴縁の長手方向と前記壁パネルの長さ方向が直交するように配した壁パネルを、前記帯板に固定することにより、粘弾性体を介して間接的に前記薄板に対して固定した構造とし、前記帯板を所要長さで割付け、割付けた帯板1枚ごとが躯体フレームに対して面内方向に回転可能なように、かつ該帯板を躯体フレームに対して面外方向に拘束して構成したことを特徴とする。
【0016】
また、本発明に係る建築物の制振構造の第2構成は、第1構成の制振構造において、所要長さで割付けた前記帯板1枚に対して該長さの1/3以下の帯板固定範囲を、アンカー部材で直接的に躯体フレーム側に面内および面外の両方向に対して固定したことを特徴とする。
【0017】
更に、本発明に係る建築物の制振構造の第3構成は、第1又は第2構成の建築物の制振構造において、1枚の壁パネルは、一本の制振機能付き胴縁に対して、所要長さで割付けた前記帯板1枚のみに固定されていることを特徴とする。
【0018】
次に、本発明に係る制振機能付き胴縁の第1構成は、薄板、粘弾性体、帯板をこの順で積層接着し、該帯板を所要長さで割付けて構成したことを特徴とする。
【0019】
本発明に係る制振機能付き胴縁の第2構成は、前記制振機能付き胴縁の第1構成において、薄板あるいは帯板の側部に粘弾性体側に向かって所要寸法の突起を設けたことを特徴とする。
【0020】
また、本発明に係る制振機能付き胴縁の第3構成は、前記制振機能付き胴縁の第2構成において、前記突起と粘弾性体の間に所要寸法の隙間を確保したことを特徴とする。
【0021】
更に、本発明に係る制振機能付き胴縁の第4構成は、前記制振機能付き胴縁の第1乃至3のいずれかの構成において、薄板に、外部へ突出したツメを設けたことを特徴とする。
【0022】
本発明に係る制振機能付き胴縁の第5構成は、前記制振機能付き胴縁の第1乃至4のいずれかの構成において、薄板と帯板を、粘弾性体とは別の面外拘束手段によって、面外方向に拘束したことを特徴とする。
【0023】
本発明に係る制振機能付き胴縁の第6構成は、前記制振機能付き胴縁の第1乃至5のいずれかの構成において、前記帯板固定範囲において、薄板に所定寸法の貫通孔を設けたことを特徴とする。
【0024】
本発明に係る制振機能付き胴縁の第7構成は、前記制振機能付き胴縁の第1乃至6のいずれかの構成において、所定長さで割り付けて構成した帯板の継ぎ目位置で、粘弾性体と反対側の帯板の面を接合手段で繋いだことを特徴とする。
【0025】
本発明に係る建築物の制振構造の第4構成は、建築物の躯体フレーム側と壁パネルの間に粘弾性体を介在させた構造において、薄板、粘弾性体、帯板をこの順で積層接着した複数本の制振機能付き胴縁を、互いに平行に、薄板を躯体フレーム側として鉛直に設け、かつ、前記制振機能付き胴縁の長手方向と前記壁パネルの長さ方向が直交するように横張りで配した壁パネルを、壁パネルの幅寸法と略同一長さで割付けた前記帯板に、割付けた2枚の帯板相互を少なくとも面内水平方向に拘束しないように、壁パネルの上端部および/または下端部を、横目地内に収まる留付金具によって、面外方向に対して拘束することにより、粘弾性体を介して間接的に前記薄板に対して固定した構造であって、割付けた帯板1枚の上端部から中間部の範囲で、壁パネルの上拘束箇所を、かつ、該帯板の中間部から下端部の範囲で、壁パネルの下拘束箇所を、該帯板に対して、面内水平方向に拘束し、さらに、割付けた帯板1枚ごとが躯体フレームに対して面内方向に回転可能なように、かつ該帯板を躯体フレームに対して面外方向に拘束して構成したことを特徴とする。
【0026】
本発明に係る建築物の制振構造の第5構成は、第4構成の建築物の制振構造において、左右に隣接する壁パネルの縦目地において、前記帯板に固定した拘束金具の拘束部を、少なくとも上拘束箇所と下拘束箇所に配することにより、壁パネルを面内水平方向に拘束したことを特徴とする。
【0027】
本発明に係る建築物の制振構造の第6構成は、第4又は第5構成の建築物の制振構造において、壁パネルの少なくとも上拘束箇所と下拘束箇所において、帯板に対して釘頭の小さな釘を打ち込むことにより、壁パネルを面内水平方向に拘束したことを特徴とする。
【0028】
本発明に係る建築物の制振構造の第7構成は、建築物の躯体フレーム側と壁パネルの間に粘弾性体を介在させた構造において、薄板、粘弾性体、帯板をこの順で積層接着した複数本の制振機能付き胴縁を、互いに平行に、薄板を躯体フレーム側として水平に設け、かつ、前記制振機能付き胴縁の長手方向と前記壁パネルの長さ方向が直交するように縦張りで配した壁パネルを、壁パネルの幅寸法と略同一長さで割付けた前記帯板に、割付けた2枚の帯板相互を少なくとも面内鉛直方向に拘束しないように、壁パネルの右端部および/または左端部を、縦目地内に収まる留付金具によって、面外方向に対して拘束することにより、粘弾性体を介して間接的に前記薄板に対して固定した構造であって、割付けた帯板1枚の右端部から中間部の範囲で、壁パネルの右拘束箇所を、かつ、該帯板の中間部から下端部の範囲で、壁パネルの左拘束箇所を、該帯板に対して、面内鉛直方向に拘束し、さらに、割付けた帯板1枚ごとが躯体フレームに対して面内方向に回転可能なように、かつ該帯板を躯体フレームに対して面外方向に拘束して構成したことを特徴とする。
【0029】
本発明に係る建築物の制振構造の第8構成は、第7構成の建築物の制振構造において、上下に隣接する壁パネルの横目地において、前記帯板に固定した拘束金具の拘束部を、少なくとも右拘束箇所と左拘束箇所に配することにより、壁パネルを面内鉛直方向に拘束したことを特徴とする。
【0030】
本発明に係る建築物の制振構造の第9構成は、第7又は第8構成の建築物の制振構造において、壁パネルの少なくとも右拘束箇所と左拘束箇所において、帯板に対して釘頭の小さな釘を打ち込むことにより、壁パネルを面内水平方向に拘束したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0031】
本発明の請求項1に係る建築物の制振構造の第1構成によれば、薄板、粘弾性体、帯板をこの順で積層接着した複数本の制振機能付き胴縁を、互いに平行に、薄板を躯体フレーム側として設けた構造であって、前記制振機能付き胴縁の長手方向と前記壁パネルの長さ方向が直交するように配した壁パネルを、前記帯板に固定することにより、粘弾性体を介して間接的に前記薄板に対して固定した構造とし、前記帯板を所要長さで割付け、割付けた帯板1枚ごとが躯体フレームに対して面内方向に回転可能なように、かつ該帯板を躯体フレームに対して面外方向に拘束して構成したため、地震時に、壁パネルと躯体フレームの間に相対変位が生じた際、壁パネルに固定された帯板が躯体フレーム側に設けられた薄板に対して相対変位を生じることになり、帯板と薄板の間に積層接着された粘弾性体に剪断変形が生じ、粘弾性体に振動エネルギーが有効に伝達されるため、粘弾性体の内部摩擦によって制振効果を発揮することがことが出来る。これにより、制振効果を高めた建築物の制振構造を提供することが可能となる。
【0032】
また、壁パネルを固定した帯板を、躯体フレームに対して面外方向に拘束して構成したため、壁パネルに作用する面外力に対して、粘弾性体そのもの、さらに粘弾性体と薄板や帯板との接着面を介さずとも、躯体フレーム側に面外力を伝達することが可能であり、その部分の長期の接着力確保をより確実なものとすることが出来る。
【0033】
なお、制振機能付き胴縁を躯体フレーム側に設けるには、接着剤によって固定したり、長期の接着力確保を考慮して、アンカー部材などで、機械的な固定をおこなうのもよい。また、単に、割り付けられた複数の帯板を躯体フレーム側に対して面外方向に拘束することにより、制振機能付き胴縁の薄板を躯体フレームに圧着して設け、薄板と躯体フレーム間に摩擦力を発生させることにより、制振機能付き胴縁の薄板が躯体フレームと面内方向にズレを生じないように設けることでもよい。例えば、割り付けられた複数の帯板を、釘打ちで躯体フレームに打ち込めば、その結果として、制振機能付き胴縁の薄板は、躯体フレームに圧着して設けられるため、薄板と躯体フレーム間に摩擦力を発生し、制振機能付き胴縁の薄板が躯体フレームと面内方向にズレを生じないように出来る。
【0034】
また、壁パネルを制振機能付き胴縁に固定(壁パネルを帯板への固定)する際に、接着剤によって固定するのもよいが、長期の接着力確保を考慮すれば、アンカー部材などで、機械的な固定をおこなうのが好ましい。もちろん、接着剤と機械的な固定を併用することも可能である。
【0035】
ここに、地震時の壁パネル目地ずれが壁パネル単位で起こることを考えると、帯板の割付け長さも、壁パネルの幅寸法前後としておくことが、好ましい。帯板の割付け長さが壁パネルの幅寸法よりある程度長い場合には、隣接する2枚以上の壁パネルが、1枚の帯板に固定される可能性があり、そのような場合には、帯板の面内方向の回転変形を拘束してしまうおそれがあり、十分な制振効果が得られない可能性がある。一方、帯板の割付け長さが壁パネルの幅寸法よりある程度短い場合には、1枚の壁パネルを、隣接する2枚の帯板に固定してしまう可能性があり、そのような場合には、帯板の面内方向の回転変形は拘束しないものの、帯板の割付け長さが短いことから、帯板の割付け長さを、壁パネルの幅寸法前後とした場合と比較して、制振効果が小さくなる可能性がある。ここでは、帯板の割付け長さを、壁パネルの幅寸法前後としたが、より具体的には、壁パネル幅寸法の1.5倍以下0.5倍以上が好適である。壁パネル幅寸法の1.5倍の場合、壁パネルを幅寸法の所定の一箇所で帯板に固定する場合、壁パネルの3枚ごとに、隣接する2枚の壁パネルが、1枚の帯板に固定されることになり、壁パネル幅寸法の0.5倍の場合、帯板の割付け長さが1/2であり、それに応じて制振効果は小さくなるが、帯板が長尺の胴縁と略同一長さで、所定長さで割り付けられていない構造との比較では、良好な制振効果が得られる。しかし、帯板の割付け長さを壁パネルの幅寸法と合致させ、1枚の壁パネルを1枚の帯板だけに固定するように留意して施工するのが、より好ましい構造である。
【0036】
なお、第1構成では、薄板を長尺とし、帯板を割付けして構成すれば、制振機能付き胴縁そのものは、長尺寸法となり、施工時に、効率よく制振機能付き胴縁を配置することが可能となり、好ましい。
【0037】
更に、帯板と帯板の割付け継ぎ目は、1mm以下の小さな寸法でよく、接触しているくらいでも良い。横張りで配した壁パネルの幅寸法が455mmの場合で、変形角が1/30とすると、幅寸法455mmに対応した躯体フレームの下がりは、壁パネルが完全にスライドで動いたとして計算しても、0.25mm程度であり、わずかである。もちろん、割付け継ぎ目を大きな寸法としてもよい。
【0038】
なお、ここでは、薄板、粘弾性体、帯板をこの順で積層接着した制振機能付き胴縁としたが、例えば、帯板を2層構成として、粘弾性体側には、接着力を確保するために、鋼板とし、壁パネル側には、壁パネルからスクリュー釘などで固定しやすいように、木製帯板とし、鋼板と木製帯板を接着して、2層構成の帯板としてもよい。この場合には、薄板、粘弾性体、帯板(鋼板+木製帯板)の4層構成となる。これ以外にも、薄板、粘弾性体、薄板、粘弾性体、帯板の5層構成などであってもよく、同様の発明の効果が得られる。
【0039】
さらに、主として木造住宅などに用いる場合で、通気胴縁の代替として壁パネル(外壁パネル)の下地に施工することで、施工手間を特別に増加させずに施工することが可能となり、通気胴縁の機能と制振の機能の2つを同時に付与することが可能な好適な構造とすることができる。
【0040】
なお、建築物の制振構造の第1構成は、壁パネルの長さ方向が水平になる横張りの場合、壁パネルの長さ方向が鉛直になる縦張りの場合、ともに、適用することが出来る。
【0041】
また、本発明の請求項2に係る建築物の制振構造の第2構成によれば、所要長さで割付けた前記帯板1枚に対して、アンカー部材で直接的に躯体フレーム側に面内方向に対して、帯板1枚の長さの1/3以下の帯板固定範囲だけを固定したので、帯板1枚ごとで、躯体フレームに対して面内方向に相応の回転変形が可能であり、そのため、地震時に、壁パネルと躯体フレームの間に相対変位が生じた際、壁パネルに固定された帯板が躯体フレーム側に固定された薄板に対して相対変位を生じることになり、帯板と薄板の間に積層接着された粘弾性体に剪断変形が生じ、粘弾性体に振動エネルギーが有効に伝達されるため、粘弾性体の内部摩擦によって制振効果を発揮することがことが出来る。
【0042】
また、1/3以下の帯板固定範囲とは帯板長さの中央部とは限らず、端部に近い位置の固定であってもよい。
【0043】
なお、帯板1枚に対して、2本以上のアンカー部材で近接した位置を固定した場合で、帯板1枚に対して該長さの1/3以下の帯板固定範囲を、アンカー部材で直接的に躯体フレーム側に固定した場合には、2箇所以上を固定することになり、面内方向の拘束効果がでてくるが、地震時に、壁パネルと躯体フレームの間に相対変位が生じる際、アンカー部材がわずかに曲げられることにより、回転可能となるため、帯板1枚に対して該長さの1/3以下の範囲であれば、2本以上のアンカー部材で固定することでよい。例えば、帯板を長さ455mmで割付けした場合に、2本のアンカーが、その長さのおよそ1/3である150mm以下の間隔で固定されている場合などである。さらに、帯板1枚に対して該長さの1/4以下の帯板固定範囲とするのが好ましく、もちろん、帯板のある一点だけを1本のアンカー部材で固定するのが、帯板1枚をスムーズに、躯体フレーム側に固定された薄板に対して面内方向に回転可能なようにするという意味で、より好ましい。
【0044】
更に、帯板固定範囲を帯板1枚の1/3長さの範囲内で定め、施工現場で当該位置のみをアンカー部材で確実に固定されるように、帯板の外表面にマーキングすることが好ましい。
【0045】
なお、ここでのアンカー部材とは、スクリュー釘、木ネジを指す他、ボルト、ナットなどのネジ部材や鋲による固定などの固定手段によってもよい。このようなアンカー部材を用いることにより、面内方向に対してだけでなく、帯板を躯体フレームに面外方向に対しても、簡単に拘束することが可能である。
【0046】
また、壁パネルは、釘などの固定部材で帯板に直接固定してもよいが、金具を介して固定部材で帯板に固定する場合でもよい。なお、ここでの固定部材とは、壁パネルを帯板に対して固定するが、薄板や躯体フレーム側までは、直接的に固定するものではない。
【0047】
また、本発明の請求項3に係る建築物の制振構造の第3構成によれば、1枚の壁パネルは、一本の制振機能付き胴縁に対して、所要長さで割付けた前記帯板1枚のみに固定されているため、地震時の壁パネル目地ずれが壁パネル単位で起こることを考えると、壁パネル1枚の地震時の動きに対して、当該壁パネルが固定された帯板のみが追従して、帯板の面内方向の回転変形(相対的な動きなので、躯体フレームが回転変形する場合もある)が可能となる。
【0048】
なお、1枚の壁パネルを、一本の制振機能付き胴縁に対して、所要長さで割付けされた前記帯板1枚のみに固定するのを確実にするためには、帯板の割付け位置と壁パネルの幅端部位置を、略合致させておく構造が好ましい。例えば、帯板の割付け位置を壁パネルの幅上端部より50mm上がった位置に設定するなどである。この場合には、帯板の割付け長さも、壁パネルの幅寸法前後としておく必要がある。
【0049】
また、本発明の請求項4に係る制振機能付き胴縁の第1構成によれば、薄板、粘弾性体、帯板をこの順で積層接着し、該帯板を所要長さで割付けて構成したため、前述した建築物の制振構造の第1〜3構成に用い、地震時に、躯体フレーム側と壁パネルの間に介在させた粘弾性体に、振動エネルギーを有効に伝達させることが可能な制振機能付き胴縁と出来る。
【0050】
なお、ここでの所要長さとは、胴縁全長より短い長さのことであり、建築物に使われる壁パネルの幅寸法を考慮して定める。一般に、帯板の割付け長さも、想定される壁パネルの幅寸法以下としておくことがより好ましい。
【0051】
また、本発明の請求項5に係る制振機能付き胴縁の第2構成によれば、薄板あるいは帯板の側部に粘弾性体側に向かって所要寸法の突起を設けたため、粘弾性体の厚みを所定寸法に確保することが可能であり、面外荷重、特に、正荷重に対して、粘弾性体の厚みを確保することが可能となり、地震時に、安定したエネルギー吸収が期待できる。
【0052】
さらに、薄板の側部で、割り付けられた帯板の少なくとも分割継ぎ目近傍に、弾性体側に向かって突起を設ければ、施工時などに、制振機能付き胴縁を持った際に、割り付けられた帯板の分割継ぎ目の曲げ剛性低下を、該突起がカバーして、簡単に折れ曲がらないようにすることが出来、好ましい。
【0053】
また、本発明の請求項6に係る制振機能付き胴縁の第3構成によれば、前記突起と粘弾性体の間に所要寸法の隙間を確保したため、地震時に、躯体フレームに固定された薄板に対して、帯板が相対変位を生ずることによって、帯板と薄板の間に接着積層された粘弾性体が剪断変形する際に、粘弾性体が突起に接触して変形を妨げられることがないように、クリアランスを確保することが可能となり、やはり安定したエネルギー吸収が期待できる。
【0054】
更に、本発明の請求項7に係る制振機能付き胴縁の第4構成によれば、薄板に、外部へ突出したツメを設けたため、薄板のツメを躯体フレーム側に打ち込んで固定することが可能であり、接着剤による固定だけにたよることなく、施工現場で、容易に制振機能付き胴縁の躯体フレーム側への固定を確保することが出来る。また、躯体フレームや壁パネルの精度が悪く、例えば、躯体フレームが面外方向に変形している場合などであっても、想定される変形量に対して、薄板のツメの長さを定めておけば、粘弾性体の厚さを所定の寸法に管理した上で、制振機能付き胴縁の躯体フレーム側へ固定することが出来る。また、ツメを設けることにより、薄板を躯体フレーム側に確実に固定することが可能となり、ズレを防止して、粘弾性体へ、より確実にエネルギー吸収させることが可能となる。ここに、ツメの長さは、躯体フレームや壁パネルの想定される精度に応じて定められるものであるが、一般に、2mm以上20mm以下が好ましく、さらには、5mm以上10mm以下がより好ましい。さらに、ツメは、長さ方向に対して200mm以下のピッチで設けられていることが好ましい。もちろん、接着剤による固定を併用することも可能である。
【0055】
本発明の請求項8に係る制振機能付き胴縁の第5構成によれば、薄板と帯板を、粘弾性体とは別の面外拘束手段によって、面外方向に拘束したため、壁パネルに作用する面外力に対して、粘弾性体そのもの、さらに粘弾性体と薄板や帯板との接着面を介さずとも、躯体フレーム側に面外力を伝達することが可能であり、その部分の長期の接着力確保をより確実なものとすることが出来る。よって、躯体フレーム側に面外力を伝達することが容易な制振機能付き胴縁である。
【0056】
なお、制振機能付き胴縁の第5構成の具体的な構成として、図1の左上、左下がある。面外拘束手段は、胴縁の長手方向の一部に設けられていればよい。もちろん、長手方向に、通しで面外拘束手段を設けてもよい。
【0057】
本発明の請求項9に係る制振機能付き胴縁の第6構成によれば、前記帯板固定範囲において、薄板に所定寸法の貫通孔を設けたため、帯板を躯体フレームに対してアンカー部材で直接的に躯体フレーム側に面外に対して固定する際に、薄板の貫通孔を通すことが出来るため、スクリュー釘、木ネジなどのアンカー部材の施工を容易にすることが出来る。
【0058】
本発明の請求項10に係る制振機能付き胴縁の第7構成によれば、所定長さで割り付けて構成した帯板の継ぎ目位置で、薄板および粘弾性体と反対側の帯板の面を接合手段で繋いだので、施工現場などで、制振機能付き胴縁を運搬する際に、帯板の継ぎ目部に曲げが作用した場合にも、薄板および粘弾性体から帯板の厚みだけ距離をおいた接合手段によって曲げに抵抗することが出来るため、制振機能付き胴縁が折れ曲がるのを避けることが出来る。
【0059】
なお、ここでの接合手段とは、割り付けて構成した帯板の継ぎ目に少なくとも配している必要があり、具体的には、テープを張る、かすがいを打ち込むなどの接合手段がある。テープは、ポリエステルフィルムをガラス繊維で補強したものなど、剛性と強度のあるものを用いるのが、好ましい。
【0060】
また、制振機能付き胴縁を、躯体フレームに設けた後には、折れ曲がりを心配する必要がなくなるため、接合手段は除去しておくのが好ましい。かすがいであると、除去が手間であるため、テープを接合手段とすれば、除去が容易であり、より好ましい。
【0061】
なお、制振機能付き胴縁の第1〜7構成では、薄板、粘弾性体、帯板の板厚を特に規定するものではないが、薄板0.3mm〜2mm、粘弾性体0.5mm〜4mm、帯板10mm〜50mm程度が好適な範囲と考えられる。特に、制振機能付き胴縁に通気胴縁の機能を付与させることも可能であり、その際には、制振機能付き胴縁の総厚を、一般の通気層の厚み18mm程度に合致させることを考慮すると、前述の範囲で選択し、接着積層して構成するのが好ましい。例えば、薄板1mm、粘弾性体2mm、帯板15mmとすれば、総厚18mmとすることが出来る。また、薄板1mm、粘弾性体2mm、帯板30mmとすれば、総厚33mmとなるが、この場合は、外壁パネルを、スクリュー釘などの固定部材で帯板に止める際に、帯板が30mmと厚いため、しっかりと固定することが出来る。
【0062】
また、薄板の素材としては、鋼板などの金属材料が粘弾性体への接着性と加工性の観点より好ましく、外装プレート裏面への雨水の浸入等が懸念される場合には、ステンレス材やガルバリウム鋼板等の耐食性を有する素材を用いることが出来るが、他に、プラスチック材料、木材なども適用可能である。
【0063】
帯板の素材としては、サイディング壁パネルでは、釘や木ネジを利用して固定されることも多く、木材を用いるのが好適であるが、セルフドリルビスで固定する場合には、軽鉄であってもよい。例えば、帯板として、幅40mm、厚20mmのボックス形状の軽鉄下地としても、問題なく使用できる。他に、プラスチック材料、人工木材等も適用可能である。
【0064】
請求項11、請求項12、請求項13に係る建築物の制振構造の第4構成、第5構成、第6構成について説明する。第4〜6構成は、本発明の制振構造の第1〜3構成とまったく同様の発明の効果を有するものであるが、それに加えて、壁パネルの上下端部を、横目地内に収まる留付金具によって、面外方向に対して拘束する技術に関するものであり、壁パネルの外表面に釘頭などが露出しない、美観を備えた構造とすることができる発明の効果を有したものである。なお、第4〜6構成は、壁パネルの長さ方向が水平になる横張りの場合に、適用することが出来る。
【0065】
本発明の請求項11に係る建築物の制振構造の第4構成によれば、薄板、粘弾性体、帯板をこの順で積層接着した複数本の制振機能付き胴縁を、互いに平行に、薄板を躯体フレーム側として鉛直に設け、かつ、該制振機能付き胴縁の長手方向と前記壁パネルの長さ方向が直交するように横張りで配した壁パネルを、壁パネルの幅寸法と略同一長さで割付けた前記帯板に、割付けられた2枚の帯板相互を少なくとも面内水平方向に拘束しないように、壁パネルの上端部および/または下端部を、横目地内に収まる留付金具によって、面外方向に対して拘束することにより、粘弾性体を介して間接的に前記薄板に対して固定した構造であり、さらに、割付けされた帯板1枚ごとが躯体フレームに対して面内方向に回転可能なように構成したため、地震時に、壁パネルと躯体フレームの間に相対変位が生じた際、壁パネルに固定された帯板が躯体フレーム側に設けられた薄板に対して相対変位を生じることになり、帯板と薄板の間に積層接着された粘弾性体に剪断変形が生じ、粘弾性体に振動エネルギーが有効に伝達されるため、粘弾性体の内部摩擦によって制振効果を発揮することがことが出来るとともに、壁パネルの面外方向への留め付けが、横目地内で可能であり、壁パネルの外表面から釘打ち固定が不要であり、釘頭が露出しない、美観を備えた構造とすることができる。
【0066】
また、割付けされた帯板1枚ごとが躯体フレームに対して面内方向に回転可能なように構成とするために、割付けされた帯板1枚の上端部から中間部の範囲で、壁パネルの上拘束箇所を、かつ、該帯板の中間部から下端部の範囲で、壁パネルの下拘束箇所を、該帯板に対して、面内水平方向に拘束する際に、前述のごとく、面外方向に対しては、横目地内で別途固定されているため、面内方向の拘束のみを考慮できる方法で実施すればよく、やはり、釘頭が露出しない、美観を備えた構造で、面内水平方向の拘束を行うことが容易である。ここに、面内水平方向の拘束手段は、目地内に収まる拘束金具や釘頭の小さな釘などが考えられるが、それ以外に、帯板と壁パネル内面を接着するなど、簡易な方法が可能である。このように、建築物の制振構造の第4構成の特徴は、壁パネルを、帯板に対して、面外方向に拘束する留付金具と、面内水平方向に拘束する手段を分けることにより、簡易な方法で、壁パネルの少なくとも上拘束箇所と下拘束箇所を拘束できるようにしたことにある。
【0067】
第4構成では、地震時の壁パネル目地ずれが壁パネル単位で起こることを考慮して、帯板の割付け長さを、壁パネルの幅寸法と略同一長さとした。ここに、帯板の割付け位置は、壁パネルの上下端部である横目地の位置に対して、特に位置関係で規定されるものではないが、割付けされた帯板1枚の上端部から中間部の範囲で、壁パネルの上拘束箇所を、かつ、該帯板の中間部から下端部の範囲で、壁パネルの下拘束箇所を、該帯板に対して、面内水平方向に拘束するためには、帯板の割付け位置は、壁パネルの上下端部である横目地の位置に近接していると、上拘束箇所と下拘束箇所の距離を離しての拘束が容易になり、好ましい。帯板の割付け位置を、壁パネルの上下端部である横目地の位置に対して、幅寸法の1/3以内に設けるのが、より好ましい。
【0068】
また、本発明の請求項10に係る建築物の制振構造の第5構成によれば、左右に隣接する壁パネルの縦目地において、前記帯板に固定した拘束金具の拘束部を、少なくとも上拘束箇所と下拘束箇所に配することにより、壁パネルを面内水平方向に拘束したため、壁パネルの縦目地位置の少なくとも2箇所において、帯板に対して拘束金具を設置するという簡易な方法で、壁パネルの面内水平方向の拘束が可能であり、壁パネルの外表面に釘頭などが露出しない、美観を備えた構造とすることができる。
【0069】
ここに、拘束金具とは、断面ハット型、断面L型の形状のものであり、拘束部が壁パネルの縦目地部内で、壁パネルに接触あるいは極近接して設け、壁パネルの帯板に対する面内水平方向の動きを拘束するものである。
【0070】
拘束金物は、1本の縦目地で、1枚の壁パネルに対して、少なくとも2箇所に配すればよいが、長尺の拘束金具を連続して配することでもよい。ただし、その際には、割付けされた2枚の帯板相互を面内水平方向に拘束しないように、帯板を跨って、拘束金物を配置しないようにしておく必要がある。
【0071】
さらに、本発明の請求項11に係る建築物の制振構造の第6構成によれば、壁パネルの少なくとも上拘束箇所と下拘束箇所において、帯板に対して釘を打ち込む、またはビスをねじ込むなどの固定部材を使用することにより、壁パネルを面内水平方向に拘束したため、壁パネルの縦目地のない位置において、少なくとも2箇所において、帯板に対して釘を打ち込むなどという簡易な方法で、壁パネルの面内水平方向の拘束が可能である。また、釘を打ち込む場合で、釘頭は小さくして壁パネル内にほとんど打ち込む(フィニッシュネイル)ことが出来るようにすれば、壁パネルの外表面に釘頭などが露出しない、美観を備えた構造とすることができ、好ましい。特に、パネル横目地部の合じゃくり部などで釘頭の小さな釘を帯板に対して斜めに打ち込むことにより、釘頭が壁パネルの外表面に露出するのを完全に排除する(かくし釘)ことが出来る。また、フィニッシュネイルも、かくし釘も、固定部材であり、壁パネルを帯板に対して固定するが、薄板や躯体フレーム側までは、直接的に固定するものではない。
【0072】
ここでは、軸径が1mm〜2mm程度、釘頭径またはビス頭径が1.5mm〜4mm程度のものが用いられる。また、釘長さまたはビス長さは、帯板の厚さを貫通しない程度で、粘弾性体や薄板まで同時に拘束することが無いような長さとして、帯板の厚さ以下の先方を選択するのがよい。さらに、フィニッシュネイルの場合、釘頭径は2mm以下のものが好ましい。かくし釘の場合は、比較的大きな釘頭径でもよいが、釘頭径4mm以下が好ましい。
【0073】
ここに、釘頭の小さな釘には、面外方向の引抜耐力は期待する必要がなく、あくまで、帯板に対して壁パネルを面内水平方向に拘束するためだけのものであり、特段の大きな釘頭を必要としないものである。
【0074】
ただし、地震時の変形時も、面内水平方向の拘束力を発揮して粘弾性体に有効にエネルギー吸収させるためには、壁パネル寸法や胴縁間隔にも依存して、相応の釘の軸径や打ち込み長さが必要になる。壁パネル(厚さ12mm、幅455mmサイディング)を、455mm胴縁間隔の構造で振動試験を行った結果では、釘の軸径2.15mm、長さ38mmの釘を、一本の胴縁(帯板)に対して3本打ち込むことで、問題なく、有効に粘弾性体にエネルギー吸収させることが出来た。なお、ここでは、サイディング厚さが12mmなので、帯板への釘打ち込み長さは、26mm(38mm−12mm)であった。
【0075】
最後に、請求項14、請求項15、請求項16に係る建築物の制振構造の第7構成、第8構成、第9構成について説明する。請求項9〜13に係る建築物の制振構造の第4〜6構成は、壁パネルの長さ方向が水平になる横張りの場合に、適用することが出来るものであったが、一方、第7〜9構成は、壁パネルの長さ方向が鉛直になる縦張りの場合に、適用することが出来るものであり、本発明の制振構造の第1〜6構成とまったく同様の発明の効果を有するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0076】
図により本発明に係る建築物の制振構造および制振機能付き胴縁の実施形態を具体的に説明する。図1は本発明に係る制振機能付き胴縁の4実施例を用いた建築物の制振構造の水平断面を示す要部説明図である。
【0077】
また、図2は本発明に係る建築物の制振構造の第1実施例を示す立面および平面説明図、図3は本発明に係る建築物の制振構造の第1実施例を示す斜視説明図、図4は図3に示した第1実施例を示す斜視説明図から壁パネルを点線で省略して示した説明図、図5は第1実施例の制振機能付き胴縁部分を拡大して示した斜視説明図、図6は第1実施例の制振構造において地震時の動きを模式的に示した立面説明図である。
【0078】
図7は本発明に係る建築物の制振構造で、一本の躯体フレームに2本の制振機能付き胴縁を用いた第2実施例を示す斜視説明図である。
【0079】
また、図8は本発明に係る建築物の制振構造の第3実施例で、留付金具によって壁パネルを固定した場合の建築物の制振構造の水平断面を示す要部説明図、図9は本発明に係る建築物の制振構造の第3実施例を示す立面および平面説明図、図10は本発明に係る建築物の制振構造の第3実施例を示す斜視説明図、図11は図10に示した第3実施例を示す斜視説明図から壁パネルを点線で省略して示した説明図、図12は第3実施例の制振機能付き胴縁と留付金具による壁パネル上部の取付けを拡大して示した斜視説明図、図13は第3実施例の制振構造において地震時の動きを模式的に示した立面説明図である。
【0080】
さらに、図14は本発明に係る制振機能付き胴縁の2実施例を示す断面説明図、図15は本発明に係る薄板に所定寸法の貫通孔を設けた制振機能付き胴縁を用いた制振構造の帯板固定範囲部分を拡大して示した斜視説明図、図16は本発明に係る帯板の継ぎ目位置で帯板面を接合手段で繋いだ制振機能付き胴縁の3実施例を示す斜視説明図である。
【0081】
図1は、本発明に係る制振機能付き胴縁の4種類の実施例を用いた建築物の制振構造の水平断面を示す3つの要部説明図である。
【0082】
左上図では、躯体フレーム1の前面に制振機能付き胴縁3が、薄板3aから折り出されたツメ3fを躯体フレーム1に差し込んだ状態で固定されている。制振機能付き胴縁3は、躯体フレーム1側から順に、薄板3a、粘弾性体3b、帯板3cの3層が積層接着されている。帯板3cの前面には、壁パネル2がスクリュー釘5で、帯板3cの裏面あたりまで打ち込まれて固定されている。このように、スクリュー釘5が薄板3aまで打ち込まれないため、壁パネル2が固定された帯板3cは、躯体フレーム1に対して面内方向に回転可能な構造である。なお、ここでの帯板3cは、図2などで説明するように、所要長さで割付けされ、割付けされた帯板1枚ごとが躯体フレーム1に対して面内方向に回転するように構成されている。
【0083】
躯体フレーム1は、木造軸組構造の間柱の場合で、幅30mmである。薄板3aの厚みを1.5mm、粘弾性体3bの厚みを2mm、帯板3cの厚みを14.5mmとし、制振機能付き胴縁3の全体厚みを18mmとした。また、ツメ3fが出寸法を7mmとした。このツメ3fを設けたことにより、制振機能付き胴縁3を躯体フレーム1に打ち付ける簡単な作業での固定が可能になる。また、ツメ3fの出寸法を7mmとしたため、躯体フレームに2mm程度の反りがあっても、ツメ3fを躯体フレーム1に5mm差し込んだ状態で安定的な固定することが可能となる。
【0084】
なお、他の制振機能付き胴縁の構成として、薄板3aの厚みを、1mm、粘弾性体3bの厚みを2mm、帯板3cの厚みを30mmとし、制振機能付き胴縁3の全体厚みを33mmとすると、標準的な通気胴縁の厚み18mmよりも厚くなるが、壁パネルを、帯板に固定する際に、軸系2.15mm、長さ38mmなどの釘で固定することが可能で、釘の軸径や打ち込み長さを確保し、地震時の変形時も、面内水平方向の拘束力を発揮して粘弾性体に有効にエネルギー吸収させることが可能となる。
【0085】
一方、薄板3aの両側部には、粘弾性体3bの厚さ寸法とほぼ同じ寸法で、突起3eが設けられ、帯板3cの裏面に対して当設されている。突起3eと粘弾性体3bの間には隙間を確保してある。そのため、地震時に、躯体フレーム1に固定された薄板3aに対して、帯板3cが相対変位を生ずることによって、帯板3cと薄板3aの間に接着積層された粘弾性体3bが剪断変形する際に、粘弾性体3bが突起3eに接触して変形を妨げられることがないように、クリアランスを確保できており、安定したエネルギー吸収が期待できる。ここに、隙間寸法は、2mmとした。帯板3cの割付け長さを445mmとし、長さの中央部を中心に回転するとすると、回転長さ222.5mmに対して、1/100強の変形角に対応した隙間寸法である。隙間寸法は、想定される地震時の変形角に応じて定めることが可能で、隙間寸法を6mmとすれば、1/40強の変形角に対応した隙間寸法と出来る。
【0086】
また、薄板3aは、長さ方向の特定の位置に、面外拘束手段3gを設けることにより、壁パネル2を固定した帯板3cを、躯体フレーム1に対して面外方向に拘束して構成してある。しかし、面外拘束手段3gは、帯板3cが躯体フレーム1に対して面内方向に回転可能なように構成してある。この実施例では、面外拘束手段3gを薄板3aの一部を加工することにより、設けたが、帯板3cが躯体フレーム1に対して面内方向に回転可能なように構成しつつ、躯体フレーム1に対して面外方向に拘束できる方法であれば、これに限らない。
【0087】
このように、建築物の躯体フレーム1側と壁パネル2の間に制振機能付き胴縁3を介在させた構造であって、帯板3cが躯体フレーム1に対して面内方向に回転可能なように、かつ面外方向に拘束して構成したことが、本発明の特徴である。
【0088】
図1の右上図では、躯体フレーム1を、木造軸組構造の本柱の場合で、幅105mmである。左上図との違いは、制振機能付き胴縁3を幅広の90mmとし、左右の壁パネル2をスクリュー釘で固定したことである。さらに、面外拘束手段3gを設けず、その代わりに、アンカー部材4で割付けされた帯板3cの中央部1箇所を固定した。これにより、帯板3は、アンカー部材4を介して、躯体フレーム1に対して面外方向に拘束して構成し、かつ、アンカー部材4の位置を中心に、割付けされた帯板3cが躯体フレーム1に対して面内方向に回転可能となる。
【0089】
図1の右下図では、幅105mmの躯体フレーム1に対して、幅40mmの制振機能付き胴縁3を2つ配することで、左右の壁パネル2をスクリュー釘5で固定できるよう構成したものである。この実施例のようにすれば、間柱と本柱で共通の制振機能付き胴縁3とすることが出来、部品点数を減らすことが出来る。
【0090】
図1の左下図では、帯板3cの固定位置を、躯体フレーム1の幅中心から右側にずらし、躯体フレーム1の幅中心に向かって面外拘束手段3gを設けた。また、面外拘束手段3gと帯板3cの間に、木ねじ8が通る隙間を設け、さらに、その前面に、木ねじ8をねじ込むための孔7を設けることにより、薄板3aを躯体フレーム1に固定したものである。この実施例では、木ねじ8によって、機械的に薄板3aを直接、躯体フレーム1に固定できるので、長期の接着力確保を確保するのが容易と出来る。
【0091】
〔第1実施例〕
次に、図2〜図6において、建築物の制振構造の第1実施例について説明する。第1実施例は、木造軸組構造への適用の例であり、間柱に対しては、図1の右下図で示した幅40mmの制振機能付き胴縁3を、本柱に対しては、図1の右上図で示した幅90mmの制振機能付き胴縁3を採用している。
【0092】
第1実施例では、薄板3a、粘弾性体3b、帯板3cを接着積層した複数本の制振機能付き胴縁3を、互いに平行に、間柱と本柱に添うように鉛直に設けた。これに対して、壁パネル2は、長さ方向2cを水平方向とするように、横張りで、制振機能付き胴縁3の長手方向と壁パネル2の長さ方向2cが直交するように配し、壁パネル2をスクリュー釘5で帯板3cに固定している。
【0093】
帯板3cは、長さの中央一点を、アンカー部材4で躯体フレーム1側まで、面内・面外ともに固定した。ただし、帯板3cは、アンカー部材4を中心に、面内方向に回転することが可能である。壁パネル2は、スクリュー釘5で帯板3cに、さらに、アンカー部材4で帯板3cを躯体フレーム1側まで面外に固定したため、壁パネル2に作用する面外力に対して、粘弾性体3bや接着面を介さずとも、躯体フレーム1側に面外力を伝達することが可能となる。
【0094】
壁パネル2の幅寸法2aは455mmであり、帯板3cは、同寸法455mmで割付けし、割付け位置が壁パネル2の横目地に対して20mm上になるように配した。このように、壁パネル2の幅寸法2aと帯板3cの割付け寸法を合致させ、帯板3cの割付け位置と壁パネル2の幅端部位置を、略合致させたので、1枚の壁パネル2を、一本の制振機能付き胴縁3に対して、割付けされた帯板3c1枚のみに固定するのが、確実・容易になり、地震時に、壁パネル2と躯体フレーム1の間に相対変位が生じた際、壁パネル2に固定された帯板3cが躯体フレーム1側に固定された薄板3aに対して相対変位を生じることになり、帯板3cと薄板3aの間に積層接着された粘弾性体3bに剪断変形が生じ、粘弾性体3bに振動エネルギーが有効に伝達されるため、粘弾性体3bの内部摩擦によって制振効果を発揮することがことが出来る。
【0095】
図5では、制振機能付き胴縁3部分を拡大し、躯体フレーム1、薄板3a、粘弾性体3b、帯板3cを、各々、切断位置を変えて切断して示した説明図である。薄板3aに、躯体フレーム1側へ突出したツメ3fを設けたため、薄板3aのツメ3fを躯体フレーム1側に打ち込んで固定することが可能であり、接着剤による固定だけにたよることなく、施工現場で、容易に制振機能付き胴縁3の躯体フレーム1側への固定を確保することが出来る。
【0096】
また、躯体フレーム1や壁パネル2の精度が悪く、例えば、躯体フレーム1が面外方向に変形している場合などであっても、想定される変形量に対して、薄板3aのツメ3fの長さを定めておけば、粘弾性体3bの厚さを所定の寸法に管理した上で、制振機能付き胴縁3の躯体フレー1ム側へ固定することが出来る。ここでは、ツメ3fの長さを7mmとした。さらには、接着剤による固定を併用することにした。
【0097】
図6は、地震時の動きを模式的に示した立面説明図であって、躯体フレーム1が図中にDの矢印で示したように変形した場合で、層間変形角を極端に1/10程度として描いたものである。このように、躯体フレーム1、薄板3aは、層間変形に応じて転倒するが、帯板3cとそれに固定されている壁パネル2は、スライド変形し、その結果、薄板3aと帯板3cの間に相対変位が生じ、その間に積層接着された粘弾性体3bに、振動エネルギーが有効に伝達され、制振効果を高めることが出来る。
【0098】
また、図中の矢印Dのところに破線矢印で示したように、横張りで配した壁パネル1の幅寸法2aが455mmで、変形角を1/60とすると、幅寸法455mmに対応した躯体フレーム1の下がりは、壁パネル2が完全にスライドで動いたとして計算して、0.06mm程度であり、わずかである。そのため、帯板3cと帯板3cの割付け継ぎ目3dは、1mm以下の小さな寸法とした。もちろん、割付け継ぎ目3dをさらに大きな寸法としてもよい。また、ほとんど帯板3cと帯板3cを突きつける構成としても、帯板3cとそれに固定されている壁パネル2の変形を阻害するようなことはない。
【0099】
〔第2実施例〕
次に、図7において、建築物の制振構造の第2実施例について説明する。第2実施例も、木造軸組構造への適用の例であり、間柱・本柱ともに、図1の右下図で示した制振機能付き胴縁3を採用したもので、間柱と本柱で共通の制振機能付き胴縁3とすることが出来、部品点数を減らすことが出来る。
【0100】
また、図2〜図7で示した建築物の制振構造の第1および第2実施例では、制振機能付き胴縁3を直接躯体フレーム1に固定しているが、躯体フレーム1と制振機能付き胴縁3の間に、合板などの耐力面材を張った場合や、躯体フレーム1の室内側に内装用の石こうボードを張った場合にも、適用できる。
【0101】
さらに、明記はしていないが、躯体フレーム1と制振機能付き胴縁3の間に透湿防水シートを設けたり、壁パネル2の縦目地奥に目地ジョイナーやバックアップ材を設けて、その上にシーリング6を打つ構造であってよい。
【0102】
〔第3実施例〕
図8〜図13において、建築物の制振構造の第3実施例について説明する。第3実施例も、木造軸組構造への適用の例であるが、間柱(躯体フレーム1)に対しては、図8の左図で示した幅40mmの制振機能付き胴縁3を、本柱(躯体フレーム1)に対しては、図8の右図で示した幅90mmの制振機能付き胴縁3を配した上に、横目地内に収まる留付金具10を用いて壁パネル2の上下端部を、面外方向に対して拘束している。
【0103】
第3実施例では、薄板3a、粘弾性体3b、帯板3cを接着積層した複数本の制振機能付き胴縁3を、互いに平行に、間柱と本柱に添うように鉛直に設けた。帯板3は、壁パネル2の幅寸法2aと同寸法である455mmで割付けし、割付け位置は、壁パネル2の横目地位置から、約50mm上の位置で配置し、割付けされた帯板3cは、長さの中央からやや下よりの位置を、アンカー部材4で躯体フレーム1側まで、面内・面外ともに固定した。ただし、帯板3cは、アンカー部材4を中心に、面内方向に回転することが可能である。これに対して、壁パネル2は、長さ方向2cを水平方向とするように、横張りで、制振機能付き胴縁3の長手方向と壁パネル2の長さ方向2cが直交するように配し、壁パネル2の上端部(下端部)を、留付金具10を介して、面外方向に拘束し固定した。より詳しくは、図12に示すように、留付金具10は、上下に割付けされた2枚の帯板3c相互を面内水平方向に拘束しないよう、割付けされた帯板3cの上端部にのみタッピンビス9で、固定されると共に、留付金具10には、壁パネル面外拘束片10aが3つ設けられており、中央に配された壁パネル面外拘束片10aは、下向きに曲げられており、下側に配される壁パネル2の横目地の構造である合じゃくり2bに、また、左右に配された2つの壁パネル面外拘束片10aは、上向きに曲げられており、上側に配される壁パネル2(図示せず)の横目地の構造である合じゃくり2b(図示せず)に掛かることにより、壁パネル2を面外方向に拘束している。このように、留付金具10は、割付けされた帯板3cに固定されると共に、上下の壁パネル2を、面外方向に拘束しているが、面内水平方向には拘束しないように留められており、壁パネル2は、面内水平方向にスライドして変形が可能なように固定されている。留付金具10は、壁パネル2の上下端部で、横目地内に収まるため、壁パネル2の外表面からの釘打ち固定が不要であり、釘頭が露出しない、美観を備えた構造と出来る。
【0104】
壁パネル2は、留付金具10を介してタッピングビス9で帯板3cに、さらに、アンカー部材4で帯板3cを躯体フレーム1側まで面外に固定したため、壁パネル2に作用する面外力に対して、粘弾性体3bや接着面を介さずとも、躯体フレーム1側に面外力を伝達することが出来る。壁パネル2に作用する面外力は、壁パネル2の上下端で留付金具10を介して面外方向に拘束されているため、上下に荷重配分され、安定的に面外力を受け、タッピングビス9に荷重伝達出来る。
【0105】
また、本柱位置における壁パネル2の縦目地位置においては、壁パネル2の上拘束箇所として、割付けされた帯板3cの上端部から80mm程度下の位置と、壁パネル2の下拘束箇所として、割付けされた帯板3cの下端部から50mm程度上の位置で、帯板3cに、断面ハット状の拘束金物13を固定し、拘束部13aを壁パネル2の目地間に配するという簡易な構造で、壁パネル1を面内水平方向に拘束することが可能となった。第3実施例では、拘束金物13は、短い長さのものを上拘束箇所と下拘束箇所の2箇所に設けたが、割付けされた帯板3cの範囲内で長いものを連続して設けてもよい。これによって、壁パネル2の外表面からの釘打ち固定が不要であり、釘頭が露出しない、美観を備えた構造と出来る。
【0106】
第3実施例では、壁パネル2の縦目地部の拘束方法として、断面ハット型の拘束金物13を示したが、壁パネル2の縦目地を隙間を開けずに、隣接する壁パネル2をほぼ接触させて設ける場合など、板状の拘束片を縦目地間に差し込んで配することが出来るような拘束金物を帯板3cに設ける方法であってよい。また、上拘束箇所の他の例として、留付金具10の下方に拘束片が一体で設けられているものを用いてもよい。
【0107】
一方、間柱位置における壁パネル2の上拘束箇所として、横目地内の合じゃくり2bの位置で、かくし釘11を下向き約45度で、帯板3cに打ち込むことにより、帯板3cに対して、壁パネル2を面内水平方向に拘束した。このように、かくし釘11は、横目地内に収まるので、壁パネル2の外表面からの釘打ち固定が不要であり、釘頭が露出しない、美観を備えた構造と出来る。なお、かくし釘11は、面外耐力をさほど期待していないが、少なくとも面内水平方向の拘束力を発揮する必要があり、釘頭の径は3.7mm、釘頭の厚みを1.85mmとし、軸径1.65mm、長さ32mmとした。また、軸系2.15mm、長さ38mmの釘を使用すれば、地震時の変形時も、面内水平方向の拘束力を発揮して、粘弾性体により有効にエネルギー吸収させることが可能である。
【0108】
さらに、間柱位置における壁パネル2の下拘束箇所として、割付けされた帯板3cの下端部から50mm程度上の位置に、3本のフィニッシュネイル12を、壁パネル2に対して垂直に打ち込んだ。ここで、フィニッシュネイル12は、釘頭を小さな寸法としてあり、壁パネル2内にほとんど打ち込むことが出来るため、壁パネル2の外表面からの釘打ち固定が不要であり、釘頭が露出しない、美観を備えた構造と出来る。なお、フィニッシュネイル12は、面外耐力をさほど期待していないが、少なくとも面内水平方向の拘束力を発揮する必要があり、釘頭の径は1.9mm、釘頭の厚みを1.3mmとし、軸径1.05mm、長さ40mmとした。
【0109】
図13では、地震時の動きを模式的に示した立面説明図であって、躯体フレーム1が図中にDの矢印で示したように変形した場合で、層間変形角を極端に1/10程度として描いたものである。このように、躯体フレーム1、薄板3aは、層間変形に応じて転倒するが、帯板3cとそれに固定されている壁パネル2は、スライド変形し、その結果、薄板3aと帯板3cの間に相対変位が生じ、その間に積層接着された粘弾性体3bに、振動エネルギーが有効に伝達され、制振効果を高めることが出来る。壁パネル2は、縦目地部において、拘束金物13によって、また、縦目地のない位置においても、かくし釘11とフィニッシュネイル12によって、上拘束箇所と下拘束箇所を、帯板3cに面内水平方向に拘束しているため、一体でスライド変形で動くことが可能となる。これら、拘束金物13、かくし釘11、フィニッシュネイル12の面内水平方向の拘束手段は、いずれも簡易な方法であり、壁パネル2の外表面からの釘打ち固定が不要であり、釘頭が露出しない、美観を備えた構造と出来る。
【0110】
図14において、本発明に係る制振機能付き胴縁の2実施例について説明する。左図は、フラットな形状の薄板3aによって構成した制振機能付き胴縁3である。このように、粘弾性体3b自体の剛性によって粘弾性体3bの厚みを確保する構造であってよい。ここでは、薄板3aの厚みを0.8mm、粘弾性体3bの厚みを2mmとした。
【0111】
また、右図は、薄板3bとして、更に厚みの薄いの鉄板の両サイドを折り曲げて重ねたもので構成した制振機能付き胴縁3である。このように、両サイドを折り曲げて、薄板3bの幅中央だけより薄い厚みとすることにより、アンカー部材4で帯板3cを躯体フレーム1に固定する際に、薄板3aを貫通する抵抗を小さくすることが出来、施工の効率上、好ましい。
【0112】
図15において、帯板固定範囲3c’において薄板3aに所定寸法の貫通孔3a’を設けた制振機能付き胴縁3について説明する。このように、帯板固定範囲3c’において、薄板3aに所定寸法の貫通孔3a’を設けてあるので、アンカー部材4で帯板3cを躯体フレーム1に固定する際に、抵抗なく施工することが出来、好ましい。
【0113】
図16において、帯板3cの継ぎ目3dの位置で帯板面を接合手段で繋いだ制振機能付き胴縁の3実施例について説明する。左図は、継ぎ目3dの位置の周囲だけを局所的にテープ(接合手段)14で繋いだので、施工現場などで、制振機能付き胴縁3を運搬する際に、帯板3cの継ぎ目3dに曲げが作用した場合にも、薄板3aおよび粘弾性体3bから帯板3cの厚みだけ距離をおいたテープ(接合手段)14によって曲げに抵抗することが出来るため、制振機能付き胴縁3が折れ曲がるのを避けることが出来る。なお、図に示した制振機能付き胴縁3は、帯板3cの継ぎ目3dの位置は、2箇所しかない短いものであるが、長さ455mmの帯板3cを4つ割付けた長さ1820mmの制振機能付き胴縁3のような長尺になれば、曲げがかかりやすく、テープ(接合手段)14は、有効に働く。
【0114】
中央図は、テープ(接合手段)14を、帯板3cの継ぎ目3dの位置だけではなく、制振機能付き胴縁3の全長にわたって設けたものであり、テープ(接合手段)14による繋ぎ効果をより有効に働かせやすく、好ましい。
【0115】
右図は、かすがい(接合手段)15を、帯板3cの継ぎ目3dの位置に設けたもので、左図、中央図と同様に、テープ(接合手段)14による繋ぎ効果と同様の作用を発揮するものである。
【産業上の利用可能性】
【0116】
本発明の活用例として、建築物の制振構造およびその構造に用いる制振機能付き胴縁として好適に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0117】
【図1】本発明に係る制振機能付き胴縁の4種類の実施例を用いた建築物の制振構造の断面を示す要部説明図である。
【図2】本発明に係る建築物の制振構造の第1実施例を示す立面および平面説明図である。
【図3】本発明に係る建築物の制振構造の第1実施例を示す斜視説明図である。
【図4】図3に示した第1実施例を示す斜視説明図から壁パネルを点線で省略して示した説明図である。
【図5】第1実施例の制振機能付き胴縁部分を拡大して示した斜視説明図である。
【図6】第1実施例の制振構造において地震時の動きを模式的に示した立面説明図である。
【図7】本発明に係る建築物の制振構造で、一本の躯体フレームに2本の制振機能付き胴縁を用いた第2実施例を示す斜視説明図である。
【図8】本発明に係る建築物の制振構造の第3実施例で、留付金具によって壁パネルを固定した場合の建築物の制振構造の水平断面を示す要部説明図である。
【図9】本発明に係る建築物の制振構造の第3実施例を示す立面および平面説明図である。
【図10】本発明に係る建築物の制振構造の第3実施例を示す斜視説明図である。
【図11】図10に示した第3実施例を示す斜視説明図から壁パネルを点線で省略して示した説明図である。
【図12】第3実施例の制振機能付き胴縁と留付金具による壁パネル上部の取付けを拡大して示した斜視説明図である。
【図13】第3実施例の制振構造において地震時の動きを模式的に示した立面説明図である。
【図14】本発明に係る制振機能付き胴縁の2実施例を示す断面説明図である。
【図15】本発明に係る薄板に所定寸法の貫通孔を設けた制振機能付き胴縁を用いた制振構造の帯板固定範囲部分を拡大して示した斜視説明図である。
【図16】本発明に係る帯板の継ぎ目位置で帯板面を接合手段で繋いだ制振機能付き胴縁の3実施例を示す斜視説明図である。
【符号の説明】
【0118】
1…躯体フレーム、2…壁パネル、2a…幅寸法、2b…合じゃくり、2c…長さ方向、3…制振機能付き胴縁、3a…薄板、3a’…貫通孔、3b…粘弾性体、3c…帯板、3c’…帯板固定範囲、3d…割付け継ぎ目、3e…突起、3f…ツメ、3g…面外拘束手段、4…アンカー部材(面外拘束手段)、5…スクリュー釘(固定部材)、6…シーリング、7…孔、8…木ねじ、9…タッピングビス(固定部材)、10…留付金具、10a…壁パネル面外拘束片、11…かくし釘(固定部材)、12…フィニッシュネイル(固定部材)、13…拘束金物、13a…拘束部、14…テープ(接合手段)、15…かすがい(接合手段)
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物の制振構造およびその構造に用いる制振機能付き胴縁に関するものである。
【背景技術】
【0002】
これまで、建築物の制振を目的として、躯体フレーム側と壁パネルの間に粘弾性体を介在させた構造として、特開2001−323685号公報(特許文献1)、特開2002−61316号公報(特許文献2)、特開2005−290819号公報(特許文献3)に記載された技術がある。
【0003】
特許文献1に記載された建築物の制振構造は、躯体フレーム側と壁パネルの間に粘弾性体を介在させ、粘弾性体を躯体フレームと壁パネルに直接粘着あるいは接着する構造である。
【0004】
また、特許文献2に記載された建築物の制振構造は、躯体フレームに粘弾性体テープを介して壁パネルを木ネジによって固定する技術である。
【0005】
さらに、特許文献3に記載された建築物の制振構造は、躯体フレーム側と壁パネルの間に2枚の金属板で挟まれた粘弾性体を介在させ、躯体フレームおよび壁パネルに金属板を接着剤により接合した技術である。
【0006】
特許文献1から特許文献3にあるように、これらの技術は、躯体フレーム側と壁パネルの間に粘弾性体を介在させた構造とすることにより、地震時に、壁パネルと躯体フレームの間に相対変位が生じ、粘弾性体に振動エネルギーが伝達させることにより、粘弾性体の内部摩擦によって制振効果を発揮させようとするものである。
【0007】
【特許文献1】特開2001−323685号公報
【特許文献2】特開2002−61316号公報
【特許文献3】特開2005−290819号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献1の技術では、粘弾性体を躯体フレームと壁パネルに直接接着するため、躯体フレームや壁パネルの精度が悪く、例えば、躯体フレームが面外方向に変形している場合などでは、粘弾性体の厚さを所定の寸法に管理した上で、接着することが難しかった。また、壁パネルに大きな面外力が作用する場合には、粘弾性体と躯体フレームや壁パネルとの接着面にも大きな面外力が作用するため、長期の接着力確保に不安があった。
【0009】
また、特許文献2の技術では、粘弾性体テープの長さ方向にわたって、複数の木ネジによって壁パネルを躯体フレームに固定するため、地震時に、躯体フレームと壁パネルとの間に相対変位が生じる際、複数の木ネジに力が作用し、それによって粘弾性体テープに振動エネルギーが伝達されにくく、十分な制振効果が得られにくいという問題があった。
【0010】
さらに、特許文献3の技術では、躯体フレーム側と壁パネルの間に2枚の金属板で挟まれた粘弾性体を介在させているが、特許文献1の技術と同様に、躯体フレーム(木製の枠材)や壁パネルの精度が悪いと、粘弾性体の厚さを所定の寸法に管理した上で、金属板を躯体フレームに接着することが難しかった。特に、特許文献3の技術は、木造軸組構造の壁部分に適用することを想定した技術であり、木造の軸組は、木材で形成されており、初期あるいは長期的にも反り変形などをおこしやすく、粘弾性体の厚さを所定の寸法に管理して構成しにくい場合があった。また、特許文献3の技術では、壁パネルに大きな面外力が作用する場合には、粘弾性体と金属板との接着面、あるいは金属板と躯体フレームや壁パネルとの接着面にも大きな面外力が作用するため、長期の接着力確保にやはり不安があった。このため、金属板と躯体フレームや壁パネルを仮止め釘で仮止めしておき、完全な接着強度が発現するまでには、数日〜十数日かかるとされていた。
【0011】
本発明は前記課題を解決するものであり、その目的とするところは、地震時に、躯体フレーム側と壁パネルの間に介在させた粘弾性体に、振動エネルギーを有効に伝達させ、制振効果を高めた建築物の制振構造を提供することである。
【0012】
また、壁パネルに作用する面外力に対して、粘弾性体や接着面を介さずとも、躯体フレーム側に面外力を伝達することが可能な建築物の制振構造を提供することを目的とする。
【0013】
更に、本発明は、これらの建築物の制振構造に用いることが可能で、上記目的を容易に達成することが可能な制振機能付き胴縁を提供することも目的としている。
【0014】
更に、本発明は、これらの建築物の制振構造で、壁パネルの外表面に釘頭などが露出しない、美観を備えた構造とすることも目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前記目的を達成するための本発明に係る建築物の制振構造の第1構成は、建築物の躯体フレーム側と壁パネルの間に粘弾性体を介在させた構造において、薄板、粘弾性体、帯板をこの順で積層接着した複数本の制振機能付き胴縁を、互いに平行に、薄板を躯体フレーム側として設けた構造であって、前記制振機能付き胴縁の長手方向と前記壁パネルの長さ方向が直交するように配した壁パネルを、前記帯板に固定することにより、粘弾性体を介して間接的に前記薄板に対して固定した構造とし、前記帯板を所要長さで割付け、割付けた帯板1枚ごとが躯体フレームに対して面内方向に回転可能なように、かつ該帯板を躯体フレームに対して面外方向に拘束して構成したことを特徴とする。
【0016】
また、本発明に係る建築物の制振構造の第2構成は、第1構成の制振構造において、所要長さで割付けた前記帯板1枚に対して該長さの1/3以下の帯板固定範囲を、アンカー部材で直接的に躯体フレーム側に面内および面外の両方向に対して固定したことを特徴とする。
【0017】
更に、本発明に係る建築物の制振構造の第3構成は、第1又は第2構成の建築物の制振構造において、1枚の壁パネルは、一本の制振機能付き胴縁に対して、所要長さで割付けた前記帯板1枚のみに固定されていることを特徴とする。
【0018】
次に、本発明に係る制振機能付き胴縁の第1構成は、薄板、粘弾性体、帯板をこの順で積層接着し、該帯板を所要長さで割付けて構成したことを特徴とする。
【0019】
本発明に係る制振機能付き胴縁の第2構成は、前記制振機能付き胴縁の第1構成において、薄板あるいは帯板の側部に粘弾性体側に向かって所要寸法の突起を設けたことを特徴とする。
【0020】
また、本発明に係る制振機能付き胴縁の第3構成は、前記制振機能付き胴縁の第2構成において、前記突起と粘弾性体の間に所要寸法の隙間を確保したことを特徴とする。
【0021】
更に、本発明に係る制振機能付き胴縁の第4構成は、前記制振機能付き胴縁の第1乃至3のいずれかの構成において、薄板に、外部へ突出したツメを設けたことを特徴とする。
【0022】
本発明に係る制振機能付き胴縁の第5構成は、前記制振機能付き胴縁の第1乃至4のいずれかの構成において、薄板と帯板を、粘弾性体とは別の面外拘束手段によって、面外方向に拘束したことを特徴とする。
【0023】
本発明に係る制振機能付き胴縁の第6構成は、前記制振機能付き胴縁の第1乃至5のいずれかの構成において、前記帯板固定範囲において、薄板に所定寸法の貫通孔を設けたことを特徴とする。
【0024】
本発明に係る制振機能付き胴縁の第7構成は、前記制振機能付き胴縁の第1乃至6のいずれかの構成において、所定長さで割り付けて構成した帯板の継ぎ目位置で、粘弾性体と反対側の帯板の面を接合手段で繋いだことを特徴とする。
【0025】
本発明に係る建築物の制振構造の第4構成は、建築物の躯体フレーム側と壁パネルの間に粘弾性体を介在させた構造において、薄板、粘弾性体、帯板をこの順で積層接着した複数本の制振機能付き胴縁を、互いに平行に、薄板を躯体フレーム側として鉛直に設け、かつ、前記制振機能付き胴縁の長手方向と前記壁パネルの長さ方向が直交するように横張りで配した壁パネルを、壁パネルの幅寸法と略同一長さで割付けた前記帯板に、割付けた2枚の帯板相互を少なくとも面内水平方向に拘束しないように、壁パネルの上端部および/または下端部を、横目地内に収まる留付金具によって、面外方向に対して拘束することにより、粘弾性体を介して間接的に前記薄板に対して固定した構造であって、割付けた帯板1枚の上端部から中間部の範囲で、壁パネルの上拘束箇所を、かつ、該帯板の中間部から下端部の範囲で、壁パネルの下拘束箇所を、該帯板に対して、面内水平方向に拘束し、さらに、割付けた帯板1枚ごとが躯体フレームに対して面内方向に回転可能なように、かつ該帯板を躯体フレームに対して面外方向に拘束して構成したことを特徴とする。
【0026】
本発明に係る建築物の制振構造の第5構成は、第4構成の建築物の制振構造において、左右に隣接する壁パネルの縦目地において、前記帯板に固定した拘束金具の拘束部を、少なくとも上拘束箇所と下拘束箇所に配することにより、壁パネルを面内水平方向に拘束したことを特徴とする。
【0027】
本発明に係る建築物の制振構造の第6構成は、第4又は第5構成の建築物の制振構造において、壁パネルの少なくとも上拘束箇所と下拘束箇所において、帯板に対して釘頭の小さな釘を打ち込むことにより、壁パネルを面内水平方向に拘束したことを特徴とする。
【0028】
本発明に係る建築物の制振構造の第7構成は、建築物の躯体フレーム側と壁パネルの間に粘弾性体を介在させた構造において、薄板、粘弾性体、帯板をこの順で積層接着した複数本の制振機能付き胴縁を、互いに平行に、薄板を躯体フレーム側として水平に設け、かつ、前記制振機能付き胴縁の長手方向と前記壁パネルの長さ方向が直交するように縦張りで配した壁パネルを、壁パネルの幅寸法と略同一長さで割付けた前記帯板に、割付けた2枚の帯板相互を少なくとも面内鉛直方向に拘束しないように、壁パネルの右端部および/または左端部を、縦目地内に収まる留付金具によって、面外方向に対して拘束することにより、粘弾性体を介して間接的に前記薄板に対して固定した構造であって、割付けた帯板1枚の右端部から中間部の範囲で、壁パネルの右拘束箇所を、かつ、該帯板の中間部から下端部の範囲で、壁パネルの左拘束箇所を、該帯板に対して、面内鉛直方向に拘束し、さらに、割付けた帯板1枚ごとが躯体フレームに対して面内方向に回転可能なように、かつ該帯板を躯体フレームに対して面外方向に拘束して構成したことを特徴とする。
【0029】
本発明に係る建築物の制振構造の第8構成は、第7構成の建築物の制振構造において、上下に隣接する壁パネルの横目地において、前記帯板に固定した拘束金具の拘束部を、少なくとも右拘束箇所と左拘束箇所に配することにより、壁パネルを面内鉛直方向に拘束したことを特徴とする。
【0030】
本発明に係る建築物の制振構造の第9構成は、第7又は第8構成の建築物の制振構造において、壁パネルの少なくとも右拘束箇所と左拘束箇所において、帯板に対して釘頭の小さな釘を打ち込むことにより、壁パネルを面内水平方向に拘束したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0031】
本発明の請求項1に係る建築物の制振構造の第1構成によれば、薄板、粘弾性体、帯板をこの順で積層接着した複数本の制振機能付き胴縁を、互いに平行に、薄板を躯体フレーム側として設けた構造であって、前記制振機能付き胴縁の長手方向と前記壁パネルの長さ方向が直交するように配した壁パネルを、前記帯板に固定することにより、粘弾性体を介して間接的に前記薄板に対して固定した構造とし、前記帯板を所要長さで割付け、割付けた帯板1枚ごとが躯体フレームに対して面内方向に回転可能なように、かつ該帯板を躯体フレームに対して面外方向に拘束して構成したため、地震時に、壁パネルと躯体フレームの間に相対変位が生じた際、壁パネルに固定された帯板が躯体フレーム側に設けられた薄板に対して相対変位を生じることになり、帯板と薄板の間に積層接着された粘弾性体に剪断変形が生じ、粘弾性体に振動エネルギーが有効に伝達されるため、粘弾性体の内部摩擦によって制振効果を発揮することがことが出来る。これにより、制振効果を高めた建築物の制振構造を提供することが可能となる。
【0032】
また、壁パネルを固定した帯板を、躯体フレームに対して面外方向に拘束して構成したため、壁パネルに作用する面外力に対して、粘弾性体そのもの、さらに粘弾性体と薄板や帯板との接着面を介さずとも、躯体フレーム側に面外力を伝達することが可能であり、その部分の長期の接着力確保をより確実なものとすることが出来る。
【0033】
なお、制振機能付き胴縁を躯体フレーム側に設けるには、接着剤によって固定したり、長期の接着力確保を考慮して、アンカー部材などで、機械的な固定をおこなうのもよい。また、単に、割り付けられた複数の帯板を躯体フレーム側に対して面外方向に拘束することにより、制振機能付き胴縁の薄板を躯体フレームに圧着して設け、薄板と躯体フレーム間に摩擦力を発生させることにより、制振機能付き胴縁の薄板が躯体フレームと面内方向にズレを生じないように設けることでもよい。例えば、割り付けられた複数の帯板を、釘打ちで躯体フレームに打ち込めば、その結果として、制振機能付き胴縁の薄板は、躯体フレームに圧着して設けられるため、薄板と躯体フレーム間に摩擦力を発生し、制振機能付き胴縁の薄板が躯体フレームと面内方向にズレを生じないように出来る。
【0034】
また、壁パネルを制振機能付き胴縁に固定(壁パネルを帯板への固定)する際に、接着剤によって固定するのもよいが、長期の接着力確保を考慮すれば、アンカー部材などで、機械的な固定をおこなうのが好ましい。もちろん、接着剤と機械的な固定を併用することも可能である。
【0035】
ここに、地震時の壁パネル目地ずれが壁パネル単位で起こることを考えると、帯板の割付け長さも、壁パネルの幅寸法前後としておくことが、好ましい。帯板の割付け長さが壁パネルの幅寸法よりある程度長い場合には、隣接する2枚以上の壁パネルが、1枚の帯板に固定される可能性があり、そのような場合には、帯板の面内方向の回転変形を拘束してしまうおそれがあり、十分な制振効果が得られない可能性がある。一方、帯板の割付け長さが壁パネルの幅寸法よりある程度短い場合には、1枚の壁パネルを、隣接する2枚の帯板に固定してしまう可能性があり、そのような場合には、帯板の面内方向の回転変形は拘束しないものの、帯板の割付け長さが短いことから、帯板の割付け長さを、壁パネルの幅寸法前後とした場合と比較して、制振効果が小さくなる可能性がある。ここでは、帯板の割付け長さを、壁パネルの幅寸法前後としたが、より具体的には、壁パネル幅寸法の1.5倍以下0.5倍以上が好適である。壁パネル幅寸法の1.5倍の場合、壁パネルを幅寸法の所定の一箇所で帯板に固定する場合、壁パネルの3枚ごとに、隣接する2枚の壁パネルが、1枚の帯板に固定されることになり、壁パネル幅寸法の0.5倍の場合、帯板の割付け長さが1/2であり、それに応じて制振効果は小さくなるが、帯板が長尺の胴縁と略同一長さで、所定長さで割り付けられていない構造との比較では、良好な制振効果が得られる。しかし、帯板の割付け長さを壁パネルの幅寸法と合致させ、1枚の壁パネルを1枚の帯板だけに固定するように留意して施工するのが、より好ましい構造である。
【0036】
なお、第1構成では、薄板を長尺とし、帯板を割付けして構成すれば、制振機能付き胴縁そのものは、長尺寸法となり、施工時に、効率よく制振機能付き胴縁を配置することが可能となり、好ましい。
【0037】
更に、帯板と帯板の割付け継ぎ目は、1mm以下の小さな寸法でよく、接触しているくらいでも良い。横張りで配した壁パネルの幅寸法が455mmの場合で、変形角が1/30とすると、幅寸法455mmに対応した躯体フレームの下がりは、壁パネルが完全にスライドで動いたとして計算しても、0.25mm程度であり、わずかである。もちろん、割付け継ぎ目を大きな寸法としてもよい。
【0038】
なお、ここでは、薄板、粘弾性体、帯板をこの順で積層接着した制振機能付き胴縁としたが、例えば、帯板を2層構成として、粘弾性体側には、接着力を確保するために、鋼板とし、壁パネル側には、壁パネルからスクリュー釘などで固定しやすいように、木製帯板とし、鋼板と木製帯板を接着して、2層構成の帯板としてもよい。この場合には、薄板、粘弾性体、帯板(鋼板+木製帯板)の4層構成となる。これ以外にも、薄板、粘弾性体、薄板、粘弾性体、帯板の5層構成などであってもよく、同様の発明の効果が得られる。
【0039】
さらに、主として木造住宅などに用いる場合で、通気胴縁の代替として壁パネル(外壁パネル)の下地に施工することで、施工手間を特別に増加させずに施工することが可能となり、通気胴縁の機能と制振の機能の2つを同時に付与することが可能な好適な構造とすることができる。
【0040】
なお、建築物の制振構造の第1構成は、壁パネルの長さ方向が水平になる横張りの場合、壁パネルの長さ方向が鉛直になる縦張りの場合、ともに、適用することが出来る。
【0041】
また、本発明の請求項2に係る建築物の制振構造の第2構成によれば、所要長さで割付けた前記帯板1枚に対して、アンカー部材で直接的に躯体フレーム側に面内方向に対して、帯板1枚の長さの1/3以下の帯板固定範囲だけを固定したので、帯板1枚ごとで、躯体フレームに対して面内方向に相応の回転変形が可能であり、そのため、地震時に、壁パネルと躯体フレームの間に相対変位が生じた際、壁パネルに固定された帯板が躯体フレーム側に固定された薄板に対して相対変位を生じることになり、帯板と薄板の間に積層接着された粘弾性体に剪断変形が生じ、粘弾性体に振動エネルギーが有効に伝達されるため、粘弾性体の内部摩擦によって制振効果を発揮することがことが出来る。
【0042】
また、1/3以下の帯板固定範囲とは帯板長さの中央部とは限らず、端部に近い位置の固定であってもよい。
【0043】
なお、帯板1枚に対して、2本以上のアンカー部材で近接した位置を固定した場合で、帯板1枚に対して該長さの1/3以下の帯板固定範囲を、アンカー部材で直接的に躯体フレーム側に固定した場合には、2箇所以上を固定することになり、面内方向の拘束効果がでてくるが、地震時に、壁パネルと躯体フレームの間に相対変位が生じる際、アンカー部材がわずかに曲げられることにより、回転可能となるため、帯板1枚に対して該長さの1/3以下の範囲であれば、2本以上のアンカー部材で固定することでよい。例えば、帯板を長さ455mmで割付けした場合に、2本のアンカーが、その長さのおよそ1/3である150mm以下の間隔で固定されている場合などである。さらに、帯板1枚に対して該長さの1/4以下の帯板固定範囲とするのが好ましく、もちろん、帯板のある一点だけを1本のアンカー部材で固定するのが、帯板1枚をスムーズに、躯体フレーム側に固定された薄板に対して面内方向に回転可能なようにするという意味で、より好ましい。
【0044】
更に、帯板固定範囲を帯板1枚の1/3長さの範囲内で定め、施工現場で当該位置のみをアンカー部材で確実に固定されるように、帯板の外表面にマーキングすることが好ましい。
【0045】
なお、ここでのアンカー部材とは、スクリュー釘、木ネジを指す他、ボルト、ナットなどのネジ部材や鋲による固定などの固定手段によってもよい。このようなアンカー部材を用いることにより、面内方向に対してだけでなく、帯板を躯体フレームに面外方向に対しても、簡単に拘束することが可能である。
【0046】
また、壁パネルは、釘などの固定部材で帯板に直接固定してもよいが、金具を介して固定部材で帯板に固定する場合でもよい。なお、ここでの固定部材とは、壁パネルを帯板に対して固定するが、薄板や躯体フレーム側までは、直接的に固定するものではない。
【0047】
また、本発明の請求項3に係る建築物の制振構造の第3構成によれば、1枚の壁パネルは、一本の制振機能付き胴縁に対して、所要長さで割付けた前記帯板1枚のみに固定されているため、地震時の壁パネル目地ずれが壁パネル単位で起こることを考えると、壁パネル1枚の地震時の動きに対して、当該壁パネルが固定された帯板のみが追従して、帯板の面内方向の回転変形(相対的な動きなので、躯体フレームが回転変形する場合もある)が可能となる。
【0048】
なお、1枚の壁パネルを、一本の制振機能付き胴縁に対して、所要長さで割付けされた前記帯板1枚のみに固定するのを確実にするためには、帯板の割付け位置と壁パネルの幅端部位置を、略合致させておく構造が好ましい。例えば、帯板の割付け位置を壁パネルの幅上端部より50mm上がった位置に設定するなどである。この場合には、帯板の割付け長さも、壁パネルの幅寸法前後としておく必要がある。
【0049】
また、本発明の請求項4に係る制振機能付き胴縁の第1構成によれば、薄板、粘弾性体、帯板をこの順で積層接着し、該帯板を所要長さで割付けて構成したため、前述した建築物の制振構造の第1〜3構成に用い、地震時に、躯体フレーム側と壁パネルの間に介在させた粘弾性体に、振動エネルギーを有効に伝達させることが可能な制振機能付き胴縁と出来る。
【0050】
なお、ここでの所要長さとは、胴縁全長より短い長さのことであり、建築物に使われる壁パネルの幅寸法を考慮して定める。一般に、帯板の割付け長さも、想定される壁パネルの幅寸法以下としておくことがより好ましい。
【0051】
また、本発明の請求項5に係る制振機能付き胴縁の第2構成によれば、薄板あるいは帯板の側部に粘弾性体側に向かって所要寸法の突起を設けたため、粘弾性体の厚みを所定寸法に確保することが可能であり、面外荷重、特に、正荷重に対して、粘弾性体の厚みを確保することが可能となり、地震時に、安定したエネルギー吸収が期待できる。
【0052】
さらに、薄板の側部で、割り付けられた帯板の少なくとも分割継ぎ目近傍に、弾性体側に向かって突起を設ければ、施工時などに、制振機能付き胴縁を持った際に、割り付けられた帯板の分割継ぎ目の曲げ剛性低下を、該突起がカバーして、簡単に折れ曲がらないようにすることが出来、好ましい。
【0053】
また、本発明の請求項6に係る制振機能付き胴縁の第3構成によれば、前記突起と粘弾性体の間に所要寸法の隙間を確保したため、地震時に、躯体フレームに固定された薄板に対して、帯板が相対変位を生ずることによって、帯板と薄板の間に接着積層された粘弾性体が剪断変形する際に、粘弾性体が突起に接触して変形を妨げられることがないように、クリアランスを確保することが可能となり、やはり安定したエネルギー吸収が期待できる。
【0054】
更に、本発明の請求項7に係る制振機能付き胴縁の第4構成によれば、薄板に、外部へ突出したツメを設けたため、薄板のツメを躯体フレーム側に打ち込んで固定することが可能であり、接着剤による固定だけにたよることなく、施工現場で、容易に制振機能付き胴縁の躯体フレーム側への固定を確保することが出来る。また、躯体フレームや壁パネルの精度が悪く、例えば、躯体フレームが面外方向に変形している場合などであっても、想定される変形量に対して、薄板のツメの長さを定めておけば、粘弾性体の厚さを所定の寸法に管理した上で、制振機能付き胴縁の躯体フレーム側へ固定することが出来る。また、ツメを設けることにより、薄板を躯体フレーム側に確実に固定することが可能となり、ズレを防止して、粘弾性体へ、より確実にエネルギー吸収させることが可能となる。ここに、ツメの長さは、躯体フレームや壁パネルの想定される精度に応じて定められるものであるが、一般に、2mm以上20mm以下が好ましく、さらには、5mm以上10mm以下がより好ましい。さらに、ツメは、長さ方向に対して200mm以下のピッチで設けられていることが好ましい。もちろん、接着剤による固定を併用することも可能である。
【0055】
本発明の請求項8に係る制振機能付き胴縁の第5構成によれば、薄板と帯板を、粘弾性体とは別の面外拘束手段によって、面外方向に拘束したため、壁パネルに作用する面外力に対して、粘弾性体そのもの、さらに粘弾性体と薄板や帯板との接着面を介さずとも、躯体フレーム側に面外力を伝達することが可能であり、その部分の長期の接着力確保をより確実なものとすることが出来る。よって、躯体フレーム側に面外力を伝達することが容易な制振機能付き胴縁である。
【0056】
なお、制振機能付き胴縁の第5構成の具体的な構成として、図1の左上、左下がある。面外拘束手段は、胴縁の長手方向の一部に設けられていればよい。もちろん、長手方向に、通しで面外拘束手段を設けてもよい。
【0057】
本発明の請求項9に係る制振機能付き胴縁の第6構成によれば、前記帯板固定範囲において、薄板に所定寸法の貫通孔を設けたため、帯板を躯体フレームに対してアンカー部材で直接的に躯体フレーム側に面外に対して固定する際に、薄板の貫通孔を通すことが出来るため、スクリュー釘、木ネジなどのアンカー部材の施工を容易にすることが出来る。
【0058】
本発明の請求項10に係る制振機能付き胴縁の第7構成によれば、所定長さで割り付けて構成した帯板の継ぎ目位置で、薄板および粘弾性体と反対側の帯板の面を接合手段で繋いだので、施工現場などで、制振機能付き胴縁を運搬する際に、帯板の継ぎ目部に曲げが作用した場合にも、薄板および粘弾性体から帯板の厚みだけ距離をおいた接合手段によって曲げに抵抗することが出来るため、制振機能付き胴縁が折れ曲がるのを避けることが出来る。
【0059】
なお、ここでの接合手段とは、割り付けて構成した帯板の継ぎ目に少なくとも配している必要があり、具体的には、テープを張る、かすがいを打ち込むなどの接合手段がある。テープは、ポリエステルフィルムをガラス繊維で補強したものなど、剛性と強度のあるものを用いるのが、好ましい。
【0060】
また、制振機能付き胴縁を、躯体フレームに設けた後には、折れ曲がりを心配する必要がなくなるため、接合手段は除去しておくのが好ましい。かすがいであると、除去が手間であるため、テープを接合手段とすれば、除去が容易であり、より好ましい。
【0061】
なお、制振機能付き胴縁の第1〜7構成では、薄板、粘弾性体、帯板の板厚を特に規定するものではないが、薄板0.3mm〜2mm、粘弾性体0.5mm〜4mm、帯板10mm〜50mm程度が好適な範囲と考えられる。特に、制振機能付き胴縁に通気胴縁の機能を付与させることも可能であり、その際には、制振機能付き胴縁の総厚を、一般の通気層の厚み18mm程度に合致させることを考慮すると、前述の範囲で選択し、接着積層して構成するのが好ましい。例えば、薄板1mm、粘弾性体2mm、帯板15mmとすれば、総厚18mmとすることが出来る。また、薄板1mm、粘弾性体2mm、帯板30mmとすれば、総厚33mmとなるが、この場合は、外壁パネルを、スクリュー釘などの固定部材で帯板に止める際に、帯板が30mmと厚いため、しっかりと固定することが出来る。
【0062】
また、薄板の素材としては、鋼板などの金属材料が粘弾性体への接着性と加工性の観点より好ましく、外装プレート裏面への雨水の浸入等が懸念される場合には、ステンレス材やガルバリウム鋼板等の耐食性を有する素材を用いることが出来るが、他に、プラスチック材料、木材なども適用可能である。
【0063】
帯板の素材としては、サイディング壁パネルでは、釘や木ネジを利用して固定されることも多く、木材を用いるのが好適であるが、セルフドリルビスで固定する場合には、軽鉄であってもよい。例えば、帯板として、幅40mm、厚20mmのボックス形状の軽鉄下地としても、問題なく使用できる。他に、プラスチック材料、人工木材等も適用可能である。
【0064】
請求項11、請求項12、請求項13に係る建築物の制振構造の第4構成、第5構成、第6構成について説明する。第4〜6構成は、本発明の制振構造の第1〜3構成とまったく同様の発明の効果を有するものであるが、それに加えて、壁パネルの上下端部を、横目地内に収まる留付金具によって、面外方向に対して拘束する技術に関するものであり、壁パネルの外表面に釘頭などが露出しない、美観を備えた構造とすることができる発明の効果を有したものである。なお、第4〜6構成は、壁パネルの長さ方向が水平になる横張りの場合に、適用することが出来る。
【0065】
本発明の請求項11に係る建築物の制振構造の第4構成によれば、薄板、粘弾性体、帯板をこの順で積層接着した複数本の制振機能付き胴縁を、互いに平行に、薄板を躯体フレーム側として鉛直に設け、かつ、該制振機能付き胴縁の長手方向と前記壁パネルの長さ方向が直交するように横張りで配した壁パネルを、壁パネルの幅寸法と略同一長さで割付けた前記帯板に、割付けられた2枚の帯板相互を少なくとも面内水平方向に拘束しないように、壁パネルの上端部および/または下端部を、横目地内に収まる留付金具によって、面外方向に対して拘束することにより、粘弾性体を介して間接的に前記薄板に対して固定した構造であり、さらに、割付けされた帯板1枚ごとが躯体フレームに対して面内方向に回転可能なように構成したため、地震時に、壁パネルと躯体フレームの間に相対変位が生じた際、壁パネルに固定された帯板が躯体フレーム側に設けられた薄板に対して相対変位を生じることになり、帯板と薄板の間に積層接着された粘弾性体に剪断変形が生じ、粘弾性体に振動エネルギーが有効に伝達されるため、粘弾性体の内部摩擦によって制振効果を発揮することがことが出来るとともに、壁パネルの面外方向への留め付けが、横目地内で可能であり、壁パネルの外表面から釘打ち固定が不要であり、釘頭が露出しない、美観を備えた構造とすることができる。
【0066】
また、割付けされた帯板1枚ごとが躯体フレームに対して面内方向に回転可能なように構成とするために、割付けされた帯板1枚の上端部から中間部の範囲で、壁パネルの上拘束箇所を、かつ、該帯板の中間部から下端部の範囲で、壁パネルの下拘束箇所を、該帯板に対して、面内水平方向に拘束する際に、前述のごとく、面外方向に対しては、横目地内で別途固定されているため、面内方向の拘束のみを考慮できる方法で実施すればよく、やはり、釘頭が露出しない、美観を備えた構造で、面内水平方向の拘束を行うことが容易である。ここに、面内水平方向の拘束手段は、目地内に収まる拘束金具や釘頭の小さな釘などが考えられるが、それ以外に、帯板と壁パネル内面を接着するなど、簡易な方法が可能である。このように、建築物の制振構造の第4構成の特徴は、壁パネルを、帯板に対して、面外方向に拘束する留付金具と、面内水平方向に拘束する手段を分けることにより、簡易な方法で、壁パネルの少なくとも上拘束箇所と下拘束箇所を拘束できるようにしたことにある。
【0067】
第4構成では、地震時の壁パネル目地ずれが壁パネル単位で起こることを考慮して、帯板の割付け長さを、壁パネルの幅寸法と略同一長さとした。ここに、帯板の割付け位置は、壁パネルの上下端部である横目地の位置に対して、特に位置関係で規定されるものではないが、割付けされた帯板1枚の上端部から中間部の範囲で、壁パネルの上拘束箇所を、かつ、該帯板の中間部から下端部の範囲で、壁パネルの下拘束箇所を、該帯板に対して、面内水平方向に拘束するためには、帯板の割付け位置は、壁パネルの上下端部である横目地の位置に近接していると、上拘束箇所と下拘束箇所の距離を離しての拘束が容易になり、好ましい。帯板の割付け位置を、壁パネルの上下端部である横目地の位置に対して、幅寸法の1/3以内に設けるのが、より好ましい。
【0068】
また、本発明の請求項10に係る建築物の制振構造の第5構成によれば、左右に隣接する壁パネルの縦目地において、前記帯板に固定した拘束金具の拘束部を、少なくとも上拘束箇所と下拘束箇所に配することにより、壁パネルを面内水平方向に拘束したため、壁パネルの縦目地位置の少なくとも2箇所において、帯板に対して拘束金具を設置するという簡易な方法で、壁パネルの面内水平方向の拘束が可能であり、壁パネルの外表面に釘頭などが露出しない、美観を備えた構造とすることができる。
【0069】
ここに、拘束金具とは、断面ハット型、断面L型の形状のものであり、拘束部が壁パネルの縦目地部内で、壁パネルに接触あるいは極近接して設け、壁パネルの帯板に対する面内水平方向の動きを拘束するものである。
【0070】
拘束金物は、1本の縦目地で、1枚の壁パネルに対して、少なくとも2箇所に配すればよいが、長尺の拘束金具を連続して配することでもよい。ただし、その際には、割付けされた2枚の帯板相互を面内水平方向に拘束しないように、帯板を跨って、拘束金物を配置しないようにしておく必要がある。
【0071】
さらに、本発明の請求項11に係る建築物の制振構造の第6構成によれば、壁パネルの少なくとも上拘束箇所と下拘束箇所において、帯板に対して釘を打ち込む、またはビスをねじ込むなどの固定部材を使用することにより、壁パネルを面内水平方向に拘束したため、壁パネルの縦目地のない位置において、少なくとも2箇所において、帯板に対して釘を打ち込むなどという簡易な方法で、壁パネルの面内水平方向の拘束が可能である。また、釘を打ち込む場合で、釘頭は小さくして壁パネル内にほとんど打ち込む(フィニッシュネイル)ことが出来るようにすれば、壁パネルの外表面に釘頭などが露出しない、美観を備えた構造とすることができ、好ましい。特に、パネル横目地部の合じゃくり部などで釘頭の小さな釘を帯板に対して斜めに打ち込むことにより、釘頭が壁パネルの外表面に露出するのを完全に排除する(かくし釘)ことが出来る。また、フィニッシュネイルも、かくし釘も、固定部材であり、壁パネルを帯板に対して固定するが、薄板や躯体フレーム側までは、直接的に固定するものではない。
【0072】
ここでは、軸径が1mm〜2mm程度、釘頭径またはビス頭径が1.5mm〜4mm程度のものが用いられる。また、釘長さまたはビス長さは、帯板の厚さを貫通しない程度で、粘弾性体や薄板まで同時に拘束することが無いような長さとして、帯板の厚さ以下の先方を選択するのがよい。さらに、フィニッシュネイルの場合、釘頭径は2mm以下のものが好ましい。かくし釘の場合は、比較的大きな釘頭径でもよいが、釘頭径4mm以下が好ましい。
【0073】
ここに、釘頭の小さな釘には、面外方向の引抜耐力は期待する必要がなく、あくまで、帯板に対して壁パネルを面内水平方向に拘束するためだけのものであり、特段の大きな釘頭を必要としないものである。
【0074】
ただし、地震時の変形時も、面内水平方向の拘束力を発揮して粘弾性体に有効にエネルギー吸収させるためには、壁パネル寸法や胴縁間隔にも依存して、相応の釘の軸径や打ち込み長さが必要になる。壁パネル(厚さ12mm、幅455mmサイディング)を、455mm胴縁間隔の構造で振動試験を行った結果では、釘の軸径2.15mm、長さ38mmの釘を、一本の胴縁(帯板)に対して3本打ち込むことで、問題なく、有効に粘弾性体にエネルギー吸収させることが出来た。なお、ここでは、サイディング厚さが12mmなので、帯板への釘打ち込み長さは、26mm(38mm−12mm)であった。
【0075】
最後に、請求項14、請求項15、請求項16に係る建築物の制振構造の第7構成、第8構成、第9構成について説明する。請求項9〜13に係る建築物の制振構造の第4〜6構成は、壁パネルの長さ方向が水平になる横張りの場合に、適用することが出来るものであったが、一方、第7〜9構成は、壁パネルの長さ方向が鉛直になる縦張りの場合に、適用することが出来るものであり、本発明の制振構造の第1〜6構成とまったく同様の発明の効果を有するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0076】
図により本発明に係る建築物の制振構造および制振機能付き胴縁の実施形態を具体的に説明する。図1は本発明に係る制振機能付き胴縁の4実施例を用いた建築物の制振構造の水平断面を示す要部説明図である。
【0077】
また、図2は本発明に係る建築物の制振構造の第1実施例を示す立面および平面説明図、図3は本発明に係る建築物の制振構造の第1実施例を示す斜視説明図、図4は図3に示した第1実施例を示す斜視説明図から壁パネルを点線で省略して示した説明図、図5は第1実施例の制振機能付き胴縁部分を拡大して示した斜視説明図、図6は第1実施例の制振構造において地震時の動きを模式的に示した立面説明図である。
【0078】
図7は本発明に係る建築物の制振構造で、一本の躯体フレームに2本の制振機能付き胴縁を用いた第2実施例を示す斜視説明図である。
【0079】
また、図8は本発明に係る建築物の制振構造の第3実施例で、留付金具によって壁パネルを固定した場合の建築物の制振構造の水平断面を示す要部説明図、図9は本発明に係る建築物の制振構造の第3実施例を示す立面および平面説明図、図10は本発明に係る建築物の制振構造の第3実施例を示す斜視説明図、図11は図10に示した第3実施例を示す斜視説明図から壁パネルを点線で省略して示した説明図、図12は第3実施例の制振機能付き胴縁と留付金具による壁パネル上部の取付けを拡大して示した斜視説明図、図13は第3実施例の制振構造において地震時の動きを模式的に示した立面説明図である。
【0080】
さらに、図14は本発明に係る制振機能付き胴縁の2実施例を示す断面説明図、図15は本発明に係る薄板に所定寸法の貫通孔を設けた制振機能付き胴縁を用いた制振構造の帯板固定範囲部分を拡大して示した斜視説明図、図16は本発明に係る帯板の継ぎ目位置で帯板面を接合手段で繋いだ制振機能付き胴縁の3実施例を示す斜視説明図である。
【0081】
図1は、本発明に係る制振機能付き胴縁の4種類の実施例を用いた建築物の制振構造の水平断面を示す3つの要部説明図である。
【0082】
左上図では、躯体フレーム1の前面に制振機能付き胴縁3が、薄板3aから折り出されたツメ3fを躯体フレーム1に差し込んだ状態で固定されている。制振機能付き胴縁3は、躯体フレーム1側から順に、薄板3a、粘弾性体3b、帯板3cの3層が積層接着されている。帯板3cの前面には、壁パネル2がスクリュー釘5で、帯板3cの裏面あたりまで打ち込まれて固定されている。このように、スクリュー釘5が薄板3aまで打ち込まれないため、壁パネル2が固定された帯板3cは、躯体フレーム1に対して面内方向に回転可能な構造である。なお、ここでの帯板3cは、図2などで説明するように、所要長さで割付けされ、割付けされた帯板1枚ごとが躯体フレーム1に対して面内方向に回転するように構成されている。
【0083】
躯体フレーム1は、木造軸組構造の間柱の場合で、幅30mmである。薄板3aの厚みを1.5mm、粘弾性体3bの厚みを2mm、帯板3cの厚みを14.5mmとし、制振機能付き胴縁3の全体厚みを18mmとした。また、ツメ3fが出寸法を7mmとした。このツメ3fを設けたことにより、制振機能付き胴縁3を躯体フレーム1に打ち付ける簡単な作業での固定が可能になる。また、ツメ3fの出寸法を7mmとしたため、躯体フレームに2mm程度の反りがあっても、ツメ3fを躯体フレーム1に5mm差し込んだ状態で安定的な固定することが可能となる。
【0084】
なお、他の制振機能付き胴縁の構成として、薄板3aの厚みを、1mm、粘弾性体3bの厚みを2mm、帯板3cの厚みを30mmとし、制振機能付き胴縁3の全体厚みを33mmとすると、標準的な通気胴縁の厚み18mmよりも厚くなるが、壁パネルを、帯板に固定する際に、軸系2.15mm、長さ38mmなどの釘で固定することが可能で、釘の軸径や打ち込み長さを確保し、地震時の変形時も、面内水平方向の拘束力を発揮して粘弾性体に有効にエネルギー吸収させることが可能となる。
【0085】
一方、薄板3aの両側部には、粘弾性体3bの厚さ寸法とほぼ同じ寸法で、突起3eが設けられ、帯板3cの裏面に対して当設されている。突起3eと粘弾性体3bの間には隙間を確保してある。そのため、地震時に、躯体フレーム1に固定された薄板3aに対して、帯板3cが相対変位を生ずることによって、帯板3cと薄板3aの間に接着積層された粘弾性体3bが剪断変形する際に、粘弾性体3bが突起3eに接触して変形を妨げられることがないように、クリアランスを確保できており、安定したエネルギー吸収が期待できる。ここに、隙間寸法は、2mmとした。帯板3cの割付け長さを445mmとし、長さの中央部を中心に回転するとすると、回転長さ222.5mmに対して、1/100強の変形角に対応した隙間寸法である。隙間寸法は、想定される地震時の変形角に応じて定めることが可能で、隙間寸法を6mmとすれば、1/40強の変形角に対応した隙間寸法と出来る。
【0086】
また、薄板3aは、長さ方向の特定の位置に、面外拘束手段3gを設けることにより、壁パネル2を固定した帯板3cを、躯体フレーム1に対して面外方向に拘束して構成してある。しかし、面外拘束手段3gは、帯板3cが躯体フレーム1に対して面内方向に回転可能なように構成してある。この実施例では、面外拘束手段3gを薄板3aの一部を加工することにより、設けたが、帯板3cが躯体フレーム1に対して面内方向に回転可能なように構成しつつ、躯体フレーム1に対して面外方向に拘束できる方法であれば、これに限らない。
【0087】
このように、建築物の躯体フレーム1側と壁パネル2の間に制振機能付き胴縁3を介在させた構造であって、帯板3cが躯体フレーム1に対して面内方向に回転可能なように、かつ面外方向に拘束して構成したことが、本発明の特徴である。
【0088】
図1の右上図では、躯体フレーム1を、木造軸組構造の本柱の場合で、幅105mmである。左上図との違いは、制振機能付き胴縁3を幅広の90mmとし、左右の壁パネル2をスクリュー釘で固定したことである。さらに、面外拘束手段3gを設けず、その代わりに、アンカー部材4で割付けされた帯板3cの中央部1箇所を固定した。これにより、帯板3は、アンカー部材4を介して、躯体フレーム1に対して面外方向に拘束して構成し、かつ、アンカー部材4の位置を中心に、割付けされた帯板3cが躯体フレーム1に対して面内方向に回転可能となる。
【0089】
図1の右下図では、幅105mmの躯体フレーム1に対して、幅40mmの制振機能付き胴縁3を2つ配することで、左右の壁パネル2をスクリュー釘5で固定できるよう構成したものである。この実施例のようにすれば、間柱と本柱で共通の制振機能付き胴縁3とすることが出来、部品点数を減らすことが出来る。
【0090】
図1の左下図では、帯板3cの固定位置を、躯体フレーム1の幅中心から右側にずらし、躯体フレーム1の幅中心に向かって面外拘束手段3gを設けた。また、面外拘束手段3gと帯板3cの間に、木ねじ8が通る隙間を設け、さらに、その前面に、木ねじ8をねじ込むための孔7を設けることにより、薄板3aを躯体フレーム1に固定したものである。この実施例では、木ねじ8によって、機械的に薄板3aを直接、躯体フレーム1に固定できるので、長期の接着力確保を確保するのが容易と出来る。
【0091】
〔第1実施例〕
次に、図2〜図6において、建築物の制振構造の第1実施例について説明する。第1実施例は、木造軸組構造への適用の例であり、間柱に対しては、図1の右下図で示した幅40mmの制振機能付き胴縁3を、本柱に対しては、図1の右上図で示した幅90mmの制振機能付き胴縁3を採用している。
【0092】
第1実施例では、薄板3a、粘弾性体3b、帯板3cを接着積層した複数本の制振機能付き胴縁3を、互いに平行に、間柱と本柱に添うように鉛直に設けた。これに対して、壁パネル2は、長さ方向2cを水平方向とするように、横張りで、制振機能付き胴縁3の長手方向と壁パネル2の長さ方向2cが直交するように配し、壁パネル2をスクリュー釘5で帯板3cに固定している。
【0093】
帯板3cは、長さの中央一点を、アンカー部材4で躯体フレーム1側まで、面内・面外ともに固定した。ただし、帯板3cは、アンカー部材4を中心に、面内方向に回転することが可能である。壁パネル2は、スクリュー釘5で帯板3cに、さらに、アンカー部材4で帯板3cを躯体フレーム1側まで面外に固定したため、壁パネル2に作用する面外力に対して、粘弾性体3bや接着面を介さずとも、躯体フレーム1側に面外力を伝達することが可能となる。
【0094】
壁パネル2の幅寸法2aは455mmであり、帯板3cは、同寸法455mmで割付けし、割付け位置が壁パネル2の横目地に対して20mm上になるように配した。このように、壁パネル2の幅寸法2aと帯板3cの割付け寸法を合致させ、帯板3cの割付け位置と壁パネル2の幅端部位置を、略合致させたので、1枚の壁パネル2を、一本の制振機能付き胴縁3に対して、割付けされた帯板3c1枚のみに固定するのが、確実・容易になり、地震時に、壁パネル2と躯体フレーム1の間に相対変位が生じた際、壁パネル2に固定された帯板3cが躯体フレーム1側に固定された薄板3aに対して相対変位を生じることになり、帯板3cと薄板3aの間に積層接着された粘弾性体3bに剪断変形が生じ、粘弾性体3bに振動エネルギーが有効に伝達されるため、粘弾性体3bの内部摩擦によって制振効果を発揮することがことが出来る。
【0095】
図5では、制振機能付き胴縁3部分を拡大し、躯体フレーム1、薄板3a、粘弾性体3b、帯板3cを、各々、切断位置を変えて切断して示した説明図である。薄板3aに、躯体フレーム1側へ突出したツメ3fを設けたため、薄板3aのツメ3fを躯体フレーム1側に打ち込んで固定することが可能であり、接着剤による固定だけにたよることなく、施工現場で、容易に制振機能付き胴縁3の躯体フレーム1側への固定を確保することが出来る。
【0096】
また、躯体フレーム1や壁パネル2の精度が悪く、例えば、躯体フレーム1が面外方向に変形している場合などであっても、想定される変形量に対して、薄板3aのツメ3fの長さを定めておけば、粘弾性体3bの厚さを所定の寸法に管理した上で、制振機能付き胴縁3の躯体フレー1ム側へ固定することが出来る。ここでは、ツメ3fの長さを7mmとした。さらには、接着剤による固定を併用することにした。
【0097】
図6は、地震時の動きを模式的に示した立面説明図であって、躯体フレーム1が図中にDの矢印で示したように変形した場合で、層間変形角を極端に1/10程度として描いたものである。このように、躯体フレーム1、薄板3aは、層間変形に応じて転倒するが、帯板3cとそれに固定されている壁パネル2は、スライド変形し、その結果、薄板3aと帯板3cの間に相対変位が生じ、その間に積層接着された粘弾性体3bに、振動エネルギーが有効に伝達され、制振効果を高めることが出来る。
【0098】
また、図中の矢印Dのところに破線矢印で示したように、横張りで配した壁パネル1の幅寸法2aが455mmで、変形角を1/60とすると、幅寸法455mmに対応した躯体フレーム1の下がりは、壁パネル2が完全にスライドで動いたとして計算して、0.06mm程度であり、わずかである。そのため、帯板3cと帯板3cの割付け継ぎ目3dは、1mm以下の小さな寸法とした。もちろん、割付け継ぎ目3dをさらに大きな寸法としてもよい。また、ほとんど帯板3cと帯板3cを突きつける構成としても、帯板3cとそれに固定されている壁パネル2の変形を阻害するようなことはない。
【0099】
〔第2実施例〕
次に、図7において、建築物の制振構造の第2実施例について説明する。第2実施例も、木造軸組構造への適用の例であり、間柱・本柱ともに、図1の右下図で示した制振機能付き胴縁3を採用したもので、間柱と本柱で共通の制振機能付き胴縁3とすることが出来、部品点数を減らすことが出来る。
【0100】
また、図2〜図7で示した建築物の制振構造の第1および第2実施例では、制振機能付き胴縁3を直接躯体フレーム1に固定しているが、躯体フレーム1と制振機能付き胴縁3の間に、合板などの耐力面材を張った場合や、躯体フレーム1の室内側に内装用の石こうボードを張った場合にも、適用できる。
【0101】
さらに、明記はしていないが、躯体フレーム1と制振機能付き胴縁3の間に透湿防水シートを設けたり、壁パネル2の縦目地奥に目地ジョイナーやバックアップ材を設けて、その上にシーリング6を打つ構造であってよい。
【0102】
〔第3実施例〕
図8〜図13において、建築物の制振構造の第3実施例について説明する。第3実施例も、木造軸組構造への適用の例であるが、間柱(躯体フレーム1)に対しては、図8の左図で示した幅40mmの制振機能付き胴縁3を、本柱(躯体フレーム1)に対しては、図8の右図で示した幅90mmの制振機能付き胴縁3を配した上に、横目地内に収まる留付金具10を用いて壁パネル2の上下端部を、面外方向に対して拘束している。
【0103】
第3実施例では、薄板3a、粘弾性体3b、帯板3cを接着積層した複数本の制振機能付き胴縁3を、互いに平行に、間柱と本柱に添うように鉛直に設けた。帯板3は、壁パネル2の幅寸法2aと同寸法である455mmで割付けし、割付け位置は、壁パネル2の横目地位置から、約50mm上の位置で配置し、割付けされた帯板3cは、長さの中央からやや下よりの位置を、アンカー部材4で躯体フレーム1側まで、面内・面外ともに固定した。ただし、帯板3cは、アンカー部材4を中心に、面内方向に回転することが可能である。これに対して、壁パネル2は、長さ方向2cを水平方向とするように、横張りで、制振機能付き胴縁3の長手方向と壁パネル2の長さ方向2cが直交するように配し、壁パネル2の上端部(下端部)を、留付金具10を介して、面外方向に拘束し固定した。より詳しくは、図12に示すように、留付金具10は、上下に割付けされた2枚の帯板3c相互を面内水平方向に拘束しないよう、割付けされた帯板3cの上端部にのみタッピンビス9で、固定されると共に、留付金具10には、壁パネル面外拘束片10aが3つ設けられており、中央に配された壁パネル面外拘束片10aは、下向きに曲げられており、下側に配される壁パネル2の横目地の構造である合じゃくり2bに、また、左右に配された2つの壁パネル面外拘束片10aは、上向きに曲げられており、上側に配される壁パネル2(図示せず)の横目地の構造である合じゃくり2b(図示せず)に掛かることにより、壁パネル2を面外方向に拘束している。このように、留付金具10は、割付けされた帯板3cに固定されると共に、上下の壁パネル2を、面外方向に拘束しているが、面内水平方向には拘束しないように留められており、壁パネル2は、面内水平方向にスライドして変形が可能なように固定されている。留付金具10は、壁パネル2の上下端部で、横目地内に収まるため、壁パネル2の外表面からの釘打ち固定が不要であり、釘頭が露出しない、美観を備えた構造と出来る。
【0104】
壁パネル2は、留付金具10を介してタッピングビス9で帯板3cに、さらに、アンカー部材4で帯板3cを躯体フレーム1側まで面外に固定したため、壁パネル2に作用する面外力に対して、粘弾性体3bや接着面を介さずとも、躯体フレーム1側に面外力を伝達することが出来る。壁パネル2に作用する面外力は、壁パネル2の上下端で留付金具10を介して面外方向に拘束されているため、上下に荷重配分され、安定的に面外力を受け、タッピングビス9に荷重伝達出来る。
【0105】
また、本柱位置における壁パネル2の縦目地位置においては、壁パネル2の上拘束箇所として、割付けされた帯板3cの上端部から80mm程度下の位置と、壁パネル2の下拘束箇所として、割付けされた帯板3cの下端部から50mm程度上の位置で、帯板3cに、断面ハット状の拘束金物13を固定し、拘束部13aを壁パネル2の目地間に配するという簡易な構造で、壁パネル1を面内水平方向に拘束することが可能となった。第3実施例では、拘束金物13は、短い長さのものを上拘束箇所と下拘束箇所の2箇所に設けたが、割付けされた帯板3cの範囲内で長いものを連続して設けてもよい。これによって、壁パネル2の外表面からの釘打ち固定が不要であり、釘頭が露出しない、美観を備えた構造と出来る。
【0106】
第3実施例では、壁パネル2の縦目地部の拘束方法として、断面ハット型の拘束金物13を示したが、壁パネル2の縦目地を隙間を開けずに、隣接する壁パネル2をほぼ接触させて設ける場合など、板状の拘束片を縦目地間に差し込んで配することが出来るような拘束金物を帯板3cに設ける方法であってよい。また、上拘束箇所の他の例として、留付金具10の下方に拘束片が一体で設けられているものを用いてもよい。
【0107】
一方、間柱位置における壁パネル2の上拘束箇所として、横目地内の合じゃくり2bの位置で、かくし釘11を下向き約45度で、帯板3cに打ち込むことにより、帯板3cに対して、壁パネル2を面内水平方向に拘束した。このように、かくし釘11は、横目地内に収まるので、壁パネル2の外表面からの釘打ち固定が不要であり、釘頭が露出しない、美観を備えた構造と出来る。なお、かくし釘11は、面外耐力をさほど期待していないが、少なくとも面内水平方向の拘束力を発揮する必要があり、釘頭の径は3.7mm、釘頭の厚みを1.85mmとし、軸径1.65mm、長さ32mmとした。また、軸系2.15mm、長さ38mmの釘を使用すれば、地震時の変形時も、面内水平方向の拘束力を発揮して、粘弾性体により有効にエネルギー吸収させることが可能である。
【0108】
さらに、間柱位置における壁パネル2の下拘束箇所として、割付けされた帯板3cの下端部から50mm程度上の位置に、3本のフィニッシュネイル12を、壁パネル2に対して垂直に打ち込んだ。ここで、フィニッシュネイル12は、釘頭を小さな寸法としてあり、壁パネル2内にほとんど打ち込むことが出来るため、壁パネル2の外表面からの釘打ち固定が不要であり、釘頭が露出しない、美観を備えた構造と出来る。なお、フィニッシュネイル12は、面外耐力をさほど期待していないが、少なくとも面内水平方向の拘束力を発揮する必要があり、釘頭の径は1.9mm、釘頭の厚みを1.3mmとし、軸径1.05mm、長さ40mmとした。
【0109】
図13では、地震時の動きを模式的に示した立面説明図であって、躯体フレーム1が図中にDの矢印で示したように変形した場合で、層間変形角を極端に1/10程度として描いたものである。このように、躯体フレーム1、薄板3aは、層間変形に応じて転倒するが、帯板3cとそれに固定されている壁パネル2は、スライド変形し、その結果、薄板3aと帯板3cの間に相対変位が生じ、その間に積層接着された粘弾性体3bに、振動エネルギーが有効に伝達され、制振効果を高めることが出来る。壁パネル2は、縦目地部において、拘束金物13によって、また、縦目地のない位置においても、かくし釘11とフィニッシュネイル12によって、上拘束箇所と下拘束箇所を、帯板3cに面内水平方向に拘束しているため、一体でスライド変形で動くことが可能となる。これら、拘束金物13、かくし釘11、フィニッシュネイル12の面内水平方向の拘束手段は、いずれも簡易な方法であり、壁パネル2の外表面からの釘打ち固定が不要であり、釘頭が露出しない、美観を備えた構造と出来る。
【0110】
図14において、本発明に係る制振機能付き胴縁の2実施例について説明する。左図は、フラットな形状の薄板3aによって構成した制振機能付き胴縁3である。このように、粘弾性体3b自体の剛性によって粘弾性体3bの厚みを確保する構造であってよい。ここでは、薄板3aの厚みを0.8mm、粘弾性体3bの厚みを2mmとした。
【0111】
また、右図は、薄板3bとして、更に厚みの薄いの鉄板の両サイドを折り曲げて重ねたもので構成した制振機能付き胴縁3である。このように、両サイドを折り曲げて、薄板3bの幅中央だけより薄い厚みとすることにより、アンカー部材4で帯板3cを躯体フレーム1に固定する際に、薄板3aを貫通する抵抗を小さくすることが出来、施工の効率上、好ましい。
【0112】
図15において、帯板固定範囲3c’において薄板3aに所定寸法の貫通孔3a’を設けた制振機能付き胴縁3について説明する。このように、帯板固定範囲3c’において、薄板3aに所定寸法の貫通孔3a’を設けてあるので、アンカー部材4で帯板3cを躯体フレーム1に固定する際に、抵抗なく施工することが出来、好ましい。
【0113】
図16において、帯板3cの継ぎ目3dの位置で帯板面を接合手段で繋いだ制振機能付き胴縁の3実施例について説明する。左図は、継ぎ目3dの位置の周囲だけを局所的にテープ(接合手段)14で繋いだので、施工現場などで、制振機能付き胴縁3を運搬する際に、帯板3cの継ぎ目3dに曲げが作用した場合にも、薄板3aおよび粘弾性体3bから帯板3cの厚みだけ距離をおいたテープ(接合手段)14によって曲げに抵抗することが出来るため、制振機能付き胴縁3が折れ曲がるのを避けることが出来る。なお、図に示した制振機能付き胴縁3は、帯板3cの継ぎ目3dの位置は、2箇所しかない短いものであるが、長さ455mmの帯板3cを4つ割付けた長さ1820mmの制振機能付き胴縁3のような長尺になれば、曲げがかかりやすく、テープ(接合手段)14は、有効に働く。
【0114】
中央図は、テープ(接合手段)14を、帯板3cの継ぎ目3dの位置だけではなく、制振機能付き胴縁3の全長にわたって設けたものであり、テープ(接合手段)14による繋ぎ効果をより有効に働かせやすく、好ましい。
【0115】
右図は、かすがい(接合手段)15を、帯板3cの継ぎ目3dの位置に設けたもので、左図、中央図と同様に、テープ(接合手段)14による繋ぎ効果と同様の作用を発揮するものである。
【産業上の利用可能性】
【0116】
本発明の活用例として、建築物の制振構造およびその構造に用いる制振機能付き胴縁として好適に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0117】
【図1】本発明に係る制振機能付き胴縁の4種類の実施例を用いた建築物の制振構造の断面を示す要部説明図である。
【図2】本発明に係る建築物の制振構造の第1実施例を示す立面および平面説明図である。
【図3】本発明に係る建築物の制振構造の第1実施例を示す斜視説明図である。
【図4】図3に示した第1実施例を示す斜視説明図から壁パネルを点線で省略して示した説明図である。
【図5】第1実施例の制振機能付き胴縁部分を拡大して示した斜視説明図である。
【図6】第1実施例の制振構造において地震時の動きを模式的に示した立面説明図である。
【図7】本発明に係る建築物の制振構造で、一本の躯体フレームに2本の制振機能付き胴縁を用いた第2実施例を示す斜視説明図である。
【図8】本発明に係る建築物の制振構造の第3実施例で、留付金具によって壁パネルを固定した場合の建築物の制振構造の水平断面を示す要部説明図である。
【図9】本発明に係る建築物の制振構造の第3実施例を示す立面および平面説明図である。
【図10】本発明に係る建築物の制振構造の第3実施例を示す斜視説明図である。
【図11】図10に示した第3実施例を示す斜視説明図から壁パネルを点線で省略して示した説明図である。
【図12】第3実施例の制振機能付き胴縁と留付金具による壁パネル上部の取付けを拡大して示した斜視説明図である。
【図13】第3実施例の制振構造において地震時の動きを模式的に示した立面説明図である。
【図14】本発明に係る制振機能付き胴縁の2実施例を示す断面説明図である。
【図15】本発明に係る薄板に所定寸法の貫通孔を設けた制振機能付き胴縁を用いた制振構造の帯板固定範囲部分を拡大して示した斜視説明図である。
【図16】本発明に係る帯板の継ぎ目位置で帯板面を接合手段で繋いだ制振機能付き胴縁の3実施例を示す斜視説明図である。
【符号の説明】
【0118】
1…躯体フレーム、2…壁パネル、2a…幅寸法、2b…合じゃくり、2c…長さ方向、3…制振機能付き胴縁、3a…薄板、3a’…貫通孔、3b…粘弾性体、3c…帯板、3c’…帯板固定範囲、3d…割付け継ぎ目、3e…突起、3f…ツメ、3g…面外拘束手段、4…アンカー部材(面外拘束手段)、5…スクリュー釘(固定部材)、6…シーリング、7…孔、8…木ねじ、9…タッピングビス(固定部材)、10…留付金具、10a…壁パネル面外拘束片、11…かくし釘(固定部材)、12…フィニッシュネイル(固定部材)、13…拘束金物、13a…拘束部、14…テープ(接合手段)、15…かすがい(接合手段)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築物の躯体フレーム側と壁パネルの間に粘弾性体を介在させた構造において、
薄板、粘弾性体、帯板をこの順で積層接着した複数本の制振機能付き胴縁を、互いに平行に、薄板を躯体フレーム側として設けた構造であって、
前記制振機能付き胴縁の長手方向と前記壁パネルの長さ方向が直交するように配した壁パネルを、前記帯板に固定することにより、粘弾性体を介して間接的に前記薄板に対して固定した構造とし、前記帯板を所要長さで割付け、割付けた帯板1枚ごとが躯体フレームに対して面内方向に回転可能なように、かつ該帯板を躯体フレームに対して面外方向に拘束して構成したことを特徴とする建築物の制振構造。
【請求項2】
所要長さで割付けた前記帯板1枚に対して該長さの1/3以下の帯板固定範囲を、アンカー部材で直接的に躯体フレーム側に面内および面外の両方向に対して固定したことを特徴とする請求項1に記載の建築物の制振構造。
【請求項3】
1枚の壁パネルは、一本の制振機能付き胴縁に対して、所要長さで割付けた前記帯板1枚のみに固定されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の建築物の制振構造。
【請求項4】
薄板、粘弾性体、帯板をこの順で積層接着し、該帯板を所要長さで割付けて構成したことを特徴とする制振機能付き胴縁。
【請求項5】
薄板あるいは帯板の側部に粘弾性体側に向かって所要寸法の突起を設けたことを特徴とする請求項4に記載の制振機能付き胴縁。
【請求項6】
前記突起と粘弾性体の間に所要寸法の隙間を確保したことを特徴とする請求項5に記載の制振機能付き胴縁。
【請求項7】
薄板に、外部へ突出したツメを設けたことを特徴とする請求項4乃至6のいずれかに記載の制振機能付き胴縁。
【請求項8】
薄板と帯板を、粘弾性体とは別の面外拘束手段によって、面外方向に拘束したことを特徴とする請求項4乃至7のいずれかに記載の制振機能付き胴縁。
【請求項9】
前記帯板固定範囲において、薄板に所定寸法の貫通孔を設けたことを特徴とする請求項4乃至8のいずれかに記載の制振機能付き胴縁。
【請求項10】
所定長さで割り付けて構成した帯板の継ぎ目位置で、薄板および粘弾性体と反対側の帯板の面を接合手段で繋いだことを特徴とする請求項4乃至9のいずれかに記載の制振機能付き胴縁。
【請求項11】
建築物の躯体フレーム側と壁パネルの間に粘弾性体を介在させた構造において、
薄板、粘弾性体、帯板をこの順で積層接着した複数本の制振機能付き胴縁を、互いに平行に、薄板を躯体フレーム側として鉛直に設け、かつ、前記制振機能付き胴縁の長手方向と前記壁パネルの長さ方向が直交するように横張りで配した壁パネルを、壁パネルの幅寸法と略同一長さで割付けた前記帯板に、割付けた2枚の帯板相互を少なくとも面内水平方向に拘束しないように、壁パネルの上端部および/または下端部を、横目地内に収まる留付金具によって、面外方向に対して拘束することにより、粘弾性体を介して間接的に前記薄板に対して固定した構造であって、割付けた帯板1枚の上端部から中間部の範囲で、壁パネルの上拘束箇所を、かつ、該帯板の中間部から下端部の範囲で、壁パネルの下拘束箇所を、該帯板に対して、面内水平方向に拘束し、さらに、割付けた帯板1枚ごとが躯体フレームに対して面内方向に回転可能なように、かつ該帯板を躯体フレームに対して面外方向に拘束して構成したことを特徴とする建築物の制振構造。
【請求項12】
左右に隣接する壁パネルの縦目地において、前記帯板に固定した拘束金具の拘束部を、少なくとも上拘束箇所と下拘束箇所に配することにより、壁パネルを面内水平方向に拘束したことを特徴とする請求項11に記載の建築物の制振構造。
【請求項13】
壁パネルの少なくとも上拘束箇所と下拘束箇所において、帯板に対して釘を打ち込む、またはビスをねじ込むことにより、壁パネルを面内水平方向に拘束したことを特徴とする請求項11又は12に記載の建築物の制振構造。
【請求項14】
建築物の躯体フレーム側と壁パネルの間に粘弾性体を介在させた構造において、
薄板、粘弾性体、帯板をこの順で積層接着した複数本の制振機能付き胴縁を、互いに平行に、薄板を躯体フレーム側として水平に設け、かつ、前記制振機能付き胴縁の長手方向と前記壁パネルの長さ方向が直交するように縦張りで配した壁パネルを、壁パネルの幅寸法と略同一長さで割付けた前記帯板に、割付けた2枚の帯板相互を少なくとも面内鉛直方向に拘束しないように、壁パネルの右端部および/または左端部を、縦目地内に収まる留付金具によって、面外方向に対して拘束することにより、粘弾性体を介して間接的に前記薄板に対して固定した構造であって、割付けた帯板1枚の右端部から中間部の範囲で、壁パネルの右拘束箇所を、かつ、該帯板の中間部から下端部の範囲で、壁パネルの左拘束箇所を、該帯板に対して、面内鉛直方向に拘束し、さらに、割付けた帯板1枚ごとが躯体フレームに対して面内方向に回転可能なように、かつ該帯板を躯体フレームに対して面外方向に拘束して構成したことを特徴とする建築物の制振構造。
【請求項15】
上下に隣接する壁パネルの横目地において、前記帯板に固定した拘束金具の拘束部を、少なくとも右拘束箇所と左拘束箇所に配することにより、壁パネルを面内鉛直方向に拘束したことを特徴とする請求項14に記載の建築物の制振構造。
【請求項16】
壁パネルの少なくとも右拘束箇所と左拘束箇所において、帯板に対して釘を打ち込む、またはビスをねじ込むことにより、壁パネルを面内水平方向に拘束したことを特徴とする請求項14又は15に記載の建築物の制振構造。
【請求項1】
建築物の躯体フレーム側と壁パネルの間に粘弾性体を介在させた構造において、
薄板、粘弾性体、帯板をこの順で積層接着した複数本の制振機能付き胴縁を、互いに平行に、薄板を躯体フレーム側として設けた構造であって、
前記制振機能付き胴縁の長手方向と前記壁パネルの長さ方向が直交するように配した壁パネルを、前記帯板に固定することにより、粘弾性体を介して間接的に前記薄板に対して固定した構造とし、前記帯板を所要長さで割付け、割付けた帯板1枚ごとが躯体フレームに対して面内方向に回転可能なように、かつ該帯板を躯体フレームに対して面外方向に拘束して構成したことを特徴とする建築物の制振構造。
【請求項2】
所要長さで割付けた前記帯板1枚に対して該長さの1/3以下の帯板固定範囲を、アンカー部材で直接的に躯体フレーム側に面内および面外の両方向に対して固定したことを特徴とする請求項1に記載の建築物の制振構造。
【請求項3】
1枚の壁パネルは、一本の制振機能付き胴縁に対して、所要長さで割付けた前記帯板1枚のみに固定されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の建築物の制振構造。
【請求項4】
薄板、粘弾性体、帯板をこの順で積層接着し、該帯板を所要長さで割付けて構成したことを特徴とする制振機能付き胴縁。
【請求項5】
薄板あるいは帯板の側部に粘弾性体側に向かって所要寸法の突起を設けたことを特徴とする請求項4に記載の制振機能付き胴縁。
【請求項6】
前記突起と粘弾性体の間に所要寸法の隙間を確保したことを特徴とする請求項5に記載の制振機能付き胴縁。
【請求項7】
薄板に、外部へ突出したツメを設けたことを特徴とする請求項4乃至6のいずれかに記載の制振機能付き胴縁。
【請求項8】
薄板と帯板を、粘弾性体とは別の面外拘束手段によって、面外方向に拘束したことを特徴とする請求項4乃至7のいずれかに記載の制振機能付き胴縁。
【請求項9】
前記帯板固定範囲において、薄板に所定寸法の貫通孔を設けたことを特徴とする請求項4乃至8のいずれかに記載の制振機能付き胴縁。
【請求項10】
所定長さで割り付けて構成した帯板の継ぎ目位置で、薄板および粘弾性体と反対側の帯板の面を接合手段で繋いだことを特徴とする請求項4乃至9のいずれかに記載の制振機能付き胴縁。
【請求項11】
建築物の躯体フレーム側と壁パネルの間に粘弾性体を介在させた構造において、
薄板、粘弾性体、帯板をこの順で積層接着した複数本の制振機能付き胴縁を、互いに平行に、薄板を躯体フレーム側として鉛直に設け、かつ、前記制振機能付き胴縁の長手方向と前記壁パネルの長さ方向が直交するように横張りで配した壁パネルを、壁パネルの幅寸法と略同一長さで割付けた前記帯板に、割付けた2枚の帯板相互を少なくとも面内水平方向に拘束しないように、壁パネルの上端部および/または下端部を、横目地内に収まる留付金具によって、面外方向に対して拘束することにより、粘弾性体を介して間接的に前記薄板に対して固定した構造であって、割付けた帯板1枚の上端部から中間部の範囲で、壁パネルの上拘束箇所を、かつ、該帯板の中間部から下端部の範囲で、壁パネルの下拘束箇所を、該帯板に対して、面内水平方向に拘束し、さらに、割付けた帯板1枚ごとが躯体フレームに対して面内方向に回転可能なように、かつ該帯板を躯体フレームに対して面外方向に拘束して構成したことを特徴とする建築物の制振構造。
【請求項12】
左右に隣接する壁パネルの縦目地において、前記帯板に固定した拘束金具の拘束部を、少なくとも上拘束箇所と下拘束箇所に配することにより、壁パネルを面内水平方向に拘束したことを特徴とする請求項11に記載の建築物の制振構造。
【請求項13】
壁パネルの少なくとも上拘束箇所と下拘束箇所において、帯板に対して釘を打ち込む、またはビスをねじ込むことにより、壁パネルを面内水平方向に拘束したことを特徴とする請求項11又は12に記載の建築物の制振構造。
【請求項14】
建築物の躯体フレーム側と壁パネルの間に粘弾性体を介在させた構造において、
薄板、粘弾性体、帯板をこの順で積層接着した複数本の制振機能付き胴縁を、互いに平行に、薄板を躯体フレーム側として水平に設け、かつ、前記制振機能付き胴縁の長手方向と前記壁パネルの長さ方向が直交するように縦張りで配した壁パネルを、壁パネルの幅寸法と略同一長さで割付けた前記帯板に、割付けた2枚の帯板相互を少なくとも面内鉛直方向に拘束しないように、壁パネルの右端部および/または左端部を、縦目地内に収まる留付金具によって、面外方向に対して拘束することにより、粘弾性体を介して間接的に前記薄板に対して固定した構造であって、割付けた帯板1枚の右端部から中間部の範囲で、壁パネルの右拘束箇所を、かつ、該帯板の中間部から下端部の範囲で、壁パネルの左拘束箇所を、該帯板に対して、面内鉛直方向に拘束し、さらに、割付けた帯板1枚ごとが躯体フレームに対して面内方向に回転可能なように、かつ該帯板を躯体フレームに対して面外方向に拘束して構成したことを特徴とする建築物の制振構造。
【請求項15】
上下に隣接する壁パネルの横目地において、前記帯板に固定した拘束金具の拘束部を、少なくとも右拘束箇所と左拘束箇所に配することにより、壁パネルを面内鉛直方向に拘束したことを特徴とする請求項14に記載の建築物の制振構造。
【請求項16】
壁パネルの少なくとも右拘束箇所と左拘束箇所において、帯板に対して釘を打ち込む、またはビスをねじ込むことにより、壁パネルを面内水平方向に拘束したことを特徴とする請求項14又は15に記載の建築物の制振構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2008−19706(P2008−19706A)
【公開日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−157173(P2007−157173)
【出願日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【出願人】(390018717)旭化成建材株式会社 (249)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【出願人】(390018717)旭化成建材株式会社 (249)
【Fターム(参考)】
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