説明

建築用下地材

【課題】防耐火性および釘打ち性に優れ、釘の引抜強度が高く、かつ腐朽しにくい建築用下地材を提供する。
【解決手段】内殻11と、該内殻11の外周11aを被覆した外殻12とを備えた建築用下地材10であって、前記内殻11は、オレフィン系樹脂および/またはスチレン系樹脂を含む内殻用材料より成形され、前記外殻12は、オレフィン系樹脂10〜30質量部と、木粉70〜90質量部(ただし、オレフィン系樹脂と木粉の合計を100質量部とする)とを含む外殻用材料より成形され、かつ厚さが2mm以上であることを特徴とする建築用下地材10。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の胴縁や瓦桟として好適な建築用下地材に関する。
【背景技術】
【0002】
住宅等の建物には、壁面に外装材を固定するための胴縁や、屋根に瓦を固定するための瓦桟などの建築用下地材が用いられている。胴縁は柱や間柱に、瓦桟は野地板や垂木に、釘を用いて固定される。従って、建築用下地材には、釘が打ちやすい(釘打ち性)、打たれた釘が引き抜かれにくい(釘の引抜強度が高い)といった特性が求められる。
【0003】
従来、建築用下地材としては木製の下地材が使用されている。木製の下地材は釘が打ちやすく、適度な釘の引抜強度を有すると共に、加工性にも優れる。また、火事が起きた場合、木製の下地材は燃えるものの炭化して残るため、下地材よりも先への延焼を防ぐことができる。このように、木製の下地材は防耐火性に優れることから、特に外壁用の胴縁として好適に用いられる。
その一方で、木製の下地材は吸水性を有するため腐朽することがあった。しかし、胴縁や瓦桟は一旦施工すると交換が容易ではないため、下地材が腐朽してもそのまま放置するか、大掛かりな交換工事が必要であった。
【0004】
近年、木製の下地材に代わる下地材が数多く提案されている。
例えば特許文献1には、ポリオレフィン系樹脂やポリスチレン系樹脂などの樹脂製の下地材が開示されている。樹脂製の下地材は、木製の下地材に比べて腐朽しにくく、形状安定性に優れる。しかも、木製の下地材と同等の釘打ち性や釘の引抜強度をも有する。
また、特許文献2には、繊維混入セメントなどの材料で形成された胴縁が開示されている。特許文献2に記載のように無機系の材料で形成された下地材は、不燃性であるため防耐火性に優れ、特に外壁用の胴縁として好適である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−371679号公報
【特許文献2】特開2000−234404号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載のように樹脂製の下地材は、防耐火性が必ずしも十分ではない。
また、特許文献2に記載のように無機系の材料で形成された下地材は釘の保持力に欠けるため、釘が打ちにくく、また釘打ちできても容易に引き抜かれやすかった。そのため、このような下地材は、使用を制限されることがあった。
【0007】
本発明は、かかる従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、防耐火性および釘打ち性に優れ、釘の引抜強度が高く、かつ腐朽しにくい建築用下地材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の建築用下地材は、内殻と、該内殻の外周を被覆した外殻とを備えた建築用下地材であって、前記内殻は、オレフィン系樹脂および/またはスチレン系樹脂を含む内殻用材料より成形され、前記外殻は、オレフィン系樹脂10〜30質量部と、木粉70〜90質量部(ただし、オレフィン系樹脂と木粉の合計を100質量部とする)とを含む外殻用材料より成形され、かつ厚さが2mm以上であることを特徴とする。
また、前記木粉は、平均粒子径が0.01〜3.00mmであることが好ましい。
さらに、前記木粉は、圧縮処理され、かさ比重が0.20以上であることが好ましい。
また、前記木粉は、ペレット状に圧縮処理されていることが好ましい。
さらに、前記外殻用材料は、オレフィン系樹脂と木粉の合計100質量部に対して、相溶化剤を1.0〜20.0質量部、滑剤を0.5〜5.0質量部含有することが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、防耐火性および釘打ち性に優れ、釘の引抜強度が高く、かつ腐朽しにくい建築用下地材を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の建築用下地材の一例を示す斜視図である。
【図2】本発明の建築用下地材を胴縁として用いた壁構造の一例を示す斜視図である。
【図3】図2に示す壁構造のA−A’に沿う部分断面図である。
【図4】図2に示す壁構造のB−B’に沿う断面図である。
【図5】本発明の建築用下地材を胴縁として用いた壁構造の他の例を示す斜視図である。
【図6】図5に示す壁構造のC−C’に沿う断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明について、図面を参照して説明する。
図1は、本発明の建築用下地材(以下、単に「下地材」という。)の一例を示す斜視図である。この例の下地材10は、内殻11と、内殻11の外周11aを被覆した外殻12とを備えている。
【0012】
<内殻>
内殻11は、オレフィン系樹脂および/またはスチレン系樹脂を含む内殻用材料より成形される。
オレフィン系樹脂としては、例えば低密度ポリエチレン(LDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリプロピレン(PP)、エチレンとα−オレフィン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリロニトリル共重合体、アイオノマーなどが挙げられる。
スチレン系樹脂としては、例えばポリスチレン(PS)、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS)などが挙げられる。
また、これらスチレン系樹脂の耐衝撃性向上を目的として、衝撃改良剤としてスチレン系エラストマーを併用してもよい。スチレン系エラストマーとしては、例えばスチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)、スチレン−エチレン/ブチレン−スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン−エチレン/プロピレン−スチレンブロック共重合体(SEPS)などが挙げられる。
これらの中でも、LDPE、HDPE、PS,スチレン系エラストマーが好ましく、特に後述する外殻12との密着性に優れる点で、LDPE、HDPEが好ましい。
【0013】
オレフィン系樹脂やスチレン系樹脂としては、市販品を用いることができる。例えばLDPEとして旭化成ケミカルズ株式会社製の「サンテックM2206」;HDPEとして株式会社プライムポリマー製の「ハイゼックス5000H」;PSとしてPSジャパン株式会社製の「G9305」;スチレン系エラストマーとしてJSR株式会社製の「TR2003」などが挙げられる。
【0014】
内殻用材料は、上述したオレフィン系樹脂および/またはスチレン系樹脂(以下、これらを「樹脂成分」という場合がある。)以外にも、必要に応じて顔料、熱老化防止剤、帯電防止剤、難燃剤、防カビ剤、充填剤などの添加剤を含有してもよい。
【0015】
内殻11は、上述した内殻用材料を押出成形して得られる。その際は、内殻用材料に発泡剤を添加して押出発泡してもよい。
発泡剤としては、例えば重曹(炭酸水素ナトリウム)などの無機系発泡剤;アゾジカルボンアミド等のアゾ化合物系発泡剤、オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジン等のスルホニルヒドラジド化合物系発泡剤、ジニトロペンタメチレンテトラミン等のニトロソ化合物系発泡剤などの有機系発泡剤が挙げられる。
発泡剤の配合量は、樹脂成分100質量部に対して0.1〜5.0質量部が好ましく、0.3〜2.0質量部がより好ましい。
【0016】
内殻11が発泡体である場合、発泡倍率は、1.1〜8.0倍が好ましく、1.4〜5.0倍がより好ましい。発泡倍率が1.1倍以上であれば、下地材10を軽量化できる。一方、発泡倍率が8.0倍以下であれば、十分な強度を確保できると共に、釘打ち性や釘の引抜強度などの特性を良好に維持できる。
【0017】
内殻11の形状は特に制限されず、下地材10の用途に応じた形状とすればよい。例えば下地材10を胴縁や瓦桟として使用する場合は、柱や野地板などとの接触面積を確保できる形状が好ましく、断面が矩形の棒状が好ましい。また、他の用途によっては、断面が円や多角形の棒状であってもよい。
【0018】
内殻11の形状が、断面が矩形の棒状である場合、その大きさについては特に制限されず、下地材10の用途に応じて適宜決定されるが、通常、幅11wは41〜176mm程度でり、厚さ11tは11〜41mm程度である。
また、内殻11の長手方向の長さ11dについても特に制限されず、下地材10の用途や取付箇所に応じて適宜設定すればよい。
【0019】
<外殻>
外殻12は、オレフィン系樹脂と木粉とを含む外殻用材料より成形される。
オレフィン系樹脂としては、LDPE、HDPE、PP、エチレンとα−オレフィン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリロニトリル共重合体、アイオノマーなどが挙げられる。
中でも、LDPE、HDPE、PPが好ましく、特に混練性に優れ、かつ下地材10を低温で釘打ちした際に割れが発生しにくい点で、LDPE、HDPEが好ましい。また、内殻11にオレフィン系樹脂が含まれる場合、内殻11と外殻12との密着性が向上し、下地材10の成形時の温度を均一に設定しやすい点で、内殻11に含まれるオレフィン系樹脂と同じ種類の樹脂を用いるのが好ましい。
【0020】
また、オレフィン系樹脂としては、メルトマスフローレイト(MFR)が5.0〜30.0g/10分の樹脂を用いるのが好ましい。MFRが5.0g/10分以上であれば、混練性がより向上する。一方、MFRが30.0g/10分以下であれば、引張伸率の低下を抑制できる。
このようなオレフィン系樹脂としては、例えばLDPEとして旭化成ケミカルズ株式会社製の「サンテックL6810」;HDPEとして株式会社プライムポリマー製の「ハイゼックス1300J」;PPとして株式会社プライムポリマー製の「プライムポリプロJ830HV」などが挙げられる。
なお、MRFは、JIS K 7210に準拠し、LDPEやHDPEの場合は温度190℃、荷重2.16kgの条件で、PPの場合は温度230℃、荷重2.16kgの条件で測定される値である。
【0021】
木粉としては、例えば針葉樹、広葉樹、ラワン材等の任意の木材をボールミルなどで粉砕して粉末化したものが挙げられる。また、製材の際に副生する鋸屑や鉋屑、廃木材などを粉末化して用いてもよい。
【0022】
木粉は、平均粒子径が0.01〜3.00mmであることが好ましく、0.10〜1.00mmであることがより好ましい。平均粒子径が0.01mm以上であれば、分散性が向上する。一方、平均粒子径が3.00mm以下であれば、吸水性や表面状態が良好となる。
なお、木粉の平均粒子径は、任意に選択した20個の木粉について、電子顕微鏡を用いて測定される最長径の平均値である。
【0023】
また、木粉は、圧縮処理され、かさ比重が0.20以上であることが好ましい。
圧縮処理される前の木粉は、通常、かさ比重が0.10〜0.15程度であり、下地材10の成形時に木粉が外殻12の表面に露出するなどして成形性が低下することがあった。
圧縮処理され、かさ比重が0.20以上になると、下地材10の成形時における木粉の分散性が向上し、外殻12内に均一に分散しやすくなる。木粉が外殻12内に均一に分散していると、詳しくは後述するが、下地材10が燃焼したときに偏りがなく、下地材10の表面に炭化層が均一に形成される。また、燃焼後の下地材10の保形性も良好となる。さらに、木粉を圧縮処理すると木粉内部の導管が縮小されるため、下地材10の吸水性が低下しやすくなり、下地材10がより腐朽しにくくなる。
【0024】
木粉を圧縮処理する方法としては、例えばかさ比重が0.20以上になるように圧縮機を用いて圧縮処理する方法が挙げられる。
木粉を圧縮する際は、ペレット状に圧縮するのが好ましい。ペレット状の木粉は加工しやすく、かつ乾燥しやすい。木粉は、通常、乾燥させてから上述したオレフィン系樹脂と混合されるが、乾燥しやすいと木粉の乾燥時間を短縮できるので、作業性がより向上する。木粉をペレット状に圧縮する場合、断面の直径が2〜8mm、長さが2〜40mmになるように圧縮するのが好ましい。
なお、木粉のかさ比重は、JIS K 7365により測定される値である。
【0025】
外殻用材料は、上述したオレフィン系樹脂を10〜30質量部、木粉を70〜90質量部含有する(ただし、オレフィン系樹脂と木粉の合計を100質量部とする)。オレフィン系樹脂の含有量が10質量部以上、木粉の含有量が90質量部以下であれば、外殻12中の木粉の割合が多くなりすぎず、下地材10の吸水性がより低下し、腐朽しにくくなる。また、釘の引抜強度の高い下地材10が得られやすくなる。
ところで、本発明の下地材10は、上述した内殻11の外周11aを外殻12が被覆した構造となっているので、下地材10が燃焼すると外側に位置する外殻12から燃える。外殻12が燃えると木粉が炭化して、燃えた部分に相当する箇所の下地材10の表面に炭化層が形成され、それ以上の延焼(すなわち、炭化層よりも内側の延焼)を防ぐことができ、下地材10としての形状を保持し、優れた防耐火性を発揮する。オレフィン系樹脂の含有量が30質量部以下、木粉の含有量が70質量部以上であれば、外殻12中の木粉の割合を十分に確保できるので、下地材10が燃焼したときに燃焼した部分の表面に炭化層が形成されやすく、優れた防耐火性を発揮できる。
オレフィン系樹脂の含有量は15質量部以上が好ましく、20質量部以上がより好ましい。また、30質量部未満が好ましく、25質量部以下がより好ましい。一方、木粉の含有量は70質量部を超えるのが好ましく、75質量部以上がより好ましい。また、85質量部以下が好ましく、80質量部以下がより好ましい。
【0026】
外殻用材料は、相溶化剤や滑剤を含有するのが好ましい。
相溶化剤としては、例えば変性ポリエチレン、マレイン化ポリプロピレン、SEBS、無水マレイン酸、エチレングリシジルメタクリレート(EGMA)、変性エチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)などが挙げられる。
相溶化剤の含有量は、外殻用材料に含まれるオレフィン系樹脂と木粉の合計100質量部に対して、1.0〜20.0質量部が好ましく、2.0〜8.0質量部がより好ましい。相溶化剤の含有量が1.0質量部以上であれば、下地材10の吸水性がより低下し、腐朽しにくくなる。一方、相溶化剤の含有量が20.0質量部以下であれば、防耐火性を良好に維持できる。
【0027】
滑剤としては、例えば脂肪酸エステル、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸エステル、アマイドワックス、ステアリン酸、水酸化ステアリン酸、長鎖脂肪酸エステル、脂肪酸エステル、オリゴマー脂肪酸エステル、脂肪酸アミド、モンタン、ポリエチレン、酸化ポリエチレン、パラフィンなどが挙げられる。
滑剤の含有量は、外殻用材料に含まれるオレフィン系樹脂と木粉の合計100質量部に対して、0.5〜5.0質量部が好ましく、0.5〜2.0質量部がより好ましい。滑剤の含有量が0.5質量部以上であれば、外殻12を押出成形する際に金型との密着性が低下しやすく、成形性が向上する。一方、滑剤の含有量が5.0質量部以下であれば、木粉の分散性を維持できる。
【0028】
外殻用材料は、上述したオレフィン系樹脂、木粉、相溶化剤および滑剤以外にも、必要に応じて顔料、熱老化防止剤、帯電防止剤、難燃剤、防カビ剤、充填剤などの添加剤を含有してもよい。
【0029】
外殻12は、内殻11の形状に合わせて内殻11の外周11aを被覆する。その厚さ12tは2mm以上であり、3mm以上が好ましい。外殻12の厚さ12tが2mm以上であれば、下地材10が燃焼したときに、燃焼した部分の表面に十分な厚さ(具体的には0.5〜2.0mm)の炭化層が形成されるので、炭化層より内側の延焼を抑制できる。
外殻12は、2mm以上の厚さで内殻11の外周11aを被覆していれば、外殻12の厚さ12tは均一であっても不均一であってもよいが、胴縁や瓦桟を壁面や屋根に固定しやすい点で、外殻12の厚さ12tは均一であることが好ましい。
なお、外殻12の厚さ12tの上限値については、7mm以下が好ましく、5mm以下がより好ましい。外殻12の厚さ12tが7mm以下であれば、下地材10を釘打ちした際に割れが発生しにくい。
【0030】
<下地材の製造>
下地材10は、例えば以下のようにして製造できる。
まず、上述した内殻用材料を第一の押出機に投入する。別途、オレフィン系樹脂、木粉および必要に応じて相溶化剤、滑剤、添加剤などを含む外殻用材料を調製し、これを第二の押出機に投入する。
ついで、第一および第二の押出機内の樹脂の温度が130〜170℃になるように調整する。そして、第一の押出機にて所望の形状に押出成形された内殻11の外周11aを、第二の押出機にて押出成形された外殻12で被覆するように、内殻用材料および外殻用材料を共押出し、下地材10を得る。
【0031】
<下地材>
このようにして得られた下地材10の大きさについては特に制限されず、下地材10の用途に応じて適宜決定されるが、例えば内殻11の形状が、断面が矩形の棒状である場合、幅10wが45〜180mm程度であり、厚さ10tは15〜45mm程度である。
また、下地材10の長手方向の長さ10dは、内殻11の長さ11dに一致し、下地材10の用途や取付箇所に応じて適宜設定される。
【0032】
下地材10は、上述したように、燃焼すると外殻12が燃えて木粉が炭化し、燃焼した部分の表面に炭化層13が形成される。その厚さは0.5〜2.0mmである。下地材10の燃焼により形成される炭化層13の厚さが0.2mm以上であれば、炭化層よりも内側の延焼を効果的に抑制でき、下地材10としての形状を保持し、優れた防耐火性を発揮する。
なお、下地材10は、外殻12が燃えて炭化層がある程度形成されると、それ以上の延焼が抑制されるので、2.0mmを超える厚さの炭化層は形成されにくい。
【0033】
また、下地材10は、450N以上の釘の引抜強度を有する。従って、打たれた釘が引き抜かれにくい。
なお、釘の引抜強度は、以下のようにして測定される。
まず、下地材10を温度23℃、湿度50%の雰囲気下に12時間以上保管する。
ついで、ハンマー手打ちにて、下地材10の中央部に釘打ちし、直後に速度2mm/分にて釘を引き抜いたときの最大荷重点を釘の引抜強度とする。
【0034】
以上説明した本発明の下地材は、上述した内殻と外殻とを備える。
内殻は樹脂成分を主成分としているため、本発明の下地材は、木製の下地材に比べて腐朽しにくく、かつ木製の下地材と同等の釘打ち性や釘の引抜強度を有する。
また、内殻の外周は外殻で被覆されているので、下地材が燃焼しても、外殻のうち燃えた部分の表面に炭化層が形成されるので、それ以上の延焼を抑制でき、優れた防耐火性を発揮できる。具体的には、本発明の下地材を外壁に使用して45分間燃やし続けた際に、耐火性を維持できると共に、屋外温度895℃に対し、屋内温度を平均160℃以下、最高温度を200℃以下に保つことができる。
【0035】
本発明の下地材は、防耐火性に優れることから、建築基準法施工令第107条の2(準耐火構造)、および建築基準法施工令第108条(防火構造)に準拠した外壁や屋根構造、具体的には胴縁や瓦桟としての使用に適しているが、中でも、防耐火性に優れることから胴縁として特に好適である。
【0036】
図2は、本発明の下地材を胴縁(縦胴縁)として用いた壁構造の一例を示す斜視図であり、図3は図2に示す壁構造をA−A’線にて切断したときの部分断面図であり、図4は図2に示す壁構造をB−B’にて切断したときの断面図である。
この例の壁構造100は、土台20上に設置された柱31、および間柱32の片側に石膏ボード40が、他方の側に防水透湿シート50が貼着し、石膏ボード40と防水透湿シート50の間にグラスウール等からなる断熱材60が充填されている。そして、防水透湿シート50側の柱31および間柱32に、本発明の下地材(胴縁)10を介して外装材70が固定されている。なお、外装材70、70間は目地部71である。
【0037】
壁構造100は、本発明の下地材10を胴縁として用いているので、外装材70を柱31や間柱32に固定する際に釘打ちしやすい。また、下地材10は釘の引抜強度が高いので、釘が引き抜かれにくく、外装材70を柱31や間柱32に強固に固定できる。さらに、下地材10は優れた防耐火性を有するので、出火しても下地材10の外殻のうち燃えた部分の表面に炭化層が形成されるので、それ以上の延焼を抑制でき、その間に消火することが可能である。
【0038】
また、図5、6に、本発明の下地材を胴縁(横胴縁)として用いた壁構造の他の例を示す。図5は、壁構造の他の例を示す斜視図であり、図6は図5に示す壁構造をC−C’にて切断したときの断面図である。なお、図5、6において、図2と同じ構成要素には同じ符号を付して、その説明を省略する。
図5、6に示す壁構造200が、図2〜4に示す壁構造100と異なる点は、壁構造100の場合は外装材70を横張りしているのに対し、壁構造200の場合は外装材70を縦張りしている点である。すなわち、図2〜4に示す壁構造100の場合、下地材10の長手方向が柱31および間柱32の長手方向と平行になるように、かつ外装材70の長手方向が柱31および間柱32の長手方向と直交するように、下地材10を介して外装材70が柱31および間柱32に固定されている。一方、図5、6に示す壁構造200の場合、下地材10の長手方向が柱31および間柱32の長手方向と直交するように、すなわち、下地材10が柱31および間柱32を掛け渡すように、かつ外装材70の長手方向が柱31および間柱32の長手方向と平行になるように、下地材10を介して外装材70が柱31および間柱32に固定されている。
【0039】
壁構造200の場合、柱31および間柱32を掛け渡すように配置された下地材10に沿って、外装材70を釘打ちする。このような構造においては、柱や間柱の位置ではこれらが支えとなるので下地材には負荷がかかりにくいが、柱と間柱の間では支えとなるものがないため下地材に負荷がかかりやすい。そのため、柱と間柱の間で外装材を下地材に釘打ちしたときに、下地材が硬いと折れることがあった。また、柔らかい下地材を用いれば、釘打ちの際に折れるおそれはないが、柱と間柱の間は支えがないので撓むことがあった。
しかし、本発明の下地材10は釘打ち性に優れるので、図5に示すように柱31と間柱32の間で外装材70を下地材10に釘打ちしても、下地材10が折れることなく容易に外装材70を固定できる。また、下地材10は外殻と内殻の2重構造となっているので、適度な強度と硬さを有し、柱31および間柱32を掛け渡すように配置しても撓みにくい。
よって、本発明の下地材は、縦胴縁および横胴縁のどちらにも好適に使用できる。
【実施例】
【0040】
以下、本発明について実施例を挙げて具体的に説明する。ただし、本発明はこれらに限定されるものではない。
各実施例および比較例の下地材を構成する内殻および外殻に用いた材料は、以下の通りである。
【0041】
[内殻]
・LDPE−A:低密度ポリエチレン(旭化成ケミカルズ株式会社製、「サンテックM2206」)。
・HDPE−A:高密度ポリエチレン(株式会社プライムポリマー製、「ハイゼックス5000H」)。
・PS:ポリスチレン(PSジャパン株式会社製、「G9305」)。
・スチレン系エラストマー:スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(JSR株式会社製、「TR2003」)。
・発泡剤:炭酸水素ナトリウム(日本ベーリンガーインゲルハイム株式会社製、「ハイドロセロールBIT」)。
【0042】
[外殻]
・LDPE−B:低密度ポリエチレン(旭化成ケミカルズ株式会社製、「サンテックL6810」、MFR:11g/10分)。
・HDPE−B:高密度ポリエチレン(株式会社プライムポリマー製、「ハイゼックス1300J」、MFR:12g/10分)。
・PP:ポリプロピレン(株式会社プライムポリマー製、「プライムポリプロJ830HV」、MFR:30.0g/10分)。
・木粉A:圧縮処理された木粉(平均粒子径:1.0mm、かさ比重:0.290)。
・木粉B:非圧縮の木粉(平均粒子径:2.0mm、かさ比重:0.129)。
・木粉C:非圧縮の木粉(平均粒子径:0.4mm、かさ比重:0.135)。
・相溶化剤A:変性ポリエチレン(三井化学株式会社製、「タフマーMP0620」)。
・相溶化剤B:マレイン化ポリプロピレン(三井化学株式会社製、「アドマーQE800」)。
・滑剤:脂肪酸エステル(ハネウェルジャパン株式会社製、「OPTIPAK111」)。
【0043】
[実施例1]
<下地材の作製>
表1に示す配合組成(質量部)に従って各種材料を混合し、内殻用材料および外殻用材料を調製した。
ついで、内殻用材料を第一の押出機に、外殻用材料を第二の押出機にそれぞれ投入し、第一の押出機にて矩形状(厚さ7mm、幅37mm、長さ450mm)に押出成形された内殻の外周を、第二の押出機にて押出成形された厚さ4mmの外殻で被覆するように、内殻用材料および外殻用材料を共押出し、図1に示す下地材10を得た。得られた下地材は、内殻の外周を外殻が被覆し、厚さ10tが15mm、幅10wが45mm、長さ10dが450mmの矩形状であった。
【0044】
<評価>
(防耐火性の評価)
ブンゼンバーナーを用い、高さ130mmの炎の上部から75mm下の位置に、下地材を30秒間設置し、燃焼試験を行った。
燃焼試験後の下地材の延焼の程度(燃焼した部分の大きさ(最長の長さ)、および下地材の表面から燃焼した部分までの深さを測定し、これを下地材の防耐火性の評価とした。結果を表1に示す。
なお、燃焼試験後も燃え続け、延焼の程度を測定することが不可能な場合を「×」として評価した。
【0045】
(釘の引抜強度の測定)
釘の引抜強度の測定には、ステンレスリング釘(「JKR−640」、直径2.5mm、長さ43mm)を使用した。
下地材を長さ50mmに切断し、これを温度23℃、湿度50%の雰囲気下に12時間以上保管した。
保管後、ハンマー手打ちにて下地材の中央部に、サイディング厚み(14mm)分を残して釘打ちした。釘打ち直後に速度2mm/分にて釘を引き抜いたときの最大荷重点を釘の引抜強度とした。結果を表1に示す。
【0046】
(釘打ち性の評価:−10℃)
下地材を−10℃の環境下に4時間放置した後、取り出し、直径2.3mmの釘を打ち込んだときの状態を目視にて観察し、以下の基準にて評価した。結果を表1に示す。
○:割れが発生していない。
×:割れが発生した。
【0047】
(釘打ち性の評価:間柱間)
455mmの間隔を設けた間柱間に下地材を掛け渡し、その上に窯業サイディングを設置した。該窯業サイディングの上から、下地材の中央部に直径2.3mmの釘を打ち込んだときの打ち込み具合を以下の基準にて評価した。結果を表1に示す。
○:下地材が折れることなく釘打ちできた。
×:下地材が折れた。
【0048】
(吸水性の評価)
下地材を温度80℃の条件で2日間乾燥させた後、重さを測定し、これを初期質量とした。
ついで、乾燥後の下地材を水中に浸漬して3日間放置した。浸漬後、下地材の表面に付着した水分を布で拭き取ってから重さを測定し、これを浸漬後質量とした。下記式(1)より質量増加率(%)を求め、これを吸水性の評価とした。結果を表1に示す。
質量増加率(%)=(浸漬後質量−初期質量)/初期質量×100 ・・・(1)
【0049】
(成形性の評価)
下地材の外観を目視にて観察し、外殻中の木粉の分散状態を以下の基準にて評価した。結果を表1に示す。
○:木粉が表面に露出することなく、均一に分散している。
△:木粉が表面に露出しているが、均一に分散している。
×:木粉が表面に露出し、かつばらついている(偏在している)。
【0050】
[実施例2〜9]
内殻および外殻の配合組成(質量部)を表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして下地材を作製し、各評価を行った。結果を表1に示す。
なお、実施例3、4については、内殻用材料に発泡剤を混合し、表1に示す発泡倍率にて押出発泡して内殻を成形した。
【0051】
[比較例1]
厚さが15mm、幅が45mm、長さが450mmの大きさになるように木材を切り出し、これを下地材とした。この下地材について、実施例1と同様にして各評価を行った。結果を表2に示す。
【0052】
[比較例2]
表2に示す配合組成(質量部)に従って外殻用材料を調製し、これを押出機にて矩形状(厚さ15mm、幅45mm、長さ450mm)になるように押出成形して下地材を作製した。得られた下地材について、実施例1と同様にして各評価を行った。結果を表2に示す。
【0053】
[比較例3〜5]
内殻および外殻の配合組成(質量部)と、外殻の厚さを表2に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして下地材を作製し、各評価を行った。結果を表2に示す。
【0054】
【表1】

【0055】
【表2】

【0056】
表1から明らかなように、各実施例で得られた下地材は、防耐火性および釘打ち性に優れ、釘の引抜強度が高かった。また、吸水性の評価による質量増加率が低く、腐朽しにくいことが示唆された。特に、相溶化剤を含む実施例1〜8で得られた下地材は、質量増加率が低かった。
さらに、圧縮処理された木粉を用いた実施例1〜4、7〜9の下地材は、木粉が表面に露出することなく外殻中で均一に分散し、成形性に優れていた。
【0057】
一方、表2から明らかなように、比較例1の下地材(木材)は、各実施例で得られた下地材に比べて延焼が進行しやすかった。また、吸水性の評価による質量増加率が55%と極端に高く、腐朽しやすいことが示唆された。
内殻を成形せず、外殻のみで構成される比較例2の下地材は、釘打ち性に劣っていた。
外殻用材料中のオレフィン系樹脂の割合が50質量部以上と多く、木粉の割合が少ない比較例3、4の下地材は、各実施例で得られた下地材に比べて延焼が進行しやすかった。特に、オレフィン系樹脂の割合が80質量部、木粉の割合が20質量部である比較例4の下地材は、燃焼試験後も燃え続け、防耐火性に著しく劣っていた。
外殻の厚さが1mmである比較例5の下地材は、燃焼試験において燃焼した部分の大きさ(最長の長さ)は各実施例で得られた下地材に比べて若干大きい程度であったが、外殻の厚さが不十分であったため、内殻にまで延焼が進行した。その結果、燃え終わった後の下地材は変形し、形状を保持できなかった。また、内殻と外殻が剥がれていた。
【符号の説明】
【0058】
10:建築用下地材
11:内殻
11a:外周
12:外殻

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内殻と、該内殻の外周を被覆した外殻とを備えた建築用下地材であって、
前記内殻は、オレフィン系樹脂および/またはスチレン系樹脂を含む内殻用材料より成形され、
前記外殻は、オレフィン系樹脂10〜30質量部と、木粉70〜90質量部(ただし、オレフィン系樹脂と木粉の合計を100質量部とする)とを含む外殻用材料より成形され、かつ厚さが2mm以上であることを特徴とする建築用下地材。
【請求項2】
前記木粉は、平均粒子径が0.01〜3.00mmであることを特徴とする請求項1に記載の建築用下地材。
【請求項3】
前記木粉は、圧縮処理され、かさ比重が0.20以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の建築用下地材。
【請求項4】
前記木粉は、ペレット状に圧縮処理されていることを特徴とする請求項3に記載の建築用下地材。
【請求項5】
前記外殻用材料は、オレフィン系樹脂と木粉の合計100質量部に対して、相溶化剤を1.0〜20.0質量部、滑剤を0.5〜5.0質量部含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の建築用下地材。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−111858(P2011−111858A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−271709(P2009−271709)
【出願日】平成21年11月30日(2009.11.30)
【出願人】(000010065)フクビ化学工業株式会社 (150)