説明

建設機械

【課題】電動機制御盤を大きくしても良好な視界を確保できるとともに、車体寸法の制限による影響を受けずに電動機制御盤を配置できる建設機械の提供。
【解決手段】走行体3と、この走行体3上に搭載される旋回体4を有し、この旋回体4に運転室6と、作業装置10と、フロント油圧駆動用電動機7a,7b及び旋回用電動機8と、これらの電動機7a,7b,8を制御する機器を実装する電動機制御盤9と、この電動機制御盤9を収納する制御盤設置部9bとを備えた油圧ショベル1において、特に、制御盤設置部9bを、旋回体4の後方部分に設けるとともに、制御盤設置部9bを被覆可能な扉14a,14bを備えた構成にしてある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、旋回体に複数の電動機と、これらの電動機を制御する機器を有する電動機制御盤を備えた油圧ショベル等の建設機械に関する。
【背景技術】
【0002】
排気ガスによる大気汚染が忌避される作業現場、例えば住宅密集地やトンネル内、あるいは建屋内では、建設機械の駆動源であるエンジンを電動機に取り替えて排気ガスを無くしたり、動力を電動機で補助してエンジンから排出される排気ガスを抑制したりすることがある。なお、電動機を搭載した建設機械には、ヒューズ、ブレーカ、インバータ等の電動機制御機器を実装する電動機制御盤が搭載されるのが一般的である。また、電動機制御盤は、盤内の機器のメンテナンスを容易とするために外部からアクセス可能に配置することが必要になる。
【0003】
このようなことから、従来、特許文献1に、走行体と、この走行体上に搭載される旋回体を有する建設機械、例えば油圧ショベルにおいて、旋回体に運転室と、作業装置と、電動機と、この電動機を制御する機器を実装する電動機制御盤とを備えるとともに、この電動機制御盤を収納する制御盤設置部を、旋回中心を挟んで運転室と反対側の旋回体の前端部に配置し、電動機制御盤に外部からアクセス可能に構成したことが開示されている。
【特許文献1】特開2003−206550公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した特許文献1に示される従来技術では、配備する電動機の数が多くなって電動機制御盤内の内蔵物が増加した場合に、電動機制御盤が巨大になり、これに伴って運転室からの視界が悪くなり、作業装置によって実施される作業の作業性が低下する懸念がある。また、車体寸法に制限を受ける場合に、電動機制御盤の配置設計が困難になる問題もある。
【0005】
本発明は、前述した従来技術における実状からなされたもので、その目的は、電動機制御盤を大きくしても良好な視界を確保できるとともに、車体寸法の制限による影響を受けずに電動機制御盤を配置できる建設機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的を達成するために、本発明は、走行体と、この走行体上に搭載される旋回体を有し、この旋回体に運転室と、作業装置と、複数の電動機と、これらの電動機を制御する機器を実装する電動機制御盤と、この電動機制御盤を収納する制御盤設置部とを備えた建設機械において、上記制御盤設置部を、上記旋回体の後方部分に設けたことを特徴としている。
【0007】
このように構成した本発明は、旋回体の後方部分に制御盤設置部を設けたことから、運転室からの視界が妨げられることがなく、これによって良好な視界を確保することができる。また、旋回体の後方部分においては、電動機制御盤を配置する広い配置空間を確保できるので、車体寸法の制限による影響を受けずに電動機制御盤を配置することができる。
【0008】
また、本発明は上記発明において、上記制御盤設置部を被覆可能な扉を備えたことを特徴としている。このように構成した本発明は、扉を閉じることにより制御盤設置部に収納された電動機制御盤を保護することができ、電動機制御盤に実装される機器のメンテナンス時には、扉を開くことにより容易にメンテナンスを実施することができる。
【0009】
また、本発明は上記発明において、上記制御盤設置部の下部にカウンタウエイトを搭載したことを特徴としている。このように構成した本発明は、制御盤設置部の下部に配置したカウンタウエイトによって、旋回中心に対する前後方向のモーメントを釣り合わせることができ、作業装置による作業の安全性を確保できる。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、電動機制御盤を収納する制御盤設置部を、旋回体の後方部分に設けたことから、電動機制御盤を大きくしても良好な視界を確保でき、従来懸念されていた作業性の低下を防ぐことができる。また、車体寸法の制限による影響を受けずに電動機制御盤を配置でき、電動機制御盤の配置設計の自由度を従来よりも向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下,本発明に係る建設機械を実施するための最良の形態を図に基づいて説明する。
【0012】
図1は本発明に係る建設機械の一実施形態を示す図で、(a)図は平面図、(b)図は背面図、図2は本実施形態に備えられる扉を開いた状態を示す図で、(a)図は平面図、(b)図は背面図、図3は本実施形態に備えられる制御盤設置部を示す図である。
【0013】
本実施形態に係る建設機械は、例えば油圧ショベル1であり、この油圧ショベル1は、図1に示すように、走行体3と、この走行体3上に配置される旋回体4とを有している。走行体3は、走行用電動機5a,5bによって駆動されるクローラシュー2を備えている。旋回体3の前方部分の一方の側には、運転室6を配置してあり、前方部分のほぼ中央位置には作業装置10を取り付けてある。この作業装置10は、例えばブーム11、アーム12、バケット13を含んでいる。
【0014】
また、旋回体4上には、図1の(a)図に示すように、作業装置10に関連させて設けられるフロント油圧駆動用電動機7a,7b、及びこの旋回体4を旋回させる旋回駆動用電動機8も設置してある。
【0015】
本実施形態は特に、図2の(b)図、及び図3に示すように、上述の各電動機5a,5b,7a,7b,8を制御する後述の機器を実装する電動機制御盤9を収納する制御盤設置部9bを、旋回体3の後方部分を形成する制御盤カバー9の内部に設けてある。また、図1,2に示すように、制御盤設置部9bを被覆可能な扉14a,14bを備えている。
【0016】
この制御盤設置部9bに収納される電動機制御盤9には、図3に示すように、各電動機5a,5b,7a,7b,8を制御する機器、すなわち、走行用電動機5a,5bを制御する走行用インバータ15a,15bと、旋回用電動機8を制御する旋回用インバータ16と、フロント油圧駆動用電動機7a,7bを制御するフロント油圧駆動用インバータ17a,17b等を実装させてある。
【0017】
このように構成した油圧ショベル1は、電動機制御盤9のインバータ15a,15bによる制御で走行用電動機5a,5bが作動し、クローラシュー2が駆動して走行が実施される。また、旋回用インバータ16による制御で旋回駆動用電動機8が作動し、旋回体3の旋回が実施される。また、フロント油圧駆動用インバータ17a,17bによる制御でフロント油圧駆動用電動機7a,7bが作動し、作業装置10による掘削作業等の各種の作業が実施される。
【0018】
本実施形態によれば、旋回体4の後方部分に制御盤設置部9bを設けたことから、運転室6からの視界が妨げられることがなく、これによって良好な視界を確保することができ、視界が妨げられることに伴う作業装置10による作業性の低下を防ぐことができる。また、旋回体4の後方部分においては、電動機制御盤9を配置する広い配置空間を確保できるので、車体寸法の制限による影響を受けずに電動機制御盤9を配置することができる。これにより、電動機制御盤9の配置設計の自由度を向上させることができる。
【0019】
また、扉14a,14bを閉じることにより制御盤設置部9bに収納された電動機制御盤9を保護することができ、電動機制御盤9に実装される機器、すなわち、走行用インバータ15a,15b、旋回用インバータ16、フロント油圧駆動用インバータ17a,17b等のメンテナンス時には、扉を開くことにより容易にメンテナンスを実施することができる。
【0020】
図4は本発明の別の実施形態の要部を構成する制御盤設置部を示す図である。この別の実施形態は、図4に示すように、旋回体4の後方部分に設けた制御盤設置部9内の下部にカウンタウエイト18を搭載した構成にしてある。その他の構成は、上述した図1−3に示した実施形態と同等である。
【0021】
このように構成した別の実施形態は、特に、旋回体4の旋回中心に対する前後方向のモーメントを釣り合わせることができ、作業装置10による作業の安全性を確保でき、作業性の向上に貢献する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係る建設機械の一実施形態を示す図で、(a)図は平面図、(b)図は背面図である。
【図2】本実施形態に備えられる扉を開いた状態を示す図で、(a)図は平面図、(b)図は背面図である。
【図3】本実施形態に備えられる制御盤設置部を示す図である。
【図4】本発明の別の実施形態の要部を構成する制御盤設置部を示す図である。
【符号の説明】
【0023】
1 油圧ショベル(建設機械)
3 走行体
4 旋回体
5a,5b 走行用電動機
6 運転室
7a,7b フロント油圧駆動用電動機
8 旋回駆動用電動機
9 電動機制御盤
9a 制御盤カバー
9b 制御盤設置部
10 作業装置
14a,14b 扉
15a,15b 走行用インバータ
16 旋回用インバータ
17a,17b フロント油圧駆動用インバータ
18 カウンタウエイト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行体と、この走行体上に搭載される旋回体を有し、この旋回体に運転室と、作業装置と、複数の電動機と、これらの電動機を制御する機器を実装する電動機制御盤と、この電動機制御盤を収納する制御盤設置部とを備えた建設機械において、
上記制御盤設置部を、上記旋回体の後方部分に設けたことを特徴とする建設機械。
【請求項2】
上記請求項1記載の発明において、
上記制御盤設置部を被覆可能な扉を備えたことを特徴とする建設機械。
【請求項3】
上記請求項1または2記載の発明において、
上記制御盤設置部の下部にカウンタウエイトを搭載したことを特徴とする建設機械。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−8094(P2008−8094A)
【公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−181640(P2006−181640)
【出願日】平成18年6月30日(2006.6.30)
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)
【Fターム(参考)】