説明

引き戸

【課題】部品の種類が少なく、組立も容易で低コストに形成することのできる上吊り式の引き戸を提供する。
【解決手段】長手方向に伸びるレール部11を走行自在な戸車4を有し、戸車4の下方に吊り下げられた障子3を備え、障子3は複数本の縦格子部材21が横方向に並設された縦格子20からなり、縦格子20の2本以上の縦格子部材21は、上端に戸車4を有する吊り下げ部材23からなり、縦格子20を構成する各縦格子部材21は、縦格子20を構成した状態で面一状に配置される背面部21aを備えると共に、横方向に沿って設けられる横格子部材22に背面部21aが当接し連結される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上枠の長手方向に沿うレール部に対して走行自在な戸車から下方吊り下げ状に設けられる障子を有した上吊り式の引き戸に関し、特に障子を縦格子で構成してなる引き戸に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建物の玄関や駐車場の前に設置される上吊り式の引き戸が知られている。上吊り式の引き戸は、長手方向に沿うレール部を有し固定状に設けられた上枠に対して、吊り下げ状に設けられる障子を有している。レール部を長手方向に走行自在とするため、引き戸には戸車が設けられる。この戸車の下方に吊り下げ状となるように障子が設けられ、障子は戸車により上枠の長手方向に移動自在とされる。
【0003】
上吊り式の引き戸においては、方形状に框組みされてなる框体内にパネル体や格子等を納めてなる障子を用いるのが一般的であった。また、框体内に縦横の格子を納めてなるものも知られている。このように、框体を有してなる障子を備えた上吊り式の引き戸としては、例えば特許文献1に挙げるようなものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−186888号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の上吊り式の引き戸は、障子に四周に渡る框体を有しているため、上下左右の框材が必要であり、部品点数が多くなっていた。また、框体を形成するには、上下左右の框を框組みする作業が必要であり、組立が大掛かりになっていた。さらには、障子の大きさを変更する場合には、それに応じた框体を用意する必要があり、部品の種類が増えることともなっていた。これらにより、引き戸の高コスト化を招いていた。
【0006】
本発明は前記課題を鑑みてなされたものであり、部品の種類が少なく、組立も容易で低コストに形成することのできる上吊り式の引き戸を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、本発明に係る引き戸は、長手方向に伸びるレール部を走行自在な戸車を有し、該戸車の下方に吊り下げられた障子を備える引き戸において、
前記障子は複数本の縦格子部材が横方向に並設された縦格子からなり、該縦格子の2本以上の前記縦格子部材は、上端に前記戸車を有する吊り下げ部材からなることを特徴として構成されている。
【0008】
また、本発明に係る引き戸は、前記縦格子を構成する各縦格子部材は、前記縦格子を構成した状態で面一状に配置される背面部を備えると共に、横方向に沿って設けられる横格子部材に前記背面部が当接し連結されることを特徴として構成されている。
【0009】
さらに、本発明に係る引き戸は、前記縦格子を構成する各縦格子部材は見込方向寸法が異なる2種類の部材からなり、前記縦格子は2種類の前記縦格子部材を交互に配置してなることを特徴として構成されている。
【0010】
さらにまた、本発明に係る引き戸は、前記縦格子の両端に配置される縦格子部材は、前記横格子部材の両端面が突き合わされて連結される横格子連結部を有する端部材からなることを特徴として構成されている。
【0011】
そして、本発明に係る引き戸は、前記縦格子部材のうち前記吊り下げ部材以外の部材は、前記吊り下げ部材よりも上端位置が低く形成されてなることを特徴として構成されている。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る引き戸によれば、障子は複数本の縦格子部材が横方向に並設された縦格子からなり、縦格子の2本以上の縦格子部材は、上端に戸車を有する吊り下げ部材からなることにより、障子に四周に渡る框体を不要とし、主に縦格子部材とその連結に必要な部材だけで障子を構成することができるので、部品の種類を少なくし、組立を容易にすると共に、寸法違いにおける部品の共用化も容易とすることができて、低コスト化を図ることができる。
【0013】
また、本発明に係る引き戸によれば、縦格子を構成する各縦格子部材は、縦格子を構成した状態で面一状に配置される背面部を備えると共に、横方向に沿って設けられる横格子部材に背面部が当接し連結されることにより、横格子部材を数本設けるだけで、縦格子部材を横方向に連結して障子を構成することができるので、構造を簡易化することができ、さらなる低コスト化を図ることができる。
【0014】
さらに、本発明に係る引き戸によれば、縦格子を構成する各縦格子部材は見込方向寸法が異なる2種類の部材からなり、縦格子は2種類の縦格子部材を交互に配置してなることにより、縦格子を斜め方向から見たときに、引き戸を挟んだ向かい側が見えにくいようにすることができ、引き戸の間仕切りとしての効果を高めることができる。
【0015】
さらにまた、本発明に係る引き戸によれば、縦格子の両端に配置される縦格子部材は、横格子部材の両端面が突き合わされて連結される横格子連結部を有する端部材からなることにより、縦格子の両端部では横格子部材の端面が縦格子部材の側面に突き合わされて固定されるので、障子を構成する横格子部材の強度を向上させて、障子全体の強度も向上させることができる。
【0016】
そして、本発明に係る引き戸によれば、縦格子部材のうち吊り下げ部材以外の部材は、吊り下げ部材よりも上端位置が低く形成されてなることにより、吊り下げ部材のみ高さを変更することで、障子全体の高さを変更することができ、吊り下げ部材以外の縦格子部材を共用化することができ、さらなる低コスト化に寄与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本実施形態における引き戸の正面図を示している。
【図2】図1のA−A断面図である。
【図3】図2の上部拡大図である。
【図4】図2の下部拡大図である。
【図5】図1のB−B断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施形態について図面に沿って詳細に説明する。図1には本実施形態における引き戸の正面図を、図2には図1のA−A断面図を、それぞれ示している。なお、図2は高さ方向を一部省略している。これら各図に示すように、本実施形態における引き戸2は、建物開口部の上辺に取付けられた上枠1に対し内外2枚が引き違い状に吊り下げられ、それぞれが図1における左右方向に移動自在となるように構成されてなるものである。
【0019】
それぞれの引き戸2は、上枠1に形成されるレール部11上を走行自在な戸車4を上端に備え、戸車4の下方に吊り下げられる障子3を有している。障子3は、縦方向に伸びる縦格子部材21が横方向に多数並設された縦格子20によって構成され、縦格子部材21のうち2本は、上端部に戸車4を備えた吊り下げ部材23とされている。
【0020】
吊り下げ部材23とその他の縦格子部材21は、ほぼ同様の構成を有しているが、吊り下げ部材23は上端位置が戸車4の直下位置であるのに対し、その他の縦格子部材21は、上端位置が戸車4よりも下方の位置で揃えられており、縦格子20の上端面を構成している。このため、縦格子20の上端面と上枠1との間には空間が形成される。
【0021】
また、障子3を構成する縦格子20には、縦格子部材21を連結する横格子部材22が上部に2本と下部に2本、それぞれ設けられ、各縦格子部材21は横格子部材22に固定されることで、一体的な障子3を構成している。
【0022】
障子3の吊り下げ構造について詳細に説明する。図3には、図2の上部拡大図を示している。この図に示すように、建物開口部を構成する上壁面6の内周面に上枠1が固定されている。上枠1は、上壁面6に対してアンカーボルトで固定される取付ブラケット8を介して固定がなされる。
【0023】
上枠1は、内外中央位置に断面中空状の本体部10が形成され、本体部10の両側面からそれぞれ突出するレール部11を有している。また、本体部10の両側上端位置からは、それぞれレール部11を覆うような断面略コ字状からなるカバー部12が形成されている。
【0024】
内外引き戸2に設けられる戸車4は、それぞれ上枠1の内外レール部11に載置され、長手方向に走行自在とされる。戸車4は、レール部11よりも下方に延びる吊り下げ部4aを有しており、その下端部に縦格子部材21の一部である吊り下げ部材23の上端部がネジ止め固定される。これにより、障子3は戸車4に吊り下げられ、戸車4によって上枠1の長手方向に移動自在となるようにされている。
【0025】
図4には、図2の下部拡大図を示している。障子3を構成する横格子部材22は、断面中空状に形成されると共に、縦格子部材21の背面に当接し、ネジ止め固定されている。横格子部材22と縦格子部材21のネジ止めは、横格子部材22の背面側からなされ、横格子部材22にはネジ止め部分を覆うようにキャップ22aが係合される。
【0026】
また、下端位置の横格子部材22には、長手方向に沿って断面略コ字状の溝部材24が取付けられている。一方で、建物開口部を構成する床面9には、ガイド部材30が埋設固定されている。ガイド部材30は、図1に示すように引き戸2の引き違い部分に設けられている。また、ガイド部材30は、図4に示すように床面9から上方に突出する軸部30aと、軸部30aに対して回転自在な回転部30bとを有しており、回転部30bは障子3の溝部材24の幅に略適合する直径を有している。
【0027】
溝部材24は、引き戸2の下端部長手方向に沿って設けられているので、引き戸2を上枠1の長手方向に移動させた際に、障子3の下端部がガイド部材30によって内外方向に振れないようにガイドされ、円滑な開閉動作を行うことができる。
【0028】
図5には、図1のB−B断面図を示している。この図に示すように、縦格子部材21は、断面略長方形状に形成され、横格子部材22に当接固定される背面部21aを有している。また、背面部21aに対向する面である正面部21bも有している。
【0029】
縦格子20は、正面部21bの背面部21aに対する見込方向位置が異なることで、見込方向寸法が異なる2種類の縦格子部材21が、1本ごと交互に配置されて構成されている。各縦格子部材21の背面部21aは、横格子部材22に当接しネジ止め固定されているので、見込方向位置は面一状となっているのに対し、縦格子部材21の正面部21bは、見込方向位置が互い違いとなるように配置されることとなる。これにより、縦格子20を正面部21b側の斜め方向から見たときに、引き戸2を挟んだ向かい側が見えにくいようにすることができ、引き戸2の間仕切りとしての効果を高めることができる。
【0030】
また、縦格子20を構成する縦格子部材21のうち、両端部に配置される部材は端部材25であって、その他の縦格子部材21と異なり、横格子部材22を側面に固着する横格子連結部21cを有しており、その分だけ背面側に張り出している。端部材25は、横格子部材22を当接させる面の外周側から、ネジにより横格子部材22を固定できるようにされており、さらにその固定部分を覆うようにキャップ25aが係合される。
【0031】
このように、複数本の縦格子部材21を横方向に並設して縦格子20を構成し、縦格子部材21のうち少なくとも2本を、上端部に戸車4が取付けられた吊り下げ部材23として構成することにより、障子3を縦格子部材21とそれを連結する横格子部材22だけで構成することができ、四周に渡る框体を設ける必要がないので、部品の種類を少なくし、また組立も容易にすることができて、低コスト化を図ることができる。
【0032】
また、建物開口部の高さによって、引き戸2全体の高さも変更する必要があるが、この場合には、吊り下げ部材23のみについて、高さの異なる部材を用意するだけで、他の縦格子部材21については共通の部材を用いることができる。すなわち、部品の共用化により低コスト化を図ることができる。また、障子3の幅方向の寸法も、縦格子部材21の本数の変更及び横格子部材22の寸法の変更により、容易に変更することができる。
【0033】
吊り下げ部材23について、他の縦格子部材21と同じ部材の上部に、上端に戸車4を有した延長部材を連結して構成するようにしてもよい。これによれば、吊り下げ部材23にも共通の縦格子部材21を用いることができ、縦格子部材21の上端より上方の部分だけを取り替えることで、様々な縦方向寸法に対応することができる。
【0034】
また、吊り下げ部材23と他の縦格子部材21が、同じ縦方向寸法を有するように構成してもよい。この場合には、吊り下げ部材23は上端に戸車4が取付けられている以外、他の縦格子部材21と同じ構成を有することとなる。さらには、吊り下げ部材23と他の縦格子部材21の上端位置を略同等としつつ、縦格子20の下端位置を図1の例よりも上方に配置することもできる。このように、縦格子20の上下端位置及び縦格子20の上方に空間を設けるか否かは、適宜設定することができ、これによって内外の遮蔽性と通気性のバランスを様々に設定することができる。
【0035】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の適用は本実施形態には限られず、その技術的思想の範囲内において様々に適用されうるものである。例えば、本実施形態では、2枚の引き戸2を引き違い状に配置したが、1枚の引き戸2からなるものであってもよく、また3枚以上の引き戸2をそれぞれ引き違い状に配置したものであってもよい。
【符号の説明】
【0036】
1 上枠
2 引き戸
3 障子
4 戸車
4a 吊り下げ部
5 下ガイド部
6 上壁面
8 取付ブラケット
9 床面
10 本体部
11 レール部
12 カバー部
20 縦格子
21 縦格子部材
21a 背面部
21b 正面部
21c 横格子連結部
22 横格子部材
23 吊り下げ部材
24 溝部材
25 端部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向に伸びるレール部を走行自在な戸車を有し、該戸車の下方に吊り下げられた障子を備える引き戸において、
前記障子は複数本の縦格子部材が横方向に並設された縦格子からなり、該縦格子の2本以上の前記縦格子部材は、上端に前記戸車を有する吊り下げ部材からなることを特徴とする引き戸。
【請求項2】
前記縦格子を構成する各縦格子部材は、前記縦格子を構成した状態で面一状に配置される背面部を備えると共に、横方向に沿って設けられる横格子部材に前記背面部が当接し連結されることを特徴とする請求項1記載の引き戸。
【請求項3】
前記縦格子を構成する各縦格子部材は見込方向寸法が異なる2種類の部材からなり、前記縦格子は2種類の前記縦格子部材を交互に配置してなることを特徴とする請求項2記載の引き戸。
【請求項4】
前記縦格子の両端に配置される縦格子部材は、前記横格子部材の両端面が突き合わされて連結される横格子連結部を有する端部材からなることを特徴とする請求項2または3記載の引き戸。
【請求項5】
前記縦格子部材のうち前記吊り下げ部材以外の部材は、前記吊り下げ部材よりも上端位置が低く形成されてなることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の引き戸。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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