説明

引き抜き成形装置

【課題】FRP製の成形品と同程度の十分な強度を持ち、廃棄処分になったときに安全に燃焼させて処理することができる成形品を得るための引き抜き成形装置をその課題とする。
【解決手段】ジシクロペンタジエンとルテニウムとを混合した成形材料aを投入するホッパ1と、ホッパ1の下部からほぼ水平方向に伸びる細長の成形金型2と、上記成形金型2から排出された成形品を引き抜く引き抜き装置3とを備え、上記ホッパ1には常温以下に冷却する冷却手段7を、上記成形金型2には加熱手段11を設けたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液状の材料を温度管理しながら成形金型を通過させて硬化させ、成形された成形品を引き抜く引き抜き成形装置するに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、下水処理場や浄水場では、家庭から出た排水を浄化するため、不純物を沈殿させて汚泥とし、この汚泥をピットに集積させることが行われている。そのための方策として、ピットに続くレールに沿って一定の間隔をおいて断面コ字形等の掻き寄せ材を移動させ、掻き寄せ材によって汚泥を掻き寄せて順次ピットに送り出す方式が知られている。そして、掻き寄せ材としてはFRP(繊維強化ブラスチック)製のものが多く使用されている。
【0003】
ところが、FRP製の掻き寄せ材はガラス繊維が含まれているから、廃棄処分になっても燃やすことができない。産業廃棄物として地中に埋めるしかない。したがって、廃棄処理の容易性に問題があり、環境にもよくないという欠点があった。
【0004】
この改善策として、掻き寄せ材に金属や他の合成樹脂を使用することも考えられたが、金属の場合、強度は十分であるものの、重量が重く、汚泥掻き寄せ時に掻き寄せ材を移動させる駆動源の出力を大きくしなければならず、コスト高になるという問題がある。強化しない合成樹脂の場合は、強度が小さいという致命的な欠陥があるほか、燃焼させることができ、コストも高くないという条件も満たさなければならないので、これらを全て満足するものはほとんどなかった。
【特許文献1】特開2003−205207公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記問題点を解消し、FRP製の成形品と同程度の十分な強度を持ち、廃棄処分になったときに安全に燃焼させて処理することができる成形品を得るための引き抜き成形装置をその課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本発明に係る引き抜き成形装置は、ジシクロペンタジエンとルテニウムとを混合した成形材料を投入するホッパと、ホッパの下部からほぼ水平方向に伸びる細長の成形金型と、上記成形金型から排出された成形品を引き抜く引き抜き装置とを備え、上記ホッパには常温以下に冷却する冷却手段を、上記成形金型には加熱手段を設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
請求項1に係る発明によれば、成形材料は水のような液状であり、成形材料は自然に成形金型の中を流れるので、成形材料を押出すために格別の手段を設ける必要がない。ただし、上記成形材料は常温で硬化してしまうので、ホッパ内で液状状態を保つことができる。また、熱を加えることにより成形材料は成形金型内で硬化して成形されるので、成形金型から成形品を円滑、確実に引き抜くことができる。
【0008】
そして、上記成形方法で成形された成形品は、FRP製の成形品と同程度の十分な強度を持ち、廃棄処分になったときに安全に燃焼させて処理することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明は、ジシクロペンタジエンを主原料とする成形材料を適切な温度管理の下で成形することにより、FRP製の成形品と同程度の十分な強度を持ち、廃棄処分になったときに安全に燃焼させて処理することができるという成形品の成形方法を実現した。
【実施例】
【0010】
図1は本発明に係る成形装置を示すもので、この成形装置は成形材料を投入するためのホッパ1と、上記成形材料を硬化させて所定の断面形状に成形するための成形金型2と、成形金型2から断面コ字形の成形品を引き抜く引き抜き装置3とから構成されている。
【0011】
図2に示されるように、ホッパ1の一端は上方に開口し、他端は下部側方に開口し、成形材料aは上部開口部4から投入され、側部開口部5から排出されるように構成されている。また、ホッパ1には常温以下に冷却する冷却手段が、上記成形金型2には加熱手段が設けられている。
【0012】
成形材料aとしてはジシクロペンタジエンとルテニウムとを一定の割合で混合した、メタセンを使用する。
【0013】
メタセンaは液状であるが、常温で硬化するので、ホッパ1内で硬化しないようにするためにホッパ1には冷却手段7が設けられている。この冷却手段7はホッパ1の周囲の内部に形成された通路6を通る冷媒によって構成されている。冷媒としては常温以下に冷却した水道水を使用すればよい。
【0014】
なお、冷却手段7はホッパ1内の成形材料aが硬化しないようにすればよく、図に示された構成に限定されない。
【0015】
次に、成形金型2は下型2aと上型2bとから細長に形成されたもので、支持フレーム8上に配置されている。下型2aの断面は凹状に、上型2bの断面は凸状に形成され、上型2bと下型2aとの間には上向きコ字形の成形空間9が形成されている。下型2aの一端には鍔部10が形成され、この鍔部10はホッパ1の側部開口部の周縁部に突き合わせ固定されている。上型2bは下型2a上に載置固定されている。上記鍔部10側は成形材料aの導入側、反対側は成形材料aの排出側となる。
【0016】
また、成形金型2には加熱手段11が設けられている。加熱手段11としてシーズヒータを使用する場合は、図3に示されるように、成形金型2の長手方向に多数のヒータを挿入するためのヒータ挿入穴12が多数形成されている。側面部のヒータ挿入穴12aは下端から上向きに、底面部のヒータ挿入孔12bは左右交互に形成されている。加熱手段11とともに熱電対などにより温度計測手段を設けておく。
【0017】
なお、加熱手段11は必ずしもシーズヒータのような棒状ヒータに限定されない。面状ヒータなどの他の加熱手段によってもよい。
【0018】
引き抜き装置3は、装置本体3aに上下1対のピンチローラ13を設け、これらのピンチローラ12をモータによって駆動するようにしたもので、ピンチローラ13は上記成形金型2の内部に形成されたコ字形の成形空間9の延長上に配置されている。
【0019】
次に、上記構成の引き抜き成形装置によって成形するときは、ホッパ1を冷却手段7によって冷却した状態で、ホッパ1内に成形材料aを充填する。図2に示されるように、成形材料aは液状であるから、重力によって自然に成形金型2に流れ込んでいく。成形金型2は加熱手段11によって温度が上昇するので、成形金型2内の成形材料aは少しずつ硬化し、排出口14の近傍では成形された状態がほぼ保持される程度まで硬化する。そこで、引き抜き装置3を作動させ、ピンチローラ13の間に上向きコ字形の成形品5を挟みつけ、ピンチローラ13を回転させながら少しずつ引き抜いていけばよい。これにより、ホッパ1では液状であったメタセンaが成形金型2を通過する間に硬化して成形品15となって引き抜かれていく。
【産業上の利用可能性】
【0020】
本発明は断面コ字形の成形品を製造する装置について説明したが、このような例に限定されない。通常の引き抜き成形で可能な製品は全て成形することができる。また、下水処理場や浄水場の掻き寄せ材だけでなく、いろいろな用途にも適用できることはもちろんである。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係る引き抜き成形装置の斜視図である。
【図2】上記引き抜き成形装置の縦断面図である。
【図3】成形金型の下型の底面図である。
【符号の説明】
【0022】
a 成形材料
1 ホッパ
2 成形金型
3 引き抜き装置
7 冷却手段
11 加熱手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジシクロペンタジエンとルテニウムとを混合した成形材料を投入するホッパと、ホッパの下部からほぼ水平方向に伸びる細長の成形金型と、上記成形金型から排出された成形品を引き抜く引き抜き装置とを備え、上記ホッパには常温以下に冷却する冷却手段を、上記成形金型には加熱手段を設けたことを特徴とする引き抜き成形装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−1186(P2006−1186A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−181281(P2004−181281)
【出願日】平成16年6月18日(2004.6.18)
【出願人】(504237108)株式会社日特工業 (2)
【出願人】(301003702)アサヒ機装株式会社 (8)
【出願人】(504236938)株式会社森島 (1)
【出願人】(504237153)有限会社関口精機 (1)
【Fターム(参考)】