説明

引出し装置

【課題】 引出しの両側部において確実に施錠することができるとともに、構造が簡単で、製造コスト及び工数を低減できるようにした引出し装置を提供する。
【解決手段】什器20に設けた左右1対の支持材2により、前後方向に引出し可能に支持した引出し本体1の前面に、前方から施解錠操作するようにした施錠装置11を設けた引出し装置において、施錠装置11の施解錠操作に連動して、左右方向に移動する連動杆12を引出し本体1の前部内面に設け、施錠操作により、連動杆12の一端部が、引出し本体1の外側方に突出し、支持材2の前部に設けた係合孔23に係合するとともに、連動杆12の他端部が、支持材2の前部に突設したストッパ片25の裏面に当接することにより、左右両端部において引出しの前方移動を阻止するようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オフィスなどの執務空間で使用される机、キャビネット等の什器に装着される引出し装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の引出し装置には、収納物の防盗のために、施錠装置を設けることが多い。
【0003】
施錠装置には、上下に隣接して配置された複数の引出しを、一括して施錠可能としたものと、各引出しを、それぞれ個別に施錠可能としたものとがある。これらは、使用者の要望に合わせて選択して適用され、特に、各引出しに個別に施錠装置が設けられている場合には、引出しを個人に割当てて使用するのに適している。
【0004】
引出しを個別に施錠可能とした施錠装置としては、シリンダ錠の施錠操作に連動するデッドボルトを、引出しにおける左右いずれか一方の側面より、側方に向って突出させて、什器に設けた係合孔内に挿入することによって施錠するものが多い(特許文献1〜3参照)。
【0005】
この構造によれば、簡易、かつ安価に施錠装置を構成することができる。しかし、引出しにおける一側部を固定するものであるので、引出し本体が左右に幅広のものであったり、引出し自体の剛性が低いものである場合には、引出しの非施錠側の側部における施錠時の前後移動部が大きくなり、がたつきが生じ易く、安定して、確実に施錠することが出来ないという問題がある。
【0006】
これに対して、シリンダ錠の施錠操作に連動して、左右1対のデッドボルトが、引出しにおける左右両側面より外側方に向って突出し、それぞれが、什器に設けた係合孔内に嵌合するようにしたものがある(特許文献4参照)。
この構造によれば、施錠時に、引出しの両側部を固定することができるので、前述のように、引出しが左右に幅広であったり、剛性が低くても、安定して、確実に施錠することができる。
【特許文献1】実開昭63−019667号公報
【特許文献2】実開平02−089170号公報
【特許文献3】特開平09−025751号公報
【特許文献4】特開2002−285746号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献4に記載されている構造では、施錠時にデッドボルトを同時に左右方向に突出するさせるための構造が複雑であり、高価につくとともに、連係部分が多くなるので、動作が不円滑となるおそれがある。
【0008】
本発明は、従来の技術が有する上記のような問題点に鑑み、引出しの両側部において確実に施錠することができるとともに、構造が簡単で、製造コスト及び工数を低減できるようにした引出し装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によると、上記課題は次のようにして解決される。
(1)什器に設けた左右1対の支持材により、前後方向に引出し可能に支持した引出し本体の前面に、前方から施解錠操作するようにした施錠装置を設けた引出し装置において、前記施錠装置の施解錠操作に連動して、左右方向に移動する連動杆を前記引出し本体の前部内面に設け、施錠操作により、前記連動杆の一端部が、引出し本体の外側方に突出し、前記連動杆の一端側に配設された前記支持材の前部に設けた係合孔に係合するとともに、連動杆の他端部が、前記連動杆の他端側に配設された前記支持材の前部に突設したストッパ片の裏面に当接することにより、左右両端部において引出しの前方移動を阻止するようにする。
【0010】
(2)上記1項において、什器における床面と対向して形成した引出し取付面に、下方に向って垂下するように着脱可能に取り付けた左右1対の支持材の内側面に、引出し本体を摺動可能に支持する左右の支持手段をそれぞれ取付けるとともに、前記支持材の前部に、係合孔及びストッパ片を設ける。
【0011】
(3)上記1項または2項において、引出し本体における前面板の左右方向の寸法を、引出し本体の左右方向の寸法より大とし、支持材の前面を前記前面板の左右の端部により閉塞し、係合孔及びストッパ片が外部に露呈するのを防止しうるようにする。
【0012】
(4)上記2項またはそれに従属する3項において、支持材の内側面上部に、引出し本体の内方を向く固定片を延設し、この固定片に穿設した挿通孔を介して、取付ねじを什器の引出し取付面に設けたねじ孔に螺合することにより、支持材を什器の引出し取付面に着脱可能に取付ける。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、次の作用効果を奏することができる。
請求項1の発明によれば、1個の連動杆を、施錠装置の施錠操作に連動して、一方向に移動させるだけで、引出し本体の両側部の前方への移動を確実に阻止することができるので、構造を簡素化することができ、製造コスト及び工数を低減することができる。
また、1個の連動杆を、移動させるだけでよいので、連係部分を少なくすることができ、軽力で円滑に動作させることができる。
【0014】
請求項2の発明によれば、係合孔及びストッパ片を、予め左右の支持材に設けておき、それと引出し本体、及びその支持手段を仮組みした状態で、1セットとして準備しておき、什器の引出し取付面に、支持材を取り付けるだけで、引出し装置を、什器に簡単に取り付けることができ、組み付け作業性がよい。
【0015】
請求項3の発明によれば、連動杆の両端部と支持材との係合部分が、前面板により完全に隠蔽されるので、防盗性が高い。
【0016】
請求項4の発明によれば、引出し装置を、什器の天板等に、簡単かつ確実に取り付けることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の最良の形態につき、図面を参照して詳細に説明する。
図1〜図7に示すように、本発明に係る引出し装置は、引出し本体1と、引出し本体1の両側に配置される左右1対の支持材2と、支持材2と引出し本体1の間に介在されて、引出し本体1を支持材2の長手方向、すなわち前後方向に沿って摺動可能に支持する支持手段としてのサスペンション3とを備えている。
【0018】
引出し本体1は、薄鋼板などのプレス成形体の組合せにより構成された扁平容器状をなすものであり、所定縦横比の底板4と、底板4の両側に沿って一体的に立設された左右1対の側板5、5と、底板4の後部に立設された背板6と、底板4の前部に配置され、両端部が側板5、5の前端部に固着された前枠7とからなっている。
【0019】
前枠7は、両端が側板5、5に溶接等により固着され、かつ前面が開放する側面視コ字形の前枠フレーム8と、前枠フレーム8の前部に嵌合して結合されるとともに、その左右両端部が、両側板5、5より外側方に突出して、支持材2の前端面を覆う前面板9とからなっている。
【0020】
前面板9の一側部に設けた取付孔10には、施錠装置を構成するシリンダ錠11が嵌合して取り付けられており、シリンダ錠11の後端部には、シリンダ錠11の施解錠操作に連動して、前枠フレーム8内において左右方向に移動するようにした板状の連動杆(デッドボルト)12が装着されている。
【0021】
前面板9の背面には、前枠フレーム8に嵌合する側面視ほぼ後向コ字形の嵌合部13が設けられ、同じく上端には、前端に下向きの折返し部14aが形成された前方を向く引手部14が設けられ、また左右の両端部には、合成樹脂製のエンドキャップ15が嵌着されている。
【0022】
連動杆12は、シリンダ錠11の前面に設けた鍵孔11aに、鍵16を差し込んで、左方に回す施錠操作により、左方に移動させられ、同じく、右方に回す解錠操作により、右方に移動させられる。
前枠フレーム8の両側面及び側板5の前部側面には、連動杆12が貫通する窓孔17、18が設けられ、ここには、合成樹脂製のスリーブ19が嵌着されており、連動杆12は、スリーブ19を通って、左右に進退する。
【0023】
支持材2は、縦長の角管状をなし、その上端には、引出し本体1の内方を向く固定片21が延設されており、この固定片21を、図3に想像線で示すように、什器の天板20の下面に形成された取付面に当接し、かつ固定片21に設けた複数の取付孔22に、固定ねじBを下方より通して、天板20の取付面に設けたねじ孔20aに螺合して締め付けることにより、天板20の取付面に固定されている。
【0024】
支持材2、2の前端部内側面には、連動杆12の両端部が挿通する係合孔23、23が設けられ、図4の左側に示す一方の支持材2の前端面は閉鎖され、連動杆12の一端側に対するストッパ部24としている。これに対し、図4の右側に示す他方の支持材2の前端面下部は解放されており、ここには、下向きのストッパ片25が垂設されている。
【0025】
連動杆12の左端は、特に図6に拡大して示すように、開錠状態では、実線で示すように、左方の支持材2の内側面より内方に位置し、引出し本体1の前方への移動を許容するが、施錠状態では、想像線で示すように、係合孔23内に突入して、引出し本体1の前方への移動を阻止する。
【0026】
これとは逆に、連動杆12の右端側は、開錠状態で、右方の支持材2内に突入している。この連動杆12の右端部上縁には、凹部26が切欠き形成されている。 図7(a)に拡大して示すように、この凹部26の幅W1は、ストッパ片25の幅W2より大きく、深さもストッパ片25の上下方向の長さより大としてある。
【0027】
開錠状態では、連動杆12の右端部は、図7(a)に想像線で示すように、支持材2内に突入するが、凹部26とストッパ片25とが前後方向に整合するようにしてあるので、引出し本体1を前方に引いたとき、凹部26がストッパ片25を通過するので、連動杆12が、引出し本体1の前方への移動を妨げることはない。
施錠状態では、連動杆12の右端部は、左方に移動し、図7(b)に示すように、凹部26はストッパ片25の対面位置から左方にずらされ、連動杆12における凹部26より右端寄りの部分が、ストッパ片25と前後方向に整合し、この状態で、引出し本体1を前方に移動しようとしても、連動杆12における凹部26より右端寄りの部分が、ストッパ片25の裏面に当接して、引出し本体1の前方への移動が阻止される。
【0028】
連動杆12は、鍵16の回動操作に直接連動して、左右方向に移動する機構的に極めて簡素なもので、鍵16を鍵孔11aに差し込み、左に回すか、右に回すかにより、左方に移動して、引出し本体1の両側部を係止したり、右方に移動して、上記係止状態を解除したりすることができ、他の複雑な機構を用いることがないため、操作力が軽く、スムーズな操作を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明に係る引出し装置を示す部分平面図である。
【図2】図1のII−II線断面図である。
【図3】図1のIII−III線断面図である。
【図4】引出し本体と支持材との取付関係を示す分解斜視図である。
【図5】引出し本体の前部の構成を示す分解斜視図である。
【図6】図4のA部の拡大斜視図である。
【図7】図4のB部の拡大斜視図であり、(a)は解錠時、(b)は施錠時の状態を示す。
【符号の説明】
【0030】
1 引出し本体
2 支持材
3 サスペンション(支持手段)
4 底板
5 側板
6 背板
7 前枠
8 前枠フレーム
9 前面板
10 取付孔
11 シリンダ錠(施錠装置)
12 連動杆
13 嵌合部
14 引手部
14a折返し部
15 エンドキャップ
16 鍵
17、18 窓孔
19 スリーブ
20 天板(什器)
20aねじ孔
21 固定片
22 取付孔
B 固定ねじ
23 係合孔
24 ストッパ部
25 ストッパ片
26 凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
什器に設けた左右1対の支持材により、前後方向に引出し可能に支持した引出し本体の前面に、前方から施解錠操作するようにした施錠装置を設けた引出し装置において、
前記施錠装置の施解錠操作に連動して、左右方向に移動する連動杆を前記引出し本体の前部内面に設け、施錠操作により、前記連動杆の一端部が、引出し本体の外側方に突出し、前記連動杆の一端側に配設された前記支持材の前部に設けた係合孔に係合するとともに、連動杆の他端部が、前記連動杆の他端側に配設された前記支持材の前部に突設したストッパ片の裏面に当接することにより、左右両端部において引出しの前方移動を阻止するようにしたことを特徴とする引出し装置。
【請求項2】
什器における床面と対向して形成した引出し取付面に、下方に向って垂下するように着脱可能に取り付けた左右1対の支持材の内側面に、引出し本体を摺動可能に支持する左右の支持手段をそれぞれ取付けるとともに、前記支持材の前部に、係合孔及びストッパ片を設けた請求項1記載の引出し装置。
【請求項3】
引出し本体における前面板の左右方向の寸法を、引出し本体の左右方向の寸法より大とし、支持材の前面を前記前面板の左右の端部により閉塞し、係合孔及びストッパ片が外部に露呈するのを防止しうるようにした請求項1または2記載の引出し装置。
【請求項4】
支持材の内側面上部に、引出し本体の内方を向く固定片を延設し、この固定片に穿設した挿通孔を介して、取付ねじを什器の引出し取付面に設けたねじ孔に螺合することにより、支持材を什器の引出し取付面に着脱可能に取付けた請求項2またはそれに従属する3記載の引出し装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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