説明

引戸の戸当り材

【課題】戸当り材を適用することが常況によって支障ある際には、切り込み溝を利用して戸当り調整部片を剥離して係合溝内に納めるようにして障子框組体のねじ止め部の隠し材として適用でき、汎用性が有り、また、戸先框側の係合溝に係合する際に、戸当り調整部片が傾斜状を成しているから尚一層弾性変形し易く、従って、係合溝(戸先框)に対する組付け操作を簡便に行える戸当り材を提供する。
【解決手段】戸先框に一対の断面L形の戸先部片を見込み方向に相対向させて設けた係合溝に係合して戸先框に組付ける引戸の戸当り材Aであって、組付け時に戸先部片の先端部に相対する第一、第二の戸当り調整部片2,3とを備えて成る。第一戸当り調整部片2の基部の、第二の戸当り調整部片3と対向する側に、第一戸当り調整部片2を中空主体1より剥離するための切り込み溝5を形成する。第一戸当り調整部片2の板厚に対し第二戸当り調整部片3の板厚を薄くしてある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、戸先框に一対の断面L形の戸当り部片を見込み方向に相対向させて係合溝を設け、該係合溝に係合して前記戸先框に組付けて、戸先框の縦枠に対する衝接を和らげて騒音やサッシ縦枠の損傷の発生を防ぐために用いる、引戸の戸当り材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
戸当り材として、例えば、内部に長手方向の中空部を形成した中空主体の、障子見込み方向(以下、単に見込み方向)に相対する中間部に、取付け凹溝を設け、該取付け凹溝に、戸先框に見込み方向に相対向して設けた戸当り部片の先端部を係合して戸先框に組付け、障子見付け方向(以下、単に見付け方向)に相対する中空主体の一対の外側面の一方を選択的にして戸当り面とした構造のものがある(例えば、特許文献1)。
【0003】
この従来構造の戸当り材は、戸当り面の上下方向の略全域を覆うようにして戸先框に組付けられることから、例えば、特許文献2で示すように、戸先框を横框(上框など)に締付けるタッピング螺子の通し孔(ねじ止め部)を覆って該通し孔が露出することによる見栄えの悪さを回避することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実公平2−22473号公報
【特許文献2】特開平7−42435号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記従来中、特許文献1に記載の構造のものは、戸先框に組付けられていることにより、中空主体の一側を戸当り面として機能できれば、ねじ止め部(タッピング螺子を操作するための工具を通すための孔の場合もあるが)を覆い、ビス止め部が露出することによる見栄えの悪さを防ぐことができる。しかしながら、障子と該障子を建て付けるサッシ枠の一方又は双方の加工誤差や枠の取り付け状態によって戸先框(障子側)に対する戸当り材の組付けを省略しなければならないときがあり、特許文献1のものは、戸当り面が戸先框より常に突出されて該戸先框に組付けられるため、前記の理由等から戸先框とサッシ枠の縦枠との間に該突出部を介在させる間隙を確保できない場合は、ビス止め部の露出を防ぐことができない。
【0006】
また、特許文献2のものは、戸先框に設けた定められた領域内に戸当り部材を組付ける構成を採るので、前記ビス止め部を常に隠せるものであり、この点、特許文献1記載の構造のものの欠点を補うことができるが、戸当り部材が平板状の帯片で構成しているため、特許文献1の構造のものの長所である戸先框と縦枠間の間隙の広狭に対応できる点を備えていない。
【0007】
本発明は、前記従来例それぞれが備えている利点を兼ね備えた、引戸の戸当り材を提供することを目的として創案したものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
戸先框に一対の断面L形の戸先部片を見込み方向に相対向させて設けた係合溝に係合して前記戸先框に組付ける引戸の戸当り材において、前記戸先部片の先端部間に組付け時に係合させる断面方形状の中空主体および該中空主体の見込み方向に相対する両側の、見付け方向の両端に、前記中空主体の長手方向に沿い、しかも、見込み方向の一側側のもの同士が前記中空主体側の基部から先端側方向に至るに従って次第に近接して、組付け時に戸先部片の前記先端部に相対する第一、第二の戸当り調整部片とを備えて成り、第一、第二の戸当り調整部片中、見付け方向の一方側の戸当り調整部片の前記基部の、他方側の戸当り調整部片と対向する側に、該一方側の戸当り調整部片を前記中空主体より剥離するための切り込み溝を形成したことを基本的手段とする。
【0009】
そして、この基本的手段に、見付け方向の一方側の戸当り調整部片の板厚に対し他方側の戸当り調整部片の板厚を薄くした点を付加することにより板厚の厚い戸当り調整部片と薄い戸当り調整部片とのいずれかを状況に応じて選択して適用でき、汎用性の有る、引戸の戸当り材を提供することができる。
【0010】
さらに、中空主体の側面に切り込み溝を設けた側の戸当り調整部片側に偏してわずかに突出して成る中間突状を設け、該中間突状を結ぶ仮想直線と、前記中空主体の前記切り込み溝を設けた側の戸当り調整部片側の外側面との離開幅を、戸先部片の戸先部の厚さと、略同幅にして、前記中間突状を前記戸先部の内側に当接したとき前記中空主体が前記戸先部より突出しないようにした構成を付加することにより、タッピング螺子の通し孔などのねじ止め部の隠し材として適用したとき、中空主体の戸先框外部への無用な突出を防ぐことができる。なお、切り込み溝を、中空主体の平面状の側面と、該側面と交叉する一方側の戸当り調整部片の周側面を鋭角状に交叉させて設けた構成にすれば、中空主体より戸当り部片の剥離を簡単かつ確実に行うことができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、戸当り材を適用することが状況によって支障ある際には、切り込み溝を利用して戸当り調整部片を剥離して係合溝内に納めるようにして障子框組体のねじ止め部の隠し材として適用でき、汎用性の有る、引戸の戸当り材を提供できる。また、戸先框側の係合溝に係合する際に、戸当り調整部片が傾斜状を成しているから、尚一層弾性変形し易く、従って、係合溝(戸先框)に対する組付け操作を簡便に行える戸当り材を提供できる。そして、前記の傾斜状により戸先框と縦枠(サッシの)との間に介在する戸当り調整部片の、戸先部片との接触面は戸先部片に対して交叉方向に配せられることになり、戸当り調整部片はクッション性が増大して戸先框と縦枠で狭圧され、従って、衝撃を緩和できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】戸当り材の断面図。
【図2】戸当り材と各部の関係を示す一部欠截略示図。
【図3】図2のx−x線断面図。
【図4】戸当り材の第1使用状態を示す断面図。
【図5】戸当り材の第2使用状態を示す断面図。
【図6】戸当り材の第3使用状態を示す断面図。
【図7】戸当り材の第4使用状態を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図面は、本発明に係る引戸の戸当り材の一実施形態を示し、図中、Aは引戸の戸当り材で、戸当り材Aは弾性の合成樹脂又はゴムで構成するもので、スライディングサッシの引戸の障子Dの戸先框20に着脱自在に組付けて用い、障子Dを閉じる際の該戸先框20サッシの縦枠21に対する衝撃を緩和するために、概し、用いる。
【0014】
実施形態の戸先框20は、中空主体部20aの、前記縦枠21との対向面の見込み方向の両端(中空主体部20aの長手方向に沿う両端)に、その長手方向に沿うようにして断面略L形の戸先部片20bを、その先端の戸先部20b´が戸先部片20b,20b同士が対向する方向に突出するように、相対して突設し、該戸先部片20b,20b間を、前記戸先部20b´,20b´間を狭い開口部22aとする係合溝22とし、前記戸当り材Aを組付けるようにしてある。
【0015】
戸当り材Aは、隅部を丸くした断面長孔状の中空部1aを備えた断面略方形状の中空主体1と、該中空主体1の障子見込み方向に相対する両側面1s,1sに、該側面1sの、障子見付け方向の両端にそれぞれ突設した第一、第二の戸当り調整部片2,3およびこれら第一戸当り調整部片2と第二戸当り調整部片3との間にして前記側面1sにわずかに突設して各調整部片2,3と同様に中空主体1の長手方向に沿う全域に設けた中間突条4とで構成する。
【0016】
中空主体1は中空部1aを備えることにより、戸先框20の前記係合溝22に係合する際、自在に変形して係合溝22(戸先部片20b)に着脱できるようにしてある。
【0017】
中空主体1の、見込み方向の両側面1s,1sに設けた前記第一、第二の調整部片2,3は、前記中空主体1の基部から先端側方向に至るに従って次第に近接するように傾斜状にして中空主体1に突設したもので、第一戸当り調整部片2の、前記戸先部20b´(の外面)との接触部の板厚を、第二戸当り調整部片3の前記戸先部20b´(の外面)との接触部の板厚より厚くなるようにしてある。すなわち、第一戸当り調整部片2が戸先部片20bより突出するように戸当り材Aを戸先框20に組付けたときの突出量を、同様に第二戸当り調整部片3を組付けたときの突出量より大きく(厚く)し、その突出量(出代寸法)の大小を選択(内外を入れ替え)することにより、第一、第二の戸当り調整部片2,3のいずれを用いるか選択するようにしてある。
【0018】
なお、各戸当り調整部片2,3を、前記の通り、傾斜状にしてあるのは、いずれかに選択した戸当り調整部片2又は3の戸先部片20bに対する接触性を良好にすることと、戸先框20が縦枠に衝接したときのクッション性の増大を図るためである。
【0019】
戸先部片20bとの接触部の板厚を厚くした前記第一戸当り調整部片2の、第二戸当り調整部片3との対向側の基部には、中空主体1の平面状の側面1sと第一戸当り調整部片2の周側面が交叉する部分を奥端とする鋭角状の切り込み溝5を設け、第一戸当り調整部片2は、この切り込み溝5の利用により中空主体1よりその長手方向に沿って自在に剥離できるようにしてある。
【0020】
なお、切り込み溝5は、要は、中空主体1から第一戸当り調整部片2を剥離し易いような形態であれば充分であるが、実施形態のように鋭角状(三角形状)で、しかも、中空主体1の平板状の側面1sと該側面1sと第一戸当り調整部片2の周側面を鋭角状に交叉させて設けたものであれば、その剥離機能性に優れた戸当り材を提供できる。
【0021】
この切り込み溝5は、第二戸当り調整部片3側にも設けて良いし、第二戸当り調整部片3側のみに設けても良い。
【0022】
前記中間突条4は、中空主体1の側面1sの前記第一戸当り調整部片2側に、側面1sより、前記のとおり、わずかに突出させて設けたものである。すなわち、中間突条4は、該中間突条4同士を結ぶ仮想直線と、中空主体1の第一戸当り調整部片2側の外側面との間の距離と、該中間突条4と第二調整部片3との離開距離とが前記戸先部20b´の厚さとほぼ同幅になるような位置にして前記の通り第一、第二の調整部片2,3間に設けたものである。
【0023】
以上のような構成材で成る戸当り材Aは、その弾性変形を利用して戸先框20に設けた係合溝22に一部又は全部を係合するようにして用いる。
【0024】
図4は、第一使用状態を示し、この状態のとき、中空主体1の第二戸当り調整部片3側が係合溝22内に係合され、係合溝22の開口部22aに中空主体1の見付け方向の中間部が係合され、中間突条4は戸先部20b´の表面に接した状態で、戸当り材Aは戸先框20に組付けられている。
【0025】
この状態は、戸先框20(戸先部20b´)と縦枠21との離開間隙a(障子閉塞時の)を第一戸当り調整部片2で埋めるもので、実施形態の戸当り材Aが備えている前記離開間隙aを埋める最大出代寸法状態(戸先框20より戸当り材Aが突出する最大量)の場合を示す。
【0026】
図5で示す第2使用状態は図4の状態をいわば初期状態として、戸当り材Aを係合溝22に向けて押圧して中空主体1を係合溝22内を見付け方向(係合溝22の底壁方向)に移動させることで、中間突条4が開口部22a内に強制的に係合して、戸先部20b´を見込み方向に押圧する状態となって戸先框20に戸当り材Aが固定された状態を示す。
【0027】
この状態にあって第一戸当り調整部片2は傾斜状の角度のある状態から水平状のほぼ角度のない状態に変形して戸先部20b´に平行するように配され、戸先部20b´からの突出量が減り、その減った分の相応量の前記間隙aを備えた場合に適用することができるものである。つまり、第一使用状態時の間隙aの幅より狭くなっているときに、図5で示すように戸当り材Aは戸先框20に組付けた後に圧(押)入して用いることができる。
【0028】
図6で示す第3使用状態は、第二戸当り調整部片3側を戸先框20の外部に配し、前記間隙aの幅が図4の場合、勿論、図5の場合より狭い状態のとき、該狭い状態に見合うものとして第二戸当り調整部片3が選択して用いられるように、戸当り材Aが戸先框20に取付けられたときの場合を示す。
【0029】
このときは、戸先部片20bの戸先部20b´を、第二戸当り調整部片3と中空突条4が挟持して、第1戸当り調整部片2が抜け止めとなる関係で、戸当り材Aは戸先框20に組付けられている。この第三使用状態における第二戸当り調整部片3は、第一戸当り調整部片2の場合と同様傾斜状の角度のある配置状態から水平状のほぼ角度のない状態に変形して戸先部20b´に平行するように配され、戸先部20b´からの戸当り材Aとして突出量が第一戸当り調整部片2を用いたときより小さいものが必要なときに適用される。
【0030】
これらいずれの場合も、戸先框20を横框(上框又は下框)23に締付けるタッピングねじ24操作用の通し孔25は、戸当り材A(通し孔25より外部にある)で覆われ、通し孔25の存在による戸先框20(障子)の戸先面の見栄えの低下は改善されている。
【0031】
図7は、戸先部20b´と戸当り部21a(縦枠21)間に緩衝材としての戸当り材Aを適用する間隙aが存しないときの、戸当り材Aの使用状態を示している。
【0032】
このときの戸当り材Aは、切り込み溝5を利用して第一戸当り調整部片2を中空主体1から剥離し、剥離した状態で当該戸当り材Aを係合溝22に係合して戸先框20に組付けられている。尚、剥離作業は、戸当り材Aを戸先框20から取り出して行うが、第一使用状態と第二使用状態では戸当り材Aを戸先框20に組み付けたまま行うこともできる。
【0033】
そして、戸当り材Aは、中間突条4が戸先部20b´の内(裏)側に係止することにより係合溝22からの離脱が防止され、前記通し孔25を覆って、通し孔25の存在による見栄えの低減を防いでいる。
【符号の説明】
【0034】
1 中空主体
2 第一戸当り調整部片
3 第二戸当り調整部片
5 切り込み溝
20 戸先框
20b 戸先部片
20b´ 先端部
22 係合溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
戸先框に一対の断面L形の戸先部片を見込み方向に相対向させて設けた係合溝に係合して前記戸先框に組付ける引戸の戸当り材において、前記戸先部片の先端部間に組付け時に係合させる断面方形状の中空主体および該中空主体の見込み方向に相対する両側の、見付け方向の両端に、前記中空主体の長手方向に沿い、しかも、見込み方向の一側側のもの同士が前記中空主体側の基部から先端側方向に至るに従って次第に近接して、組付け時に戸先部片の前記先端部に相対する第一、第二の戸当り調整部片とを備えて成り、第一、第二の戸当り調整部片中、見付け方向の一方側の戸当り調整部片の前記基部の、他方側の戸当り調整部片と対向する側に、該一方側の戸当り調整部片を前記中空主体より剥離するための切り込み溝を形成した、引戸の戸当り材。
【請求項2】
見付け方向の一方側の戸当り調整部片の板厚に対し他方側の戸当り調整片の板厚を薄くした、請求項1記載の引戸の戸当り材。
【請求項3】
中空主体の側面に切り込み溝を設けた側の戸当り調整部片側に偏してわずかに突出して成る中間突状を設け、該中間突状を結ぶ仮想直線と、前記中空主体の前記切り込み溝を設けた側の戸当り調整部片側の外側面との離開幅を、戸先部片の戸先部の厚さと、略同幅にして、前記中間突状を前記戸先部の内側に当接したとき前記中空主体が前記戸先部より突出しないようにした、請求項1又は2記載の引戸の戸当り材。
【請求項4】
切り込み溝を、中空主体の平面状の側面と、該側面と交叉する一方側の戸当り調整部片の周側面を鋭角状に交叉させて設けた、請求項1乃至3の内いずれか1項記載の引戸の戸当り材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−67968(P2013−67968A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−205925(P2011−205925)
【出願日】平成23年9月21日(2011.9.21)
【出願人】(000005005)不二サッシ株式会社 (118)