説明

引戸装置の戸袋構造

【課題】 病院などの入口に取付けられてスライド開閉する引戸を備えた引戸装置であって、戸袋パネルにナースコール機器や消毒液を入れた容器を置く為の受け具を取付けた戸袋構造の提供。
【解決手段】 引戸1が開いた際に収納される戸袋2を構成する戸袋パネル3bの先端には補助パネル4を設けている。補助パネル4は床面に対して垂直方向の軸6を中心に揺動することで開閉可能とし、そして閉じた際にロックする為のフランス落とし7を備えている。そして、該補助パネル4は必要に応じて交換できる取付け構造としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は戸袋を備えた引戸装置であって、該戸袋を構成する戸袋パネルの先端に補助パネルを取付けた戸袋構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図6は従来の一般的な引戸装置の正面図であり、引戸(イ)は上レールに吊設されて走行し、間口を開閉することが出来る。そして、引戸(イ)が開口した場合に収まる戸袋を構成する戸袋パネル(ロ)が据付られ、上レールをカバーすると共に点検する為の点検パネル(ハ)が上部に取付けされている。この点検パネル(ハ)は簡単に取外して内部を開口することが出来る取付け構造と成っている。
【0003】
同図の(a)は点検パネル(ハ)が引戸(イ)と戸袋パネル(ロ)に跨った長いパネルが用いられ、(b)では戸袋(ロ)が上端まで延びて点検パネル(ハ)は引戸(イ)の上部のみと成っている。このような引戸装置は部屋を仕切っている間仕切りの一部として構成している為に、上レール等の開閉装置の保守点検時には上記戸袋パネル(ロ)及び点検パネル(ハ)を取外すことが出来る。
【0004】
ところが、建物によってはパネルを据え付けする間仕切り装置を用いないで、ボードやクロス貼り等による建築壁として施工することもある。この場合には間口に設ける引戸の戸袋も建築壁と同じ壁面にて構成され、点検パネルの部分も建築壁面と成る。建築壁にて戸袋パネルや点検パネルを構成する方が外観的に意匠は良くなる。しかし、取り外し出来る戸袋パネルや点検パネルがないことで、引戸を吊設する上レール並びにその他の付属装置の保守点検が出来ない。
【0005】
一方、このような引戸装置は病院や老人ホームにて使用される場合も多く、入口付近に消毒液を配置したり、又部屋の番号や患者の名前を表示している。しかし、病院の病室を作るために間仕切り装置及び引戸装置を据付ける際に、該引戸装置の戸袋に消毒液を配置する受け部を取付けたり、ナースコール機器を設ける工事を同時に行うことは容易でない。さらに、同一人が何時までも同一部屋を使用することはなく、患者やその他の使用人が入れ替わることも多い。
【0006】
従って、多くの人が入れ替わり使用する病室などの入口部は、変更出来る構造とする方が都合はよく、しかし戸袋パネルごと取り替えたり、その他の壁面を取り壊して新たな壁面パネルを据付けることは不経済であると共に容易でない。
【0007】
特開2000−65251号に係る「引き戸」は、病室の出入り口に構成され、特に戸袋側が建物と同じ化粧パネルで覆われている引き戸に関するものであり、
ナースコール代表廊下灯、病室内の患者を表示する患者名表示部、手指消毒器具などを集約したものであり、出入り口を開閉する引き戸で少なくとも手指消毒器具、ナースコールユニットが廊下側に面して設置可能とした扉閉鎖時の戸当り部が、扉の反対側を中心として室内側に回動可能に構成している。
【0008】
該扉は後付けすることは出来るが、該扉は建物と同じ厚さ及び同じ外観を呈す形態とし、部品点数は多くなると共に構造的には丈夫でなくてはならず、コストは高くなる。そして、該扉は回動して開くことが出来るものであり、引き戸を含めた間口幅は大きくなり、間口が小さい場所には適用できない。
【特許文献1】特開2000−65251号に係る「引き戸」
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
このように、従来の引き戸に設けた回動可能な扉には上記のごとき問題がある。本発明が解決しようとする課題はこの問題点であり、戸袋を利用してナースコール機器や消毒液を後で必要に応じて配置することが出来るようにした戸袋構造を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る引戸の戸袋構造は、該戸袋の先端部に床面に対して垂直軸を中心として揺動(回動)する開閉可能な補助パネルを取付けている。そして、該補助パネルは戸袋パネルとは別付けと成り、戸袋が完成した後で部屋の仕様に応じて取付けることが出来る。逆に入口部の仕様を変える場合にも、戸袋全体を解体することなく補助パネルを取外して新たな補助パネルを取付け出来る構造と成っている。
【0011】
補助パネルは戸袋を構成する戸袋パネルの一部として設けられ、先端にはロック手段が備わり、閉じた補助パネルは戸袋パネルの一部として戸袋を構成することが出来る。ここで、上記ロック手段の具体的な方法は限定せず、例えば床に形成した穴に嵌るフランス落としを取付けることが出来る。一方、上記補助パネルは揺動可能に取付けられる場合に限らず、補助パネル自体を戸袋パネル先端に着脱可能とすることも出来る。
【発明の効果】
【0012】
本発明の戸袋構造は、戸袋を構成する戸袋パネルの先端側一部に補助パネルを設け、該補助パネルを開閉可能に取付けている。従って、該補助パネルは戸袋パネルとは独立して後付けすることが可能と成り、構造は簡単で低コストと成る。従って、建物の設計段階で各部屋の仕様に合わせて該戸袋にナースコール用の機器を備える必要はなく、又消毒液の受け具を取付ける必要がない。そして、戸袋の一部を利用した構造である為に、間口幅が制約されない。一方、該補助パネルを開くならば戸袋空間が開口する為に、戸袋内に溜まったゴミを除去するなどの掃除が可能と成る。
【0013】
各病室が完成した後で、又老人ホームであれば入居者が決まった後で、部屋の仕様に応じて該部屋の入口部となる戸袋先端部に補助パネルを取付け出来る。又、部屋の入居者が代わったり、患者が代わったならば、部屋入口部の補助パネルを交換することが可能と成る。勿論、この場合に戸袋を解体することなく補助パネルだけの交換が可能と成る。ただし、補助パネルの取付け・取外し作業が必ずしもワンタッチで行われる必要はない。
【実施例】
【0014】
図1は本発明に係る引戸装置の戸袋構造を示す実施例であり、同図の1は引戸、2は戸袋、3a,3bは戸袋パネル、4は補助パネルを夫々表している。引戸1は上レールに吊設されてスライド開閉し、戸袋2は間に戸袋空間5を形成する為に戸袋パネル3a,3bが対向して設置され、一方の戸袋パネル3bの先端には上記補助パネル4が取付けられている。
【0015】
該補助パネル4は反対側の戸袋パネル3aと同じ先端まで延び、戸袋パネル3bと共に戸袋空間5を形成している。そして、補助パネル4は軸6を中心として開閉することが出来、先端にはフランス落とし7が備わって、閉じた補助パネル4を固定することが出来る。勿論、補助パネル4の先端を固定する手段は特に限定するものではない。
【0016】
ところで、補助パネル4の利用方法は色々あって特に限定しないが、病院であればナースコール用の機器を取付けることが出来、消毒液を置く為の受け部を設けることが出来る。又、部屋番号や氏名を記入したプレートを取付けることが出来、そして補助プレート4にカラフルな色彩を施すことも可能である。痴呆症に近い老人であれば、部屋番号や自分の名前よりも補助プレート4の色彩や模様などの方が記憶し易い。
【0017】
図2はナースコール機器8の具体例であり、この機器を補助パネル4に取付けることが出来る。該ナースコール機器8を補助パネル面にネジ止めしてもよいが、補助パネル4に凹部を形成し、該凹部にナースコール機器8を挿入して取付ける方が廊下に突出しない為に都合がよい。
【0018】
図3は消毒液の受け具9の具体例を示している。概略L型を成して取り付け部10の下端には水平に突出した受け部11が形成され、該受け部11には消毒液を入れた容器を置くことが出来る。そして、取付け部10は補助パネル4にネジ止めされる。この受け具9も、該補助パネル4に凹部を形成し、該凹部に収容した状態で取付けすることもある。
【0019】
図4は補助パネル4に表示プレート12を取付けた場合である。そして、該補助パネル4の表面はカラフルな色彩が施されている。又多色を用いて模様を形成することもある。表示パネル12の具体的な形態は同図(a)に示しているように、部屋番号(例えば302)が上部に表示され、そして下側には4人の氏名が記入されている。
【0020】
図5は戸袋を表している具体例であり、戸袋パネル3bの先端に連結金具13を取着し、この連結金具13に固定した支持金具14に軸6を設けている。そして該軸6に補助パネル4が軸支されて取付けられ、該補助パネル4の先端にはフランス落とし7が設けられている。フランス落とし7はレバーを上下方向に操作することでロッドが降下して床面に形成している穴に嵌入して該補助パネル4は固定される。
【0021】
図5に示すように、該補助パネル4は軸6を中心として揺動可能であり、点線で示すごとく開くことが出来る。従って、引戸1を戸袋2から引き出すことで戸袋空間5が大きく開口し、この開口から戸袋内にたまったゴミを除去するなどの掃除を行い得る。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係る引戸装置の戸袋形態を示す概略図。
【図2】補助パネルに取付けられるナースコール機器。
【図3】消毒液の受け具。
【図4】表示プレート。
【図5】戸袋構造を示す具体例。
【図6】従来の引戸装置の概略図。
【符号の説明】
【0023】
1 引戸
2 戸袋
3 戸袋パネル
4 補助パネル
5 戸袋空間
6 軸
7 フランス落とし
8 ナースコール機器
9 受け具
10 取付け部
11 受け部
12 表示パネル
13 連結金具
14 支持金具









【特許請求の範囲】
【請求項1】
上レールに吊設されてスライド開閉する引戸を備えた引戸装置において、引戸が開いた際に収納される戸袋を構成する戸袋パネルの先端には補助パネルを設け、該補助パネルは着脱自在に取付けたことを特徴とする引戸装置の戸袋構造。
【請求項2】
上レールに吊設されてスライド開閉する引戸を備えた引戸装置において、引戸が開いた際に収納される戸袋を構成する戸袋パネルの先端には補助パネルを設け、該補助パネルは床面に対して垂直方向の軸を中心に揺動することで開閉可能とし、そして閉じた際にロックする為のロック手段を備えたことを特徴とする引戸装置の戸袋構造。
【請求項3】
上記補助パネルにはナースコール機器を取付けた請求項1、又は請求項2記載の引戸装置の戸袋構造。
【請求項4】
上記補助パネルには消毒液を入れた容器を置く為の受け具を取付けた請求項1、又は請求項2記載の引戸装置の戸袋構造。
【請求項5】
上記補助パネルには患者の氏名や部屋番号などを記入した表示パネルを取付けた請求項1、又は請求項2記載の引戸装置の戸袋構造。
【請求項6】
上記補助パネルにカラフルな色彩を施した請求項1、又は請求項2記載の引戸装置の戸袋構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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