説明

引戸装置の枠体構造

【課題】引戸装置の無目等の枠体が、枠体本体と、この枠体本体に開閉自在に設けられたカバーとを備えて構成される場合において、枠体本体とカバーとの間に隙間が生ずるのを抑制できるようになる引戸装置の枠体構造を提供すること。
【解決手段】枠体本体である無目本体7に対してカバー9が閉じられたときに、無目本体7とカバー9の互いに対向する端部7D,9A同士は上下に対向しており、水平方向に延びているこれらの端部7D,9A同士は、挟圧部材80の上下一対の当接片80Aの挟みによって密接又は略密接し、カバー9は、無目本体7から離れる水平方向に引っ張られることにより、挟圧部材80の上下一対の当接片80Aから抜け出し可能となっている

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、引戸装置の枠体構造に係り、例えば、引戸本体を移動させるための移動機構が収納される無目等の枠体が、枠体本体と、この枠体本体に開閉自在に設けられたカバーとを含んで構成される場合に利用できるものである。
【背景技術】
【0002】
図19及び図20は、従来における上吊り式引戸装置の無目100の構造を示す縦断面図であり、この無目100は、移動する引戸本体に対して不動に配置された不動部材の一部を構成する枠体になっている。引戸本体の移動方向に長く形成されている無目100の内部には、引戸本体を移動させるための図示しないガイドレール等による移動機構が収納されており、この移動機構の保守点検作業を行えるようにするため、無目100は、無目本体101と、この無目本体101に開閉自在に設けられたカバー102とで構成されている。
【0003】
無目本体101に対してカバー102を開閉自在とするため、無目本体101には掛け止め部101Aが形成され、カバー102にはこの掛け止め部101Aに引っ掛け可能な引っ掛け部102Aが設けられている。図19に示すように、引っ掛け部102Aを掛け止め部101Aに引っ掛けた後、カバー102を無目本体101に複数の止めねじで止めることにより、カバー102は、図20に示されている無目本体101の開口窓101Bを塞いで無目本体101に取り付けられる。また、止めねじを取り外し、掛け止め部101Aから引っ掛け部102Aを外すことにより、図20で示すように、カバー102を無目本体101から分離させて開口窓101Bを開けることができ、これにより無目本体101の内部に収納されている前記移動機構の保守点検作業が開口窓101Bから行われる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
以上の従来の無目100の構造によると、図19のように、カバー102が無目本体101の開口窓101Bを閉じているとき、カバー102の引っ掛け部102Aの上部に隙間Sが生ずる。このため、無目100全体の外観性が必ずしも良好にならないとともに、隙間Sから無目本体101の内部に塵埃が侵入するおそれがある。無目本体101の内部には引戸本体を移動させるための移動機構が収納されており、この移動機構による引戸本体の円滑な移動を確保するためには、隙間Sをできるだけなくし、塵埃の侵入を防止することが望まれる。
【0005】
また、引戸装置のなかには引戸本体を収納する戸袋を備えたものがあり、引戸装置における不動の枠体となっているこの戸袋に、例えば、戸袋内部の清掃などを行えるように、開閉自在なカバーで開口、閉鎖される開口窓を設ける場合においても、戸袋の内部に塵埃等が侵入するのを防止するため、隙間の発生をできるだけ抑制することが望ましい。
【0006】
本発明の目的は、引戸装置の無目等の枠体が、枠体本体と、この枠体本体に開閉自在に設けられたカバーとを備えて構成される場合において、枠体本体とカバーとの間に隙間が生ずるのを抑制できるようになる引戸装置の枠体構造を提供するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る引戸装置の枠体構造は、引戸装置が、移動する引戸本体と、この引戸本体に対して不動に配置された不動部材とを有して構成され、この不動部材が、枠体本体と、この枠体本体に開閉自在に設けられたカバーとを備えて構成されている引戸装置の枠体構造において、前記枠体本体に対して前記カバーが閉じられたときにおける前記枠体本体と前記カバーの互いに対向する端部同士が密接又は略密接していることを特徴とするものである。
【0008】
この引戸装置の枠体構造では、枠体本体に対してカバーが閉じられたときにおける枠体本体とカバーの互いに対向する端部同士が密接又は略密接しているため、枠体本体とカバーとの間に隙間が生ずるのを抑制できる。このため、枠体本体内への塵埃等が侵入するのを阻止でき、枠体本体の内部に何かの収納物が収納されている場合には、この収納物に塵埃等がかかるのを防止でき、枠体本体の内部に何も収納されていない場合には、この枠体本体に塵埃等が溜まるのを防止できるため、その清掃作業を省略できるようになる。
【0009】
また、枠体本体とカバーの互いに対向する端部同士は密接又は略密接するため、これらの端部同士は枠体本体とカバーとの接続部の糸目地を形成することになり、枠体の外観性、延いては引戸装置の外観性が良好となる。
【0010】
この引戸装置の枠体構造において、枠体本体に対してカバーが閉じられたときにおける枠体本体とカバーの互いに対向する端部同士が密接又は略密接しているとは、これらの端部同士がその全長に亘って完全に接触していることを含むのは勿論のこと、その全長の一部に僅かな間隔を開けて対向している部分があってもよいこと、及び端部同士がその全長に亘って僅かな隙間を開けて対向していてもよいことを含む意味である。この場合における僅かな隙間には、例えば、枠体本体に対してカバーを開閉自在とする部材、手段、装置等のために必要とされる程度の小さいな隙間が含まれる。
【0011】
また、この引戸装置の枠体構造において、密接又は略密接している前記端部同士が延びる方向は、前記枠体本体の外部側である外向きでもよく、あるいは上向きや下向きでもよく、その方向は任意でよい。しかし、これらの端部同士が延びる方向を枠体本体の内部側とすると、互いに密接又は略密接させるために枠体本体及びカバーに設ける端部を、引戸装置の利用者や保守点検作業者等にとって邪魔にならないものとすることができる。
【0012】
枠体本体に対してカバーを開閉自在とする構造は任意である。例えば、枠体本体に対してカバーを回動自在としてもよく、枠体本体に対してカバーをスライド自在としてもよく、枠体本体に対してカバーを取り付け、取り外し自在としてもよい。
【0013】
枠体本体に対してカバーを回動自在とする構造の一例は、枠体本体とカバーとをリンク機構等による連結手段で連結し、この連結手段で枠体本体に対してカバーを回動自在とすることであり、また、他の例は、枠体本体に第1連結部を、カバーに第2連結部をそれぞれ設け、これらの連結部に枠体本体に対するカバーの回動中心部を設け、この回動中心部を中心としてカバーを閉じ回動させたときに前記端部同士が密接又は略密接する構造とすればよい。
【0014】
後者の場合における回動中心部は任意な構造、部材等で形成することができ、例えば、枠体本体の第1連結部とカバーの第2連結部とを回動自在に凹凸嵌合することであり、また、第1連結部と第2連結部に回動中心部となる中心軸を挿通することである。
【0015】
第1連結部と第2連結部に回動中心部となる中心軸を挿通する構造を採用した場合において、枠体本体に対してカバーを中心軸を中心に回動させただけで前記端部同士が密接又は略密接するように構成することも可能であるが、これらの端部同士がより確実に密接又は略密接するようにするためには、次ぎの2つの構造のうちのいずれかを採用してもよい。
【0016】
第1番目の構造は、前記第1連結部と前記第2連結部のうちの一方には前記端部同士の対向方向に長い長孔を形成するとともに、この長孔に前記中心軸を挿通することにより、前記一方とこの中心軸との位置関係を長孔で端部同士の対向方向に変更自在とし、また、前記一方には、この位置関係の変更により端部同士が密接又は略密接したときに中心軸を保持してこの密接又は略密接の状態を維持させる中心軸保持部材を設けることである。
【0017】
この構造によると、長孔によって前記一方と中心軸との位置関係を端部同士が離間する方向へ変更すると、枠体本体に対してカバーを容易に回動させることができるようになるとともに、カバーを枠体本体に対して閉じ回動させ、前記一方と中心軸との関係を端部同士が密接又は略密接する状態に変更したときに、中心軸を中心軸保持部材で保持させることにより、端部同士をより確実に密接又は略密接させることができる。
【0018】
第2番目の構造は、前記第1連結部と前記第2連結部のうちの少なくとも一方を前記端部同士の対向方向に弾性変形自在な材料で形成し、この弾性変形によって端部同士を密接又は略密接させることである。
【0019】
この構造によると、弾性変形自在な材料で形成された第1連結部と第2連結部のうちの少なくとも一方を弾性力に抗して伸ばし変形させ、これによって端部同士を離間させることにより、枠体本体に対してカバーを回動させることできるようになるとともに、カバーを枠体本体に対して閉じ回動させた後、第1連結部と第2連結部のうちの少なくとも一方を弾性力でもとの形状に復元縮み変形させることにより、端部同士をより確実に密接又は略密接させることができる。
【0020】
これらの構造において、第1連結部、第2連結部は、枠体本体、カバーの一部となって形成されたものでもよく、また、枠体本体、カバーとは別部品となって製作され、これらの枠体本体、カバーに結合あるいは係止等されて一体化されたものでもよい。
【0021】
また、枠体本体に対してカバーが閉じられたときにおける枠体本体とカバーの互いに対向する端部同士が密接又は略密接するようにするためには、引戸装置の枠体構造を、前記端部同士を挟んでこれらの端部同士を密接させる方向に加圧する挟圧部材を有するものとし、この挟圧部材によって端部同士を密接又は略密接させるようにしてもよい。
【0022】
これによると、挟圧部材によって端部同士を強制的に密接又は略密接させることができる。
【0023】
このような挟圧部材を用いる場合において、この挟圧部材の構造、形状等は、前記端部同士を密接又は略密接させることができる限りにおいて任意であるが、挟圧部材を端部同士の外側の面に当たる一対の当接片を有するものとし、これらの当接片のうちの一方には係止部を形成し、前記端部同士のうちの一方にはこの係止部が係止される被係止部を形成し、枠体本体からカバーを取り外したときに、この被係止部への係止部の係止によって挟圧部材が前記端部同士のうちの前記一方に取り付け状態となっているように構成してもよい。
【0024】
これによると、カバーを枠体本体から取り外しても、挟圧部材は、前記係止部が係止される被係止部が形成されている枠体本体又はカバーに取り付けられた状態になって残るため、枠体本体からのカバーの取り外し作業及び取り付け作業を挟圧部材を枠体本体又はカバーから分離させることなく、容易に行えるようになる。
【0025】
また、枠体本体に対してカバーが閉じられたときにおける枠体本体とカバーの互いに対向する端部同士が密接又は略密接するようにするためには、枠体本体に、前記端部同士のうちの枠体本体の端部と対面する対面端部を設け、これらの枠体本体の端部と対面端部との間に前記端部同士のうちのカバーの端部を挿入することにより、前記端部同士が密接又は略密接するようにしてもよい。
【0026】
これによっても、前記端部同士を密接又は略密接させることができる。
【0027】
このようにした場合において、前記端部同士と対面端部の合計3個の端部のうち、少なくとも一つに弾性部材を被せ、この弾性部材の弾性により前記端部同士を密接又は略密接させるようにしてもよい。
【0028】
これによると、弾性部材の弾性力により、前記端部同士の密接又は略密接をより確実なものとすることができる。この弾性部材は、例えば、軟質合成樹脂、ゴム等の任意な弾性材料からなるものでよい。
【0029】
以上の本発明に係る引戸装置の枠体構造を適用できる枠体の一例は、引戸本体を移動させるための移動機構が内部に収納されている無目であって、この無目が、無目本体と、無目本体に開閉自在に設けられたカバーとを含んで構成されている場合である。
【0030】
これらの無目本体とカバーとの配置的及び構造的等の関係は任意でよく、その一例は、前記端部同士のうちの一方を無目本体の端部とし、この端部を無目本体の長さ方向に延びる下向きとし、前記端部同士のうちの他方を、無目本体の長さ方向に延びるカバーの上向きの端部とし、このカバーを、無目本体の長さ方向における複数箇所でこの無目本体に着脱自在に止めることである。
【0031】
以上の無目本体の内部に収納する引戸本体の移動機構は、本発明が適用される引戸装置の種類、形式等に応じた任意なものでよい。この移動機構は、例えば、引戸本体の移動を案内するガイドレールやスライディングレール等によるガイド部材と、引戸本体を閉じ側又は開き側又はこれらの両方に自動的に移動させる駆動装置を含んだものでもよく、これに引戸本体の移動速度を閉じ限位置等の近くで減速させる制動装置が加わったものでもよい。また、移動機構は引戸本体の移動を案内するガイドレールやスライディングレール等によるガイド部材だけのものでもよく、また、ガイドレールが引戸本体の移動方向に下り傾斜していて引戸本体のその方向への移動が引戸本体の自重で自動的に行われるようになっているものでもよい。この場合におけるガイドレールは、引戸本体の移動方向に応じて傾斜方向が変更されるようになっていてもよく、また、ガイドレールが引戸本体の移動方向に分離されている複数本からなるものでもよい。
【0032】
さらに、このような傾斜式ガイドレールで引戸本体を自動的に移動させるようにした移動機構の場合には、引戸本体の速度を閉じ限位置等の近くで減速させる制動装置が設けられていてもよい。
【0033】
また、上記駆動装置の駆動原理は任意なものでよく、例えば、蓄圧されたばね力によって引戸本体を引っ張り移動させる渦巻きばね式のものでもよく、シリンダで引戸本体を移動させるシリンダ式のものでもよく、モータで回転するピニオンで引戸本体を移動させるモータ式のものでもよく、電磁石の吸引力、反発力で引戸本体を移動させるリニアモータ式のもの等でもよい。
【0034】
また、本発明は、以上の移動機構から引戸本体が吊り下げられた上吊り式引戸装置は勿論のこと、引戸本体がこの引戸本体の下部に配置されたガイドレールに案内されて移動する構造になっている引戸装置にも適用でき、さらに、本発明は、引戸本体が上吊り式であって、この引戸本体が下部に配置されたガイドレールにも案内されて移動するようになっているタイプの引戸装置にも適用できる。
【0035】
さらに、本発明は、開き移動した引戸本体が収納される戸袋を備えている引戸装置にも、戸袋を備えていない引戸装置にも適用できる。戸袋を備えている場合において、その戸袋は、引戸本体が建物の壁や柱等の内部に収納される構造になっているために、これらの壁や柱等が戸袋を兼ねるものであってもよい。
【0036】
以上の戸袋を備えている引戸装置に本発明を適用する場合において、開閉自在なカバーが設けられる不動部材となっている枠体は、その戸袋でもよい。
【0037】
また、戸袋が壁等の内部に設けられている上吊り式引戸装置において、カバーを引戸本体で開閉される開口部の上部に設ける場合には、このカバーを開口部の上部から戸袋が設けられた壁等までの長さを有するものとしてもよく、開口部だけの長さのものとしてもよい。
【0038】
また、本発明が適用される引戸装置の枠体は、引戸装置の不動部材を構成し、かつ開閉自在なカバーが設けられるものであれば、任意な枠体でよく、引戸装置の外枠組み部材を形成する縦枠等でもよい。
【0039】
そして、枠体本体から開き作動したカバーが枠体本体から分離しない構造となっている場合には、カバーをその開き作動位置に止めておくための部材、手段、装置等を設けてもよい。
【0040】
また、カバーが枠体本体に対して閉じ作動したときに、カバーをその閉じ作動位置に止めるための部材、手段、装置等を設けてもよく、これは、例えば、止めねじ、マグネット、ベルクロ等でもよく、カバーと枠体本体に設けた凹凸嵌合部等でもよい。
【0041】
さらに、本発明は各種タイプの引戸装置に適用でき、例えば、1個の引戸本体が片引きとなっているタイプ、複数個の引戸本体が引き分け式となっているタイプ、複数個の引戸本体が引き違い式となっているタイプ、複数個の引戸本体が連結されながら移動して開口部を開閉するタイプ等の引戸装置に本発明を適用できる。
【発明の効果】
【0042】
本発明によると、引戸装置の無目等の枠体が、枠体本体と、この枠体本体に開閉自在に設けられたカバーとを備えて構成される場合において、枠体本体とカバーとの間に隙間が生ずるのを抑制できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係る引戸装置の全体を示す正面図である。
【図2】図2は、引戸本体が閉じ限位置に達しているときの引戸本体を移動させるための移動機構を示す図である。
【図3】図3は、引戸本体が開き限位置に達しているときの引戸本体を移動させるための移動機構を示す図である。
【図4】図4は、図2のS4−S4線断面図で、引戸本体の下部まで示した図である。
【図5】図5は、図1で示された無目本体と縦枠とを連結し、かつ無目のカバーの止めねじが螺入される雌ねじ孔が形成されている連結部材を示す正面図である。
【図6】図6は、図5のS6−S6線断面図である。
【図7】図7は、図5の左側面図である。
【図8】図8は、図1で示された回動手段の位置での無目の縦断面図で、引戸本体を移動させるための移動機構を省略して示した図である。
【図9】図9は、図8で示された回動手段の側面図である。
【図10】図10は、図9の回動手段の正面図である。
【図11】図11は、カバーを図8の回動手段で回動させるときを示す無目の縦断面図である。
【図12】図12は、別実施形態に係る回動手段を示す側面図である。
【図13】図13は、図12の回動手段の正面図である。
【図14】図14は、カバーを回動させるときを示す図12の回動手段の側面図である。
【図15】図15は、挟圧部材で無目本体の端部とカバーの端部を密接させる実施形態を示す側面図である。
【図16】図16は、図15の挟圧部材の全体を示す斜視図である。
【図17】図17は、無目本体の形状、構造で無目本体の端部とカバーの端部を密接される実施形態を示す無目の縦断面図である。
【図18】図18は、図17の実施形態において、カバーを無目本体から取り外したときを示す無目の縦断面図である。
【図19】図19は、従来の上吊り式引戸装置の無目を示す縦断面図で、無目本体にカバーが取り付けられているときを示す図である。
【図20】図20は、図19の状態から無目本体よりカバーが取り外されたときを示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
以下に本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。初めに、本実施形態に係る引戸装置の全体を説明する。
【0045】
図1は、本実施形態に係る引戸装置の全体を示す正面図である。この引戸装置は、建物内の廊下と部屋との間を開閉自在に仕切るための室内用仕切り手段として使用され、引戸本体1は把持部1Aを把持することにより左右動させることができ、左右動すると引戸本体1は、無目2と縦枠3と戸袋4と床5とに囲まれて形成されている出入口用の開口部6を開閉し、この開口部6を開いたときの引戸本体1の大部分は戸袋4に収納される。引戸本体1が引戸装置の可動部材になっているのに対して、無目2、縦枠3及び戸袋4は引戸装置の不動部材を構成するものとなっており、開口部6から戸袋4に跨る長さを有している無目2は、無目本体7と、この無目本体7に止めねじ8で取り付け、取り外し自在になっていて、無目本体7に対して開閉自在になっている点検用カバー9とからなる。止めねじ8は、引戸本体1の移動方向に長い無目本体7と同じ長さになっているカバー9の両端部に2個設けられている。
【0046】
図2及び図3には、点検用カバー9を取り外して示した無目本体7の内部構造が示されている。この無目本体7の内部には引戸本体1を移動させるための移動機構が収納されている。したがって、本実施形態では、無目本体7とカバー9とで構成される無目2により、移動機構が収納されている枠体が形成され、カバー9を取り外すことにより、無目本体7の開口窓7A(後述の図4参照)が開口し、この開口窓7Aから、無目本体7内に配置された移動機構の保守点検作業を行えるようになっている。
【0047】
図2は、この移動機構によって引戸本体1が閉じ限位置に達しているときを示し、図3は、引戸本体1が開き限位置に達しているときを示す。また、図4は、図2のS4−S4線断面図であって引戸本体1の下部まで示した図である。
【0048】
図2に示すように、無目2の内部には引戸本体1の移動を案内するためのガイド部材であるガイドレール10が組み込まれ、上記移動機構を形成する部材であって、無目2の略全長に亘る長さを有するガイドレール10は、図4に示すとおり、無目2の内部に設けられている取付部材11にビス12と板ナット12Aで取り付けられている。同一断面形状が長さ方向に連続しているこのガイドレール10は、ビス12と板ナット12Aで取付部材11に取り付けられた基部10Aと、この基部10Aの下端から引戸本体1の厚さ方向に水平に延びるアーム部10Bと、このアーム部10Bの先端から垂直に立ち上がった係合部10Cとを有する。
【0049】
図2で示すように、引戸本体1には、ローラブラケット13,14に回転自在に取り付けられた2個のローラ15,16が引戸本体1の移動方向に配設され、ローラブラケット13,14を介して引戸本体1の上方に配置されているこれらのローラ15,16は、図4に示すように、引戸本体1の上方に不動部材となって水平に架設されてガイドレール10の係合部10Cに係合している。このため、引戸本体1は、ローラ15,16が係合部10C上を転動することによりガイドレール10に沿って移動するとともに、引戸本体1は、ガイドレール10の係合部10Cに係合したローラ15,16に吊り下げられた上吊り式となっている。
【0050】
また、図1に示すように、戸袋4に近い床5には、垂直軸を中心に回転自在となったガイドローラ17が配置され、このガイドローラ17は、図4に示すとおり、引戸本体1の下端に下向きに開口して配置されたチャンネル部材1Bの内部に挿入されており、ガイドレール10に沿った引戸本体1の移動は、引戸本体1の下端がこのガイドローラ17に案内されながらなされる。
【0051】
図2に示されているように、ガイドレール10の引戸本体開き側の端部には、引戸本体1を開き限位置に停止させるためのストップ装置20が取り付けられ、このストップ装置20は、引戸本体閉じ側に向けて本体21に突設されたゴム等の弾性材料からなるストップ部材22と、本体21に取り付けられ、板ばねの折り曲げで形成されている係止部材23とを有する。一方、引戸本体1に設けられている2個のローラブラケット13,14のうち、引戸本体開き側のローラブラケット14の後端には板状の受け部材24が結合され、この受け部材24には小径ローラによる被係止部材25が取り付けられている。
【0052】
引戸本体1を前記把持部1Aで開き側に移動させ、この移動が開き限位置に達すると、図3に示されているように、被係止部材25は、一旦上向きに湾曲変形してもとの形状に弾性復帰する係止部材23に係止されるとともに、受け部材24はストップ部材22に当接し、係止部材23が被係止部材25を係止することにより、引戸本体1は開き限位置に停止する。
【0053】
また、引戸本体1の把持部1Aに引戸本体閉じ側への操作力を作用させた場合には、被係止部材25は上向きに弾性変形する係止部材23から離脱するため、ガイドレール10とガイドローラ17に案内されて閉じ側へ移動する。
【0054】
また、図2及び図3に示されているように、ガイドレール10の引戸本体閉じ側の端部には、引戸本体1を閉じ移動させるための駆動装置30が配置され、この駆動装置30は、図3で示されているとおり、ブラケット31がガイドレール1に取り付けられることにより、ガイドレール10に組み付けられている。
【0055】
駆動装置30はケーシング30A内に回転自在に収納されたリール33を有し、このリール33の内部には渦巻きばねが配置され、この渦巻きばねの一端はリール33に結合されているとともに、他端はケーシング30Aに結合されている。また、リール33には、図2及び図3で示されているナイロン紐又はワイヤー等からなる紐状部材34の一端が結合され、この紐状部材34はケーシング30Aから導出され、紐状部材34の他端は、引戸本体1に2個設けられているローラブラケット13,14のうちの引戸本体閉じ側のローラブラケット13に結合されている。
【0056】
図2で示すように閉じ限位置に達している引戸本体1を把持部1Aで図3で示すように開き側へ移動させたときには、紐状部材34がリール33を回転させながら駆動装置30から繰り出され、このとき、リール33の内部の上記渦巻きばねがリール33の回転で蓄圧されるようになっている。このため、この後に把持部1Aから手を離すと(引戸本体1が図3のように閉じ限位置に達しているときには、前述のように、把持部1Aに操作力を作用させて被係止部材25を係止部材23から離脱させると)、渦巻きばねの蓄圧力によってリール33には、引戸本体1の開き移動時とは逆方向へリール33を回転させようとする回転力が生じているため、この回転力で緊張している紐状部材34の引張力によって引戸本体1は閉じ側へ引っ張られ、閉じ限位置まで自動的に移動する。
【0057】
したがって、本実施形態における引戸本体1を閉じ側へ自動的に移動させるための駆動装置30は渦巻きばね式であるとともに、紐状部材34の引張力による引張式駆動装置となっており、リール33と渦巻きばねとによって、不動部材であるガイドレール10に取り付けられていて、紐状部材34に引張力を付与するための引張力付与手段37が構成されている。
【0058】
図2及び図3に示すように、ガイドレール10には、閉じ側への引戸本体1の移動速度を低速化させて制動させ、引戸本体1を閉じ限位置に減速させて到達させるための制動装置40が取り付けられている。この制動装置40は、シリンダ本体41と、シリンダ本体41にガイドレール10の長さ方向に伸縮自在に挿入されたピストンロッド42とを有するシリンダ装置で構成され、シリンダ本体41は、不動部材となっているガイドレール10に取り付けられている。この取り付けは、図4に示すとおり、ガイドレール10の溝10D付きの取付部10Eにビス43と板ナット43Aでなされている。
【0059】
図2及び図3で示すように、引戸本体1に2個設けられているローラブラケット13,14のうち、引戸本体開き側のローラブラケット14には、ピストンロッド42の先端部が挿抜自在となったキャッチ部材44が取り付けられ、ピストンロッド42の先端部と、この先端部が挿入されるキャッチ部材44の内部とのうち、一方には磁石が設けられ、他方にはこの磁石に吸着する磁性材料が設けられている。このため、ピストンロッド42とキャッチ部材44とは、磁力で接続分離自在となっている。
【0060】
図2に示すように引戸本体1が閉じ限位置に達しているときには、シリンダ本体41に対して収縮しているピストンロッド42の先端部がキャッチ部材44の内部に挿入された状態になっており、引戸本体1を開き側へ移動させると、ピストンロッド42の先端部とキャッチ部材44とが上記磁力で接続されているため、ピストンロッド42はシリンダ本体41に対して伸び作動する。このピストンロッド42が伸び作動限に達してもさらに引戸本体1が開き側に移動すると、図3に示すように、ピストンロッド42とキャッチ部材44とが分離し、ピストンロッド42はその位置で停止する。また、引戸本体1が前記引張式駆動装置30の駆動力で閉じ側へ移動し始め、そして引戸本体1が所定位置に達すると、キャッチ部材44はピストンロッド42に当接してこれらのキャッチ部材44とピストンロッド22とが上記磁力で再度接続され、引戸本体1がさらに閉じ側へ移動することにより、ピストンロッド42はシリンダ本体41に対して収縮作動する。
【0061】
なお、ピストンロッド42の先端部と、この先端部が挿入されるキャッチ部材44の内部とに互いに磁性が逆となった磁石を設けることにより、ピストンロッド42とキャッチ部材44とを上記と同様に接続分離自在としてよい。
【0062】
シリンダ本体41には、ピストンロッド42が伸び作動したときに多量のエアをシリンダ本体41の内部に吸引し、ピストンロッド42が収縮作動したときにはこのエアを絞りながら排出するバルブが設けられている。このため、ピストンロッド42が伸び作動する引戸本体1の開き移動時には、引戸本体1を軽く移動させることができ、また、ピストンロッド42が収縮作動する引戸本体1の閉じ移動時には、引戸本体1がシリンダ本体41の内部のエア圧力によって制動されながら移動し、減速された速度で閉じ限位置に達するようになっている。
【0063】
このため、本実施形態における制動装置40は、シリンダ装置による流体圧力式制動装置となっている。
【0064】
以上説明したストップ装置20と駆動装置30と制動装置40はガイドレール10に取り付けられるものとなっているため、これらの装置20,30,40を引戸装置の各部品が生産される工場で予めガイドレール10に取り付けることにより、ガイドレール10とストップ装置20と駆動装置30と制動装置40とで構成された構造体をユニット化されたユニット構造体として引戸装置の施工現場に搬送することができ、施工現場での作業をそれだけ簡単化することができる。
【0065】
なお、このようにストップ装置20と駆動装置30と制動装置40の取り付けによってユニット構造体の一部となったガイドレール10を前記無目2の取付部材11に取り付ける作業は、工場で行ってもよく、引戸装置の施工現場で行ってもよい。
【0066】
図5〜図7は、カバー9を無目本体7に止めるために図1の左側の前記止めねじ8が螺入される部材55を示した図であり、図5は、カバー9を取り外して示すその部材55の正面図、図6は、図5のS6−S6線断面図、図7は図5の左側面図である。
【0067】
部材55は、図1で示した無目本体7と縦枠3とを連結するための連結部材ともなっており、この連結のために、結合部材55は、図5〜図7に示されているように、上下方向に延びる主部55Aと、この主部55Aの両側から無目2の内側へ段状に窪んだ段部55B,55Cと、これらの段部55B、55Cのそれぞれ上下部から無目2の内部へ突出した突出片55D,55E,55F,55Gとを有する。突出片55D,55F,55Gは、図7で示すように、無目本体7の一方の側面部7Bと他方の側面部7Cに溶接又はビス等の止着具で結合され、また、図6で示すように、主部55Aには縦枠3の凹部3Aが嵌合され、主部55Aの裏面に予め溶接で取り付けられているナット56にボルト57を縦枠3側から螺入することにより、連結部材55に縦枠3が結合される。これにより、連結部材55を介して無目本体7と縦枠3とが連結される。
【0068】
図5で示す突出片55Eには雌ねじ孔58が形成されており、この雌ねじ孔58に、カバー9に挿通させた図1の左側の止めねじ8のねじ軸部を螺入することにより、図1のカバー9の左端部はこの止めねじ8で無目本体7に止められる。
【0069】
また、図5〜図7で示した連結部材55と同様の連結部材によって図1で示す無目本体7と引戸本体開き側の縦枠59とが連結されており、この連結部材にも雌ねじ孔が形成された突出片が設けられているため、図1の右側の止めねじ8のねじ軸部が、カバー9に挿通されてからこの突出片の雌ねじ孔に螺入されることにより、カバー9の図1の右端部はこの止めねじ8で無目2に止められる。
【0070】
また、図5〜図9で示した連結部材55の主部55Aの下部には、折り曲げにより無目2の内側へ延びる延出部55Hが設けられており、この延出部55Hには、図6で示すとおり、無目2の内側にU字状に開口する開口部61が形成されている。図5及び図7に示すように、延出部55Hの下面には板状の補助材62がビス63で結合され、この補助材62には、図6で示すとおり、U字状開口部61と一致する孔64が設けられている。
【0071】
これらのU字状開口部61と孔64には、図1で示した引戸本体1に設けられている鍵装置65にキーに差し込んで回動操作したときに上昇する図5及び図6のロックバー66が挿入され、これにより、閉じ限位置に達している引戸本体1がその位置でロックされるようになっている。
【0072】
すなわち、無目本体7と縦枠3とを連結するための連結部材55は、引戸本体1を鍵装置65と共に閉じ限位置にロックさせておくための鍵手段を構成するものとなっている。
【0073】
図1で示すとおり、カバー9は無目本体7にこの無目本体7の長さ方向の複数箇所で回動手段67により連結されており、カバー9を無目本体7の長さ方向両端で止めている止めねじ8を取り外すことにより、カバー9を無目本体7に対して回動手段67で上向きに回動させることができるようになっている。図8〜図11にはこの回動手段67が示されており、図8は、前記移動機構を省略して示した図1における回動手段67の位置での無目2の縦断面図、図9は回動手段67の側面図、図10は回動手段67の正面図、図11は、カバー9を回動手段67で回動させるときを示す無目2の縦断面図である。
【0074】
図8及び図11で示されているように、回動手段67は無目本体7とカバー9とが上下に対向する箇所に設けられている。具体的に説明すると、無目本体7におけるカバー9が配置される側の側面には下向きの端部7Dが設けられ、カバー9の上端には上向きの端部9Aが形成されている。これらの端部7Dと9Aは、無目本体7の内部に向かって延びているとともに、無目本体7とカバー9の長さ方向全長に亘って延びたものとなっており、端部7Dと9Aは上下に対向している。これらの端部7Dと9Aが回動手段67で連結されており、図10で示されているように、この回動手段67は、無目本体7側の第1連結部材68と、カバー9側の第2連結部材69と、これらの連結部材68,69に挿通された中心軸70と、第2連結部材69に上向きに固定された中心軸保持部材71とで構成されている。
【0075】
図9で示すように、第1連結部材68は、上端において、無目本体7の端部7Dの上面に溶接やリベット等の固定手段で取り付けられる取付部68Aを有し、図10に示すように、下端には、無目本体7の長さ方向である左右方向の中央において凹部68Bが下向きに形成されているとともに、この凹部68Bの両側に湾曲部68Cが形成されており、これらの湾曲部68Cに中心軸70が挿通されている。第2連結部材69は、左右両端部において、カバー9の端部9Aの下面に溶接やリベット等の固定手段で取り付けられる取付部69Aを有し、第1連結部材68の左右外側にあるこれらの取付部69Aの中間部は、左右の垂下部69Bで取付部69Aよりも下側に設けられた本体部69Cとなっている。左右の垂下部69Bには、無目本体7の端部7Dとカバー9の端部9Aとの対向方向である上下方向に長い長孔69Dが形成されており、これらの長孔69Dに中心軸70が挿通されている。そして、中心軸70の端部には、第1連結部材68及び第2連結部材69からの中心軸70の抜け出し防止のための部材70Aが係合されている。
【0076】
第1連結部材68よりも下側にある第2連部材69の本体部69Cの上面に上記中心軸保持部材71が固定配置され、この配置位置は第1連結部材68の凹部68Bと対応する位置である。中心軸保持部材71はばね材で形成され、図9に示されているとおり、この中心軸保持部材71は、上端で隙間を開けて対向する一対の挟着部71Aを有し、それぞれの挟着部71Aには、中心軸70を保持できるように外側へ湾曲膨出した保持部71Bが形成されている。
【0077】
無目本体7の内部に収納されている前記移動機構の保守点検作業のため、カバー9を無目本体7に対して上向きに回動させて図11で示されている無目本体7の開口窓7Aを開けるためには、先ず、図1で示されている2個の止めねじ8を取り外す。次いで、図11に示すようにカバー9全体を引き下げる。これにより、中心軸70と第2連結部材69の長孔69Dとの位置関係が変更され、中心軸70は相対的に長孔69Dの上端へと移行するため、一対の挟着部71Aの保持部71Bで中心軸70を保持していた中心軸保持部材71と、この中心軸保持部材71が固定されている第2連結部材69は、第1連結部材68に対して下降する。
【0078】
この結果、無目本体7の端部7Dとカバー9の端部9Aは離間することになり、この後、カバー9を図11の想像線で示すとおり中心軸70を中心に上向きに開き回動させることにより、無目本体7の開口窓7Aが開かれる。このカバー9の中心軸70を中心にした回動は、端部7Dと9Aが離間しているため支障なく行え、これにより、無目本体7の内部の移動機構についての保守点検等の所定の作業を行える。
【0079】
カバー9で開口窓7Aを閉じるときは、カバー9を中心軸70を中心に上記とは逆の下向きに閉じ回動させ、この後、カバー9を押し上げる。これにより、第2連結部材69及びこの第2連結部材69に固定されている中心軸保持部材71は上昇し、図9に示されているとおり、中心軸保持部材71の一対の挟着部71Aの保持部71Bが中心軸70を保持することにより、カバー9は上昇位置に維持される。この後、カバー9を図1で示した2個の止めねじ8で無目本体7に取り付ける。
【0080】
このときには、図8で示すように無目本体7の端部7Dとカバー9の端部9Aは密接している。このため、これ以後は、開口窓7Aを通って塵埃が無目本体7の内部に侵入するのを防止でき、前記移動機構は塵埃から保護されるため、この移動機構による引戸本体1の円滑な移動を確保できる。
【0081】
また、無目本体7の端部7Dとカバー9の端部9Aは密接しているため、無目本体7とカバー9との接続部は糸目地となり、無目2の外観性が良好となる。
【0082】
また、これらの端部7Dと9Aは無目本体7の外側に延びるものではなく、無目本体7の内部へ延びるものとなっているため、引戸装置の利用者や保守点検作業者等にとって邪魔にならない。
【0083】
図12〜図14は、別実施形態に係る回動手段75を示す。図12はこの回動手段75の側面図、図13は回動手段75の正面図、図14は、カバー9を回動させるときの回動手段75の側面図である。
【0084】
回動手段75は、図13で示すように、無目本体7側の第1連結部材76と、カバー9側の第2連結部材77と、これらの連結部材76,77に挿通された中心軸78とからなる。
【0085】
第1連結部材76は全体がばね材で形成されており、図12に示すとおり、上端には無目本体7の端部7Dの上下面に当てられる分岐部76A,76Bが形成されている。図13に示すとおり、分岐部76Aは無目本体7の長さ方向である左右方向の中央にあり、分岐部76Bは分岐部76Aの左右両側にある。図12で示すように、分岐部76Aの先端は、無目本体7の端部7Dに形成されている凹部7Eに差し込まれた折り曲げ部76Cとなっており、この折り曲げ部76Cの凹部7Eへの挿入と、分岐部76Aと76Bとによる端部7Dの挟着とにより、第1連結部材76は無目本体7に取り付けられている。第1連結部材76の下端には、図13で示すとおり、左右2個の湾曲部76Dが形成されており、これらの湾曲部76Dに中心軸78が挿通されている。
【0086】
第2連結部材77は、図8〜図11で示した実施形態の第2連結部材69と同じく、左右両端部において、カバー9の端部9Aの下面に溶接やリベット等の固定手段で取り付けられる取付部77Aを有し、第1連結部材76の左右外側にあるこれらの取付部77Aの中間部は、左右の垂下部77Bで取付部77Aよりも下側に設けられた本体部77Cとなっている。左右の垂下部69Bには孔77Dが形成されており、これらの孔77Dに中心軸78が挿通されている。そして、中心軸78の端部には、第1連結部材76及び第2連結部材77からの中心軸78の抜け出し防止のための部材78Aが係合されている。
【0087】
カバー9を無目本体7に対して開き回動させるときは、最初に図14で示すようにカバー9を引き下げる。これにより、ばね材からなる第1連結部材76の全体は弾性的に伸び変形して第2連結部材77及びカバー9は下降し、、この後、この状態を維持したままカバー9を中心軸78を中心に開き回動させる。
【0088】
カバー9を閉じ回動させるときは、以上とは逆操作すればよく、カバー9を中心軸78を中心に閉じ回動させた後、カバー9に作用させておいた引き下げ力を解除する。これより、第1連結部材76はそれ自身の弾性復元力でもとの形状に変形し、図12に示すとおり、無目本体7の端部7Dとカバー9の端部9Aはもとの位置まで近づき、これらの端部7Dと9Aは、第1連結部材76の薄厚の分岐部76Bの厚さ分だけの隙間を開けて略密接することになる。
【0089】
この実施形態では、端部7Dと9Aは密接せず、隙間を開けて略密接するが、その隙間は僅かであるため、この実施形態でも図8〜図11の実施形態と同様の効果を得られる。
【0090】
図15及び図16は、回動手段67,75を用いずに、無目本体7の端部7Dとカバー9の端部9Aとを挟圧部材80によって密接させる実施形態を示す。挟圧部材80の全体は図16で示され、この挟圧部材80は硬質の合成樹脂で形成されている。挟圧部材80は、図15で示すように、無目本体7の端部7Dの上面とカバー9の端部9Aの下面とに当たる一対の当接片80Aと、これらに当接片80A同士の後端を接続する接続部80Bとを有する。一対の当接片80Aは接続部80Bから弾性的に開くことができる。
【0091】
一方の当接片80Aには、他方の当接片80Aと対面する面において、三角形状に突設された係止部81が形成されており、また、接続部80Bの内面には突起82が形成されている。
【0092】
挟圧部材80は、図15で示されているように、開いた一対の当接片80Aで無目本体7の端部7Dとカバー9の端部9Aを挟むようにセットされ、このセットは、突起82が端部7Dの端面に当たるまで挟圧部材80を位置決め配置することにより行い、これにより、係止部81を端部7Dに形成されている孔又は凹部による被係止部83に係止させる。
【0093】
カバー9を無目本体7から取り外すとき、すなわちカバー9を無目本体7から開けるときには、図1で示されている2個の止めねじ8を取り外した後、カバー9を無目本体7から離れる水平方向に引っ張る。これにより、カバー9の端部9Aは挟圧部材80の一対の当接片80Aから抜け、カバー9を取り外すことができる。このとき、挟圧部材80の係止部81は無目本体の被係止部83に係止されているため、挟圧部材80は無目本体7に残り、無目本体7から分離することはない。
【0094】
また、カバー9を無目本体7に取り付けるときは、カバー9を無目本体7に押し付け、これにより、挟圧部材80の一対の当接片80Aを強制的に開かせ、カバー9の端部9Aを図15のもとに位置に挿入する。そして、図1の2個の止めねじ8でカバー9を無目本体7に止める。
【0095】
この実施形態によると、無目本体7の端部7Dとカバー9の端部9Aは挟圧部材80で挟まれるとともに、挟圧部材80の一対の当接片80Aによる加圧力で密接する方向に加圧され、密接することになる。
【0096】
また、この実施形態によると、カバー9を無目本体7から取り外しても、挟圧部材80は、係止部81と被係止部83の作用によって無目本体7に取り付け状態となって残ることになり、このため、挟圧部材80の取り扱いを容易にでき、また、カバー9を無目本体7に取り付ける作業を簡単に行える。
【0097】
図17及び図18は、無目本体7の形状及び構造によって無目本体7の端部とカバー9の端部とを密接させる実施形態を示す。
【0098】
無目本体7には、これまで説明した実施形態と同じく、下向きの端部7Dが設けられている。この無目本体7には、補助部材85が取り付けられ、この補助部材85の下端部は、端部7Dと上下に対面する対面端部85Aとなっている。無目本体7の外側に向かって斜め上向きに延びているこの対面端部85Aには、ゴムや軟質合成樹脂等による弾性部材86が被せられている。
【0099】
一方、カバー9の上端には端部9Bが形成され、この端部9Bは、これまでの実施形態の端部9Aと異なり、無目本体7の内側に向かって少し下り傾斜している。カバー9が無目本体7に取り付けられているとき、この端部9Bは、図17に示すとおり、無目本体7の端部7Aと対面端部85Aとの間に挿入されている。
【0100】
カバー9を無目本体7から取り外すときは、図1の2個の止めねじ8を取り外してからカバー9を少し持ち上げ、そのままカバー9を無目本体7の外側に引く。これにより、図18で示すように、カバー9の端部9Bは無目本体7の端部7Aと対面端部85Aとの間から抜け、カバー2を取り外すことができる。
【0101】
カバー9を無目本体7に取り付けるときは、以上とは逆の作業を行えばよく、カバー9の端部9Bを無目本体7の端部7Aと対面端部85Aとの間に挿入し、図1の2個の止めねじ8でカバー2を無目本体7に取り付ける。
【0102】
カバー2を無目本体7に取り付けたときには、端面端部85Aに被せた弾性部材86が圧縮されることにより、カバー9の端部9Bはこの弾性部材86の弾性力で押し上げられている。このため、無目本体7の端部7Aとカバー9の端部9Bは密接することになる。
【産業上の利用可能性】
【0103】
本発明は、例えば、引戸本体を移動させるための移動機構が収納される無目等の枠体が、枠体本体と、この枠体本体に開閉自在に設けられたカバーとを含んで構成される場合に利用することができる。
【符号の説明】
【0104】
1 引戸本体
2 不動部材を構成する枠体である無目
7 枠体本体である無目本体
7D 枠体本体の端部である無目本体の端部
9 カバー
9A,9B カバーの端部
10 引戸本体を移動させる移動機構を構成するガイドレール
67,75 回動手段
68,76 第1連結部である第1連結部材
69,77 第1連結部である第2連結部材
69D 長孔
70,78 中心軸
71 中心軸保持部材
80 挟圧部材
80A 当接片
81 係止部
83 被係止部
85A 対面端部
86 弾性部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
引戸装置が、移動する引戸本体と、この引戸本体に対して不動に配置された不動部材とを有して構成され、この不動部材が、枠体本体と、この枠体本体に開閉自在に設けられたカバーとを備えて構成されている引戸装置の枠体構造において、
前記枠体本体に対して前記カバーが閉じられたときに前記枠体本体と前記カバーの互いに対向する端部同士が上下に対向しているとともに、水平方向に延びているこれらの端部同士を挟んで密接させるためにこれらの端部同士を上下方向に加圧する挟圧部材を有し、この挟圧部材の上下一対の当接片の挟みによって前記端部同士が密接又は略密接し、前記カバーの前記端部は、このカバーを前記枠体本体から離れる水平方向に引っ張られることにより、前記挟圧部材の上下一対の前記当接片から抜け出し可能となっていることを特徴とする引戸装置の枠体構造。
【請求項2】
請求項1に記載の引戸装置の枠体構造において、前記挟圧部材の上下一対の前記当接片のうち、一方の当接片には、他方の当接片と対面する面において、前記枠体本体の前記端部に形成されている被係止部に係止する係止部が設けられていることを特徴とする引戸装置の枠体構造。
【請求項3】
請求項2に記載の引戸装置の枠体構造において、前記被係止部は孔又は凹部であり、前記係止部は三角形状の突起であることを特徴とする引戸装置の枠体構造。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の引戸装置の枠体構造において、前記挟圧部材の上下一対の前記当接片同士の後端を接続する接続部の内面には、前記被係止部に前記係止部が係止したときに前記枠体本体の前記端部の端面が当たる突起が形成されていることを特徴とする引戸装置の枠体構造。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の引戸装置の枠体構造において、前記挟圧部材は硬質の合成樹脂で形成されていることを特徴とする引戸装置の枠体構造。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の引戸装置の枠体構造において、枠体本体は、前記引戸本体を移動させるための移動機構が収納された無目本体であることを特徴とする引戸装置の枠体構造。
【請求項7】
請求項6に記載の引戸装置の枠体構造において、前記端部同士のうちの一方は前記無目本体の端部であり、この端部は前記無目本体の長さ方向に延びて下向きになっており、前記端部同士のうちの他方は、前記無目本体の長さ方向に延びる前記カバーの上向きの端部であり、このカバーは、前記無目本体の長さ方向における複数箇所でこの無目本体に着脱自在に止められることを特徴とする引戸装置の枠体構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2009−121233(P2009−121233A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−55863(P2009−55863)
【出願日】平成21年3月10日(2009.3.10)
【分割の表示】特願2000−314833(P2000−314833)の分割
【原出願日】平成12年10月16日(2000.10.16)
【出願人】(000239714)文化シヤッター株式会社 (657)
【Fターム(参考)】