説明

引戸

【課題】ペットが開口部をくぐり抜けようとしているときに引戸を開動させてもペットに怪我をさせないような構成を提供する。
【解決手段】引戸1に形成されるペット通行可能な開口部3が、幅方向においては引戸の閉じ側の木口1aに開口し且つ高さ方向においては引戸の下端との間に残存部を有する位置に形成されるので、引戸を閉じた状態であっても開口部をペットがくぐり抜けることができるだけでなく、ペットが開口部をくぐり抜けようとしているときに引戸を開動させてもペットは引戸開動方向とは逆方向に開口部の開口側からスムーズに抜け出すことができるので、引戸に引きずられたり、縦枠の間に挟まれることがなく、ペットに怪我をさせることがない。開口部の下方の残存部において引戸の下端に戸車などの引戸走行機構をスムーズに設置することができ、且つ、強度を確保できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、引戸に関し、特にペットが通行可能な開口部を有する引戸に関する。
【背景技術】
【0002】
犬や猫などの小動物を室内飼育する人が増加している状況に適合するため、これらペットが出入りできる開口部を有する引戸が提案されるに至っている(特許文献1〜3)。これら従来技術は、いずれも、壁8に設けた開口枠9に対して開閉可能に設置される引戸31の下部の幅範囲内に開口部32を形成し、且つ、この開口部32にくぐり戸(フラップ)33を開閉可能に設けて、引戸31を閉じた状態であってもくぐり戸33を押し開いて開口部32を通り抜けることができるように構成されている(図7(a))。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭63−226492号公報
【特許文献2】実用新案登録第2538138号公報
【特許文献3】実願平1−12595号(実開平2−103494号)のマイクロフィルム
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、このような従来技術による引戸31の場合、ペットが開口部32をくぐり抜けようとしているときに引戸31を開動すると、開口部32を通過中のペットが引戸31に引きずられたり、開口部32の左側枠32aと開口枠9の右縦枠9bとの間に挟まれてしまって怪我をすることがあった(図7(b))。
【0005】
したがって、本発明が解決しようとする課題は、ペットが開口部をくぐり抜けようとしているときに引戸を開動させてもペットに怪我をさせないような構成を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題を解決するため、請求項1に係る本発明は、ペットが通行可能な開口部を有する引戸において、該開口部は幅方向においては引戸の閉じ側の木口に開口し且つ高さ方向においては引戸の下端との間に残存部を有する位置に形成されることを特徴とする。
【0007】
請求項2に係る本発明は、請求項1記載の引戸において、開口部の内周に沿って開口部と略同形状に枠組みされた枠が設けられ、この枠の引戸の閉じ側木口に露出する上下端部にそれぞれ該端部を隠蔽する隠蔽部材が設けられることを特徴とする。
【0008】
請求項3に係る本発明は、請求項2記載の引戸において、枠が引戸の閉じ側木口に露出する上端部を隠蔽する上部隠蔽部材に設けられる第1の支持部と、開口部の奥側において第1の支持部と対向する位置に設けられる第2の支持部との間に回転自在に回転体が架け渡され、この回転体に閉塞体が吊下されて常態において開口部を閉塞することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に係る本発明によれば、幅方向においては引戸の閉じ側の木口に開口し且つ高さ方向においては引戸の下端との間に残存部を有する位置に、ペットが通行可能な開口部が形成されているので、引戸を閉じた状態であっても開口部をペットがくぐり抜けることができるだけでなく、ペットが開口部をくぐり抜けようとしているときに引戸を開動させてもペットは引戸開動方向とは逆方向に開口部の開口側からスムーズに抜け出すことができるので、引戸に引きずられたり、縦枠の間に挟まれることがなく、ペットに怪我をさせることがない。
【0010】
この開口部は、引戸の下端との間に残存部を有するように形成されるので、この残存部において引戸の下端に戸車を設置したり、ガイドピン走行用の溝を形成することができ、引戸走行機構の設置に支障となることがない。また、このような引戸走行機構を設置しても、所要の強度を確保することができる。
【0011】
請求項2に係る本発明によれば、枠の露出端部が隠蔽部材によって隠蔽されるので、美観を向上させると共に、人が通行するときに枠の露出端部に洋服が引っ掛かったり、枠の露出端部の角に接触して怪我をすることを防止することができる。
【0012】
請求項3に係る本発明によれば、開口部を閉塞する閉塞体を両方向に回動自在とするための好適な構成が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態(実施例1)による引戸の正面図(a)、同図A−A部分拡大図(b)および同図B−B断面図(c)である。
【図2】図1の引戸の閉止状態施工正面図(a)および開放状態施工正面図(b)である。
【図3】本発明の他実施形態(実施例2)による引戸の正面図(a)、同図A−A部分拡大図(b)および同図B−B断面図(c)である。
【図4】図3の引戸におけるペット用くぐり戸およびそれに関連する構成を示す正面図(a)および開口側の側面図(b)である。
【図5】この引戸に採用されているロック機構の非ロック時(a)およびロック時(b)の各状態を示す部分正面図である。
【図6】本発明の他実施形態(実施例3)による引戸の閉止状態施工正面図である。
【図7】従来技術による引戸の閉止状態施工正面図(a)および途中まで開放した状態の施工正面図(b)である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に本発明の幾つかの実施形態について詳述するが、本発明はこれら実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載によって定義される発明の範囲内において様々な変形・変更が許容されることは言うまでもない。
【実施例1】
【0015】
図1を参照して、この実施例による引戸1はフラッシュ構造からなる扉であり、ペットが通行可能な開口部3を有する。引戸1の寸法は限定的ではないが、一般に、高さ1990〜2200mm、幅550〜900mm、厚み20〜40mmであり、この実施例では、高さ1992mm、幅808mm、厚み33mmである。引戸1は、図示省略の戸車やレールなどからなる公知の走行機構を介して引手2が設けられる側の木口1aを閉じ側として、閉止状態(図2(a))と開放状態(図2(b))との間を開閉可能ないし走行可能とされている。
【0016】
開口部3の形状は特に限定されるものではなく、正面視にて正方形状、長方形状、半円形状、半楕円形状など任意であるが、引手2が設けられる側(閉じ側)の木口1aに開口するように形成されることが必須であり、この実施例では木口1aに開口するように形成された長方形状(コ字形状)の切り欠きからなる開口部3としている。開口部3の大きさは、この引戸1が設置される家屋ないし室内で飼育するペットの種類によって異なるものとすることができるが、正面視正方形状または長方形状の開口部の場合は、一般に、高さ300〜550mm、幅300〜400mm程度であり、且つ、引戸1の強度を保持するために、開口部3の幅は引戸1の幅の1/2未満とすることが好ましい。この実施例では、高さ333mm、幅240mmを有する長方形状の開口部3が引戸1の厚み方向に貫通して形成されている。
【0017】
開口部3が形成される高さ位置は、同様にペットの種類によって異なるものとすることができるが、ペットが通過しやすい高さ位置に形成する必要があるため、一般に、引戸1の下端(すなわち略床面)から200mmを越えない高さ位置に形成することが好ましい。また、開口部3の下方において引戸1の下端に戸車が設けられる場合があることを考慮すると、この高さ位置が過小であると該戸車で引戸1の荷重を支えることが困難になるので、開口部3の下方に残される残存部1cの高さを50mm以上とすることが好ましい。したがって、開口部3の引戸1下端からの高さ位置(残存部1cの高さ)は好ましくは50〜200mmである。このような高さ位置に開口部3が形成されることにより、開口部の下方の残存部1cにおいて引戸1の下端に戸車や溝などの引戸走行機構をスムーズに設置することができ、且つ、強度を確保できる。この実施例では、引戸1下端との間に高さ95mmの残存部1cを残して形成されている。
【0018】
既述したようにこの実施例の引戸1はフラッシュ構造を有するものであるから、四周木口に芯材(図示せず)を配して芯組してなる芯組体(図示せず)の両側面にそれぞれ表面材4,4を貼着固定した構造を有するが、開口部3が開口する木口1aにおいてはその高さに相当する分だけ芯材をカットすると共に、開口部3の内周木口に臨む箇所に別途芯材5を配して、開口部3の形状に応じた枠形状(この実施例ではコ字形状)に枠組みされている。開口部3の周縁に芯材5を配することにより、開口部3を形成したことによる引戸1の強度低下を補い、特に開口部3の下方の残存部1cの強度を補填することができる。
【0019】
開口部3の内周木口は縁材6で覆われており、この縁材6の外周面に形成した凹部7に、芯材5およびその両側面の表面材4,4を嵌合収容してタッカー、ビス、接着剤など(図示せず)を用いて固定される。縁材6は木製や樹脂成型品などであり、その両側面には表面材4,4と同様の化粧、任意化粧シートによる化粧、塗装による化粧などが施される。縁材6をクッション製のある材料で形成しても良い。なお、引戸1の木口1aに縁材6の端部が露出することになるので、これを隠蔽する隠蔽部材(実施例2の隠蔽部材14と略同様のもの)を貼着したり、あるいは、木口1aに木口被覆材が設けられる場合は該木口被覆材を縁材6の露出端部をも被覆するように延長して設けることにより、縁材6の露出端部を隠蔽することが好ましい。
【0020】
図2はこの引戸1を室内の壁8に設けた開口枠9に対して開閉可能に設置した状態を示す。この引戸1にはペットが通行可能な開口部3が設けられているので、引戸1を完全に閉めた状態(図2(a))であっても、開口部3を通ってペットが室内外を行き来することができる。さらに、開口部3は引手2側の木口1aに開口するように形成されているので、引戸1を閉めた状態でペットが開口部3を通ろうとしているときに引戸1を開いた場合であっても、ペットは開口部3の閉じ側木口1a側の開口端から容易に抜け出ることができるので、ペットに怪我をさせずに済む。
【実施例2】
【0021】
図3および図4に示す実施例2による引戸10は、実施例1の引戸1の開口部3にペット用のくぐり戸11を設けた構成であり、その他の部分・部材・要素は実施例1の引戸1と実質的に同じであるので、それらについては図3および図4に同一の符号を付して説明を省略する。以下、この実施例の引戸10において実施例1の引戸1とは異なっている構成および作用について詳述する。
【0022】
開口部3に設けられるペット用のくぐり戸11は、開口部3に取り付けられる枠12と、枠12に支持されて開口部3を実質的に閉塞する閉塞部材13と、引戸1の木口1aに露出する枠12の木口を隠蔽する隠蔽部材14(14a,14b)とから構成される。くぐり戸11は、これらの構成部材からあらかじめ組み立てたものを開口部3に取り付けても良いし、開口部3に枠12を取り付けた後に該枠12に対して閉塞部材13および隠蔽部材14を取り付けるようにしても良い。
【0023】
枠12としては、たとえば金属製の四角柱材を開口部3の形状および寸法に合わせてコ字形状に形成したものが用いられ、一例として、9mm角の四角柱材を高さ333mm、幅240mmのコ字形状に形成されたものであって上枠12a,縦枠12bおよび下枠12cからなる。枠12は、開口部3に填め込んでその内周に沿わせた状態で、開口部3の奥行き(引戸1の厚み)の中央に位置するようにビスなど(図示せず)によって固定される。この実施例では、枠12が開口部3の内周中央に位置するので、実施例1のような縁材6を用いることができない。このため、枠12の両側に断面L字形の縁材15,15(上縁材15a,縦縁材15b,下縁材15c)を接着剤などで固定し、これら縁材15,15間に、芯材5およびその両側面の表面材4,4を嵌合収容して固定するようにしている。縦枠12bの上端には、閉塞部材13に設けられる回転体18(後述)を回転自在に支持するための突起19(図示せず)が形成されている。
【0024】
なお、上述した枠12の構成は一例にすぎない。他の構成例としては、引戸1の厚みと略同幅に形成された枠12を用いて開口部3の内周全面を覆うようにしても良い。その材料は、アルミニウムやステンレスなどの金属製、木製、樹脂成型品などの任意材料を使用することができる。また、あらかじめ開口部3の形状および寸法に合わせて形成した成型品を使用することに代えて、棒材を開口部3に合わせて組み付けて枠12を形成しても良い。
【0025】
閉塞部材13は、閉塞体16と、カバー部材17(17a,17b)と、回転体18とを有して構成されている。閉塞部材13は、開口部3の内部に納まるように開口部3に略合致する形状および寸法に形成され、一例として、長さ(高さ)300〜550mm、幅200〜400mm、厚み1〜10mmを有する。閉塞体16はたとえば長さ310mm、幅230mm、厚み1.5mmの軟質樹脂シートで形成することができるが、これに限定されるものではなく、合成樹脂板や木質板などで形成されたものであっても良い。透明または半透明の樹脂シートまたは樹脂板で閉塞体16を形成すると、この閉塞体16によって開口部3が閉塞されている状態であっても、ペットが通行しようとしていることを引戸1の反対側から確認することができる。
【0026】
閉塞体16の上下にそれぞれカバー部材17a,17bが取り付けられる。カバー部材17a,17bの材質は樹脂成型品、木製、金属製など任意であり、閉塞体16と同様の材質から形成されても良いし、異なる材質から形成されても良い。また、上下のカバー部材17a,17bで同様の材質または異なる材質を選択しても良い。この実施例では、上部カバー部材17aとして、開口部3と略同一の長さ(高さ)および幅寸法を有するシート状ないし薄板状の樹脂成型品を用い、これを閉塞体16の上端から被せて表裏両側から挟み込むようにして接着剤で固定している。また、下部カバー部材17bとしては、開口部3と略同一の長さ(高さ)および幅寸法を有する断面U字形状の樹脂成型品を用い、閉塞体16の下端部を嵌合するようにして接着剤で固定されている。上部カバー部材17aおよび下部カバー部材17bは、接着剤に代えて、スナップボタンやネジなどで閉塞体16に固定しても良い。
【0027】
上部カバー部材17aの上端部にはその全幅に亘って延長する回転体18が差し込み固定されている。回転体18は、アルミやスチールなどの金属、合成樹脂、木材などの任意材料からパイプ状または丸棒状に形成され、その一端が枠12の縦枠12bに回転自在に支持され、他端が上枠12aの木口を隠蔽する上部隠蔽部材14aに回転自在に支持される。この実施例では、アルミパイプからなる回転体18の一端が縦枠12bから引戸木口1a方向に突出する突起19に挿入されると共に、その他端が上部隠蔽部材14aから開口部3の奥方に向けて突出する突起20に挿入されることによって、回転体18が回転自在に支持され、したがって閉塞体16が回転自在とされている。回転体18を回転自在に支持する構成はこれに限定されるものではなく、たとえば回転体18を丸棒状に形成し、縦枠12bおよび上部隠蔽部材14aにそれぞれ該丸棒の両端を嵌入させて回転自在とする構成を採用しても良い。
【0028】
隠蔽部材14a,14bは金属製のプレートからなり、枠12の上下の開口端側木口にネジ22a,22bで固定される。隠蔽部材14a,14bは好ましくは引戸1の厚さと略同一の幅を有するものとして形成され、枠12の開放端側の木口と共にその表裏両側に固定される上下縁材15a,15cの開放端側の木口を隠蔽する。また、前述のように、上部隠蔽部材14aから開口部3の奥方に向けて突出する突起20が設けられ、回転体18の開口端側の端部を回転自在に収容している。
【0029】
下部カバー部材17bには、下枠12cに設けられる磁石21に磁着可能な磁着部材22が磁石21と対向する位置に設けられている。磁石21および磁着部材22の位置や数は限定的ではないが、この実施例では、開口部3の奥端近くと開口端近くの2箇所において下枠12cに磁石21,21が設けられ、閉塞体16が開口部3を実質的に閉塞している状態でこれら磁石21,21の略直上位置となるように下部カバー部材17bに磁着部材22,22が設けられている。磁石21と磁着部材22の配置に関しては、下部カバー部材17bに磁石を設けると共に下枠12cに磁着部材を設けても良い。また、下部カバー部材17bと下枠12cに互いに磁着可能な磁石を設けてもよい。
【0030】
さらに、磁着部材22が磁石に磁着された状態すなわち閉塞体16が開口部3を実質的に閉塞している状態を保持するためのロック機構23が設けられることが好ましい。この実施例においては、閉塞体16の下端に回転自在に設けられる鉤状のロック片24と、このロック片24を回転操作する操作部材25と、枠12の下部においてロック片24を係止可能に形成される係止部26とを有するロック機構23が採用されている。ロック片24が係止部26に係止されていない状態(図5(a))では閉塞体16が回転体18を軸として回転可能であるが、操作部材25を介してロック片24を反時計方向(図5において)に回転させると、ロック片24が係止部26に入り込んで係止されるので、閉塞体16の回転が規制され、開口部3を実質的に閉塞している状態を保持する。
【0031】
このロック機構23によれば、鉤状のロック片24が係止部26に係止されたロック状態において、閉塞体16に対して引張力を与えるようにすることができるので、閉塞体16が軟質な樹脂シートで形成されている場合であっても上下方向の撓みや弛みを防止することができ、撓みによって生じた隙間からペットが抜け出ることもない。なお、この実施例ではロック機構23がくぐり戸11の幅方向中央に一箇所設けられているが、複数箇所に設けても良い。複数のロック機構23を設ける場合は、一つのロック機構23に設けた操作部材25の操作によって、たとえばギアなどの連動機構を介して各ロック機構23のロック片24が同期的に動作するような構成を採用することが好ましい。
【0032】
上述のように構成されたくぐり戸11(閉塞体16)は、通常は磁着部材22が磁石21に磁着されることによって開口部3を実質的に閉塞し、引戸1の開閉によってもばたつかない状態に保持されるが、ペットが開口部3をくぐり抜けようとするときには回転体18を回転軸として回転するのでペットの通行を妨げない。
【0033】
閉塞体16が汚れたり壊れたりしたときは、上部カバー部材17aを固定しているネジやスナップボタンなどを外し、さらに必要に応じて下方カバー部材17bも外すことによって、簡単に交換することができる。また、上部カバー部材17aが接着剤で固定されている場合などにあっては、上部隠蔽部材14aを取り外し、さらに回転体18を引き抜くことによって、閉塞部材13全体を取り外して交換することができる。
【実施例3】
【0034】
図6に示す実施例3による引戸30は、実施例2の引戸10の変形例であり、引戸を全開したときに、小壁27に形成した透光部28に略整列する透光部29を形成した構成であり、その他の部分・部材・要素は実施例2の引戸10と実質的に同じであるので、それらについては図6に同一の符号を付して説明を省略する。以下、この実施例の引戸30において実施例1の引戸1とは異なっている構成および作用について詳述する。
【0035】
引戸30に形成される透光部29は、くぐり戸11が設けられる開口部3の引戸木口1b側に残された部分に、任意の形状および大きさで任意数形成される。透光部29の大きさは、たとえば高さ300〜550mm、幅40〜400mmの範囲内において適宜に設定され、この実施例では2つの円形(直径150mm)の透光部29,29が適当間隔で形成されている。透光部29の幅方向の形成位置については、開口部3の奥方に配置される縦芯材に重ならないよう、開口部3の側方にたとえば15〜30mm以上離れた位置に形成され、また、引戸木口1b側の縦芯材などに重ならないように引戸木口1bからたとえば20〜30mm以上離れた位置に形成されることが好ましい。また、透光部29の高さ方向の形成位置については、開口部3の高さ範囲内であることが好ましい。なお、透光部28,29は特開2009−174180号公報に記載される方法で設けることができる。
【0036】
小壁27に形成される透光部28は、引戸30を全開したときにその透光部29と略整列する位置に形成される。この実施例では、引戸30の透光部29と同じ形状および大きさの2つの透光部28が同じ間隔で形成され、引戸30を全開したときに透光部29と透光部28とが重なり合った状態で略整列するものとされている。しかしながら、このような位置関係で形成されることは必須ではなく、上記したような高さ位置であれば透光部28,29の形成位置は任意である。また、透光部28,29は異なる形状や大きさで形成されたものであっても良い。
【0037】
この実施例の引戸30によれば、小壁27に形成される透光部28および/または引戸30に形成される透光部29によって、小壁27/引戸30の向こう側に人やペットが存在することを確認することができ、あるいは透光部28,29から漏れる明かりや影によってその気配を感じ取ることができる。
【0038】
なお、この実施例における透光部28,29は小壁27/引戸30を厚み方向に貫通する穴として形成されているが、透光によって向こう側の存在や気配を看取できるものであればその態様は限定されない。たとえば、該貫通穴にガラスや透明アクリル板などの透光板を嵌め込んでその表裏からモールで挟持固定する形態を採用しても良い。
【符号の説明】
【0039】
1 引戸
1a 閉じ側木口
1b 開き側木口
1c 開口部下方の残存部
2 引手
3 開口部
4 表面材
5 芯材
6 縁材
7 凹部
8 壁
9 開口枠
10 引戸
11 ペット用のくぐり戸
12 枠
12a 上枠
12b 縦枠
12c 下枠
13 閉塞部材
14 隠蔽部材
14a 上部隠蔽部材
14b 下部隠蔽部材
15縁材
15a 上縁材
15b 縦縁材
15c 下縁材
16 閉塞体
17 カバー部材
17a 上部カバー部材
17b 下部カバー部材
18 回転体
19 突起(第2の支持部)
20 突起(第1の支持部)
21 磁石
22 磁着部材
23 ロック機構
24 ロック片
25 操作部材
26 係止部
27 小壁
28 透光部
29 透光部
30 引戸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペットが通行可能な開口部を有する引戸において、該開口部は幅方向においては引戸の閉じ側の木口に開口し且つ高さ方向においては引戸の下端との間に残存部を有する位置に形成されることを特徴とする引戸。
【請求項2】
開口部の内周に沿って開口部と略同形状に枠組みされた枠が設けられ、この枠の引戸の閉じ側木口に露出する上下端部にそれぞれ該端部を隠蔽する隠蔽部材が設けられることを特徴とする請求項1記載の引戸。
【請求項3】
枠が引戸の閉じ側木口に露出する上端部を隠蔽する上部隠蔽部材に設けられる第1の支持部と、開口部の奥側において第1の支持部と対向する位置に設けられる第2の支持部との間に回転自在に回転体が架け渡され、この回転体に閉塞体が吊下されて常態において開口部を閉塞することを特徴とする請求項2記載の引戸。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−231529(P2011−231529A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−102991(P2010−102991)
【出願日】平成22年4月28日(2010.4.28)
【出願人】(390030340)株式会社ノダ (146)
【Fターム(参考)】