説明

引違い扉の連係装置

【課題】加工工数および製造コストを低減化することができるとともに、扉に前後方向の外力が作用した際において、異音の発生を防止することができ、かつ閉扉時に、扉を体裁良く収めることができるようにした引違い扉の連係装置を提供する。
【解決手段】前方の扉4における召合せ部32側の側端部に、先端部が左右方向の内方を向く平面視L字状の係合片45を後方に向けて連設する。連係部材34を、合成樹脂素材をもって、後方の扉6における召合せ部33側の側端部の前面に着脱可能に取り付けられる基部35と、この基部35より前方に向けて突設され、その前端部36aが前方の扉4の裏面に当接可能な当接部37を有するとともに、左右方向の内側面36bに上下方向の凹入溝部38を有する係合部36とにより形成する。閉扉状態において、前記凹入溝部38に、前方の扉4における係合片45を係合させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャビネット等の筐体における前面開口部を、互いに同期動作させた複数枚の引違い扉により開閉操作しうるようにした引違い扉の連係装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、オフィス等の執務空間で使用されるキャビネットにおいては、前面開口部を、左右両扉、および中間扉を前後して配置した3枚の引違い扉により開閉可能にするとともに、閉扉操作時に、前後に位置する扉同士を、連係部材により互いに連係させることにより、操作性を高めるとともに、扉に前後方向の外力が作用した場合でも、前後の扉同士の位置関係を保持し、防盗性を向上させうるようにしたものが知られている(特許文献1、2参照)。
【0003】
しかし、特許文献1、2に記載のものでは、連係部材を、板金製の扉に溶接等により取り付けていることから、加工工数が多くなり、製造コストも高くなる。
また、扉に前後方向の外力が作用した場合には、前後に位置する一方の扉と、他方の扉の連係部材とが、当接し合う虞があるため、金属音が発生し易い。
さらに、扉同士の連係状態においては、前後の扉間に、多少の隙間を設けているため、この隙間の許容範囲内でも、扉の前後位置でのばらつきが生じ、閉扉時に、扉を体裁良く収めることができないという問題があった。
【特許文献1】特開平08−193468号公報
【特許文献2】特許第2748087号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、従来の技術が有する上記のような問題点に鑑み、加工工数および製造コストを低減化することができるとともに、扉に前後方向の外力が作用した際において、異音の発生を防止することができ、かつ閉扉時に、扉を体裁良く収めることができるようにした引違い扉の連係装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によると、上記課題は、次のようにして解決される。
(1) 筐体における前面の開口部を、順次に前後して左右方向に移動自在に配置された複数枚の扉により開閉可能とするとともに、扉開閉操作時に、前後に位置する扉同士を、連係部材により互いに連係させるようにした引違い扉の連係装置において、前方の扉における召合せ部側の側端部に、先端部が左右方向の内方を向く平面視L字状の係合片を後方に向けて連設するとともに、連係部材を、合成樹脂素材をもって、後方の扉における召合せ部側の側端部前面に着脱可能に取り付けられる基部と、この基部より前方に向けて突設され、その前端部が前方の扉の裏面に当接可能な当接部を有するとともに、左右方向の内側面に上下方向の凹入溝部を有する係合部とにより形成し、閉扉状態において、前記凹入溝部に、前方の扉における係合片を係合させるようにする。
【0006】
(2) 上記(1)項において、凹入溝部の溝幅を、その開口部から内底面に向かって幅狭となるようにする。
【0007】
(3) 上記(2)項において、凹入溝部を、その内壁前面を、開口部から内底面に向かって後方に傾斜する傾斜面とするとともに、その内壁後面を、開口部から内底面に向かって前方に傾斜する傾斜面とする。
【0008】
(4) 上記(1)〜(3)項のいずれかにおいて、引違い扉を、左扉、中間扉、右扉の3枚の扉により構成し、左右両扉の裏面に、左右1対のリンクバーの一端をそれぞれ回動自在に連結するとともに、それらの他端を、中間扉の裏面に、上下方向に沿って形成したガイドレールに昇降可能に案内されるように設けた連動金具に、それぞれ回動自在に連結し、かつ扉開閉操作時に、各扉同士を、同期動作させるようにしたリンク機構を有し、連動金具を、基板と、この基板の後方に離間して配置された背面板とで形成し、基板の後面に、左扉、右扉のいずれか一方の扉に一端が連結されたリンクバーの他端を回動自在に連結するとともに、背面板の後面に、他方の扉に一端が連結されたリンクバーの他端を回動自在に連結する。
【0009】
(5) 上記(4)項において、連動金具に設けられ、かつ中間扉より前方に位置する左扉側の側方に向かって突出させてストッパ片と、鍵装置の施錠動作に連動するデッドボルトと、このデッドボルトに一端が連動する作動杆と、この作動杆の他端に設けられ、かつ前記ストッパ片の閉扉時における上方移動を阻止する鉤状部とにより、リンクロック機構を構成し、このリンクロック機構を介して、扉の施錠を行うようにする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によると、次のような効果が奏せられる。
請求項1記載の発明によると、前方の扉における連係部側の側端部に、先端部が左右方向の内方を向く平面視L字状の係合片を後方に向けて連設するとともに、連係部材を、合成樹脂素材をもって、後方の扉における召合せ部側の側端部前面に着脱可能に取り付けられる基部と、この基部より前方に向けて突設され、その前端部が前方の扉の裏面に当接可能な当接部を有するとともに、左右方向の内側面に上下方向の凹入溝部を有する係合部とにより形成し、閉扉状態において、前記凹入溝部に、前方の扉における係合片を係合させるようにしてあるため、加工工数および製造コストを低減化することができるとともに、扉に前後方向の外力が作用した際において、異音の発生を防止することができ、かつ閉扉時に、扉を体裁良く収めることができる。
【0011】
請求項2記載の発明によると、凹入溝部の溝幅を、その開口部から内底面に向かって幅狭となるようにしてあるため、扉同士の前後の位置決めを容易にできるとともに、閉扉時に、扉を体裁良く収めることができる。
【0012】
請求項3記載の発明によると、凹入溝部を、その内壁前面を、開口部から内底面に向かって後方に傾斜する傾斜面とするとともに、内壁後面を、開口部から内底面に向かって前方に傾斜する傾斜面としてあるため、前後に位置する扉同士の位置関係が、前後にずれてしまっている場合でも、凹入溝部における内壁の前後両面の傾斜によって、前方に位置する扉の係止片を、後方に位置する扉と共に互いに前後に引き合う方向に作用し、扉同士の前後の位置決めを容易にでき、閉扉時における扉を体裁良く収めることができる。
【0013】
請求項4記載の発明によると、引違い扉を、左扉、中間扉、右扉の3枚の扉により構成し、左右両扉の裏面に、左右1対のリンクバーの一端をそれぞれ回動自在に連結するとともに、それらの他端を、中間扉の裏面に、上下方向に沿って形成したガイドレールに昇降可能に案内されるように設けた連動金具に、それぞれ回動自在に連結し、かつ扉開閉操作時に、各扉同士を、同期動作させるようにしたリンク機構を有し、連動金具を、基板と、この基板の後方に離間して配置された背面板とで形成し、基板の後面に、左扉、右扉のいずれか一方の扉に一端が連結されたリンクバーの他端を回動自在に連結するとともに、背面板の後面に、他方の扉に一端が連結されたリンクバーの他端を回動自在に連結しているため、かしめ等の特殊な加工を施す必要なく、各構成部材の交換や、組立作業を容易に行うことができるとともに、扉同士を円滑に同期動作させることができる。
【0014】
請求項5記載の発明によると、連動金具に、中間扉より前方に位置する左扉側の側方に向かって突出させたストッパ片を、鍵装置の施錠動作に連動する鉤状部により、閉扉時における上方移動を阻止しうるように、リンクロック機構を構成し、このリンクロック機構を介して、扉の施錠を行うようにしてあるため、別途に施錠装置を用いることなく、リンクバーをロックすることができ、製作コストを削減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。
図1は、本発明の引違い扉のリンク装置を備えるキャビネットの扉全閉状態を裏面から見た正面図、図2は、図1のII−II線横断平面図、図3は、扉全開状態を裏面から見た全体正面図、図4は、図3のIV−IV線横断平面図、図5は、扉全閉状態を裏面から見た全体斜視図、図6は、連動金具と第1および第2のリンクバーとの連結状態を示す部分拡大分解斜視図、図7は、図2におけるVII部分の拡大平面図、図8は、第1リンクバーとリンク受金具との連結状態を示す部分拡大分解斜視図、図9は、図2におけるIX部分の拡大平面図、図10は、第2リンクバーとリンク受金具との連結状態を示す部分拡大分解斜視図、図11は、図2におけるXI部分の拡大平面図、図12は、リンクロック機構部分の拡大斜視図、図13は、図7のXIII−XIII線縦断側面図、図14は、図1のXIV−XIV線における連係装置の横断平面図、図15は、連係装置の拡大正面図、図16は、連係部材の斜視図である。
【0016】
なお、以下の説明において、左右とは、筐体を後方より見た場合について言い、また、図2における上方を「前方」、下方を「後方」とする。本実施形態においては、筐体として、オフィス等で使用されるキャビネットを例とする。
【0017】
図1〜図5に示すように、キャビネット(1)における前面の開口部(2)は、引違い扉(3)により、開閉可能に閉塞されるようになっている。この引違い扉(3)は、図1、図2に示すように、左扉(4)、中間扉(6)および右扉(5)の3枚の扉を、図示を省略した前後3列の左右方向の溝またはレール内に、前方から後方に、順次前後に重畳しつつ、左右方向に移動自在に配置することにより構成されている。
【0018】
引違い扉(3)は、その裏面に設けたリンク装置(7)により、図1および図2に示す扉全閉状態から、図3および図4に示す扉全開状態にわたって、少なくとも左扉(4)または右扉(5)のいずれか一方を、把手(4a)または(5a)をもって開閉操作することにより、中間扉(6)を介して、各扉(4)(5)(6)同士を同期動作させうるようになっている。
【0019】
リンク装置(7)は、左右1対の第1および第2リンクバー(8)(9)と、連動金具(10)とにより構成されている。第1リンクバー(8)の一端(8a)は、中間扉(6)より前方に位置する左扉(4)の裏面に、第2リンクバー(9)の一端(9a)は、中間扉(6)より後方に位置する右扉(5)の裏面に、それぞれ回動自在に連結されている。第1および第2リンクバー(8)(9)の他端(8b)(9b)は、連動金具(10)に回動自在に連結されている。
【0020】
連動金具(10)は、図6および図7に示すように、前面に、上下に離間して位置する1対のローラ(11)(11)を回動自在に設けた垂直な基板(12)と、この基板(12)の上部後方に離間して、一体的に平行に配置された背面板(13)と、基板(12)における左扉(4)側の側端部より前方に向かって連設した案内片(14)と、この案内片(14)の前端部(14a)の下部より左扉(4)側の左側方に向かって連設したストッパ片(15)とにより形成されている。案内片(14)の上下方向における中間の内側面には、スライダ(16)が設けられている。
【0021】
連動金具(10)は、上下のローラ(11)(11)を、中間扉(6)における左扉(4)側の端部裏面に上下方向に沿って形成したガイドレール(17)に係合させるとともに、案内片(14)の内側面を、スライダ(16)を介して、中間扉(6)における上下方向に延びる縁外端面に、摺接もしくは近接しうるように配置することにより、昇降可能に案内されるようになっている。
【0022】
基板(12)の後面下部には、取付基部(12a)が、後方に向けて切り起し形成され、この取付基部(12a)の後面には、第1リンクバー(8)の他端(8b)が、また、背面板(13)の後面には、第2リンクバー(9)の他端(9b)が、それぞれ同形の第1および第2挿通孔(18)(18’)を介して連結されている。
【0023】
第1および第2挿通孔(18)(18’)には、各リンクバー(8)(9)における他端(8b)(9b)の前面にそれぞれ設けた同形の第1および第2回動軸部(19)(19’)が挿嵌されて、互いに回動自在に連結され、各リンクバー(8)(9)の他端(8b)(9b)は、上下のローラ(11)(11)間において、それぞれ上下および前後に離間しうるようになっている。
【0024】
第1および第2挿通孔(18)(18’)は、円形孔(18a)(18a’)と、この円形孔(18a)(18a’)の内周縁を直径方向の外方に向けて切込んだ案内孔(18b)(18b)(18b’)(18b’)とで形成されている。第1および第2回動軸部(19)(19’)は、基板(12)または背面板(13)の板厚分を残して、前記円形孔(18a)(18a’)から突出しうるように整合する円形突起(19a)(19a’)と、この円形突起(19a)(19a’)の外周縁を直径方向の外方に向けて突出させ、かつ前記案内孔(18b)(18b)(18b’)(18b’)に整合しうる係止片(19b)(19b)(19b’)(19b’)とで形成されている。
【0025】
各リンクバー(8)(9)の他端(8b)(9b)と連動金具(10)とは、各リンクバー(8)(9)の他端(8b)(9b)における第1および第2回動軸部(19)(19’)を、連動金具(10)の第1および第2挿通孔(18)(18’)内に、それぞれ互いに整合させて挿通させた後、係止片(19b)(19b)(19b’)(19b’)と案内孔(18b)(18b)(18b’)(18b’)との整合位置が、図6に想像線で示すように、扉開閉操作時における各リンクバー(8)(9)の回動範囲外に設定されるように、言い換えれば、係止片(19b)(19b)(19b’)(19b’)と案内孔(18b)(18b)(18b’)(18b’)とが、各リンクバー(8)(9)の回動範囲内において、常に不整合位置となるように組み付けることにより連結されている。
【0026】
これにより、扉開閉操作時における各リンクバー(8)(9)の回動範囲内においては、回動軸部(19)(19’)が挿通孔(18)(18’)から離脱することがなく、各リンクバー(8)(9)を、連動金具(10)に確実に連結することができるとともに、部品交換時における連動金具(10)から各リンクバー(8)(9)の取外し作業を、それぞれ独立して容易に行うことができるようになっている。
【0027】
図8〜図10に示すように、第1および第2リンクバー(8)(9)のそれぞれの一端(8a)(9a)における前面には、それぞれ同形の第3および第4回動軸部(20)(20’)が設けられている。第3および第4回動軸部(20)(20’)は、前方から後方に向けて順に、大径軸(20a)(20a’)、中径軸(20b)(20b’)および小径軸(20c)(20c’)の3段の軸径を有する。
【0028】
第1および第2リンクバー(8)(9)のそれぞれの第3および第4回動軸部(20)(20’)は、左扉(4)および右扉(5)の裏面に取り付けた第1および第2リンク受金具(21)(22)にそれぞれ設けた同形の第3および第4挿通孔(23)(23’)に挿嵌されて、互いに回動自在に連結されている。
【0029】
第3および第4挿通孔(23)(23’)は、第3および第4回動軸部(20)(20’)の大径軸(20a)(20a’)が挿入可能な上部大径軸孔(23a)(23a’)と、小径軸(20c)(20c’)が挿入可能な中間軸孔(23b)(23b’)と、中径軸(20b)(20b’)が挿入可能な下部小径軸孔(23c)(23c’)とが上下方向に連設された達磨孔形状を有する。
【0030】
第1リンクバー(8)の一端(8a)を第1リンク受金具(21)に組み付けるには、図10および図11に示すように、第1リンク受金具(21)の第3挿通孔(23)に、第1リンクバー(8)の第3回動軸部(20)を装着するに際し、上部大径軸孔(23a)に大径軸(20a)を挿入するとともに、小径軸(20c)が中間軸孔(23b)に至る位置まで挿入する。次いで、小径軸(20c)を中間軸孔(23b)を通して下降させて、下部小径軸孔(23c)に落し込むとともに、下部小径軸孔(23c)に中径軸(20b)を整合させ、かつ第1リンクバー(8)の一端(8a)における前面と、第1リンク受金具(21)の後面との間に形成される間隙に、スペーサ部材(24)を挿入し、小径軸(20c)に噛み込ませるようにして装着する。
【0031】
第2リンクバー(9)の一端(9a)を第2リンク受金具(22)に組み付けるには、図8および図9に示すように、第1リンクバー(8)と同様に、第2リンク受金具(22)の第4挿通孔(23’)に、第2リンクバー(9)の第4回動軸部(20’)を装着するに際し、上部大径孔(23a’)に大径軸(20a’)を挿入するとともに、小径軸(20c’)が中間軸孔(23b’)に至る位置まで挿入する。次いで、小径軸(20c’)を中間軸孔(23b’)を通して下降させて、下部小径孔(23c)に落し込むとともに、下部小径孔(23c’)に中径軸(20b’)を整合させ、かつ第2リンクバー(9)の一端(9a)における前面と、第2リンク受金具(22)の後面との間に形成される間隙に、スペーサ部材(25)を挿入し、小径軸(20c’)に噛み込ませるようにして装着する。
【0032】
キャビネット(1)には、図1、図3、図5および図12に示すように、鍵装置(26)が引違い扉(3)における左扉(4)の前面に設置されている。この鍵装置(26)は、鍵(図示せず)の施錠/解錠操作による施錠動作に連動するデッドボルト(27)を、左扉(4)の裏面に有する。このデッドボルト(27)には、左扉(4)の裏面にブラケット(28)をもって水平方向の軸廻りに回動自在に軸支された作動杆(29)の一端の係合鈎(29a)が係合されている。
【0033】
作動杆(29)は、図12に実線矢印で示すように、鍵装置(26)の施錠動作によるデッドボルト(27)の上下動作により、水平軸廻りの回動動作に変換しうるようになっている。作動杆(29)の遊端部(29b)には、後方に向けて鉤状に延出する鉤状部(30)が設けられている。この鉤状部(30)は、中間扉(6)に昇降自在に設けた連動金具(10)におけるストッパ片(15)の上方近傍に位置しうるように配置され、鍵装置(26)の施錠動作に連動する作動杆(29)の回動により、ストッパ片(15)の可動範囲内に出没しうるようにし、引違い扉(3)の扉全閉状態におけるストッパ片(15)の上方移動を阻止する、施錠装置としてのリンクロック機構を構成している。
【0034】
リンクロック機構は、図13に示すように、作動杆(29)の遊端部(29b)に設けた鉤状部(30)の先端部(31)を、扉全閉時における鍵装置(26)の施錠動作により、連動金具(10)におけるストッパ片(15)の上端に向けて、上方から前後に傾倒回動させることにより、ストッパ片(15)の背面にフック掛け可能に係合させるようにして、連動金具(10)の上昇動作を阻止しうるようにしてある。
そのため、扉全閉時における鍵装置(26)の施錠動作により、左扉(4)と中間扉(6)との間隔が広がることはない。
【0035】
図1および図2に示すように、引違い扉(3)には、扉開閉操作時に、前後に位置する各扉同士、すなわち、左扉(4)と中間扉(6)同士、および中間扉(6)と右扉(5)同士を互いに連係させるように、前方の左扉(4)および中間扉(6)の各召合せ部(32)(32’)側に対向する後方の中間扉(6)および右扉(5)の各召合せ部(33)(33’)の側端部に、連係部材(34)が、それぞれ上下に離間させて取り付けられている。
【0036】
例えば、図14〜図16に示すように、前方の中間扉(6)の召合せ部(32’)側に対向する後方の右扉(5)における召合せ部(33’)側の側端部に取り付けられた連係部材(34)は、合成樹脂素材をもって、後方の右扉(5)の召合せ部(33’)における側端部の前面に着脱可能に取り付けられる基部(35)と、この基部(35)より前方に向けて突設された係合部(36)とにより形成されている。
【0037】
この係合部(36)は、その前端部(36a)が前方の中間扉(6)の裏面に当接可能な当接部(37)を有するとともに、左右方向の内側面(36b)に上下方向の凹入溝部(38)を有する。この凹入溝部(38)の溝幅は、その開口部(38a)から内底面(38b)に向かって幅狭となるようにするとともに、その内壁前面(39)を、開口部(38a)から内底面(38b)に向かって後方に傾斜する傾斜面とし、その内壁後面(40)を、開口部(38a)から内底面(38b)に向かって前方に傾斜する傾斜面としている。
【0038】
基部(35)の後面には、右扉(5)における召合せ部(33’)の側端部が嵌合される平面視L字形の切欠部(41)が形成されている。この切欠部(41)には、その内壁前面に、前後方向の内方に向け、かつ左右方向の内方に向けて突出させた差込み舌片(42)が、その内壁側面に、左右方向の内方に向けて切起し突出させた係止舌片(43)がそれぞれ設けられている。
【0039】
差込み舌片(42)は、図14に示すように、右扉(5)の前面に貫通形成した差込み孔(44a)に、前方から後方に向けて差し込み、その先端部(42a)が、右扉(5)の裏面に当接しうるようになっている。係止舌片(43)は、右扉(5)の召合せ部(33’)における側端面に開口した係止孔(44b)に臨ませるようにして係止させることにより、連係部材(34)を、右扉(5)の召合せ部(33’)における側端部に取り付けうるようになっている。
【0040】
凹入溝部(38)には、図7、図9および図14に示すように、前方の前扉(4)および中間扉(6)における召合せ部(32)(32’)側の側端部に、先端部が左右方向の内方を向き、かつ後方に向けて連設された平面視L字状の係合片(45)(45’)が、閉扉状態において、それぞれ係合しうるようになっている。
これにより、加工工数および製造コストを低減化することができるとともに、扉に前後方向の外力が作用した際において、異音の発生を防止することができ、かつ閉扉時に、扉を体裁良く収めることができる。
また、扉同士の前後の位置決めを容易にできるとともに、閉扉時に、扉を体裁良く収めることができる。
さらに、前後に位置する扉同士の位置関係が、前後にずれてしまっている場合でも、凹入溝部における内壁の前後両面の傾斜によって、前方に位置する扉の係止片を、後方に位置する扉と共に互いに前後に引き合う方向に作用し、扉同士の前後の位置決めを容易にでき、閉扉時における扉を体裁良く収めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の装置を備えるキャビネットの扉全閉状態を、裏面から見た全体正面図である。
【図2】図1のII−II線横断平面図である。
【図3】扉全開状態を裏面から見た全体正面図である。
【図4】図3のIV−IV線横断平面図である。
【図5】扉全閉状態を裏面から見た全体斜視図である。
【図6】連動金具と第1および第2のリンクバーとの連結状態を示す部分拡大分解斜視図である。
【図7】図2におけるVII部分の拡大平面図である。
【図8】第1リンクバーとリンク受金具との連結状態を示す部分拡大分解斜視図である。
【図9】図2におけるIX部分の拡大平面図である。
【図10】第2リンクバーとリンク受金具との連結状態を示す部分拡大分解斜視図である。
【図11】図2におけるXI部分の拡大平面図である。
【図12】リンクロック機構部分の拡大斜視図である。
【図13】図7のXIII−XIII線縦断側面図である。
【図14】図1のXIV−XIV線における連係装置の横断平面図である。
【図15】連係装置の拡大正面図である。
【図16】連係部材の斜視図である。
【符号の説明】
【0042】
(1)キャビネット(筐体)
(2)開口部
(3)引違い扉
(4)左扉
(4a)把手
(5)右扉
(5a)把手
(6)中間扉
(7)リンク装置
(8)第1リンクバー
(8a)一端
(8b)他端
(9)第2リンクバー
(9a)一端
(9b)他端
(10)連動金具
(11)ローラ
(12)基板
(12a)取付基部
(13)背面板
(14)案内片
(14a)前端部
(15)ストッパ片
(16)スライダ
(17)ガイドレール
(18)第1挿通孔
(18a)円形孔
(18b)案内孔
(18’)第2挿通孔
(18a’)円形孔
(18b’)案内孔
(19)第1回動軸部
(19a)円形突起
(19b)係止片
(19’)第2回動軸部
(19a’)円形突起
(19b’)係止片
(20)第3回動軸部
(20a)大径軸
(20b)中径軸
(20c)小径軸
(20’)第4回動軸部
(20a’)大径軸
(20b’)中径軸
(20c’)小径軸
(21)第1リンク受金具
(22)第2リンク受金具
(23)第3挿通孔
(23a)上部大径軸孔
(23b)中間軸孔
(23c)小径軸孔
(23’)第4挿通孔
(23a’)上部大径軸孔
(23b’)中間軸孔
(23c’)小径軸孔
(24)スペーサ部材
(25)スペーサ部材
(26)鍵装置
(27)デッドボルト
(28)ブラケット
(29)作動杆
(29a)係合鈎
(29b)遊端部
(30)鉤状部
(31)先端部
(32)(32’)前方の扉の召合せ部
(33)(33’)後方の扉の召合せ部
(34)連係部材
(35)基部
(36)係合部
(36a)前端部
(36b)内側面
(37)当接部
(38)凹入溝部
(38a)開口部
(38b)内底面
(39)内壁前面
(40)内壁後面
(41)切欠部
(42)差込み舌片
(42a)先端部
(43)係止舌片
(44a)差込み孔
(44b)係止孔
(45)(45’)係合片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体における前面の開口部を、順次前後に重畳して左右方向に移動自在に配置された複数枚の扉により開閉可能とするとともに、扉開閉操作時に、前後に位置する扉同士を、連係部材により互いに連係させるようにした引違い扉の連係装置において、
前方の扉における召合せ部側の側端部に、先端部が左右方向の内方を向く平面視L字状の係合片を後方に向けて連設するとともに、
連係部材を、合成樹脂素材をもって、後方の扉における召合せ部側の側端部前面に着脱可能に取り付けられる基部と、この基部より前方に向けて突設され、その前端部が前方の扉の裏面に当接可能な当接部を有するとともに、左右方向の内側面に上下方向の凹入溝部を有する係合部とにより形成し、閉扉状態において、前記凹入溝部に、前方の扉における係合片を係合させるようにしたことを特徴とする引違い扉の連係装置。
【請求項2】
凹入溝部の溝幅を、その開口部から内底面に向かって幅狭となるようにしたことを特徴とする請求項1記載の引違い扉の連係装置。
【請求項3】
凹入溝部を、その内壁前面を、開口部から内底面に向かって後方に傾斜する傾斜面とするとともに、その内壁後面を、開口部から内底面に向かって前方に傾斜する傾斜面としたことを特徴とする請求項2記載の引違い扉の連係装置。
【請求項4】
引違い扉を、左扉、中間扉、右扉の3枚の扉により構成し、左右両扉の裏面に、左右1対のリンクバーの一端をそれぞれ回動自在に連結するとともに、それらの他端を、中間扉の裏面に、上下方向に沿って形成したガイドレールに昇降可能に案内されるように設けた連動金具に、それぞれ回動自在に連結し、かつ扉開閉操作時に、各扉同士を、同期動作させるようにしたリンク機構を有し、
連動金具を、基板と、この基板の後方に離間して配置された背面板とで形成し、基板の後面に、左扉、右扉のいずれか一方の扉に一端が連結されたリンクバーの他端を回動自在に連結するとともに、背面板の後面に、他方の扉に一端が連結されたリンクバーの他端を回動自在に連結したことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の引違い扉の連係装置。
【請求項5】
連動金具に設けられ、かつ中間扉より前方に位置する左扉側の側方に向かって突出させてストッパ片と、鍵装置の施錠動作に連動するデッドボルトと、このデッドボルトに一端が連動する作動杆と、この作動杆の他端に設けられ、かつ前記ストッパ片の閉扉時における上方移動を阻止する鉤状部とにより、リンクロック機構を構成し、このリンクロック機構を介して、扉の施錠を行うようにしたことを特徴とする請求項4記載の引違い扉の連係装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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