強化構造を備えた靴底および緩衝構造を備えた靴底
【課題】ミッドソールの捩れを中足部だけでなく後足部においても許容し、かつ、ミッドソールやアッパーが足にフィットした状態で足を安定して支える。
【解決手段】強化部材2は中足部12から後足部13に至る範囲に連なって設けられ、前記強化部材2は:足の内外方向Wの概ね中央のラインに沿って設けられた棒状ないし帯状のメインバー21と;前記中足部12において前記メインバー21から延びる中足内羽根22,23および中足外羽根24,25と;前記後足部13において前記メインバー21から延びる複数枚の後足羽根26a,26bと;を有し、前記各羽根22〜26bは前記メインバー21と一体に形成されており、前記中足内羽根22,23および中足外羽根24,25が前記ミッドソールの下面に付着され、かつ、前記各後足羽根26a,26bの少なくとも一部が前記ミッドソールの後足部13内に埋設されている。
【解決手段】強化部材2は中足部12から後足部13に至る範囲に連なって設けられ、前記強化部材2は:足の内外方向Wの概ね中央のラインに沿って設けられた棒状ないし帯状のメインバー21と;前記中足部12において前記メインバー21から延びる中足内羽根22,23および中足外羽根24,25と;前記後足部13において前記メインバー21から延びる複数枚の後足羽根26a,26bと;を有し、前記各羽根22〜26bは前記メインバー21と一体に形成されており、前記中足内羽根22,23および中足外羽根24,25が前記ミッドソールの下面に付着され、かつ、前記各後足羽根26a,26bの少なくとも一部が前記ミッドソールの後足部13内に埋設されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、靴底、特に、中足部の強化構造や後足部の緩衝構造に関する。
【背景技術】
【0002】
靴底のアーチ部においてミッドソールのアーチの形状に合わせた強化部材を有する靴底、たとえば、アウターソールの着地時に、アウターソールに付着されていないミッドソールの部分が接地しない靴底、は公知である。そのような強化部材はミッドソールの変形を抑制することでミッドソールの踏まず部の剛性を補強する。下記の特許文献1〜4には、強化部材等を有する公知の靴底構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−287709号公報(要約)
【特許文献2】特開昭63−194602号公報(FIG.1,FIG.2)
【特許文献3】特開2001−299404号公報(要約)
【特許文献4】特開2002−034605号公報(要約)
【発明の概要】
【0004】
特開2000−287709号の靴底において、強化部材は前足部から後足部にわたって設けられている。強化部材は、前足部から後足部にわたって前後に長い棒状部と、棒状部の軸線を中心に回転可能で、かつ、踏まず部よりも後方に設けられた羽根とを備えている。
しかし、この靴底において、強化部材はソールの上面の凹所に配置されている。このような強化部材は足のアーチの低下を抑制できないだろう。
【0005】
特開昭63−194602号の靴底において、強化部材は、長手方向に沿って延びる強化エレメントを有し、該強化エレメントの前端と後端に羽根が設けられている。
しかし、この強化部材は摩耗底と中間底(ミッドソールに相当)との境界に配置されており、後端の部分が中間底内に埋設されていない。
【0006】
特開2001−299404号の靴底において、強化部材は、外底の長手方向における中心軸に沿った帯状の縦アーチサポート片と、この縦アーチサポート片と交差して足の第1楔状骨から立方骨の先端部を結ぶ部分に対応する部分にわたって形成された帯状の第1の横アーチサポート片と、足のボールガースに対応する部分に(母指球から小指球にわたって)形成された第2の横アーチサポート片とからなる。
この強化部材は後足部の羽根を備えていない。
【0007】
特開2002−034605号の靴底において、強化部材は、前記特開2001−299404号の前記構造に加え、後足部においてループ状に形成されている。
しかし、帯状のアーチサポート片は踵部の前端より後方においてループ状となっている。
また、ループ状のアーチサポート片は後足部において中間底(ミッドソールに相当)と接地底との境界に配置されており、中間底内に埋設されていない。
【0008】
これらの靴は、後足部が過度にねじれたり、アーチが低下するかもしれない。そのため、以下に説明するように、不整地や斜面の走行ないし歩行に適さないだろう。
【0009】
不整地を走るトレイルランニングにおいて斜面を横切る方向に走行する場合、通常のランニングシューズの高いねじれ剛性では図14のように足首が屈曲する。そのため、足首に負担がかかると考えられる。
一方、ミッドソールを捩れ易くすることで足首の屈曲は抑制できる。しかし、この場合、ミッドソールが大きく捩れて型崩れするので、足の安定した支持ができないだろう。
【0010】
かかる問題はトレイルランニングだけでなく、排水のために斜めに舗装された歩道などにおいても生じるかもしれない。
【0011】
したがって、本発明の第1の目的は、アーチの低下や屈曲を抑制し得る強化部材を備えた靴底において、ミッドソールの捩れを中足部だけでなく後足部においても許容し、かつ、ミッドソールやアッパーが足にフィットした状態で足を安定して支えることである。
【0012】
靴底は、軽量であることや、足を安定した状態に保持する保持機能、着地の衝撃を吸収して緩和する緩衝機能等が要求される。
足は、走行時には踵の外側から着地した後、内側に倒れ込むような挙動をする。このため、足の踵の外側が着地時の大きな衝撃を受ける。したがって、靴底の後足部の外側は大きく変形することで、高い緩衝性を発揮することができる。一方、前記内側への足の倒れ込みを抑制するには、靴底の後足部の内側は変形され難くして、高い保持機能を発揮することができる。すなわち、足の内外で衝撃による変形の度合を異なるようにする方が好ましい場合がある。
下記の特許文献5〜8には、後足部において分離された部分を有する靴底が開示されている。
【0013】
【特許文献5】WO2004/066771A1(要約)
【特許文献6】US2003/0061731A1(要約)
【特許文献7】特開2002−320502号公報(要約)
【特許文献8】USP6,438,870B2(図5)
【0014】
WO2004/066771A1およびUSP6,438,870B2の靴底は後足において内外方向に分離されている。
US2003/0061731A1および特開2002−320502号の靴底は、緩衝部材が後足において分離されている。
【0015】
しかし、これらの文献5〜8には、後足部を捩れ易くして、変形要素が個別に変形し易くするという思想は開示されていない。
【0016】
したがって、本発明の第2の目的は、変形要素およびアウターソールの各々が後足部において分離された靴底において、後足部において捩れ易くして変形要素が個別に変形し易くすることである。
【0017】
本発明の第3の目的は、捩れを許容し、かつ、アーチの低下を抑制し得るソールの強化構造において、前記中足部の捩れを損なわずに靴底の屈曲を防止することである。
【0018】
本発明の第4の目的は、ミッドソールの後足部に配置された強化部材により、緩衝機能や反発機能を高める新規な構造を提供することである。
【0019】
本発明の第5の目的は、ゴム様または鞘様の圧縮変形部材をソールに装着するための新規な構造を提供することである。
【0020】
前記各目的を達成するために、新規な強化構造または緩衝構造を備えた靴底が提供される。
【0021】
本発明のある態様は、強化構造を備えた靴底であって、前記靴底は、前足部、中足部および後足部を有するミッドソールと、前記ミッドソールの下面に取り付けられたアウターソールと、前記ミッドソールの一部を強化する強化部材とを備え、前記強化部材は、少なくとも、前記ミッドソールの中足部の概ね前端から前記後足部の前後方向の概ね中央に至る範囲に連なって設けられ、前記強化部材は:足の内外方向の概ね中央のラインに沿って、少なくとも、前記中足部の前後方向の概ね中央から前記後足部の前後方向の概ね中央に至る範囲に設けられた棒状ないし帯状のメインバーと;前記中足部において前記メインバーから足の内側に向かって延びる中足内羽根と;前記中足部において前記メインバーから足の外側に向かって延びる中足外羽根と;前記後足部において前記メインバーから足の内側または外側の少なくとも一方に向かって延びる複数枚の後足羽根と;を有し、前記各羽根は前記メインバーと一体に形成されており、ここにおいて、前記中足内羽根および中足外羽根が前記ミッドソールの下面に付着され、かつ、前記各後足羽根の少なくとも一部が前記ミッドソールの後足部内に埋設されている。
【0022】
本態様によれば、棒状ないし帯状のメインバーが、中足部における足の屈曲もしくはアーチの低下を抑制する。さらに、複数の羽根とメインバーとが肋骨と脊柱との関係のように構成されており、羽根がメインバーに対して回転するように変位するのを許容する。したがって、中足部および後足部において靴底がメインバーを中心にねじれるのが許容される。そのため、斜面を横切るように歩行した場合、足の前足部が斜めに接地していても、靴底がねじれるから、足の後足部が水平に近い状態になり得る。その結果、脚が足首において左右に屈曲するのを抑制し得る。
【0023】
しかも、足の内側および外側に向って延びる中足内羽根および中足外羽根は、中足部においてミッドソールが大きく捩れて型崩れするのを抑制し、これにより中足部においてミッドソールが足にフィットした状態で足を支えるのに役立つ。
【0024】
一方、後足羽根は後足部においてミッドソールが足の踵にフィットした状態で足を支えるのに役立つ。
特に、ミッドソール内に埋設された後足羽根は、ミッドソールの下面に付着する中足羽根に比べ捩り剛性の増大に寄与しにくいから捩じれ易く、かつ、足を支え易い。
【0025】
本発明において、ミッドソールは、靴底の一部であって、緩衝機能を有し、本質的に接地しない部分である。ミッドソールの材質は特に限定されるものではなく、ミッドソールは、EVA(エチレン−酢酸ビニル共重合体)やPU(ポリウレタン)などの発泡体の他、ポリウレタンゲルなどのゲル状物質や、エアやゲル状物質又は軟質のゴム様弾性体などが充填された鞘(pod )状ないし袋状の部材や、これらを組み合わせて形成した複合体であってもよい。
本発明において、アウターソールとは接地底をいう。
【0026】
本態様において、各羽根は帯状ないし薄板状であってもよく、好ましくは、中足内羽根および中足外羽根がメインバーよりも薄い。
本態様において、中足部における強化部材の平面視形状は特に限定されないが、たとえば、“H”型の他に星型、“Y”型などであってもよい。
また、本発明において、メインバーは2本の棒状部を包含していてもよい。
【0027】
本発明において、中足内羽根が「メインバーから足の内側に向かって」延びるとは、中足内羽根がメインバーから真横方向(足長方向に直交する幅方向)に内側に向かって延びる場合を含む他、メインバーから斜め前方または後方の内側に向かって延びる場合も含む。
本発明において、中足外羽根が「メインバーから足の外側に向かって」延びるとは、中足外羽根がメインバーから真横方向(足長方向に直交する幅方向)に外側に向かって延びる場合を含む他、メインバーから斜め前方または後方の外側に向かって延びる場合も含む。
【0028】
本発明において、「足の内外方向の概ね中央のライン」とはミッドソールの底面を内外に概ね均等に分割するライン、ならびに、後足部の前後方向および内外方向の中心と第2指または第3指の中足骨とを結ぶラインを含み、更にこれら2つのラインの近傍の直線および曲線を含む。
【0029】
本態様において、前記ミッドソールは、中足部および後足部が互いに一体に形成された上ミッドソールと、前記上ミッドソールとの間で前記後足羽根の少なくとも1つを前記後足部において挟む下ミッドソールとを備えているのが好ましい。
【0030】
この場合、後足羽根をミッドソール内に製造上容易に埋設することができる。下ミッドソールは、EVAの発泡体や、前記ゲル状物質や、前記鞘状ないし袋状の部材や、これらの複合体等で形成することができる。下ミッドソールはEVAの発泡体のみ、あるいは、ゲル状物質のみで形成されてもよい。
【0031】
上下のミッドソールの一部もしくは全部を発泡樹脂で形成する場合、好ましくは、前記上ミッドソールを構成する発泡樹脂の硬度は、前記下ミッドソールを構成する発泡樹脂の硬度よりも大きくする。
この場合、硬い上ミッドソールは、足を支える安定性を高め、一方、着地の衝撃が柔らかい下ミッドソールで緩衝される。
【0032】
本態様において、複数枚の前記中足内羽根が前記中足部において足の前後方向に互いに離間して設けられ、かつ、複数枚の前記中足外羽根が前記中足部において足の前後方向に互いに離間して設けられているのが好ましい。
【0033】
この場合、複数枚の中足内(外)羽根が前後に分離されているので、複数枚の中足羽根がメインバーのまわりに個別に回転可能となる。そのため、脊柱のように、メインバーが足の前後方向に沿って徐々に滑らかに捩れるのを許容する。したがって、靴底の過度の捩れを防止し得ると共に適度な捩れが可能となる。
【0034】
本態様の好適な実施例においては、前記後足羽根は、前記メインバーから足の内側に向って延びる後足内羽根と、足の外側に向って延びる後足外羽根とを包含する。
この実施例によれば、内外の後足羽根で足を支えることで、足首における脚の横方向への屈曲や、足の内外への横ぶれを抑制することができる。
【0035】
本発明において、後足内羽根が「メインバーから足の内側に向かって」延びるとは、後足内羽根がメインバーから真横方向(足長方向に直交する幅方向)に内側に向かって延びる場合を含む他、メインバーから斜め前方または後方の内側に向かって延びる場合も含む。
本発明において、後足外羽根が「メインバーから足の外側に向かって」延びるとは、後足外羽根がメインバーから真横方向(足長方向に直交する幅方向)に外側に向かって延びる場合を含む他、メインバーから斜め前方または後方の外側に向かって延びる場合も含む。
【0036】
本実施例においては、前記後足内羽根は前記足の内側の端において足の内側面に沿って湾曲した内巻上部を有しており、前記後足外羽根は前記足の外側の端において足の外側面に沿って湾曲した外巻上部を有しているのが好ましい。
これらの2つの巻上部はミッドソールを介して足の後足を内外から支えるので、更に安定性が向上する。
【0037】
この場合、更に好ましくは、前記ミッドソールは、発泡樹脂からなり前記後足羽根の上面が接合されるミッドソール本体と、前記後足羽根の下方に配置されるゴム様または鞘様の圧縮変形部材とを包含し、前記圧縮変形部材は足の内側および外側の少なくとも一方において前記各巻上部と前記アウターソールとの間に配置されている。
【0038】
このゴム様ないし鞘様の圧縮変形部材により、後足の緩衝性が向上する。
「ゴム様または鞘様の圧縮変形部材」は、圧縮されたときに変形しながら反発する力を蓄える部材であって、熱可塑性エラストマーや加硫ゴムなどのゴム弾性を発揮する部材の他に、エアやゲル状物質又は軟質のゴム様弾性体などが充填された鞘(pod )状ないし袋状の部材を含む。なお、熱可塑性エラストマーとは、常温において加硫ゴムの性質を呈するが、高温において可塑化されてプラスチック加工機で成型可能な高分子材料をいう。
【0039】
また、本実施例においては、前記後足内羽根と前記後足外羽根とは、前記メインバーの一部を介して互いに連なっており、前記メインバーおよび前記両後足羽根が前記部位およびその近傍において上方に向って凸となる曲線に概ね沿うように形成されているのが好ましい。
【0040】
この場合、上方に向って凸となる曲線に沿って配置された後足羽根は、上方からの荷重が負荷された際に、曲り梁りとして作用するから、所定の剛性を維持しつつ、しなやかに撓むので、羽根の軽量化に役立つ。
しかも、上方に向って凸の曲り梁りは、着地の衝撃を緩衝するのに役立つ上、捩じれの防止にも役立つ。
【0041】
「メインバーおよび両後足羽根が前記部位およびその近傍において上方に向って凸となる曲線に概ね沿って」とは、前記部位およびその近傍において後足羽根がメインバーに向って徐々に上方に向かうような形状を意味し、後足羽根の延びる方向に沿った断面線の断面においてアーチ状に湾曲した形状であってもよい。
【0042】
本態様において、前記ミッドソールの前足部および後足部には前記アウターソールが取り付けられ、前記ミッドソールの中足部の大半にはアウターソールが取り付けられないでアーチが形成され、前記ミッドソールの中足部のアーチの下面に前記中足内羽根および前記中足部外羽根が付着されているのが好ましい。
この場合、中足部の大半に硬いアウターソールがないので、中足部のねじれ易さを向上させることができる。
【0043】
本態様において、前記メインバーは足の内外の概ね中央のラインに沿って前記中足部の概ね前端から前記後足部の前後方向の概ね中央まで設けられているのが好ましい。 この場合、メインバーによる中足部のアーチの低下や屈曲の抑制を向上させることがのできる。
【0044】
本発明の別のある態様は、後足部に緩衝構造を備えた靴底であって:少なくとも足の中足部から後足部の全体を支持すると共に着地の際の衝撃で圧縮変形して前記衝撃を吸収する機能を持つ支持要素と;前記足の後足部において前記支持要素の下方に配置され着地の際に上下方向に縮んだ状態に変形する変形要素と;前記後足部において、前記支持要素と変形要素との間に介挿されて、前記支持要素と変形要素とを互いに連結する連結部材と;前記変形要素の下面に接合され路面に接地するアウターソールと;を備え、前記変形要素およびアウターソールは、それぞれ、前記足の後足部において少なくとも内外および/または前後に本質的に分離されて、前記足の後足部の少なくとも2つの島状の領域に配置され、前記連結部材は、少なくとも、前記支持要素の中足部の概ね前端から後足部の前後方向の概ね中央に至る範囲に設けられ、前記連結部材は:少なくとも前記支持要素の後足部の概ね前端から前記後足部の前後方向の概ね中央に至る範囲に、足の内外の概ね中央のラインに沿って設けられた棒状ないし帯状のメインバーと;該メインバーと一体に形成された複数の後足羽根と;を備え、前記複数の後足羽根は、互いに分離され、かつ、後足部において前記メインバーから前記島状の領域に向かって延びており、前記本質的に分離された変形要素は前記後足羽根ごとに設けられている。
【0045】
後足部において変形要素が本質的に分離されているので、後足部の各領域について変形の連続性が断ち切られる。変形の連続性を断ち切ることで、たとえば、領域ごとに変形し易さの異なる靴底の設計を容易に行うことができる。
【0046】
また、メインバーが足の内外の概ね中央のラインに沿って配置され、このメインバーから互いに異なる方向に向かって羽根が延びているので、分離された羽根は後足部の捩れを許容する。したがって、各変形要素同士の間の変形の連続性が小さくなるので、各変形要素が個別に変形し易い。
【0047】
「変形要素およびアウターソールが足の後足部において本質的に分離される」とは、足の後足部の各島状の領域の間で変形要素の変形の連続性が実質的に断ち切られているか、あるいは、極めて小さいことをいい、複数個の変形要素が別個に形成されて互いに離間して配置されている場合や、複数個の変形要素が薄いまたは細い連結部を介して一体に形成されている場合を含む。
【0048】
前記変形要素は、たとえば、EVAやPUなどの発泡体や、前記ゲル状物質や、前記鞘状ないし袋状の部材や、これらの複合体等で形成することができる。変形要素は支持要素よりも硬度の小さいまたは大きいEVAなどの発泡体のみで形成されてもよい。
【0049】
連結部材は必ずしも1つの部材で構成される必要はなく、2以上の部材で構成されてもよい。
なお、本発明において、接合とは直接的に接合することおよび間接的に接合することのいずれをも含む概念である。
【0050】
本態様において、前記メインバーは、前記ラインに沿って、中足部の概ね前端まで棒状ないし帯状に延びており、これにより、前記支持要素の中足部におけるアーチの低下を抑制する強化部材を構成しているのが好ましい。
この場合、中足部の過度な捩れを制御できる。そのため、後足部の離散化した変形要素同士の間においても捩れ易くなる。したがって、各変形要素同士の間の変形の連続性が小さくなるから、各変形要素が個別に変形し易くなる。
【0051】
本態様において、前記連結部材を構成する素材のヤング率が前記支持要素を構成する素材のヤング率よりも大きいのが好ましい。
【0052】
更に、前記変形要素はゴム様または鞘様の圧縮変形部材を包含し、該圧縮変形部材のヤング率は前記支持要素を構成する素材のヤング率よりも小さい場合に特に好ましい。
【0053】
本態様の好ましい実施例においては各変形要素は小さい塊であり、一方、支持要素は薄い板状であるので、板状の支持要素に塊状の変形要素を直接接合すると応力集中等により支持要素と変形要素との接合部分が弱くなったり、足裏に対する突き上げ感が生じたりする。そこで、硬い連結部材を介して変形要素と支持要素とを接合することにより、前記接合部分の強度向上を図ることができる。しかも、変形要素に加わった衝撃を硬い連結部材で支持要素に分散して伝達することもできる。
【0054】
本態様において、前記連結部材は後足部の概ね中心に配置された基部を有し、前記後足羽根が前記基部から延びるようにしてもよい。3以上の後足羽根が設けられてもよく、この場合、後足羽根が基部から放射状に設けられていてもよい。基部から放射状に延びた後足羽根は変形要素同士の変形の連続性を発生させないから、各変形要素か互いに異なる変形をするのに適している。
【0055】
本発明の別のある態様は、強化構造を備えた靴底であって、ミッドソールの中足部を強化する強化部材を備え、前記強化部材は:少なくとも、前記中足部の概ね前端から前記中足部の概ね後端に至る範囲に、足の内外の概ね中央のラインに沿って設けられた棒状ないし帯状のメインバーと;前記中足部において前記メインバーから足の内側に向かって延びる複数枚の中足内羽根と;前記中足部において前記メインバーから足の外側に向かって延びる複数枚の中足外羽根と;を備え、前記各羽根は前記メインバーと一体に形成されており、前記各中足内羽根は互いに前後方向に離間しており、かつ、前記各中足外羽根は互いに前後方向に離間しており、前記メインバーの厚さが前記中足内羽根および中足外羽根のそれよりも大きい。
【0056】
本態様によれば、棒状ないし帯状のメインバーが、中足部における足の屈曲もしくはアーチの低下を抑制する。さらに、複数の羽根とメインバーとが肋骨と脊柱との関係のように構成されており、羽根がメインバーに対して回転するように変位するのを許容するから、中足部において靴底がメインバーを中心にねじれるのを許容する。
【0057】
特に、複数枚の中足内(外)羽根が前後に分離されているので、複数枚の中足羽根がメインバーのまわりに個別に回転可能となる。そのため、脊柱のように、メインバーが足の前後方向に沿って徐々に滑らかに捩れるのを許容する。したがって、靴底の過度の捩れを防止し得ると共に適度な捩れが可能となる。
【0058】
なお、メインバーの厚さとはメインバーのうちの最も厚い部分の厚さをいい、羽根の厚さとは羽根のうちの最も厚い部分の厚さをいう。
本態様において、中足部における強化部材の平面視形状は、特に限定されないが、たとえば、“H”型の他に星型、“Y”型などであってもよい。
【0059】
本態様において、前記メインバーは前記中足内羽根および中足外羽根よりも厚さの大きい棒状部を有し、前記棒状部が中足部の前後方向の前端から中足部の前後方向の後端まで足の前後方向に沿って延びていてもよい。
【0060】
この場合、棒状部は捩れ易さを損なわず、かつ、屈曲しにくいので、靴底のねじれを許容しつつ、アーチの低下抑制の機能をさらに向上させ得る。。
なお、棒状部の厚さとは、棒状部のうちの尾根の部分(稜線を含む断面において最も厚い部分)の厚さをいう。
【0061】
本態様において、前記メインバーは棒状の棒状部と、前記棒状部の足の内側に連なる帯状の内側帯状部と、前記棒状部の足の外側に連なる帯状の外側帯状部とを有し、前記各帯状部は前記棒状部と一体に形成されており、前記内側帯状部から前記各中足内羽根が足の内側に延びており、前記外側帯状部から前記各中足外羽根が足の外側に延びていてもよい。
【0062】
この場合、太い棒状部の内外に帯状部を設けることで羽根が変形する際の応力の集中を抑制し得る。
しかも、棒状部だけではアーチの低下に対する抗力が局所的になるのに対し、内外に帯状部を設けることで、アーチの低下やソールの平面曲げに対する抗力も安定する。
更に、棒状部よりも広い接着面を持つ帯状部はメインバーとミッドソールとの接着の確実性を向上させる。
【0063】
本発明の別のある態様は、後足部に緩衝装置を備えた靴底であって、後足部を有するミッドソールと前記ミッドソールの後足部を強化する強化部材とを備え、前記強化部材は、後足部の概ね中心に配置された基部と、前記基部から互いに異なる方向に向かって延びる少なくとも3枚の羽根とを備え、前記各羽根は前記基部と一体に形成されており、前記各羽根および基部の真上には前記ミッドソールが配置され、前記各羽根の真下には互いに分離されたアウターソールが配置され、かつ、前記基部の真下にはアウターソールが配置されておらず、前記基部の近傍において前記各羽根が前記基部に近づくに従い上方に向かって膨出している。
【0064】
本態様によれば、前記各羽根の膨出によりアーチが形成されて、アーチの撓みにより後足部の緩衝機能や反発機能が向上する。
特に、互いに分離された羽根は、一枚の板と異なり、アーチの撓みが大きくなる。したがって、緩衝機能や反発機能が高まる。
【0065】
「基部の近傍において各羽根が基部に近づくに従い上方に向かって膨出している」とは、2つの羽根に連なる断面線における断面で基部および基部近傍において、2つの羽根および基部が、上方に凸の凸部を構成していることをいい、略アーチ状の形状を含む。
【0066】
本態様において、前記ミッドソールは、少なくとも足の中足部から後足部の全体を支持すると共に着地の際の衝撃で圧縮変形して前記衝撃を吸収する機能を持つ支持要素と、前記足の後足部において前記支持要素の下方に配置され着地の際に上下方向に縮んだ状態に変形する変形要素とを備え、前記強化部材は、前記後足部において、前記支持要素と変形要素との間に介挿されて、前記支持要素と変形要素とを互いに連結する連結部材を構成していてもよい。
【0067】
この場合、前記強化部材を構成する素材のヤング率が前記支持要素を構成する素材のヤング率よりも大きいのが好ましい。
こうすれば、硬い素材でアーチを形成して緩衝機能および反発機能をより発揮できる。また、硬い連結部材を介して変形要素と支持要素とを接合することにより、接合部分の強度向上を図ることができる。しかも、変形要素に加わった衝撃を硬い連結部材で支持要素に分散して伝達することもできる。
【0068】
前記変形要素はゴム様または鞘様の圧縮変形部材を包含し、該圧縮変形部材のヤング率は前記支持要素を構成する素材のヤング率よりも小さくてもよい。
【0069】
本態様において、前記各羽根は後足部のミッドソールの側面および/または背面まで延びた端部を有し、前記端部が上方に向かって巻き上がる巻上部を形成しているのが好ましい。
これらの2つの巻上部はミッドソールを介して足の後足を内外から支えるので、安定性が向上する。
【0070】
この場合、前記巻上部の真上の部分には発泡樹脂からなるミッドソール本体が配置され、前記巻上部の真下の部分にはゴム様または鞘様の圧縮変形部材が配置されており、前記圧縮変形部材のヤング率は前記ミッドソール本体を構成する素材のヤング率よりも小さくてもよい。
巻上部の下方の空間は、巻上部を設けない場合に比べ大きくなるので、前記圧縮変形部材を前記端部に配置し易い。これにより、前記緩衝機能や反発機能が更に高まる。
【0071】
本発明の別のある態様は、足裏を覆うミッドソールと、前記ミッドソールの下面に取り付けられ接地するアウターソールとを備えた靴底であって、前記ミッドソールは樹脂の発泡体からなるミッドソール本体と、ミッドソールの側面または背面において外部に露出するゴム様または鞘様の圧縮変形部材とを包含し、前記圧縮変形部材を前記ミッドソール本体もしくはアウターソールと協働して所定の部位に保持するための保持部材が設けられ、前記保持部材は、前記圧縮変形部材の上面または下面に固着された接合部と、ミッドソールの側面または背面において前記接合部から上方または下方に延びる第1係合部と、を包含し、前記第1係合部は前記圧縮変形部材に係合して、前記圧縮変形部材が飛び出すのを防止する。
【0072】
本態様によれば、ファーストストライク時の衝撃を小さくするために、あるいは、反発機能を高めるために、あるいは、ビジュアル的な観点から、圧縮変形部材をソールの側面や背面に露出させて配置した場合に、該部材の固定が安定する。また、着用者等が興味本位に圧縮変形部材を取り出そうとしても、容易に取り出すことができない。
【0073】
本態様の好適な実施例においては、前記ミッドソール本体には、前記ミッドソールの前足部の中心または後足部の中心から前記側面または背面に行くに従い上下方向の高さが大きくなる凹所が形成され、前記凹所に前記圧縮変形部材が配置され、前記保持部材の接合部は前記ミッドソール本体の前記凹所の下面に固着され、前記第1係合部は前記接合部から下方に向かって延びて前記圧縮変形部材の端部の上部に係合してもよい。
【0074】
このようにすれば、圧縮変形部材を嵌める凹所を設けることで外に向かって大きな露出面を持つ圧縮変形部材を安定して保持できる。この凹所は前記保持部材の接合部と概ね同じ範囲に設けられてもよい。
【0075】
本実施例においては、前記ミッドソール本体は前記凹所が形成された上ミッドソール本体と、前記上ミッドソール本体の下方に配置される下ミッドソール本体とを包含し、前記圧縮変形部材は前記保持部材と前記下ミッドソール本体との間に挟まれており、前記下ミッドソール本体は、前記凹所における前記側面または背面の端部において、上方に向かって巻き上がった第2係合部を有し、前記第2係合部が前記圧縮変形部材に係合して、前記圧縮変形部材が飛び出すのを防止するようにしてもよい。
【0076】
前記アウターソールは、前記凹所における側面または背面の端部において、上方に向かって巻き上がった第3係合部を有し、前記第3係合部が前記圧縮変形部材に直接または間接的に係合して、前記圧縮変形部材が飛び出すのを防止するようにしてもよい。
【0077】
このように第2または第3係合部を設けることにより、圧縮変形部材の上部に加え下部もミッドソール本体やアウターソールに係合するので、圧縮変形部材を安定して保持することができる。
【0078】
かかる圧縮変形部材の安定保持の観点から、本実施例においては、前記第1係合部の前記側面または背面から見た形状が上方に向かって凸のアーチ形状であってもよい。
この場合、第1係合部の剛性が大きくなるので、圧縮変形部材を安定して保持することができる。
【0079】
本態様においては、前記保持部材を構成する素材のヤング率が前記ミッドソール本体を構成する素材のヤング率よりも大きく、前記側面または背面に沿った断面線における前記保持部材の接合部の断面形状が上方に凸のアーチ形状であるのが好ましい。
【0080】
このように構成すれば、保持部材の接合部がアーチ状に形成されていることで、ヤング率の大きい保持部材の撓み剛性が高くなる。そのため、前記側面または背面の端部において緩衝機能や反発機能を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】図1Aは実施例1を示す靴底の上面側から見た斜視図、図1Bは同靴底の底面側から見た斜視図である。
【図2】図2Aは同靴底の外側面図、図2Bは同靴底の内側面図である。
【図3】同靴底の底面側から見た靴底パーツの分解斜視図である。
【図4】同靴底の上面側から見た靴底パーツの分解斜視図である。
【図5】同靴底と足の骨との関係を示す靴底の底面図である。
【図6】図6Aは図5のVIA-VIA 線断面図、図6Bは図5のVIB-VIB 線断面図、図6Cは図5のVIC-VIC 線断面図である。
【図7】図7Aは図5のVIIA-VIIA 線断面図、図7Bは図5のVIIB-VIIB 線断面図、図7Cは図5のVIIC-VIIC 線断面図、図7Dは図5のVIID-VIID 線断面図である。
【図8】図8Aは実施例1の強化部材を示す底面図、図8B,図8Cおよび図8Dは変形例の強化部材を示す底面図である。
【図9】図9A,図9B,図9Cおよび図9Dは変形例の強化部材を示す底面図である。
【図10】図10Aは変形例の強化部材を示す底面図、図10Bは図10AのXB-XB 線断面図、図10CはXC-XC 線断面図である。
【図11】図11Aおよび図11Bは実施例2を示し、図11Aは図13のXIA-XIA 線断面図、図11Bは図13のXIB-XIB 線断面図である。
【図12】同上面側から見た強化部材および圧縮変形部材の分解斜視図である。
【図13】図13Aは同靴底の外側面図、図13Bは同靴底の内側面図である。
【図14】従来例の靴底の後足部の斜面への接地状態を示す概略断面図である。
【図15】図15Aおよび図15Bは実施例3を示し、図15Aは図15BのXVA-XVA 線断面図であり、図15Bは強化部材を示す底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0082】
本発明は、添付の図面を参考にした以下の好適な実施例の説明からより明瞭に理解されるであろう。
【0083】
しかしながら、実施例および図面は単なる図示および説明のためのものであり、本発明の範囲は請求の範囲によって定まる。添付図面において、複数の図面における同一の部品番号は、同一または相当部分を示す。
【0084】
〔実施例1〕
図1A〜図7は実施例1を示す。なお、以下の図面において、INは足の内側、OUTは足の外側を示す。また、以下の図面において、意匠の凹凸は省略して図示されている。かかる意匠の凹凸は、必要に応じて、適宜付すことができる。
以下の説明では、左足の靴底を例示して説明する。
【0085】
全体構成:
図1Aおよび図1Bに示すように、本実施例1の靴底は、上ミッドソール1、強化部材2、下ミッドソール3およびアウターソール4を備えている。同図において二点鎖線はアッパーを示している。上ミッドソール1および下ミッドソール3がミッドソールを構成している。前記下ミッドソール3は、後足部13において、4つに分割されて配置されている。
【0086】
図2Aおよび図2Bに示すように、前記ミッドソールは、前足部11、中足部12および後足部13を有している。
前記アウターソール4は前アウターソール41と後アウターソール42とに分割されている。前アウターソール41は、前足部11において上ミッドソール1の下面に取り付けられている。後アウターソール42は後足部13において前記4つの下ミッドソール3ごとに4つに分割されており、それぞれ、下ミッドソール3の下面に取り付けられている。中足部12にはアウターソール4は設けられていない。
【0087】
図1Bに示すように、中足部12および後足部13において、上ミッドソール1の下面には、強化部材2が配置されている。図3および図4に示すように強化部材2の後足部13の下面には4つの下ミッドソール3が取り付けられ、該各下ミッドソール3の下面には後アウターソール42(図1B)がそれぞれ配置されている。
【0088】
強化部材2;
図5に示すように、前記強化部材2は、上ミッドソール1の中足部12の前後方向Lの概ね前端から前記後足部13まで設けられている。前記強化部材2は、メインバー21、中足内羽根22,23、中足外羽根24,25および後足内羽根26a,後足外羽根26bが一体に形成されてなる。強化部材2は、ミッドソールの一部を強化するものであり、そのため強化部材2のヤング率は、ミッドソールのそれよりも大きい値に設定されている。強化部材2を構成する材料としては、たとえば、ナイロン、ポリウレタン、FRPなどの非発泡の樹脂を用いることができる。
【0089】
なお、図面を分かり易くするために、図5においては、強化部材2のうちメインバー21の棒状部21d以外の部分に荒い網点を施し、後述する圧縮変形部材30には細かな網点を施してある。
【0090】
前記メインバー21は、足の内外の概ね中央のラインに沿って前記中足部12の前後方向Lの概ね前端から前記後足部13の前後方向Lの概ね中央まで帯状に設けられている。メインバー21の前端の位置は、二点鎖線で示す第3指F3の中足骨C3の概ね中央(第3中足骨骨体)に設定されている。
【0091】
前記中足内羽根22,23は前記中足部12において前記メインバー21から足の内側に向かって延びており、前記中足外羽根24,25は前記中足部12において前記メインバー21から足の外側に向かって延びている。前側の中足羽根22,24は、メインバー21のうちの第3指F3のリスフラン関節J3ないしその近傍に相当する部位から延びている。後側の中足羽根23,25は、メインバー21のうちの立方骨C6ないしその近傍に相当する部位から延びている。
【0092】
図1Bに示すように、前記中足内羽根22,23および中足外羽根24,25は上ミッドソール1の下面に貼着されている。前記各後足羽根26a,26bの一部は、上下のミッドソール1,3に挟み込まれている。
【0093】
図5に示すように、前記4つの後足羽根26a,26bは、前記後足部13において前記メインバー21の後端の基部21cから足の内側または外側に向かって延びている。すなわち、後足羽根26a,26bは基部21cから放射状に設けられている。
基部21cは、踵骨C7ないし距骨C8に相当する部位に位置する。
【0094】
ミッドソール;
図3に示す上ミッドソール1は、たとえば発泡樹脂からなり、前足部11、中足部12および後足部13の部位が一体に形成されたミッドソール本体を構成している。
【0095】
一方、4つの下ミッドソール3は、後足部13において、内外方向Wおよび前後方向Lに分離されて設けられている。各下ミッドソール3は、前記上ミッドソール1との間で前記強化部材2の後足羽根26a,26bを挟むように、各後足羽根26a,26bごとに設けられている。各下ミッドソール3は、ゴム様の圧縮変形部材30と、発泡樹脂製の緩衝部材31とにより構成されている。
【0096】
上ミッドソール(上ミッドソール本体)1および緩衝部材(下ミッドソール本体)31は、前記強化部材2の設けられていない部位において互いに接合されており、両者はミッドソール本体を構成している。、
【0097】
図4に示すように、圧縮変形部材30は前記各後足羽根26a,26bの下面にそれぞれ接合されている。圧縮変形部材30ごとに緩衝部材31が設けられて、圧縮変形部材30の下面に接合されている。上ミッドソール1を構成する発泡樹脂の硬度は、下ミッドソール3の緩衝部材31を構成する発泡樹脂の硬度よりも大きい値に設定されている。圧縮変形部材30のヤング率は、上ミッドソール1を構成する素材のヤング率および緩衝部材31を構成する素材のヤング率よりも小さい値に設定されている。
【0098】
アウターソール4;
図1Bに示すように、前記前足部11において上ミッドソール1の下面には前アウターソール41が取り付けられている。図6Bおよび図6Cに示すように、前記各緩衝部材31の下面には、後アウターソール42がそれぞれ貼着されている。後アウターソール42は前記下ミッドソール3と同様に内外方向Wおよび前後方向L(図1B)に分離されて互いに離間している。図2Aおよび図2Bに示すように、中足部12において、上ミッドソール1の下面には、下ミッドソール3およびアウターソール4が取り付けられていないアーチ14が形成されている。
【0099】
図5に示すように、前記4つの下ミッドソール3およびアウターソール4は、それぞれ、前記後足部13において少なくとも内外方向Wおよび前後方向Lに分離された4つの島状の領域R1〜R4に配置されている。前記後足羽根26a,26bは前記基部21cから前記各領域R1〜R4に向かって放射状に延びている。領域R1,R2の間、領域R2,R3の間、領域R3,R4の間には強化部材2、下ミッドソール3およびアウターソール4が配置されていない。このため、これらの位置には、図1Bに示すように、各下ミッドソール3間に各領域R1〜R4を隔てる溝Gが基部21cから放射状に形成されている。
【0100】
つぎに、本実施例1の靴底の各部分の構造について詳しく説明する。
中足部12の構造:
図5に示すように、前記ミッドソールのアーチ14の下面および側面には、前記強化部材2のメインバー21、中足内羽根22,23および中足外羽根24,25が貼着されている。
【0101】
メインバー21;
図3に示す前記メインバー21は棒状部21dと、前記棒状部21dの足の内側に連なる帯状の内側帯状部21aと、前記棒状部21dの足の外側に連なる帯状の外側帯状部21bとが一体に形成されてなる。
図5に示すように前記メインバー21の棒状部21dは中足部12の前端から後足部13の概ね中心まで足の前後方向Lに沿って延びている。図6Aおよび図6Bに示すように、棒状部21dは内側帯状部21a,外側帯状部21bよりも下方に向かって突出して設けられている。そのため、図7Aおよび図7Bに示すように、メインバー21において、前記棒状部21dの厚さは、前記中足内羽根22,23および中足外羽根24,25の厚さ、ならびに、これら中足羽根22〜25が連なった内側帯状部21a,外側帯状部21bの厚さよりも大きく設定されている。なお、図7Aは、前側の中足羽根22,24を概ねフラットになるように若干曲げた状態における断面図であり、後述する端部の巻上げは明瞭に表れていない。
【0102】
中足羽根22〜25;
図1B、図2Aおよび図2Bに示すように、前記各中足羽根22〜25は上ミッドソール1の中足部12の底面から側面に向って設けられている。各中足羽根22〜25は、上ミッドソール1の底面および側面の一部を覆う。また、各中足羽根22〜25の端部は足の内側面または外側面に沿って巻き上がって、巻上部22c〜25cを形成している。
【0103】
図5に示すように、前記中足内羽根22,23は前記内側帯状部21aから足の内側に向って延びており、中足外羽根24,25は前記外側帯状部21bから足の外側に向って延びている。2枚の中足内羽根22,23は、前記中足部12において足の前後方向Lに互いに離間して設けられている。2枚の中足外羽根24,25は、前記中足部12において足の前後方向Lに互いに離間して設けられている。
【0104】
図2Aおよび図2Bに示すように、前側の中足内羽根22および中足外羽根24は、上ミッドソール1の側面に沿って前方に向って湾曲している。一方、後側の中足内羽根23および中足外羽根25は、ミッドソールの側面に沿って後方に向って湾曲している。すなわち、前記巻上部23c〜25cは、足の側面に沿って巻き上がると共に、前方または後方に向かって湾曲している。
【0105】
後足部13の構造:
図5に示す前記メインバー21の後端には基部21cが形成されている。前記基部21cは後足部13の概ね中心に配置されている。後足内羽根26aおよび後足外羽根26bは基部21cを中心に放射状に延びている。すなわち、4つの後足羽根26a,26bおよひ基部21cは、該基部21cを中心とした平面視略X字状に形成されている。
【0106】
図4に示すように、前記各後足羽根26a,26bおよび基部21cの真上には上ミッドソール1が配置される。前記強化部材2の複数の後足羽根26a,26bごとに下ミッドソール3(30,31)が分離して設けられる。
【0107】
したがって、図1Bおよび図3に示すように、前記各後足羽根26a,26bの真下には互いに分離された下ミッドソール3およびアウターソール4がそれぞれ配置される。
図1Bに示すように、前記下ミッドソール3およびアウターソール4は、後足部13において内外方向Wおよび前後方向Lに本質的に分離されて、前記足の後足部13の4つの島状の領域R1〜R4(図5)に配置されている。したがって、下ミッドソール3およびアウターソール4は、各領域R1〜R4において、4つの島状のユニットを構成している。一方、基部21cの真下には、下ミッドソール3およびアウターソール4が設けられていない。
【0108】
後足羽根26a,26b;
図5に示すように、前記後足羽根は、前記基部21cから足の内側に向って延びる2枚の後足内羽根26aと、足の外側に向って延びる2枚の後足外羽根26bとにより構成されている。
図7Cおよび図7Dに示すように、前記各後足羽根26a,26bは後足部13の上ミッドソール1の側面または背面(外周面)まで延びている。各後足羽根26a,26bは、前記側面または背面において上方に向かって巻き上がって、巻上部28を形成している。
【0109】
図7Cおよび図7Dに示すように、前記後足内羽根26aは、足の内側の端において上ミッドソール1の内側面Siに沿って湾曲した内巻上部28aを有する。前記後足外羽根26bは、足の外側の端において上ミッドソール1の外側面Soに沿って湾曲した外巻上部28bを有する。
図4に示すように、前記巻上部28の真上の部分には、上ミッドソール1が配置されている。前記巻上部28の真下の部分にはゴム様の圧縮変形部材30が配置されている。
【0110】
図7Cおよび図7Dに示すように、前記後足内羽根26aと前記後足外羽根26bとは、メインバー21(図5)の前記基部21cを介して互いに連なっており、前記基部21cにおいて上方に向って凸となる曲線に沿って配置されている。そのため、前記各後足羽根26a,26bは、基部21cの近傍において前記基部21cに近づくに従い上方に向かって膨出している。
【0111】
支持要素,変形要素,連結部材:
図1A、図1Bに示すように、前記上ミッドソール1の中足部12および後足部13は、足の中足部12から後足部13を支持すると共に着地の際の衝撃で圧縮変形して前記衝撃を吸収する機能を持つ支持要素を構成している。
前記下ミッドソール3は、足の後足部13において前記上ミッドソール1の下方に配置され、着地の際に上下方向に縮んだ状態に変形する変形要素を構成している。
前記強化部材2は後足部13において、上ミッドソール1と下ミッドソール3との間に介挿されて、上下のミッドソール1,3を互いに連結する連結部材を構成している。
【0112】
圧縮変形部材30の保持構造:
図2Aおよび図2Bに示すように、圧縮変形部材30は、観者が視認できるように、その側面が大きく露出されている。
図3に示すように、前記ミッドソール本体を構成する上ミッドソール1の後足部13には、強化部材2の後足羽根26a,26bおよび圧縮変形部材30が配置される凹所15が形成されている。前記凹所15は、後足部13の中心から上ミッドソール1の側面または背面(外周面)に行くに従い上下に拡がるように形成されている。
【0113】
前記強化部材2の各後足羽根26a,26bには、圧縮変形部材30の上面が固着される接合部27が設けられている。図6Bに示すように、ミッドソールの外周面に対応する位置において、前記接合部27から下方に向かって延びる第1係合部28cが前記接合部27と一体に形成されている。第1係合部28cは圧縮変形部材30の上部側面に係合する。図2Aおよび図2Bに示すように、第1係合部28cは、その側面から見た形状が三日月状に形成されて、上方に向って凸の略アーチ形状を構成している。また、前記接合部27は、前記側面または背面に沿った断面線における前記保持部材の接合部の断面形状が上方に凸のアーチ形状である。
【0114】
前記第1係合部28cに圧縮変形部材30の側面上部が係合することにより、圧縮変形部材30が外側に向って飛び出すのが防止される。したがって、強化部材2は圧縮変形部材30を保持する保持部材を構成している。
【0115】
この第1係合部28cは、圧縮変形部材の上端部のみを覆うように形成されており、ループ状には形成されていない。第1係合部28cは、少なくとも圧縮変形部材30の下部の変形を拘束しないように圧縮変形部材30の上半分より小さい範囲のみを覆うのが好ましい。
【0116】
一方、図4に示すように、各下ミッドソール3の緩衝部材(下ミッドソール本体)31には、前記上ミッドソール1の凹所15に対応する位置に、上方に向って巻き上がる第2係合部32が形成されている。図6Bに示すように、第2係合部32は圧縮変形部材30の下部側面に係合して、圧縮変形部材30が外側に向って飛び出すのを防止している。
このように、圧縮変形部材30の側面の上部および下部は、強化部材2の第1係合部28cと、下ミッドソール本体31の第2係合部32によって、それぞれ、係合保持されている。
【0117】
また、図6Bに示すように、アウターソール4には、前記第2係合部32の下方において下ミッドソール本体31の側面に沿って巻き上がる第3係合部33が設けられている。該第3係合部33は下ミッドソール本体31の第2係合部32を補強する。下ミッドソール本体31を設けずに、あるいは、第2係合部32を設けずに、第3係合部33が直接圧縮変形部材30に係合していてもよい。
【0118】
〔変形例〕
強化部材2の形状は前記実施例1に示すものに限られず、種々の形状を採用を採用し得る。以下に、図8B〜図10Cにしたがって強化部材2の変形例を説明する。なお、図8Aには以下に述べる変形例と対比するために、前述の実施例1で示した強化部材2を示してある。
【0119】
図8Bの変形例では、2つの中足内羽根22,23の内側の端部が互いに接続されている。すなわち、中足内羽根22,23がループを形成している。
図8Cの変形例では、前側の中足羽根22,24およびメインバー21の交差位置と、後側の中足羽根23,25およびメインバー21の交差位置との距離を前記実施例1のそれよりも小さく設定している。
図8Dの変形例では、前記距離を図8Cよりも更に小さく設定して、中足羽根22〜25が概ねX字状に形成されている。また、同変形例では、後足羽根26a,26bが放射状に設けられておらず、平面視概ねH字状に形成されている。すなわち、前側の後足羽根26a,26bが基部21cよりも前方のメインバー21の部位から延びている。
【0120】
なお、前述の実施例1では、中足羽根を内外2枚ずつ設けて合計4枚としたが、5枚以上が設けられていてもよい。また、中足内羽根が2枚以上である場合には、いずれか2以上中足内羽根の内側の端部が互いに接続されていてもよい。
【0121】
また、前述の実施例1では、前方の中足羽根22,24を前方に向って湾曲させると共に、後方の中足羽根23,25を後方に向って湾曲させることとしたが、前後の中足羽根をそれぞれ概ね同一方向に湾曲させることで、前方の中足羽根と後方の中足羽根とが互いに概ね平行になるようにしてもよい。また、4つの中足羽根が概ね渦巻状に形成されてもよい。
【0122】
さらに、中足内羽根22,23の長さが中足外羽根24,25の長さよりも小さく、あるいは、大きく設定されてもよい。
【0123】
図9Aの変形例では、3つの後足羽根が設けられている。この場合、各1つの後足内羽根26a,後足外羽根26bに加えて、後方(背面)に向って延びる1つの後足羽根26cが設けられている。
図9Bの変形例では、前側の後足内羽根か設けられておらす、後側の1つの後足内羽根26aのみが設けられている。
図9Cの変形例では、2つの後足内羽根26a,26aの内側の端部が互いに接続されている。すなわち、後足内羽根26a,26aがループを形成している。
図9Dの変形例では、内側の後足羽根26a,26aが外側の後足羽根26b,26bよりも短く設定されている。
【0124】
なお、後足内羽根26a,後足外羽根26bがそれぞれ1つずつであってもよい。また、前述の実施例1で示した4枚の後足羽根26a,26bに加え、後方(背面)に向かう別の後足羽根が設けられていてもよい。
また、6つ以上の後足羽根が基部21cを中心に放射状に設けられていてもよい。
また、後足内羽根と後足外羽根とは、必ずしも基部21cで滑らかに一直線上に連なっていなくてもよい。
また、各後足羽根を基部21cを中心に渦巻き状に形成してもよい。
【0125】
図10A〜図10Cに示す変形例では、中足部において強化部材2に2本の棒状部21dが設けられている。この場合、棒状部が1つの場合に比べて屈曲し難くなるので、アーチの低下抑制の機能が向上する。
【0126】
〔実施例2〕
次に、実施例2を図11〜図13にしたがって説明する。なお、以下の実施例において、実施例1と同一部分または相当部分には同一符号を付して、その詳しい説明を省略する。
【0127】
図11Aおよび図11Bに示すように、本実施例では、後足部において圧縮変形部材30が上ミッドソール1と強化部材2との間で保持されている。強化部材(保持部材)2の上面には圧縮変形部材30の下面が固着される接合部27が形成されている。
【0128】
図12に示すように、本実施例では、一対の圧縮変形部材30が設けられており、各圧縮変形部材30は略V字型に形成されている。一対の圧縮変形部材30は、概ね左右対称に配置されている。前記接合部27も圧縮変形部材30の形状に従って略V字状に形成されている。
【0129】
強化部材2の各後足羽根26a,26bには、前記接合部27から上方に延びる巻上部28が形成されている。巻上部28は圧縮変形部材30の端部30aに係合して圧縮変形部材30が外に飛び出すのを防止する。巻上部28には、圧縮変形部材30の端部30aが係合する係合孔28dが形成されている。かかる係合孔28dにより、圧縮変形部材30の変形を許容すると共に、図13Aおよび図13Bに示すように、圧縮変形部材30の端部30aが外部に向って露出し、観者が該端部30aを視認することができる。
【0130】
〔実施例3〕
次に、実施例3を図15Aおよび図15Bにしたがって説明する。
図15Aおよび図15Bに示すように、本実施例では、前記実施例1とは異なり、後足羽根26a,26bはミッドソールの側面まで延びておらず、したがって、後足羽根26a,26bの端部はミッドソールの側面において露出しておらず、第1係合部が設けられていない。
【0131】
圧縮変形部材30が露出しているミッドソールの側面およびその近傍においては、圧縮変形部材30は上下のミッドソール本体1,31の間で挟まれている。一方、後足羽根26a,26bが延びている領域においては、圧縮変形部材30は、保持部材(強化部材)2と下ミッドソール本体31との間に挟まれて保持されている。
【0132】
また、本実施例では、図15Aに示すように、アウターソール4の下ミッドソール本体31の第2係合部32の側面に沿って巻き上がって、第3係合部33が形成されている。すなわち、第3係合部33が下ミッドソール本体31の第2係合部32を介して間接的に圧縮変形部材30の下部側面に係合して、第2係合部32と共に圧縮変形部材30が外側に向って飛び出すのを防止している。
【0133】
なお、本実施例の変形例として、EVAやPUなどの発泡体からなる下ミッドソール本体31を設けずに、アウターソール4を圧縮変形部材30に直接に接合させてもよい。この場合、圧縮変形部材30は、アウターソール4と上ミッドソール本体1または保持部材2との間で挟まれて保持され、第3係合部33は圧縮変形部材30に直接に係合する。かかる構成は、前記実施例1にも適用できる。
【0134】
しかし、この変形例の場合、EVAやPUなどの発泡体からなる下ミッドソール本体31よりも硬い保持部材2の一部がアウターソール4上に直接に接着される。そのため、路面に接地したアウターソール4の変形が小さくなり、下ミッドソール本体31を設けた場合と比べて、アウターソール4と保持部材2との接触により接地時の音が大きくなったり、アウターソール4の接地面積が小さくなったりする。また、一般のアスレチックシューズと異なる着用感が生じ、着用者によっては違和感を覚える。
【0135】
これに対し、本実施例や前記実施例1では、比較的柔らかい下ミッドソール本体31を保持部材2とアウターソール4との間に設けることで、保持部材2とアウターソール4とが直接接触しない。したがって、接地時の音は大きくなったり、アウターソールの接地面積は小さくなったり、着用者が違和感を覚えたりするといった問題が生じ難くなる。
【0136】
以上のとおり、図面を参照しながら好適な実施例を説明したが、当業者であれば、本明細書を見て自明な範囲内で種々の変更および修正を容易に推定するであろう。
たとえば、上ミッドソールが2つ以上に分割されていてもよい。
また、メインバーが棒状部を含んでいなくてもよい。
したがって、そのような変更および修正は、本発明の範囲のものと解釈される。
【産業上の利用可能性】
【0137】
本発明は、種々の靴に利用することができる。
【符号の説明】
【0138】
11:前足部、12:中足部、13:後足部
1:上ミッドソール
14:アーチ,15:凹所
2:強化部材(連結部材、保持部材)
21:メインバー、21a:内側帯状部、21b:外側帯状部材、21c:基部、21d:棒状部21d
22,23:中足内羽根、24,25:中足外羽根
26a:後足内羽根、26b:後足外羽根
27:接合部
28:巻上部、28a:内巻上部、28b:外巻上部、28c:第1係合部、28d:係合孔
3:下ミッドソール
30:圧縮変形部材、30a:端部、31:緩衝部材、32:第2係合部、33:第3係合部
4:アウターソール
41:前アウターソール、42:後アウターソール
F3:第3指、C3:中足骨、C6:立方骨、C7:踵骨、C8:距骨、J3:リスフラン関節
L:前後方向、W:内外方向
R1〜R4:島状の領域、G:溝
【技術分野】
【0001】
本発明は、靴底、特に、中足部の強化構造や後足部の緩衝構造に関する。
【背景技術】
【0002】
靴底のアーチ部においてミッドソールのアーチの形状に合わせた強化部材を有する靴底、たとえば、アウターソールの着地時に、アウターソールに付着されていないミッドソールの部分が接地しない靴底、は公知である。そのような強化部材はミッドソールの変形を抑制することでミッドソールの踏まず部の剛性を補強する。下記の特許文献1〜4には、強化部材等を有する公知の靴底構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−287709号公報(要約)
【特許文献2】特開昭63−194602号公報(FIG.1,FIG.2)
【特許文献3】特開2001−299404号公報(要約)
【特許文献4】特開2002−034605号公報(要約)
【発明の概要】
【0004】
特開2000−287709号の靴底において、強化部材は前足部から後足部にわたって設けられている。強化部材は、前足部から後足部にわたって前後に長い棒状部と、棒状部の軸線を中心に回転可能で、かつ、踏まず部よりも後方に設けられた羽根とを備えている。
しかし、この靴底において、強化部材はソールの上面の凹所に配置されている。このような強化部材は足のアーチの低下を抑制できないだろう。
【0005】
特開昭63−194602号の靴底において、強化部材は、長手方向に沿って延びる強化エレメントを有し、該強化エレメントの前端と後端に羽根が設けられている。
しかし、この強化部材は摩耗底と中間底(ミッドソールに相当)との境界に配置されており、後端の部分が中間底内に埋設されていない。
【0006】
特開2001−299404号の靴底において、強化部材は、外底の長手方向における中心軸に沿った帯状の縦アーチサポート片と、この縦アーチサポート片と交差して足の第1楔状骨から立方骨の先端部を結ぶ部分に対応する部分にわたって形成された帯状の第1の横アーチサポート片と、足のボールガースに対応する部分に(母指球から小指球にわたって)形成された第2の横アーチサポート片とからなる。
この強化部材は後足部の羽根を備えていない。
【0007】
特開2002−034605号の靴底において、強化部材は、前記特開2001−299404号の前記構造に加え、後足部においてループ状に形成されている。
しかし、帯状のアーチサポート片は踵部の前端より後方においてループ状となっている。
また、ループ状のアーチサポート片は後足部において中間底(ミッドソールに相当)と接地底との境界に配置されており、中間底内に埋設されていない。
【0008】
これらの靴は、後足部が過度にねじれたり、アーチが低下するかもしれない。そのため、以下に説明するように、不整地や斜面の走行ないし歩行に適さないだろう。
【0009】
不整地を走るトレイルランニングにおいて斜面を横切る方向に走行する場合、通常のランニングシューズの高いねじれ剛性では図14のように足首が屈曲する。そのため、足首に負担がかかると考えられる。
一方、ミッドソールを捩れ易くすることで足首の屈曲は抑制できる。しかし、この場合、ミッドソールが大きく捩れて型崩れするので、足の安定した支持ができないだろう。
【0010】
かかる問題はトレイルランニングだけでなく、排水のために斜めに舗装された歩道などにおいても生じるかもしれない。
【0011】
したがって、本発明の第1の目的は、アーチの低下や屈曲を抑制し得る強化部材を備えた靴底において、ミッドソールの捩れを中足部だけでなく後足部においても許容し、かつ、ミッドソールやアッパーが足にフィットした状態で足を安定して支えることである。
【0012】
靴底は、軽量であることや、足を安定した状態に保持する保持機能、着地の衝撃を吸収して緩和する緩衝機能等が要求される。
足は、走行時には踵の外側から着地した後、内側に倒れ込むような挙動をする。このため、足の踵の外側が着地時の大きな衝撃を受ける。したがって、靴底の後足部の外側は大きく変形することで、高い緩衝性を発揮することができる。一方、前記内側への足の倒れ込みを抑制するには、靴底の後足部の内側は変形され難くして、高い保持機能を発揮することができる。すなわち、足の内外で衝撃による変形の度合を異なるようにする方が好ましい場合がある。
下記の特許文献5〜8には、後足部において分離された部分を有する靴底が開示されている。
【0013】
【特許文献5】WO2004/066771A1(要約)
【特許文献6】US2003/0061731A1(要約)
【特許文献7】特開2002−320502号公報(要約)
【特許文献8】USP6,438,870B2(図5)
【0014】
WO2004/066771A1およびUSP6,438,870B2の靴底は後足において内外方向に分離されている。
US2003/0061731A1および特開2002−320502号の靴底は、緩衝部材が後足において分離されている。
【0015】
しかし、これらの文献5〜8には、後足部を捩れ易くして、変形要素が個別に変形し易くするという思想は開示されていない。
【0016】
したがって、本発明の第2の目的は、変形要素およびアウターソールの各々が後足部において分離された靴底において、後足部において捩れ易くして変形要素が個別に変形し易くすることである。
【0017】
本発明の第3の目的は、捩れを許容し、かつ、アーチの低下を抑制し得るソールの強化構造において、前記中足部の捩れを損なわずに靴底の屈曲を防止することである。
【0018】
本発明の第4の目的は、ミッドソールの後足部に配置された強化部材により、緩衝機能や反発機能を高める新規な構造を提供することである。
【0019】
本発明の第5の目的は、ゴム様または鞘様の圧縮変形部材をソールに装着するための新規な構造を提供することである。
【0020】
前記各目的を達成するために、新規な強化構造または緩衝構造を備えた靴底が提供される。
【0021】
本発明のある態様は、強化構造を備えた靴底であって、前記靴底は、前足部、中足部および後足部を有するミッドソールと、前記ミッドソールの下面に取り付けられたアウターソールと、前記ミッドソールの一部を強化する強化部材とを備え、前記強化部材は、少なくとも、前記ミッドソールの中足部の概ね前端から前記後足部の前後方向の概ね中央に至る範囲に連なって設けられ、前記強化部材は:足の内外方向の概ね中央のラインに沿って、少なくとも、前記中足部の前後方向の概ね中央から前記後足部の前後方向の概ね中央に至る範囲に設けられた棒状ないし帯状のメインバーと;前記中足部において前記メインバーから足の内側に向かって延びる中足内羽根と;前記中足部において前記メインバーから足の外側に向かって延びる中足外羽根と;前記後足部において前記メインバーから足の内側または外側の少なくとも一方に向かって延びる複数枚の後足羽根と;を有し、前記各羽根は前記メインバーと一体に形成されており、ここにおいて、前記中足内羽根および中足外羽根が前記ミッドソールの下面に付着され、かつ、前記各後足羽根の少なくとも一部が前記ミッドソールの後足部内に埋設されている。
【0022】
本態様によれば、棒状ないし帯状のメインバーが、中足部における足の屈曲もしくはアーチの低下を抑制する。さらに、複数の羽根とメインバーとが肋骨と脊柱との関係のように構成されており、羽根がメインバーに対して回転するように変位するのを許容する。したがって、中足部および後足部において靴底がメインバーを中心にねじれるのが許容される。そのため、斜面を横切るように歩行した場合、足の前足部が斜めに接地していても、靴底がねじれるから、足の後足部が水平に近い状態になり得る。その結果、脚が足首において左右に屈曲するのを抑制し得る。
【0023】
しかも、足の内側および外側に向って延びる中足内羽根および中足外羽根は、中足部においてミッドソールが大きく捩れて型崩れするのを抑制し、これにより中足部においてミッドソールが足にフィットした状態で足を支えるのに役立つ。
【0024】
一方、後足羽根は後足部においてミッドソールが足の踵にフィットした状態で足を支えるのに役立つ。
特に、ミッドソール内に埋設された後足羽根は、ミッドソールの下面に付着する中足羽根に比べ捩り剛性の増大に寄与しにくいから捩じれ易く、かつ、足を支え易い。
【0025】
本発明において、ミッドソールは、靴底の一部であって、緩衝機能を有し、本質的に接地しない部分である。ミッドソールの材質は特に限定されるものではなく、ミッドソールは、EVA(エチレン−酢酸ビニル共重合体)やPU(ポリウレタン)などの発泡体の他、ポリウレタンゲルなどのゲル状物質や、エアやゲル状物質又は軟質のゴム様弾性体などが充填された鞘(pod )状ないし袋状の部材や、これらを組み合わせて形成した複合体であってもよい。
本発明において、アウターソールとは接地底をいう。
【0026】
本態様において、各羽根は帯状ないし薄板状であってもよく、好ましくは、中足内羽根および中足外羽根がメインバーよりも薄い。
本態様において、中足部における強化部材の平面視形状は特に限定されないが、たとえば、“H”型の他に星型、“Y”型などであってもよい。
また、本発明において、メインバーは2本の棒状部を包含していてもよい。
【0027】
本発明において、中足内羽根が「メインバーから足の内側に向かって」延びるとは、中足内羽根がメインバーから真横方向(足長方向に直交する幅方向)に内側に向かって延びる場合を含む他、メインバーから斜め前方または後方の内側に向かって延びる場合も含む。
本発明において、中足外羽根が「メインバーから足の外側に向かって」延びるとは、中足外羽根がメインバーから真横方向(足長方向に直交する幅方向)に外側に向かって延びる場合を含む他、メインバーから斜め前方または後方の外側に向かって延びる場合も含む。
【0028】
本発明において、「足の内外方向の概ね中央のライン」とはミッドソールの底面を内外に概ね均等に分割するライン、ならびに、後足部の前後方向および内外方向の中心と第2指または第3指の中足骨とを結ぶラインを含み、更にこれら2つのラインの近傍の直線および曲線を含む。
【0029】
本態様において、前記ミッドソールは、中足部および後足部が互いに一体に形成された上ミッドソールと、前記上ミッドソールとの間で前記後足羽根の少なくとも1つを前記後足部において挟む下ミッドソールとを備えているのが好ましい。
【0030】
この場合、後足羽根をミッドソール内に製造上容易に埋設することができる。下ミッドソールは、EVAの発泡体や、前記ゲル状物質や、前記鞘状ないし袋状の部材や、これらの複合体等で形成することができる。下ミッドソールはEVAの発泡体のみ、あるいは、ゲル状物質のみで形成されてもよい。
【0031】
上下のミッドソールの一部もしくは全部を発泡樹脂で形成する場合、好ましくは、前記上ミッドソールを構成する発泡樹脂の硬度は、前記下ミッドソールを構成する発泡樹脂の硬度よりも大きくする。
この場合、硬い上ミッドソールは、足を支える安定性を高め、一方、着地の衝撃が柔らかい下ミッドソールで緩衝される。
【0032】
本態様において、複数枚の前記中足内羽根が前記中足部において足の前後方向に互いに離間して設けられ、かつ、複数枚の前記中足外羽根が前記中足部において足の前後方向に互いに離間して設けられているのが好ましい。
【0033】
この場合、複数枚の中足内(外)羽根が前後に分離されているので、複数枚の中足羽根がメインバーのまわりに個別に回転可能となる。そのため、脊柱のように、メインバーが足の前後方向に沿って徐々に滑らかに捩れるのを許容する。したがって、靴底の過度の捩れを防止し得ると共に適度な捩れが可能となる。
【0034】
本態様の好適な実施例においては、前記後足羽根は、前記メインバーから足の内側に向って延びる後足内羽根と、足の外側に向って延びる後足外羽根とを包含する。
この実施例によれば、内外の後足羽根で足を支えることで、足首における脚の横方向への屈曲や、足の内外への横ぶれを抑制することができる。
【0035】
本発明において、後足内羽根が「メインバーから足の内側に向かって」延びるとは、後足内羽根がメインバーから真横方向(足長方向に直交する幅方向)に内側に向かって延びる場合を含む他、メインバーから斜め前方または後方の内側に向かって延びる場合も含む。
本発明において、後足外羽根が「メインバーから足の外側に向かって」延びるとは、後足外羽根がメインバーから真横方向(足長方向に直交する幅方向)に外側に向かって延びる場合を含む他、メインバーから斜め前方または後方の外側に向かって延びる場合も含む。
【0036】
本実施例においては、前記後足内羽根は前記足の内側の端において足の内側面に沿って湾曲した内巻上部を有しており、前記後足外羽根は前記足の外側の端において足の外側面に沿って湾曲した外巻上部を有しているのが好ましい。
これらの2つの巻上部はミッドソールを介して足の後足を内外から支えるので、更に安定性が向上する。
【0037】
この場合、更に好ましくは、前記ミッドソールは、発泡樹脂からなり前記後足羽根の上面が接合されるミッドソール本体と、前記後足羽根の下方に配置されるゴム様または鞘様の圧縮変形部材とを包含し、前記圧縮変形部材は足の内側および外側の少なくとも一方において前記各巻上部と前記アウターソールとの間に配置されている。
【0038】
このゴム様ないし鞘様の圧縮変形部材により、後足の緩衝性が向上する。
「ゴム様または鞘様の圧縮変形部材」は、圧縮されたときに変形しながら反発する力を蓄える部材であって、熱可塑性エラストマーや加硫ゴムなどのゴム弾性を発揮する部材の他に、エアやゲル状物質又は軟質のゴム様弾性体などが充填された鞘(pod )状ないし袋状の部材を含む。なお、熱可塑性エラストマーとは、常温において加硫ゴムの性質を呈するが、高温において可塑化されてプラスチック加工機で成型可能な高分子材料をいう。
【0039】
また、本実施例においては、前記後足内羽根と前記後足外羽根とは、前記メインバーの一部を介して互いに連なっており、前記メインバーおよび前記両後足羽根が前記部位およびその近傍において上方に向って凸となる曲線に概ね沿うように形成されているのが好ましい。
【0040】
この場合、上方に向って凸となる曲線に沿って配置された後足羽根は、上方からの荷重が負荷された際に、曲り梁りとして作用するから、所定の剛性を維持しつつ、しなやかに撓むので、羽根の軽量化に役立つ。
しかも、上方に向って凸の曲り梁りは、着地の衝撃を緩衝するのに役立つ上、捩じれの防止にも役立つ。
【0041】
「メインバーおよび両後足羽根が前記部位およびその近傍において上方に向って凸となる曲線に概ね沿って」とは、前記部位およびその近傍において後足羽根がメインバーに向って徐々に上方に向かうような形状を意味し、後足羽根の延びる方向に沿った断面線の断面においてアーチ状に湾曲した形状であってもよい。
【0042】
本態様において、前記ミッドソールの前足部および後足部には前記アウターソールが取り付けられ、前記ミッドソールの中足部の大半にはアウターソールが取り付けられないでアーチが形成され、前記ミッドソールの中足部のアーチの下面に前記中足内羽根および前記中足部外羽根が付着されているのが好ましい。
この場合、中足部の大半に硬いアウターソールがないので、中足部のねじれ易さを向上させることができる。
【0043】
本態様において、前記メインバーは足の内外の概ね中央のラインに沿って前記中足部の概ね前端から前記後足部の前後方向の概ね中央まで設けられているのが好ましい。 この場合、メインバーによる中足部のアーチの低下や屈曲の抑制を向上させることがのできる。
【0044】
本発明の別のある態様は、後足部に緩衝構造を備えた靴底であって:少なくとも足の中足部から後足部の全体を支持すると共に着地の際の衝撃で圧縮変形して前記衝撃を吸収する機能を持つ支持要素と;前記足の後足部において前記支持要素の下方に配置され着地の際に上下方向に縮んだ状態に変形する変形要素と;前記後足部において、前記支持要素と変形要素との間に介挿されて、前記支持要素と変形要素とを互いに連結する連結部材と;前記変形要素の下面に接合され路面に接地するアウターソールと;を備え、前記変形要素およびアウターソールは、それぞれ、前記足の後足部において少なくとも内外および/または前後に本質的に分離されて、前記足の後足部の少なくとも2つの島状の領域に配置され、前記連結部材は、少なくとも、前記支持要素の中足部の概ね前端から後足部の前後方向の概ね中央に至る範囲に設けられ、前記連結部材は:少なくとも前記支持要素の後足部の概ね前端から前記後足部の前後方向の概ね中央に至る範囲に、足の内外の概ね中央のラインに沿って設けられた棒状ないし帯状のメインバーと;該メインバーと一体に形成された複数の後足羽根と;を備え、前記複数の後足羽根は、互いに分離され、かつ、後足部において前記メインバーから前記島状の領域に向かって延びており、前記本質的に分離された変形要素は前記後足羽根ごとに設けられている。
【0045】
後足部において変形要素が本質的に分離されているので、後足部の各領域について変形の連続性が断ち切られる。変形の連続性を断ち切ることで、たとえば、領域ごとに変形し易さの異なる靴底の設計を容易に行うことができる。
【0046】
また、メインバーが足の内外の概ね中央のラインに沿って配置され、このメインバーから互いに異なる方向に向かって羽根が延びているので、分離された羽根は後足部の捩れを許容する。したがって、各変形要素同士の間の変形の連続性が小さくなるので、各変形要素が個別に変形し易い。
【0047】
「変形要素およびアウターソールが足の後足部において本質的に分離される」とは、足の後足部の各島状の領域の間で変形要素の変形の連続性が実質的に断ち切られているか、あるいは、極めて小さいことをいい、複数個の変形要素が別個に形成されて互いに離間して配置されている場合や、複数個の変形要素が薄いまたは細い連結部を介して一体に形成されている場合を含む。
【0048】
前記変形要素は、たとえば、EVAやPUなどの発泡体や、前記ゲル状物質や、前記鞘状ないし袋状の部材や、これらの複合体等で形成することができる。変形要素は支持要素よりも硬度の小さいまたは大きいEVAなどの発泡体のみで形成されてもよい。
【0049】
連結部材は必ずしも1つの部材で構成される必要はなく、2以上の部材で構成されてもよい。
なお、本発明において、接合とは直接的に接合することおよび間接的に接合することのいずれをも含む概念である。
【0050】
本態様において、前記メインバーは、前記ラインに沿って、中足部の概ね前端まで棒状ないし帯状に延びており、これにより、前記支持要素の中足部におけるアーチの低下を抑制する強化部材を構成しているのが好ましい。
この場合、中足部の過度な捩れを制御できる。そのため、後足部の離散化した変形要素同士の間においても捩れ易くなる。したがって、各変形要素同士の間の変形の連続性が小さくなるから、各変形要素が個別に変形し易くなる。
【0051】
本態様において、前記連結部材を構成する素材のヤング率が前記支持要素を構成する素材のヤング率よりも大きいのが好ましい。
【0052】
更に、前記変形要素はゴム様または鞘様の圧縮変形部材を包含し、該圧縮変形部材のヤング率は前記支持要素を構成する素材のヤング率よりも小さい場合に特に好ましい。
【0053】
本態様の好ましい実施例においては各変形要素は小さい塊であり、一方、支持要素は薄い板状であるので、板状の支持要素に塊状の変形要素を直接接合すると応力集中等により支持要素と変形要素との接合部分が弱くなったり、足裏に対する突き上げ感が生じたりする。そこで、硬い連結部材を介して変形要素と支持要素とを接合することにより、前記接合部分の強度向上を図ることができる。しかも、変形要素に加わった衝撃を硬い連結部材で支持要素に分散して伝達することもできる。
【0054】
本態様において、前記連結部材は後足部の概ね中心に配置された基部を有し、前記後足羽根が前記基部から延びるようにしてもよい。3以上の後足羽根が設けられてもよく、この場合、後足羽根が基部から放射状に設けられていてもよい。基部から放射状に延びた後足羽根は変形要素同士の変形の連続性を発生させないから、各変形要素か互いに異なる変形をするのに適している。
【0055】
本発明の別のある態様は、強化構造を備えた靴底であって、ミッドソールの中足部を強化する強化部材を備え、前記強化部材は:少なくとも、前記中足部の概ね前端から前記中足部の概ね後端に至る範囲に、足の内外の概ね中央のラインに沿って設けられた棒状ないし帯状のメインバーと;前記中足部において前記メインバーから足の内側に向かって延びる複数枚の中足内羽根と;前記中足部において前記メインバーから足の外側に向かって延びる複数枚の中足外羽根と;を備え、前記各羽根は前記メインバーと一体に形成されており、前記各中足内羽根は互いに前後方向に離間しており、かつ、前記各中足外羽根は互いに前後方向に離間しており、前記メインバーの厚さが前記中足内羽根および中足外羽根のそれよりも大きい。
【0056】
本態様によれば、棒状ないし帯状のメインバーが、中足部における足の屈曲もしくはアーチの低下を抑制する。さらに、複数の羽根とメインバーとが肋骨と脊柱との関係のように構成されており、羽根がメインバーに対して回転するように変位するのを許容するから、中足部において靴底がメインバーを中心にねじれるのを許容する。
【0057】
特に、複数枚の中足内(外)羽根が前後に分離されているので、複数枚の中足羽根がメインバーのまわりに個別に回転可能となる。そのため、脊柱のように、メインバーが足の前後方向に沿って徐々に滑らかに捩れるのを許容する。したがって、靴底の過度の捩れを防止し得ると共に適度な捩れが可能となる。
【0058】
なお、メインバーの厚さとはメインバーのうちの最も厚い部分の厚さをいい、羽根の厚さとは羽根のうちの最も厚い部分の厚さをいう。
本態様において、中足部における強化部材の平面視形状は、特に限定されないが、たとえば、“H”型の他に星型、“Y”型などであってもよい。
【0059】
本態様において、前記メインバーは前記中足内羽根および中足外羽根よりも厚さの大きい棒状部を有し、前記棒状部が中足部の前後方向の前端から中足部の前後方向の後端まで足の前後方向に沿って延びていてもよい。
【0060】
この場合、棒状部は捩れ易さを損なわず、かつ、屈曲しにくいので、靴底のねじれを許容しつつ、アーチの低下抑制の機能をさらに向上させ得る。。
なお、棒状部の厚さとは、棒状部のうちの尾根の部分(稜線を含む断面において最も厚い部分)の厚さをいう。
【0061】
本態様において、前記メインバーは棒状の棒状部と、前記棒状部の足の内側に連なる帯状の内側帯状部と、前記棒状部の足の外側に連なる帯状の外側帯状部とを有し、前記各帯状部は前記棒状部と一体に形成されており、前記内側帯状部から前記各中足内羽根が足の内側に延びており、前記外側帯状部から前記各中足外羽根が足の外側に延びていてもよい。
【0062】
この場合、太い棒状部の内外に帯状部を設けることで羽根が変形する際の応力の集中を抑制し得る。
しかも、棒状部だけではアーチの低下に対する抗力が局所的になるのに対し、内外に帯状部を設けることで、アーチの低下やソールの平面曲げに対する抗力も安定する。
更に、棒状部よりも広い接着面を持つ帯状部はメインバーとミッドソールとの接着の確実性を向上させる。
【0063】
本発明の別のある態様は、後足部に緩衝装置を備えた靴底であって、後足部を有するミッドソールと前記ミッドソールの後足部を強化する強化部材とを備え、前記強化部材は、後足部の概ね中心に配置された基部と、前記基部から互いに異なる方向に向かって延びる少なくとも3枚の羽根とを備え、前記各羽根は前記基部と一体に形成されており、前記各羽根および基部の真上には前記ミッドソールが配置され、前記各羽根の真下には互いに分離されたアウターソールが配置され、かつ、前記基部の真下にはアウターソールが配置されておらず、前記基部の近傍において前記各羽根が前記基部に近づくに従い上方に向かって膨出している。
【0064】
本態様によれば、前記各羽根の膨出によりアーチが形成されて、アーチの撓みにより後足部の緩衝機能や反発機能が向上する。
特に、互いに分離された羽根は、一枚の板と異なり、アーチの撓みが大きくなる。したがって、緩衝機能や反発機能が高まる。
【0065】
「基部の近傍において各羽根が基部に近づくに従い上方に向かって膨出している」とは、2つの羽根に連なる断面線における断面で基部および基部近傍において、2つの羽根および基部が、上方に凸の凸部を構成していることをいい、略アーチ状の形状を含む。
【0066】
本態様において、前記ミッドソールは、少なくとも足の中足部から後足部の全体を支持すると共に着地の際の衝撃で圧縮変形して前記衝撃を吸収する機能を持つ支持要素と、前記足の後足部において前記支持要素の下方に配置され着地の際に上下方向に縮んだ状態に変形する変形要素とを備え、前記強化部材は、前記後足部において、前記支持要素と変形要素との間に介挿されて、前記支持要素と変形要素とを互いに連結する連結部材を構成していてもよい。
【0067】
この場合、前記強化部材を構成する素材のヤング率が前記支持要素を構成する素材のヤング率よりも大きいのが好ましい。
こうすれば、硬い素材でアーチを形成して緩衝機能および反発機能をより発揮できる。また、硬い連結部材を介して変形要素と支持要素とを接合することにより、接合部分の強度向上を図ることができる。しかも、変形要素に加わった衝撃を硬い連結部材で支持要素に分散して伝達することもできる。
【0068】
前記変形要素はゴム様または鞘様の圧縮変形部材を包含し、該圧縮変形部材のヤング率は前記支持要素を構成する素材のヤング率よりも小さくてもよい。
【0069】
本態様において、前記各羽根は後足部のミッドソールの側面および/または背面まで延びた端部を有し、前記端部が上方に向かって巻き上がる巻上部を形成しているのが好ましい。
これらの2つの巻上部はミッドソールを介して足の後足を内外から支えるので、安定性が向上する。
【0070】
この場合、前記巻上部の真上の部分には発泡樹脂からなるミッドソール本体が配置され、前記巻上部の真下の部分にはゴム様または鞘様の圧縮変形部材が配置されており、前記圧縮変形部材のヤング率は前記ミッドソール本体を構成する素材のヤング率よりも小さくてもよい。
巻上部の下方の空間は、巻上部を設けない場合に比べ大きくなるので、前記圧縮変形部材を前記端部に配置し易い。これにより、前記緩衝機能や反発機能が更に高まる。
【0071】
本発明の別のある態様は、足裏を覆うミッドソールと、前記ミッドソールの下面に取り付けられ接地するアウターソールとを備えた靴底であって、前記ミッドソールは樹脂の発泡体からなるミッドソール本体と、ミッドソールの側面または背面において外部に露出するゴム様または鞘様の圧縮変形部材とを包含し、前記圧縮変形部材を前記ミッドソール本体もしくはアウターソールと協働して所定の部位に保持するための保持部材が設けられ、前記保持部材は、前記圧縮変形部材の上面または下面に固着された接合部と、ミッドソールの側面または背面において前記接合部から上方または下方に延びる第1係合部と、を包含し、前記第1係合部は前記圧縮変形部材に係合して、前記圧縮変形部材が飛び出すのを防止する。
【0072】
本態様によれば、ファーストストライク時の衝撃を小さくするために、あるいは、反発機能を高めるために、あるいは、ビジュアル的な観点から、圧縮変形部材をソールの側面や背面に露出させて配置した場合に、該部材の固定が安定する。また、着用者等が興味本位に圧縮変形部材を取り出そうとしても、容易に取り出すことができない。
【0073】
本態様の好適な実施例においては、前記ミッドソール本体には、前記ミッドソールの前足部の中心または後足部の中心から前記側面または背面に行くに従い上下方向の高さが大きくなる凹所が形成され、前記凹所に前記圧縮変形部材が配置され、前記保持部材の接合部は前記ミッドソール本体の前記凹所の下面に固着され、前記第1係合部は前記接合部から下方に向かって延びて前記圧縮変形部材の端部の上部に係合してもよい。
【0074】
このようにすれば、圧縮変形部材を嵌める凹所を設けることで外に向かって大きな露出面を持つ圧縮変形部材を安定して保持できる。この凹所は前記保持部材の接合部と概ね同じ範囲に設けられてもよい。
【0075】
本実施例においては、前記ミッドソール本体は前記凹所が形成された上ミッドソール本体と、前記上ミッドソール本体の下方に配置される下ミッドソール本体とを包含し、前記圧縮変形部材は前記保持部材と前記下ミッドソール本体との間に挟まれており、前記下ミッドソール本体は、前記凹所における前記側面または背面の端部において、上方に向かって巻き上がった第2係合部を有し、前記第2係合部が前記圧縮変形部材に係合して、前記圧縮変形部材が飛び出すのを防止するようにしてもよい。
【0076】
前記アウターソールは、前記凹所における側面または背面の端部において、上方に向かって巻き上がった第3係合部を有し、前記第3係合部が前記圧縮変形部材に直接または間接的に係合して、前記圧縮変形部材が飛び出すのを防止するようにしてもよい。
【0077】
このように第2または第3係合部を設けることにより、圧縮変形部材の上部に加え下部もミッドソール本体やアウターソールに係合するので、圧縮変形部材を安定して保持することができる。
【0078】
かかる圧縮変形部材の安定保持の観点から、本実施例においては、前記第1係合部の前記側面または背面から見た形状が上方に向かって凸のアーチ形状であってもよい。
この場合、第1係合部の剛性が大きくなるので、圧縮変形部材を安定して保持することができる。
【0079】
本態様においては、前記保持部材を構成する素材のヤング率が前記ミッドソール本体を構成する素材のヤング率よりも大きく、前記側面または背面に沿った断面線における前記保持部材の接合部の断面形状が上方に凸のアーチ形状であるのが好ましい。
【0080】
このように構成すれば、保持部材の接合部がアーチ状に形成されていることで、ヤング率の大きい保持部材の撓み剛性が高くなる。そのため、前記側面または背面の端部において緩衝機能や反発機能を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】図1Aは実施例1を示す靴底の上面側から見た斜視図、図1Bは同靴底の底面側から見た斜視図である。
【図2】図2Aは同靴底の外側面図、図2Bは同靴底の内側面図である。
【図3】同靴底の底面側から見た靴底パーツの分解斜視図である。
【図4】同靴底の上面側から見た靴底パーツの分解斜視図である。
【図5】同靴底と足の骨との関係を示す靴底の底面図である。
【図6】図6Aは図5のVIA-VIA 線断面図、図6Bは図5のVIB-VIB 線断面図、図6Cは図5のVIC-VIC 線断面図である。
【図7】図7Aは図5のVIIA-VIIA 線断面図、図7Bは図5のVIIB-VIIB 線断面図、図7Cは図5のVIIC-VIIC 線断面図、図7Dは図5のVIID-VIID 線断面図である。
【図8】図8Aは実施例1の強化部材を示す底面図、図8B,図8Cおよび図8Dは変形例の強化部材を示す底面図である。
【図9】図9A,図9B,図9Cおよび図9Dは変形例の強化部材を示す底面図である。
【図10】図10Aは変形例の強化部材を示す底面図、図10Bは図10AのXB-XB 線断面図、図10CはXC-XC 線断面図である。
【図11】図11Aおよび図11Bは実施例2を示し、図11Aは図13のXIA-XIA 線断面図、図11Bは図13のXIB-XIB 線断面図である。
【図12】同上面側から見た強化部材および圧縮変形部材の分解斜視図である。
【図13】図13Aは同靴底の外側面図、図13Bは同靴底の内側面図である。
【図14】従来例の靴底の後足部の斜面への接地状態を示す概略断面図である。
【図15】図15Aおよび図15Bは実施例3を示し、図15Aは図15BのXVA-XVA 線断面図であり、図15Bは強化部材を示す底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0082】
本発明は、添付の図面を参考にした以下の好適な実施例の説明からより明瞭に理解されるであろう。
【0083】
しかしながら、実施例および図面は単なる図示および説明のためのものであり、本発明の範囲は請求の範囲によって定まる。添付図面において、複数の図面における同一の部品番号は、同一または相当部分を示す。
【0084】
〔実施例1〕
図1A〜図7は実施例1を示す。なお、以下の図面において、INは足の内側、OUTは足の外側を示す。また、以下の図面において、意匠の凹凸は省略して図示されている。かかる意匠の凹凸は、必要に応じて、適宜付すことができる。
以下の説明では、左足の靴底を例示して説明する。
【0085】
全体構成:
図1Aおよび図1Bに示すように、本実施例1の靴底は、上ミッドソール1、強化部材2、下ミッドソール3およびアウターソール4を備えている。同図において二点鎖線はアッパーを示している。上ミッドソール1および下ミッドソール3がミッドソールを構成している。前記下ミッドソール3は、後足部13において、4つに分割されて配置されている。
【0086】
図2Aおよび図2Bに示すように、前記ミッドソールは、前足部11、中足部12および後足部13を有している。
前記アウターソール4は前アウターソール41と後アウターソール42とに分割されている。前アウターソール41は、前足部11において上ミッドソール1の下面に取り付けられている。後アウターソール42は後足部13において前記4つの下ミッドソール3ごとに4つに分割されており、それぞれ、下ミッドソール3の下面に取り付けられている。中足部12にはアウターソール4は設けられていない。
【0087】
図1Bに示すように、中足部12および後足部13において、上ミッドソール1の下面には、強化部材2が配置されている。図3および図4に示すように強化部材2の後足部13の下面には4つの下ミッドソール3が取り付けられ、該各下ミッドソール3の下面には後アウターソール42(図1B)がそれぞれ配置されている。
【0088】
強化部材2;
図5に示すように、前記強化部材2は、上ミッドソール1の中足部12の前後方向Lの概ね前端から前記後足部13まで設けられている。前記強化部材2は、メインバー21、中足内羽根22,23、中足外羽根24,25および後足内羽根26a,後足外羽根26bが一体に形成されてなる。強化部材2は、ミッドソールの一部を強化するものであり、そのため強化部材2のヤング率は、ミッドソールのそれよりも大きい値に設定されている。強化部材2を構成する材料としては、たとえば、ナイロン、ポリウレタン、FRPなどの非発泡の樹脂を用いることができる。
【0089】
なお、図面を分かり易くするために、図5においては、強化部材2のうちメインバー21の棒状部21d以外の部分に荒い網点を施し、後述する圧縮変形部材30には細かな網点を施してある。
【0090】
前記メインバー21は、足の内外の概ね中央のラインに沿って前記中足部12の前後方向Lの概ね前端から前記後足部13の前後方向Lの概ね中央まで帯状に設けられている。メインバー21の前端の位置は、二点鎖線で示す第3指F3の中足骨C3の概ね中央(第3中足骨骨体)に設定されている。
【0091】
前記中足内羽根22,23は前記中足部12において前記メインバー21から足の内側に向かって延びており、前記中足外羽根24,25は前記中足部12において前記メインバー21から足の外側に向かって延びている。前側の中足羽根22,24は、メインバー21のうちの第3指F3のリスフラン関節J3ないしその近傍に相当する部位から延びている。後側の中足羽根23,25は、メインバー21のうちの立方骨C6ないしその近傍に相当する部位から延びている。
【0092】
図1Bに示すように、前記中足内羽根22,23および中足外羽根24,25は上ミッドソール1の下面に貼着されている。前記各後足羽根26a,26bの一部は、上下のミッドソール1,3に挟み込まれている。
【0093】
図5に示すように、前記4つの後足羽根26a,26bは、前記後足部13において前記メインバー21の後端の基部21cから足の内側または外側に向かって延びている。すなわち、後足羽根26a,26bは基部21cから放射状に設けられている。
基部21cは、踵骨C7ないし距骨C8に相当する部位に位置する。
【0094】
ミッドソール;
図3に示す上ミッドソール1は、たとえば発泡樹脂からなり、前足部11、中足部12および後足部13の部位が一体に形成されたミッドソール本体を構成している。
【0095】
一方、4つの下ミッドソール3は、後足部13において、内外方向Wおよび前後方向Lに分離されて設けられている。各下ミッドソール3は、前記上ミッドソール1との間で前記強化部材2の後足羽根26a,26bを挟むように、各後足羽根26a,26bごとに設けられている。各下ミッドソール3は、ゴム様の圧縮変形部材30と、発泡樹脂製の緩衝部材31とにより構成されている。
【0096】
上ミッドソール(上ミッドソール本体)1および緩衝部材(下ミッドソール本体)31は、前記強化部材2の設けられていない部位において互いに接合されており、両者はミッドソール本体を構成している。、
【0097】
図4に示すように、圧縮変形部材30は前記各後足羽根26a,26bの下面にそれぞれ接合されている。圧縮変形部材30ごとに緩衝部材31が設けられて、圧縮変形部材30の下面に接合されている。上ミッドソール1を構成する発泡樹脂の硬度は、下ミッドソール3の緩衝部材31を構成する発泡樹脂の硬度よりも大きい値に設定されている。圧縮変形部材30のヤング率は、上ミッドソール1を構成する素材のヤング率および緩衝部材31を構成する素材のヤング率よりも小さい値に設定されている。
【0098】
アウターソール4;
図1Bに示すように、前記前足部11において上ミッドソール1の下面には前アウターソール41が取り付けられている。図6Bおよび図6Cに示すように、前記各緩衝部材31の下面には、後アウターソール42がそれぞれ貼着されている。後アウターソール42は前記下ミッドソール3と同様に内外方向Wおよび前後方向L(図1B)に分離されて互いに離間している。図2Aおよび図2Bに示すように、中足部12において、上ミッドソール1の下面には、下ミッドソール3およびアウターソール4が取り付けられていないアーチ14が形成されている。
【0099】
図5に示すように、前記4つの下ミッドソール3およびアウターソール4は、それぞれ、前記後足部13において少なくとも内外方向Wおよび前後方向Lに分離された4つの島状の領域R1〜R4に配置されている。前記後足羽根26a,26bは前記基部21cから前記各領域R1〜R4に向かって放射状に延びている。領域R1,R2の間、領域R2,R3の間、領域R3,R4の間には強化部材2、下ミッドソール3およびアウターソール4が配置されていない。このため、これらの位置には、図1Bに示すように、各下ミッドソール3間に各領域R1〜R4を隔てる溝Gが基部21cから放射状に形成されている。
【0100】
つぎに、本実施例1の靴底の各部分の構造について詳しく説明する。
中足部12の構造:
図5に示すように、前記ミッドソールのアーチ14の下面および側面には、前記強化部材2のメインバー21、中足内羽根22,23および中足外羽根24,25が貼着されている。
【0101】
メインバー21;
図3に示す前記メインバー21は棒状部21dと、前記棒状部21dの足の内側に連なる帯状の内側帯状部21aと、前記棒状部21dの足の外側に連なる帯状の外側帯状部21bとが一体に形成されてなる。
図5に示すように前記メインバー21の棒状部21dは中足部12の前端から後足部13の概ね中心まで足の前後方向Lに沿って延びている。図6Aおよび図6Bに示すように、棒状部21dは内側帯状部21a,外側帯状部21bよりも下方に向かって突出して設けられている。そのため、図7Aおよび図7Bに示すように、メインバー21において、前記棒状部21dの厚さは、前記中足内羽根22,23および中足外羽根24,25の厚さ、ならびに、これら中足羽根22〜25が連なった内側帯状部21a,外側帯状部21bの厚さよりも大きく設定されている。なお、図7Aは、前側の中足羽根22,24を概ねフラットになるように若干曲げた状態における断面図であり、後述する端部の巻上げは明瞭に表れていない。
【0102】
中足羽根22〜25;
図1B、図2Aおよび図2Bに示すように、前記各中足羽根22〜25は上ミッドソール1の中足部12の底面から側面に向って設けられている。各中足羽根22〜25は、上ミッドソール1の底面および側面の一部を覆う。また、各中足羽根22〜25の端部は足の内側面または外側面に沿って巻き上がって、巻上部22c〜25cを形成している。
【0103】
図5に示すように、前記中足内羽根22,23は前記内側帯状部21aから足の内側に向って延びており、中足外羽根24,25は前記外側帯状部21bから足の外側に向って延びている。2枚の中足内羽根22,23は、前記中足部12において足の前後方向Lに互いに離間して設けられている。2枚の中足外羽根24,25は、前記中足部12において足の前後方向Lに互いに離間して設けられている。
【0104】
図2Aおよび図2Bに示すように、前側の中足内羽根22および中足外羽根24は、上ミッドソール1の側面に沿って前方に向って湾曲している。一方、後側の中足内羽根23および中足外羽根25は、ミッドソールの側面に沿って後方に向って湾曲している。すなわち、前記巻上部23c〜25cは、足の側面に沿って巻き上がると共に、前方または後方に向かって湾曲している。
【0105】
後足部13の構造:
図5に示す前記メインバー21の後端には基部21cが形成されている。前記基部21cは後足部13の概ね中心に配置されている。後足内羽根26aおよび後足外羽根26bは基部21cを中心に放射状に延びている。すなわち、4つの後足羽根26a,26bおよひ基部21cは、該基部21cを中心とした平面視略X字状に形成されている。
【0106】
図4に示すように、前記各後足羽根26a,26bおよび基部21cの真上には上ミッドソール1が配置される。前記強化部材2の複数の後足羽根26a,26bごとに下ミッドソール3(30,31)が分離して設けられる。
【0107】
したがって、図1Bおよび図3に示すように、前記各後足羽根26a,26bの真下には互いに分離された下ミッドソール3およびアウターソール4がそれぞれ配置される。
図1Bに示すように、前記下ミッドソール3およびアウターソール4は、後足部13において内外方向Wおよび前後方向Lに本質的に分離されて、前記足の後足部13の4つの島状の領域R1〜R4(図5)に配置されている。したがって、下ミッドソール3およびアウターソール4は、各領域R1〜R4において、4つの島状のユニットを構成している。一方、基部21cの真下には、下ミッドソール3およびアウターソール4が設けられていない。
【0108】
後足羽根26a,26b;
図5に示すように、前記後足羽根は、前記基部21cから足の内側に向って延びる2枚の後足内羽根26aと、足の外側に向って延びる2枚の後足外羽根26bとにより構成されている。
図7Cおよび図7Dに示すように、前記各後足羽根26a,26bは後足部13の上ミッドソール1の側面または背面(外周面)まで延びている。各後足羽根26a,26bは、前記側面または背面において上方に向かって巻き上がって、巻上部28を形成している。
【0109】
図7Cおよび図7Dに示すように、前記後足内羽根26aは、足の内側の端において上ミッドソール1の内側面Siに沿って湾曲した内巻上部28aを有する。前記後足外羽根26bは、足の外側の端において上ミッドソール1の外側面Soに沿って湾曲した外巻上部28bを有する。
図4に示すように、前記巻上部28の真上の部分には、上ミッドソール1が配置されている。前記巻上部28の真下の部分にはゴム様の圧縮変形部材30が配置されている。
【0110】
図7Cおよび図7Dに示すように、前記後足内羽根26aと前記後足外羽根26bとは、メインバー21(図5)の前記基部21cを介して互いに連なっており、前記基部21cにおいて上方に向って凸となる曲線に沿って配置されている。そのため、前記各後足羽根26a,26bは、基部21cの近傍において前記基部21cに近づくに従い上方に向かって膨出している。
【0111】
支持要素,変形要素,連結部材:
図1A、図1Bに示すように、前記上ミッドソール1の中足部12および後足部13は、足の中足部12から後足部13を支持すると共に着地の際の衝撃で圧縮変形して前記衝撃を吸収する機能を持つ支持要素を構成している。
前記下ミッドソール3は、足の後足部13において前記上ミッドソール1の下方に配置され、着地の際に上下方向に縮んだ状態に変形する変形要素を構成している。
前記強化部材2は後足部13において、上ミッドソール1と下ミッドソール3との間に介挿されて、上下のミッドソール1,3を互いに連結する連結部材を構成している。
【0112】
圧縮変形部材30の保持構造:
図2Aおよび図2Bに示すように、圧縮変形部材30は、観者が視認できるように、その側面が大きく露出されている。
図3に示すように、前記ミッドソール本体を構成する上ミッドソール1の後足部13には、強化部材2の後足羽根26a,26bおよび圧縮変形部材30が配置される凹所15が形成されている。前記凹所15は、後足部13の中心から上ミッドソール1の側面または背面(外周面)に行くに従い上下に拡がるように形成されている。
【0113】
前記強化部材2の各後足羽根26a,26bには、圧縮変形部材30の上面が固着される接合部27が設けられている。図6Bに示すように、ミッドソールの外周面に対応する位置において、前記接合部27から下方に向かって延びる第1係合部28cが前記接合部27と一体に形成されている。第1係合部28cは圧縮変形部材30の上部側面に係合する。図2Aおよび図2Bに示すように、第1係合部28cは、その側面から見た形状が三日月状に形成されて、上方に向って凸の略アーチ形状を構成している。また、前記接合部27は、前記側面または背面に沿った断面線における前記保持部材の接合部の断面形状が上方に凸のアーチ形状である。
【0114】
前記第1係合部28cに圧縮変形部材30の側面上部が係合することにより、圧縮変形部材30が外側に向って飛び出すのが防止される。したがって、強化部材2は圧縮変形部材30を保持する保持部材を構成している。
【0115】
この第1係合部28cは、圧縮変形部材の上端部のみを覆うように形成されており、ループ状には形成されていない。第1係合部28cは、少なくとも圧縮変形部材30の下部の変形を拘束しないように圧縮変形部材30の上半分より小さい範囲のみを覆うのが好ましい。
【0116】
一方、図4に示すように、各下ミッドソール3の緩衝部材(下ミッドソール本体)31には、前記上ミッドソール1の凹所15に対応する位置に、上方に向って巻き上がる第2係合部32が形成されている。図6Bに示すように、第2係合部32は圧縮変形部材30の下部側面に係合して、圧縮変形部材30が外側に向って飛び出すのを防止している。
このように、圧縮変形部材30の側面の上部および下部は、強化部材2の第1係合部28cと、下ミッドソール本体31の第2係合部32によって、それぞれ、係合保持されている。
【0117】
また、図6Bに示すように、アウターソール4には、前記第2係合部32の下方において下ミッドソール本体31の側面に沿って巻き上がる第3係合部33が設けられている。該第3係合部33は下ミッドソール本体31の第2係合部32を補強する。下ミッドソール本体31を設けずに、あるいは、第2係合部32を設けずに、第3係合部33が直接圧縮変形部材30に係合していてもよい。
【0118】
〔変形例〕
強化部材2の形状は前記実施例1に示すものに限られず、種々の形状を採用を採用し得る。以下に、図8B〜図10Cにしたがって強化部材2の変形例を説明する。なお、図8Aには以下に述べる変形例と対比するために、前述の実施例1で示した強化部材2を示してある。
【0119】
図8Bの変形例では、2つの中足内羽根22,23の内側の端部が互いに接続されている。すなわち、中足内羽根22,23がループを形成している。
図8Cの変形例では、前側の中足羽根22,24およびメインバー21の交差位置と、後側の中足羽根23,25およびメインバー21の交差位置との距離を前記実施例1のそれよりも小さく設定している。
図8Dの変形例では、前記距離を図8Cよりも更に小さく設定して、中足羽根22〜25が概ねX字状に形成されている。また、同変形例では、後足羽根26a,26bが放射状に設けられておらず、平面視概ねH字状に形成されている。すなわち、前側の後足羽根26a,26bが基部21cよりも前方のメインバー21の部位から延びている。
【0120】
なお、前述の実施例1では、中足羽根を内外2枚ずつ設けて合計4枚としたが、5枚以上が設けられていてもよい。また、中足内羽根が2枚以上である場合には、いずれか2以上中足内羽根の内側の端部が互いに接続されていてもよい。
【0121】
また、前述の実施例1では、前方の中足羽根22,24を前方に向って湾曲させると共に、後方の中足羽根23,25を後方に向って湾曲させることとしたが、前後の中足羽根をそれぞれ概ね同一方向に湾曲させることで、前方の中足羽根と後方の中足羽根とが互いに概ね平行になるようにしてもよい。また、4つの中足羽根が概ね渦巻状に形成されてもよい。
【0122】
さらに、中足内羽根22,23の長さが中足外羽根24,25の長さよりも小さく、あるいは、大きく設定されてもよい。
【0123】
図9Aの変形例では、3つの後足羽根が設けられている。この場合、各1つの後足内羽根26a,後足外羽根26bに加えて、後方(背面)に向って延びる1つの後足羽根26cが設けられている。
図9Bの変形例では、前側の後足内羽根か設けられておらす、後側の1つの後足内羽根26aのみが設けられている。
図9Cの変形例では、2つの後足内羽根26a,26aの内側の端部が互いに接続されている。すなわち、後足内羽根26a,26aがループを形成している。
図9Dの変形例では、内側の後足羽根26a,26aが外側の後足羽根26b,26bよりも短く設定されている。
【0124】
なお、後足内羽根26a,後足外羽根26bがそれぞれ1つずつであってもよい。また、前述の実施例1で示した4枚の後足羽根26a,26bに加え、後方(背面)に向かう別の後足羽根が設けられていてもよい。
また、6つ以上の後足羽根が基部21cを中心に放射状に設けられていてもよい。
また、後足内羽根と後足外羽根とは、必ずしも基部21cで滑らかに一直線上に連なっていなくてもよい。
また、各後足羽根を基部21cを中心に渦巻き状に形成してもよい。
【0125】
図10A〜図10Cに示す変形例では、中足部において強化部材2に2本の棒状部21dが設けられている。この場合、棒状部が1つの場合に比べて屈曲し難くなるので、アーチの低下抑制の機能が向上する。
【0126】
〔実施例2〕
次に、実施例2を図11〜図13にしたがって説明する。なお、以下の実施例において、実施例1と同一部分または相当部分には同一符号を付して、その詳しい説明を省略する。
【0127】
図11Aおよび図11Bに示すように、本実施例では、後足部において圧縮変形部材30が上ミッドソール1と強化部材2との間で保持されている。強化部材(保持部材)2の上面には圧縮変形部材30の下面が固着される接合部27が形成されている。
【0128】
図12に示すように、本実施例では、一対の圧縮変形部材30が設けられており、各圧縮変形部材30は略V字型に形成されている。一対の圧縮変形部材30は、概ね左右対称に配置されている。前記接合部27も圧縮変形部材30の形状に従って略V字状に形成されている。
【0129】
強化部材2の各後足羽根26a,26bには、前記接合部27から上方に延びる巻上部28が形成されている。巻上部28は圧縮変形部材30の端部30aに係合して圧縮変形部材30が外に飛び出すのを防止する。巻上部28には、圧縮変形部材30の端部30aが係合する係合孔28dが形成されている。かかる係合孔28dにより、圧縮変形部材30の変形を許容すると共に、図13Aおよび図13Bに示すように、圧縮変形部材30の端部30aが外部に向って露出し、観者が該端部30aを視認することができる。
【0130】
〔実施例3〕
次に、実施例3を図15Aおよび図15Bにしたがって説明する。
図15Aおよび図15Bに示すように、本実施例では、前記実施例1とは異なり、後足羽根26a,26bはミッドソールの側面まで延びておらず、したがって、後足羽根26a,26bの端部はミッドソールの側面において露出しておらず、第1係合部が設けられていない。
【0131】
圧縮変形部材30が露出しているミッドソールの側面およびその近傍においては、圧縮変形部材30は上下のミッドソール本体1,31の間で挟まれている。一方、後足羽根26a,26bが延びている領域においては、圧縮変形部材30は、保持部材(強化部材)2と下ミッドソール本体31との間に挟まれて保持されている。
【0132】
また、本実施例では、図15Aに示すように、アウターソール4の下ミッドソール本体31の第2係合部32の側面に沿って巻き上がって、第3係合部33が形成されている。すなわち、第3係合部33が下ミッドソール本体31の第2係合部32を介して間接的に圧縮変形部材30の下部側面に係合して、第2係合部32と共に圧縮変形部材30が外側に向って飛び出すのを防止している。
【0133】
なお、本実施例の変形例として、EVAやPUなどの発泡体からなる下ミッドソール本体31を設けずに、アウターソール4を圧縮変形部材30に直接に接合させてもよい。この場合、圧縮変形部材30は、アウターソール4と上ミッドソール本体1または保持部材2との間で挟まれて保持され、第3係合部33は圧縮変形部材30に直接に係合する。かかる構成は、前記実施例1にも適用できる。
【0134】
しかし、この変形例の場合、EVAやPUなどの発泡体からなる下ミッドソール本体31よりも硬い保持部材2の一部がアウターソール4上に直接に接着される。そのため、路面に接地したアウターソール4の変形が小さくなり、下ミッドソール本体31を設けた場合と比べて、アウターソール4と保持部材2との接触により接地時の音が大きくなったり、アウターソール4の接地面積が小さくなったりする。また、一般のアスレチックシューズと異なる着用感が生じ、着用者によっては違和感を覚える。
【0135】
これに対し、本実施例や前記実施例1では、比較的柔らかい下ミッドソール本体31を保持部材2とアウターソール4との間に設けることで、保持部材2とアウターソール4とが直接接触しない。したがって、接地時の音は大きくなったり、アウターソールの接地面積は小さくなったり、着用者が違和感を覚えたりするといった問題が生じ難くなる。
【0136】
以上のとおり、図面を参照しながら好適な実施例を説明したが、当業者であれば、本明細書を見て自明な範囲内で種々の変更および修正を容易に推定するであろう。
たとえば、上ミッドソールが2つ以上に分割されていてもよい。
また、メインバーが棒状部を含んでいなくてもよい。
したがって、そのような変更および修正は、本発明の範囲のものと解釈される。
【産業上の利用可能性】
【0137】
本発明は、種々の靴に利用することができる。
【符号の説明】
【0138】
11:前足部、12:中足部、13:後足部
1:上ミッドソール
14:アーチ,15:凹所
2:強化部材(連結部材、保持部材)
21:メインバー、21a:内側帯状部、21b:外側帯状部材、21c:基部、21d:棒状部21d
22,23:中足内羽根、24,25:中足外羽根
26a:後足内羽根、26b:後足外羽根
27:接合部
28:巻上部、28a:内巻上部、28b:外巻上部、28c:第1係合部、28d:係合孔
3:下ミッドソール
30:圧縮変形部材、30a:端部、31:緩衝部材、32:第2係合部、33:第3係合部
4:アウターソール
41:前アウターソール、42:後アウターソール
F3:第3指、C3:中足骨、C6:立方骨、C7:踵骨、C8:距骨、J3:リスフラン関節
L:前後方向、W:内外方向
R1〜R4:島状の領域、G:溝
【特許請求の範囲】
【請求項1】
足裏を覆うミッドソールと、前記ミッドソールの下面に取り付けられ接地するアウターソールとを備えた靴底であって、
前記ミッドソールは樹脂の発泡体からなるミッドソール本体と、ミッドソールの側面または背面において露出するゴム様または鞘様の圧縮変形部材とを包含し、
前記圧縮変形部材を前記ミッドソール本体もしくはアウターソールと協働して所定の部位に保持するための保持部材が設けられ、
前記保持部材は、前記圧縮変形部材の上面または下面に固着された接合部と、ミッドソールの側面または背面において前記接合部から上方または下方に延びる第1係合部と、を包含し、
前記第1係合部は前記圧縮変形部材に係合して、前記圧縮変形部材が飛び出すのを防止する靴底。
【請求項2】
請求項1において、前記ミッドソール本体には、前記ミッドソールの前足部における前後方向および内外方向の中心または後足部における前後方向および内外方向の中心から前記側面または背面に行くに従い上下方向の高さが大きくなる凹所が形成され、
前記凹所に前記圧縮変形部材が配置され、
前記保持部材の接合部は前記ミッドソール本体の前記凹所の下面に固着され、前記第1係合部は前記接合部から下方に向かって延びて前記圧縮変形部材の端部の上部に係合している靴底。
【請求項3】
請求項2において、前記ミッドソール本体は前記凹所が形成された上ミッドソール本体と、前記上ミッドソール本体の下方に配置される下ミッドソール本体とを包含し、
前記圧縮変形部材は前記保持部材と前記下ミッドソール本体との間に挟まれており、
前記下ミッドソール本体は、前記凹所における前記側面または背面の端部において、上方に向かって巻き上がった第2係合部を有し、
前記第2係合部が前記圧縮変形部材に係合して、前記圧縮変形部材が飛び出すのを防止する靴底。
【請求項4】
請求項2において、前記アウターソールは、前記凹所における側面または背面の端部において、上方に向かって巻き上がった第3係合部を有し、
前記第3係合部が前記圧縮変形部材に直接または間接的に係合して、前記圧縮変形部材が飛び出すのを防止する靴底。
【請求項5】
請求項2において、前記第1係合部の前記側面または背面から見た形状が上方に向かって凸のアーチ形状である靴底。
【請求項6】
請求項1において、前記保持部材を構成する素材のヤング率が前記ミッドソール本体を構成する素材のヤング率よりも大きく、
前記側面または背面に沿った断面線における前記保持部材の接合部の断面形状が上方に凸のアーチ形状である靴底。
【請求項7】
足裏を覆うミッドソールと、前記ミッドソールの下面に取り付けられ接地するアウターソールとを備えた靴底であって、
前記ミッドソールは樹脂の発泡体からなるミッドソール本体と、ミッドソールの側面または背面において露出するゴム様または鞘様の圧縮変形部材とを包含し、
前記圧縮変形部材を前記ミッドソール本体もしくはアウターソールと協働して所定の部位に保持するための保持部材が設けられ、
前記保持部材は、前記圧縮変形部材の上面に固着された接合部を包含し、
前記ミッドソール本体には、前記ミッドソールの前足部における前後方向および内外方向の中心または後足部における前後方向および内外方向の中心から前記側面または背面に行くに従い上下方向の高さが大きくなる凹所が形成され、
前記凹所に前記圧縮変形部材が配置され、
前記保持部材の接合部は前記ミッドソール本体の前記凹所の下面に固着され、
前記ミッドソール本体は前記凹所が形成された上ミッドソール本体と、前記上ミッドソール本体の下方に配置される下ミッドソール本体とを包含し、
前記圧縮変形部材は前記保持部材と前記下ミッドソール本体との間に挟まれている靴底。
【請求項8】
請求項7において、前記下ミッドソール本体は、前記凹所における前記側面または背面の端部において、上方に向かって巻き上がった係合部を有し、
前記係合部が前記圧縮変形部材に係合して、前記圧縮変形部材が飛び出すのを防止する靴底。
【請求項9】
請求項7において、前記アウターソールは、前記凹所における側面または背面の端部において、上方に向かって巻き上がった係合部を有し、
前記係合部が前記圧縮変形部材に直接または間接的に係合して、前記圧縮変形部材が飛び出すのを防止する靴底。
【請求項1】
足裏を覆うミッドソールと、前記ミッドソールの下面に取り付けられ接地するアウターソールとを備えた靴底であって、
前記ミッドソールは樹脂の発泡体からなるミッドソール本体と、ミッドソールの側面または背面において露出するゴム様または鞘様の圧縮変形部材とを包含し、
前記圧縮変形部材を前記ミッドソール本体もしくはアウターソールと協働して所定の部位に保持するための保持部材が設けられ、
前記保持部材は、前記圧縮変形部材の上面または下面に固着された接合部と、ミッドソールの側面または背面において前記接合部から上方または下方に延びる第1係合部と、を包含し、
前記第1係合部は前記圧縮変形部材に係合して、前記圧縮変形部材が飛び出すのを防止する靴底。
【請求項2】
請求項1において、前記ミッドソール本体には、前記ミッドソールの前足部における前後方向および内外方向の中心または後足部における前後方向および内外方向の中心から前記側面または背面に行くに従い上下方向の高さが大きくなる凹所が形成され、
前記凹所に前記圧縮変形部材が配置され、
前記保持部材の接合部は前記ミッドソール本体の前記凹所の下面に固着され、前記第1係合部は前記接合部から下方に向かって延びて前記圧縮変形部材の端部の上部に係合している靴底。
【請求項3】
請求項2において、前記ミッドソール本体は前記凹所が形成された上ミッドソール本体と、前記上ミッドソール本体の下方に配置される下ミッドソール本体とを包含し、
前記圧縮変形部材は前記保持部材と前記下ミッドソール本体との間に挟まれており、
前記下ミッドソール本体は、前記凹所における前記側面または背面の端部において、上方に向かって巻き上がった第2係合部を有し、
前記第2係合部が前記圧縮変形部材に係合して、前記圧縮変形部材が飛び出すのを防止する靴底。
【請求項4】
請求項2において、前記アウターソールは、前記凹所における側面または背面の端部において、上方に向かって巻き上がった第3係合部を有し、
前記第3係合部が前記圧縮変形部材に直接または間接的に係合して、前記圧縮変形部材が飛び出すのを防止する靴底。
【請求項5】
請求項2において、前記第1係合部の前記側面または背面から見た形状が上方に向かって凸のアーチ形状である靴底。
【請求項6】
請求項1において、前記保持部材を構成する素材のヤング率が前記ミッドソール本体を構成する素材のヤング率よりも大きく、
前記側面または背面に沿った断面線における前記保持部材の接合部の断面形状が上方に凸のアーチ形状である靴底。
【請求項7】
足裏を覆うミッドソールと、前記ミッドソールの下面に取り付けられ接地するアウターソールとを備えた靴底であって、
前記ミッドソールは樹脂の発泡体からなるミッドソール本体と、ミッドソールの側面または背面において露出するゴム様または鞘様の圧縮変形部材とを包含し、
前記圧縮変形部材を前記ミッドソール本体もしくはアウターソールと協働して所定の部位に保持するための保持部材が設けられ、
前記保持部材は、前記圧縮変形部材の上面に固着された接合部を包含し、
前記ミッドソール本体には、前記ミッドソールの前足部における前後方向および内外方向の中心または後足部における前後方向および内外方向の中心から前記側面または背面に行くに従い上下方向の高さが大きくなる凹所が形成され、
前記凹所に前記圧縮変形部材が配置され、
前記保持部材の接合部は前記ミッドソール本体の前記凹所の下面に固着され、
前記ミッドソール本体は前記凹所が形成された上ミッドソール本体と、前記上ミッドソール本体の下方に配置される下ミッドソール本体とを包含し、
前記圧縮変形部材は前記保持部材と前記下ミッドソール本体との間に挟まれている靴底。
【請求項8】
請求項7において、前記下ミッドソール本体は、前記凹所における前記側面または背面の端部において、上方に向かって巻き上がった係合部を有し、
前記係合部が前記圧縮変形部材に係合して、前記圧縮変形部材が飛び出すのを防止する靴底。
【請求項9】
請求項7において、前記アウターソールは、前記凹所における側面または背面の端部において、上方に向かって巻き上がった係合部を有し、
前記係合部が前記圧縮変形部材に直接または間接的に係合して、前記圧縮変形部材が飛び出すのを防止する靴底。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2009−142705(P2009−142705A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−85147(P2009−85147)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【分割の表示】特願2008−511921(P2008−511921)の分割
【原出願日】平成18年4月21日(2006.4.21)
【出願人】(000000310)株式会社アシックス (57)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【分割の表示】特願2008−511921(P2008−511921)の分割
【原出願日】平成18年4月21日(2006.4.21)
【出願人】(000000310)株式会社アシックス (57)
【Fターム(参考)】
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