説明

形状記憶合金を利用した係合解除兼ダンパ機構

【課題】ワイヤ状の形状記憶合金(SMA)を利用して、省スペースで高精度な係合解除兼ダンパ機構を提供する。
【解決手段】突出位置に向かって付勢されたフラッシュ発光部は、係止レバー60が係止爪21に係合することでカメラ本体内に格納保持されている。回動レバー50に連結したワイヤ状の形状記憶合金40に通電して収縮させると、回動レバー50が回動し、係止レバー60が係止爪21から外れて、ポップアップ動作が開始する。ポップアップ時におけるフラッシュ発光部の初期移動は、回動レバー50がコイルスプリング88をチャージすることで制動される。その後は、ブレーキレバー70のアーム71がコイルスプリング88をチャージすることによる制動力によって、ダンパ効果を与えながらフラッシュ発光部を作動位置まで移動させる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、形状記憶合金を利用した係合解除兼ダンパ機構に関する。この機構は、例えば、ポップアップ式のフラッシュ発光部を内蔵するカメラ等において、待機位置に係合保持されたフラッシュ発光部の係合を解いてポップアップ動作を開始させるとともに、ポップアップ動作完了時の衝撃を軽減すべくダンパ効果を付与することのできる係合解除兼ダンパ機構として利用するのに好都合である。
【0002】
【従来の技術および発明が解決しようとする課題】
例えば、一眼レフカメラやコンパクトカメラ等において、ポップアップ式のフラッシュ発光部を内蔵したものが従来から知られている。これは、図1に概略的に示したように、フラッシュを使用しない場合にはフラッシュ発光部10がカメラ本体内に格納されていて(図1(a))、フラッシュを使用する場合にフラッシュ発光部10がポップアップ式に飛び出す(図1(b))。
【0003】
フラッシュ発光部10は、不図示のスプリングによって図1(b)の使用位置(あるいは、作動位置)へ向けて付勢されている。しかし、フラッシュ発光部10は回動レバー11を備えていて、このレバーがカメラ本体側に固定された係止爪21と係合することで、フラッシュ発光部10は図1(a)の格納位置(あるいは、待機位置)に保持されている。
必要時に回動レバー11を係止爪21から離脱させると、フラッシュ発光部はスプリングによる付勢力によって、格納位置から使用位置へと移動する。フラッシュ発光部10は、その一部分が不図示のストッパ部分に当接する(ぶつかる)ことで使用位置に停止する。
【0004】
このようなポップアップ式のフラッシュ機構においては、フラッシュ発光部10がストッパ部分にぶつかる時の衝撃が大きく、それを何らかの手段で吸収したという要請がある。
【0005】
このため、従来、ストッパ部分に衝撃吸収用のクッション材を配置することが行なわれているが、それだけでは衝撃を十分に吸収することができず、また、クッション材を配置したが故に、フラッシュ発光部10の使用位置への位置決め精度が悪化するという恐れがある。
また、ポップアップ回転軸となるヒンジ部30にダンパ部材を配置している製品もあるが、ダンパ部材が大きくて、製品の小型化の妨げとなっている。
さらには、ダンパ機構と係止解除機構とを別々に設ける必要があるため、部品点数が増えて製造コストがアップするという問題がある。
【0006】
上記従来の事情に鑑み、本発明は、ワイヤ状の形状記憶合金(SMA)を利用して、省スペースで高精度な係合解除兼ダンパ機構を提供することを目的としている。
なお、フラッシュ発光部のポップアップ時にSMAを利用して係合解除を行なう機構は従来から知られている(例えば、特許文献1および2参照)が、それらは、ダンパ機構まで備えるものではない。
【0007】
【特許文献1】
特開平10−301168号公報(段落番号0024、図1)
【特許文献2】
特開2000−330640号公報(段落番号0153、図17および図18)
【0008】
【課題を解決するための手段・作用・効果】
本発明は、上記課題を有効に解決するために創案されたものであって、以下の特徴を備えた係合解除兼ダンパ機構を提供するものである。
【0009】
本発明の係合解除兼ダンパ機構は、「待機位置と作動位置との間を移動可能であるとともに、作動位置に向かって付勢された状態で基台部に取り付けられた駆動対象部」と「基台部と駆動対象部とを係合させて、上記付勢力に抗して駆動対象部を待機位置に保持する回動レバー」と「回動レバーに連結されていて、通電されて温度が上昇したとき収縮して回動レバーを回動させ、これにより、基台部と駆動対象部との係合を解く、ワイヤ状の形状記憶合金(SMA)」と「駆動対象部に保持されていて、コイル部に円筒部材を相通してなるコイルスプリングで構成されたブレーキドラム」と「駆動対象部の作動位置への移動に連動して、コイルスプリングをチャージする制動部材」とを備えている。
回動レバーは、形状記憶合金の収縮に起因して回動したとき、コイルスプリングをチャージすることで、駆動対象部の初期移動を制動する。その後は、上記制動部材がコイルスプリングをチャージすることによる制動力によって、ダンパ効果を与えながら駆動対象部を作動位置まで移動させる。(請求項1)
【0010】
上記構成を有する本発明の係合解除兼ダンパ機構においては、SMAへの通電のオン/オフを行なう1つの駆動系だけで、ポップアップ時の係合解除およびダンパ効果を達成できる。したがって、装置全体の小型化を達成できる。さらには、部品点数および製造コストの削減を達成できる。
【0011】
また、本発明により、「待機位置と作動位置との間を移動可能であるとともに、作動位置に向かって付勢された状態で基台部に取り付けられた駆動対象部」と「基台部と駆動対象部とを係合させて、上記付勢力に抗して駆動対象部を待機位置に保持する回動レバー」と「回動レバーに連結されていて、通電されて温度が上昇したとき収縮して回動レバーを第1方向に回動させ、これにより、基台部と駆動対象部との係合を解く、ワイヤ状の形状記憶合金」とを備えた係合解除兼ダンパ機構が提供される。
当該係合解除兼ダンパ機構においては、上記係合が解かれて、駆動対象部が作動位置に向かって移動するとき、駆動対象部または基台部から突出する制動突部が、回動レバーに形成された制動面に圧接し、これにより駆動対象部の移動が制動される。その後は、制動突部が回動レバーを上記第1方向とは逆の第2方向へ向けて圧接する力と、通電が切られて徐々に伸張していく上記形状記憶合金から回動レバーに伝達される反作用力とのバランスによって、ダンパ効果を与えながら駆動対象部を作動位置まで移動させる。(請求項4)
【0012】
かかる構成によれば、回動レバーの他にブレーキドラムを別途用意する必要もなくなるので、さらなる小型化およびコスト削減が可能となる。
また、この構成においては、通電OFF後の限られた時間におけるSMAの放熱による伸張を利用してダンパ効果を与えている。つまり、通常のダンパ機構とは異なり、ダンパ効果が要求される時にのみダンパ効果が発揮され、それ以外の時にはダンパによる負荷のない状態で駆動を行なうことができる。
【0013】
本発明における駆動対象部としては、例えば、カメラに内蔵されたポップアップ式のフラッシュ発光部が代表的であるが、これに限られず、「待機位置での係合保持が解かれたときに、付勢手段による付勢力によって作動位置まで移動するようなあらゆる機構部または部材」に対して適用可能である。
【0014】
ここで、「待機位置」とは、駆動対象部がその機能を必要とされず待機している位置を意味し、駆動対象部がフラッシュ発光部である場合には「格納位置」と考えることもできる。「作動位置」とは、駆動対象部が本来の機能を果たし得る位置を意味し、したがって、「使用位置」と考えることもできる。
また、「基台部」とは、駆動対象部が取り付けられた土台である。駆動対象部は、この土台に対して、待機位置と作動位置との間で移動する。フラッシュ発光部を例にとれば、カメラ本体が土台に該当する。
【0015】
本発明においては、駆動対象部を待機位置に係合保持するために、回動レバーと係止爪との係合を利用しているが、回動レバーを駆動対象部側に設ける場合には、係止爪を基台部側に設ければよく、逆に、係止爪を駆動対象部側に設ける場合には、回動レバーを基台部側に設ければよい。本発明において、その相対的な配置位置関係は、特定のものに限定されない。
【0016】
【発明の実施の形態】
本発明の実施形態を添付の図面を参照して以下に詳細に説明する。図2は、本発明の一実施形態に係るカメラを模式的に示す縦断面図である。
【0017】
カメラ本体20に対してフラッシュ発光部10がポップアップ可能に取り付けられている。フラッシュ発光部10は、カメラ上部に露出する作動位置(使用位置)へと不図示のポップアップスプリングによって付勢されているが、カメラ本体側に固定されている係止爪21に係止レバー60が係合することによって、図2に示した待機位置(格納位置)に保持されている。
【0018】
フラッシュ使用時に、後で詳述するような方法で、係止爪21と係止レバー60との係合を解除してやると、ポップアップスプリングの付勢力により、フラッシュ発光部10は、回動軸30を中心として矢印方向にポップアップして、発光面15がカメラ前面側に向かって露出する。
【0019】
図3は、図2に示したフラッシュ発光部10の内部に設けられた係合解除兼ダンパ機構を取り出して示す要部拡大図である。
【0020】
ワイヤ状の形状記憶合金(SMA)40は、その一端が回動レバー50の第1アーム51に、他端がフラッシュ発光部内に設けた固定ピン41(図2参照)に固定されている。回動レバー50は、不図示のスプリングによって図3中時計方向に付勢されているが、SMA40に保持されて図3に示した位置に止まっている。
【0021】
通電によりSMA40が加熱されると、SMA40は、記憶長さへと収縮(縮んで短くなる)して、回動レバー50を図中反時計方向に回動させる。その結果、回動レバー50の第2アーム52が、係止レバー60の第1アーム61を押圧する。係止レバー60は、スプリング66によって反時計回りの方向に付勢されているが、アーム52に押圧されて時計回りに回動する。これにより、係止レバー60の第2アーム62が係止爪21から離脱する。
なお、SMA40に通電を行なうための電気回路は、カメラ本体20(図2参照)側に配置するのが好ましい。
【0022】
初期移動の制動初期制動
SMA40の収縮により第2アーム62が係止爪21から離脱すると同時に、回動レバー50の第3アーム53がブレーキスプリング88をチャージする。ブレーキスプリング88のコイル部分88aにはブレーキドラム85が挿通されていて、スプリング88がチャージされるとコイル部分88aが縮径し、ブレーキドラム85を締め付けることで、制動効果が得られる。つまり、第3アーム53がブレーキスプリング88をチャージすることで、フラッシュ発光部のポップアップ時における初期移動が制動される。
【0023】
初期制動後の制動
その後、通電はOFFされるので収縮したSMA40は、縮む前の長さへと伸長する。この結果、回動レバー50は上記不図示のスプリングにより時計回りに回動し、第3アーム53によるブレーキスプリング88のチャージは徐々に解除され、したがって、それによるブレーキ効果は小さくなっていく。しかしその代わりに、フラッシュ発光部全体のポップアップ移動と連動して、ブレーキレバー70のアーム71がブレーキスプリング88をチャージするので、これによりブレーキ効果(ダンパ効果)が徐々に大きくなっていく。ブレーキレバー70のアーム71がブレーキスプリング88をチャージする機構は、以下の通りである。
【0024】
ブレーキレバー70がブレーキスプリング88をチャージする機構
カメラ本体側には、ピン89が固定されている。つまり、フラッシュ発光部10がポップアップ移動すると、相対的には、本体側固定ピン89は、図3において軸30を中心として反時計方向に回転(公転)する。本体側固定ピン89には、ポップアップ連動レバー80のアーム81が当接しており、ポップアップ連動レバー80もフラッシュ発光部に対して相対移動する。なお、ブレーキドラム85は、ポップアップ連動レバー80に形成されている。
一方、ブレーキレバー70に形成した長孔75に通されたブレーキレバー駆動ピン82がポップアップ連動レバー80に固定されている。したがって、図3中において、ポップアップ連動レバー80が相対的に反時計回りに回動すると、ブレーキレバー駆動ピン82が、ブレーキレバー70を軸70aを中心として時計回りに回動させ、この結果、アーム71がブレーキスプリング88をチャージする。これにより、ブレーキスプリング88のコイル部分88aが縮径して上記と同様、ブレーキドラム85を締め付けてダンパ効果を達成する。
【0025】
以上の説明から分かるように、図2および図3の例では、アーム53がブレーキスプリング88をチャージすることで初期移動が制動され、その後は、アーム71がブレーキスプリング88をチャージすることに起因する制動効果が徐々に大きくなる。このように、ブレーキドラムによる制動効果がバランスされることで、全体として適切なダンパ効果が得られる。
なお、最終的にフラッシュ発光部を使用位置に位置決めするためのストッパ部分を適宜設けることが好ましい。
【0026】
図4〜図8を用いた原理的説明
図4〜図8は、図2および図3に示した機構を備えたフラッシュ発光部10が、格納位置にある状態から、ポップアップ移動(回動)して、使用位置に位置するまでの各部材の機能を模式的に示す駆動原理図である。図2および図3は複雑なので、簡略化した図4〜図8を用いて原理的に説明するものである。図4〜図8に示した各図番は、図2および図3に示した部材に対応している。
図4〜図8を参照した以下の説明では、カメラ本体20に対して不動の係止爪21および本体側固定ピン89が図中下方側へ向かって移動するかのようであるが、これは相対的な関係であって、実際にはフラッシュ発光部10全体が上方に向かって回動しており、係止爪21および本体側固定ピン89は不動である。
また、図2および図3では、回動レバー50と係止爪21との間に係止レバー60が介在しているが、図4〜図8の駆動原理図においては、そのような介在するレバーは省略している。これは、原理的には係止レバー60の介在を省略することが可能で、かつ、説明が明瞭になるからである。ただし、係止レバー60を介在させることにメリットがあり、これについては後述する。
【0027】
図4の説明
SMA40に通電を行なう前の状態を示しており、図3の状態に対応している。つまり、フラッシュ発光部10は格納状態にある。
【0028】
図5の説明
SMA40への通電が開始された状態を示している。SMA40は発熱により収縮し、これにより、回動レバー50が回動して、アーム62が係止爪21から離脱する。アーム62と係止爪21との係合が解かれると、ポップアップスプリング(不図示)の付勢力によって、フラッシュ発光部10全体が回動(ポップアップ)を始めるが、このとき、アーム53がブレーキスプリング88をチャージしてブレーキ効果を与える(アーム53によるブレーキ効果)。
【0029】
図6の説明
フラッシュ発光部10全体が回動すると、本体側固定ピン89は相対的に矢印方向に回転し、これによりアーム71がブレーキスプリング88をチャージして、ブレーキ効果を与える(アーム71によるブレーキ効果)。
【0030】
図7の説明
SMA40に対する通電がOFFとされ、SMA40は放熱して伸び始める。これにより、回動レバー50は時計回りに回動を始め、「アーム53によるブレーキ効果」は小さくなっていく。ただし、この間にもフラッシュ発光部10全体のポップアップは進行するので、「アーム71によるブレーキ効果」は大きくなっていく。
なお、係止爪21は、相対的にフラッシュ発光部10から遠ざかるので、図7〜図8においては、図中には現れない。
【0031】
図8の説明
ポップアップ動作が完了して、フラッシュ発光部10が完全にカメラ本体20の上側に突出した状態(使用位置)に対応している。SMA40は、伸長して初期長さにまで戻っていて、回動レバー50も初期位置に戻っている。また、ピン89は、フラッシュ発光部全体に対して、相対的に最下方の位置に達している。
【0032】
係止レバー60が介在することによるメリット
ここで、図2および図3において、回動レバー50と係止爪21との間に係止レバー60を介在させていることのメリットについて説明する。
図8は、フラッシュ発光部10が完全にカメラ本体外に突出した状態に対応しているが、その後、フラッシュ発光部をカメラ本体内に格納する場合(例えば、フラッシュ発光部10の上面を手で押さえて、フラッシュ発光部全体をカメラ本体20内に押し込む)、アーム62が係止爪21に対して上方側から当接して、回動レバー50を図8中反時計回りに回動させる。回動レバー50は初期位置(図4の位置)に向けて時計回りに付勢されているので、その後、アーム62と係止爪21とが再度係合して、これにより、フラッシュ発光部10をカメラ本体20内に格納することができる。
この再係合が行なわれる時、係止レバー60が介在していない(図4〜図8の場合)と、SMA40に異常負荷が作用してしまう。ところが、図2および図3に示したように、係止レバー60を介在させておくと当該再係合の時に、介在する係止レバー60は回動しても回動レバー50は不動となるため、SMA40に異常負荷が作用するのを防止でき、耐久性を向上させることができる。
【0033】
ワイヤ状のSMAを用いて回動レバーの駆動を行なうためには、SMA自体の長さをある程度確保することが必要となる。そのようなSMAをカメラ本体内に配置すると、カメラのコンパクト化の妨げになるが、図2〜図8に示した構成においては、直線空間を比較的確保しやすいフラッシュ発光部のケース内に、ワイヤ状のSMAを配置して、カメラが大型化するのを防いでいる。
また、そうすることで、SMAとポップアップ駆動軸との距離を短くすることができ、さらには、カメラ本体内にプランジャを配置してポップアップを実現する場合と比べても、当該プランジャを廃止して別機構を配置できる分だけ省スペース化を実現することができる。
【0034】
第2実施形態
本発明の第2実施形態を図9〜図12を参照して説明する。この実施形態では、第1実施形態と比べてブレーキドラムを省略している。それに代わる手段として、回動レバー150の一部にカム面(制動面)155を設け、このカム面155にポップアップ連動レバー80の先端部(制動突部)80aが圧接することでダンパ効果を達成している。第1実施形態と比べて、より少ない部材(ブレーキドラムが省略されている)でダンパ効果を達成できるという利点がある。
他の基本的な原理については第1実施形態の場合と同様であるので、異なる点を重点的に説明する。
【0035】
回動レバー150は、スプリング156によって、図9に示した初期位置へと図中時計回りに付勢されている。この状態からSMA40への通電を開始すると、回動レバー150は反時計回りの方向(第1方向)に回動し、その結果、アーム162が係止爪21から離脱して、ポップアップが開始する(図10)。ポップアップが開始すると、本体側固定ピン89が相対的に図中反時計回りに回転して、これにより、ポップアップ連動レバー80の先端部(制動突部)80aが回動レバー150のカム面(制動面)155に圧接してブレーキがかかる(図11)。このとき、先端部80aは、回動レバー150を時計回りの方向(第2方向)に向かって押圧していることとなる。
【0036】
図11においてSMA40への通電はOFFとされているが、未だSMA40は伸びきってはおらず収縮状態にある。この後、SMA40は放熱して徐々に伸びていく。一方、ポップアップ連動レバー80の先端部80aは、回動レバー150を時計回り(第2方向)に押圧している。
したがって、回動レバー150には、先端部80aからの押圧力と、徐々に伸びていくSMA40から反作用的な力との2つの力が作用し、そのバランスにより、回動レバー150は時計回りに回動する。この回動に伴なって、ポップアップ連動レバー80の先端部80aが、回動レバー150に形成したカム面155上をダンパ効果を受けながら、反時計回りに回動する。言い換えると、駆動対象部であるフラッシュ発光部が、ダンパ効果を受けながら作動位置に向かって回動する。
最終的に回動レバー150が図9に示した初期位置に戻った時点でポップアップ動作が完了する(図12)。
【0037】
第3実施形態
本発明の第3実施形態を図13〜図16を参照して説明する。第3実施形態においては、第1および第2実施形態とは異なり、駆動対象部は回動移動ではなくスライド移動する。
また、第1および第2実施形態では、回動レバー自体が、回動するフラッシュ発光部内に配置されていたが、第3実施形態では、回動レバー250の回動軸はその位置を変えず、駆動対象部である可動トレー280が実際に移動する。
【0038】
可動トレー280は、図13の待機位置と図16の作動位置との間を直線的にスライド移動する。実際には、可動トレー280にフラッシュ発光部を取り付けてスライド式にポップアップさせてもよいし、その他適当な駆動対象と連動させることができる。
【0039】
可動トレー280は、スプリング271を介して、固定壁270に連結されている。スプリング271は、図中左方向に可動トレー280を付勢している。すなわち、可動トレー280は、図16の作動位置に向けて付勢されているが、可動トレー上面に形成した凹部281に係止レバー260が係合することで、図13の待機位置に保持されている。
【0040】
一方、回動レバー250は、スプリング256によって、図13に示した初期位置へと図中時計回りに付勢されている。この状態からSMA40への通電を開始すると、SMA40が収縮することで、回動レバー250が反時計回り(第1方向)に回動する。その結果、第3アーム253と係合している係止レバー260が上方に移動して、レバー先端部260aが可動トレー上面に形成された凹部281から離脱する(図14)。
【0041】
係止レバー260の先端部260aが凹部281から離脱すると、可動トレー280は、図13の待機位置から左方向へスライドし始める。一方、回動レバー250が反時計回りに回動したことで、回動レバー250の第2アーム252が、可動トレー280のスライド経路内に進入する。その結果、第2アーム252に設けた制動面251が可動トレー上面に形成した制動突部283と当接して制動効果を与える(図15)。
【0042】
図15の状態を過ぎるとSMA40への通電はOFFとされるが、未だSMA40は伸びきってはおらず収縮状態にある。この後、SMA40は放熱して徐々に伸びていく。一方、可動トレー280は、その制動突部283が回動レバー250の制動面251に当接し、これにより、回動レバー250を時計回り(第2方向)に押圧している。
したがって、回動レバー250には、制動突部283からの押圧力と、徐々に伸びていくSMA40から反作用的な力との2つの力が作用し、そのバランスにより、回動レバー250は時計回りに回動する。この回動に伴なって、可動トレー280は、ダンパ効果を受けながら作動位置に向かってスライドする。
最終的には、可動トレー280の下面に設けた突起282がストッパ壁290と当接してスライド動作が完了する。このとき、スプリング256の付勢力により、回動レバー250は、図13に示した初期位置に戻っている(図16)。
【0043】
第3実施形態では、回動レバー250の第3アーム253と可動トレー280の凹部281との間に係止レバー260を介在させているので、図3において回動レバー50と係止爪21との間に係止レバー60を介在させたのと同様の効果を得ることができる。すなわち、作動位置にある可動トレー280を待機位置に戻す際に、SMA40に異常負荷が作用することを防いで、耐久性を向上させることができる。
なお、係止レバー260は、重力または適宜の付勢手段で凹部281と係合する方向に付勢されている。
【0044】
第4実施形態
本発明の第4実施形態を図17〜図20を参照して説明する。第3実施形態と同じように、第4実施形態においても、回動レバー350の回動軸はその位置を変えず、駆動対象部である回動軸380が実際に回動する。
【0045】
回動軸380は、図17の待機位置と図20の作動位置との間で回動する。実際には、回動軸380にフラッシュ発光部を取り付けてポップアップさせてもよいし、その他適当な駆動対象と連動させることができる。
【0046】
回動軸380は、不図示のスプリングによって図20の使用位置に向けて反時計回りの方向に付勢されている。しかしながら、図17の待機位置においては、回動軸380の周面に設けた突起382に、回動レバー350の第3アーム353が係合し、これにより、回動軸380は待機位置に保持されている。
【0047】
一方、回動レバー350は、スプリング356によって、図17に示した初期位置へと図中時計回りに付勢されている。この状態からSMA40への通電を開始すると、SMA40が収縮することで、回動レバー350が反時計回り(第1方向)に回動する。その結果、回動レバー350の第3アーム353が回動軸周面の突起382から外れて、回動軸380は、反時計回りに回動を始める(図18)。
【0048】
一方、回動レバー350が反時計回りに回動したことで、回動レバー350の第2アーム352が、回動軸380の回転中心380aに近づくように移動する。回動軸380はカム(制動突部)381を同軸状に備えていて、回動軸380が回動すると、カム(制動突部)381は、近づいてきた第2アーム352に設けた制動面351と当接して制動効果を与える(図19)。
【0049】
図19の状態ではSMA40への通電はOFFとされるが、未だSMA40は伸びきってはおらず収縮状態にある。この後、SMA40は放熱して徐々に伸びていく。一方、カム(制動突部)381が回動レバー350の制動面351に当接して、回動レバー350を時計回り(第2方向)に押圧している。
したがって、回動レバー350には、カム(制動突部)381からの押圧力と、徐々に伸びていくSMA40から反作用的な力との2つの力が作用し、そのバランスにより、回動レバー350は時計回りに回動する。この回動に伴なって、回動軸380は、ダンパ効果を受けながら作動位置に向かって回動する。
最終的には、回動軸380の周面に設けた突起382がストッパ壁390と当接して回動動作が完了する。このとき、スプリング356の付勢力により、回動レバー350は、図17に示した初期位置に戻っている(図20)。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来のポップアップ機構を説明する概略図である。
【図2】本発明の第1実施例に係る係合解除兼ダンパ機構を備えたフラッシュ発光部を説明する概略縦断面図である。
【図3】図2に示した係合解除兼ダンパ機構の要部拡大図である。
【図4】図3の機構の原理を説明する駆動原理図である。
【図5】図3の機構の原理を説明する駆動原理図である。
【図6】図3の機構の原理を説明する駆動原理図である。
【図7】図3の機構の原理を説明する駆動原理図である。
【図8】図3の機構の原理を説明する駆動原理図である。
【図9】本発明の第2実施例に係る係合解除兼ダンパ機構の原理を説明する駆動原理図である。
【図10】本発明の第2実施例に係る係合解除兼ダンパ機構の原理を説明する駆動原理図である。
【図11】本発明の第2実施例に係る係合解除兼ダンパ機構の原理を説明する駆動原理図である。
【図12】本発明の第2実施例に係る係合解除兼ダンパ機構の原理を説明する駆動原理図である。
【図13】本発明の第3実施例に係る係合解除兼ダンパ機構の原理を説明する駆動原理図である。
【図14】本発明の第3実施例に係る係合解除兼ダンパ機構の原理を説明する駆動原理図である。
【図15】本発明の第3実施例に係る係合解除兼ダンパ機構の原理を説明する駆動原理図である。
【図16】本発明の第3実施例に係る係合解除兼ダンパ機構の原理を説明する駆動原理図である。
【図17】本発明の第4実施例に係る係合解除兼ダンパ機構の原理を説明する駆動原理図である。
【図18】本発明の第4実施例に係る係合解除兼ダンパ機構の原理を説明する駆動原理図である。
【図19】本発明の第4実施例に係る係合解除兼ダンパ機構の原理を説明する駆動原理図である。
【図20】本発明の第4実施例に係る係合解除兼ダンパ機構の原理を説明する駆動原理図である。
【符号の説明】
10 フラッシュ発光部
11 回動レバー
15 発光面
20 カメラ本体
21 係止爪
22 鏡筒
30 ヒンジ部(回転軸)
40 SMA(形状記憶合金)
41 固定ピン
50、150、250、350 回動レバー
51、61 第1アーム
52、62、162、252、352 第2アーム
53、253、353 第3アーム
60、260 係止レバー
66、156、256、271、356 スプリング
70 ブレーキレバー
71、81 アーム
75 長孔
80 ポップアップ連動レバー
85 ブレーキドラム
88 ブレーキスプリング
89 本体側固定ピン
155 カム面
251、351 制動面
270 固定壁
280 可動トレー
281 凹部
282、382 ストッパ突起
283 制動突部
290、390 ストッパ壁
380 回動軸
381 カム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
待機位置と作動位置との間を移動可能であるとともに、作動位置に向かって付勢された状態で基台部に取り付けられた駆動対象部と、
基台部と駆動対象部とを係合させて、上記付勢力に抗して駆動対象部を待機位置に保持する回動レバーと、
回動レバーに連結されていて、通電されて温度が上昇したとき収縮して回動レバーを回動させ、これにより、基台部と駆動対象部との係合を解く、ワイヤ状の形状記憶合金と、
駆動対象部に保持されていて、コイル部に円筒部材を相通してなるコイルスプリングで構成されたブレーキドラムと、
駆動対象部の作動位置への移動に連動して、コイルスプリングをチャージする制動部材と、を備えた係合解除兼ダンパ機構であって、
回動レバーは、形状記憶合金の収縮に起因して回動したとき、コイルスプリングをチャージすることで、駆動対象部の初期移動を制動し、
その後は、上記制動部材がコイルスプリングをチャージすることによる制動力によって、ダンパ効果を与えながら駆動対象部を作動位置まで移動させることを特徴とする、係合解除兼ダンパ機構。
【請求項2】
上記回動レバーは、駆動対象部または基台部に固定された係止爪に対して、別の回動レバーを介在して係合することで、駆動対象部と基台部とを係合させるものであり、当該別の回動レバーは、係止爪と係合する方向に付勢されていて、
形状記憶合金の収縮に起因して上記回動レバーが回動したとき、これと連動して上記介在する回動レバーが係止爪から離脱する、請求項1記載の係合解除兼ダンパ機構。
【請求項3】
上記基台部がカメラ本体であって、駆動対象部がカメラ本体に対してポップアップ可能に取り付けられたフラッシュ発光部である、請求項1または2記載の係合解除兼ダンパ機構。
【請求項4】
待機位置と作動位置との間を移動可能であるとともに、作動位置に向かって付勢された状態で基台部に取り付けられた駆動対象部と、
基台部と駆動対象部とを係合させて、上記付勢力に抗して駆動対象部を待機位置に保持する回動レバーと、
回動レバーに連結されていて、通電されて温度が上昇したとき収縮して回動レバーを第1方向に回動させ、これにより、基台部と駆動対象部との係合を解く、ワイヤ状の形状記憶合金と、を備えた機構であって、
上記係合が解かれて、駆動対象部が作動位置に向かって移動するとき、駆動対象部または基台部から突出する制動突部が、回動レバーに形成された制動面に圧接し、これにより駆動対象部の移動が制動され、
制動突部が回動レバーを上記第1方向とは逆の第2方向へ向けて圧接する力と、通電が切られて徐々に伸張していく上記形状記憶合金から回動レバーに伝達される反作用力とのバランスによって、ダンパ効果を与えながら駆動対象部を作動位置まで移動させることを特徴とする、係合解除兼ダンパ機構。
【請求項5】
上記回動レバーは、駆動対象部または基台部に固定された係止爪に対して、別の回動レバーを介在して係合することで、駆動対象部と基台部とを係合させるものであり、当該別の回動レバーは、係止爪と係合する方向に付勢されていて、
形状記憶合金の収縮に起因して上記回動レバーが回動したとき、これと連動して上記介在する回動レバーが係止爪から離脱する、請求項4記載の係合解除兼ダンパ機構。
【請求項6】
上記基台部がカメラ本体であって、駆動対象部がカメラ本体に対してポップアップ可能に取り付けられたフラッシュ発光部である、請求項4または5記載の係合解除兼ダンパ機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2004−92891(P2004−92891A)
【公開日】平成16年3月25日(2004.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2002−258943(P2002−258943)
【出願日】平成14年9月4日(2002.9.4)
【出願人】(000006079)ミノルタ株式会社 (155)
【Fターム(参考)】