説明

往復ポンプ装置

【課題】 基体に固定するためのアダプタの取付位置の変更が可能であり、シンプルな形状である往復ポンプ装置を提供すること。
【解決手段】 本発明は、クランク軸14が駆動源の出力軸に直結される往復ポンプ装置10において、当該往復ポンプ装置を基体58に固定するためのアダプタ40が、クランクケース16の開放端部を閉じるベアリングケース20と共にクランクケースに位置変更可能に共締めされるように、ベアリングケースをクランクケースに固定するボルト22a〜22dの位置が定められていることを特徴としている。この構成においては、アダプタの位置が変更可能であるため、装置の配置レイアウトの自由度が向上する。また、アダプタの取付けは、マニホールドをクランクケースに固定するためのボルトを利用するため、シンプルな形状とすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プランジャポンプやピストンポンプ等の往復ポンプ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プランジャポンプやピストンポンプ等の往復ポンプ装置には、駆動源たるエンジンやモータの出力軸にクランク軸が直結される型式のものがある。しかし、このような駆動源直結型往復ポンプ装置であっても、定置型として使用すること、すなわちクランク軸を駆動源の出力軸に直結せず、装置フレーム等の基体に固定し、駆動力は適当な伝動機構を介して受けるようにすることが望まれている。
【0003】
かかる要請に対して、例えば下記特許文献1に記載されているような往復ポンプ装置では、アダプタ(「レール」とも称される)をクランクケースに取り付け、そのアダプタを基体に固定することとしている。
【特許文献1】実開昭62−122167号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載の往復ポンプ装置では、アダプタをクランクケースに取り付けるためのボスをクランクケースの外表面に設け、そのボスにボルトでアダプタを固定することとしている。
【0005】
しかしながら、ボスをクランクケースに設けることとすると、クランクケースの形状が複雑となり、材料も余分にかかり、また製造の手間、コストも増加する。
【0006】
また、上記特許文献1に記載の往復ポンプ装置では、ボスはクランクケースの下部にのみ設けられているため、アダプタを上部に取り付けることができない。このため、往復ポンプ装置の配置レイアウトの自由度が制限される。勿論、ボスをクランクケースの上部にも設けることが考えられるが、その場合には、クランクケースの形状がより複雑となる等の問題が生じる。
【0007】
そこで、本発明の目的は、アダプタの取付位置の変更が可能であり、シンプルな形状である往復ポンプ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は、クランク軸(14)を支持する、少なくとも一方の端部が開放端部となっているクランクケース(16)と、クランクケース(16)の開放端部を閉鎖すべくクランクケース(16)に取外し可能にボルト(22a〜22d)により固定される閉鎖部材(20)と、クランクケース(16)の側面に取外し可能にボルト(28)により固定される往復ポンプ(12)のポンプケース(26)とを備える往復ポンプ装置(10)において、当該往復ポンプ装置(10)を基体(58)に固定するためのアダプタ(40)が閉鎖部材(20)と共にクランクケース(16)に位置変更可能に共締めされるように、閉鎖部材(20)をクランクケース(16)に固定するボルト(22a〜22d)の位置が定められていることを特徴としている。
【0009】
また、アダプタ(40)の上下位置が変更可能となっている場合には、それに対応して、ポンプケース(26)がクランクケース(16)に上下反転して固定できるように、ポンプケース(26)をクランクケース(16)に固定するボルト(28)の位置が定められていることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
上記構成においては、本来は駆動源直径型の往復ポンプ装置を定置型とする場合に用いられるアダプタの位置が変更可能であるため、装置の配置レイアウトの自由度が向上する。
【0011】
また、アダプタの取付けは、往復ポンプ装置に必須な部材である閉鎖部材をクランクケースに固定するためのボルトを利用するため、クランクケースにボスを設けたり、その他の特殊な形状とする必要がなく、シンプルな形状とすることができる。従って、往復ポンプ装置の製造の手間、コストを低減することができる
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明による往復ポンプ装置の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図中、同一又は相当部分には同一符号を付すこととする。また、本明細書及び添付の特許請求の範囲における「上」、「下」は、往復ポンプ装置を基体(図3,図4参照)に固定した状態を基準としている。
【0013】
図1は、本発明による往復ポンプ装置の一実施形態を示す斜視図であり、図2は図1とは反対の方向から見た場合の斜視図である。図示実施形態に係る往復ポンプ装置10は、3基のプランジャポンプ(往復ポンプ)12が平行に設けられている三連型のものである。各プランジャポンプ12を駆動させるための駆動力は、クランク軸14を介して伝えられる。図示の往復ポンプ装置10は、クランク軸14がエンジンやモータ等の駆動源の出力軸に直結される駆動源直結型である。
【0014】
クランク軸14はクランクケース16内にて回転可能に保持されている。クランクケース16は、その一端が閉じられ、他端が開放されている有底円筒形(ベル形)である。クランクケース16の閉鎖端部18側の内部には軸受が配置され、クランク軸14の一端を支持している。また、クランクケース16の開放端部には、軸受を備えるベアリングケース(閉鎖部材)20がボルト22a〜22dにより取外し可能に固定され、開放端部を閉じるようになっている。クランク軸14はベアリングケース20内の軸受により支持され、更にベアリングケース20を貫通して外部に突出している。本実施形態では、クランク軸14の突出端部は駆動源の出力軸に直結し易いよう、キー溝24が形成されている。
【0015】
各プランジャポンプ12は、その中心軸線(すなわち、シリンダの中心軸線)がクランク軸14の回転軸線に対して直交する関係となるように配置されている。また、3基のプランジャポンプ12は、その中心軸線が互いに平行となるように、且つ、クランク軸14の回転軸線に沿って一定の間隔となるように並設されている。これらのプランジャポンプ12のポンプケースとしても機能するマニホールド26が、クランクケース16の側面にボルト28により取外し可能に固定されている。
【0016】
マニホールド26をクランクケース16に固定するためのボルト28は、マニホールド26に形成された貫通孔30に通され、クランクケース16の側面に設けられたねじ穴32に螺合される。図3の(a)からも理解される通り、ねじ穴32は複数(本実施形態では8つ)あり、プランジャポンプ12の中心軸線及びクランク軸14の回転軸線を含む第1の平面P1を中心とした面対称に、上下に4つずつ配置されている。また、第1の平面P1に直交し中央のプランジャポンプ12の中心軸線を含む第2の平面P2を中心とした面対称に、ねじ穴32は左右に4つずつ形成されている。すなわち、ねじ穴32は次数2の回転対称に配置されている。このようにねじ穴32を配置することで、マニホールド26を上下反転させてクランクケース16に取り付けることが可能となる。
【0017】
更に、ベアリングケース20をクランクケース16の開放端部に取り付けるためのボルト22a〜22dは、ベアリングケース20に形成された貫通孔34a〜34dに通され、クランクケース16の開放端部に設けられたねじ穴36a〜36dに螺合される。ねじ穴36a〜36dは複数(本実施形態では6つ)あり、この場合も、前記の第1の平面P1を中心とした面対称に配置されている。また、ねじ穴36a〜36dは、第1の平面P1に直交しクランク軸14の回転軸線を含む第3の平面P3を中心とした面対称に配置されている。図示実施形態の場合、ねじ穴36a〜36dはクランク軸14の回転軸線から等距離にあり、且つ、その回転軸線を中心にして90度間隔で設けられている。
【0018】
また、図2に示すように、クランクケース16の閉鎖端部18には、2個のねじ穴38が設けられている。これらのねじ穴38は、第3の平面P3を中心とした面対称であり、且つ、クランク軸14の回転軸線を中心とした点対称となっている。これらのねじ穴38は、以下で述べるアダプタ40を取り付ける際に使用される。
【0019】
上述したような駆動源直結型の往復ポンプ装置10を定置型として使用する場合、クランクケース16がベル形であり、装置フレーム等の基体に直接設置することは困難であるため、アダプタ40が使用される。このアダプタ40は、金属等の剛性の高い材料からなる板材であり、下部部分42と、下部部分42の各端部から立ち上がる第1及び第2の側部部分44,46とから構成されている。第1の側部部分44と第2の側部部分46との間の間隔は、クランクケース16の閉鎖端部18の外面からベアリングケース20の外面までの距離と実質的に等しく、図3の(a)〜(c)に示すように、第1及び第2の側部部分44,46間に、クランクケース16及びベアリングケース20を配置することが可能となっている。第1の側部部分44の上部には2つの貫通孔48a,48bが形成されている。これらの貫通孔48a,48bは、ベアリングケース20における下側又は上側の2つの貫通孔34a,34b;34c,34d及びクランクケース16における下側又は上側の2つのねじ穴36a,36b;36c,36dと同じピッチで形成されている。また、第2の側部部分46の上部には、クランクケース16の閉鎖端部18に形成された2つのねじ穴38と同ピッチで、2つの貫通孔50が形成されている。
【0020】
このようなアダプタ40を図3の(a)〜(c)に示すような態様で往復ポンプ装置10に取り付ける場合、まず、ベアリングケース20を固定している下側の2つのボルト22a,22bを取り外す。そして、アダプタ40の第1及び第2の側部部分44,46間でクランクケース16及びベアリングケース20を挟み、貫通孔48a,48bと貫通孔34a,34b及びねじ穴36a,36b、貫通孔50とねじ穴38を整列させる。最後に、ボルト22a,22b,52を第1及び第2の側部部分44,46の貫通孔48a,48b,50に通し、クランクケース16のねじ穴36a,36b,38に螺合する。ボルト22a,22b,52を螺合させることで、アダプタ40とベアリングケース20とを同時にクランクケース16に固定することができる。また、ベアリングケース20を固定するためのねじ穴36a,36bをアダプタ40の取付けに利用しており、上記特許文献1に記載の往復ポンプ装置のようなボスを設けたり、クランクケース16やベアリングケース20をその他の特殊形状にしたりする必要はない。従って、クランクケース16やベアリングケース20を製造するための成形型もシンプルなもので足り、製造の手間、コストを低減することができる。しかも、余分なボス等がないので、往復ポンプ装置10の軽量化にも寄与する。
【0021】
図3の(a)〜(c)に示すように、アダプタ40を装着した状態においては、アダプタ40の下部部分42と、クランク軸14の回転軸線及びプランジャポンプ12の中心軸線とは実質的に平行な状態となる。そして、下部部分42に形成された貫通孔54を利用してボルト・ナット56により装置フレーム等の基体58にアダプタ40を固定することで、往復ポンプ装置10を基体58に固定することができる。この状態では、ベルト伝動機構等の適当な伝動機構を介して、基体58等に固定された駆動源からの駆動力がクランク軸に伝えられることとなる。
【0022】
なお、アダプタ40の第2の側部部分46の上縁中央部には凹部60が形成されており、この凹部60にクランクケース16の閉鎖端部18中央の突出部62が嵌合するようになっている。このため、アダプタ40の第1の側部部分44がボルト留めされた状態では、第2の側部部分46は突出部62により支持される。従って、第2の側部部分46のボルト留めは必須ではないが、アダプタ40のより確実な固定のためにボルト52を使用することが好ましい。
【0023】
図4の(a)〜(c)はアダプタ40の別の取付態様を示した図である。これは、図3の(a)〜(c)において上側となっているボルト22c,22dを外し、そこにアダプタ40の第1の側部部分44を取り付けたものである。この場合、往復ポンプ装置10は、基体58に固定した際、図3の取付状態とは上下反対となる。本実施形態では、クランク軸14は一端のみが突出しているため、往復ポンプ装置10を上下反転させて基体58に固定できることとすれば、様々な駆動源の位置に対応し易くなり、往復ポンプ装置10の配置レイアウトの自由度も増すことになる。
【0024】
なお、図4の(a)〜(c)に示す状態では、マニホールド26の吐出口64が下側となる。この状態では、吐出口64側のバルブを取り出すための蓋66が下向きとなり基体58との間が狭くなっているが、本実施形態では、前述したようにマニホールド26も上下反転させることが可能となっているため、蓋66を上向きとすることもと可能である。同様に、図3の(a)〜(c)に示す状態において、蓋66が下向きとなるよう、マニホールド26を上下反転させることも可能である。すなわち、本実施形態に係る往復ポンプ装置10は、4通りの態様で基体58に固定することができ、よってレイアウトの自由度は更に向上することとなる。
【0025】
以上、本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されないことは言うまでもない。
【0026】
例えば、往復ポンプはピストンポンプであってもよく、また、多連型でなくともよい。また、ねじ穴の数も上記実施形態のものに限られない。更に、図3の(a)〜(b)において上下となるボルト22a,22dを利用してアダプタ40を固定し、マニホールド26を上向きとした縦置きとすることも考えられる。更にまた、アダプタの形状も種々変更可能である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明による往復ポンプ装置の一実施形態を示す斜視図である。
【図2】図1とは反対の方向から見た、本発明による往復ポンプ装置を示す斜視図である。
【図3】図1に示す往復ポンプ装置をアダプタを介して基体上に固定した状態を示す図であり、(a)は正面図、(b)は左側面図、(c)は右側面図である。
【図4】図1に示す往復ポンプ装置をアダプタを介して基体上に固定した、図3とは別の状態を示す図であり、(a)は正面図、(b)は左側面図、(c)は右側面図である。
【符号の説明】
【0028】
10…往復ポンプ装置、12…プランジャポンプ(往復ポンプ)、14…クランク軸、16…クランクケース、20…ベアリングケース(閉鎖部材)、22a〜22d,28,52…ボルト、26…マニホールド(ポンプケース)、40…アダプタ、58…基体。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クランク軸(14)を支持する、少なくとも一方の端部が開放端部となっているクランクケース(16)と、
前記クランクケース(16)の前記開放端部を閉鎖すべく前記クランクケース(16)に取外し可能にボルト(22a〜22d)により固定される閉鎖部材(20)と、
前記クランクケース(16)の側面に取外し可能にボルト(28)により固定される往復ポンプ(12)のポンプケース(26)と
を備える往復ポンプ装置(10)において、
当該往復ポンプ装置(10)を基体(58)に固定するためのアダプタ(40)が前記閉鎖部材(20)と共に前記クランクケース(16)に位置変更可能に共締めされるように、前記閉鎖部材(20)を前記クランクケース(16)に固定する前記ボルト(22a〜22d)の位置が定められていることを特徴とする往復ポンプ装置。
【請求項2】
前記アダプタ(40)が上下位置変更可能となっており、
前記ポンプケース(26)が前記クランクケース(16)に上下反転して固定できるように、前記ポンプケース(26)を前記クランクケース(16)に固定する前記ボルト(28)の位置が定められていることを特徴とする請求項1に記載の往復ポンプ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−278197(P2007−278197A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−106492(P2006−106492)
【出願日】平成18年4月7日(2006.4.7)
【出願人】(000141174)株式会社丸山製作所 (134)
【Fターム(参考)】