説明

往復動ポンプの駆動方法

【課題】コンパクトな構成のポンプを、かつ低電力で動作させても、高吐出圧力、大容量で無脈流が実現するポンプの駆動方法。
【解決手段】(a)プランジャの上下運動の1サイクルの運動のうち、移動子がプランジャから離間している状態から当該プランジャと当接するまでの第一の期間のあいだ前記移動子を上方に移動させるステップと、(b)前記第一の期間の終了後、プランジャが上死点に達するまでの第二の期間のあいだ、前記バネの付勢力に抗して前記移動子をプランジャに打撃的に接触後、上方に移動させ、前記ポンプ室およびシリンダの液体を排出するステップと、(c)前記第二の期間の終了後、前記プランジャが上死点から前記移動子の動きに少し遅れて下降し、下死点に到達して静止状態のとき、移動子が下死点まで下降したのち再び上昇して、プランジャと当接するまでの第三の期間のあいだ、前記ポンプ室に液体を流入するステップとを含んでいる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は往復動ポンプ(以下、ポンプという)の駆動方法に関する。さらに詳しくは、シリンダ内に摺動自在に設けられ、かつバネにより下死点側に付勢されたプランジャと、該プランジャを液体のポンプとしては高速な10〜30回/秒の上下運動させるために、プランジャと間欠的に当接する移動子を備えたポンプにおいて、前記移動子の上下運動をプランジャに伝達して、プランジャが10〜30回/秒の上下運動ができるようにバネの強さを設定し、かつ前記吸入弁および吐出弁の開閉動作を、前記プランジャの吸入工程および排出工程に追随させて、前記ポンプ室の外に吐出される液体の高速微振動が吐出弁の後段に設けられた弾力のある樹脂チューブなどにより平滑化され、実質的に無脈流になるようにするポンプの駆動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
クランクにより滑り子が作動させられる場合に、またはその逆の場合において、滑り子と摺動部間に起る側圧を減少させ、それにより効率の改善されたクランク機構を提供することを目的としたポンプが、たとえば特許文献1に開示されている。
【0003】
特許文献1に開示されたクランク機構は、連結杆の一方を揺動自在に軸支させ、かつ摺動部に摺動自在に設けられている滑り子と、前記摺動部の、前記連結杆方向の端部に設けられた、間隔を隔てて平行に設けられた2つの通路からなる平行通路と、前記連結杆の他方に軸支され、かつ該平行通路内に回転自在に位置させられている車輪と、前記連結杆の他方に揺動自在に設けられた連接杆と、該連接杆に回動自在に設けられた、クランク軸のクランクピンからなるものである。
【0004】
また、腐食性ガスや反応性の高いガスを漏洩なく輸送または循環させるのに適した、ガス流量の均一性が高いガラス製電磁駆動ポンプを提供することを目的としたポンプが、たとえば特許文献2に開示されている。
【0005】
特許文献2に開示されたポンプは、一端に排気口または吸気口と、逆止弁機構を有するガラス製円筒、前記円筒内に設けられており、中央部分に通気孔を有し、前記ガラス製円筒内を摺動することができるガラス製プランジャ、前記ガラス製プランジャの内壁に密接一体化して設けられており、排気口側または吸気口側には開口部を、反対側には密閉部をそれぞれ形成し、または排気口側と吸気口側の両方に密閉部を形成し、該密閉部には通気孔を形成したガラス製連通部材、前記ガラス製連通部材の端部に接続しており、内部に棒状磁性体を密閉封入してなる駆動用ガラス被覆磁性部材、前記駆動用ガラス被覆磁性部材の外周を一定の間隔をおいて、取り囲むとともに、前記ガラス製円筒と接続したガラス製連結管、前記ガラス製連結管内の駆動用ガラス被覆磁性部材を駆動させるため、前記ガラス製連結管をとりまくように配置された1個または複数の電磁駆動用コイル、よりなるものである。
【0006】
さらに、ステッピングモータを駆動源とするプランジャポンプのカムとして偏心カムを用いることが特許文献3に開示されている。
【0007】
従来のダイヤフラムポンプおよびプランジャポンプの場合、吐出される液体の流れは、いずれも完全な無脈流ではなく、たとえば、特許文献4に開示されたポンプの場合、運転条件の変化によって変わる脈動を自動的に補償して、常時、無脈動で運転を行うために、ダイアラムポンプの吐出期間の初期における吐出量の減少を、その期間の直前にプランジャを吐出方向に駆動してポンプ室の容積を減少することによって防止しており、このポンプ室容積の減少を、減少する吐出量より大きくし、その差に相当する作動流体を排出機構より排出している。また、吐出側の管路に脈動センサを設け、このセンサの信号に基づき制御部が脈動を検出している。そして制御部は、この脈動を消すように前記排出機構の排出量を調整している。
【0008】
また、特許文献5に開示されたポンプの場合、ポンプを構成するダイアフラムポンプの吐出期間の初期において、吐出量が減少する。吐出期間の前であり吸込期間との間の補償期間にダイアフラムポンプのプランジャを駆動制御して、吐出量の減少量より、やや大きくポンプ室の容積を減少させる。補償期間において、ポンプ室容積を増加させる副室を設け、この副室の容積の増加量によりポンプ室の容積の減少量を修正して、吐出量の減少量に等しい補償量を得る。副室の容積の増加量を調整可能とすることで、運転条件の変化に対応している。
【0009】
【特許文献1】特開平8−303254号公報
【特許文献2】特開2002−106463号公報
【特許文献3】特開平2−64273号公報
【特許文献4】特開2004−232616号公報
【特許文献5】特開2004−108188号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献3に開示されたカム機構を用いた場合、モータの回転数を上昇させていくと、プランジャとクランクの駆動部とが常時接触している場合、プランジャを下死点側に付勢しているバネの強さが強ければ、プランジャ側壁の磨耗が大きくなり、ポンプ寿命を縮める事になる。また逆止弁の応答性も高速に対応出来ないため、比較的低回転で吸入側の弁と吐出側の弁とが同時に開放してしまい、吐出量が低下するという問題がある。
【0011】
さらに、従来のダイヤフラムポンプおよびプランジャポンプには、複数台のポンプを用いたり、副室を設けて脈動を擬似的に無脈流にする(整流する)ものがあるものの、実質的に無脈流が得られるポンプはいまだ提案されていない。また、吸収液を使う形式のガス濃度測定装置では、吸収液の送液に脈流が存在すると測定値にも波動が出やすくなり、それを防ぐために測定値指示の応答性を遅くすることが行なわれている。応答性の優れた測定装置を実現するには実質的に無脈流なポンプが望まれている。
【0012】
かかる従来の問題は、プランジャとクランクの駆動部とが常時接触していること、プランジャとバネの復帰力が最適化されていない、吸入弁と吐出弁の応答性およびモータの回転数が最適化されていないことによる。本発明は、コンパクトな構成のポンプを用いて低電力で動作させても、高吐出圧力、大容量が得られるばかりでなく、実質的に無脈流が得られるようにポンプを駆動する方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の第一の態様は、
ポンプ室と、
液体をポンプ室に吸入する際に開放される吸入弁を介して液体をポンプ室に吸入する上下方向に延びる吸入路と、
該ポンプ室から液体を吐出する際に開放される吐出弁を介して液体をポンプ室の外に吐出するための上下方向に延びる吐出路と、
該ポンプ室と連通されたシリンダと、
該シリンダ内に摺動自在に設けられ、かつバネにより下死点側に付勢されたプランジャと、
前記プランジャと間欠的に当接する移動子と、
を備えたポンプを駆動する方法であって、
(a)停止中のポンプに電源を投入して、前記電動モータを起動し、電動モータの回転軸の回転運動を前記移動子の上下運動に変換し、当該移動子の上下運動をプランジャに伝達し、当該プランジャの上下運動の1サイクルの運動のうち、前記移動子がプランジャから離間している状態から当該プランジャと当接するまでの第一の期間のあいだ前記移動子を上方に移動させるステップと、
(b)当該上下運動の1サイクルの運動のうち、前記第一の期間の終了後、プランジャが上死点に達するまでの第二の期間のあいだ、前記バネの付勢力に抗して前記移動子をプランジャに打撃的に接触後、上方に移動させ、前記吸入弁を開放し、かつ吐出弁を閉鎖して、前記ポンプ室およびシリンダの液体を排出するステップと、
(c)当該上下運動の1サイクル運動のうち、前記第二の期間の終了後、前記プランジャが上死点から前記移動子の動きに少し遅れて下降し、下死点に到達して静止状態のとき、移動子が下死点まで下降したのち再び上昇して、プランジャと当接するまでの第三の期間のあいだ、前記吸入弁を開放し、かつ吐出弁を閉鎖して、前記ポンプ室に液体を流入するステップと、
(d)前記第三の期間の終了後、当該ポンプの電源を遮断するまで、前記(b)のステップと(c)のステップとを繰り返し実行するステップ
とを含んでなる
ことを特徴としている。
【0014】
本発明の第二の態様は、
ポンプ室と、
液体をポンプ室に吸入する際に開放される吸入弁を介して液体をポンプ室に吸入する上下方向に延びる吸入路と、
該ポンプ室から液体を吐出する際に開放される吐出弁を介して液体をポンプ室の外に吐出するための上下方向に延びる吐出路と、
該ポンプ室と連通されたシリンダと、
該シリンダ内に摺動自在に設けられ、かつバネにより下死点側に付勢されたプランジャと、
前記プランジャと間欠的に当接する移動子と、
電動モータの回転軸の回転運動を前記移動子の上下運動に変換する運動変換手段と
を備えたポンプを駆動する方法であって、
(a)停止中のポンプに電源を投入して、前記電動モータを起動し、電動モータの回転軸の回転運動を前記移動子の上下運動に変換し、当該移動子の上下運動をプランジャに伝達し、当該プランジャの上下運動の1サイクルの運動のうち、前記移動子がプランジャから離間している状態から当該プランジャと当接するまでの第一の期間のあいだ前記移動子を上方に移動させるステップと、
(b)前記第一の期間の終了後、プランジャが上死点に達するまでの第二の期間のあいだ、前記バネの付勢力に抗して前記移動子をプランジャに打撃的に接触後、上方に移動させ、前記吸入弁を閉鎖し、かつ吐出弁を開放して、前記ポンプ室内の液体を吐出弁から排出させるステップと、
(c)前記第二の期間の終了後、前記プランジャが上死点から前記移動子の動きに少し遅れて下降し、下死点に到達しないうちに、移動子が下死点まで下降したのち再び上昇して、プランジャと当接するまでの第三の期間のあいだ、前記吸入弁を開放し、かつ吐出弁を閉鎖して、前記ポンプ室に液体を流入するステップと、
(d)前記第三の期間の終了後、当該ポンプの電源を遮断するまで、前記(b)のステップと(c)のステップとを繰り返し実行するステップと
を含んでなる
ことを特徴としている。
【0015】
また、前記吸入弁および吐出弁が、
互いに連通され液体が流通する下方側流路および上方側流路と、
該下方側流路と上方側流路との接続部に設けられた弁座と、
該上方側流路内に設けられる弁体と、
該弁体の移動距離を制限するための移動制限手段と
を備えた逆止弁であって、
前記弁体が、前記弁座に支持可能に設けられた本体と、該本体の下方側に設けられ、当該逆止弁の開閉応答性を調整するための調整手段とを備えてなる
ことが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明のポンプの駆動方法によれば、(a)停止中のポンプに電源を投入して、前記電動モータを起動し、電動モータの回転軸の回転運動を前記移動子の上下運動に変換し、当該移動子の上下運動をプランジャに伝達し、当該プランジャの上下運動の1サイクルの運動のうち、前記移動子がプランジャから離間している状態から当該プランジャと当接するまでの第一の期間のあいだ前記移動子を上方に移動させるステップと、(b)当該上下運動の1サイクルの運動のうち、前記第一の期間の終了後、プランジャが上死点に達するまでの第二の期間のあいだ、前記バネの付勢力に抗して前記移動子をプランジャに打撃的に接触後、上方に移動させ、前記吸入弁を開放し、かつ吐出弁を閉鎖して、前記ポンプ室およびシリンダの液体を排出するステップと、(c)当該上下運動の1サイクル運動のうち、前記第二の期間の終了後、前記プランジャが上死点から前記移動子の動きに少し遅れて下降し、下死点に到達して静止状態のとき、移動子が下死点まで下降したのち再び上昇して、プランジャと当接するまでの第三の期間のあいだ、前記吸入弁を開放し、かつ吐出弁を閉鎖して、前記ポンプ室に液体を流入するステップと、(d)前記第三の期間の終了後、当該ポンプの電源を遮断するまで、前記(b)のステップと(c)のステップとを繰り返し実行するステップを含んでいるので、かつ低電力で動作させても、高吐出圧力、大容量が得られるばかりでなく実質的に無脈流が得られる。また、請求項3にかかわるポンプの駆動方法によれば、弁体が、前記弁座に支持可能に設けられた本体と、該本体の下方側に設けられ、開閉応答性を調整するための調整手段とを備えた逆止弁を備えているので、吸入弁と吐出弁の応答性が著しく改善される。
【0017】
このため、たとえば焼却施設では排ガス中の塩化水素を除去する目的で塩化水素濃度に対応した薬剤投入を行なっているが、測定装置の応答性がわるいため、迅速な制御ができず、薬剤を過剰に投入し、廃棄薬剤が二次的な公害を引き起こす原因になっている。そこで本発明のポンプの駆動方法を塩化水素の測定装置に適用すれば、応答性の改善がはかれ薬剤の投入量を最適化でき、二次公害の拡大を防止できる。
【0018】
本発明のポンプの駆動方法は、このほか、化学・食品工業における各種原料の連続混合注入、塗装ラインにおける塗料移送システム、印刷工程におけるインクの混合移送、薬品原料の連続定量注入、各種添加剤の均等混合に適用され得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
添付図面を参照しながら本発明の実施の形態にかかわるポンプの駆動方法について以下に詳細に説明する。
【0020】
図1は本発明のポンプを示す説明図、図2は図1のポンプに適用されるバッファ槽の一例を示す説明図、図3は本発明のポンプの駆動方法を模式的に説明したグラフ、図4は図1のポンプのモータ回転数と吐出量との関係を示すグラフ、図5の(a)は図1のポンプに適用される逆止弁の一例を示す断面説明図、図5の(b)は弁体の構造を示す断面説明図、図6は図5の逆止弁の固定子を示す断面説明図である。
【0021】
実施の形態1
図1を参照すると、本実施の形態にかかわるポンプ1は、ポンプ室17と、液体をポンプ室17に吸入する際に開放される吸入弁V1を介して液体をポンプ室17に吸入する上下方向に延びる吸入路34と、ポンプ室17から液体を吐出する際に開放される吐出弁V2を介して液体をポンプ室17の外に吐出するための上下方向に延びる吐出路43と、ポンプ室17と連通されたシリンダ11と、シリンダ11内に摺動自在に設けられ、かつバネ16により下死点側に付勢されたプランジャ12と、プランジャ12と当接して当該プランジャ12を上方に打撃する移動子Pから構成されており、移動子Pが電動モータ22の回転軸21の回転運動を上下運動に変換する運動変換手段を介して上下運動し、下降中のプランジャ12と移動子Pとが離間されている。本発明のポンプ1は、高速運転するため、ポンプ室17の外に高速振動の液体の流れを生成する。この高速振動の液体の流れは、ポンプ1に接続される配管系における樹脂製のチューブにより無脈流になる(平滑化される)。
【0022】
なお、吐出弁V2の出口と吐出路43との間にバッファ槽50を設けてもよい。このようにしても(図2参照)、ポンプ1により吐き出される液体の脈動を平滑にすることができる。
【0023】
運動変換手段としては、たとえば図1に示されたものが採用される。図1に示された運動変換手段は、モータ22の回転軸21に連結されたクランクアーム20aと、クランクアーム20aにクランクピン20bを介して一端が揺動可能に取りつけられた連接棒20と、連接棒20cの他端に揺動可能に取り付けられ、円筒状のスリーブS内を摺動するクランクの移動子Pとから構成されている。しかし、本発明の運動変換手段はかかる構成に限定されるものではない。たとえば、モータ22の回転軸21に偏心して連結されたカムのほか当業者に自明の修正、変更または変形は本発明に含まれる。
【0024】
本実施の形態にかかわるポンプの駆動方法の重要な点は、プランジャ12が下死点DC1から上死点DC2に達したのち、再び下死点DC1に戻るまでの工程中に、ポンプ室17の外に吐出される液体の流れが実質的に無脈流になるようにプランジャ12を液体のポンプとしては高速な10〜30回/秒の上下運動させ、上下運動の1サイクルの運動のうち最初の半サイクルに相当するプランジャ12の上死点DC2から下死点DC1に達するまでの吸入工程で、吸入弁V1を開放し、吐出弁V2を閉鎖してポンプ室17およびシリンダ11内に液体を充填し、当該上下運動の1サイクルの運動のうち残りの半サイクルに相当するプランジャ12の下死点DC1から上死点DC2に達するまでの排出工程で、吸入弁V1を閉鎖し、吐出弁V2を開放してポンプ室17およびシリンダ11内に充填された液体を排出ができるようにバネ16の強さを設定し、かつ吸入弁V1および吐出弁V2の開閉動作を、プランジャ12の吸入工程および排出工程に追随させる事ができるように吸入弁V1および吐出弁V2の弁体の重量及びサイズを設定する(すなわち、バネ16の強さ、そして吸入弁と吐出弁の重量、サイズを最適化して高速動作に応答するようにし、ポンプ室17の外に吐出される液体の流れが実質的に無脈流になるようにする)ことである、これを図示された例で説明すると、プランジャ12とクランクの移動子Pとが常時接触することがないようにプランジャ12とクランクの移動子Pの位置関係を調整することである。
【0025】
つぎに、本発明のポンプ1の駆動方法を模式的に説明する(図4参照)。なお、図中参照符号W2はプランジャ12の時間と工程との関係を示す模式図であり、W1はクランクの移動子Pの時間と工程との関係を示す模式図である。
【0026】
停止中のポンプ1に電源を投入して、モータ22を起動し、クランクの移動子Pがプランジャ12から離間している状態からプランジャ12と当接するまでの第一の期間T1のあいだクランクの移動子Pを上方に移動させる(ステップ(a))。
【0027】
第一の期間T1の終了後、プランジャ12が上死点DC2に達するまでの第二の期間T2のあいだ、バネ16の付勢力に抗してクランクの移動子Pをプランジャ12に打撃的に接触後、上方に移動させ、吸入弁V1を閉鎖し、かつ吐出弁V2を開放して、ポンプ室17内の液体を吐出弁V2から排出させる(ステップ(b))。
【0028】
第二の期間T2の終了後、プランジャ12が上死点DC2から前記移動子の動きに少し遅れて下降し(図3の破線W2で示す)、下死点に到達して静止状態のとき、移動子が下死点まで下降したのち再び上昇して、プランジャ12と当接するまでの第三の期間T3のあいだ、吸入弁を開放し、かつ吐出弁を閉鎖して、前記ポンプ室に液体を流入する(ステップ(c))。
【0029】
このように、DC1の位置で静止期間を設けることにより、プランジャ12の動作の遅れに余裕をもたせることができ、シリンダ11に加えられる余分な力が解放される。
【0030】
第三の期間T3の終了後、ポンプ1の電源を遮断するまで、ステップ(b)とステップ(c)とを繰り返し実行する(ステップ(d))。
【0031】
本実施の形態の駆動方法によって得られる、上下運動は液体のポンプとしては高速な10〜30回/秒であり(これは、人間の眼でみたとき、微振動状態が持続しているように見える。その上、接続される柔軟なチューブなどにより脈流が吸収され実質的に無脈流となる。
【0032】
なお、第二の期間T2に対する第三の期間T3の比率(T3/T2)は、1<(T3/T2)<1.2の範囲にあることがポンプの吐出力を最大限まで発揮させるうえで好ましいが、(T3/T2)が1のときであって、プランジャ12によりシリンダ11にかかる応力が解放されると利点がある。
【0033】
また、本実施の形態のポンプ1に、後述する実施の形態2に示される逆止弁を適用すると、吸入弁と吐出弁の応答性を最適化することができる。
【0034】
本実施の形態のポンプ1は、つぎのとおり駆動することもできる。
【0035】
停止中のポンプ1に電源を投入して、モータ22を起動し、クランクの移動子Pがプランジャ12から離間している状態からプランジャ12と当接するまでの第一の期間T1のあいだクランクの移動子Pを上方に移動させる(ステップ(a1))。
【0036】
第一の期間T1の終了後、プランジャ12が上死点DC2に達するまでの第二の期間T2のあいだ、バネ16の付勢力に抗してクランクの移動子Pをプランジャに打撃的に接触後、上方に移動させ、吸入弁V1を閉鎖し、かつ吐出弁V2を開放して、ポンプ室17内の気体を圧縮して吐出弁V2から排出させる(ステップ(b1))。
【0037】
第二の期間T2の終了後、プランジャ12が上死点DC2から前記移動子の動きに少し遅れて下降し、下死点DC1に到達しないうちに、移動子が下死点DC1まで下降したのち再び上昇して、プランジャ12と当接するまでの第三の期間T3のあいだ、吸入弁V1を開放し、かつ吐出弁V2を閉鎖して、ポンプ室17に液体を流入する(ステップ(c1))。
【0038】
第三の期間T3の終了後、ポンプ1の電源を遮断するまで、ステップ(b1)とステップ(c1)とを繰り返し実行する(ステップ(d1))。このとき期間T1は、期間T3の間にクランクに対して若干遅れて下降するプランジャに、力を開放する余裕時間を与えている。
【0039】
なお、第二の期間T2に対する第三の期間T3の比率は、1.2に近い値となる。
【0040】
また、本実施の形態のポンプ1に、後述する実施の形態2に示される逆止弁を適用すると、吸入弁と吐出弁の応答性を最適化することができる。
【0041】
本実施の形態のポンプの駆動方法によれば、ポンプ室17の外に吐出される液体の流れが柔軟なチューブなどにより実質的に無脈流となる。
【0042】
実施の形態2
図5(a)、5(b)および図2を参照すると、本発明のポンプに好適に用いられる逆止弁V1は、水平面に対して垂直方向に延びる、互いに連通され液体が流通する下方側流路34および上方側流路33と、下方側流路34と上方側流路33との接続部に設けられた弁座35と、弁座35と上方側流路33内に設けられた弁体36と、弁体36の移動距離を制限するための移動制限手段37とから構成されている。
【0043】
弁体36は、弁座35に支持可能に設けられたほぼ球状の本体36aと、本体36aの下方側に設けられた球体36bと、本体36aと球体36bとの間に介装される連結部として機能する細長い棒状体36cとから構成される。そして、球体36bと棒状体36cが、逆止弁V1の開閉応答性を調整するための調整手段として機能する。
【0044】
この球体36bおよび棒状体36cは、本実施の形態においては、本体36aに浮力を与えるとともに液体の流れを受け止めて、ポンプの高速運動(10〜30回/秒)かつ確実なバルブの開閉動作が実現される。球体36bは、本体36aの下方側に設けられたたとえばガラス製の球体が採用されるが、ガラス製の球体に限定されることはない。ガラス製の球体のほか、ガラス製の逆茸(mushroom)状体、ガラス製のカウル(cowl)状体など受圧に適したものとして当業者に自明のものはすべて含まれる。さらに、また、本体36aと球体36bと棒状体36cは、ガラスの中実体に限られることはなく、液体の比重によっては、1種または2種以上の金属の錘を埋め込むことが好ましい。さらに液体の比重によっては中空体であってもよい。
【0045】
また、図示されているように、前記棒状体36cは、本体36aを弁座35の中心部に位置づけ、かつ暴れを防ぎ、スムーズな開閉高速動作が可能になる。棒状体36cの形状も円柱状に限定されない。角柱状、円錐状、角錐状、円錐を組み合わせた形状、角錐同士を組み合わせた形状など、当業者に自明な修正、変更、変形はすべて含まれる。
【0046】
本体36aが弁座35と当接している状態では、プランジャの12の大きさ等にもよるが、たとえばプランジャ12の直径が約12.5mm、逆止弁の本体36aの自由端の直径が約12mmの場合、本体36aの自由端と固定子37aの自由端とは、約2mm離間されることが好ましいが、かかる数値に限定されるものではない。
【0047】
本実施の形態の場合、弁座35は略円錐状を呈している。しかし、弁座35は逆円錐状のものに限られることはなく、たとえば、円環状のものであってもよい。
【0048】
本実施の形態の場合、本体36aは略半球形状を呈しており、当該本体36aの自由端は略円形状の平坦面である。そして、球体36bおよび棒状体36cと、下方側流路34との間には間隙CL2(プランジャの12の大きさ等にもよるが、たとえばプランジャ12の直径が約12.5mm、逆止弁の本体36aの自由端の直径が約12mmの場合、0.5〜2mm程度である)が設けられているので、液体の流路が確保されている。しかし、本体36aの形状は半球形状に限られることはなく、たとえば回転楕円体の短軸を含む面で截断した形状であってもよい。
【0049】
また、移動制限手段37は、上方側流路33の内面に支持された略半球形状の固定子37aである。しかし、固定子37aの形状は半球形状に限られることはなく、たとえば回転楕円体の短軸を含む面で截断した形状であってもよい。固定子37aの自由端は略円形状の平坦面である。より詳しくは、固定子37aは、上方側流路33に、上方側流路33を部分的に閉塞するI字状の支持部37bを介して固定される(図5参照)。上方側流路33と固定子37aとの間には間隙CL1(プランジャの12の大きさ等にもよるが、たとえばプランジャ12の直径が約12.5mm、逆止弁の本体36aの自由端の直径が約12mmの場合、0.5〜2mm程度である)が設けられており、これによって液体の流路が確保されている。
【0050】
かかる構成により、本実施の形態の逆止弁V1は、開閉応答性に優れ、叙上の本発明のポンプ1に適用することにより、ポンプの揚程を増大することができる。
【実施例】
【0051】
実施例にもとづいて本発明をさらに詳細に説明する。しかしながら、本発明は実施例に限定されることはない。
【0052】
まず、100cc(直径35.5mm)のプランジャを用いて、実験を行なった。
(1)プランジャの一回あたりの移動量が3mmのとき、1800回毎分の吐出量は、9000ccであった。
(2)プランジャの一回あたりの移動量が1mmのとき、1800回毎分の吐出量は、5400ccであった。
(3)プランジャの一回あたりの移動量が0.5mmのとき、1800回毎分の吐出量は、1800ccであった。
【0053】
つぎに、5cc(直径12mm)のプランジャを用いて、実験を行なった。
(4)プランジャの一回あたりの移動量が3mmのとき、1800回毎分の吐出量は、1080ccであった。
(5)プランジャの一回あたりの移動量が1mmのとき、1800回毎分の吐出量は、720ccであった。
(6)プランジャの一回あたりの移動量が0.5mmのとき、1800回毎分の吐出量は、360ccであった。
【0054】
つぎに、バネ16として、硬いバネ(ばね定数が300kgw/m)、従来用いられている硬さのバネ(ばね定数が140kgw/m)および軟らかいバネ(ばね定数が100kgw/m)の3種類のバネを用いて、モータ回転数(rpm)に対するポンプの性能(吐出量)を測定した。その結果を図5に示す。図中参照符号Aは、ばね定数が100kgw/mのバネを用いたポンプの性能を示すグラフを示し、参照符号Bは、ばね定数が140kgw/mのバネを用いたポンプの性能を示すグラフを示し、参照符号Cは、ばね定数が300kgw/mのバネを用いたポンプの性能を示すグラフを示している。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】(a)は本発明の逆止弁の一例を示す断面説明図、(b)は弁体の構造を示す断面説明図である。
【図2】図1のバルブの固定子を示す断面説明図である。
【図3】本発明のポンプを示す説明図である。
【図4】本実施の形態のポンプの運動を模式的に示したグラフである。
【図5】(a)は図1のポンプに適用される逆止弁の一例を示す断面説明図であり、(b)は弁体の構造を示す断面説明図である。
【図6】図5のバルブの固定子を示す断面説明図である。
【符号の説明】
【0056】
1 ポンプ
11 シリンダ
12 プランジャ
13 枝管
16 圧縮コイルバネ
17 ポンプ室
20 クランク手段
20a クランクアーム
20b クランクピン
20c 連接棒
20d ピン
21 回転軸
22 電動モータ
33 管路
34 吸入路
35 鍔
36a 本体
36b 球体
36c 棒状体
37 移動制限手段
37a 固定子
37b 支持部
43 吐出路
V1 吸入弁(逆止弁)
V2 吐出弁(逆止弁)
P クランクの移動子
S スリーブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポンプ室と、
液体をポンプ室に吸入する際に開放される吸入弁を介して液体をポンプ室に吸入する上下方向に延びる吸入路と、
該ポンプ室から液体を吐出する際に開放される吐出弁を介して液体をポンプ室の外に吐出するための上下方向に延びる吐出路と、
該ポンプ室と連通されたシリンダと、
該シリンダ内に摺動自在に設けられ、かつバネにより下死点側に付勢されたプランジャと、
前記プランジャと間欠的に当接する移動子と、
を備えたポンプを駆動する方法であって、
(a)停止中のポンプに電源を投入して、前記電動モータを起動し、電動モータの回転軸の回転運動を前記移動子の上下運動に変換し、当該移動子の上下運動をプランジャに伝達し、当該プランジャの上下運動の1サイクルの運動のうち、前記移動子がプランジャから離間している状態から当該プランジャと当接するまでの第一の期間のあいだ前記移動子を上方に移動させるステップと、
(b)当該上下運動の1サイクルの運動のうち、前記第一の期間の終了後、プランジャが上死点に達するまでの第二の期間のあいだ、前記バネの付勢力に抗して前記移動子をプランジャに打撃的に接触後、上方に移動させ、前記吸入弁を開放し、かつ吐出弁を閉鎖して、前記ポンプ室およびシリンダの液体を排出するステップと、
(c)当該上下運動の1サイクル運動のうち、前記第二の期間の終了後、前記プランジャが上死点から前記移動子の動きに少し遅れて下降し、下死点に到達して静止状態のとき、移動子が下死点まで下降したのち再び上昇して、プランジャと当接するまでの第三の期間のあいだ、前記吸入弁を開放し、かつ吐出弁を閉鎖して、前記ポンプ室に液体を流入するステップと、
(d)前記第三の期間の終了後、当該ポンプの電源を遮断するまで、前記(b)のステップと(c)のステップとを繰り返し実行するステップと
を含んでなる
ことを特徴とするポンプの駆動方法。
【請求項2】
ポンプ室と、
液体をポンプ室に吸入する際に開放される吸入弁を介して液体をポンプ室に吸入する上下方向に延びる吸入路と、
該ポンプ室から液体を吐出する際に開放される吐出弁を介して液体をポンプ室の外に吐出するための上下方向に延びる吐出路と、
該ポンプ室と連通されたシリンダと、
該シリンダ内に摺動自在に設けられ、かつバネにより下死点側に付勢されたプランジャと、
前記プランジャと間欠的に当接する移動子と、
電動モータの回転軸の回転運動を前記移動子の上下運動に変換する運動変換手段と
を備えたポンプを駆動する方法であって、
(a)停止中のポンプに電源を投入して、前記電動モータを起動し、電動モータの回転軸の回転運動を前記移動子の上下運動に変換し、当該移動子の上下運動をプランジャに伝達し、当該プランジャの上下運動の1サイクルの運動のうち、前記移動子がプランジャから離間している状態から当該プランジャと当接するまでの第一の期間のあいだ前記移動子を上方に移動させるステップと、
(b)前記第一の期間の終了後、プランジャが上死点に達するまでの第二の期間のあいだ、前記バネの付勢力に抗して前記移動子をプランジャに打撃的に接触後、上方に移動させ、前記吸入弁を閉鎖し、かつ吐出弁を開放して、前記ポンプ室内の液体を吐出弁から排出させるステップと、
(c)前記第二の期間の終了後、前記プランジャが上死点から前記移動子の動きに少し遅れて下降し、下死点に到達しないうちに、移動子が下死点まで下降したのち再び上昇して、プランジャと当接するまでの第三の期間のあいだ、前記吸入弁を開放し、かつ吐出弁を閉鎖して、前記ポンプ室に液体を流入するステップと、
(d)前記第三の期間の終了後、当該ポンプの電源を遮断するまで、前記(b)のステップと(c)のステップとを繰り返し実行するステップと
を含んでなる
ことを特徴とするポンプの駆動方法。
【請求項3】
前記吸入弁および吐出弁が、
互いに連通され液体が流通する下方側流路および上方側流路と、
該下方側流路と上方側流路との接続部に設けられた弁座と、
該上方側流路内に設けられる弁体と、
該弁体の移動距離を制限するための移動制限手段と
を備えた逆止弁であって、
前記弁体が、前記弁座に支持可能に設けられた本体と、該本体の下方側に設けられ、当該逆止弁の開閉応答性を調整するための調整手段とを備えてなる
請求項1、2または3記載の駆動方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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