説明

後衿の高いシャツ

【課題】着心地の良さとデザインの良さと皮脂汚れを吸着する機能の発揮とを全て満足させる、後衿の高いシャツを提供する。
【解決手段】このシャツ10は、前身頃11と、後身頃12と、右袖部13および左袖部14と、衿部15とを有し、衿部15は、前衿部15A、横衿部15Bおよび後衿部15Cで構成されている。衿部15は、1つの生地で形成され、後衿部15Cの高さが前衿部15Aおよび従来のシャツよりも高く、横衿部15Bが後衿部15Cへ向けて徐々に高くなり、この横衿部15Bが従来のシャツよりも首の横部に広い面積で密着する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下着用のシャツであって、ワイシャツまたはブラウスの下に着用できるシャツに関し、特に、男性用、女性用を問わず、後衿の高さを高くしたシャツに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の下着用シャツおよびTシャツにおいては、首廻りにテープ生地が縫着されて衿部が構成されており、この衿部の高さは極力低く抑えられている。すなわち、従来の一般的なシャツにおいては、衿部に特別な機能を持たせていなかった。ところが、特開2011−122281号公報(特許文献1)は、衿部に機能を持たせることのできるシャツを開示する。
【0003】
この特許文献1に開示されたシャツは、前身頃の上端にある前衿ぐり部と、後身頃の上端にある後衿ぐり部とによって首廻り部が構成され、首廻り部の全周には、前衿ぐり部と後衿ぐり部とにそれぞれ重ね合わされて第1衿が縫着されている。そして、首廻り部の後部において、第1衿よりもその最大高さ寸法が大きい第2衿が、後衿ぐり部と前衿ぐり部の一部に設けられ、第2衿の高さ寸法が前衿ぐり部に設けられた部分において、第2衿の端に向かうに従って漸次小さくなっており、第2衿の各端は、前衿ぐり部の途中部分に位置付けられている。
【0004】
このシャツを下着として着用したときに、シャツの衿はアウターの衣服によって隠れて、外部から見えにくくなり、美観を悪化させることはない。また、第2衿がアウターの衣服に邪魔になることはない。第2衿が着用者の首の後部に当たることで、従来、ワイシャツ等のアウターの衣服の衿に付着していた皮脂汚れを第2衿が吸着し、アウターの衣服の衿汚れを防止することができ、アウターの衣服の洗濯の負担を軽減し、アウターの衣服を長持ちさせることができる。また、首筋から流れる汗を第2衿が吸収することで、アウターの衣服の衿を濡らさないようにして、べた付きを減らすことができ、着用者が夏季にも快適に過ごすことができる。また、気温が低い季節には、第2衿が着用者の首の後部に当たるために、着用者の首を暖めることができる。このように衿部(第2衿)が、特別な機能を発揮することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−122281号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示されたシャツは、以下の問題点がある。
このシャツの衿は、第1衿と第2衿とが別体の縫製パーツであって、縫着されて結合されている。このため、縫製パーツが通常のシャツよりも増えるので製造工数および製造コストが上昇するとともに、縫合部が多くなるので着心地が悪く洗濯耐久性も低下してしまう。
【0007】
さらに、第2衿を前衿ぐり部に縫着するときに、第2衿は外側に引っ張りながら縫着することにより、縫着後に残留する引張力で第2衿の弛みを防ぐとともに第2衿の中央部を起立させている(特許文献1の第0041段落)。このように特別に縫製するのは、高精度の位置決めが必要な慎重な作業を要求されるものであり、手間がかかるものである。また、第2衿の中央部は、その内側に設けられる内側テープとともに第1衿および後衿ぐり部に縫着されて結合されている(特許文献1の図5、図7A、図7B)。さらに、この内側テープは、後衿ぐり部から、前身頃の上端の肩部と後身頃の上端の肩部の縫合部へと延びて縫着されている。このため、内側テープが首の後部分の肌および肩の肌に直接当たり、着心地が良いとはいえない。このように、このシャツの第2衿は、元々起立しにくい構造となっているので、特別な縫製およびテープを用いることにより、第2衿の中央部を起立させている。その結果、製造工数および製造コストが上昇するとともに、着心地が良くない。
【0008】
さらに、第2衿が着用者の首の後部に当たることにより皮脂汚れを第2衿で吸着させるためには、第2衿をできるだけ首の前面から巻き付けるように設けることが好ましい。その一方で、このように第2衿を設けると、ワイシャツとこのシャツとの隙間から第2衿が見えてしまう場合がある(特にワイシャツの上側の前ボタンの2〜3個を開けた場合)。特許文献1に開示されたシャツは、通常のV首シャツの第1衿に第2衿を縫着したシャツであって、第1衿と第2衿とは別体であるので、第2衿が汗取り用の生地片のように見えてしまう。この点で、衿部のデザイン性を考慮したものではない。
【0009】
本発明は、上述した問題点に鑑みて開発されたもので、その目的とするところは、着心地の良さとデザインの良さと皮脂汚れを吸着する機能の発揮とを全て満足させる、後衿の高いシャツを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するために本発明に係るシャツは、前身頃の上端にある前衿ぐり部と、後身頃の上端にある後衿ぐり部とによって首廻り部が構成され、首廻り部の全周には、前衿ぐり部と後衿ぐり部とにそれぞれ重ね合わされて衿部が縫着されている。前衿ぐり部に縫着される前衿部と後衿ぐり部に縫着される後衿部とが1つの生地で構成され、後衿部の高さが前衿部の高さよりも高いことを特徴としている。
【0011】
この構成によれば、1つの生地(縫製パーツ)により前衿部と後衿部とが構成されているので、縫製パーツが通常のシャツよりも増えることなく製造工数および製造コストが上昇することを抑制できるとともに、縫合部が多くならないので着心地が悪くならず、洗濯耐久性が低下することを抑制できる。そして、後衿部が着用者の首の後部に当たることで、従来、ワイシャツ等のアウターの衣服の衿に付着していた皮脂汚れを後衿部が吸着し、アウターの衣服の衿汚れを防止することができ、アウターの衣服の洗濯の負担を軽減し、アウターの衣服を長持ちさせることができる。
【0012】
また、後衿部の高さが前衿部から徐々に高くなるように形成されたことを特徴とすることが好ましい。
アウターの衣服(たとえばワイシャツ)の上側の前ボタンの2〜3個を開けてこのシャツが見えても、前衿部から後衿部へ向けて徐々に衿の高さが高くなっているので、首の横側の衿部が目立たないで前衿部が主として見えるので、衿の一部が汗取り用の生地片のように見えることがない。
【0013】
さらに、後衿部の高さが、前記シャツの上に着用するアウターの衿部の高さよりも低いことを特徴とすることが好ましい。
このようにすると、シャツの後衿部はアウターの衣服(たとえばワイシャツ)によって隠れて、外部から見えにくくなり、美観を悪化させることはない。また、後衿部がアウターの衣服に邪魔になることはない。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、着心地の良さとデザインの良さと皮脂汚れを吸着する機能の発揮とを全て満足させる、後衿の高いシャツを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るシャツの正面図である。
【図2】図1における衿部の正面拡大図である。
【図3】図1における衿部の背面拡大図である。
【図4】図1における衿部の展開拡大図である。
【図5】着用状態を示す斜視図(その1)である。
【図6】着用状態を示す斜視図(その2)である。
【図7】本発明の第2の実施形態に係るシャツの正面図である。
【図8】図7における衿部の正面拡大図である。
【図9】図7における衿部の背面拡大図である。
【図10】図7における衿部の展開拡大図である。
【図11】本発明の第3の実施形態に係るシャツの正面図である。
【図12】本発明の第4の実施形態に係るシャツの正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態に係るシャツについて図面を参照して説明する。本発明は、男性用、女性用を問わず、下着用シャツ等に適用される。なお、以下の説明では、異なる実施の形態であっても同一の構成要素には同一の符号を付してある。それらの名称及び機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰り返さない。
<第1の実施形態>
[全体構成]
図1に本実施形態に係るシャツ10の正面図を、図2にシャツ10の衿部15の正面拡大図を、図3にシャツ10の衿部15の背面拡大図をそれぞれ示す。このシャツ10は、前身頃11と、後身頃12と、右袖部13および左袖部14と、衿部15とを有している。前身頃11と後身頃12とは、図に表れない側部の縫着線で縫い合わされるとともに、肩部の縫着線で縫い合わされて、シャツ10の全体を形成している。前身頃11の上端にある前衿ぐり部と、後身頃12の上端にある後衿ぐり部とによって首廻り部が構成されて、その部分に衿部15が形成されている。
【0017】
前身頃11と、後身頃12と、右袖部13および左袖部14とは、従来のシャツに使用される任意の素材から構成することができ、典型的には、天竺編みまたはフライス編み等の綿生地から構成することができる。衿部15は、このシャツ10の他の縫製パーツと同じ生地、または、フライス編みまたはリブ編み等の伸縮性の高い綿生地から構成することができる。
【0018】
[特徴的な構成]
図2および図3に拡大して示したように、このシャツ10の首廻りを構成する前身頃11の上端にある前衿ぐり部と後身頃12の上端にある後衿ぐり部には、その全周に亘り、2つ折りまたはそれ以上に折られた(ここでは2つ折りとする)衿部15が、前衿ぐり部と後衿ぐり部とにそれぞれ重ね合わされて縫着されている。縫着されると、この衿部15は、着用者の首の前側の前衿部15Aと、首の横側の横衿部15Bと、首の後側の後衿部15Cとを構成する。すなわち、1つの縫製パーツで、前衿部15A、横衿部15Bおよび後衿部15Cを構成している。
【0019】
この衿部15は、図4の展開拡大図に示すように、このシャツ10の他の縫製パーツとは別体であって、衿部15は、折線15Eにおいて2つ折りされて、折線15Eが上辺となるように(折線15Eが後衿部15Cの上端面となるように)、後身頃12の後衿ぐり部と前身頃11の前衿ぐり部に縫着され、さらに、縫着線15Dでシャツ10の前面(腹部側)で縫着されている。なお、図4に示すように衿部15の輪郭は直線状に形成されているが、これは、縫着を容易にするために、衿部15の輪郭を前身頃11の前衿ぐり部の形状および後身頃12の後衿ぐり部の形状に合致させているためである。また、前衿部15Aの形状は、従来のV首シャツと同じ形状になるように、形成されている。
【0020】
このシャツ10で特徴的であるのは、(1)衿部15が1つの生地で形成されていること、(2)衿部15の後衿部15Cの高さが、前衿15Aおよび従来の(V首)シャツよりも高いこと、(3)衿部15の横衿部15Bが後衿部15Cへ向けて徐々に高くなり、この横衿部15Bが従来のV首シャツよりも(かつ特許文献1のシャツよりも)着用者の首の横部に広い面積で密着する点である。
【0021】
図2および図3に従来のシャツの衿の上端面を一点鎖線で示す。これらの図から明らかなように、後衿部15Cの高さは前衿15Aおよび従来のシャツよりも高くなっている。このシャツ10の後衿部15Cの高さは、ワイシャツの衿高さよりも低くなるようになっている。このようにすることにより、シャツ10の後衿部15Cはアウターの衣服(たとえばワイシャツ)によって隠れて、外部から見えにくくなり、美観を悪化させることはない。また、後衿部15Cがアウターの衣服に邪魔になることはない。後衿部15Cが着用者の首の後部に密着することにより、従来、ワイシャツ等のアウターの衣服の衿に付着していた皮脂汚れを後衿部15Cが吸着し、アウターの衣服の衿汚れを防止することができ、アウターの衣服の洗濯の負担を軽減し、アウターの衣服を長持ちさせることができる。
【0022】
なお、ワイシャツとこのシャツ10との隙間から衿部15が見えてしまったとしても、1つの縫製パーツで前衿部15A、横衿部15Bおよび後衿部15Cを構成しているために、衿の一部が汗取り用の生地片のように見えることもない。
また、横衿部15Bが着用者の首の横側に密着するように形成されている。この横衿部15Bは、前衿部15Aから後衿部15Cへ向けて徐々に高くなっている。このように衿部15を構成することにより、できるだけ首の前面から衿部15を巻き付けることができ、着用者の首の皮脂汚れを衿部15で吸着させることができる。この場合において、ワイシャツの上側の前ボタンの2〜3個を開けてこのシャツ10が見えても、横衿部15Bが前衿部15Aから後衿部15Cへ向けて徐々に高くなっているので、横衿部15Bが目立たないで前衿部15Aが主として見えるので、衿の一部が汗取り用の生地片のように見えることもない。この効果は、上述したように、1つの縫製パーツで前衿部15A、横衿部15Bおよび後衿部15Cを構成していることとの相乗効果として、奏されるものであると推察される。
【0023】
[着用状態]
このシャツ10の着用状態を説明する。図5にシャツ10の着用状態を示す斜視図を、図6に角度を少し変えた斜視図を示す。なお、これらの斜視図は、着用者XがワイシャツYを着用した場合であって、シャツ10の右側を故意に途中まで脱いだ状態を示している。
【0024】
後衿部15Cは、ワイシャツYの衿の高さよりも低く、ワイシャツYを着用すると、このシャツ10の後衿部15Cが見えることはない。横衿部15Bは、前衿部15Aから後衿部15Cへ向かうに従い徐々に高くなり、ワイシャツYの上側の前ボタンの2〜3個を開けてこのシャツ10の横衿部15Bが見えたとしても汗取り用の生地片のように見えることもない。
【0025】
さらに、これらの横衿部15Bおよび後衿部15Cは、着用者の首の横部および後部に密着して初めて、着用者の首の皮脂汚れを衿部15で吸着させることができる。このシャツ10は、1つの縫製パーツで、前衿部15A、横衿部15Bおよび後衿部15Cを構成し、前衿部15Aにおいて前身頃11と、長い縫着線で縫着されている。前身頃11はそれ自体の重さにより下方へ引き下げる力が作用し、それに伴い前衿部15Aが下方へ引き下げられ、前衿部15Aと同一の縫製パーツで構成された横衿部15Bおよび後衿部15Cが、着用者の腹部側(前側)へ引っ張られる。これにより、横衿部15Bおよび後衿部15Cは、着用者の首の横部および後部に密着すると推察される。
【0026】
これに対して、特許文献1に開示された、皮脂汚れを吸着する第2衿が第1衿と別体であって、かつ、第1衿と第2衿とは主として後身頃で縫着されており、第2衿は前身頃に直接には縫着されていない。すなわち、第2衿は、第1衿を介して前身頃に縫着されているものの、その縫着線の長さが短い。このため、前身頃はそれ自体の重さにより下方へ引き下げる力が作用するであろうが、それに伴い第2衿が下方へ引き下げられ第2衿が着用者の腹部側(前側)へ引っ張られる作用は、本実施形態に係るシャツ10よりも極めて低いと推察される。
【0027】
[作用効果]
このシャツ10を下着として着用したときに、シャツ10の後衿部15Cはアウターの衣服によって隠れて、外部から見えないので、美観を悪化させることはない。また、後衿部15Cがアウターの衣服に邪魔になることはない。後衿部15Cが着用者の首の後部に密着することで、従来、ワイシャツ等のアウターの衣服の衿に付着していた皮脂汚れを後衿部15Cが吸着し、アウターの衣服の衿汚れを防止することができ、アウターの衣服の洗濯の負担を軽減し、アウターの衣服を長持ちさせることができる。
【0028】
また、首筋から流れる汗を横衿部15Bおよび/または後衿部15Cが吸収することで、アウターの衣服の衿を濡らさないようにして、べた付きを減らすことができ、着用者が夏季にも快適に過ごすことができる。また、気温が低い季節には、横衿部15Bおよび/または後衿部15Cが着用者の首の横部および/または後部に密着するために、着用者の首を暖めることができる。
【0029】
さらに、このシャツ10の衿部15は、前衿部15A、横衿部15Bおよび後衿部15Cが1つの縫製パーツで構成されて、それらが縫着されて結合されている。このため、縫製パーツが通常のシャツよりも増えないので製造工数および製造コストが上昇することはないとともに、縫合部が多くならないので着心地が悪くなることもなく、洗濯耐久性も低下することもない。
【0030】
さらに、特許文献1に開示されたような特別な縫製およびテープを用いることなく後衿部15Cが首の後部に密着しているので、縫製が容易で、テープが肌に触れることもなく着心地が良く、デザイン的に優れている。
さらに、後衿部15Cだけでなく横衿部15Bが着用者の首の横部および後部に密着するので、できるだけ首の前面から衿部15が着用者の首に巻き付けられていることになる。このため、皮脂汚れを後衿部15Cだけでなく横衿部15Bでも吸着させることができる。特に、首筋から流れる汗を横衿部15Bおよび/または後衿部15Cで吸収することができる。ここで、このように横衿部15Bを設けた場合において、アウターであるワイシャツの上側の前ボタンの2〜3個を開けてこのシャツ10が見えても、横衿部15Bが前衿部15Aから後衿部15Cへ向けて徐々に高くなっているので、横衿部15Bが目立って見えることはなく、衿の一部が汗取り用の生地片のように見えることもない。
【0031】
<第2の実施形態>
以下、本発明の第2の実施形態に係るシャツ20について説明する。なお、構成要素の中で、上述の説明と重複する部分についてはここでは繰り返して説明しない。大略的には、第1の実施形態に係るシャツ10がV首であったのに対して、本実施形態に係るシャツ20は丸首である点が異なる。
【0032】
図7に、図1に対応するシャツ20の正面図を、図8に、図2に対応する衿部25の正面拡大図を、図9に、図3に対応する衿部25の背面拡大図を、図10に、図4に対応する衿部25の展開拡大図を、それぞれ示す。
これらの図に示すように、このシャツ20は、前身頃21と、後身頃22と、右袖部13および左袖部14と、衿部25とを有している。前身頃21と後身頃22とは、第1の実施形態に係るシャツ10と同様に、図に表れない側部の縫着線で縫い合わされるとともに、肩部の縫着線で縫い合わされて、シャツ20の全体を形成している。前身頃21の上端にある前衿ぐり部と、後身頃22の上端にある後衿ぐり部とによって首廻り部が構成されて、その部分に衿部25が形成されている。シャツ20の素材については第1の実施形態と同じである。
【0033】
図8および図9に拡大して示したように、このシャツ20の首廻りを構成する前身頃21の前衿ぐり部と後身頃22の後衿ぐり部には、その全周に亘り、2つ折りまたはそれ以上に折られた衿部25が縫着されている(ここでは2つ折りとする)。縫着されると、この衿部25は、着用者の首の前側の前衿部25Aと、首の横側の横衿部25Bと、首の後側の後衿部25Cとを構成する。すなわち、1つの縫製パーツで、前衿部25A、横衿部25Bおよび後衿部25Cを構成している。
【0034】
この衿部15は、図10の展開拡大図に示すように、このシャツ20の他の縫製パーツとは別体であって、衿部25は、折線25Eにおいて2つ折りされて、折線25Eが上辺となるように(折線25Eが後衿部25Cの上端面となるように)、後身頃22の後衿ぐり部と前身頃21の前衿ぐり部に縫着され、さらに、縫着線25Dでシャツ20の後面(背中側)で縫着されている。なお、図10に示すように衿部25の輪郭は曲線状に形成されているが、これは、縫着を容易にするために、衿部25の輪郭を前身頃21の前衿ぐり部の形状および後身頃22の後衿ぐり部の形状に合致させているためである。また、前衿部25Aの形状は、従来の丸首シャツと同じ形状になるように、形成されている。なお、縫着線25Dは、後面ではなく側方(肩側)に形成されていても構わない。この場合、図10に示す衿部25とは異なる部分で縫着される。
【0035】
このシャツ10で特徴的であるのは、第1の実施形態に係るシャツ10と同様に、(1)衿部25が1つの生地で形成されていること、(2)衿部25の後衿部25Cの高さが、前衿25Aおよび従来の(丸首)シャツよりも高いこと、(3)衿部25の横衿部25Bが後衿部25Cへ向けて徐々に高くなり、この横衿部25Bが従来の丸首シャツよりも(かつ特許文献1のシャツよりも)着用者の首の横部に広い面積で密着する点である。
【0036】
図8および図9に従来のシャツの衿の上端面を一点鎖線で示す。これらの図から明らかなように、後衿部25Cの高さは、前衿25Aおよび従来のシャツよりも高くなっている。このシャツ20の後衿部25Cの高さは、ワイシャツの衿高さよりも低くなるようになっている。
また、着用すると、横衿部25Bは上述した横衿部15Bと、後衿部25Cは上述した後衿部25Cと同じように、着用者の首に密着する。これらの点を含めて、前衿部25Aと上述した前衿部15Aの差異を除いて、シャツ20はシャツ10と同じである。
【0037】
このように構成されている本実施形態に係るシャツ20も、第1の実施形態に係るシャツ10と同様の作用効果を発現することができる。
<第3の実施形態>
以下、本発明の第3の実施形態に係るシャツ30について説明する。なお、構成要素の中で、上述の説明と重複する部分についてはここでは繰り返して説明しない。大略的には、第1の実施形態に係るシャツ10が袖があったのに対して、本実施形態に係るシャツ30は袖がないノースリーブタイプである点が異なる。
【0038】
図11に、図1に対応するシャツ30の正面図を示す。このシャツ30は、袖の有無を除いて、第1の実施形態に係るシャツ10と同じである。
このように構成されている本実施形態に係るシャツ30も、第1の実施形態に係るシャツ10と同様の作用効果を発現することができる。
<第4の実施形態>
以下、本発明の第4の実施形態に係るシャツ40について説明する。なお、構成要素の中で、上述の説明と重複する部分についてはここでは繰り返して説明しない。大略的には、第2の実施形態に係るシャツ20が袖があったのに対して、本実施形態に係るシャツ40は袖がないノースリーブタイプである点が異なる。
【0039】
図12に、図7に対応するシャツ40の正面図を示す。このシャツ40は、袖の有無を除いて、第2の実施形態に係るシャツ20と同じである。
このように構成されている本実施形態に係るシャツ40も、第2の実施形態に係るシャツ20と同様の作用効果を発現することができる。
本発明の実施形態は、以上からなるが、本発明は、上記実施形態にのみ制約されるものではなく、特許請求の範囲に記載した範囲内で自由に変更して実施することができる。
【0040】
たとえば、男性用であっても女性用であっても構わないし、前衿部の形状は、V首および丸首に限定されず、U首であっても他のネック形状であっても構わない。さらに、袖部があってもなくても構わないし、袖部は長袖でも構わない。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明は、主として下着に用いられるシャツに利用することができ、また、男性用、女性用を問わず、かつ、袖の有無を問わず、適用することができる。
【符号の説明】
【0042】
10 シャツ(第1の実施形態)
11 前身頃
12 後身頃
13 右袖部
14 左袖部
15 衿部
15A 前衿部
15B 横衿部
15C 後衿部
20 シャツ(第2の実施形態)
25 衿部
25A 前衿部
25B 横衿部
25C 後衿部
30 シャツ(第3の実施形態)
40 シャツ(第4の実施形態)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前身頃の上端にある前衿ぐり部と、後身頃の上端にある後衿ぐり部とによって首廻り部が構成され、首廻り部の全周には、前衿ぐり部と後衿ぐり部とにそれぞれ重ね合わされて衿部が縫着されたシャツであって、
前衿ぐり部に縫着される前衿部と後衿ぐり部に縫着される後衿部とが1つの生地で構成され、
後衿部の高さが前衿部の高さよりも高いことを特徴とする、シャツ。
【請求項2】
後衿部の高さが前衿部から徐々に高くなるように形成されたことを特徴とする、請求項1に記載のシャツ。
【請求項3】
後衿部の高さが、前記シャツの上に着用するアウターの衿部の高さよりも低いことを特徴とする、請求項1または請求項2に記載のシャツ。

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図1】
image rotate

【図7】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2013−104148(P2013−104148A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−248695(P2011−248695)
【出願日】平成23年11月14日(2011.11.14)
【出願人】(000001339)グンゼ株式会社 (919)
【Fターム(参考)】