説明

徐放性錠剤

【解決手段】本発明の徐放性錠剤は、薬効成分を含有し徐放性を有する粒子、帯電防止剤および賦形剤を含有することを特徴としている。
【効果】本発明によれば、薬効成分を含有する徐放性粒子を多く含有し、優れた徐放性と充分な硬度を有する徐放性錠剤が提供される。また、患者にとって経口摂取しやすい小型の徐放性錠剤が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬度および徐放性に優れた錠剤に関する。詳しくは、本発明は、薬効成分を含有し徐放性を有する粒子、帯電防止剤および賦形剤を含有する、硬度に優れた徐放性錠剤に関する。
【背景技術】
【0002】
徐放性製剤は、薬効成分を持続的に放出するため、徐放性製剤を経口投与した場合には、血中での薬効成分濃度の急激な変動を生じさせずに安定した治療を行うことができ、また、投与回数を減少させることによる患者の負担の軽減が期待されることから、近年需要が高まっている。
【0003】
従来、徐放性製剤としては、活性剤を含有する固体の周囲に、遅延ジャケット、半透過性膜、腸溶皮などの層を設けた多層構造により、活性剤の放出を制御した製剤が知られている(特許文献1参照)。
【0004】
また、徐放性を付与する成分により薬効成分を被覆した被覆顆粒を、生理的に不活性な賦形剤などと共に成形した錠剤が知られている(たとえば特許文献2参照)。このような錠剤は、薬効成分放出の安定性などに優れており、さらなる利用が期待されている。
【0005】
しかしながら、被覆顆粒と賦形剤とを共に成形する場合には、強度が低くなる傾向があるため、製造中、包装中、輸送中、保管中などにおいて壊れることのない充分な強度を有する錠剤を製造するためには、被覆顆粒を過剰量の賦形剤に分散させて成形する必要があり、錠剤の大型化が避けられないという問題があった。また、従来の錠剤を、組成を変更せずに単に小型化した場合には、錠剤の硬度が低下し、錠剤の硬度を向上させるために賦形剤に結合剤を多く添加した場合には、薬効成分の徐放性が大きく低下するという問題があった。さらに、錠剤の硬度を向上させるために、圧縮成形における圧力を高めた場合には、被覆顆粒と賦形剤とが過度に結合して徐放性が低下したり、被覆顆粒粒子が壊れて放出特性が変化したりするという問題があった。
【0006】
一方、特許文献3には、生理活性物質を含む素顆粒が疎水性物質を含むコーティング剤で多層に被覆された被覆顆粒と、トウモロコシ澱粉などの崩壊性を有する賦形剤とを、共に圧縮成形した小型の錠剤が提案されている。この錠剤における被覆顆粒は、それ自身ではほとんど生理活性物質は放出せず、崩壊性賦形剤と共に圧縮成形する際に被覆顆粒の皮膜に生じた亀裂などの破損部分から生理活性物質を溶出する。しかしながら、この錠剤では、生理活性物質の溶出程度の制御が困難であるという問題があった。
【0007】
このため、徐放性を有する被覆粒子を含む錠剤であって、成形性に優れ、充分な強度を有し、優れた徐放性を示し、かつ小型化された錠剤の出現が強く求められていた。
本発明者は、このような状況に鑑みて鋭意研究した結果、徐放性を有する被覆粒子と、賦形剤および二酸化ケイ素などの帯電防止剤とからなる錠剤が、圧縮成形圧力が低い場合にも硬度が高く、かつ、優れた徐放性を有することを見出して本発明を完成した。
【0008】
なお、特許文献4には、生理活性物質であるバラシクロビールと、充填剤、結合剤、潤滑剤、コロイド状二酸化ケイ素を含む錠剤であって、顆粒内にバラシクロビールが、顆粒外に潤滑剤および二酸化ケイ素が含まれる錠剤が提案されており、硬度が高いことが記載されているが、該顆粒は錠剤製造の工程で一般に形成されるもので徐放性を有するものではなく、錠剤も徐放性を有さない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平7−2648号公報
【特許文献2】特開平11−171775号公報
【特許文献3】特開2002−179571号公報
【特許文献4】特表平10−512564号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、薬効成分の徐放性を有する粒子、帯電防止剤および賦形剤とを圧縮成形して得られる錠剤であって、優れた徐放性と充分な硬度を有し、小型化した場合にも製造中、包装中、輸送中、保管中などにおいて壊れることのない充分な強度を有する徐放性錠剤を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の徐放性錠剤は、薬効成分を含有する芯材と該芯材からの薬効成分の放出を制御する被覆層からなる徐放性粒子、帯電防止剤および賦形剤を含有することを特徴とする。
本発明の徐放性錠剤において、徐放性粒子は錠剤質量の50質量%以上であるのが好ましい。また、徐放性粒子の被覆層はセルロース系高分子であるのが好ましく、該被覆層は
徐放性粒子の質量の0.1〜5質量%の範囲であるのが好ましい。
【0012】
本発明の徐放性錠剤は、帯電防止剤を錠剤質量の0.5質量%以下の量で含有するのが好ましく、錠剤質量の0.005〜0.2質量%の範囲であるのがより好ましい。
本発明において、帯電防止剤は二酸化ケイ素(含水二酸化ケイ素を含む)、無水ケイ素、タルク、酸化チタン、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウムおよび界面活性剤よりなる群から選択される1種以上であるのが好ましい。
【0013】
また、本発明の錠剤は、製剤において慣用される種々の賦形剤、例えば結合剤、崩壊剤、潤滑剤、乳化剤、安定剤、界面活性剤などを含有してもよい。さらに、本発明の徐放性錠剤は、必要に応じて錠剤において慣用されるコーティングを施してもよい。
【0014】
本発明の徐放性錠剤は、その形状、大きさなどにより異なるが、錠剤強度が6Kp以上であるのが好ましい。
さらに、本発明は、薬効成分を含有する芯材と該芯材からの薬効成分の放出を制御する被覆層からなる徐放性粒子、帯電防止剤および賦形剤を混合し、圧縮成形することを特徴とする徐放性錠剤の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、薬効成分を含有する徐放性粒子を多く含有し、優れた徐放性と充分な硬度を有する徐放性錠剤が提供される。また、本発明によれば、小型化した場合にも製造中、包装中、輸送中、保管中などにおいて壊れることのない充分な強度を有する徐放性錠剤を提供することができ、硬度および徐放性に優れ、患者にとって経口摂取しやすい小型の徐放性錠剤が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、実施例4〜6および比較例2の錠剤硬度を示すグラフである。
【図2】図2は、比較例3および参考例7の溶出特性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明について具体的に説明する。
本発明の徐放性錠剤は、薬効成分を含有する芯材と該芯材からの薬効成分の放出を制御する被覆層とからなる徐放性粒子、帯電防止剤、および賦形剤と共に圧縮成形してなる。
【0018】
徐放性粒子
本発明に係る徐放性粒子は、薬効成分を含有する芯材と、該芯材を被覆し、芯材からの薬効成分の放出を制御する被覆層とを有する。
【0019】
本発明に係る徐放性粒子の芯材は、少なくとも1種の薬効成分を含有する。芯材に含有される薬効成分の種類は、特に限定されるものではなく、経口投与に適した生理活性物質として公知のものをいずれも用いることができ、所望によりこれらを組み合わせて用いることもできる。
【0020】
このような薬効成分としては、たとえば、化学療法剤、カルシウム拮抗剤、抗生物質、呼吸促進剤、鎮咳去痰剤、抗悪性腫瘍剤、自律神経用薬剤、精神神経用薬剤、局所麻酔剤、筋弛緩剤、消化器官用薬剤、抗ヒスタミン剤、中毒治療剤、催眠鎮静剤、抗癲癇剤、解熱剤、鎮痛剤、消炎剤、強心剤、不正脈治療剤、利尿剤、血管拡張剤、抗脂血剤、滋養強壮変質剤、抗凝血剤、肝臓用薬剤、血糖降下剤、血圧降下剤、大腸炎治療剤、抗喘息薬剤、抗狭心薬剤、制吐剤、糖質コルチコイド、潰瘍性大腸炎またはクローン病の治療薬剤、抗カビ剤、細動脈硬化治療剤、酵素抑制剤、痛風治療剤、抗パーキンソン薬剤、偏頭痛治療剤、タンパクおよびペプチド等が挙げられる。
【0021】
これらの薬効成分としては、たとえば、塩酸ペラパミル、ニカルジピン、ニトレンジピン、ニモジピン、テオフィリン、トリメトキオール、IGF−I,PTH(1−34)およびそれらの類似体、TGFα,TGFβ1,TGFβ2,TGFβ3,IFNα、ハイブリッドIFNα,IFNγ,N−ヒドロキシ−N((6−フェノキシ−2H−1−ベンゾピラン−3−イル)メチル)−尿素、4−〔5−〔4−(アミノイミノメチル)フェノキシ〕ペントキシ〕−3−メトキシ−N,N−ビス(1−メチルエチル)−ベンズアミド−(2)−2−ブテンジオエート、N−〔2−〔〔2−〔〔4−(4−フルオロフェニル)フェニル〕メチル〕1,2,3,4−テトラヒドロ−1−オキソ−6−イソキノリニル〕オキシ〕エチル〕−N−ヒドロキシ尿素、1−(1−ベンゾ〔b〕チエ−2−イルエチル)−1−ヒドロキシ尿素、5−〔2−(2−カルボキシエチル)−3−{6−p−メトキシフェニル}−5E−ヘキセニル〕オキシフェノキシ〕吉草酸、ヒルジン、ヘパリン、カルシトニン、5−アミノサリチル酸、ベクロメタソンジプロピオネート、ベタメタゾン−17−バレラート、プレドニゾロン、メタスルホベンゾエート、チクソコルトール(tixocortol)ピバレート、ブデソニド(budesonide)、フルチカソン(fluticasone)、メトプロロール(metoprolol)フマレート、メトプロロールタートレート、テトラヒドロアミノアクリジン(THA)、ガランタミン(galanthamine)、ウルソジオール(ursodiol)、クロミプラミン(clomipramine)塩酸塩、ターブタリン(terbutaline)スルフェート、アミノグルテチミド、デフロキサミンメシレート、エストラジオール、イソニアジド、メチルテストステロン、メチロシン、ソファンピン、ジプロピオン酸ベクロメタゾン、ベタメタゾン、酢酸コルチゾン、酢酸フルドロコルチゾン、ヒドロコルチゾン、酢酸トリアムシノロン、酢酸パラメタゾン、デキサメタゾン、トリアムシノロン、メチルプレドニゾロン、アムシノニド、吉草酸酢酸プレドニゾロン、吉草酸ジフルコルトロン、吉草酸デキサメタゾン、吉草酸ベタメタゾン、酢酸ジフロラゾン、酢酸デキサメタゾン、酢酸ヒドロコルチゾン、酢酸メチルプレドニゾロン、ジフルプレドナート、ジプロピオン酸ベタメタゾン、トリアムシノロンアセトニド、ハルシノニド、ピバル酸フルメタゾン、ブデソニド、フルオシノニド、フルオシノロンアセトニド、フルオロメトロン、フルドロキシコルチド、プロピオン酸アルクロメタゾン、プロピオン酸クロベタゾール、プロピオン酸デキサメタゾン、プロピオン酸デプロドン、酪酸クロベタゾン、酪酸ヒドロコルチゾン、酪酸プロピオン酸ヒドロコルチゾンなどが挙げられる。
【0022】
また、タンパクおよびペプチドとしては、たとえば、形質転換成長因子(TGF)、免疫グロブリンE(IgE)結合因子、インターロイキン、インタフェロン(IFN)、インシュリン様成長因子(IGF)、乳成長因子、坑凝固物質および副甲状腺ホルモン(PTH)などが挙げられる。
【0023】
本発明において、薬効成分としては、たとえば、テオフィリン、5−アミノサリチル酸、ベクロメタソンジプロピオネート、ベタメタソン−17−バレラート、プレドニソロンメタスルホベンゾエート、チキソコルトールピバレート、ブデソニド、フルチカゾンおよびメトプロロールなどが好ましい。
【0024】
徐放性粒子の芯材は、所望の薬効成分放出挙動を達成するために、芯材内への浸透を誘発する浸透剤を含有していてもよい。浸透剤は、薬効成分の種類などにより適宜選択することができるが、たとえば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム、リン酸水素ナトリウム、リン酸水素カリウム、次リン酸水素ナトリウム、および次リン酸水素カリウムなどの無機塩;
アルギン酸ナトリウム、アオコルビン酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、エデテート(edetate)ニナトリウム、フマル酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、およびコハク酸マグネシウムなどの有機酸の塩;
アルギン酸、アスコルビン酸、クエン酸、エデチン酸(edeticacid)、リンゴ酸、およびソルビン酸などの有機酸;
デキストレート、ソルビトール、キシリトール、マルチット、アラビノース、リボース、キシロース、グルコース、デキストロース、フルクトース、ガラクトース、マンノース、スクローク、マルトース、ラクトース、およびラフィノースなどの糖類;
グリシン、ロイシン、アラニンおよびメチオニンなどの水溶性アミノ酸;
その他、たとえば硫酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、尿素、サッカリン、サッカリンナトリウム、グリセリン、ヘキシレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール;およびそれらの混合物が挙げられる。
【0025】
また、徐放性粒子の芯材は、所望により、賦形剤、潤滑剤、滑剤、湿潤剤、結合剤、乳化剤、増粘剤、安定剤などを含有していてもよい。
賦形剤としては、たとえば、白糖、乳糖、マンニトール、グルコース等の糖類、デンプン、結晶セルロース、リン酸カルシウム、硫酸カルシウムなどが挙げられる。
【0026】
潤滑剤としては、たとえば、ステアリン酸カルシウム、グリセリルベヘネート(glyceryl behenate)、水素化植物油、ステアリン酸マグネシウム、鉱油、ポリエチレングリコール、ソジユウムステアリルフマレート、ステアリン酸、タルク、およびステアリン酸亜塩などが挙げられる。
【0027】
滑剤としては、たとえば、溶融またはコロイド二酸化ケイ素、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、タルクおよびシリカヒドロゲルなどが挙げられる。
湿潤剤としては、たとえば、塩化ベンベアルコニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化セチルピリジウム、ドクセートナトリウム(docusate sodium)、レシチン、ノノキシノール9または10、オフトキシノール9、ポロキサマー(poloxamer)、ポリオキシル(polyoxyl)35ひまし油、ポリオキシル40水素ひまし油、ポリオキシル50ステアレート、ポリオキシル10オレイルエーテル、ポリオキシル20セトステアリルエーテル、ポリオキシル40ステアレート、ポリソルベート20,40,60または80、ラウリル硫酸ナトリウム、ソルビタンエステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸およびチロキーポール(ホルムアルデヒドおよびオキシランと4(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノールポリマー)、硬化油、ワックス類などが挙げられる。
【0028】
結合剤としては、たとえば、アカシア、アルギン酸、カルボキシメチルセルロースナトリウム、デキストリン、エチルセルロース、ゼラチン、グルコース、グアーガム、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルマグネシウムアルミニウムシリケート、メチルセルロース、マイクロクリスタリンセルロース、ポリエチレンオキシド、ポリビニルアルコール、ポリビニルメタクリレート、ポリアクリレート、ポリビニルピロリドン、予備ゲル化デンプン、デンプン、グルコース、白糖、乳糖、麦芽糖、デキストリン、ソルビトール、マンニトール、マクロゴール類、アラビアゴム、ゼラチン、寒天、アルギン酸ナトリウム、シロップおよびカゼインなどが挙げられる。
【0029】
徐放性粒子の調製において、芯材は、通常、公知の方法により造粒するが、芯材が固体状の薬効成分のみからなる場合など、芯材を構成する原料を混合して調製する必要がない場合には、必ずしも造粒を行わなくてもよい。
【0030】
徐放性粒子の芯材の造粒は、たとえば、薬効成分および芯材を構成するその他の原料を配合した組成物を、湿式押し出し造粒法、転動造粒法、流動層造粒法などの、通常の製剤化方法で知られている方法により行うことができる。
【0031】
本発明の徐放性粒子において、被覆層は、上述した芯材を被覆する層であり、芯材内の薬効成分の放出を制御し、徐放性を与えることができる。
このような被覆層を形成する被覆剤としては、たとえば、エチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、セルロースアセテートフタレート、カルボキシメチルエチルセルロースなどのセルロース系高分子;
アクリル酸エチル・メタクリル酸メチルコポリマー、メタクリル酸コポリマーなどのメタクリル酸コポリマー;
ポリエチレン、ポピドン(ポリビニルピロリドン)、ポリビニルアルコールなどが挙げれる。被覆層は、これらの被覆剤を単独で含有していてもよく、複数組み合わせて含有していてもよく、また多層で構成されていてもよい。
【0032】
被覆層は、これらのうちセルロース系高分子を含有するのが好ましく、エチルセルロースを含有するのが特に好ましい。
本発明に係る徐放性粒子は、上述した芯材を被覆剤で被覆し、芯材上に被覆層を形成して調製することができる。被覆層の形成では、被覆剤を必要に応じて溶媒に溶解あるいは分散させて用いることができる。被覆剤を溶解あるいは分散させる溶媒としては、たとえば、水;メタノール、エタノールなどのアルコール類;アセトンなどのケトン類;クロロホルムなどのハロゲン化炭化水素類;これらの混合物などが挙げられる。また被覆層には、所望により、有機酸、撥水剤などの上記被覆剤以外の成分を含有してもよく、被覆層の形成ではこれらの成分を被覆剤と共に溶媒に溶解あるいは分散して用いることができる。
【0033】
被覆層の形成は、流動層コーティング法、パンコーティング法、転動流動層コーティング法などの、製剤技術で常用される方法により行うことができる。たとえば、流動層コーティング法により被覆層を形成する場合には、粒子状の芯材を空気圧により流動させながら、スプレーガンのノズルから被覆剤を含有する溶液あるいは分散液を、粒子状の芯材上に噴霧し、乾燥させることにより被覆層を形成し、徐放性粒子を得ることができる。
【0034】
このような徐放性粒子は、被覆層が有する微小な隙間より、薬効成分を徐々に放出する。
本発明に係る徐放性粒子の被覆層の質量は、所望の溶出特性、薬効成分および被覆層の種類にもよるが、徐放性粒子の質量の0.1〜5質量%、好ましくは0.5〜3質量%であるのが望ましい。
【0035】
また本発明に係る徐放性粒子は、芯材の外層に被覆層を有する粒子であればよく、その形状、粒径を限定するものではなく、粉状、細粒状、顆粒状、粒状などいずれの形態であってもよいが、粒子の粒径(長径)が0.01〜5mm、好ましくは0.1〜4mm程度であるのが望ましい。
このような徐放性粒子は、後述する賦形物と共に圧縮成形することにより、徐放性を有する錠剤を好適に形成することができる。
【0036】
帯電防止剤
通常、帯電防止剤は、粒子の表面の帯電を防止もしくは抑制することより、静電気による付着あるいは反発を防止もしくは軽減するために用いる。本発明においては、これに加えて、錠剤の硬度を向上させ、かつ薬効成分の溶出挙動に影響を与えず、該成分の徐放性を保持させるものである。
【0037】
本発明において、帯電防止剤としては、徐放性粒子の被覆層物質によっても異なるが、たとえば、二酸化ケイ素(含水二酸化ケイ素を含む)、無水ケイ酸(軽質無水ケイ酸、重質無水ケイ酸)、タルク、酸化チタン、ケイ酸アルミニウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、水酸化アルミナマグネシウム、塩化アンモニウム、カーボンなどの無機帯電防止剤;
ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、多価アルコールなどの有機帯電防止剤;
塩化アルキルトリメチルアンモニウム、塩化ジステアリルジメチルベンジルアンモニウム、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化セチルトリメチルアンモニウム、臭化セチルトリメチルアンモニウムなどの陽イオン系界面活性剤、ラノリン脂肪酸ポリエチレングリコールなどの非イオン系界面活性剤などの界面活性剤が挙げられる。
【0038】
これらの帯電防止剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
本発明の帯電防止剤としては、二酸化ケイ素、無水ケイ素、タルク、酸化チタン、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウムおよび界面活性剤よりなる群から選ばれる1種以上であるのが好ましい。
【0039】
賦形剤
本発明の錠剤は、さらに賦形剤を含有する。賦形剤としては、たとえば、結晶性セルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、トウモロコシデンプン、ジャガイモデンプン、クロスカルメロースナトリウム、カルボキシメチルスターチナトリウム、白糖、乳糖、マンニトール、グルコース、リン酸カルシウム、硫酸カルシウム、乳酸カルシウム、ポビドン、架橋ポビドンなどが挙げられ、これらを1種単独でまたは2種以上組み合わせて用いることができる。賦形剤としては、このうちセルロース系賦形剤を含有するのが好ましく、結晶性セルロースを含有するのがより好ましい。
【0040】
また、本発明の賦形剤は、所望により、結合剤、潤滑剤、凝集防止剤、崩壊剤、発泡剤、吸収促進剤、安定化剤、溶解補助剤、可塑剤など、経口投与薬の調製に通常用いられる各種公知の添加剤を含有することができる。
【0041】
結合剤としては、たとえば、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポビドン、グルコース、白糖、乳糖、麦芽糖、ソルビトール、マンニトール、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、マクロゴール類、アラビアゴム、ゼラチン、寒天、デンプンなどが挙げられる。
潤滑剤(滑沢剤)としては、たとえば、ステアリン酸など前記の潤滑剤が好適に用いられる。崩壊剤としては、たとえば、結晶セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース塩、デンプン、ヒドロキシプロピルスターチ、カルボキシメチルスターチナトリウム、トラガントなどが挙げられる。発泡剤としては、たとえば、炭酸水素ナトリウム、酒石酸などがあげられる。安定化剤としては、たとえば安息香酸、安息香酸ナトリウム、パラオキシ安息香酸エチル、アスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウム、α−トコフェロールなどが挙げられる。薬効成分の溶解補助剤としては、たとえば、フマル酸、コハク酸、リンゴ酸などの有機酸などが挙げられる。
本発明において、賦形剤は粉体のまま錠剤の成形に用いるが、一部または全部を10〜2000μm程度の顆粒に造粒して用いてもよい。
【0042】
徐放性錠剤
本発明の徐放性錠剤は、上述した徐放性粒子、帯電防止剤および賦形剤とを共に圧縮成形してなる。圧縮成形は、通常の錠剤成形で用いられる圧縮成形技術により適宜行うことができる。
【0043】
本発明の徐放性錠剤は、徐放性粒子を、徐放性錠剤質量の50質量%以上、好ましくは50〜90質量%、より好ましくは60〜80質量%の量で含有することが望ましい。
すなわち、本発明では、徐放性粒子;50〜90質量%、好ましくは60〜80質量%、帯電防止剤;0.5質量%以下(ただし、0ではない)、好ましくは0.005〜0.2質量%、さらに好ましくは0.01〜0.15質量%、賦形剤;10〜50質量%、好ましくは20〜40質量%とを混合し、圧縮成形することによって、徐放性錠剤を製造することができる。
【0044】
本発明における特定量の帯電防止剤は、錠剤の硬度を顕著に向上させることができ、かつ薬効成分の溶出特性にはほとんど影響を与えない。
本発明の徐放性錠剤は、製造中、包装中、輸送中、保管中などの経口摂取前の段階において、破壊することのない充分な硬度を有する。具体的には、錠剤硬度が4Kp以上、好ましくは6Kp以上であるのが望ましく、たとえば円形に成形した徐放性錠剤では、錠剤直径6mmの場合で4Kp以上、好ましくは6Kp以上の錠剤硬度を有するのが望ましく、錠剤直径9mmの場合で6Kp以上、好ましくは8Kp以上の錠剤硬度を有するのが望ましい。
【0045】
本発明の徐放性錠剤を成形する、圧縮成形の条件は、特に限定されるものではなく、圧縮成形により錠剤を製造する公知の条件とすることができるが、所望の錠剤硬度を達成する条件とするのが望ましい。打錠圧力は、所望の錠剤硬度を達成する圧力であればよく、徐放性錠剤の大きさや形状にもよるが、たとえば直径9mmの円形錠剤を成形する場合で400〜2000kg程度とすることができる。本発明の徐放性錠剤は、その処方により、過度に高い打錠圧力での成形を行うことなく、充分な錠剤硬度を達成することができる。
【0046】
このような本発明の徐放性錠剤は、帯電防止剤を含まない賦形物を用いて同様の錠剤を製造する場合と比較して、成形条件が同等であっても高い錠剤硬度を示し、さらに硬度が高いにもかかわらず同等の薬効成分の放出性を有する。故に、本発明によれば、帯電防止剤を含まない錠剤と同等の錠厚で、同等の薬効成分の放出性を有し、かつ硬度の高い錠剤が好適に得られる。
【0047】
これは、帯電防止剤が徐放性粒子表面に生じがちな静電気を防止または抑制することにより、静電気による付着や反発などを軽減し、徐放性粒子と賦形剤との均一な混合と良好な圧着が達成されるためと考えられる。
【0048】
このため本発明によれば、錠剤を小型化した場合にも充分な錠剤硬度と良好な徐放性が得られ、患者にとって経口摂取しやすい、優れた小型錠剤が提供される。
また、本発明の徐放性錠剤の製造方法では、結合剤や崩壊剤などの賦形剤の含有量を減少させた場合にも良好な錠剤の硬度および薬効成分の放出性が得られるため、相対的に錠剤内の徐放性粒子の含有量を多くすることができ、結果として錠剤の小型化を達成することができる。
【実施例】
【0049】
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
なお、以下の実施例および比較例において、錠剤硬度および溶出率は、以下の方法により測定した。また、各材料は医薬品グレードのものを使用した。
【0050】
錠剤硬度
錠剤硬度計(タイプ6D、DR. SHHILEUNIGER PHARMATRON社製)で、無作為に抽出した10錠の錠剤の直径方向における破壊強度を測定し、その平均値を算出した。
【0051】
溶出率
第14改正日本薬局方の溶出試験法の第2法(パドル法)に従って、pH7.5のリン酸緩衝液を使用して溶出試験を行った。溶出試験開始後、経時的に試験液の330nmにおける吸光度を測定し、薬効成分(5−アミノサリチル酸)の溶出率を算出した。
【0052】
[調製例1]
徐放性顆粒の調製
5−アミノサリチル酸1000gに、10%ポピドン水溶液を加えて練合し、押し出し造粒法により造粒して乾燥後、整粒して10〜30メッシュの素顆粒(芯剤)を得た。
【0053】
次いで、得られた素顆粒500gに対して、1%エチルセルロース水溶液1000gを流動層で噴霧して、乾燥、篩過して、10〜30メッシュの徐放性顆粒を得た。
得られた徐放性顆粒の組成は、5−アミノサリチル酸;94.0質量%、ポピドン:5.0質量%、エチルセルロース:1.0質量%であった。
【0054】
[実施例1]
調製例1で得た徐放性顆粒 200g、結晶性セルロース 98.4g、二酸化ケイ素0.1gおよびステアリン酸マグネシウム 1.5gを均一に混合し、プレス機を用いて500kgの圧力で圧縮成形し、1錠あたりの質量300mg、直径9mmの円形錠剤を得た。
【0055】
得られた錠剤より無作為に抽出した10錠について、錠剤硬度計(タイプ6D、DR. SHHILEUNIGER PHARMATRON社製)を用いて、錠剤の直径方向における破壊強度を測定し、その平均値を算出した。結果を表1に示す。
【0056】
[実施例2]
実施例1において、二酸化ケイ素に代えて、タルク 0.1gを用いたことのほかは、実施例1と同様にして円形錠剤を得た。
得られた錠剤より無作為に抽出した10錠について、実施例1と同様にして破壊強度を測定し、その平均値を算出した。結果を表1に示す。
【0057】
[参考例3]
実施例1において、二酸化ケイ素に代えて、ステアリン酸 0.1gを用いたことのほかは、実施例1と同様にして円形錠剤を得た。
得られた錠剤より無作為に抽出した10錠について、実施例1と同様にして破壊強度を測定し、その平均値を算出した。結果を表1に示す。
【0058】
[比較例1]
実施例1において、結晶性セルロース量を98.5gとし、二酸化ケイ素を用いなかったことのほかは、実施例1と同様にして円形錠剤を得た。
得られた錠剤より無作為に抽出した10錠について、実施例1と同様にして破壊強度を測定し、その平均値を算出した。結果を表1に示す。
【0059】
【表1】

実施例1および2、参考例3ならびに比較例1より、賦形物中に帯電防止剤を含有する実施例1および2ならびに参考例3の錠剤は、帯電防止剤を含有しない比較例1の錠剤と比較して、成形条件および錠厚が同等であるにもかかわらず、優れた錠剤硬度を有することがわかる。
【0060】
[実施例4〜6、比較例2]
調製例1で得た徐放性顆粒、結晶性セルロースおよび二酸化ケイ素を、表2に示す仕込み量で均一に混合した後に、タルクおよびステアリン酸Mgを表2に示す量で加えてさらに混合し、3000gの混合物を調製した。次いで、ロータリー式打錠機を用いて、400kg、800kg、1200kg、1600kg、2000kgの圧力で該混合物をそれぞれ圧縮成形し、1錠あたりの質量375mg、直径9mmの円形錠剤を得た。
【0061】
得られた錠剤の錠剤硬度を、上述の測定方法により求めた。結果を図1のグラフに示す。
【0062】
【表2】

[比較例3、参考例7]
調製例1で得た徐放性顆粒、結晶性セルロース、無水リン酸水素カルシウムおよび二酸化ケイ素を、表3に示す仕込み量で均一に混合した後に、タルクおよびステアリン酸Mgを表3に示す仕込み量で加えてさらに混合し、3000gの混合物を調製した。次いで、得られる錠剤が同じ硬度を有するように、ロータリー式打錠機を用いて、比較例3では1200kg、参考例7では800kgの圧力で該混合物をそれぞれ圧縮成形し、1錠あたりの質量375mg、直径8.5mmの円形錠剤を得た。得られた比較例3および参考例7の錠剤はそれぞれ、8.2Kp、8.5Kpの錠剤硬度であった。
【0063】
錠剤からの5−アミノサリチル酸の溶出率を、上述の測定方法により求めた。
その結果、参考例7の錠剤は帯電防止剤を含まない比較例3と比較して、同等の溶出率であった。結果を図2のグラフに示す。
【0064】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
5−アミノサリチル酸を含有する芯材と該芯材からの5−アミノサリチル酸の放出を制御するセルロース系高分子を含有する被覆層からなる徐放性粒子、ステアリン酸マグネシウム、帯電防止剤(但し、タルク及びステアリン酸マグネシウムを除く)および結晶性セルロースを含有する徐放性錠剤であって、
前記徐放性粒子が、錠剤質量の50質量%以上である徐放性錠剤。
【請求項2】
錠剤硬度が、6Kp以上である請求項1に記載の徐放性錠剤。
【請求項3】
5−アミノサリチル酸を含有する芯材と該芯材からの5−アミノサリチル酸の放出を制御するセルロース系高分子を含有する被覆層からなる徐放性粒子、結晶性セルロースおよび帯電防止剤(但し、タルク及びステアリン酸マグネシウムを除く)を混合し、圧縮成形する錠剤硬度増強方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−211192(P2012−211192A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−170390(P2012−170390)
【出願日】平成24年7月31日(2012.7.31)
【分割の表示】特願2009−270312(P2009−270312)の分割
【原出願日】平成15年1月24日(2003.1.24)
【出願人】(000001395)杏林製薬株式会社 (120)
【出願人】(301049744)日清ファルマ株式会社 (61)
【Fターム(参考)】