説明

感光材料処理装置

【課題】感光材料を現像処理するための処理液が貯留された現像処理槽と、現像処理槽での感光材料の処理操作に応じて現像処理槽に処理液を補充する補充機構とを備え、所定の液位を越える処理液を現像処理槽外にオーバーフローさせるオーバーフロー管が現像処理槽に設けてある感光材料処理装置において、現像処理槽の側壁などに結晶が付着し難くすることで、メンテナンス作業を軽減可能な構成にする。
【解決手段】オーバーフロー管38の流入口38aをアクチュエータM1によって上下移動させることで処理液の液位を変移させる液位調節機構43を現像処理槽31,32,33aに設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光材料を現像処理するための処理液が貯留された現像処理槽と、前記現像処理槽での感光材料の処理操作に応じて前記現像処理槽に処理液を補充する補充機構とを備え、所定の液位を越える前記処理液を前記現像処理槽外にオーバーフローさせるオーバーフロー管が前記現像処理槽に設けてある感光材料処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の感光材料処理装置としては、本発明に関連する先行技術文献情報として下記に示す特許文献1がある。この特許文献1に記された感光材料処理装置では、感光材料の処理操作に応じて現像処理槽に処理液が補充されるので、現像処理槽から引き出される感光材料の表面に付着して持ち出されることで処理液の液位が異常に下がることが防止される。また、図7に例示するように、現像処理槽に設けられたオーバーフロー管28によって現像処理槽の液位が一定レベルに保持されるので、処理液が現像処理槽の側壁を越えて感光材料処理装置外に溢れることが防止されている。
【0003】
【特許文献1】特開平9−43802号公報(段落番号0004、0005、図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に例示される従来の感光材料処理装置では、図7に例示されるように、現像処理槽の隔壁30の内面および現像処理槽に装入された処理ラックの液位Lに相当する箇所に、処理液に含まれる薬剤成分によるものと思われる結晶Cが多量に付着し易いという問題があった(図では処理ラックを省略している)。すなわち、このような結晶Cを付着させたままで処理を継続すれば、結晶の一部が処理液内に脱落して、感光材料に付着してプリントの品質を低下させる等の障害が起こり得るので、処理を中止してこびり付いた結晶Cを物理的に取り除く煩雑なメンテナンス作業を比較的頻繁に行う必要があった。
【0005】
そこで、本発明の目的は、上に例示した従来技術による感光材料処理装置の持つ前述した欠点に鑑み、処理液に含まれる薬剤成分に基づく結晶が現像処理槽の側壁内面や処理ラックに付着し難くすることで、メンテナンス作業を軽減可能な感光材料処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の特徴構成は、感光材料を現像処理するための処理液が貯留された現像処理槽と、前記現像処理槽での感光材料の処理操作に応じて前記現像処理槽に処理液を補充する補充機構とを備え、所定の液位を越える前記処理液を前記現像処理槽外にオーバーフローさせるオーバーフロー管が前記現像処理槽に設けてある感光材料処理装置であって、
前記オーバーフロー管の流入口をアクチュエータによって移動させることで前記液位を変移させる液面調節機構が設けられている点にある。
【0007】
すなわち、露光済みの写真フィルムや印画紙などの写真感光材料では一般に現像処理槽内の処理液を通常40℃前後に加熱した状態で処理を行う場合が多いので、処理液の液面付近からは常に水分が僅かずつながら蒸発している。したがって、この水分の蒸発に伴って、現像処理槽の側壁内面と処理液と空気との間に形成される三相界面付近では、処理液に含まれる薬剤成分が結晶化し、この結晶が現像処理槽の側壁内面の前記三相界面に相当する箇所を中心に固着するという現象が生じる。ところで、特許文献1に例示される従来の感光材料処理装置では、オーバーフロー管によって処理液の液位が非常に狭い高さ範囲内に保持されるために、現像処理槽の側壁内面上の非常に狭い箇所で、結晶が層状に付着する現象が集中して繰り返し起こり、より厚く強固な結晶の集合体が形成されるものと考えられる。しかし、本発明の第1の特徴構成による感光材料処理装置では、液面調節機構によって処理液の液位を適宜変移させることができるので、少なくとも結晶が付着する箇所を分散させることが可能となり、たとえ結晶の集合体が形成されても比較的薄く小さなものとなるので、結晶の集合体を取り除く頻度を少なくでき、且つ、結晶の集合体をより容易に取り除くことができるという効果が得られ、感光材料処理装置のメンテナンス作業が楽になる。
【0008】
本発明の他の特徴構成は、上下に変位自在に支持された前記オーバーフロー管を前記アクチュエータが上下移動させる点にある。
【0009】
本構成であれば、オーバーフロー管とこれを上下移動させるアクチュエータとで構成された非常に簡単でメンテナンスの容易な構造の液面調節機構が得られる。
【0010】
本発明の他の特徴構成は、前記オーバーフロー管は前記現像処理槽の上部に連通形成された補助槽の底面に挿通支持されており、前記アクチュエータは、前記底面より下方に突出した前記オーバーフロー管の部位に設けられた被操作部と係合したカムと、前記カムを回動操作するモータとからなる点にある。
【0011】
本構成であれば、カムとモータとからなるアクチュエータを補助槽の底面の下方に配置できるので、現像処理槽に貯留された処理液から発生する蒸気等の気体からアクチュエータを簡単に保護することができる。
【0012】
本発明の他の特徴構成は、前記流入口の高さが予め設定された上限値と下限値の間を所定の周期で往復移動するように、前記アクチュエータを駆動制御する制御装置が設けられている点にある。
【0013】
本構成であれば、流入口の高さが一定周期で自動的に往復変移するので、処理液の液面の位置が時間の経過と共に変化することとなり、現像処理槽の側壁内面或いは処理ラックに対する結晶の付着箇所を上下方向に延びた一定の領域内で均等に分散させることができ、非常に狭い限定された箇所に多量の結晶が付着して厚く大きな結晶集合体が形成される傾向を抑制することができる。結晶を取り除く作業を流入口の高さが何回往復した時点で実施するかは、ユーザーが結晶の取り除き易さ加減、及び、所望の連続稼働時間を考慮して、適宜決定すれば良い。また、どの位の上下長さの領域で結晶を分散させるか、及び、どの位の時間周期で流入口の高さを往復させるかを、ユーザーが自分に都合の良いクリーニングサイクルと合わせて適宜に設定することも可能である。
【0014】
本発明の他の特徴構成は、所定の時間間隔で前記流入口の高さが次第に上昇するように前記アクチュエータを駆動制御する制御装置が設けられている点にある。
【0015】
本構成であれば、流入口の高さが次第に上昇することによって、処理液の液面の位置が時間の経過と共に変化するので、結晶の付着箇所を上下方向に分散させることで、非常に狭い限定された箇所に多量の結晶が付着して厚く大きな結晶集合体が形成される傾向を抑制することができる。しかも、流入口の高さが次第に上昇することによって、処理液の液位が次第に上昇するので、現像処理槽の側壁内面或いは処理ラックに既に固着している結晶が処理液の液面下に沈み、その結晶の少なくとも一部が処理液中に少しずつ再溶解する。その結果、現像処理槽或いは処理ラックに固着している結晶の集合体が小さくなるので、これらの結晶を取り除くべき頻度が少なくて済み、且つ、結晶を機械的に取り除く作業が楽になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下に本発明による最良の実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明による感光材料処理装置の一例としての写真プリント装置の外観図である。この写真プリント装置は、デジタルミニラボとも称せられるものであり、現像済み写真フィルム2aやデジタルカメラ用メモリカード2bなどの画像入力メディアから取り込んだ撮影画像を処理してプリントデータの生成・転送などを行う操作ステーション1Aと、操作ステーション1Aから転送されたプリントデータに基づいて、感光材料としての印画紙Pに対して露光処理と現像処理とを行うプリントステーション1Bとによって構成されている。尚、以下では、このプリントステーション1Bに備えられた現像処理装置、すなわち露光処理済みの印画紙を現像処理するペーパープロセッサを本発明による感光材料処理装置として記載するが、本発明による感光材料処理装置は露光済みの写真フィルムを現像処理するフィルムプロセッサにも適用可能である。
【0017】
図1に戻ると、操作ステーション1Aのデスク状コンソールの上部位置には、フィルムキャリア2cに装入された写真フィルム2aの撮影画像コマから画像データを取得するフィルムスキャナ21が配置されている。また、デジタルカメラ等に装着される撮影画像記録媒体2bとして用いられている各種半導体メモリやCD−Rなどから画像データとしての撮影画像を取得するメディアリーダ22が、この写真プリント装置のコントローラ20として機能する汎用パソコンに組み込まれている。コントローラ20には、さらに各種情報を表示するモニター23、各種設定や調整を行う際に用いる操作入力部として利用されるキーボード24やポインティングデバイスとしてのマウス25も接続されている。
【0018】
図2に示すように、プリントステーション1Bは、主に露光部3と現像処理部4とで構成されている。露光部3は、2つの印画紙マガジン10に納めた印画紙ロールのいずれか一方から印画紙Pを引き出すアドバンスローラ11、引き出された印画紙Pを必要なプリントサイズに切断するカッター12、切断された印画紙Pの裏面に色補正情報やコマ番号などのプリント処理情報をプリントするバックプリント部13、及び、印画紙Pの感光面にプリントデータに基づく画像の露光処理を行う露光エンジン14を有する。
【0019】
現像処理部4には、この露光後の印画紙Pを現像処理するための処理液が貯留された複数の現像処理槽が設けられている。現像処理された印画紙Pは、乾燥部5Bで乾燥処理を施された後、装置上部の横送りコンベア15からソータ16に送られ、写真プリントPとして、ソータ16の複数のトレイにオーダ単位で仕分けられた状態で集積される(図1を参照)。
【0020】
プリントステーション1Bには、印画紙Pを搬送する印画紙搬送機構として、印画紙Pを露光する露光部3の領域に配置される露光搬送ライン17、及び、露光された印画紙Pを現像処理する現像処理部4の領域に配置される現像搬送ライン18が設けられている。露光搬送ライン17には、露光エンジン14の露光ポイントの前後に配置されたチャッカー式印画紙搬送機構17aや露光搬送ローラユニット17bを含む複数の挟持搬送ローラ対が設けられている。
【0021】
ここで用いられる露光エンジン14は、レーザ露光エンジンであり、副走査方向に搬送される印画紙Pの感光面に、主走査方向に沿って操作ステーション1Aから転送されたプリントデータに基づいてR(赤)、G(緑)、B(青)の3原色のレーザビームの照射を行うライン走査型記録ヘッドを有する。プリント露光方式としては、このレーザビーム方式以外にも、PLZTシャッター方式、液晶シャッター方式、蛍光ビーム方式、DMD(デジタルマイクロミラーデバイス)方式などが知られており、露光仕様に応じて適宜選択することができる。
【0022】
現像処理部4は、処理槽部5Aと乾燥部5Bとからなる。処理槽部5Aは、互いに隔壁30によって仕切られた複数の処理槽を備え、発色現像液を収容する発色現像槽31、漂白定着液を収容する漂白定着槽32、及び、安定液を収容する4つの洗浄槽33を有する。乾燥部5Bは、現像処理された印画紙Pを乾燥するための温風ブロア54を備えている。
【0023】
(処理槽部5Aの詳細)
現像搬送ライン18には、処理槽内で印画紙Pを往復搬送するUターン搬送機構6が備えられる。Uターン搬送機構6は、印画紙Pを駆動ローラによって処理槽の深さ方向に送り込むとともに各処理槽の底部で180°Uターンさせて再び液面に向かわせる液中ラック60と、互いに隣接する処理槽どうしを跨ぐように処理槽外つまり液面上で印画紙Pを搬送する液外ラック61とで構成されている。
【0024】
液外ラック61は、露光部3から送られてきた印画紙Pを発色現像槽31に送り込む導入ラック61a、発色現像槽31から引き上げた印画紙Pを漂白定着槽32に送り込む第1クロスオーバラック61b、漂白定着槽32から引き上げた印画紙Pを第1洗浄槽33aに送り込む第2クロスオーバラック61c、第1洗浄槽33aから引き上げた印画紙Pを第2洗浄槽33bに送り込む第3クロスオーバラック61d、第2洗浄槽33bから引き上げた印画紙Pを第3洗浄槽33cに送り込む第4クロスオーバラック61e、第3洗浄槽33cから引き上げた印画紙Pを第4洗浄槽33dに送り込む第5クロスオーバラック61f、及び、第4洗浄槽33dから引き上げた印画紙Pを絞りながら乾燥部5Bに送るスクイズラック61gから構成されている。
【0025】
図3に示すように、洗浄槽33を構成する第1洗浄槽33a、第2洗浄槽33b、第3洗浄槽33c、及び、第4洗浄槽33dは、後述する補充用の処理液が最も下流側の第4洗浄槽33dにのみ供給され、余分な量の処理液は隔壁30に形成された切り欠き30aを介して、隣接する上流側の洗浄槽33に流れ出すカスケード状に接続されている。したがって、最も上流側の第1洗浄槽33aに供給された印画紙Pは、最終の第4洗浄槽33dに向かって一つの槽から次の槽に移る間に、次第により新鮮で活性度の高い処理液と接することになる。
【0026】
図4に示すように、各処理槽31,32,33の一方の側方上部には、温調槽としての機能を備えた比較的浅いサブタンク34が各処理槽と連通形成されている。また、サブタンク34と各処理槽31,32,33の底部とは循環流路70によって接続されており、この循環流路70の途中には循環ポンプ70Pが介装されている。
サブタンク34には、現像液を加熱するヒータ71、その現像液の温度を検出する温度センサ72、現像液の液面レベルが不測の事態によって下方基準レベルL0よりも下の異常低下した状態を検出するフロートセンサ73、そして現像液を濾過するフィルタ74が備えられている。ヒータ71は、温度センサ72の検出値を用いたフィードバックにより現像液の温度を一定値に保持するように制御される。
【0027】
また、各サブタンク34には、処理液の活性度を一定に保つために適時処理液を補充する処理液補充装置80A、及び、蒸発によって失われる水を補充する水補充装置80Bが接続されている。
処理液補充装置80Aによる処理液の補充は、原則的に現像処理部4における処理量すなわち処理される印画紙Pの延べ面積に応じてコントローラ20によって制御される。また、水補充装置80Bによる水の補充は、設定された処理温度などに応じて同様にコントローラ20によって制御される。
【0028】
円筒状を呈したフィルタ74の中心には、多数のスリットを設けたパイプ75が差し込まれており、濾過された液がこのスリットを通り抜け、パイプ75内を流れる。このパイプ75の下端部は循環流路70と接続されている。したがって、各処理槽31,32,33の上部から、サブタンク34、フィルタ74、循環ポンプ70Pを備えた循環流路70を経て、再び元の処理槽31,32,33の底部に至る循環ラインが形成され、これにより処理槽31,32,33内で現像液の循環が行われる。但し、処理液補充装置80A及び水補充装置80Bによる補充の対象は、発色現像槽31のサブタンク34と、漂白定着槽32のサブタンク34と、第4洗浄槽33dのサブタンク34とに限られており、第4洗浄槽33dから上流側に向かって互いにカスケード接続された第1から第3の洗浄槽33a,33b,33cのサブタンク34への直接的な補充は行われない。
【0029】
(液位調節機構43)
図4と図5に示すように、発色現像槽31、漂白定着槽32、及び、第1洗浄槽33aの他方の側方上部には、サブタンク34よりも更に浅い液位制御補助槽36(補助槽の一例)が連通形成されており、この液位制御補助槽36には、所定の液位を越える処理液を処理槽外にオーバーフローさせて廃液タンク45に排出するためのオーバーフロー管38が設けてある。
そして、本発明による写真プリント装置は、発色現像槽31、漂白定着槽32、及び、第1洗浄槽33aにおける各処理液の液位を随意に変移させることの可能な液位調節機構43を液位制御補助槽36に備えている。液位調節機構43は、オーバーフロー管38の流入口を各処理槽に対して上下移動させるアクチュエータを備え、この流入口の上下移動によって液位が変移される。
【0030】
より具体的には、図5に示すように、液位制御補助槽36の底部に一つの貫通孔36aが形成されており、この貫通孔36aの内部に円筒状のオーバーフロー管38が上下方向に摺動自在に挿通支持されている。貫通孔36aの周囲の液位制御補助槽36の底部の上面付近と下面付近には、オーバーフロー管38と液位制御補助槽36の底部との間から処理液が漏れ出すのを防止するシール手段としてOリング39が介装されている。
【0031】
オーバーフロー管38の上端は水平に対して約45°の角度で斜めに切断された端面を備え、この端面に形成された楕円形の開口部の下端付近は流入口38aを構成しており、この流入口38aのレベルを越える処理液はオーバーフロー管38を介して処理槽外にオーバーフローする。液位制御補助槽36の底部から下方に突出したオーバーフロー管38の一部には円板状の操作フランジ38b(被操作部の一例)が固着されており、この操作フランジ38bの更に下方に設けられたホース連結部38cに廃液ホース42が接続されている。また、図3に示すように、液位制御補助槽36の底部の下面または各処理槽31,32,33aの側面には、ステッピングモータM1(アクチュエータの一例)が設けられており、このステッピングモータM1の水平な出力軸には円板状の偏心カム40が固定されている。また、液位制御補助槽36の底部とオーバーフロー管38の操作フランジ38bとの間には、操作フランジ38bを偏心カム40に押し付ける付勢手段としての圧縮コイルばね41がオーバーフロー管38の本体に外嵌配置されている。
【0032】
そこで、ステッピングモータM1を駆動制御して偏心カム40の回転位相を制御することで、オーバーフロー管38の流入口38aを変位させ、各処理槽31,32,33aにおける処理液の液位を変移させることができる。
尚、図4に示すように、廃液ホース42の他端は廃液タンク45に接続されているが、廃液ホース42の途中にはオーバーフロー管38から流入して廃液タンク45に排出される廃液の量を検出する流量計46が介装されている。
【0033】
コントローラ20は、図5に例示するように、流入口38aの高さが、図5(a)に示される第1保持液位L1から図5(b)に示される第2保持液位L2に向かって所定の時間間隔で次第に上昇するように、ステッピングモータM1を駆動制御する。これによって、図5(b)に示すように、各処理槽31,32,33の隔壁30の内面などに対する結晶Cの付着量が減少する。尚、第1保持液位L1は各処理槽の下方基準レベルL0よりも十分上方に設定されている。第1保持液位L1と第2保持液位L2の位置はオペレータがモニター23に表示される専用画面を見ながらキーボード24を操作することで処理槽毎に設定変更することができる。
【0034】
発色現像槽31を例に取ると、写真プリント装置を使用する事業所における通常の一日の処理時間(例えば10時間)で、第1保持液位L1から第2保持液位L2に向かって連続的に上昇するように設定することが考えられる。しかし、そのような比較的短い期間ではなく、10日或いは30日などの長い期間で、第1保持液位L1から第2保持液位L2に向かって連続的に上昇するように設定しても良い。第1保持液位L1と第2保持液位L2の間のレベル差は、例えば2〜5mmの範囲内から、使用する処理液によって左右される結晶の付着形態、及び、処理液の印画紙Pに対する処理能力へ液位の値が与える影響度合いなどを考慮して適宜設定すれば良い。他の処理槽、すなわち漂白定着槽32及び第1洗浄槽33aについても、第1保持液位L1と第2保持液位L2の間のレベル差は例えば2〜15mmの範囲内から発色現像槽31と同様の要領で適宜設定すれば良い。
【0035】
尚、コントローラ20は、処理液補充装置80A及び水補充装置80Bによる処理液または水の補充量を(現像処理部4における処理量および設定された処理温度に応じて)制御する際、上記の液位調節機構43によって次第に上昇する液位を考慮して制御する。そして、オーバーフロー管38からの廃液量を廃液ホース42に介装された流量計46によって監視し、廃液量が所定の基準値よりも多い場合には補充量を制限し、逆に一定時間を超えた期間にわたって廃液が排出されない場合には補充量を増やす制御を行う。
【0036】
〔別実施形態〕
〈1〉流入口38aの高さが次第に上昇するように制御するのではなく、流入口38aの高さが予め設定された上限値と下限値の間を所定の周期で繰り返し往復変移するようにコントローラ20によって制御させても良い。
【0037】
〈2〉図6(a)に示された液位調節機構143は、液位制御補助槽36の底部の貫通孔36aに樹脂熔接などで内嵌固定された外筒部材50と、外筒部材50の内面に回転可能に摺接支持された内筒部材51とを備え、外筒部材50には上下に延びた矩形窓状の固定流入口50aが切り欠き形成されており、図6(b)に示すように、内筒部材51の上端は水平に対して約45°の角度で斜めに切断された端面51aを備え、この端面51aに形成された楕円形の開口部の略全周が可動流入口138aを構成している。また、液位制御補助槽36の底部から下方に突出した内筒部材51の下端部付近には円形のギヤ51bが形成されている。他方、液位制御補助槽36の底部の下面または各処理槽31,32,33aの側面には、ステッピングモータM2(アクチュエータの一例)が設けられており、このステッピングモータM2の鉛直な出力軸には、ギヤ51bと噛合するピニオンギヤ53が取り付けられている。そこで、ステッピングモータM2を駆動制御すると、ピニオンギヤ53を介して、外筒部材50の固定流入口50aに対する内筒部材51の回転位相が制御され、矩形窓状の固定流入口50aと一致する可動流入口138aの実質的な高さが調整される。矩形窓状の固定流入口50aと一致する可動流入口138aのレベルを越えた処理液が、内筒部材51及び廃液ホース42を介してオーバーフローするので、各処理槽31,32,33aの液位を自在に変移させることができる。尚、内筒部材51と廃液ホース42との間に両部材の相対回転を可能にする回転自在継手(不図示)を介装しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明による感光材料処理装置の一例としての写真プリント装置を示す斜視図
【図2】図1の写真プリント装置に設けられたプリントステーション1Bの構成図
【図3】図2のプリントステーション1Bに設けられた処理槽部5Aの構成図
【図4】処理槽に設けられたサブタンク34と液位制御補助槽36の横断面を示す説明図
【図5】液位調節機構を示す横断面図
【図6】別実施例による液位調節機構を示す横断面図
【図7】従来技術によるオーバーフロー管を示す略図
【符号の説明】
【0039】
P 印画紙
L0 下方基準レベル
L1 第1保持液位
L2 第2保持液位
M1 ステッピングモータ(アクチュエータ)
1A 操作ステーション
1B プリントステーション
3 露光部
4 現像処理部
5A 処理槽部
5B 乾燥部
6 Uターン搬送機構
10 印画紙マガジン
14 露光エンジン
20 コントローラ
21 フィルムスキャナ
30 隔壁
30a 切り欠き
31 発色現像槽
32 漂白定着槽
33 洗浄槽
34 サブタンク
36 液位制御補助槽(補助槽)
38 オーバーフロー管
38a 流入口
38b 操作フランジ(被操作部)
40 偏心カム
41 圧縮コイルばね
42 廃液ホース
43 液位調節機構
45 廃液タンク
46 流量計
60 液中ラック
61 液外ラック
70 循環流路
70P 循環ポンプ
71 ヒータ
72 温度センサ
73 フロートセンサ
80A 処理液補充装置
80B 水補充装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
感光材料を現像処理するための処理液が貯留された現像処理槽と、前記現像処理槽での感光材料の処理操作に応じて前記現像処理槽に処理液を補充する補充機構とを備え、所定の液位を越える前記処理液を前記現像処理槽外にオーバーフローさせるオーバーフロー管が前記現像処理槽に設けてある感光材料処理装置であって、
前記オーバーフロー管の流入口をアクチュエータによって移動させることで前記液位を変移させる液位調節機構が設けられている感光材料処理装置。
【請求項2】
上下に変位自在に支持された前記オーバーフロー管を前記アクチュエータが上下移動させる請求項1に記載の感光材料処理装置。
【請求項3】
前記オーバーフロー管は前記現像処理槽の上部に連通形成された補助槽の底面に挿通支持されており、前記アクチュエータは、前記底面より下方に突出した前記オーバーフロー管の部位に設けられた被操作部と係合したカムと、前記カムを回動操作するモータとからなる請求項2に記載の感光材料処理装置。
【請求項4】
前記流入口の高さが予め設定された上限値と下限値の間を所定の周期で往復移動するように、前記アクチュエータを駆動制御する制御装置が設けられている請求項1から3のいずれか一項に記載の感光材料処理装置。
【請求項5】
所定の時間間隔で前記流入口の高さが予め設定された下限値から上限値に向かって次第に上昇するように、前記アクチュエータを駆動制御する制御装置が設けられている請求項1から3のいずれか一項に記載の感光材料処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−240846(P2007−240846A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−62741(P2006−62741)
【出願日】平成18年3月8日(2006.3.8)
【出願人】(000135313)ノーリツ鋼機株式会社 (1,824)
【Fターム(参考)】