説明

感熱感圧複写式配送伝票

【課題】同一の記入欄に、感熱複写による記録と、感圧複写による記録の両方を行うことができる配送伝票を提供する。
【解決手段】表面に感熱発色層を有し、裏面に感熱感圧記録層を有する第1の基材シート1と、第2の基材シート2と、裏面に感圧接着剤層及びその上に貼着された剥離紙を備えた第3の基材シート3を備える。第1の基材シートの感熱感圧記録層と第2の基材シートの一面が対向するとともに、第2の基材シートの他面と第3の基材シートの表面が対向するように配置され、かつそれらの対向する一部分において糊剤により接着される。第1の基材シートにおける糊剤によって接着されない部分は送り状票4として形成され、第2の基材シートにおける糊剤によって接着されない部分は回収票5として形成され、送り状票および回収票は互いに重なり合うように配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サーマルプリンタによる感熱複写と、ボールペン等による感圧複写の両方が可能な配送伝票に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の配送伝票として、例えば、ボールペン等によって必要な情報の記入が可能な感圧複写方式のものと、サーマルプリンタによる感熱記録によって感熱複写が可能な配送伝票が知られている。
【0003】
そして、感圧複写方式の配送伝票によれば、必要な配送情報が、ボールペン等を用いて手書きによって記入されるので、配送作業の途中で何らかの付加情報の書き込みが必要となった場合に、簡単に伝票に記入することができる。しかし、その一方で、一度に大量の荷物をやりとりする大口の顧客の場合には、配送情報の伝票への書き込みに手間がかかるという問題を有していた。
【0004】
また、感熱複写式の配送伝票によれば、予めコンピュータ入力された配送情報が、サーマルプリンタを用いて伝票の該当欄にプリントアウトされるので、感圧複写式配送伝票の場合に比べると、伝票への配送情報の書き込みを非常に効率的に行うことができ、さらには、これらの情報をバーコード化して伝票に記入することができる。しかし、感熱複写式の配送伝票の場合には、ボールペン等による手書き文字等は殆ど転写されず、たとえ転写されても非常に薄い色でしか表示されず、読み取りにくく、よって、一旦プリントアウトされた文字等を後から修正し、あるいは付加情報を後から伝票に書き入れる作業が非常に面倒であるという問題があった。
【0005】
このため、従来、感圧複写と感熱複写の両方を行うことができる配送伝票が提案されている(特許文献1参照)。しかし、この配送伝票は、単に、従来の感熱記録層と感圧記録層を伝票の別々の領域に独立に備えたものにすぎず、したがって、依然として、伝票の感熱記録層が設けられた記入欄には熱転写による文字等が、感圧記録層が設けられた記入欄にはボールペン等による手書き文字等が転写できるだけであり、使い勝手が悪かった。
【特許文献1】特開2002−211168号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明の課題は、同一の記入欄に、感熱複写による記録と、感圧複写による記録の両方を行うことができる配送伝票を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明は、表面に感熱発色層を有し、裏面に感熱感圧記録層を有する第1の基材シートと、第2の基材シートと、裏面に感圧接着剤層およびその上に貼着された剥離紙を備えた第3の基材シートとを有し、前記第1の基材シートの感熱感圧記録層と前記第2の基材シートの一面が互いに対向するとともに、前記第2の基材シートの他面と前記第3の基材シートの表面が互いに対向するように配置され、かつそれらの対向する一部分において糊剤により接着され、前記第1の基材シートにおける前記糊剤によって接着されない部分は送り状票として形成され、その表面に送り状欄が印刷され、前記第2の基材シートにおける前記糊剤によって接着されない部分は回収票として形成され、その表面に回収票欄が印刷され、前記送り状票および前記回収票は、互いに重なり合うように配置されていることを特徴とする感熱感圧複写式配送伝票を構成したものである。
【0008】
上記構成において、好ましくは、前記感熱感圧記録層は、少なくとも前記第1の基材シートにおける送り状票の裏面に備えられている。
また好ましくは、前記感熱感圧記録層は、前記感熱感圧転写インクを塗布したものからなり、前記感熱感圧転写インクは、45〜50重量%の着色剤と、45〜50重量%のワックスと、1重量%以下の補助剤の混合物からなっている。
【0009】
さらに好ましくは、前記着色剤は、30〜45重量%の酸化チタンと、5重量%以下のカーボンブラックと、15重量%以下の油溶性染料の混合物からなり、前記ワックスは、30〜40重量%の石油系ワックスと、5重量%以下の植物系ワックスと、10〜25重量%の合成ワックスの混合物からなり、前記補助剤は、5重量%以下の滑剤と、5重量%以下の石油系樹脂と、1重量%以下の分散剤の混合物からなっている。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、配送伝票の転写領域に感熱感熱感圧記録層を設け、感熱複写による記録と、感圧複写による記録を同時に行うことができるようにしたので、予めコンピュータ入力された配送情報をサーマルプリンタを用いて配送伝票に自動的に記入し、またバーコード化して記入することができるとともに、それらの記入された情報のボールペン等による修正および付加情報の書き込みが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して本発明の好ましい実施例について説明する。図1は、本発明の1実施例による感熱感圧複写式配送伝票の斜視図であり、図2は、図1の配送伝票の平面図であり、(A)は正面から見たもの、(B)は裏面から見たものである。また、図3は、図1の配送伝票の送り状票をめくった状態の平面図であり、図4は、図1の配送伝票の側断面図であり、送り状票および回収票(到着原票)および第3の基材シートの層構造を説明した図である。
【0012】
図1〜図4を参照して、本発明による感熱感圧複写式配送伝票は、表面に感熱発色層aを有し、裏面に感熱感圧記録層bを有する第1の基材シート1と、第2の基材シート2と、裏面に感圧接着剤層cおよびその上に貼着された剥離紙dを備えた第3の基材シート3を有している。
感熱発色層aには、公知の適当な発色剤が使用されるが、ロイコ染料が使用されるのが好ましい。また、感熱発色層a中に含有されるバインダーは、従来より感熱紙に使用されているものが用いられる。感圧接着剤および剥離紙としては、公知の適当なものが使用されるが、感圧接着剤としては、クロロブレンゴム系、ニトリルゴム系、スチレン‐ブタジエンゴム系等が使用されるのが好ましく、剥離紙としては、シリコーン加工紙、ワックス加工紙等が使用されるのが好ましい。
【0013】
感熱感圧記録層bは、感熱感圧転写インクを、例えば、フレキソ印刷によって第1の基材シート1の裏面に塗工したものからなっている。感熱感圧転写インクは、45〜50重量%の着色剤と、45〜50重量%のワックスと、1重量%以下の補助剤の混合物からなっている。
【0014】
さらに、着色剤は、30〜45重量%の酸化チタンと、5重量%以下のカーボンブラックと、15重量%以下の油溶性染料の混合物からなっている。酸化チタンは、白色度を高めるために使用されるが、顔料としての分散性が高いため、多量に混入することができる。カーボンブラックは、黒色度を高めるために使用されるが、顔料としての分散性は低い。油溶性染料は、他材料との相溶性が良く、感熱記録された文字等の輪郭をより鮮明にし、読み取りエラーの低下に寄与する。
【0015】
ワックスは、30〜40重量%の石油系ワックスと、5重量%以下の植物系ワックスと、10〜25重量%の合成ワックスの混合物からなっている。石油系ワックスは、融点が60〜65℃と、比較的低融点であり、熱伝導性向上および感圧性付与のために使用される。植物系ワックスは、融点が80〜85℃と高融点であり、形成される塗膜が硬く、汚れにくい。合成ワックスは、形成される塗膜が柔らかく、カーボンブラックの分散性を向上させる効果が高い。
【0016】
補助剤は、5重量%以下の滑剤と、5重量%以下の石油系樹脂と、1重量%以下の分散剤の混合物からなっている。滑剤は、印刷物表面の滑り性を高め、汚れを防止するのに寄与する。石油系樹脂は、印刷紙面への定着性向上およびインクの増粘性付与のために使用される。分散剤は、カーボンブラックの分散性を高めるために使用される。
【0017】
この実施例では、感熱感圧記録層bは2層構造を有している。この場合、第1層を形成する感熱感圧転写インクについて、成分構成は次のとおりである。すなわち、ワックスは、30〜40重量%の石油系ワックスと、5重量%以下の植物系ワックスと、10〜20重量%の合成ワックスの混合物からなり、着色剤は、30〜40重量%の酸化チタンと、5重量%以下のカーボンブラックと、5〜15重量%の油溶性染料の混合物からなり、補助剤は、5重量%以下の滑剤と、5重量%以下の石油系樹脂と、1重量%以下の分散剤の混合物からなっている。また、第2層を形成する感熱感圧転写インクについて、成分構成は次のとおりである。すなわち、ワックスは、30〜40重量%の石油系ワックスと、5重量%以下の植物系ワックスと、15〜25重量%の合成ワックスの混合物からなり、着色剤は、35〜45重量%の酸化チタンと、1重量%以下の油溶性染料の混合物からなり、補助剤は、5重量%以下の滑剤と、5重量%以下の石油系樹脂の混合物からなっている。
【0018】
第2層を形成する感熱感圧転写インクは、カーボンブラックおよび分散剤を含んでいない。さらには、第2層を形成するインクの方が、第1層を形成するインクよりも高い融点を有するように混合成分の比率が設定される。
感熱感圧記録層bをこのような2層構造とすることによって、サーマルプリンタによる印刷時に、文字や記号等の輪郭がより明瞭に印字され、印刷されたバーコード情報の読み取りエラーを防止することができる。
【0019】
こうして、第1の基材シート1の感熱感圧記録層bと第2の基材シート2の一面が互いに対向するとともに、第2の基材シート2の他面と第3の基材シート3の表面が互いに対向するように配置され、かつそれらの対向する一部分において糊剤eにより接着されている。
【0020】
第1の基材シート1における糊剤eによって接着されない部分は送り状票4として形成される。折り状票4の表面には送り状欄7が印刷され、所定の配送情報が記入され得るようになっている。また、第1の基材シート1における糊剤6によって接着された部分の表面には送り状(控)票欄9が印刷され、所定の情報が記入され得るようになっている。
【0021】
第2の基材シート2における糊剤によって接着されない部分は回収票5(この実施例では、「到着原票」と呼ぶ。)として形成される。回収票(到着原票)5の表面には、回収票欄(到着原票欄)8が印刷され、所定の配送情報が記入され得るようになっている。回収票(到着原票)5は、配送確認のため、配送業者によって回収されるものである。
第1の基材シート1の送り状票4および第2の基材シート2の回収票(到着原票)5は、互いに重なり合うように配置されている。
そして、この実施例では、感熱感圧記録層bは、送り状票4の裏面に備えられている。
【0022】
さらに、この実施例では、第1の基材シート1および第3の基材シート3は、同じ幅を有しているが、第1の基材シート1の長さが第3の基材シート3より少し短くなるように形成され、また、第2の基材シート2は、第1の基材シート1より一回り小さくなるように形成される。
こうして、第2の基材シート1の回収票(到着原票)5が、第1の基材シート1の送り状票4および第3の基材シート3の間に挟まれた状態で、第1および第3の基材シート1、3が先端隅角部から簡単に開封可能な状態で袋状に綴じられる。
【0023】
第1の基材シート1および第2の基材シート2には、いずれも、糊剤eにより接着された部分と接着されない部分との境界線に沿って、ミシン目加工6が施されており、それによって、送り状票4および回収票(到着原票)5を手で容易に切り取ることができるようになっている。
【0024】
次に、本発明の感熱感圧複写式配送伝票の使用方法を簡単に述べる。まず最初、サーマルプリンタを用いて、本発明による配送伝票の送り状欄および送り状(控)欄に所定の情報が印刷される。このとき、第1の基材シート1表面の感熱発色層aに熱が加えられると、感熱発色層aが熱に反応して発色するとともに、第1の基材シート1裏面の感圧感圧記録層bの熱に反応した部分が溶融し、それに対向する第2の基材シート2の表面にカーボンブラックが融着することによって印刷および複写がなされる。
【0025】
その後、配送伝票裏面の剥離紙dが剥がされ、伝票が物品に貼り付けられる。
そして、サーマルプリンタによって印刷された文字等の修正がなされる場合や、送り状票欄への付加情報の書き込みが必要な場合には、送り状欄にボールペン等により手書きによる書き込みがなされる。書き込まれた文字等は、感熱感圧記録層bを通じて回収票欄(到着原票欄)に転写される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の1実施例による感熱感圧複写式配送伝票の斜視図である。
【図2】図1の配送伝票の平面図であり、(A)は正面から見たもの、(B)は裏面から見たものである。
【図3】図1の配送伝票の送り状票をめくった状態の平面図である。
【図4】図1の配送伝票の側断面図であり、送り状票および回収票(到着原票)および第3の基材シートの層構造を説明した図である。
【符号の説明】
【0027】
1 第1の基材シート
2 第2の基材シート
3 第3の基材シート
4 送り状票
5 回収票(到着原票)
6 ミシン目加工
7 送り状欄
8 回収票欄(到着原票欄)
9 送り状(控)欄
a 感熱発色層
b 感熱感圧記録層
c 感圧接着剤層
d 剥離紙
e 糊剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に感熱発色層を有し、裏面に感熱感圧記録層を有する第1の基材シートと、第2の基材シートと、裏面に感圧接着剤層およびその上に貼着された剥離紙を備えた第3の基材シートとを有し、
前記第1の基材シートの感熱感圧記録層と前記第2の基材シートの一面が互いに対向するとともに、前記第2の基材シートの他面と前記第3の基材シートの表面が互いに対向するように配置され、かつそれらの対向する一部分において糊剤により接着され、前記第1の基材シートにおける前記糊剤によって接着されない部分は送り状票として形成され、その表面に送り状欄が印刷され、前記第2の基材シートにおける前記糊剤によって接着されない部分は回収票として形成され、その表面に回収票欄が印刷され、前記送り状票および前記回収票は、互いに重なり合うように配置されていることを特徴とする感熱感圧複写式配送伝票。
【請求項2】
前記感熱感圧記録層は、少なくとも前記第1の基材シートにおける送り状票の裏面に備えられていることを特徴とする請求項1に記載の感熱感圧複写式配送伝票。
【請求項3】
前記感熱感圧記録層は、前記感熱感圧転写インクを塗布したものからなり、前記感熱感圧転写インクは、45〜50重量%の着色剤と、45〜50重量%のワックスと、1重量%以下の補助剤の混合物からなっていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の感熱感圧複写式配送伝票。
【請求項4】
前記着色剤は、30〜45重量%の酸化チタンと、5重量%以下のカーボンブラックと、15重量%以下の油溶性染料の混合物からなり、前記ワックスは、30〜40重量%の石油系ワックスと、5重量%以下の植物系ワックスと、10〜25重量%の合成ワックスの混合物からなり、前記補助剤は、5重量%以下の滑剤と、5重量%以下の石油系樹脂と、1重量%以下の分散剤の混合物からなっていることを特徴とする請求項3に記載の感熱感圧複写式配送伝票。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−1058(P2007−1058A)
【公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−181416(P2005−181416)
【出願日】平成17年6月22日(2005.6.22)
【出願人】(593022076)佐川印刷株式会社 (18)
【Fターム(参考)】