説明

感熱記録材料

【課題】優れた発色性と画像部の耐熱保存性を兼ね備えた感熱記録材料を提供する。
【解決手段】無色又は淡色のロイコ染料からなる発色物質と顕色物質とを含有する感熱発色層を支持体上に設けてなる感熱記録材料において、顕色物質がビス(4−アリルオキシフェニル)スルホンと4−アリルオキシ−4'−ヒドロキシジフェニルスルホンとを質量比5:100〜120:100で含有することを特徴とする感熱記録材料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感熱記録材料に関する。さらに詳しくは、本発明は、優れた発色性と画像部の耐熱保存性を兼ね備えた感熱記録材料に関する。
【背景技術】
【0002】
加熱により発色する感熱発色層を支持体上に設けた感熱記録材料は、各種携帯端末などのサーマルプリンター、医療画像プリンター、航空券、乗車券、POSラベルなどに利用されている。これらの感熱記録材料は、通常、感熱発色層に発色物質としての無色又は淡色のロイコ染料と、この発色物質と反応して発色させる顕色物質とを、それぞれを微粉砕して溶媒に分散させ、必要に応じて、発色の効果を高める増感物質を微粉砕した分散液、ワックス、界面活性剤、消泡剤、無機顔料、安定剤などを添加し、水溶性樹脂などの結合剤を加えて、支持体上に塗布し、乾燥して製造される。発色物質を発色させる顕色物質としては、主にフェノール化合物が使用されている。発色の効果を高める増感物質は、主に感熱発色層の熱感度を高めることを目的としており、例えば、パラフィンワックス、アミド類、エステル類、エーテル類などが用いられる。この感熱記録材料には、発色性に優れ、低熱量で高濃度に発色すること、得られた画像の保存性に優れることなどのさまざまな特性が要求されている。特に、電子レンジ加熱食品ラベル、駐車券、配送ラベルなどには耐熱保存性が要求される。
顕色物質は感熱記録材料の要求特性にとって非常に重要な要素であり、発色物質や増感物質などの化合物の性能が著しく優れていても、顕色物質の短所によって、優れた感熱記録材料を得ることができないことがある。例えば、ビスフェノールS(4,4'−ジヒドロキシジフェニルスルホン)は、保存性に優れた顕色物質であるが、増感物質を用いても発色感度向上の効果が十分ではなく、発色性の要求性能を満たすまでには至らない。また、4−アリルオキシ−4'−ヒドロキシジフェニルスルホンは、画像保存性に不十分な点があり、顕色剤としての要求性能が十分満たされているとは言えない(特許文献1)。さらに、4−アリルオキシ−4'−ヒドロキシジフェニルスルホンを主成分として4,4'−ジヒドロキシジフェニルスルホンを併用した顕色物質も開示されているが、この感熱記録材料においても画像保存性の要求性能を十分に満たすまでには至っていない(特許文献2)。
【特許文献1】特開2004−9593号公報
【特許文献2】特開2004−130539号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、優れた発色性と画像部の耐熱保存性を兼ね備えた感熱記録材料を提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、4−アリルオキシ−4'−ヒドロキシジフェニルスルホンを主成分として、ビス(4−アリルオキシフェニル)スルホンを副成分として含む混合物を顕色物質として使用することにより、得られる感熱記録材料は高感度の発色性を維持し、画像部の耐熱保存性が顕著に向上することを見いだし、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、
(1)無色又は淡色のロイコ染料からなる発色物質と顕色物質とを含有する感熱発色層を支持体上に設けてなる感熱記録材料において、顕色物質がビス(4−アリルオキシフェニル)スルホンと4−アリルオキシ−4'−ヒドロキシジフェニルスルホンとを質量比5:100〜120:100で含有することを特徴とする感熱記録材料、及び、
(2)感熱発色層が、さらに増感物質を含有する(1)に記載の感熱記録材料、
を提供するものである。
【発明の効果】
【0005】
本発明の感熱記録材料は、発色性が良好であり、低い印字エネルギーでも濃色に発色するので、携帯端末の小電流、高速印字などに対応することができる。また、画像部の保存性が良好であり、特に耐熱保存性に優れるので、画像が高温環境下におかれても記録された情報を保持することが求められる用途に好適に使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明の感熱記録材料は、無色又は淡色のロイコ染料からなる発色物質と顕色物質とを含有する感熱発色層を支持体上に設けてなる感熱記録材料において、顕色物質がビス(4−アリルオキシフェニル)スルホンと4−アリルオキシ−4'−ヒドロキシジフェニルスルホンとを質量比5:100〜120:100、より好ましくは質量比7:100〜50:100、さらに好ましくは9:100〜25:100で含有する感熱記録材料である。
顕色物質としてビス(4−アリルオキシフェニル)スルホンと4−アリルオキシ−4'−ヒドロキシジフェニルスルホンとを併用することにより、4−アリルオキシ−4'−ヒドロキシジフェニルスルホンのみを使用した場合に比べて、画像部の保存性、特に画像部の耐熱保存性を顕著に向上することができる。また、ビス(4−アリルオキシフェニル)スルホンと4−アリルオキシ−4'−ヒドロキシジフェニルスルホンとの質量比を9:100〜25:100とすることにより、4−アリルオキシ−4'−ヒドロキシジフェニルスルホンのみを使用した場合に比べて、発色性を向上することができる。
ビス(4−アリルオキシフェニル)スルホンと4−アリルオキシ−4'−ヒドロキシジフェニルスルホンとの質量比が5:100未満で、ビス(4−アリルオキシフェニル)スルホンの割合が少ないと、画像部の耐湿保存性と耐熱保存性が低下し、湿熱又は乾熱による画像部の色濃度の低下が大きくなるおそれがある。ビス(4−アリルオキシフェニル)スルホンと4−アリルオキシ−4'−ヒドロキシジフェニルスルホンとの質量比が120:100を超えて、ビス(4−アリルオキシフェニル)スルホンの割合が多いと、発色性が低下して、画像部の色濃度が低下するおそれがある。
【0007】
ビス(4−アリルオキシフェニル)スルホンは、顕色物質としての性能を有せず、また、増感物質としての性能も極めて弱い化合物である。ビス(4−アリルオキシフェニル)スルホンは、一般的に4,4'−ジヒドロキシジフェニルスルホンとハロゲン化アリルとのエーテル化反応で生産され、他方、4−アリルオキシ−4'−ヒドロキシジフェニルスルホンの製造工程でも副成物として生成する。本発明においては、4−アリルオキシ−4'−ヒドロキシジフェニルスルホンにビス(4−アリルオキシフェニル)スルホンを添加して顕色物質とすることができ、あるいは、4−アリルオキシ−4'−ヒドロキシジフェニルスルホンの製造工程で副成物として生成するビス(4−アリルオキシフェニル)スルホンを含む4−アリルオキシ−4'−ヒドロキシジフェニルスルホンを顕色物質として使用することもできる。
本発明においては、ビス(4−アリルオキシフェニル)スルホンと4−アリルオキシ−4'−ヒドロキシジフェニルスルホンの混合物に加えて、さらに他の顕色物質を併用することができる。併用する他の顕色物質としては、例えば、4−イソプロポキシ−4'−ヒドロキシジフェニルスルホン、3,3'−ジアリル−4,4'−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4−ヒドロキシフェニルスルホン酸フェニルエステルなどのヒドロキシフェニルスルホン類、フェニルスルホン酸の誘導体、スルホンアミド尿素化合物などを挙げることができる。本発明において、顕色物質の総含有量は、発色物質100質量部に対して100〜500質量部であることが好ましく、150〜300質量部であることがより好ましい。
【0008】
本発明において、発色物質として用いる無色又は淡色のロイコ染料に特に制限はなく、例えば、フルオラン誘導体、キナゾリン誘導体、フタリド誘導体、トリフェニルメタン誘導体、フェノチアジン誘導体などを挙げることができる。これらのロイコ染料の中で、フルオラン構造を有するロイコ染料は、発色性が良好なので特に好適に用いることができ、例えば、3−イソアミルエチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−(4−メチルフェニル)−N−エチル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジアミルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジブチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−シクロヘキシルメチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオランなどを挙げることができる。これらのロイコ染料は、1種を単独で用いることも、又は、2種以上を組み合わせて用いることもできる。感熱発色層に含有させる発色物質の量は、目的とする感熱記録材料の特性に応じて適宜選択、増減することができる。
本発明の感熱記録材料においては、感熱発色層にさらに増感物質を含有させることが好ましい。用いる増感物質に特に制限はないが、その融点が90〜160℃の範囲にあることが好ましい。このような増感物質としては、例えば、ステアリン酸アミド、1,2−ビスフェノキシエタン、1,2−ビス(m−トリルオキシ)エタン、1,2−ビス(フェノキシメチル)ベンゼン、2−ベンジルオキシナフタレン、シュウ酸ジ(4−メチルベンジル)エステル、4−アセチルビフェニル、N−フェニルトルエンスルホンアミド、トルエンスルホン酸ナフチルエステル、m−テルフェニル、p−ベンジルビフェニル、各種ワックス類、芳香族カルボン酸とアミンとの縮合物、高級直鎖グリコール類、高級ケトン類、ジフェニルスルホン誘導体、ビスフェノールA誘導体、p−ヒドロキシ安息香酸エステル類、フタル酸ジエステル類などを挙げることができる。これらの増感物質は、1種を単独で用いることも、又は、2種以上を組み合わせて用いることもできる。増感物質の量は、顕色物質100質量部に対して40〜400質量部であることが好ましく、70〜200質量部であることがより好ましい。
【0009】
本発明においては、感熱発色層にさらに画像安定化物質を含有させることができる。用いる画像安定化物質に特に制限はなく、例えば、4−ベンジルオキシ−4'−(2−メチルグリシジルオキシ)ジフェニルスルホン、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−シクロヘキシルフェニル)ブタン、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ブタンなどを挙げることができる。これらの画像安定化物質は、1種を単独で用いることも、又は、2種以上を組み合わせて用いることもできる。
本発明の感熱記録材料においては、必要に応じて、感熱発色層に填料を含有させることができる。このような填料としては、例えば、シリカ、炭酸カルシウム、カオリン、珪藻土、タルク、クレー、酸化チタンなどの無機充填剤や、スチレンマイクロボール、ナイロンパウダー、尿素−ホルマリン樹脂フィラー、シリコーン樹脂粒子、セルロース粉などの有機充填剤などを挙げることができる。
本発明においては、必要に応じて、通常の各種感熱記録材料に用いられる公知の添加剤を、感熱発色層に含有させることができる。このような公知の添加剤としては、例えば、滑剤、紫外線吸収剤、耐水化剤、分散剤、消泡剤、酸化防止剤、蛍光染料などを挙げることができる。
【0010】
本発明の感熱記録材料の製造方法に特に制限はなく、例えば、発色物質、顕色物質、増感物質、画像安定化物質及び必要に応じて添加するその他の成分を、適当な結合剤とともに水性媒体などの媒体中に分散させて感熱発色層の塗布液を調製し、この塗布液を支持体上に塗布し、乾燥することにより製造することができる。このとき用いる発色物質、顕色物質及び増感物質を含有する分散液は、発色物質を含有する分散液、顕色物質を含有する分散液、増感物質を含有する分散液をそれぞれ別々に調製したのち、これらの分散液を混合することにより調製することができる。それぞれの分散液中において、発色物質、顕色物質及び増感物質は、微粒子化して分散されていることが望ましいので、これらの分散液の調製には、サンドミル、ボールミルなどの分散機器を用いることが好ましい。
本発明の感熱記録材料に使用する結合剤に特に制限はなく、例えば、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースなどのセルロース誘導体、ポリビニルアルコール類、天然高分子類、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸エステル、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリルアミド、スチレン−マレイン酸共重合物、スチレン−ブタジエン共重合物、ポリアミド樹脂、石油樹脂、テルペン樹脂などを挙げることができる。これらの結合剤は、1種を単独で用いることも、又は、2種以上を組み合わせて用いることもできる。
本発明の感熱記録材料に使用する支持体に特に制限はなく、例えば、中性紙や酸性紙などの紙、合成紙、古紙パルプを用いた再生紙、フィルム、不織布、織布などを挙げることができる。
本発明の感熱記録材料においては、必要に応じて、無機充填剤や有機充填剤などを含む下塗り層を設けることができる。さらに、必要に応じて、感熱発色層の上に、セルロース誘導体、ポリビニルアルコール類などの水溶性樹脂、スチレン−ブタジエン共重合物などの水性エマルジョン樹脂、非水溶性樹脂、又は、これらの樹脂に填料、イソシアネート類、不飽和化合物などのモノマーやオリゴマーと架橋剤を加えて、オーバーコート層を形成することもできる。また、本発明の感熱記録材料は、色調の異なる発色物質と顕色物質とを、それぞれの感熱発色層として多層形成させた多色感熱記録材料とすることもできる。
【実施例】
【0011】
以下に、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によりなんら限定されるものではない。
なお、実施例及び比較例において、感熱記録紙の性能は、次の方法により評価した。
(1)地肌カブリ
実施例及び比較例で作製した感熱記録紙の色濃度を、マクベス濃度計を用いて測定した。数値が小さいほど白く、数値が大きいほど黒く、地肌カブリを生じている。
(2)発色性
作製した感熱記録紙に、感熱印字装置[(株)大倉電機]を用いて、パルス巾3msで、0.14mJ/dotより0.42mJ/dotまで、0.07mJ/dotごとに印字エネルギーを高めて発色を行い、得られた画像の色濃度をマクベス濃度計を用いて測定した。数値が小さいほど画像が薄く、数値が大きいほど画像が濃い。
(3)保存性
作製した感熱記録紙に、感熱印字装置[(株)大倉電機]を用いて印字電圧20V、パルス巾3msで発色させて試験紙とし、発色させた部分(画像部)について以下の保存性試験を行った。
1.耐油性
試験紙に綿実油を一滴垂らし、20℃、65%RHで24時間静置したのち、試験前後の画像部の色濃度を、マクベス濃度計を用いて測定し、試験前後の色濃度差を求めた。
2.耐湿性
試験紙を60℃、80%RHで24時間放置したのち、試験前後の画像部の色濃度を、マクベス濃度計を用いて測定し、試験前後の色濃度差を求めた。
3.耐熱性
試験紙を80℃で24時間放置したのち、試験前後の画像部の色濃度を、マクベス濃度計を用いて測定し、試験前後の色濃度差を求めた。
【0012】
実施例1
3−ジブチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン40g、10質量%ポリビニルアルコール水溶液80g及び水40gを、サンドミルを用いて4時間微粉砕して分散させることにより、発色物質分散液(A液)を調製した。ビス(4−アリルオキシフェニル)スルホンと4−アリルオキシ−4'−ヒドロキシジフェニルスルホンとの質量比が11:100である顕色物質28g、10質量%ポリビニルアルコール水溶液120g及び水52gを、サンドミルを用いて4時間微粉砕して分散させることにより、顕色物質分散液(B液)を調製した。1,2−ビス(フェノキシメチル)ベンゼン28g、10質量%ポリビニルアルコール水溶液120g及び水52gを、サンドミルを用いて4時間微粉砕して分散させることにより、増感物質分散液(C液)を調製した。その後、B液40g、C液40g、10質量%ポリビニルアルコール水溶液13.2g及びカオリン8.4gを、ディスパーを用いて撹拌混合し、D液を調製した。次いで、A液12g及びD液100gを混合して、感熱発色層の塗布液を調製し、坪量65g/m2の上質紙に、乾燥塗布量が約5g/m2となるように塗布したのち、風乾し、カレンダー処理して感熱記録紙を得た。
得られた感熱記録紙の色濃度(地肌カブリ)は0.07であり、発色性試験において、印字エネルギー0.35mJ/dotのとき色濃度0.67となり、印字エネルギー0.49mJ/dotのとき色濃度1.00となった。
画像部の色濃度は、試験前1.05、耐油性試験後0.25、耐湿性試験後0.90、耐熱性試験後1.05であった。
実施例2
B液の調製において、ビス(4−アリルオキシフェニル)スルホンと4−アリルオキシ−4'−ヒドロキシジフェニルスルホンとの質量比が11:100である顕色物質の代わりに、質量比が43:100である顕色物質28gを使用した以外は、実施例1と同様にして感熱記録紙を作製した。
得られた感熱記録紙の色濃度(地肌カブリ)は0.07であり、発色性試験において、印字エネルギー0.35mJ/dotのとき色濃度0.47となり、印字エネルギー0.49mJ/dotのとき色濃度0.82となった。
画像部の色濃度は、試験前0.86、耐油性試験後0.19、耐湿性試験後0.82、耐熱性試験後0.90であった。
実施例3
B液の調製において、ビス(4−アリルオキシフェニル)スルホンと4−アリルオキシ−4'−ヒドロキシジフェニルスルホンとの質量比が11:100である顕色物質の代わりに、質量比が100:100である顕色物質28gを使用した以外は、実施例1と同様にして感熱記録紙を作製した。
得られた感熱記録紙の色濃度(地肌カブリ)は0.07であり、発色性試験において、印字エネルギー0.35mJ/dotのとき色濃度0.44となり、印字エネルギー0.49mJ/dotのとき色濃度0.80となった。
画像部の色濃度は、試験前0.84、耐油性試験後0.18、耐湿性試験後0.62、耐熱性試験後0.84であった。
【0013】
比較例1
B液の調製において、ビス(4−アリルオキシフェニル)スルホンと4−アリルオキシ−4'−ヒドロキシジフェニルスルホンとの質量比が11:100である顕色物質の代わりに、4−アリルオキシ−4'−ヒドロキシジフェニルスルホンのみからなる顕色物質28gを使用した以外は、実施例1と同様にして感熱記録紙を作製した。
得られた感熱記録紙の色濃度(地肌カブリ)は0.07であり、発色性試験において、印字エネルギー0.35mJ/dotのとき色濃度0.65となり、印字エネルギー0.49mJ/dotのとき色濃度1.00となった。
画像部の色濃度は、試験前1.08、耐油性試験後0.26、耐湿性試験後0.82、耐熱性試験後0.74であった。
比較例2
B液の調製において、ビス(4−アリルオキシフェニル)スルホンと4−アリルオキシ−4'−ヒドロキシジフェニルスルホンとの質量比が11:100である顕色物質の代わりに、4,4'−ジヒドロキシジフェニルスルホンからなる顕色物質28gを使用した以外は、実施例1と同様にして感熱記録紙を作製した。
得られた感熱記録紙の色濃度(地肌カブリ)は0.07であり、発色性試験において、印字エネルギー0.35mJ/dotのとき色濃度0.27となり、印字エネルギー0.49mJ/dotのとき色濃度0.62となった。
画像部の色濃度は、試験前0.94、耐油性試験後0.52、耐湿性試験後0.96、耐熱性試験後1.00であった。
実施例1〜3及び比較例1〜2について、地肌カブリ及び発色性試験の結果を第1表に、画像部の保存性試験の結果を第2表に示す。
【0014】
【表1】

【0015】
【表2】

【0016】
第1表に見られるように、地肌カブリについては実施例及び比較例のいずれも差はなかったが、顕色物質としてビス(4−アリルオキシフェニル)スルホンと4−アリルオキシ−4'−ヒドロキシジフェニルスルホンとの質量比11:100の混合物を用いた実施例1の感熱記録紙は、顕色物質として4−アリルオキシ−4'−ヒドロキシジフェニルスルホンのみを用いた比較例1の感熱記録紙に比べて、印字エネルギー0.21〜0.42mJ/dotの範囲で同じ印字エネルギーに対して色濃度が濃く、発色性が優れている。顕色物質中のビス(4−アリルオキシフェニル)スルホンの割合を増した実施例2と実施例3の感熱記録紙は、実施例1の感熱記録紙と比べると発色性は低いが、顕色物質として4,4'−ジヒドロキシジフェニルスルホンを用いた比較例2の感熱記録紙に比べると、同じ印字エネルギーに対して色濃度が濃く、発色性は良好であると言える。
第2表に見られるように、顕色物質としてビス(4−アリルオキシフェニル)スルホンと4−アリルオキシ−4'−ヒドロキシジフェニルスルホンとの混合物を用いた実施例1〜3の感熱記録紙は、耐熱性試験において、色濃度の変化が全く又はほとんどなく、顕色物質として4−アリルオキシ−4'−ヒドロキシジフェニルスルホンのみを用いた比較例1の感熱記録紙と比べると、顕色物質として4−アリルオキシ−4'−ヒドロキシジフェニルスルホンとビス(4−アリルオキシフェニル)スルホンとを併用することにより、画像部の耐熱保存性が著しく向上することが分かる。実施例1〜3の感熱記録紙は、画像部の耐熱保存性に優れるとされている4,4'−ジヒドロキシジフェニルスルホンを顕色物質として用いた比較例2の感熱記録紙よりも、画像部の耐熱保存性が良好である。
比較例1の感熱記録紙と比べると、耐油性試験において、実施例1の感熱記録紙は色濃度の変化は同程度であり、実施例2〜3の感熱記録紙は色濃度の変化が少ない。また、耐湿性試験においては、実施例1〜3の感熱記録紙は、比較例1の感熱記録紙より色濃度の変化が少ない。この結果から、顕色物質としてビス(4−アリルオキシフェニル)スルホンと4−アリルオキシ−4'−ヒドロキシジフェニルスルホンとを併用することにより、4−アリルオキシ−4'−ヒドロキシジフェニルスルホンのみを用いる場合に比べて、耐油保存性と耐湿保存性を改良し得ると言える。
【産業上の利用可能性】
【0017】
本発明の感熱記録材料は、感度が良好で発色性に優れており、低い印字エネルギーでも濃色に発色するので、携帯端末の小電流、高速印字などにも十分に対応することができる。本発明の感熱記録材料は、画像部の保存性が良好であり、特に耐熱保存性に優れるので、画像が高温環境下におかれても記録された情報を保持することが求められる電子レンジ加熱食品ラベル、駐車券、配送ラベルなどの用途に好適に使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無色又は淡色のロイコ染料からなる発色物質と顕色物質とを含有する感熱発色層を支持体上に設けてなる感熱記録材料において、顕色物質がビス(4−アリルオキシフェニル)スルホンと4−アリルオキシ−4'−ヒドロキシジフェニルスルホンとを質量比5:100〜120:100で含有することを特徴とする感熱記録材料。
【請求項2】
感熱発色層が、さらに増感物質を含有する請求項1に記載の感熱記録材料。