説明

成形側溝における溝蓋の固定構造、および成形側溝

【課題】溝蓋の大きさやサイズに応じて締結個所数と締結位置を適宜選択でき、したがって、溝蓋を無駄のない状態で常に適切に締結固定でき、全体として溝蓋のコストを削減できる溝蓋の固定構造を提供する。
【解決手段】開口面に受枠4を設けた成形側溝1に、格子状の溝蓋2を嵌め込み装着し、溝蓋2を締結構造で受枠4に分離不能に固定する。成形側溝1の受枠4の蓋受壁6の下面に沿って掛止溝8を形成する。締結構造は、掛止溝8に掛止装着される第1締結ベース15と、第1締結ベース15に対応して溝蓋2に設けられる第2締結ベース16と、両締結ベース15・16を締結するねじ体17とで構成する。ねじ体17を受け止める第2締結ベース16は、メンインバー11およびクロスバー12で囲まれる空所に臨む状態で溝蓋2に配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート成形された側溝(以下、単に成形側溝という。)に対する溝蓋の固定構造と、溝蓋を固定するのに好適な成形側溝に関する。
【背景技術】
【0002】
成形側溝において、溝蓋(グレーチング)の跳ね上がりや盗難を防ぐ目的で、溝蓋を受枠にボルトやナットで締結固定することは公知である。例えば、特許文献1では、受枠に固定したボルトを利用して溝蓋をナットで固定している。また、特許文献2では、受枠に固定したナットを利用して溝蓋をボルトで固定している。いずれの場合にも、グレーチングの四隅にボルトやナットを収容する四角枠状の締結部を設け、その内底(締結壁)にボルト挿通穴を設けている。
【0003】
本発明に関して、受枠の枠受壁を掛止対象にして溝蓋を締結することは、本出願人の提案に係る特許文献3に公知である。そこでは、溝蓋に設けたフックを受枠の枠受壁の下面に係合して、溝蓋を成形側溝に固定している。枠受壁の下面には、フックの出入りを許す係合空間が確保してあり、この係合空間は、水平壁の下面に固定した箱状の金具を受枠とともに成形側溝の成形時にインサートして形成してある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】登録実用新案第3135401号公報(段落番号0017、図3)
【特許文献2】特開2005−139782号公報(段落番号0018、図2)
【特許文献3】特開2005−042468号公報(段落番号0026、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1、2の溝蓋の固定構造においては、左右の受枠の前後位置にボルトやナットを溶接する関係で、溝蓋の締結位置が四隅の近傍に固定化される。そのため、常に4組のボルト、ナットが必要となり、とくに小形の成形側溝において無駄がある。さらに、溝蓋の四隅に締結部を設ける必要があるので、溝蓋の加工コストが嵩む不利もある。加えて、溝蓋を成形側溝に対して常に対応する関係で装着する必要があり、例えば、成形側溝の半分だけを切断して使用するような場合に溝蓋を受枠に固定できない不利もある。
【0006】
施工現場に搬入した溝蓋を受枠に装填するまでの間、ボルトやナットのねじ山やねじ穴を保護するのに余分な手間が必要となる。また、車輪、杖、ハイヒールのヒール部などが締結部へ落ち込むのを防ぐために、別途カバーを設けて締結部を塞ぐ必要があるなど、全体として溝蓋のコストが高く付く。
【0007】
その点、特許文献3の溝蓋の固定構造によれば、溝蓋をフックを介して受枠に係合するので、ねじ山やねじ穴を保護する必要がなく、さらに締結部や、締結部を閉塞するためのカバーを省略できる利点もある。また、溝蓋と受枠の位置合わせをさほど厳密に行なう必要もない。しかし、ばねで係合付勢されたフックで溝蓋と受枠の装着状態を維持するので、溝蓋の一部に外力が作用するような場合に、溝蓋の一部が受枠から跳ね上がるおそれがある。さらに、跳ね上がった溝蓋が受枠内へ復帰する際に騒音を発生する。
【0008】
本発明の目的は、溝蓋の大きさやサイズに応じて締結個所数と締結位置を適宜選択でき、したがって、溝蓋を無駄のない状態で常に適切に締結固定でき、全体として溝蓋のコストを削減できる成形側溝における溝蓋の固定構造を提供することにある。
本発明の目的は、溝蓋の受枠に対する締結位置の自由度が高く、したがって、隣接する成形側溝を跨ぐ状態や、あるいは成形側溝の一部を切断して使用するような場合でも、溝蓋を受枠に対して確実に固定できる溝蓋の固定構造を提供することにある。
本発明の目的は、溝蓋を無駄のない状態で常に適切に締結固定できる成形側溝を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る溝蓋の固定構造は、開口面に受枠4が設けられた成形側溝1に格子状の溝蓋2が嵌め込み装着してある。受枠4の蓋受壁6の下面に沿う状態で成形側溝1に掛止凹部8が形成してある。固定構造は、掛止凹部8に掛止装着される第1締結ベース15と、第1締結ベース15に対応して溝蓋2に設けられる第2締結ベース16と、両締結ベース15・16を締結するねじ体17とで構成する。ねじ体17を受け止める第2締結ベース16は、メンインバー11およびクロスバー12で囲まれる空所に臨む状態で溝蓋2に配置する。
【0010】
第1締結ベース15に、ねじ体17を構成するボルト27とナット21のいずれか一方を設け、さらに、メインバー11に接当して第1締結ベース15の回動を規制する回り止め突起22を設ける。
【0011】
第1締結ベース15の上下両面に、メインバー11の隣接ピッチが小さな溝蓋2に適合する回り止め突起22と、インバー11の隣接ピッチが大きな溝蓋2に適合する回り止め突起23を固定する。以て、第1締結ベース15を両溝蓋2に共通して使用できるようにする。
【0012】
成形側溝1の対向壁のそれぞれに、受枠4と掛止凹部8とを形成する。第1締結ベース15が両受枠4・4の間の溝空間を左右に横断する状態で、第1締結ベース15の両側端の掛止部24を一対の掛止凹部8・8に差し込み装填する。
【0013】
第2締結ベース16は、ボルト挿通穴26を備えた平板状の金属板材で形成する。第2締結ベース16を隣接するメインバー11・11の間に配置して、各メインバー11・11に溶接する。
【0014】
第2締結ベース16は、ボルト挿通穴26を備えた座壁35と、座壁35の対向辺部から上向きに折り曲げられる逆J字状のクリップ壁36とを備えたプレス金具で形成する。第2締結ベース16は、隣接するメインバー11の上端に掛止装着する。以て、第1締結ベース15と第2締結ベース16の締結位置を、掛止凹部8と溝蓋2の外形の範囲内で変更できるようにする。
【0015】
本発明に係る成形側溝は、開口面に設けた受枠4に格子状の溝蓋2が嵌め込み装着される。成形側溝1は、受枠4および、その蓋受枠6の長手方向に沿って装着した埋設体30を、成形型の成形空間の内部にインサートして形成する。離型した成形側溝1から埋設体30を分離して、蓋受壁6の下面に沿って掛止凹部8を形成する。以て、掛止凹部8掛止装着される第1締結ベース15と、第1締結ベース15に対応して溝蓋2に設けられる第2締結ベース16と、両締結ベース15・16を締結するねじ体17とで、溝蓋2を成形側溝1に固定できるようにする。
【0016】
成形側溝1の対向壁のそれぞれに、受枠4と掛止凹部8とを形成する。第1締結ベース16が両受枠4・4の間の溝空間を左右に横断する状態で、第1締結ベース15の両側端の掛止部24を一対の掛止凹部8・8に差し込み装填する。
【0017】
埋設体30は、天然ゴム、合成ゴム、樹脂系エラストマーのいずれかで形成し、蓋受壁6の成形空間側の壁面に易剥離性の接着剤で貼り付ける。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る溝蓋の固定構造においては、受枠4の蓋受壁6の下面に沿って掛止凹部8を形成し、掛止凹部8に掛止装着される第1締結ベース15と、溝蓋2に設けられる第2締結ベース16とをねじ体17で締結することにより、溝蓋2を成形側溝1に固定できるようにした。このように、第1締結ベース15を掛止凹部8に掛止装着すると、第1締結ベース15の掛止凹部8に対する掛止位置を変更することで、溝蓋2の締結位置を変更することができ、さらに、両締結ベース15・16の使用個数を選定することにより、溝蓋2の締結個所数を自由に設定することができる。したがって、本発明の溝蓋の固定構造によれば、溝蓋2の大きさやサイズに応じて締結個所数と締結位置を適宜選択して、溝蓋2を無駄のない状態で適切に締結固定できる。
【0019】
また、溝蓋2の締結位置の自由度が高いので、隣接する成形側溝1を跨ぐ状態で、あるいは成形側溝1の一部を切断して使用するような場合でも、溝蓋2を確実に固定できる。さらに、溝蓋2や受枠4とは別に設けた締結ベースを使用して溝蓋2を締結するので、従来の固定構造において不可欠であった、ボルトやナットのねじ山やねじ穴を保護する手間を省略できる。しかも、第2締結ベース16をメンインバー11およびクロスバー12で囲まれる空所に臨む状態で溝蓋2に配置するので、従来の溝蓋における四隅の締結部と、締結部を塞ぐカバーを省略でき、その分だけ溝蓋2のコストを削減できる。溝蓋2を成形側溝1にねじ体17で確りと締結固定するので、溝蓋2が外力を受けて跳ね上がるのを確実に防止し騒音の発生を解消できる。
【0020】
第1締結ベース15に、ボルト27とナット21のいずれか一方と、回り止め突起22とを設けると、ねじ体17をねじ込み操作する際に、第1締結ベース15がねじ体17と連れ回りしようとするのをメインバー11で阻止して、掛止溝8から外れるのを確実に防止できる。したがって、ねじ体17による締結作業を確実にしかも迅速に行なえる。
【0021】
メインバー11の隣接ピッチが小さな溝蓋2に適合する回り止め突起22と、インバー11の隣接ピッチが大きな溝蓋2に適合する回り止め突起23を、第1締結ベース15の上下両面に固定すると、第1締結ベース15を複数の溝蓋2に共通して使用できるので、その分だけ第1締結ベース15の製造コストを削減できる。なお、この場合の第1締結ベース15には、ナット21を固定しておく必要がある。
【0022】
第1締結ベース15が溝空間を左右に横断する状態で、両側端の掛止部24を一対の掛止凹部8・8に差し込み装填すると、第1締結ベース15に作用する締結力を左右の受枠4で両持ち状に受け止めて溝蓋2をさらに強固に固定できる。溝空間を左右に横断する状態で第1締結ベース15を掛止溝8に掛止するので、少なくとも1個のねじ体17で第1締結ベース15と第2締結ベース16とを締結することができ、とくに小形の成形側溝1における溝蓋2の固定を無駄のない状態で的確に行なえる。
【0023】
ボルト挿通穴26を備えた平板状の金属板材で第2締結ベース16を形成し、同ベース16を隣接するメインバー11・11に溶接すると、第2締結ベース16を組付ける手間を省くことができる。また、第2締結ベース16の位置を基準にして第1締結ベース15を掛止溝8に掛止することになるので、溝蓋2を常に好適な位置で締結することができ、作業者によって締結位置がばらつくのを防止できる。
【0024】
座壁35と、逆J字状の一対のクリップ壁36とで第2締結ベース16を構成し、同締結ベース16を隣接するメインバー11の上端に掛止装着すると、必要に応じて第2締結ベース16の溝蓋2に対する装着位置や使用個数を自由に選定できる。したがって、溝蓋2を、そのサイズや重量に応じて、最適の位置でしかも無駄のない状態で締結できる。また、第1締結ベース15の掛止溝8に対する装着位置を前後に調整し、さらに第2締結ベース16の溝蓋2に対する掛止位置を調整することにより、溝蓋2の締結位置や締結個所数を掛止溝8と溝蓋2の外形の範囲内で多様に変更して、固定構造の最適化を実現できる。
【0025】
本発明に係る成形側溝においては、受枠4の蓋受壁6の下面に沿って設けた掛止凹部8に第1締結ベース15を掛止装着し、溝蓋2に設けた第2締結ベース16と先の第1締結ベース15とを、ねじ体17で締結して溝蓋2を受枠4に固定できるようにした。このように、掛止凹部8に対する第1締結ベース15の掛止位置を変更できるようにすると、溝蓋2重量やサイズの違いに応じて溝蓋2の締結位置を変更できる。さらに、溝蓋2の締結個所数を自由に設定することができる。
【0026】
したがって、本発明の成形側溝によれば、溝蓋2を無駄のない状態で常に適切に締結固定できる成形側溝が得られる。また、成形側溝1を成形する際に、受枠4および埋設体30をインサートして側溝躯体3と一体化し、離型した側溝躯体3から埋設体30を分離することにより、蓋受壁6の下面に沿って掛止凹部8を形成するので、既存の成形型をそのまま利用して掛止凹部8を形成でき、新規な機能を備えた成形側溝1を従来の成形側溝と同程度のコストで製造できる。例えば成形側溝1を施工現場へ搬入するような場合に、掛止凹部8を吊り掛け個所として利用することにより、成形側溝1の移送や敷設作業を迅速かつ簡便に行なえる。
【0027】
成形側溝1の対向壁のそれぞれに、受枠4と掛止凹部8とを形成し、第1締結ベース15が両受枠4・4の間の溝空間を左右に横断する状態で、両側端の掛止部24を掛止凹部8・8に差し込み装填すると、第1締結ベース15に作用する締結力を左右の受枠4で両持ち状に受け止めて溝蓋2をより強固に固定できる。また、側溝躯体3に比べて寸法や面精度が安定している受枠4で第1締結ベース15を受け止めるので、溝蓋2を受枠4に対して均等な締結条件で固定して、側溝の施工品質がばらつくのをよく防止できる。
【0028】
埋設体30を天然ゴム、合成ゴム、樹脂系エラストマーのいずれかで形成し、蓋受壁6の成形空間側の壁面に易剥離性の接着剤で貼り付けると、埋設体30を側溝躯体3から分離する作業を、より少ない手間で簡便に行なえる。詳しくは、埋設体30が弾性変形できるので、その周面に工具を差し込んでこじることにより掛止凹部8からえぐり出すことができ、以後はえぐり出された埋設体30の端部を掴んで引っ張ることにより、簡単に側溝躯体3から分離できる。埋設体30を易剥離性の接着剤で受枠4に貼り付けるので、埋設体30を分離するとき千切れたり、その一部が千切れて受枠4に残るのをよく防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】図2におけるA−A線断面図である。
【図2】成形側溝の平面図である。
【図3】図1におけるB−B線断面図である。
【図4】第1締結ベースの取付状態を示す平面図である。
【図5】溝蓋の受枠に対する装着過程を示す側面図である。
【図6】受枠の上下を反転した状態の斜視図である。
【図7】成形側溝の成形型を示す断面図である。
【図8】成形側溝の斜視図である。
【図9】第2締結ベースの別の実施例を示す縦断側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
(実施例) 図1ないし図8は本発明に係る成形側溝における溝蓋の固定構造の実施例を示す。図2において、符号1は道路や通路の側溝を構成する成形側溝、符号2は成形側溝1の上面開口を塞ぐ溝蓋である。この実施例における前後、左右とは、図2に示す交差矢印と前後、左右の表記に従うものとする。
【0031】
成形側溝1は、前後に長い断面がU字状の側溝躯体3と、側溝躯体3の左右壁の上端にインサートされる受枠4とで構成してある。受枠4は、逆U字状の被覆壁5と、被覆壁5の内縁下端に連続して水平に張り出される蓋受壁6とを一体に備えた鋼板製の枠体からなり、側溝躯体3の成形時にインサート固定される。そのために、被覆壁5の内面の前後にはコ字状に折り曲げたアンカー7が固定してある。左右の蓋受壁6の下面側には、後述する第1締結ベース15を掛止するための掛止溝(掛止凹部)8が、蓋受壁6の長手方向に沿ってそれぞれ凹み形成してある。図2に示すように、掛止溝8の上下寸法は、後述する第1締結ベース15の厚み寸法より僅かに大きく設定してあり、前後長さは蓋受壁6の前後長さより短く設定してある。
【0032】
図1ないし図3に示すように、溝蓋2は、左右一対のエンドプレート10と、両エンドプレート10の対向面の間に一定間隔おきに固定される一群のメインバー11と、一群のメインバー11の上部に固定(溶接)されるクロスバー12とで、前後に長い格子体として形成してある。メインバー11は断面がI字状の条材を一定長さに切断して形成してあり、その左右端のそれぞれがエンドプレート10に溶接してある。メインバー11の上面には、必要に応じて滑り止めの突起群が設けられる。クロスバー12は、断面が四角形の鋼棒を一定ピッチで捻じった、いわゆるツイストバーからなり、その螺旋状の稜線が各メインバー11の上面と面一になる状態で溶接してある。
【0033】
車両が上面を通過するような場合に溝蓋2が跳ね上がるのを防止し、あるいは溝蓋2の盗難を防ぐために、受枠4に嵌め込み装着した溝蓋2を、両者2・4の間に設けた締結構造で分離不能に固定している。締結構造は、先の掛止溝8に掛止装着される第1締結ベース15と、第1締結ベース15に対応して溝蓋2に設けられる第2締結ベース16と、両締結ベース15・16を締結するねじ体17とで構成する。
【0034】
図4に示すように、第1締結ベース15は帯板状の鋼材からなり、その左右中央にボルト挿通穴20が形成され、同穴20の下面側にナット21が溶接してある。第1締結ベース15の上面には、メインバー11に接当して第1締結ベース15の回動を規制する回り止め突起22が形成してある。また、第1締結ベース15の下面側には、メインバー11の隣接ピッチがさらに大きな溝蓋2に適合する回り止め突起23が設けてある。第1締結ベース15の長さは、左右の受枠4の蓋受壁6の対向間隔より長く設定してあり、その両端に蓋受壁6の下面に接当する掛止部24が設けてある。
【0035】
第2締結ベース16は、中央にボルト挿通穴26が形成してある四角形状のプレス金具からなり、メンインバー11およびクロスバー12で囲まれる空所内に配置する。詳しくは、図2に示すように左右中央で隣接する一対のクロスバー12と、溝蓋2の前端および後端から5番目と6番目に位置するメインバー11とで囲まれる前後2個所の空間内に第2締結ベース16を配置して、その前後辺部のそれぞれをメインバー11に溶接している。また、第2締結ベース16は、そのボルト挿通穴26に六角穴付きボルト27を座金を介して挿通した状態において、操作頭部28の上端が溝蓋2の上面より僅かに下方に位置する高さ位置に固定してある。
【0036】
ねじ体17は、先に説明したナット21と、第2締結ベース16のボルト挿通穴26に上方から挿通される六角穴付きボルト(ボルト)27とで構成する。六角穴付きボルト27の操作頭部28の直径寸法は、メンインバー11およびクロスバー12の隣接間隔寸法より小さい。したがって、溝蓋2の上方から六角穴付きボルト27を差し込んで、第2締結ベース16のボルト挿通穴26に挿通し、さらに、そのねじ軸を第1締結ベース15のナット21にねじ込むことができる。
【0037】
溝蓋2は、例えば以下の要領で受枠4に装着し締結固定する。まず、図4に示すように前後端が一致する状態で溝蓋2を受枠4の一側に載置する。この状態で第1締結ベース15が両受枠4・4の間の溝空間を左右に横断する状態で、左右両端の掛止部24を左右の掛止溝8に差し込み係合する。さらに、第1締結ベース15の前後位置が、溝蓋2の一方の第2締結ベース16の前後位置に合致するように位置決めする。同様にして、もうひとつの第1締結ベース15を、他方の第2締結ベース16の前後位置に合致するように位置決めする。次に、図5に示すように溝蓋2を受枠4に上方から嵌め込み、第2締結ベース16のボルト挿通穴26の中心を、第1締結ベース15のボルト挿通穴20の中心に一致させる。
【0038】
片方の第2締結ベース16のボルト挿通穴26に六角穴付きボルト27を座金を介して挿通したのち、ねじ軸を第1締結ベース15のナット21にねじ込み操作する。このとき、回り止め突起22がメインバー11で受け止められるので、第1締結ベース15が六角穴付きボルト27と連れ回りするのを防止できる。同様にして、他方の第1締結ベース15のナット21に六角穴付きボルト27を仮り締結する。溝蓋2の前後位置を微調整したのち、各六角穴付きボルト27を最後までねじ込んで、第1締結ベース15を蓋受壁6側へ引き寄せることにより、図1に示すように溝蓋2を受枠2に締結固定できる。なお、六角穴付きボルト27の締結操作は六角棒レンチで行なうことができ、棒レンチの端をメンインバー11およびクロスバー12で囲まれる空所の上方から操作頭部28の操作穴に差し込んで行なう。
【0039】
側溝躯体3に形成される掛止溝8は、成形側溝1を成形する過程で同時に形成することができる。具体的には、
受枠4の蓋受壁6の成形空間側の壁面に埋設体30を貼り付ける準備工程と、
固定型31に受枠4を装填し、可動型32を閉鎖する型締め工程と、
成形空間にコンクリートを流し込んで固化する成形工程と、
可動型32を開放して、固化した成形側溝1を固定型31から分離する離型工程と、
得られた成形側溝1から埋設体30を取り除いて掛止溝8を形成する分離工程とを記載順に行なう。
【0040】
準備工程では、図6に示すように、インサートされる受枠4の蓋受壁6の成形空間側の壁面にゴム製の条材からなる埋設体30を易剥離性の接着剤で貼り付ける。型締め工程では、図7に示すように、側溝躯体3の内面形状を成形する固定型31の両側に上下が反転された受枠4を装填し、側溝躯体3の外面形状を成形する左右一対の可動型32を閉じる。成形工程では、コンクリートを流し込んで固化する。離型工程では、左右の可動型32を開放して、固化した成形側溝1を固定型31から離型する。分離工程では、図8に示すように埋設体30を側溝躯体3から取り外して、各受枠4の蓋受壁6下面に掛止溝8を形成する。
【0041】
具体的には、埋設体30が弾性変形できるので、その端部周面に工具を差し込んでこじるだけで埋設体30を掛止溝8からえぐり出せる。以後は、えぐり出された埋設体30の端部を掴んで掛止溝8から離れる向きに引っ張ることにより、埋設体30の全体を側溝躯体3から簡単に分離できる。また、埋設体30を易剥離性の接着剤で受枠4に貼り付けると、分離する途中で埋設体30が千切れたり、その一部が千切れて受枠4に残るのを防止できる。なお、成形側溝1を成形するための成形型は、既存の成形型をそのまま使用することができる。
【0042】
埋設体30は、側溝躯体3から取り外す作業を容易化できる点で、天然ゴム、合成ゴム、あるいは樹脂系エラストマーを素材とする条材で形成するのが好ましいが、必要があれば木材、硬質発泡体、プラスチック材、あるいは金属などで形成することができる。
【0043】
図9は第2締結ベース16をプレス金具で構成した別の実施例を示す。そこでは、ボルト挿通穴26を備えた四角形状の座壁35と、座壁35の対向辺部から上向きに折り曲げられる逆J字状のクリップ壁36とで、第2締結ベース16を逆凸字状に形成する。クリップ壁36の前後間隔はメインバー11の隣接ピッチに対応しており、クリップ壁36で形成される掛止溝37を隣接するメインバー11の上端に掛止することにより、溝蓋2の任意箇所に装着することができる。他は先の実施例と同じであるので、同じ部材に同じ符号を付してその説明を省略する。
【0044】
上記の第2締結ベース16は、任意位置にある隣接するメインバー11に掛止できる。したがって、第1締結ベース15の掛止溝8に対する装着位置を前後に調整し、さらに第2締結ベース16の溝蓋2に対する掛止位置を調整することにより、溝蓋2の締結位置や締結個所数を掛止溝8と溝蓋2の外形の範囲内で多様に変更できる。例えば、溝蓋2の前後端と中央との3箇所を締結し、あるいは、溝蓋2の前端の2個所と、後端の2個所を締結することができる。
【0045】
基本的に、溝蓋2は個々の成形側溝1に対応した状態で固定するが、必要に応じて、隣接する成形側溝1・1を跨ぐ状態や、あるいは成形側溝1の一部を切断して使用するような場合でも、溝蓋2を確実に固定することができる。隣接する成形側溝1・1を跨ぐ状態で溝蓋2を固定する場合には、一方の成形側溝1に溝蓋2の一端を固定し、他方の成形側溝1に溝蓋2の他端を固定する。したがって、成形側溝1・1の隣接部分を連結金具で連結することに加えて、溝蓋2によっても成形側溝1・1どうしを連結して、地震等によって側溝が揺り動かされるような場合に、成形側溝1がばらばらになるのを防止できる。また、成形側溝1の一部を切断して使用するような場合には、成形側溝1の長さに応じて溝蓋2を切断したうえで、適切な位置を両締結ベース15・16とねじ体17とで締結固定できる。
【0046】
上記の実施例では、第1締結ベース15の中央にボルト挿通穴20とナット21を1個ずつ設けたが、ボルト挿通穴20とナット21は、第1締結ベース15の複数箇所に設けることができる。また、ナット21に換えてボルト27を第1締結ベース15に固定することができる。その場合には、第2締結ベース16に挿通したボルト27のねじ軸にナット21をねじ込んで、両締結ベース15・16を締結する。ボルト27は、六角穴付きボルトである必要はなく、通常の六角ボルトや、ねじ軸の軸端に操作凹部が形成してある止めねじであってもよい。
【0047】
掛止溝8は、蓋受壁6の前端から後端にわたって形成することができる。必要があれば、掛止凹部8を一定間隔おきに形成される一群の凹部で形成して、第1締結ベース15の掛止位置を前後に位置変更可能としながら、位置決めできる。例えば、第2締結ベース16の前後位置に応じて、成形側溝1の前端または後端から数えて何番目かの掛止凹部8に第1締結ベース15することで、両締結ベース15・16の前後位置を適正に位置決めできる。第1締結ベース15は、帯板状に形成する必要はなく、棒状、管状、あるいは一対の平行な棒状体で形成することができる。
【0048】
回り止め突起22・23を利用して、掛止部24を掛止溝8に差し込み係合するときの差し込み限界を規定することができる。その場合には、回り止め突起22・23を蓋受壁6の対向端縁に接当することにより、掛止部24の差し込み量を適量に規定して、ナット21を両受枠4・4の間の溝空間の中央に位置させることができる。したがって、ボルト27のナット21に対するねじ込み作業をさらに簡便に行なえる。受枠4は、垂直の被覆壁5と水平の蓋受壁6とで断面L字状に形成することができる。第1締結ベース15は、左右の掛止溝8の片方に掛止した状態で使用することができる。その場合には、第1締結ベース15の一端の掛止部24を掛止溝8に掛止し、他端をメインバー11の下面に接合した状態で、第1締結ベース15と第2締結ベース16をねじ体17で締結するとよい。本発明の固定構造は、集水ますの受枠に格子状のます蓋を締結固定する場合にも適用できる。
【符号の説明】
【0049】
1 成形側溝
2 溝蓋
4 受枠
6 蓋受壁
8 掛止凹部(掛止溝)
15 第1締結ベース
16 第2締結ベース
17 ねじ体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口面に受枠(4)が設けられた成形側溝(1)に格子状の溝蓋(2)が嵌め込み装着してある溝蓋の固定構造であって、
受枠(4)の蓋受壁(6)の下面に沿う状態で成形側溝(1)に掛止凹部(8)が形成されており、
前記固定構造が、前記掛止凹部(8)に掛止装着される第1締結ベース(15)と、第1締結ベース(15)に対応して溝蓋(2)に設けられる第2締結ベース(16)と、両締結ベース(15・16)を締結するねじ体(17)とで構成されており、
ねじ体(17)を受け止める第2締結ベース(16)が、メンインバー(11)およびクロスバー(12)で囲まれる空所に臨む状態で溝蓋(2)に配置してある成形側溝における溝蓋の固定構造。
【請求項2】
第1締結ベース(15)に、ねじ体(17)を構成するボルト(27)とナット(21)のいずれか一方と、メインバー(11)に接当して第1締結ベース(15)の回動を規制する回り止め突起(22)とが設けてある請求項1に記載の成形側溝における溝蓋の固定構造。
【請求項3】
第1締結ベース(15)の上下両面に、メインバー(11)の隣接ピッチが小さな溝蓋(2)に適合する回り止め突起(22)と、インバー(11)の隣接ピッチが大きな溝蓋(2)に適合する回り止め突起(23)とが固定されており、
第1締結ベース(15)を前記両溝蓋(2)に共通して使用できる請求項1または2に記載の成形側溝における溝蓋の固定構造。
【請求項4】
成形側溝(1)の対向壁のそれぞれに、受枠(4)と掛止凹部(8)とが形成されており、
第1締結ベース(15)が両受枠(4・4)の間の溝空間を左右に横断する状態で、第1締結ベース(15)の両側端の掛止部(24)が前記一対の掛止凹部(8・8)に差し込み装填してある請求項1、2または3に記載の成形側溝における溝蓋の固定構造。
【請求項5】
第2締結ベース(16)が、ボルト挿通穴(26)を備えた平板状の金属板材で形成されており、
第2締結ベース(16)が隣接するメインバー(11・11)の間に配置されて、各メインバー(11・11)に溶接されている請求項2、3または4に記載の成形側溝における溝蓋の固定構造。
【請求項6】
第2締結ベース(16)が、ボルト挿通穴(26)を備えた座壁(35)と、座壁(35)の対向辺部から上向きに折り曲げられる逆J字状のクリップ壁(36)とを備えたプレス金具で形成されており、
第2締結ベース(16)が、隣接するメインバー(11)の上端に掛止装着されており、
第1締結ベース(15)と第2締結ベース(16)の締結位置を、掛止凹部(8)と溝蓋(2)の外形の範囲内で変更できる請求項2、3または4に記載の成形側溝における溝蓋の固定構造。
【請求項7】
開口面に設けた受枠(4)に格子状の溝蓋(2)が嵌め込み装着される成形側溝(1)であって、
成形側溝(1)は、受枠(4)および、その蓋受壁(6)の長手方向に沿って装着した埋設体(30)を、成形型の成形空間の内部にインサートして形成されており、
離型した成形側溝(1)から埋設体(30)を分離して、蓋受壁(6)の下面に沿って掛止凹部(8)が形成されており、
前記掛止凹部(8)に掛止装着される第1締結ベース(15)と、第1締結ベース(15)に対応して溝蓋(2)に設けられる第2締結ベース(16)と、両締結ベース(15・16)を締結するねじ体(17)とで、溝蓋(2)を固定できる成形側溝。
【請求項8】
成形側溝(1)の対向壁のそれぞれに、受枠(4)と掛止凹部(8)とが形成されており、
第1締結ベース(16)が両受枠(4・4)の間の溝空間を左右に横断する状態で、第1締結ベース(15)の両側端の掛止部(24)が前記一対の掛止凹部(8・8)に差し込み装填してある請求項7に記載の成形側溝。
【請求項9】
埋設体(30)が天然ゴム、合成ゴム、樹脂系エラストマーのいずれかで形成されて、蓋受壁(6)の成形空間側の壁面に易剥離性の接着剤で貼り付けてある請求項7または8に記載の成形側溝。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−203130(P2010−203130A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−49167(P2009−49167)
【出願日】平成21年3月3日(2009.3.3)
【出願人】(509062125)東陽上村アドバンス株式会社 (1)
【出願人】(000006910)株式会社淀川製鋼所 (34)
【Fターム(参考)】