説明

成形方法

【課題】ハンドリング性に困難な熱硬化性樹脂組成物からなるタブレットを用いる場合に、搬送時や成形機への供給時にトラブルを出すことなく安定した生産を継続できる成形方法を提供することである。
【解決手段】 熱硬化性樹脂組成物を打錠して得られる円柱状タブレットを、温調していないタブレット供給装置あるいは搬送装置を介してトランスファー成形用金型のポット内に投入して成形する成形方法であって、供給装置あるいは搬送装置に冷却して表面温度を−40℃から10℃とした円柱状タブレットを充填時点からトランスファー成形用金型のポット内に投入するまでの時間が2分以内でることを特徴とする成形方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は特定温度に調整した熱硬化性組成物からなるタブレットを温調していないタブレット供給装置あるいは搬送装置を介してトランスファー成形用金型ポット内に投入して成形する成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、発光ダイオードとしてはパッケージを用いた表面実装タイプのものが製造されているが、そのパッケージ用材料としては、セラミック、ポリアミド樹脂又はポリエステル樹脂等が主として用いられている。
【0003】
ところが、セラミックをパッケージ用材料として用いた場合には、セラミックの成型加工性が良くないことから一般に工業的な適用性が狭くなる。また、発光ダイオードの製造にはパッケージ内にエポキシ樹脂等の封止剤(モールド材)を充填することが一般的であるが、その場合、セラミックとエポキシ樹脂等の封止剤との線膨張係数の差が大きいため、熱応力等により封止剤にクラックが発生して発光ダイオードの信頼性を低下させるという問題もある。さらに、セラミックは光線反射率が低く発光ダイオードとしての光取り出し効率が低下してしまうという問題もある。
【0004】
ポリアミド樹脂をパッケージ用材料として用いた場合には、ポリアミド樹脂は耐光劣化により着色するという問題があるため長期使用するとパッケージ表面での反射率が低下して発光ダイオードの輝度が低下するといった問題がある。また、ポリアミド樹脂の耐光劣化のため封止剤との接着性が低下して、発光ダイオードの信頼性を低下させるという問題もある。
【0005】
ポリエステル樹脂をパッケージ用材料として用いた場合には、耐熱性が十分でないために耐はんだリフロー性に乏しく、工業的な適用性に制限があるという問題がある。
これらの問題を解決するため、熱硬化性樹脂に無機充填材及び白色顔料を配合してなる熱硬化性樹脂組成物が報告されている。例えば特許文献1には、エポキシ樹脂と無機充填材と白色顔料からなる光反射用樹脂組成物タブレット、及び該タブレットを用いたトランスファー成形で得られる発光ダイオード用パッケージが記載されている。しかしながら、エポキシ樹脂の耐熱性が十分ではないため、得られるパッケージの耐熱耐光性には課題があった。
【0006】
一方、エポキシ樹脂より耐熱耐光性に優れるシリコーン系樹脂を用いた白色熱硬化性樹脂組成物が、特許文献2及び3に報告されている。特許文献2には、融点40〜130℃の熱硬化性シリコーンと白色顔料と無機充填材からなる硬化性樹脂組成物が記載されている。熱硬化性シリコーンの融点を40℃以上にすることで硬化性樹脂組成物を固体状に維持できるため、トランスファー成形の適用を容易にしている。しかしながら、熱硬化性シリコーンを白色顔料及び無機充填材と均一に配合するためには、融点以上で溶融混練した後、冷却、粉砕する必要があり、工程が煩雑になって設備の負荷が増大する問題があるほか、熱によって硬化が進行して成形性が低下するなどの問題があった。また、熱硬化性シリコーンの融点以下で白色顔料及び無機充填材と配合する場合には、全ての成分が固体状であることから混合が不均一になるという問題があった。
【0007】
特許文献3では、シリコーン系樹脂に白色顔料と無機充填材を配合した熱硬化性樹脂組成物を用いた発光ダイオードのパッケージが提案されている。このシリコーン系樹脂は常温で液体であるので、白色顔料と無機充填材との均一混合は容易になるが、得られる熱硬化性樹脂組成物はペースト状である。そのため、該熱硬化性樹脂組成物をトランスファー成形に適用するには、ペーストのハンドリング、計量、搬送、成形機への供給などが非常に困難であることから、パッケージの生産性が低いことが課題であった。
【0008】
他方で、最近では、樹脂組成物側のタブレットの柔軟性に由来する、搬送時の樹脂汚染やトランスファー成形機内の金型ポットへの速やかなタブレットの移送を行うために、搬送装置やタブレット供給装置、あるいは金型ポット周辺を冷却するなど装置面からの工夫も行われるようになってきた。しかし、これらは、汎用の搬送装置と比較すると、装置を冷却するための設備を付帯するために非常に高額な費用がかかるという課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2008−112977号公報
【特許文献2】特開2009−155415号公報
【特許文献3】特開2005−146191号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の課題は、ハンドリング性に困難な熱硬化性樹脂組成物からなるタブレットを用いる場合に、特に温調設備を付帯しない搬送装置あるいは供給装置でも、トラブルを出すことなく、タブレットをトランスファー成形機の専用ポットに移送でき、安定した生産を継続できる成形方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために発明者らは鋭意研究を行った結果、ハンドリング性に困難なタブレットでも、特定温度に調整し、金型ポットへの移送時間を特定時間に限定すれば、温調設備を付帯しない搬送装置あるいは供給装置でも、安定してタブレットの搬送が可能であり、安定した生産性が実現できることを見出し、発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち本発明は、以下の構成を成す。
(1)熱硬化性樹脂組成物を打錠して得られる円柱状タブレットを、温調していないタブレット供給装置あるいは搬送装置を介してトランスファー成形用金型のポット内に投入して成形する成形方法であって、供給装置あるいは搬送装置に冷却して表面温度を−40℃から10℃とした円柱状タブレットを充填時点からトランスファー成形用金型のポット内に投入するまでの時間が2分以内でることを特徴とする成形方法。
【0013】
(2)円柱状タブレットが、その上面の直径を13mm、高さが20mmである形状で、その上面から荷重を加え、タブレット高さが5mm変位する時の最大荷重が3.5kgf以上であることを特徴とする(1)記載の成形方法。
【0014】
(3)円柱状タブレットが常温においても、固体状態を維持できることを特徴とする(1)か(2)いずれか一項に記載の成形方法。
【0015】
(4)円柱状タブレットの表面が無機充填材及び/又は有機充填材を含む充填材で覆われていることを特徴とする(1)〜(3)いずれか一項に記載の成形方法。
【0016】
(5)熱硬化性樹脂組成物が、(A)SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個含有する有機化合物、(B)1分子中に少なくとも2個のSiH基を含有する化合物、(C)ヒドロシリル化触媒、(D)SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも1個含有するシリコーン化合物、および(E)無機充填材からなることを特徴とする(1)から(4)のいずれか一項に記載の成形方法。
【0017】
(6)(1)から(5)のいずれか一項に記載の成形方法により得られる発光ダイオードのパッケージ。
【0018】
(7)(6)記載の発光ダイオードのパッケージ表面の波長460及び480nmの分光反射率が80R%以上である成形体。
【0019】
(8)(7)に記載の発光ダイオード用のパッケージを用いて製造された発光ダイオード。
【発明の効果】
【0020】
本発明の成形方法を用いれば、常温でのタブレットのタック性が無いことから搬送及び成形時のハンドリング性が容易になり生産性が大幅に向上する。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、実施形態を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0022】
(熱硬化性樹脂)
本発明の成形方法で用いられるタブレットを形成する熱硬化性樹脂組成物を構成する熱硬化性樹脂としては、表面実装型発光装置の分野で使用されるものを特に限定なく使用でき、たとえば、エポキシ樹脂、変性エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、変性シリコーン樹脂、アクリレート樹脂、ポリウレタンなどが挙げられる。これらの熱硬化性樹脂は1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用できる。これらの熱硬化性樹脂の中でも、エポキシ樹脂、変性エポキシ樹脂、シリコーン樹脂および変性シリコーン樹脂が幅広く用いられているおり好ましい。
【0023】
上記したエポキシ樹脂としては、たとえば、反応性基としてエポキシ基を有する化合物の群を示す。例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂:ビスフェノールF型エポキシ樹脂:テトラブロモビスフェノールAのグリシジルエーテル等の臭素化エポキシ樹脂:ノボラック型エポキシ樹脂:ビスフェノールAプロピレンオキシド付加物のグリシジルエーテル等のグリシジルエーテル型エポキシ樹脂:芳香族カルボン酸とエピクロルヒドリンとの反応物、芳香族カルボン酸の水素添加物とエピクロルヒドリンとの反応物等のグリシジルエステル型エポキシ樹脂:N,N−ジグリシジルアニリン、N,N−ジグリシジル−o−トルイジン等のグリシジルアミン型エポキシ樹脂:ウレタン変性エポキシ樹脂:水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂等の脂環式系エポキシ樹脂:トリグリシジルイソシアヌレート:ポリアルキレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル等の多価アルコールのグリシジルエーテル類:ヒダントイン型エポキシ樹脂:石油樹脂等の不飽和重合体のエポキシ化物などが例示できるが、これらに限定されるものではなく、一般に知られているエポキシ樹脂であれば使用できる。
【0024】
上記したシリコーン樹脂としては、耐熱性、耐光性および変色を伴う熱劣化をさらに抑制する観点からは、(A)SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個含有する有機化合物、(B)1分子中に少なくとも2個のSiH基を含有する化合物および(C)ヒドロシリル化触媒を含有する熱硬化性樹脂組成物が好ましく、上記(A)成分、(B)成分および(C)成分、(D)SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも1個含有するシリコーン化合物、および(E)無機充填材を含有する熱硬化性樹脂組成物(X)がさらに好ましい。
【0025】
熱硬化性樹脂組成物(X)は、耐熱性が高く、変色を伴う熱劣化が起こり難いため、高温に晒されても光反射率が使用初期の高水準に維持される。
【0026】
以下に、(A)〜(E)の各成分について詳しく説明する。
【0027】
(A)成分はSiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個含有する有機化合物であれば特に限定されない。
【0028】
(A)成分の骨格は、有機化合物としては、ポリシロキサン−有機ブロックコポリマーやポリシロキサン−有機グラフトコポリマーのようなシロキサン単位(Si−O−Si)を含むものではなく、構成元素としてC、H、N、O、S及びハロゲン以外の元素を含まない化合物がより好ましい。シロキサン単位を含むものの場合は、半導体のパッケージとリードフレームや封止樹脂との接着性が低くなりやすいという問題がある。
【0029】
(A)成分は、有機重合体系の化合物と有機単量体系化合物とに分類できる。
【0030】
有機重合体系の(A)成分としては、たとえば、ポリエーテル系、ポリエステル系、ポリアリレート系、ポリカーボネート系、飽和炭化水素系、不飽和炭化水素系、ポリアクリル酸エステル系、ポリアミド系、フェノール−ホルムアルデヒド系(フェノール樹脂系)、ポリイミド系の骨格を有するものを挙げることができる。
【0031】
これらのうち、ポリエーテル系重合体としては、たとえば、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシテトラメチレン、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン共重合体などが挙げられる。さらに具体的な例を示すと、下記で示される重合体が挙げられる。
【0032】
【化1】

【0033】
(式中、R、Rは構成元素としてC、H、N、O、S、ハロゲン以外の元素を含まない炭素数1〜6の2価の有機基、n、m、lは1〜300の数を表す。)
その他の重合体としては、たとえば、アジピン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸などの2塩基酸とエチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール、ネオペンチルグリコールなどのグリコールとの縮合またはラクトン類の開環重合で得られるポリエステル系重合体;エチレン−プロピレン系共重合体、ポリイソブチレン、イソブチレンとイソプレンなどとの共重合体、ポリクロロプレン、ポリイソプレン、イソプレンとブタジエン、アクリロニトリル、スチレンなどとの共重合体、ポリブタジエン、ブタジエンとスチレン、アクリロニトリルなどとの共重合体、ポリイソプレン、ポリブタジエン、イソプレンまたはブタジエンとアクリロニトリル、スチレンなどとの共重合体を水素添加して得られるポリオレフィン系(飽和炭化水素系)重合体;エチルアクリレート、ブチルアクリレートなどのモノマーをラジカル重合して得られるポリアクリル酸エステル、エチルアクリレート、ブチルアクリレートなどのアクリル酸エステルと酢酸ビニル、アクリロニトリル、メチルメタクリレート、スチレンなどとのアクリル酸エステル系共重合体;前記有機重合体中でビニルモノマーを重合して得られるグラフト重合体;ポリサルファイド系重合体;ε−アミノカプロラクタムの開環重合によるナイロン6、ヘキサメチレンジアミンとアジピン酸の重縮合によるナイロン66、ヘキサメチレンジアミンとセバシン酸の重縮合によるナイロン610、ε−アミノウンデカン酸の重縮合によるナイロン11、ε−アミノラウロラクタムの開環重合によるナイロン12、上記のナイロンのうち2成分以上の成分を有する共重合ナイロンなどのポリアミド系重合体;たとえば、ビスフェノールAと塩化カルボニルより重縮合して製造されたポリカルボネート系重合体;ジアリルフタレート系重合体;ノボラック型フェノール樹脂、レゾール型フェノール樹脂、アンモニアレゾール型フェノール樹脂、ベンジリックエーテル型フェノール樹脂などのフェノール−ホルムアルデヒド系樹脂(フェノール系樹脂);などが挙げられる。
【0034】
これらの重合体骨格に、炭素−炭素二重結合を有するアルケニル基を導入して(A)成分とすることができる。この場合、炭素−炭素二重結合を有するアルケニル基は分子内のどこに存在してもよいが、反応性の点から側鎖または末端に存在する方が好ましい。
【0035】
アルケニル基を前記重合体骨格に導入する方法については、種々提案されているものを用いることができるが、重合後にアルケニル基を導入する方法と重合中にアルケニル基を導入する方法に大別することができる。
【0036】
重合後にアルケニル基を導入する方法としては、たとえば、末端、主鎖または側鎖に水酸基、アルコキシド基、カルボキシル基、エポキシ基などの官能基を有する有機重合体に、その官能基に対して反応性を示す活性基とアルケニル基の両方を有する有機化合物を反応させることにより、末端、主鎖または側鎖にアルケニル基を導入することができる。
【0037】
上記官能基に対して反応性を示す活性基とアルケニル基の両方を有する有機化合物の例としては、アクリル酸、メタクリル酸、ビニル酢酸、アクリル酸クロライド、アクリル酸ブロマイドなどの炭素原子数3〜20の不飽和脂肪酸、酸ハライド、酸無水物などやアリルクロロホルメート(CH=CHCHOCOCl)、アリルブロモホルメート(CH=CHCHOCOBr)などのC3〜C20の不飽和脂肪族アルコール置換炭酸ハライド、アリルクロライド、アリルブロマイド、ビニル(クロロメチル)ベンゼン、アリル(クロロメチル)ベンゼン、アリル(ブロモメチル)ベンゼン、アリル(クロロメチル)エーテル、アリル(クロロメトキシ)ベンゼン、1−ブテニル(クロロメチル)エーテル、1−ヘキセニル(クロロメトキシ)ベンゼン、アリルオキシ(クロロメチル)ベンゼン、アリルイソシアネートなどが挙げられる。
【0038】
また、エステル交換法を用いてアルケニル基を導入する方法がある。この方法はポリエステル樹脂やアクリル樹脂のエステル部分のアルコール残基を、エステル交換触媒を用いてアルケニル基含有アルコールまたはアルケニル基含有フェノール誘導体とエステル交換する方法である。アルコール残基とのエステル交換に用いるアルケニル基含有アルコール及びアルケニル基含有フェノール誘導体は、少なくとも1個のアルケニル基を有しかつ少なくとも1個の水酸基を有するアルコールまたはフェノール誘導体であれば良いが、水酸基を1個有する方が好ましい。触媒は使用してもしなくても良いが、チタン系および錫系の触媒が良い。
【0039】
アルケニル基含有アルコールとしては、たとえば、ビニルアルコール、アリルアルコール、3−ブテン−1−オール、4−ペンテン−1−オール、5−ヘキセン−1−オール、6−ヘプテン−1−オール、7−オクテン−1−オール、8−ノネン−1−オール、9−デセン−1−オール、2−(アリルオキシ)エタノール、ネオペンチルグリコールモノアリルエーテル、グリセリンジアリルエーテル、トリメチロールプロパントリアリルエーテル、トリメチロールエタントリアリルエーテル、ペンタエリストールテトラアリルエーテル、1,2,6−ヘキサントリオールトリアリルエーテル、ソルビタントリアリルエーテルなどが挙げられる。また、アルケニル基含有フェノール誘導体としては、たとえば、下記に示すものが挙げられる。
【0040】
【化2】

【0041】
これらの中でも、入手の容易さから、アリルアルコール、ビニルアルコール、3−ブテン−1−オール、2−(アリルオキシ)エタノール、および下記で示されるものが好ましい。
【0042】
【化3】

【0043】
さらに、上記アルコール又はフェノール誘導体の酢酸エステルなどのエステル化物とポリエステル樹脂やアクリル樹脂のエステル部分とを、エステル交換触媒を用いてエステル交換しながら、生成するポリエステル樹脂やアクリル樹脂のエステル部分のアルコール残基の酢酸エステルなどの低分子量エステル化物を減圧脱揮などで系外に留去する方法でアルケニル基を導入する方法もある。
【0044】
また、リビング重合によりメチル(メタ)アクリレートなどの重合を行った後、リビング末端にアルケニル基を有する化合物を結合させることにより、重合反応を停止させる方法により末端にアルケニル基を導入することもできる。
【0045】
重合中にアルケニル基を導入する方法としては、たとえば、ラジカル重合法で本発明に用いる(A)成分の有機重合体骨格を製造する場合に、ラジカル反応性の低いアルケニル基を有するラジカル連鎖移動剤を用いることにより、有機重合体骨格の側鎖や末端にアルケニル基を導入することができる。このようなラジカル連鎖移動剤としては、たとえば、アリルメタクリレート、アリルアクリレートなどの、分子中にラジカル反応性の低いアルケニル基を有するビニルモノマー、アリルメルカプタンなどが挙げられる。
【0046】
(A)成分の分子量は特に限定されないが、100〜100,000の任意のものが好適に使用でき、アルケニル基含有有機重合体であれば500〜20,000のものが特に好ましい。分子量が300未満では、可とう性の付与などの有機重合体の利用による特徴が発現し難く、分子量が100,000を超えると、アルケニル基とSiH基との反応による架橋の効果が発現し難い。
【0047】
有機単量体系の(A)成分としては、たとえば、フェノール系、ビスフェノール系、ベンゼン、ナフタレンなどの芳香族炭化水素系:直鎖系、脂環系などの脂肪族炭化水素系:複素環系の化合物およびこれらの混合物などが挙げられる。
【0048】
(A)成分において、SiH基に対して反応性を有する炭素−炭素二重結合の結合位置は特に限定されず、分子内のどこに存在してもよい。SiH基に対して反応性を有する炭素−炭素二重結合としては、特に限定されないが、下記一般式(I)で示される基が反応性の点から好適である。
【0049】
【化4】

【0050】
(式中Rは水素原子またはメチル基を表す。)
また、原料の入手の容易さからは、下記に示される基が特に好ましい。
【0051】
【化5】

【0052】
(A)成分のSiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合としては、下記一般式(II)で示される脂環式の基が、樹脂硬化体の耐熱性が高いという点から好適である。
【0053】
【化6】

【0054】
(式中Rは水素原子あるいはメチル基を表す。)
また、原料の入手の容易さからは、下記で示される脂環式の基が特に好ましい。
【0055】
【化7】

【0056】
SiH基に対して反応性を有する炭素−炭素二重結合は、(A)成分の骨格部分に直接結合していてもよく、2価以上の置換基を介して共有結合していても良い。2価以上の置換基としては炭素数0〜10の置換基であれば特に限定されないが、構成元素としてC、H、N、O、S、およびハロゲン以外の元素を含まないものが好ましい。これらの置換基の例としては、下記で示されるものが挙げられる。また、これらの2価以上の置換基の2つ以上が共有結合によりつながって1つの2価以上の置換基を構成していてもよい。
【0057】
【化8】

【0058】
【化9】

【0059】
以上のような骨格部分に共有結合する基の例としては、ビニル基、アリル基、メタリル基、アクリル基、メタクリル基、2−ヒドロキシ−3−(アリルオキシ)プロピル基、2−アリルフェニル基、3−アリルフェニル基、4−アリルフェニル基、2−(アリルオキシ)フェニル基、3−(アリルオキシ)フェニル基、4−(アリルオキシ)フェニル基、2−(アリルオキシ)エチル基、2,2−ビス(アリルオキシメチル)ブチル基、3−アリルオキシ−2,2−ビス(アリルオキシメチル)プロピル基、下記で示される各基などが挙げられる。
【0060】
【化10】

【0061】
有機重合体系の(A)成分の具体例としては、1,2−ポリブタジエン(1,2比率10〜100%のもの、好ましくは1,2比率50〜100%のもの)、ノボラックフェノールのアリルエーテル、アリル化ポリフェニレンオキサイド、
【0062】
【化11】

【0063】
(式中、RはHまたはCH、R、Rは構成元素としてC、H、N、O、S、ハロゲン以外の元素を含まない炭素数1〜6の2価の有機基、X、Yは炭素数0〜10の2価の置換基、n、m、lは1〜300の数を表す。)
【0064】
【化12】

【0065】
(式中、RはHまたはCH、R、Rは炭素数1〜6の2価の有機基、X、Yは炭素数0〜10の2価の置換基、n、m、lは1〜300の数を表す。)
【0066】
【化13】

【0067】
(式中、RはHまたはCH、R、Rは炭素数1〜20の2価の有機基、X、Yは炭素数0〜10の2価の置換基、n、m、lは1〜300の数を表す。)
【0068】
【化14】

【0069】
(式中、RはHまたはCH、R、Rは炭素数1〜6の2価の有機基、X、Yは炭素数0〜10の2価の置換基、n、m、lは1〜300の数を表す。)
【0070】
【化15】

【0071】
(式中、RはHまたはCH、R10、R11、R12は炭素数1〜6の2価の有機基、X、Yは炭素数0〜10の2価の置換基、n、m、l、pは1〜300の数を表す。)
などが挙げられる。
【0072】
有機単量体系の(A)成分の具体的な例としては、ジアリルフタレート、トリアリルトリメリテート、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート、トリメチロールプロパンジアリルエーテル、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル、1,1,2,2−テトラアリロキシエタン、ジアリリデンペンタエリスリット、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、1,2,4−トリビニルシクロヘキサン、ジビニルベンゼン類(純度50〜100%のもの、好ましくは純度80〜100%のもの)、ジビニルビフェニル、1,3−ジイソプロペニルベンゼン、1,4−ジイソプロペニルベンゼン、およびそれらのオリゴマー、
【0073】
【化16】

【0074】
【化17】

【0075】
に示されるような、従来公知のエポキシ樹脂のグリシジル基の一部または全部をアリル基に置き換えた化合物などが挙げられる。
【0076】
(A)成分としては、上記のように骨格部分とアルケニル基とに分けて表現しがたい、低分子量化合物も用いることができる。これらの低分子量化合物の具体例としては、ブタジエン、イソプレン、オクタジエン、デカジエンなどの脂肪族鎖状ポリエン化合物系、シクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、シクロオクタジエン、ジシクロペンタジエン、トリシクロペンタジエン、ノルボルナジエンなどの脂肪族環状ポリエン化合物系、ビニルシクロペンテン、ビニルシクロヘキセンなどの置換脂肪族環状オレフィン化合物系などが挙げられる。
【0077】
(A)成分としては、耐熱性をより向上させ得るという観点からは、SiH基に対して反応性を有する炭素−炭素二重結合を、(A)成分1gあたり0.001mol以上含有するものが好ましく、(A)成分1gあたり0.005mol以上含有するものがより好ましく、(A)成分1gあたり0.008mol以上含有するものがさらに好ましい。
【0078】
(A)成分において、SiH基に対して反応性を有する炭素−炭素二重結合の数は、平均して1分子当たり少なくとも2個あればよいが、力学強度をより向上したい場合には2を越えることが好ましく、3個以上であることがより好ましい。(A)成分のSiH基に対して反応性を有する炭素−炭素二重結合の数が1分子内当たり1個以下の場合は、(A)成分と(B)成分とが反応しても、グラフト構造のみが生成するだけで、架橋構造は生成しない。
【0079】
(A)成分としては、反応性が良好であるという観点からは、1分子中にビニル基を1個以上含有していることが好ましく、1分子中にビニル基を2個以上含有していることがより好ましい。また貯蔵安定性が良好となりやすいという観点からは、1分子中にビニル基を6個以下含有していることが好ましく、1分子中にビニル基を4個以下含有していることがより好ましい。
【0080】
(A)成分の分子量は、力学的耐熱性が高いという観点および原料液の糸引き性が少なく成形性、取扱い性が良好であるという観点、(E)成分および(F)成分などの粉体との均一な混合が容易という観点、および硬化性樹脂組成物タブレットとした際の成形性が良好であるという観点からは、好ましくは900未満、より好ましくは700未満、さらに好ましくは500未満である。
【0081】
(A)成分の粘度は、他の成分との均一な混合、および良好な作業性を得るためには、23℃において、好ましくは1000ポイズ未満、より好ましくは300ポイズ未満、さらに好ましくは30ポイズ未満である。粘度はE型粘度計によって測定することができる。
【0082】
(A)成分としては、耐光性がより高いという観点から、フェノール性水酸基および/またはフェノール性水酸基の誘導体を有する化合物の含有量が少ないものが好ましく、フェノール性水酸基および/およびフェノール性水酸基の誘導体を有する化合物を含まないものが好ましい。本発明におけるフェノール性水酸基とは、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環などに例示される芳香族炭化水素核に直接結合した水酸基であり、フェノール性水酸基の誘導体とは上述のフェノール性水酸基の水素原子をメチル基、エチル基などのアルキル基、ビニル基、アリル基などのアルケニル基、アセトキシ基などのアシル基などにより置換された基を示す。
【0083】
また、特に耐光性が良好であるという観点からは、(A)成分における芳香環の成分重量比が50重量%以下であるものが好ましく、40重量%以下のものがより好ましく、30重量%以下のものがさらに好ましい。最も好ましいのは芳香族炭化水素環を含まないものである。
【0084】
得られる樹脂硬化体の着色が少なく、耐光性が高いという観点からは、(A)成分としてはビニルシクロヘキセン、ジシクロペンタジエン、ビニルノルボルネン、トリアリルイソシアヌレート、2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパンのジアリルエーテル、1,2,4−トリビニルシクロヘキサンが好ましく、トリアリルイソシアヌレート、2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパンのジアリルエーテル、1,2,4−トリビニルシクロヘキサンが特に好ましい。
【0085】
(A)成分としては、耐熱性および耐光性が特に高いという観点からは、下記一般式(III)で表される化合物が好ましい。
【0086】
【化18】

【0087】
(式中3つのRは同一または異なって、炭素数1〜50の一価の有機基を示す。)
上記一般式(III)のRは、得られる樹脂硬化体の耐熱性がより高くなりうるという観点からは、好ましくは炭素数1〜20の一価の有機基であり、より好ましくは炭素数1〜10の一価の有機基であり、さらに好ましくは炭素数1〜4の一価の有機基である。これらの好ましいRの例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、フェニル基、ベンジル基、フェネチル基、ビニル基、アリル基、グリシジル基、下記に例示される各一価基などが挙げられる。
【0088】
【化19】

【0089】
上記一般式(III)のRとしては、樹脂成型体とリードまたは樹脂成型体と封止剤との接着性が良好になりうるか、または得られる樹脂成型体の力学強度が高くなり得るという観点からは、3つのRのうち少なくとも1つがエポキシ基を一つ以上含む炭素数1〜50の一価の有機基であることが好ましく、下記で表されるエポキシ基を1個以上含む炭素数1〜50の一価の有機基であることがより好ましい。
【0090】
【化20】

【0091】
これらの好ましいRの例としては、グリシジル基、
【0092】
【化21】

【0093】
に示される各基などが挙げられる。
【0094】
上記一般式(III)のRは、得られる樹脂硬化体の耐熱性が良好になりうるという観点からは、好ましくは、2個以下の酸素原子を含みかつ構成元素としてC、H、Oのみを含む炭素数1〜50の一価の有機基であり、より好ましくは、炭素数1〜50の一価の炭化水素基である。これらの好ましいRの例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、フェニル基、ベンジル基、フェネチル基、ビニル基、アリル基、グリシジル基、下記に示される各基などが挙げられる。
【0095】
【化22】

【0096】
上記一般式(III)のRとしては、反応性が良好になるという観点からは、3つのRのうち少なくとも1つが、下記で表される基を1個以上含む炭素数1〜50の一価の有機基であることが好ましい。
【0097】
【化23】

【0098】
また、3つのRのうち少なくとも1つが、下記一般式(IV)で表わされる基を1個以上含む炭素数1〜50の一価の有機基であることがより好ましい。
【0099】
【化24】

【0100】
(式中Rは水素原子またはメチル基を示す。)
また、3つのRのうち少なくとも2つが下記一般式(V)で表される有機化合物であることがさらに好ましい。
【0101】
【化25】

【0102】
(式中Rは直接結合または炭素数1〜48の二価の有機基を表し、Rは水素原子またはメチル基を表す。)
上記一般式(V)のRは、直接結合または炭素数1〜48の二価の有機基であるが、得られる樹脂成型体の耐熱性をより向上させるという観点からは、好ましくは直接結合または炭素数1〜20の二価の有機基であり、より好ましくは直接結合または炭素数1〜10の二価の有機基であり、さらに好ましくは直接結合または炭素数1〜4の二価の有機基である。これらの好ましいRの例としては、下記に示される各基が挙げられる。
【0103】
【化26】

【0104】
上記一般式(V)のRとしては、得られる樹脂硬化体の耐熱性をさらに向上させるという観点からは、好ましくは、直接結合しているかまたは2つ以下の酸素原子を含みかつ構成元素としてC、H、Oのみを含む炭素数1〜48の二価の有機基であり、より好ましくは直接結合または炭素数1〜48の二価の炭化水素基である。これらの好ましいRの例としては、下記に示される各基などが挙げられる。
【0105】
【化27】

【0106】
上記一般式(V)のRは、水素原子またはメチル基であるが、反応性が良好であるという観点からは、水素原子が好ましい。
【0107】
ただし、上記のような一般式(III)で表される有機化合物の好ましい例においても、SiH基に対して反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個含有することは必要である。耐熱性をより向上させるという観点からは、SiH基に対して反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に3個以上含有する有機化合物であることがより好ましい。
【0108】
以上のような一般式(III)で表される有機化合物の好ましい具体例としては、トリアリルイソシアヌレート、下記に示される各化合物などが挙げられる。
【0109】
【化28】

【0110】
別形態の(A)成分の好ましい具体例としては、(A)成分の例として上記したような、SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個含有する有機化合物から選ばれた1種以上の化合物と、SiH基を有する化合物(β)(以下「(β)成分」とする)との反応物が挙げられる。このような反応物は、(B)成分と良好な相溶性を有すると共に、その揮発性が低いことから、得られる樹脂成型体からのアウトガスの問題が生じ難いという利点を有している。
【0111】
(β)成分は、SiH基を有する化合物であり、SiH基を有する鎖状及び/又は環状のポリオルガノシロキサンもその例である。具体的には、たとえば、下記に示される各化合物などが挙げられる。
【0112】
【化29】

【0113】
【化30】

【0114】
ここで、SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個含有する有機化合物との相溶性が良くなりやすいという観点から、下記一般式(VI)で表される、1分子中に少なくとも3個のSiH基を有する環状ポリオルガノシロキサンが好ましい。
【0115】
【化31】

【0116】
(式中、Rは炭素数1〜6の有機基を表し、nは3〜10の数を表す。)
一般式(VI)で表される化合物中の置換基Rは、好ましくはC、H、O以外の構成元素を含まない基であり、より好ましくは炭化水素基であり、さらに好ましくはメチル基である。また、入手容易性などから、一般式(VI)で表わされる化合物は、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンであることが好ましい。
【0117】
(β)成分のその他の例として、ビスジメチルシリルベンゼンなどのSiH基を有する化合物をあげることができる。
【0118】
上記したような各種(β)成分は1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用できる。
【0119】
本発明では、上記したように、SiH基に対して反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個含有する有機化合物と(β)成分とをヒドロシリル化反応することにより得られる化合物を、(A)成分として使用できる。尚、SiH基に対して反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個含有する有機化合物と(β)成分とをヒドロシリル化反応させると、本発明の(A)成分となり得る化合物とそれ以外の複数の化合物を含む混合物が得られることがある。このような混合物から(A)成分となり得る化合物を分離することなく、そのまま用いて、本発明の硬化性樹脂組成物を作製することもできる。
【0120】
ここでは、このヒドロシリル化反応について詳細に説明する。
【0121】
このヒドロシリル化反応において、SiH基に対して反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個含有する有機化合物と(β)成分との混合比率は、特に限定されないが、反応中のゲル化が抑制できるという点においては、一般に、前者におけるSiH基に対して反応性を有する炭素−炭素二重結合の総数(X)と後者におけるSiH基の総数(Y)との比が、好ましくはX/Y≧2、より好ましくはX/Y≧3である。また(A)成分の(B)成分に対する相溶性がよくなりやすいという観点からは、好ましくは10≧X/Y、より好ましくは5≧X/Yである。
【0122】
このヒドロシリル化反応においては、適当な触媒を用いてもよい。触媒としては、たとえば、白金の単体、アルミナ、シリカ、カーボンブラックなどの担体に固体白金を担持させたもの、塩化白金酸、塩化白金酸とアルコール、アルデヒド、ケトンなどとの錯体、白金−オレフィン錯体(たとえば、Pt(CH=CH(PPh、Pt(CH=CHCl)、白金−ビニルシロキサン錯体(たとえば、Pt(ViMeSiOSiMeVi)、Pt[(MeViSiO))、白金−ホスフィン錯体(たとえば、Pt(PPh、Pt(PBu)、白金−ホスファイト錯体(たとえば、Pt[P(OPh)、Pt[P(OBu))(式中、Meはメチル基、Buはブチル基、Viはビニル基、Phはフェニル基を表し、n、mは、整数を示す。)、ジカルボニルジクロロ白金、カールシュテト(Karstedt)触媒、アシュビー(Ashby)の米国特許第3159601号及び3159662号明細書中に記載された白金−炭化水素複合体、ラモロー(Lamoreaux)の米国特許第3220972号明細書中に記載された白金アルコラート触媒、モディック(Modic)の米国特許第3516946号明細書中に記載された塩化白金−オレフィン複合体などが挙げられる。
【0123】
また、白金化合物以外の触媒の例としては、RhCl(PPh)、RhCl、RhAl、RuCl、IrCl、FeCl、AlCl、PdCl・2HO、NiCl、TiClなどが挙げられる。
【0124】
これらの触媒の中では、触媒活性の観点から塩化白金酸、白金−オレフィン錯体、白金−ビニルシロキサン錯体などが好ましい。また、これらの触媒は1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用できる。
【0125】
触媒の添加量は特に限定されないが、十分な硬化性を有し、コストが比較的低く抑えられた硬化性樹脂組成物を得るためには、(β)成分のSiH基1モルに対して、好ましくは10−8〜10−1モル、より好ましくは10−6〜10−2モルである。
【0126】
また、上記触媒と共に助触媒を使用できる。助触媒の具体例としては、トリフェニルホスフィンなどのリン系化合物、ジメチルマレートなどの1,2−ジエステル系化合物、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−ブチンなどのアセチレンアルコール系化合物、単体の硫黄などの硫黄系化合物、トリエチルアミンなどのアミン系化合物などが挙げられる。助触媒の添加量は特に限定されないが、ヒドロシリル化触媒1モルに対して、好ましくは10−2〜10モル、より好ましくは10−1モル〜10モルである。
【0127】
ヒドロシリル化反応において、SiH基に対して反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個含有する有機化合物、(β)成分および触媒の混合の方法としては、各種方法をとることができるが、SiH基に対して反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個含有する有機化合物に触媒を混合し、得られた混合物と(β)成分とを混合する方法が好ましい。SiH基に対して反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個含有する有機化合物と(β)成分とを混合し、得られた混合物に触媒を混合する方法では、反応の制御が困難になるおそれがある。また、(β)成分と触媒とを混合し、得られた混合物とSiH基に対して反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個含有する有機化合物とを混合する方法をとる場合は、触媒の存在下で(β)成分が混入している水分に対して反応性を有するため、最終的に得られる化合物が変質するおそれがある。
【0128】
反応温度は種々設定できるが、好ましくは30℃〜200℃、より好ましくは50℃〜150℃である。反応温度が低いと、十分に反応させるための反応時間が長くなり、反応温度が高いと実用的でない。反応は一定の温度で行ってもよいが、必要に応じて多段階または連続的に温度を変化させてもよい。
【0129】
反応時間、反応時の圧力も必要に応じ種々設定できる。
【0130】
ヒドロシリル化反応には溶剤を使用してもよい。使用できる溶剤はヒドロシリル化反応を阻害しない限り特に限定されるものではなく、具体的に例示すれば、ベンゼン、トルエン、ヘキサン、ヘプタンなどの炭化水素系溶剤、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、ジエチルエーテルなどのエーテル系溶剤、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン系溶剤、クロロホルム、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタンなどのハロゲン系溶剤を好適に用いることができる。溶剤は2種類以上の混合溶媒として用いることもできる。これらの溶剤の中でも、トルエン、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、クロロホルムが好ましい。使用する溶剤量も適宜設定できる。
【0131】
その他、反応性を制御する目的などのために種々の添加剤を用いてもよい。
【0132】
SiH基に対して反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個含有する有機化合物と(β)成分とを反応させた後に、溶剤および/または、未反応の、SiH基に対して反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個含有する有機化合物および/または(β)成分を除去することもできる。これらは揮発分であり、これらを除去することにより、得られる(A)成分が揮発分を含まなくなる。その結果、(A)成分と(B)成分との硬化の場合に、揮発分の揮発によるボイド、クラックの問題が生じにくい。除去する方法としては、たとえば、減圧脱揮の他、活性炭、ケイ酸アルミニウム、シリカゲルなどによる処理などが挙げられる。減圧脱揮する場合には低温で処理することが好ましい。この場合の温度の上限は好ましくは100℃であり、より好ましくは60℃である。高温で処理すると増粘などの変質を伴いやすい。
【0133】
以上のような、SiH基に対して反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個含有する有機化合物と(β)成分とのヒドロシリル化反応物である(A)成分の例としては、ビスフェノールAジアリルエーテルと1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンの反応物、ビニルシクロヘキセンと1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンの反応物、ジビニルベンゼンと1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンの反応物、ジシクロペンタジエンと1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンの反応物、トリアリルイソシアヌレートと1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンの反応物、ジアリルモノグリシジルイソシアヌレートと1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンの反応物、ビニルノルボルネンとビスジメチルシリルベンゼンとの反応物などが挙げられる。
【0134】
(A)成分はその他の反応性基を有していてもよい。この場合の反応性基としては、エポキシ基、アミノ基、ラジカル重合性不飽和基、カルボキシル基、イソシアネート基、ヒドロキシル基、アルコキシシリル基などが挙げられる。これらの官能基を有している場合には、得られる硬化性樹脂組成物の接着性が高くなりやすく、得られる樹脂硬化体の強度が高くなりやすい。接着性がより高くなりうるという観点からは、これらの官能基のうちエポキシ基が好ましい。また、得られる樹脂硬化体の耐熱性が高くなりやすいという観点からは、反応性基を平均して1分子中に1個以上有していることが好ましい。
【0135】
(A)成分は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用できる。
【0136】
次に、(B)成分について詳細に説明する。(B)成分は、1分子中に少なくとも2個のSiH基を含有する化合物である。
【0137】
(B)成分としては、1分子中に少なくとも2個のSiH基を含有する化合物であれば特に制限がなく、たとえば、国際公開WO96/15194に記載される化合物で、1分子中に少なくとも2個のSiH基を有するものなどが使用できる。
【0138】
これらのうち、入手性の面からは、1分子中に少なくとも2個のSiH基を有する鎖状及び/又は環状オルガノポリシロキサンが好ましく、(A)成分との相溶性が良いという観点からは、さらに、下記一般式(VI)で表される、1分子中に少なくとも2個のSiH基を有する環状オルガノポリシロキサンが好ましい。
【0139】
【化32】

【0140】
(式中、Rは炭素数1〜6の有機基を表し、nは3〜10の数を表す。)
一般式(VI)で表される化合物中の置換基Rは、好ましくはC、H、Oから構成されるものであり、より好ましくは炭化水素基であり、さらに好ましくはメチル基である。また、一般式(VI)で表される化合物としては、入手容易性の観点からは、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンであることが好ましい。
【0141】
(B)成分の分子量は特に限定されないが、より流動性を発現しやすく、(E)成分および(F)成分などの粉体と均一に混合しやすいという観点からは、低分子量のものが好ましく用いられる。この場合、分子量は、好ましくは50〜100,000、より好ましくは50〜1,000、さらに好ましくは50〜700である。
【0142】
(B)成分としては、他の成分、特に(E)成分および(F)成分などの粉体との均一な混合を容易にするため、更に詳しくは均一な混合のために融点以上に加熱して液体化させる必要がないことから、23℃において液体であることが好ましく、その粘度は、23℃において、好ましくは50Pa秒以下、より好ましくは20Pa秒以下、さらに好ましくは5Pa秒以下である。粘度はE型粘度計によって測定することができる。
【0143】
(B)成分は、一種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用できる。
【0144】
(B)成分の好ましい具体例としては、SiH基に対して反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に1個以上含有する有機化合物(α)(以下「α成分」とする)と、1分子中に少なくとも2個のSiH基を有する化合物(β)とを、ヒドロシリル化反応して得ることができる化合物が挙げられる。このような化合物は、(A)成分と良好な相溶性を有すると共に、その揮発性が低いことから、得られる硬化性樹脂組成物からのアウトガスの問題が生じ難いという利点を有している。
【0145】
ここで(α)成分は、上記した(A)成分である、SiH基に対して反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個含有する有機化合物と同じもの(以下「(α1)成分」とする)も用いることができる。(α1)成分を用いると、得られる樹脂硬化体の架橋密度が高くなり、力学強度が高い樹脂硬化体となりやすい。
【0146】
それ以外にも、SiH基に対して反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に1個含有する有機化合物(α2)(以下「α2成分」とする)も用いることができる。(α2)成分を用いると得られる樹脂硬化体が低弾性となりやすい。
【0147】
(α2)成分としては、SiH基に対して反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に1個含有する有機化合物であれば特に限定されないが、(B)成分の(A)成分に対する相溶性がよくなるという点においては、ポリシロキサン−有機ブロックコポリマーやポリシロキサン−有機グラフトコポリマーのようなシロキサン単位(Si−O−Si)を含む化合物ではなく、構成元素としてC、H、N、O、S、およびハロゲンのみを含む化合物であることが好ましい。なお、(α2)成分において、SiH基に対して反応性を有する炭素−炭素二重結合の結合位置は特に限定されず、分子内のどこに存在してもよい。
【0148】
(α2)成分である化合物は、重合体系化合物と単量体系化合物とに分類できる。
【0149】
重合体系化合物としては、たとえば、ポリシロキサン系、ポリエーテル系、ポリエステル系、ポリアリレート系、ポリカーボネート系、飽和炭化水素系、不飽和炭化水素系、ポリアクリル酸エステル系、ポリアミド系、フェノール−ホルムアルデヒド系(フェノール樹脂系)、ポリイミド系の化合物などが挙げられる。
【0150】
単量体系化合物としては、たとえば、フェノール系、ビスフェノール系、ベンゼン、ナフタレンなどの芳香族炭化水素系:直鎖系、脂環系などの脂肪族炭化水素系:複素環系の化合物;シリコン系の化合物;これらの混合物;などが挙げられる。
【0151】
(α2)成分における、SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合としては特に限定されないが、たとえば、下記一般式(I)で表わされる基が反応性の点から好適である。
【0152】
【化33】

【0153】
(式中Rは水素原子またはメチル基を表す。)
また、原料の入手の容易さからは、下記で示される基が特に好ましい。
【0154】
【化34】

【0155】
また、(α2)成分における、SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合としては、下記一般式(II)で示される脂環式の基が、樹脂硬化体の耐熱性が高いという点から好適である。
【0156】
【化35】

【0157】
(式中Rは水素原子またはメチル基を表す。)
また、原料の入手の容易さからは、下記で示される脂環式の基が特に好ましい。
【0158】
【化36】

【0159】
SiH基に対して反応性を有する炭素−炭素二重結合は、(α2)成分の骨格部分に直接結合していてもよく、2価以上の置換基を介して共有結合していても良い。2価以上の置換基としては、炭素数0〜10の置換基であれば特に限定されないが、(B)成分の(A)成分に対する相溶性がよくなりやすいという点においては、構成元素としてC、H、N、O、S、およびハロゲンのみを含むものが好ましい。これらの置換基の例としては、下記で示される2価以上の基が挙げられる。
【0160】
【化37】

【0161】
【化38】

【0162】
また、これらの2価以上の置換基の2つ以上が共有結合によりつながって1つの2価以上の置換基を構成していてもよい。
【0163】
以上のような骨格部分に共有結合する基の例としては、ビニル基、アリル基、メタリル基、アクリル基、メタクリル基、2−ヒドロキシ−3−(アリルオキシ)プロピル基、2−アリルフェニル基、3−アリルフェニル基、4−アリルフェニル基、2−(アリルオキシ)フェニル基、3−(アリルオキシ)フェニル基、4−(アリルオキシ)フェニル基、2−(アリルオキシ)エチル基、2、2−ビス(アリルオキシメチル)ブチル基、3−アリルオキシ−2、2−ビス(アリルオキシメチル)プロピル基、下記で示される各基などが挙げられる。
【0164】
【化39】

【0165】
(α2)成分の具体例としては、プロペン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ドデセン、1−ウンデセン、出光石油化学社製リニアレン、4,4−ジメチル−1−ペンテン、2−メチル−1−ヘキセン、2,3,3−トリメチル−1−ブテン、2,4,4−トリメチル−1−ペンテンなどの鎖状脂肪族炭化水素系化合物類、シクロヘキセン、メチルシクロヘキセン、メチレンシクロヘキサン、ノルボルニレン、エチリデンシクロヘキサン、ビニルシクロヘキサン、カンフェン、カレン、αピネン、βピネンなどの環状脂肪族炭化水素系化合物類、スチレン、αメチルスチレン、インデン、フェニルアセチレン、4−エチニルトルエン、アリルベンゼン、4−フェニル−1−ブテンなどの芳香族炭化水素系化合物、アルキルアリルエーテル、アリルフェニルエーテルなどのアリルエーテル類、グリセリンモノアリルエーテル、エチレングリコールモノアリルエーテル、4−ビニル−1,3−ジオキソラン−2−オンなどの脂肪族系化合物類、1,2−ジメトキシ−4−アリルベンゼン、o−アリルフェノールなどの芳香族系化合物類、モノアリルジベンジルイソシアヌレート、モノアリルジグリシジルイソシアヌレートなどの置換イソシアヌレート類、ビニルトリメチルシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリフェニルシランなどのシリコン化合物などが挙げられる。
【0166】
さらに、(α2)成分の具体例として、片末端アリル化ポリエチレンオキサイド、片末端アリル化ポリプロピレンオキサイドなどのポリエーテル系樹脂、片末端アリル化ポリイソブチレンなどの炭化水素系樹脂、片末端アリル化ポリブチルアクリレート、片末端アリル化ポリメチルメタクリレートなどのアクリル系樹脂などの、片末端にビニル基を有するポリマーまたはオリゴマー類などが挙げられる。
【0167】
(α2)成分の構造は線状でも枝分かれ状でもよく、分子量は特に制約はなく種々のものを使用できる。分子量分布も特に制限されないが、硬化性樹脂組成物の粘度が低くなり、成形性が良好となりやすいという点においては、分子量分布は好ましくは3以下であり、より好ましくは2以下であり、さらに好ましくは1.5以下である。本明細書において、分子量分布(重量平均分子量と数平均分子量の比)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いた標準ポリスチレン換算法により算出した。ただし、GPCカラムとしてポリスチレン架橋ゲルを充填したもの(shodex GPC K−804、K−802.5;昭和電工(株)製)を、GPC溶媒としてクロロホルムを用いた。
【0168】
(α2)成分がTgを有する場合、Tgについても特に限定はなく種々のものが用いられるが、得られる樹脂硬化体が強靭となりやすいという点においては、Tgは、好ましくは100℃以下であり、より好ましくは50℃以下であり、さらに好ましくは0℃以下である。好ましい樹脂の例としては、ポリブチルアクリレート樹脂などが挙げられる。逆に得られる樹脂硬化体の耐熱性が高くなるという点においては、Tgは、好ましくは100℃以上であり、より好ましくは120℃以上であり、さらに好ましくは150℃以上であり、最も好ましくは170℃以上である。Tgは動的粘弾性測定においてtanδが極大を示す温度として求めることができる。
【0169】
(α2)成分は、得られる樹脂硬化体の耐熱性が高くなるという観点からは、炭化水素化合物であることが好ましい。この場合、好ましい炭素数は7〜10である。
【0170】
(α2)成分は、その他の反応性基を有していてもよい。この場合の反応性基としては、エポキシ基、アミノ基、ラジカル重合性不飽和基、カルボキシル基、イソシアネート基、ヒドロキシル基、アルコキシシリル基などが挙げられる。これらの官能基を有している場合には、得られる硬化性樹脂組成物の接着性が高くなりやすく、得られる樹脂硬化体の強度が高くなりやすい。接着性がより高くなりうるという点からは、これらの官能基のうちエポキシ基が好ましい。また、得られる樹脂硬化体の耐熱性が高くなりやすいという点においては、反応性基を平均して1分子中に1個以上有していることが好ましい。具体的にはモノアリルジグリシジルイソシアヌレート、アリルグリシジルエーテル、アリロキシエチルメタクリレート、アリロキシエチルアクリレート、ビニルトリメトキシシランなどが挙げられる。
【0171】
上記のような(α1)成分は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用できる。また、(α2)成分も、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用できる。
【0172】
次に(β)成分について、詳細に説明する。(β)成分は、1分子中に少なくとも2個のSiH基を有する化合物であり、鎖状及び/又は環状のポリオルガノシロキサンもその例である。具体的には、たとえば、下記に示される各化合物が挙げられる。
【0173】
【化40】

【0174】
【化41】

【0175】
ここで、(α)成分との相溶性が良くなりやすいという観点から、下記一般式(VI)で表される、1分子中に少なくとも3個のSiH基を有する環状ポリオルガノシロキサンが好ましい。下記一般式(VI)で表される化合物中の置換基Rは、好ましくはC、H、Oから構成される基であり、より好ましくは炭化水素基であり、さらに好ましくはメチル基である。また、入手容易性などから、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンであることが好ましい。
【0176】
【化42】

【0177】
(式中、Rは炭素数1〜6の有機基を表し、nは3〜10の数を表す。)
(β)成分のその他の例として、ビスジメチルシリルベンゼンなどのSiH基を有する化合物が挙げられる。
【0178】
上記した各種(β)成分は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用できる。。
【0179】
上記したように、本発明においては、(α)成分と(β)成分とをヒドロシリル化反応させることにより得られる化合物を(B)成分として使用できる。尚、(α)成分と(β)成分とをヒドロシリル化反応すると、本発明の(B)成分として使用できる化合物と共に、他の1種以上の化合物を含む混合物が得られることがある。このような混合物は、そこから(B)成分として使用できる化合物を分離することなく、そのまま(B)成分として用いて本発明の硬化性樹脂組成物を作製することもできる。
【0180】
(α)成分と(β)成分とのヒドロシリル化反応は、具体的には次の通りである。(α)成分と(β)成分の混合比率は、特に限定されないが、得られる(B)成分と(A)成分とのヒドロシリル化による樹脂硬化体の強度を考えた場合、(B)成分のSiH基が多い方が好ましいため、一般に混在する(α)成分中のSiH基に対する反応性を有する炭素−炭素二重結合の総数(X)と、混在する(β)成分中のSiH基の総数(Y)との比(Y/X)が、好ましくはY/X≧2であり、より好ましくはY/X≧3である。また(B)成分の(A)成分に対する相溶性がよくなりやすいという観点からは、好ましくは10≧Y/Xであり、より好ましくは5≧Y/Xである。
【0181】
(α)成分と(β)成分とのヒドロシリル化反応においては、適当な触媒を用いてもよい。触媒としては、たとえば、白金の単体、アルミナ、シリカ、カーボンブラックなどの担体に固体白金を担持させたもの、塩化白金酸、塩化白金酸とアルコール、アルデヒド、ケトンなどとの錯体、白金−オレフィン錯体(たとえば、Pt(CH=CH(PPh、Pt(CH=CHCl)、白金−ビニルシロキサン錯体(たとえば、Pt(ViMeSiOSiMeVi)、Pt[(MeViSiO))、白金−ホスフィン錯体(たとえば、Pt(PPh、Pt(PBu)、白金−ホスファイト錯体(たとえば、Pt[P(OPh)、Pt[P(OBu))(式中、Meはメチル基、Buはブチル基、Viはビニル基、Phはフェニル基を表し、n、mは、整数を示す。)、ジカルボニルジクロロ白金、カールシュテト(Karstedt)触媒、アシュビー(Ashby)の米国特許第3159601号及び第3159662号明細書中に記載された白金−炭化水素複合体、ラモロー(Lamoreaux)の米国特許第3220972号明細書中に記載された白金アルコラート触媒、モディック(Modic)の米国特許第3516946号明細書中に記載された塩化白金−オレフィン複合体などが挙げられる。
【0182】
また、白金化合物以外の触媒の例としては、RhCl(PPh)、RhCl、RhAl、RuCl、IrCl、FeCl、AlCl、PdCl・2HO、NiCl、TiCl、などが挙げられる。
【0183】
これらの中では、触媒活性の点から塩化白金酸、白金−オレフィン錯体、白金−ビニルシロキサン錯体などが好ましい。
【0184】
上記した各種の触媒は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用できる。
【0185】
触媒の添加量は特に限定されないが、十分な硬化性を有し、かつコストが比較的に低く抑えられた硬化性樹脂組成物を得るためには、好ましくは10−8モル〜10−1モル、より好ましくは10−6モル〜10−2モルである。
【0186】
また、上記触媒と共に助触媒を使用できる。助触媒の具体例としては、トリフェニルホスフィンなどのリン系化合物、ジメチルマレートなどの1,2−ジエステル系化合物、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−ブチンなどのアセチレンアルコール系化合物、単体の硫黄などの硫黄系化合物、トリエチルアミンなどのアミン系化合物などが挙げられる。助触媒の添加量は特に限定されないが、ヒドロシリル化触媒1モルに対して、好ましくは10−2モル〜10モル、より好ましくは10−1モル〜10モルである。
【0187】
反応させる場合の(α)成分、(β)成分および触媒の混合の方法としては、各種方法をとることができるが、(α)成分に触媒を混合し、得られた混合物を(β)成分に混合する方法が好ましい。(α)成分と(β)成分との混合物に触媒を混合する方法をとる場合は、反応の制御が困難になるおそれがある。(β)成分と触媒との混合物に(α)成分を混合する方法をとる場合は、触媒の存在下で(β)成分が混入している水分に対して反応性を有するため、得られる最終生成物が変質するおそれがある。
【0188】
反応温度としては種々設定できるが、好ましくは30℃〜200℃、より好ましくは50℃〜150℃である。反応温度が低いと十分に反応させるための反応時間が長くなり、反応温度が高いと実用的でない。反応は一定の温度で行ってもよいが、必要に応じて多段階または連続的に温度を変化させてもよい。
【0189】
反応時間、反応時の圧力も必要に応じ種々設定できる。
【0190】
(α)成分と(β)成分とのヒドロシリル化反応に溶剤を使用してもよい。使用できる溶剤はヒドロシリル化反応を阻害しない限り特に限定されるものではなく、具体的に例示すれば、ベンゼン、トルエン、ヘキサン、ヘプタンなどの炭化水素系溶剤、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、ジエチルエーテルなどのエーテル系溶剤、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン系溶剤、クロロホルム、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタンなどのハロゲン系溶剤を好適に用いることができる。溶剤は1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用できる。これらの溶剤の中でも、トルエン、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、クロロホルムが好ましい。溶剤の使用量も適宜設定できる。
【0191】
その他、反応性を制御する目的などのために種々の添加剤を用いてもよい。
【0192】
(α)成分と(β)成分とを反応させた後に、溶剤および/または未反応の(α)成分および/または(β)成分を除去することもできる。これらは揮発分であり、これらを除去することにより、揮発分を有しない(B)成分が得られる。その結果、(A)成分と(B)成分とを硬化させる場合に揮発分の揮発によるボイド、クラックの問題が生じにくい。除去する方法としては、たとえば、減圧脱揮の他、活性炭、ケイ酸アルミニウム、シリカゲルなどによる処理などが挙げられる。減圧脱揮する場合には低温で処理することが好ましい。この場合の温度の上限は、好ましくは100℃、より好ましくは60℃である。高温で処理すると増粘などの変質を伴いやすい。
【0193】
以上のような、(α)成分と(β)成分のヒドロシリル化反応物である(B)成分の具体例としては、ビスフェノールAジアリルエーテルと1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンの反応物、ビニルシクロヘキセンと1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンの反応物、ジビニルベンゼンと1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンの反応物、ジシクロペンタジエンと1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンの反応物、トリアリルイソシアヌレートと1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンの反応物、ジアリルモノグリシジルイソシアヌレートと1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンの反応物、アリルグリシジルエーテルと1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンの反応物、αメチルスチレンと1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンの反応物、モノアリルジグリシジルイソシアヌレートと1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンの反応物、ビニルノルボルネンとビスジメチルシリルベンゼンとの反応物などが挙げられる。
【0194】
(A)成分と(B)成分とを混合する場合、(A)成分と(B)成分の組合せとしては、上記に例示した(A)成分から選ばれる少なくとも1種と、上記に例示した(B)成分から選ばれる少なくとも1種と、の各種組み合わせが挙げられる。
【0195】
(A)成分と(B)成分との混合比率は、必要な強度を失わない限りは特に限定されないが、(B)成分中のSiH基の数(Y)の、(A)成分中の炭素−炭素二重結合の数(X)に対する比(Y/X、モル比)が、好ましくは0.3≦Y/X≦3、より好ましくは0.5≦Y/X≦2、さらに好ましくは0.7≦Y/X≦1.5である。好ましい範囲からはずれた場合には、十分な強度が得られなかったり、熱劣化しやすくなる場合がある。
【0196】
本発明の(C)成分はヒドロシリル化触媒である。ヒドロシリル化触媒としては、ヒドロシリル化反応の触媒活性があれば特に限定されないが、たとえば、白金の単体、アルミナ、シリカ、カーボンブラックなどの担体に固体白金を担持させたもの、塩化白金酸、塩化白金酸とアルコール、アルデヒド、ケトンなどとの錯体、白金−オレフィン錯体(たとえば、Pt(CH=CH(PPh、Pt(CH=CHCl)、白金−ビニルシロキサン錯体(たとえば、Pt(ViMeSiOSiMeVi)n、Pt[(MeViSiO)]m)、白金−ホスフィン錯体(たとえば、Pt(PPh、Pt(PBu)、白金−ホスファイト錯体(たとえば、Pt[P(OPh)、Pt[P(OBu))(式中、Meはメチル基、Buはブチル基、Viはビニル基、Phはフェニル基を表し、n、mは、整数を示す。)、ジカルボニルジクロロ白金、カールシュテト(Karstedt)触媒、また、アシュビー(Ashby)の米国特許第3159601号および3159662号明細書中に記載された白金−炭化水素複合体、ラモロー(Lamoreaux)の米国特許第3220972号明細書中に記載された白金アルコラート触媒、モディック(Modic)の米国特許第3516946号明細書中に記載された塩化白金−オレフィン複合体などが挙げられる。
【0197】
また、白金化合物以外の触媒としては、RhCl(PPh)、RhCl、RhAl、RuCl、IrCl、FeCl、AlCl、PdCl・2HO、NiCl、TiCl、などが挙げられる。
【0198】
これらの触媒の中では、触媒活性の点から塩化白金酸、白金−オレフィン錯体、白金−ビニルシロキサン錯体などが好ましい。また、これらの触媒は1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用できる。
【0199】
触媒の添加量は特に限定されないが、十分な硬化性を有し、かつ硬化性樹脂組成物のコストを比較的低く抑えるためには、(B)成分のSiH基1モルに対して、好ましくは10−8モル〜10−1モル、より好ましくは10−6モル〜10−2モルである。
【0200】
また、上記触媒と共に助触媒を使用できる。助触媒の具体例としては、トリフェニルホスフィンなどのリン系化合物、ジメチルマレートなどの1,2−ジエステル系化合物、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−ブチンなどのアセチレンアルコール系化合物、単体の硫黄などの硫黄系化合物、トリエチルアミンなどのアミン系化合物などが挙げられる。助触媒の添加量は特に限定されないが、ヒドロシリル化触媒1モルに対して、好ましくは10−2モル〜10モルであり、より好ましくは10−1モル〜10モルである。
【0201】
本発明の(D)成分は、SiH基に対して反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも1個含有するシリコーン化合物である。(D)成分を用いることにより、(E)成分の無機充填材と混合した場合に、より小さな線膨張係数を有する樹脂硬化体を与える熱硬化性樹脂組成物(X)とすることができる。
【0202】
(D)成分のシリコーン化合物は、実質的にその骨格がSi−O−Si結合で形成されている化合物であり、直鎖状、環状、分枝状、部分ネットワークを有するものなど種々のものが用いられる。このような骨格には、種々の置換基が結合していてもよい。
【0203】
骨格に結合する置換基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、オクチル基などのアルキル基、フェニル基、2−フェニルエチル基、2−フェニルプロピル基などのアリール基、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基などのアルコキシ基、水酸基などの基が挙げられる。これらのうち、耐熱性が高くなりやすいという点においては、メチル基、フェニル基、水酸基、メトキシ基が好ましく、メチル基、フェニル基がより好ましい。また、SiH基に対して反応性を有する炭素−炭素二重結合を有する置換基としては、ビニル基、アリル基、アクリロキシ基、メタクリロキシ基、アクリロキシプロピル基、メタクリロキシプロピル基などが挙げられる。これらの中でも、反応性がよいという点においては、ビニル基が好ましい。
【0204】
(D)成分は、次の式で表わされる化合物であってもよい。
【0205】
(CH=CH)SiO(4−n−m)/2
(式中、Rは水酸基、メチル基あるいはフェニル基から選ばれる基であり、n、mは0≦n<4、0<m≦4、0<n+m≦4を満たす数)
(D)成分の具体例としては、末端基または側鎖基としてビニル基を有するポリジメチルシロキサン、ポリジフェニルシロキサン、ポリメチルフェニルシロキサン、これらのシロキサンから選ばれる2種または3種のランダムまたはブロック共重合体、1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサン、1,3,5,7−テトラビニルシクロテトラシロキサンなどが挙げられる。(D)成分は1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用できる。
【0206】
これらの内、本発明の効果がより得られやすいという点においては、ビニル基を末端に有する直鎖状ポリシロキサンが好ましく、ビニル基を両末端に有する直鎖状ポリシロキサンがより好ましく、両末端にビニル基を有する直鎖状ポリメチルフェニルシロキサンがさらに好ましく、両末端にビニル基を有する直鎖状ポリメチルフェニルシロキサンであって、全置換基に対するフェニル基の量が20モル%以上であるシロキサンであることが特に好ましい。
【0207】
(D)成分の分子量は、重量平均分子量(Mw)として、好ましくは1,000以上、1,000,000以下であり、より好ましくは5,000以上、100,000以下であり、さらに好ましくは10,000以上、100,000以下である。分子量が高い場合には、得られる樹脂硬化体が低応力となりやすい。分子量が大きい場合には、(A)成分との相溶性が得られにくくなる。
【0208】
(D)成分の使用量は、(A)成分と(B)成分との合計量に対して、好ましくは30重量%以上、より好ましくは50重量%以上、さらに好ましくは80重量%以上である。
【0209】
また、(A)成分、(B)成分および(D)成分の混合比率は、必要な強度を失わない限りは特に限定されないが、(B)成分中のSiH基の数(Y)の、(A)成分および(D)成分中のSiH基に対して反応性を有する炭素−炭素二重結合の数(X)に対する比が、好ましくは0.3≦Y/X≦3、より好ましくは0.5≦Y/X≦2、さらに好ましくは0.7≦Y/X≦1.5である。好ましい範囲からはずれた場合には、十分な強度が得られなかったり、熱劣化しやすくなったりする場合がある。
本発明の(E)成分は無機充填材である。(E)成分は、得られる樹脂硬化体の強度や硬度を高くしたり、線膨張率を低減化したりする効果を有する。
【0210】
(E)成分の無機充填材としては、従来のエポキシ系などの封止材の充填材として一般に使用および/または提案されている各種無機充填材が用いられるが、たとえば、石英、ヒュームドシリカ、沈降性シリカ、無水ケイ酸、溶融シリカ、結晶性シリカ、超微粉無定型シリカなどのシリカ系無機充填材、アルミナ、ジルコン、窒化ケイ素、窒化アルミ、炭化ケイ素、ガラス繊維、アルミナ繊維、炭素繊維、マイカ、黒鉛、カーボンブラック、グラファイト、ケイソウ土、白土、クレー、タルク、水酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、チタン酸カリウム、ケイ酸カルシウム、無機バルーン、銀粉などが挙げられる。無機充填材としては、半導体素子へダメージを与え難いという観点からは、低放射線性であることが好ましい。
【0211】
無機充填材は適宜表面処理してもよい。表面処理としては、カップリング剤による処理、アルキル化処理、トリメチルシリル化処理、シリコーン処理などが挙げられる。
【0212】
この場合のカップリング剤の例としては、シランカップリング剤が挙げられる。シランカップリング剤としては、分子中に有機基と反応性のある官能基と加水分解性のケイ素基を各々少なくとも1個有する化合物であれば特に限定されない。有機基と反応性のある基としては、取扱い性の点からエポキシ基、メタクリル基、アクリル基、イソシアネート基、イソシアヌレート基、ビニル基、カルバメート基から選ばれる少なくとも1個の官能基が好ましく、硬化性及び接着性の点から、エポキシ基、メタクリル基、アクリル基が特に好ましい。加水分解性のケイ素基としては取扱い性の点からアルコキシシリル基が好ましく、反応性の点からメトキシシリル基、エトキシシリル基が特に好ましい。
【0213】
好ましいシランカップリング剤としては、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシランなどのエポキシ官能基を有するアルコキシシラン類:3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、メタクリロキシメチルトリメトキシシラン、メタクリロキシメチルトリエトキシシラン、アクリロキシメチルトリメトキシシラン、アクリロキシメチルトリエトキシシランなどのメタクリル基またはアクリル基を有するアルコキシシラン類などが挙げられる。
【0214】
その他にも、無機化合物を添加する方法が挙げられる。たとえば、本発明の硬化性樹脂組成物に無機化合物を添加して、硬化性樹脂組成物中または硬化性樹脂組成物の部分反応物中で反応させ、硬化性樹脂組成物中で無機充填材を生成させる方法が挙げられる。このような無機化合物としては、アルコキシシラン、アシロキシシラン、ハロゲン化シランなどの加水分解性シランモノマーまたはオリゴマー、チタン、アルミニウムなどの金属のアルコキシド、アシロキシド、ハロゲン化物などが挙げられる。
【0215】
以上のような無機充填材のうち、硬化反応を阻害し難く、線膨張係数の低減化効果が大きく、リードまたはリードフレームとの接着性が高くなりやすいという観点からは、シリカ系無機充填材が好ましい。さらに、成形性、電気特性などの物性バランスがよいという観点からは、溶融シリカが好ましく、樹脂硬化体の熱伝導性が高くなり易く、放熱性の高い樹脂成型体設計が可能になるという観点からは、結晶性シリカが好ましい。より放熱性が高くなり易いという観点からは、アルミナが好ましい。また、樹脂成型体に用いられる樹脂の光反射率が高く、得られる発光装置における光取りだし効率が高くなりやすいという観点からは、酸化チタンが好ましい。その他、補強効果が高く、樹脂成型体の強度が高くなり易いという観点からは、ガラス繊維、チタン酸カリウム、ケイ酸カルシウムが好ましい。
【0216】
無機充填材の平均粒径や粒径分布としては、エポキシ系などの従来の封止材の充填材として使用および/または提案されているものをはじめ、特に限定なく各種のものが用いられるが、通常用いられる平均粒径は0.1μm〜120μmであり、流動性が良好になりやすいという観点から好ましくは0.5μm〜60μm、より好ましくは0.5μm〜15μmである。
【0217】
無機充填材の比表面積についても、エポキシ系などの従来の封止材の充填材として使用および/または提案されているものをはじめ、各種設定できる。
【0218】
無機充填材の形状としては、破砕状、片状、球状、棒状など、各種のものが用いられる。アスペクト比も種々のものが用いられる。得られる樹脂硬化体の強度が高くなりやすいという観点からは、アスペクト比が10以上のものが好ましい。また、樹脂のなど方性収縮の観点からは、繊維状よりは粉末状が好ましい。高充填時にも成形時の流れ性がよくなり易いという観点からは、球状のものが好ましい。
【0219】
上記した各種の無機充填材は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用できる。
【0220】
(E)成分の使用量は特に限定されないが、熱硬化性樹脂組成物(X)全体に占める(E)成分の合計の量が70重量%以上であることが好ましく、80重量%以上であることがより好ましく、90重量%以上であることがさらに好ましい。(E)成分の量が少ないと、強度や硬度を向上させる効果、線膨張率を低減化する効果などが得られにくくなる。
【0221】
(E)成分の無機充填材の混合の順序としては、各種方法をとることができるが、熱硬化性樹脂組成物(X)の中間原料の貯蔵安定性が良好になりやすいという観点からは、(A)成分に(C)成分および無機充填材を混合したものと、(B)成分とを混合する方法が好ましい。(B)成分に(C)成分および/または無機充填材を混合したものに(A)成分を混合する方法をとる場合は、(C)成分の存在下および/または非存在下において(B)成分が環境中の水分および/または無機充填材との反応性を有するため、貯蔵中などに変質することもある。また、反応成分である(A)成分、(B)成分および(C)成分がよく混合されて安定した成形物が得られやすいという観点からは、(A)成分、(B)成分および(C)成分を混合したものと、無機充填材と、を混合することが好ましい。
【0222】
(E)成分の無機充填材を混合する手段としては、従来エポキシ樹脂などに用いられおよび/または提案されている種々の手段を用いることができる。たとえば、2本ロール、3本ロール、遊星式撹拌脱泡装置、ホモジナイザー、ディゾルバー、プラネタリーミキサーなどの撹拌機、プラストミルなどの溶融混練機などが挙げられる。これらのうち、高充填であっても無機充填材の十分な分散性が得られやすいという観点からは、3本ロール、溶融混練機が好ましい。無機充填材の混合は、常温で行ってもよいし加熱して行ってもよい。また、常圧下に行ってもよいし減圧状態で行ってもよい。高充填であっても無機充填材の十分な分散性が得られやすいという観点からは、加熱状態で混合することが好ましく、無機充填材表面の塗れ性を向上させ、十分な分散性が得られやすいという観点からは、減圧状態で混合することが好ましい。
【0223】
熱硬化性樹脂組成物(X)は、(F)成分を含有することが望ましい。(F)成分は白色顔料であり、得られる樹脂硬化体の光線反射率を高める効果を有する。
【0224】
(F)成分としては種々のものを用いることができ、たとえば、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化アンチモン、酸化ジルコニウム、酸化ストロンチウム、酸化ニオブ、窒化ホウ素、チタン酸バリウム、硫化亜鉛、硫酸バリウム、炭酸マグネシウム、無機中空粒子が挙げられる。無機中空粒子は、例えば珪酸ソーダガラス、アルミ珪酸ガラス、硼珪酸ソーダガラス、シラス等が挙げられる。中でも、取り扱いの容易性や入手性、コストの観点から酸化チタンまたは酸化亜鉛が好ましい。
【0225】
(F)成分の酸化チタンとしては種々のものを用いることができ、アナターゼ型であってもルチル型であってもよいが、光触媒作用がなく熱硬化性樹脂組成物(X)が安定になりやすいという点ではルチル型であることが好ましい。
【0226】
(F)成分の平均粒径としては特に限定されず、種々のものが用いられるが、得られる樹脂硬化体の光反射率が高くなりやすく、また熱硬化性樹脂組成物(X)のタブレットがより硬くなるという観点からは、好ましくは1μm以下、より好ましくは0.3μm以下、さらに好ましくは0.25μm以下である。熱硬化性樹脂組成物(X)のタブレットについては後述する。一方、熱硬化性樹脂組成物(X)の流動性が高いという観点からは、好ましくは0.05μm以上、より好ましくは0.1μm以上である。
【0227】
平均粒径は、レーザー回折散乱式粒度分布計を用いて測定することができる。
【0228】
(F)成分の酸化チタンの製造方法としても硫酸法、塩素法などいずれの方法により製造されたものも使用できる。
(F)成分は表面処理が施されていても良い。(F)成分の表面処理では、(F)成分の表面に無機化合物および有機化合物から選ばれる少なくとも1種を被覆する。無機化合物としては、たとえば、アルミニウム化合物、ケイ素化合物、ジルコニウム化合物、スズ化合物、チタニウム化合物、アンチモン化合物などが挙げられ、また、有機化合物としては、多価アルコール、アルカノールアミン又はその誘導体、有機シロキサンなどの有機ケイ素化合物、高級脂肪酸およびその金属塩、有機金属化合物などが挙げられる。
【0229】
(F)成分表面への無機化合物や有機化合物の被覆は、湿式法や乾式法の公知の方法を用いて、たとえば酸化チタンを乾式粉砕する際、湿式粉砕する際またはスラリー化する際に行うことができる。他にも、液相法、気相法など、種々の方法が挙げられる。
【0230】
これらのなかでは、得られる樹脂硬化体の光反射率が高く、耐熱性および耐光性が良好になる観点から、有機シロキサンで処理されていることが好ましい。また、有機シロキサン処理された酸化チタンを含有させることにより、光取り出し効率が高く、長期間使用しても光取り出し効率が低下しない優良な発光装置を得ることができる。
【0231】
ここで、有機シロキサン処理剤としては種々のものを使用でき、たとえば、シランカップリング剤や、ヘキサメチルジシロキサン、ヘキサメチルジシラザンなどが挙げられる。シランカップリング剤としては各種シラン類を使用でき、たとえば、ポリジメチルシロキサン、ポリメチルフェニルシロキサン、ポリメチルハイドロジェンシロキサン、それらの2種以上の共重合体などのポリシロキサン類、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、ヘプタメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンなどのシクロシロキサン類、トリメチルクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、メチルトリクロロシランなどのクロロシラン類、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシランなどのエポキシ官能基を有するシラン類、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、メタクリロキシメチルトリメトキシシラン、メタクリロキシメチルトリエトキシシラン、アクリロキシメチルトリメトキシシラン、アクリロキシメチルトリエトキシシランなどのメタクリル基またはアクリル基を有するシラン類、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリアセトキシシランなどのビニル基を有するシラン類、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシランなどのメルカプトシラン類、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−[ビス(β−ヒドロキシエチル)]アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(β−アミノエチル)アミノプロピルジメトキシメチルシラン、N−(トリメトキシシリルプロピル)エチレンジアミン、N−(ジメトキシメチルシリルイソプロピル)エチレンジアミン、N−β−(N−ビニルベンジルアミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノ基を有するシラン類、イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、イソシアネートプロピルトリエトキシシランなどのイソシアネート基を有するシラン類、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、オクチルトリエトキシシランなどのアルキル基を有するシラン類、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−アニリノプロピルトリメトキシシランなどのその他のシラン類などが挙げられる。これらの有機シロキサン処理剤の中でも、炭素−炭素二重結合を含まないものが好ましい。炭素−炭素二重結合を含むと、耐熱性が低下しやすくなる。また、有機シロキサン以外の表面処理剤を併用することも可能である。このような表面処理剤としては、Al、Zr、Znなどが挙げられる。
【0232】
また、(F)成分は、無機化合物により表面処理されていてもよい。無機化合物による表面処理方法としては特に限定されず、アルミニウム化合物、ケイ素化合物、ジルコニウム化合物などを用いる、種々の表面処理方法が挙げられる。表面処理の方法としても各種方法を適用することができ、湿式法、乾式法、液相法、気相法など、種々の方法が例示できる。酸化チタンは、耐久性を向上させ、媒体との親和性を向上させ、さらには粒子形状の崩れを防止するなどの目的で無機化合物、有機化合物で表面処理する場合がある。(F)成分を無機化合物で表面処理することにより、熱硬化性樹脂組成物(X)に含まれる各成分との親和性が向上し、(F)成分の熱硬化性樹脂組成物(X)に対する分散性が良くなり、樹脂硬化体の強度が向上すると考えられる。
【0233】
(F)成分の使用量は、特に限定されないが、熱硬化性樹脂組成物(X)全体に占める(F)成分の量が10重量%以上であることが好ましく、15重量%以上であることがより好ましく、20重量%以上であることがさらに好ましい。10重量%未満であると、得られる樹脂硬化体の光線反射率が低下することがある。
【0234】
(E)成分および(F)成分の合計量は特に限定されないが、熱硬化性樹脂組成物(X)全体に占める(E)成分および(F)成分の合計量が85重量%以上であることが好ましく、90重量%以上であることがより好ましい。
【0235】
(E)成分および(F)成分の合計量が少ないと、強度や硬度を高くする効果や、線膨張率を低減化する効果が得られにくくなる。
【0236】
(F)成分の混合の順序としては、各種方法をとることができるが、好ましい態様は、既に説明した(E)と同様である。また、(F)成分と(E)成分とは同時に添加してもよい。
【0237】
(F)成分を混合する手段としては、(E)成分を混合する手段と同様の手段を用いることかできる。
【0238】
熱硬化性樹脂組成物(X)は、(G)成分を含有することが望ましい。
【0239】
(G)成分は金属石鹸であり、熱硬化性樹脂組成物(X)の離型性をはじめとする成形性を改良するために添加される。
【0240】
(G)成分としては、従来使用されている各種金属石鹸があげられる。ここでいう金属石鹸とは、一般に長鎖脂肪酸と金属イオンが結合したものであり、脂肪酸に基づく無極性または低極性の部分と、金属との結合部分に基づく極性の部分を一分子中に併せて持っていれば本発明で使用できる。長鎖脂肪酸としては、たとえば、炭素数1〜18の飽和脂肪酸、炭素数3〜18の不飽和脂肪酸、脂肪族ジカルボン酸などが挙げられる。これらの中では、入手性が容易であり、工業的実現性が高いという観点からは、炭素数1〜18の飽和脂肪酸が好ましく、さらに、離型性の効果が高いという観点からは、炭素数6〜18の飽和脂肪酸がより好ましい。金属イオンとしては、アルカリ金属、アルカリ土類金属、亜鉛、コバルト、アルミニウム、ストロンチウムなどのイオンが挙げられる。
【0241】
金属石鹸をより具体的に例示すれば、ステアリン酸リチウム、12−ヒドロキシステアリン酸リチウム、ラウリン酸リチウム、オレイン酸リチウム、2−エチルヘキサン酸リチウム、ステアリン酸ナトリウム、12−ヒドロキシステアリン酸ナトリウム、ラウリン酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、2−エチルヘキサン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、12−ヒドロキシステアリン酸カリウム、ラウリン酸カリウム、オレイン酸カリウム、2−エチルヘキサン酸カリウム、ステアリン酸マグネシウム、12−ヒドロキシステアリン酸マグネシウム、ラウリン酸マグネシウム、オレイン酸マグネシウム、2−エチルヘキサン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、12−ヒドロキシステアリン酸カルシウム、ラウリン酸カルシウム、オレイン酸カルシウム、2−エチルヘキサン酸カルシウム、ステアリン酸バリウム、12−ヒドロキシステアリン酸バリウム、ラウリン酸バリウム、ステアリン酸亜鉛、12−ヒドロキシステアリン酸亜鉛、ラウリン酸亜鉛、オレイン酸亜鉛、2−エチルヘキサン酸亜鉛、ステアリン酸鉛、12−ヒドロキシステアリン酸鉛、ステアリン酸コバルト、ステアリン酸アルミニウム、オレイン酸マンガン、リシノール酸バリウムなどが挙げられる。これらの金属石鹸の中では、入手性が容易であり、安全性が高く、工業的実現性が高いという観点から、ステアリン酸金属塩類が好ましく、特に経済性の観点からは、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウムおよびステアリン酸亜鉛からなる群から選択される1つ以上のものが最も好ましい。
【0242】
金属石鹸の添加量は特に制限はないが、熱硬化性樹脂組成物(X)全体100重量部に対して、好ましくは0.01重量部〜5重量部、より好ましくは0.025重量部〜4重量部、さらに好ましくは0.05重量部〜4重量部である。添加量が多すぎる場合は、得られる樹脂硬化体の物性が低下し、添加量が少なすぎる場合は、金型離型性が得られないことがある。
【0243】
熱硬化性樹脂組成物(X)には種々の添加剤を添加することができる。添加剤としては、表面実装型発光装置用の樹脂硬化体に用いられる各種の添加剤をいずれも使用でき、たとえば、硬化遅延剤、接着性改良剤、老化防止剤、ラジカル禁止剤、紫外線吸収剤、溶剤、発光素子のための添加剤、離型剤などが挙げられる。
【0244】
硬化遅延剤は、たとえば、熱硬化性樹脂組成物(X)の保存安定性を改良する目的または製造過程でのヒドロシリル化反応の反応性を調整する目的で使用することができる。硬化遅延剤としては、脂肪族不飽和結合を含有する化合物、有機リン化合物、有機イオウ化合物、窒素含有化合物、スズ系化合物、有機過酸化物などが挙げられる。
【0245】
脂肪族不飽和結合を含有する化合物としては、3−ヒドロキシ−3−メチル−1−ブチン、3−ヒドロキシ−3−フェニル−1−ブチン、1−エチニル−1−シクロヘキサノールなどのプロパギルアルコール類、エン−イン化合物類、ジメチルマレートなどのマレイン酸エステル類などが挙げられる。有機リン化合物としては、トリオルガノフォスフィン類、ジオルガノフォスフィン類、オルガノフォスフォン類、トリオルガノフォスファイト類などが挙げられる。有機イオウ化合物としては、オルガノメルカプタン類、ジオルガノスルフィド類、硫化水素、ベンゾチアゾール、チアゾール、ベンゾチアゾールジサルファイドなどが挙げられる。窒素含有化合物としては、アンモニア、1〜3級アルキルアミン類、アリールアミン類、尿素、ヒドラジンなどが挙げられる。スズ系化合物としては、ハロゲン化第一スズ2水和物、カルボン酸第一スズなどが挙げられる。有機過酸化物としては、ジ−tert−ブチルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、過安息香酸t−ブチルなどが挙げられる。
【0246】
これらの硬化遅延剤のうち、遅延活性が良好で原料入手性がよいという観点からは、ベンゾチアゾール、チアゾール、ジメチルマレート、3−ヒドロキシ−3−メチル−1−ブチン、1−エチニル−1−シクロヘキサノールが好ましい。また、これらの硬化遅延剤は1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用できる。
【0247】
硬化遅延剤の添加量は種々設定できるが、使用するヒドロシリル化触媒1molに対して、好ましくは10−1モル〜10モル、より好ましくは1モル〜50モルである。
【0248】
接着性改良剤としては、たとえば、一般に用いられている接着剤、種々のカップリング剤、エポキシ化合物、フェノール樹脂、クマロン−インデン樹脂、ロジンエステル樹脂、テルペン−フェノール樹脂、α−メチルスチレン−ビニルトルエン共重合体、ポリエチルメチルスチレン、芳香族ポリイソシアネートなどが挙げられる。
【0249】
カップリング剤としてはたとえばシランカップリング剤、チタネート系カップリング剤などが挙げられる。カップリング剤の例や好ましい例は、上記したものと同じである。これらのカップリング剤は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用できる。
【0250】
カップリング剤の添加量は種々設定できるが、(A)成分と(B)成分との合計量100重量部に対して、好ましくは0.1重量部〜50重量部、より好ましくは0.5重量部〜25重量部である。添加量が少ないと、接着性改良効果が表れず、添加量が多いと、得られる樹脂硬化体の物性に悪影響を及ぼす場合がある。
【0251】
(熱硬化性樹脂組成物タブレットの作成)
本発明の成形方法において用いるタブレットは、出来上がりの形状が円柱状であれば、その作製方法は限定されない。例えば、熱硬化性樹脂と充填材からなる熱硬化性樹脂組成物を押出成形の要領にて、円柱状のストランドを排出させ、等間隔で切断し円柱状のタブレットを得る方法、あるいは、内部が円柱状の凹型である治具に、所定量の熱硬化性樹脂組成物を添加し、円柱状の凸型治具を押し込み、円柱状のタブレットを得る方法などが挙げられる。これらは、手動でもよく、また自動化して作製してもよい。
【0252】
(熱硬化性樹脂組成物タブレットを用いた成形方法)
本発明の成形方法は、一般に知られたトランスファー成形機を用いて行われる。具体的には、熱硬化性樹脂組成物よりなるタブレットは、トランスファー成形機に備え付けられた樹脂成形用金型のポットと呼ばれる凹部に投入された後に金型を閉じ、注入用プレンジャーの前進にて樹脂を加圧し押し出すことで、樹脂流路から金型キャビティに樹脂組成物が注入されて成形が行われるものである。ここで、樹脂成形用金型のポットにタブレットが装填されるまでの工程を説明すると、現在は主に自動化が進んでおり、例を挙げると、成形用に作製されたタブレットは、専用のタブレット搬送装置を経て直接金型ポットに装填される場合、搬送装置を経て、専用の供給装置にてタブレット並びを整理させた後、金型ポットに装填される場合など、様々な方法が存在する。金型ポットへの装填の方法に制限は無く、タブレットの側面を直接ロボットアームで掴みポットに装填する場合や、円柱状にくり貫かれた供給装置にタブレットを事前に装填しておき、供給装置ごと金型ポット上部まで運び、供給装置下部のスリットをスライドさせることで、供給装置からタブレットを金型ポットに落下させ装填させる方法など様々である。しかし、本工程を用いる場合、タブレットの性状が軟質である場合は、搬送時に変形が生じ、供給装置や金型ポットに規則正しく装填できない場合があり、またタブレット性状が硬い場合でも、表面にタック感がある場合は、搬送装置、あるいは供給装置を汚染したり、タブレットの一部分が付着することで所定量のタブレットを装填できないこともある。そのため、本発明において用いるタブレットは、その表面温度を−40℃から10℃の間に調整したものを用いることで、材料の表面が硬くなり、またタック性も改善することで、成形時におけるタブレットの搬送や成形機内の金型ポットへのタブレット供給において、トラブルを起こすことなく、安定した生産が可能となる。タブレットの表面温度が10℃よりも高いと、タブレット供給装置あるいは搬送装置にタブレット表面の樹脂組成物が付着し、汚れの原因となるなどの傾向がある。また表面温度が特許範囲以下の場合については、オーバースペックであることや、タブレットを冷却するためのユーティリティコストが非常に高くなるため好ましくない。更に表面温度が−40℃から10℃に調整された円柱状タブレットは、タブレット供給装置あるいは搬送装置に投入してからトランスファー成形機内の金型ポット内に投入されるまでの時間が2分以内であることが好ましい。この時間を越えると、タブレット表面のタック性が低下し、タブレット供給装置あるいは搬送装置にタブレット表面の樹脂組成物が付着し、汚れの原因となるなどの傾向がある。したがって、本発明の成形方法において用いるタブレットは、冷却することによりその表面を硬くする、すなわち強度は特定の範囲に入ることが重要である。具体的には、熱硬化性樹脂組成物からなる円柱状タブレットの形状が直径13mmかつ高さが20mmである場合に、そのタブレット上面から同じく直径13mmの平板状プローブを用いて荷重を加え、タブレット高さが5mm変位するときの最大荷重が3.5kgf以上であることがタブレット形状保持性などの観点で好ましい。最大荷重が3.5kgf未満の場合には、タブレット供給時や搬送時の変形などを起こす傾向がある。
【0253】
本発明の成形方法に用いられるタブレットは、常温においても固体状態を維持していなければならない。ここでいう常温とは、季節的変動により上下限するが、概ね20℃から30℃の間を示すものである。また、固体状態を維持するとは、23℃において、円柱状のタブレットを平板の上に立て、円柱状タブレットの上部全面から10gの荷重を加えた時に円柱状形状が保持できていることを意味する。
【0254】
(熱硬化性樹脂組成物タブレットへの充填材の被覆)
本発明の成形方法において用いるタブレットは、さらに無機充填材及び/または有機充填材で、その表面を被覆しても良い。被覆する充填材の平均粒径は、50μm以下が好ましい。この理由としては推測ではあるが次のように考えられる。液体と粒子の混合系において、液体成分は粒子の表面を被覆していると考えられ、全ての粒子を被覆した余分の液体成分が変形に寄与していると思われる。そのため、充填率が同じであっても、小粒子の割合が多いほど総表面積が大きくなって被覆に費やされる液体成分が増加し、タック性低下に寄与すると考えられる。液体の粘度は高温になると顕著に低下するため、高温では小粒子の割合に対する流動性の変化が小さいが、低温では粘度が高いために、小粒子が多いとペースト状や粘土状のように流動することができずに、フレーク状や粉状になることが考えられる。言い換えると、粒子中の小粒子の割合を増やすことで、組成物の高温での流動性を維持したまま、常温での状態を固くすることができ、寸法安定性に優れるタブレットを得ることができる。
被覆量は、熱硬化性樹脂組成物タブレットの形状や、粘着性など表面状態に応じて任意に決めることができる。充填材の量は特に制限はないが、使用量が多いと過剰の充填材が金型汚染の原因となるため、被着体の比表面積以上に付着した余分な充填材は、振動により除去することが好ましい。
充填材を被着体に被覆する方法については、充填材が熱硬化性樹脂組成物タブレットと一体化しうる方法であれば、特に制限は無い。好適な方法としては適切な容器あるいは袋に充填材を敷詰めて、機械を用いて振動により熱硬化性樹脂組成物タブレットに充填材を被覆する方法や、手動でふり掛ける方法などが挙げられる。
タブレット表面被覆用の無機充填材としては特に限定されないが、例えば、石英、ヒュームドシリカ、沈降性シリカ、無水ケイ酸、溶融シリカ、結晶性シリカ、超微粉無定型シリカ等のシリカ系無機充填材、アルミナ、酸化亜鉛、酸化アンチモン、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化マグネシウム、中空粒子、ジルコン、窒化ケイ素、窒化ホウ素、窒化アルミ、炭化ケイ素、ガラス繊維、アルミナ繊維、炭素繊維、マイカ、ケイソウ土、白土、クレー、タルク、水酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、ケイ酸カルシウム、無機バルーン等の無機充填材をはじめとして、エポキシ系等の従来の半導体封止材の充填材として一般に使用又は/及び提案されている無機充填材等を挙げることができる。なかでも、硬化反応を阻害し難いという観点からは、シリカ系無機充填材が好ましい。さらに、成形性、電気特性等の物性バランスがよいという点において溶融シリカが好ましく、パッケージの熱伝導性が高くなり易く放熱性の高いパッケージ設計が可能になるという点においては結晶性シリカが好ましい。その他、補強効果が高くパッケージの強度が高くなり易いという点においてはガラス繊維、ケイ酸カルシウムが好ましい。これら無機充填材は単独で使用してもよく、2種以上併用してもよい。
【0255】
無機充填材の形状としては特に限定されず、破砕状、片状、球状、棒状等を用いることができるが、熱硬化性樹脂組成物タブレット中の含有率を高くしても成形性が良好となることから、球状又は丸みのある破砕状であることが好ましく、球状であることがより好ましい。
また、無機充填材は適宜表面処理してもよい。表面処理としては、アルキル化処理、トリメチルシリル化処理、シリコーン処理、カップリング剤による処理等が挙げられる。 表面処理の方法としても各種方法を適用することができ、湿式法、乾式法、液相法、気相法等、種々の方法が例示できる。
【0256】
この場合のカップリング剤の例としては、シランカップリング剤が挙げられる。シランカップリング剤としては、分子中に有機基と反応性のある官能基と加水分解性のケイ素基を各々少なくとも1個有する化合物であれば特に限定されない。有機基と反応性のある基としては、取扱い性の点からエポキシ基、メタクリル基、アクリル基、イソシアネート基、イソシアヌレート基、ビニル基、カルバメート基から選ばれる少なくとも1個の官能基が好ましく、硬化性及び接着性の点から、エポキシ基、メタクリル基、アクリル基が特に好ましい。加水分解性のケイ素基としては取扱い性の点からアルコキシシリル基が好ましく、反応性の点からメトキシシリル基、エトキシシリル基が特に好ましい。
また、同じくタブレット表面を被覆する有機充填材としては、重合体の粉砕もしくは分散重合によって得られた粉末重合体のフィラーや架橋剤を含む重合性単量体を重合させた後、粉砕して得られたフィラーを挙げることができる。ここで使用できる充填材の原料となる重合性体としては特に限定はないが、例えばポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリメタクリル酸エチル、ポリメタクリル酸プロピル、ポリメタクリル酸ブチル(PBMA)、ポリ酢酸ビニル(PVAc)、ポリエチレングリコール(PEG)やポリプロピレングリコール(PPG)、ポリビニルアルコール(PVA)等を挙げることができる。
【0257】
(硬化物の性状)
本発明の熱硬化性樹脂組成物タブレットを成形硬化すれば白色の成形体得ることができるが、硬化して得た白色成形体としては、表面の波長460nm及び/又は480nmの光線反射率が80%以上であることが好ましく、85%以上であることがより好ましい。表面の光線反射率は以下のように測定することができる。PETフィルムを離型フィルムとして用い、所定の温度条件でプレス成形にてボイドのない0.5mm厚の成形体を作成する。得られた成形体に必要に応じて所定の後硬化を実施する。得られた成形体について分光色差計(日本電色製VSS−400)を用いて460nm及び/又は480nmの拡散反射率を測定することにより求めることができる。
【0258】
(発光ダイオードのパッケージ)
本発明で言う発光ダイオードのパッケージとは、発光ダイオード素子から出た光が照射されるように設計されたものであり、さらに好ましくは発光ダイオード素子から出た光を反射させて外部に取出すように設計されたものである。その形状等には特に制約はない。例えば、発光ダイオード素子を搭載するための凹部を有する形状のものでもよいし、単に平板状のものであってもよい。本発明の発光ダイオードのパッケージの表面は平滑であってもよいし、エンボス等のような平滑でない表面を有していてもよい。
【0259】
形状についても特定されないが、半導体のパッケージが実質的に金属の片面に樹脂が成形されている形状を有する場合(MAPタイプ)において特に本発明の効果が得られやすい。
【0260】
本発明の成形方法を用いて得られる発光ダイオードは、従来の各種の用途に用いることができる。具体的には、ロジック、メモリーなどのLSI、各種センサー、受発光デバイスなどをあげることができる。また、半導体が発光ダイオードの場合も従来公知の各種の用途に用いることができる。具体的には、例えば液晶表示装置等のバックライト、照明、センサー光源、車両用計器光源、信号灯、表示灯、表示装置、面状発光体の光源、ディスプレイ、装飾、各種ライト等を挙げることができる。
【実施例】
【0261】
以下に、本発明の実施例および比較例を示すが、本発明は以下によって限定されるものではない。尚、本実施例における評価では、搬送時のタブレット表面のタック性を評価する指標として<タブレット表面性>を、タブレット搬送時のタブレット硬さ(欠けにくさ)の指標として<タブレット耐破壊荷重>を、タブレット搬送時のタブレット変形性を評価する指標として<タブレットの形状保持性>を評価項目とした。当該評価項目、ならびに、評価に用いるタブレット作製方法は、次のとおりである。
<タブレット作製方法>
作製した硬化性樹脂組成物を、Φ13mmの金属製の杵と臼からなるタブレット製造冶具で0.39MPa圧縮して、高さ20mmになるよう仕込み量を調整した。
得られたタブレットは、評価に応じて、冷凍保管(−20℃)、冷蔵保管(5℃)、恒温保管(23℃)した。
【0262】
<タブレット表面性>
円柱状タブレットの側面部表面について、特定温度調整後すぐ、および、搬送時を想定し特定時間経過後(冷凍保管後室温で経過した時間)の2水準について指触により定性的に判定した。判断基準は下記の通りとした。尚、タブレットの調整温度と調整後の経過時間(冷凍保管後室温で経過した時間)については、実施例と比較例に示した。
○:タブレットを指で摘んで放した時に指の腹に樹脂が残らず、さらっとした感覚が残る。
△:タブレットを指で摘んで放した時に指の腹に樹脂がかすかに付着したり、弱いタック感が残る。
×:タブレットを指で摘んで放した時に指の腹に樹脂の幾分かが付着したり、強いタック感が残る。
【0263】
<タブレット耐破壊荷重>
タブレット強度の測定には、タブレット製造治具にて0.39MPaの圧力で、Φ13mm、高さ20mmの形に圧縮したタブレットを使用した。測定装置として、株式会社イマダ製のデジタルフォースゲージ(MODEL:DS2−1000N)を専用の計測スタンド(MODEL:MX−500N)に取り付けたものを使用した。荷重を加えるプローブは、φ13の円形状のものを取り付けた。評価は、平滑な面上に、特定温度調整後すぐのタブレットを置き、そのタブレット上面に、プローブを試験速度0.3mm/sで押し込み、タブレット高さが5mm変位するときの最大荷重をn=5で測定し、その平均値をタブレット耐破壊荷重(g)とした。
【0264】
<タブレットの形状保持性>
所定温度に調整したタブレット10個を、縦30cm×横40cm×深さ×3cmのアルミ製バットの中に入れて、室温雰囲気下にてアルミバットを左右に動かし、タブレット同士をぶつけたり、バット内側の壁面にぶつけたりしてタブレットを転がした。所定時間、タブレットを転がした後に、タブレットの側面部を目視観察し、以下の判定を行った。尚、形状保持性の評価における所定温度と経過時間(冷凍保管後室温で経過した時間)については、実施例および比較例の項に具体的な数値を記載する。
○:円柱状タブレットの形状の変形個数が0個〜2個。
△:円柱状タブレットの形状の変形個数が3個〜5個。
×:円柱状タブレットの形状の変形個数が6個〜10個。
【0265】
(合成例1)
5Lの四つ口フラスコに、攪拌装置、滴下漏斗および冷却管をセットした。このフラスコにトルエン1800gおよび1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン1440gを入れ、120℃のオイルバス中で加熱および攪拌した。これに、トリアリルイソシアヌレート200g、トルエン200gおよび白金ビニルシロキサン錯体のキシレン溶液(白金として3重量%含有)1.44mlの混合液を50分かけて滴下した。得られた溶液をそのまま6時間加温および攪拌した後、未反応の1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンおよびトルエンを減圧留去した。得られた化合物は、H−NMRの測定により、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンのSiH基の一部がトリアリルイソシアヌレートと反応した下記に示す構造を有するものであることがわかった。
【0266】
【化43】

【0267】
(合成例2)
2Lオートクレーブにトルエン720gおよび1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン240gを入れ、気相部を窒素で置換した後、ジャケット温50℃で加熱および攪拌した。これに、アリルグリシジルエーテル171g、トルエン171gおよび白金ビニルシロキサン錯体のキシレン溶液(白金として3重量%含有)0.049gの混合液を90分かけて滴下した。滴下終了後にジャケット温を60℃に上げてさらに40分間反応させ、H−NMRでアリル基の反応率が95%以上であることを確認した。
【0268】
得られた反応混合物に、トリアリルイソシアヌレート17gおよびトルエン17gの混合液を滴下した後、ジャケット温を105℃に上げて、さらにトリアリルイソシアヌレート66g、トルエン66gおよび白金ビニルシロキサン錯体のキシレン溶液(白金として3重量%含有)0.033gの混合液を30分かけて滴下した。滴下終了から4時間後にH−NMRでアリル基の反応率が95%以上であることを確認し、冷却により反応を終了した。
【0269】
1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンの未反応率は0.8%だった。未反応の1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンとトルエンとアリルグリシジルエーテルの副生物(アリルグリシジルエーテルのビニル基の内転移物(シス体およびトランス体))が合計5,000ppm以下となるまで減圧留去し、無色透明の液体を得た。H−NMRの測定により、このものは1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンのSiH基の一部がアリルグリシジルエーテル及びトリアリルイソシアヌレートと反応したものであり平均的に下記に示す構造を有するものであることがわかった。下記において、a+b=3、c+d=3、e+f=3、a+c+e=3.5、b+d+f=5.5である。
【0270】
【化44】

【0271】
(配合例1)
表1の内容に従って各成分を配合して、熱硬化性樹脂(P1)を調製した。
【0272】
【表1】

【0273】
さらに、表1に基づいて調整した熱硬化性樹脂(P1)に、下記(D)〜(G)を添加し、評価用の熱硬化性樹脂組成物とした。
【0274】
(D)成分:両末端ビニル基含有直鎖状メチルフェニルシリコーン(商品名:PDV2331、Gelest社製、全置換基に対するフェニル基の量は22〜25モル%)
(E)成分:球状シリカ(商品名:MSR-2212-TN、株式会社龍森製、比重2.2、平均粒径24.8μm、12μm以下の粒子の割合:28%)
(F)成分:酸化亜鉛(堺化学工業社製、酸化亜鉛1種、比重5.6、平均粒径0.6μm)
(G)成分:ステアリン酸カルシウム
(実施例1)
上記配合例で得られた表1に示す組成物(P1)を5.25重量部、上記(D)成分2.81重量部、上記(E)成分58.23重量部、上記(F)成分33.51重量部、および上記(G)成分0.20重量部を混合し、熱硬化性樹脂組成物を調製し熱硬化性樹脂組成物(Xa)を作製した。樹脂組成物(Xa)について、打錠機にてφ13mm、高さ20mmのタブレットを作製し、タブレットを−10℃に2時間保管した。保管後のタブレットについて、耐荷重試験と表面性評価を行った。タブレット形状保持性については、冷凍保管後室温で1分経過したものについて評価を行った。
【0275】
(実施例2)
実施例1で作製した樹脂組成物(Xa)について、打錠機にてφ13mm、高さ20mmのタブレットを作製し、タブレットを5℃に2時間保管した。保管後のタブレットについて、耐荷重試験と表面性評価を行った。タブレット形状保持性については、冷凍保管後室温で1分経過したものについて評価を行った。
【0276】
(実施例3)
実施例1で作製した樹脂組成物(Xa)について、打錠機にてφ13mm、高さ20mmのタブレットを作製し、タブレットを10℃に2時間保管した。保管後のタブレットについて、耐荷重試験と表面性評価を行った。タブレット形状保持性については、冷凍保管後室温で1分経過したものについて評価を行った。
【0277】
(実施例4)
実施例1で作製した樹脂組成物(Xa)について、打錠機にてφ13mm、高さ20mmのタブレットを作製し、タブレットを5℃に2時間保管した。保管後のタブレットについて、耐荷重試験と表面性評価を行った。タブレット形状保持性については、冷凍保管後室温で2分経過したものについて評価を行った。
【0278】
(実施例5)
実施例1で作製した樹脂組成物(Xa)について、打錠機にてφ13mm、高さ20mmのタブレットを作製した。さらに、作製したタブレットを、球状シリカを敷詰めた容器に入れ、振動を与えることでタブレット表面を被覆した。余分なシリカはバット上でふるい落とした。シリカの粉を被覆させたタブレットを5℃に2時間保管した。保管後のタブレットについて、耐荷重試験と表面性評価を行った。タブレット形状保持性については、冷凍保管後室温で2分経過したものについて評価を行った。
【0279】
【表2】

【0280】
(比較例1)
実施例1で作製した樹脂組成物(Xa)について、打錠機にてφ13mm、高さ20mmのタブレットを作製し、タブレットを20℃に2時間保管した。保管後のタブレットについて、耐荷重試験と表面性評価を行った。タブレット形状保持性については、冷凍保管後室温で1分経過したものについて評価を行った。
【0281】
(比較例2)
実施例1で作製した樹脂組成物(Xa)について、打錠機にてφ13mm、高さ20mmのタブレットを作製し、タブレットを30℃に2時間保管した。保管後のタブレットについて、耐荷重試験と表面性評価を行った。タブレット形状保持性については、冷凍保管後室温で1分経過したものについて評価を行った。
【0282】
(比較例3)
実施例1で作製した樹脂組成物(Xa)について、打錠機にてφ13mm、高さ20mmのタブレットを作製し、タブレットを5℃に2時間保管した。保管後のタブレットについて、耐荷重試験と表面性評価を行った。タブレット形状保持性については、冷凍保管後室温で3分経過したものについて評価を行った。
【0283】
(比較例4)
実施例1で作製した樹脂組成物(Xa)について、打錠機にてφ13mm、高さ20mmのタブレットを作製し、タブレットを5℃に2時間保管した。保管後のタブレットについて、耐荷重試験と表面性評価を行った。タブレット形状保持性については、冷凍保管後室温で5分経過したものについて評価を行った。
【0284】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱硬化性樹脂組成物を打錠して得られる円柱状タブレットを、温調していないタブレット供給装置あるいは搬送装置を介してトランスファー成形用金型のポット内に投入して成形する成形方法であって、供給装置あるいは搬送装置に冷却して表面温度を−40℃から10℃とした円柱状タブレットを充填時点からトランスファー成形用金型のポット内に投入するまでの時間が2分以内でることを特徴とする成形方法。
【請求項2】
円柱状タブレットが、その上面の直径を13mm、高さが20mmである形状で、その上面から荷重を加え、タブレット高さが5mm変位する時の最大荷重が3.5kgf以上であることを特徴とする請求項1記載の成形方法。
【請求項3】
円柱状タブレットが常温においても、固体状態を維持できることを特徴とする請求項1か2いずれか一項に記載の成形方法。
【請求項4】
円柱状タブレットの表面が無機充填材及び/又は有機充填材を含む充填材で覆われていることを特徴とする請求項1〜3いずれか一項に記載の成形方法。
【請求項5】
熱硬化性樹脂組成物が、(A)SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個含有する有機化合物、(B)1分子中に少なくとも2個のSiH基を含有する化合物、(C)ヒドロシリル化触媒、(D)SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも1個含有するシリコーン化合物、および(E)無機充填材からなることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の成形方法。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載の成形方法により得られる発光ダイオードのパッケージ。
【請求項7】
請求項6記載の発光ダイオードのパッケージ表面の波長460及び480nmの分光反射率が80R%以上である成形体。
【請求項8】
請求項7に記載の発光ダイオード用のパッケージを用いて製造された発光ダイオード。

【公開番号】特開2013−107297(P2013−107297A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−254517(P2011−254517)
【出願日】平成23年11月22日(2011.11.22)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】