説明

戸建住宅における基礎の補強構造

【課題】棒状部材によりコストをかけず簡単に基礎のズレおよび沈下を防止できるとともに、特に硬質地盤の上の軟弱地盤において液状化現象が発生しても、基礎のズレおよび沈下を防止できる戸建住宅における基礎の補強構造を提供すること。
【解決手段】戸建住宅の基礎4の立ち上がり部42に複数本の棒状部材5の上端部5aを埋設すると共に、その下端部5bを軟弱地盤2よりも下方の硬質地盤3に打ち込むようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軟弱地盤の上に建設される木造家屋などの戸建住宅における基礎の補強構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、建物基礎の補強構造として、軟弱地盤上の基礎(地層改良体)と、軟弱地盤の下の硬質地盤とを棒材を用いてピン接合で連結することにより、軟弱地盤で液状化現象が発生しても、基礎の沈下や傾斜を防止するようにしたものが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4744731号公報(図6(a)参照。)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上述の背景技術では、設置場所が深い硬質地盤における棒材の下端側でのピン接合の施工が面倒であるとともに、そのピン接合の構造が複雑になることにより、コストが嵩むという問題がある。
【0005】
また、棒材の両端がそれぞれ地層改良体および硬質地盤にピン接合されているため、構造物に水平方向の応力がかかると、構造物全体が横移動する結果、構造物全体が棒材に引っ張られて沈下する虞もある。特に、地震の影響により硬質地盤の上の軟弱地盤において液状化現象が発生した場合には、構造物全体を含む地層改良体が横移動し易くなるので、構造物の位置がズレたり、沈下するおそれがあるという問題がある。
【0006】
そこで、本発明は、鉄筋あるいは鋼管などの棒状部材を活用することにより、コストをかけることなく簡単に基礎のズレおよび沈下を防止でき、特に軟弱地盤において液状化現象が発生しても、基礎の沈下等を効果的に抑制可能な戸建住宅における基礎の補強構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するため、請求項1に係る発明の戸建住宅における基礎の補強構造は、戸建住宅の基礎に複数本の棒状部材の上端部を埋設すると共に、その下端部を軟弱地盤よりも下方の硬質地盤に打ち込むことを特徴とする。ここで、硬質地盤とは、軟弱地盤よりも硬質な安定した地盤で液状化現象の起きない地盤のことをいう。この構造によれば、複数本の棒状部材の上端部は基礎に埋設される一方、その下端部は軟弱地盤よりも下方の安定した硬質地盤に打ち込まれるため、基礎および硬質地盤と複数本の棒状部材との間は、剛接合となり、これらの棒状部材によりコストをかけず簡単に基礎のズレおよび沈下を防止でき、特に軟弱地盤において液状化現象が発生し、基礎の下方側の地盤支持力が低下しても、基礎の沈下等を効果的に抑制することができる。
また、請求項2に係る発明の戸建住宅における基礎の補強構造は、請求項1記載の戸建住宅における基礎の補強構造において、前記基礎は、戸建住宅の土台の配置に合わせて表面地盤の一面に打設された所定の厚さ以上の底板部と、その底板部から上方に立ち上がって、表面地盤の上面から所定の高さ以上となり、戸建住宅の土台が固定される立ち上がり部とからなるベタ基礎であり、複数本の棒状部材の上端部は、該ベタ基礎の立上がり部に埋設されることを特徴とする。この構造によれば、各棒状部材の上端部はベタ基礎の立上がり部に埋設されるので、棒状部材の埋設長さを大きく確保することが可能となり、複数本の棒状部材を介してより強固に硬質地盤に固定して、基礎のズレおよび沈下をより確実に防止できる。
【発明の効果】
【0008】
本発明の戸建住宅における基礎の補強構造では、複数本の棒状部材の上端部は基礎に埋設される一方、その下端部は軟弱地盤よりも下方の硬質地盤に打ち込まれるため、基礎および硬質地盤と複数本の棒状部材との間は、剛接合となり、棒状部材によりコストをかけず簡単に基礎のズレおよび沈下を防止できるとともに、軟弱地盤において液状化現象が発生しても、基礎のズレおよび沈下を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明に係る実施形態1の戸建住宅における基礎の補強構造を示す図である。
【図2】図1(a)におけるA部分の拡大断面図である。
【図3】軟質地層に液状化現象が発生した場合の挙動を示す図である。
【図4】本発明に係る実施形態2の戸建住宅における基礎の補強構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、本発明に係る棒状部材を用いた戸建住宅における基礎の補強構造の実施形態1,2について説明する。
実施形態1.
図1は、実施形態1の戸建住宅における基礎の補強構造を示す図で、(a)はその基礎の補強構造全体を簡略化して示す断面図、(b)はその基礎の補強構造の平面図である。図2は、図1(a)におけるA部分を拡大して示す断面斜視図である。図1に示すように、木造家屋等の戸建住宅のベタ基礎4が敷設された表面地盤1の下には、地震の際、液状化現象を起こす虞のある軟弱地盤(液状化地盤)2があり、軟弱地盤2の下には軟弱地盤2よりも硬質な安定した地盤で、地震の際でも液状化現象を起こす虞のない硬質地盤(非液状化地盤)3がある。ベタ基礎4は、図1(b)および図2に示すように、戸建住宅の土台6の配置に合わせて表面地盤1の一面に鉄筋コンクリートが打設された所定の厚さ(例えば、150mm)以上の底板部41と、底板部41から上方に立ち上がって表面地盤1の上面から所定の高さ(例えば、400mm)以上となり、戸建住宅の土台6が固定される立ち上がり部42とから構成される。棒状部材5としては、例えば、SD345からなるネジ節異形棒鋼のD35を使用する。棒状部材5の長さが足りない場合には、図示しないカプラー等を利用して棒状部材5を連結して使用する。ここでは、ロックボルトとして広く利用されているD35のような太径鉄筋を棒状部材5として使用するので、この施工には、鋼管杭打設のような重機は必要とせず、小型の振動、または回転機器により施工ができる。また、棒状部材5は、ベタ基礎4の上に土台6を介して載る戸建住宅の重量や重心、バランスなどを考慮して、ベタ基礎4の立ち上がり部42に効率良く配置する。ベタ基礎4に対する棒状部材5の上端部5aの埋設長さhは、図2に示すように、15d(dは棒状部材5が丸鋼では径、異形鉄筋では呼び径のことである。)以上とする。これにより、ベタ基礎4と棒状部材5の上端部5aとの接合が確実に剛接合となる。また、棒状部材5の下端部5bは、軟弱地盤2よりも下方の硬質地盤3に打ち込まれる。
【0011】
そのため、図3(a)に示すように、地震が発生し、硬質地盤3が大きく左右に揺れ、軟弱地盤2において液状化現象が発生し、ベタ基礎4が水平方向や斜め方向、さらには垂直方向にズレて傾いたり、沈下しようとしても、ベタ基礎4と硬質地盤3とは複数本の棒状部材5により連結されており、しかもベタ基礎4および硬質地盤3と複数本の棒状部材5との間は剛接合なので、硬質地盤3に対するベタ基礎4全体の横移動を防止して、ベタ基礎4やその上に建設された戸建住宅の傾きや沈下を防止できる。
【0012】
また、地震等が発生しても、ベタ基礎4と硬質地盤3との間には、剛接合により複数本の棒状部材5が設けられているので、図3(b)に示すように、棒状部材5がその弾性変形範囲内で撓み、また液状化層である軟弱地盤2が振動などを吸収するので、ベタ基礎4やその上に建設された戸建住宅に伝達される振動などを低減することができる。
【0013】
実施形態2.
実施形態2の戸建住宅における基礎の補強構造は、上記実施形態1の戸建住宅における基礎の補強構造に対し、さらに斜め方向に棒状部材5を打設して、ベタ基礎4の安定化を強化したものである。
【0014】
図4(a)〜(c)は、実施形態2の戸建住宅における基礎の補強構造を示したものである。図4(a)は、さらにベタ基礎4の両端部から内側(中心側)に向けて表面地盤1に対し斜め方向に棒状部材5を打設した例を示している。ここで、斜め方向に打設する棒状部材5の上端部5aも、鉛直方向に打設する棒状部材5の上端部5aと同様に、ベタ基礎4の立ち上がり部42に埋設される。この場合、ベタ基礎4の両端部から棒状部材5を斜め方向に設置するので、トレンチカット工法等を利用して施工する。これによれば、棒状部材5が鉛直方向に硬質地盤3まで打設されるだけでなく、斜め方向に表面地盤1に対し打設されるので、ベタ基礎4をより強固に安定化させることができる。
【0015】
図4(b)は、さらにベタ基礎4の両端部から内側(中心側)に向けて表面地盤1だけでなく、軟弱地盤2を介し硬質地盤3まで斜め方向に棒状部材5を打設した例を示している。これによれば、鉛直方向に打設した棒状部材5の下端部5bだけでなく、斜め方向に打設した棒状部材5の下端部5bも液状化現象を起さない硬質地盤3まで達しているので、図4(a)に示す場合よりもベタ基礎4をより強固に安定化させることができる。
【0016】
図4(c)は、図4(b)の場合と同様に、表面地盤1、軟弱地盤2および硬質地盤3まで斜め方向に棒状部材5を打設し、さらに鉛直方向に軟弱地盤2における水分を排出するための側面に孔が形成された排水用ドレーンパイプ7を打設した例を示している。これによれば、図4(b)の場合と同様の効果が得られるだけでなく、軟弱地盤2において液状化現象が発生しても、排水用ドレーンパイプ7を介して表面地盤1の上面に軟弱地盤2の水分を排出するので、液状化現象に対する防止効果が向上する。
【0017】
なお、上記実施形態1,2の説明では、棒状部材5として中実の異形棒鋼を使用して説明したが、本発明ではこれに限定されず、中空ボルトや鋼管等の中空の鋼材を使用するようにしても良い。棒状部材5として中空の鋼材を使用した場合、その先端側において硬質地盤3に対し薬液(薬剤)や接着剤等の注入が可能となるので、硬質地盤3に対する定着をより強固にすることができる。また、上記実施形態の説明では、基礎としてベタ基礎4を一例に説明したが、本発明ではこれに限定されない。
【符号の説明】
【0018】
1…表面地盤、2…軟弱地盤、3…硬質地盤、4…ベタ基礎、41…底板部、42…立ち上がり部、5…棒状部材、5a…上端部、5b…下端部、6…土台、7…排水用ドレーンパイプ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
戸建住宅の基礎に複数本の棒状部材の上端部を埋設すると共に、その下端部を軟弱地盤よりも下方の硬質地盤に打ち込むことを特徴とする戸建住宅における基礎の補強構造。
【請求項2】
請求項1記載の戸建住宅における基礎の補強構造において、
前記基礎は、戸建住宅の土台の配置に合わせて表面地盤の一面に打設された所定の厚さ以上の底板部と、その底板部から上方に立ち上がって、表面地盤の上面から所定の高さ以上となり、戸建住宅の土台が固定される立ち上がり部とからなるベタ基礎であり、複数本の棒状部材の上端部は、該ベタ基礎の立上がり部に埋設されることを特徴とする戸建住宅における基礎の補強構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−83095(P2013−83095A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−223800(P2011−223800)
【出願日】平成23年10月11日(2011.10.11)
【出願人】(000000446)岡部株式会社 (277)
【Fターム(参考)】