説明

扉用ステー及びこれを用いたキャビネット

【課題】扉の閉鎖時に、アームが筐体の収納空間内に張り出す寸法を可及的に小さくでき、収納機器の配置の自由度を高めることができる扉用ステーを提供する。
【解決手段】扉用ステー1は、互いに一端部が枢着された第1及び第2のアーム2,3を具備する。アーム2,3は、互いに垂直平面内で相対回転するように配置される。アーム2の他端部は、筐体22の下部に水平回転可能に支持された軸受部材5に水平方向の枢ピン6により相対回転可能に連結される。アーム3の他端部は、扉23の内側下部に水平回転可能に支持された軸受部材9に水平方向の枢ピン10により相対回転可能に連結される。それにより、アーム2,3が、扉23の閉回動時に、互いに上方に屈折し、扉23の開回動時に筐体22及び扉23に対してそれぞれ水平回転しつつ相互の角度を増し、開放時に、ほぼ水平一直線上に伸長するように構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、筐体の開口部を開閉する扉を開位置に保持するためのステーと、このステーを装着したキャビネットに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、この種のステーは、互いに一端部が回動可能に連結された第1、第2一対のアームを有しており、第1アームの他端部は筐体に、第2アームの他端部は扉に、それぞれ水平面内で相対回転可能に連結される(例えば特許文献1参照)。第1および第2アームは、全体としてほぼ「く」字状をなしており、扉を開回動させると互いのなす角度が大きくなる。そして、扉が開位置に達すると、互いのなす角度が180°近くの大きな角度になり、第1、第2アームがほぼ一直線上に並ぶ。何らかの手段でこの状態を保持して扉の閉回動を阻止する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−115720号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の扉用ステーにおいては、特に扉の閉鎖状態においてアームが筐体の収納空間内に比較的大きく張り出し、収納空間を減殺し、あるいは収納機器の配置が制限されるという問題点がある。
したがって、この出願に係る発明は、扉の閉鎖時に、アームが筐体の収納空間内に張り出す寸法を可及的に小さくでき、収納機器の配置の自由度を高めることができる扉用ステーを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以下、添付図面の符号を参照して説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
上記課題を解決するための、この出願に係る発明の扉用ステー1は、筐体22の開口部22aを開閉する扉23を開位置に保持するためのステーであって、互いに一端部が相対回動可能に枢着された第1及び第2の一対のアーム2,3を具備する。第1及び第2のアーム2,3は、互いに垂直平面内で相対回転するように配置される。第1のアーム2の他端部は、筐体22の下部に水平回転可能に支持された第1の軸受部材5に水平方向の枢ピン6により相対回転可能に連結される。第2のアーム3の他端部は、扉23の内側下部に水平回転可能に支持された第2の軸受部材9に水平方向の枢ピン10により相対回転可能に連結される。それにより、第1及び第2の一対のアーム2,3が、扉23の閉回動時に、互いに上方に屈折し、扉23の開回動時に筐体22及び扉23に対してそれぞれ水平回転しつつ相互の角度を増し、開放時に、ほぼ水平一直線上に伸長するように構成される。
筐体22が開口部22aを囲む固定枠体24を有する場合に、ステー1は以下の構成を取ることができる。すなわち、固定枠体24を構成する水平の下枠24a上に第1の取付座7が固着され、この第1の取付座7上に、第1の軸受部材5が垂直の枢ピン8により水平回転自在に支持される。扉23の内側面に支持部材13が固着され、この支持部材13の水平の取り付け面13a上に、第2の取付座11が固着され、この取付座上11に、第2の軸受部材9が垂直の枢ピン12により水平回転自在に支持される。
また、ステー1は以下の構成を取ることができる。すなわち、第1のアーム2又は第2のアーム3の、いずれか一方が、他方のアームとの枢支点6を越えて他端側へ延出し、かつ当該延出部の上縁の少なくとも一部に、伸長時に他方のアームの上縁に当接して伸長状態を維持する当接部を具備する。
また、この出願に係る発明のキャビネット21は、筐体22と、この筐体22の開口22aを開閉する扉23との間に、上記構成のステー1を介設して構成される。
【発明の効果】
【0006】
この出願に係る発明の扉用ステー1は、アーム2,3が垂直方向に屈折するため、扉23の閉鎖時に、アーム2,3が筐体22の収納空間内に張り出す寸法を可及的に小さくでき、収納機器の配置の自由度を高めることができる。
また、この出願に係る発明のキャビネット21は、垂直方向に屈折する扉用ステー1を用いるため、筐体22の収納空間を減殺させることなく有効に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の実施形態に係る扉用ステーを装着したキャビネットの一部の斜視図であり、(A)は閉扉状態、(B)は45°開扉状態、(C)は全開状態を示す。
【図2】図1のキャビネットに於ける扉を全開にした状態の正面図である。
【図3】図1の扉用ステーの正面図である。
【図4】図1の扉用ステーの平面図である。
【図5】図3におけるV−V断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図面を参照してこの発明の実施の形態を説明する。
図1において、キャビネット21は、筐体22と、この筐体22の開口22aを開閉する扉23とを具備し、筐体22と扉23との間にステー1が介設される。ステー1は、筐体22の扉23を開位置に保持するためのものである。筐体22には、開口部22aを囲む固定枠体24が設けられる。
【0009】
ステー1は、枢ピン4により一端部が互いに相対回動可能に枢着された第1及び第2の一対のアーム2,3を具備する。キャビネット21への装着状態において、アーム2,3は、互いに垂直平面内で相対回転するように、枢ピン4を水平に向けて配置される。
【0010】
アーム2の他端部は、筐体22の下部に、水平回転可能に支持された第1の軸受部材5に、水平方向の枢ピン6により、相対回転可能に連結される。軸受部材5は、固定枠体24を構成する水平の下枠14aの上に固着された取付座7上に、垂直の枢ピン8(図3,4)により、水平回転自在に支持される。
【0011】
第2のアーム3の他端部は、扉23の内側下部に、水平回転可能に支持された第2の軸受部材9に、水平方向の枢ピン10により、相対回転可能に連結される。すなわち、扉23の内側面には、支持部材13が固着され、この支持部材13の水平の取付片13a上に、第2の取付座11が固着され、この取付座11上に、第2の軸受部材9が、垂直の枢ピン12(図3,4)により水平回転自在に支持される。
第1及び第2の一対のアーム2,3は、扉23の閉回動時に、互いに上方に屈折し(図1A,B)、扉23の開回動時に筐体22及び扉23に対してそれぞれ水平回転しつつ、相互の角度を増し、全開時に、ほぼ水平一直線上に伸長する(図1C)ように構成される。
【0012】
図示の実施形態において、第2のアーム3は、図5に示すように、板材を屈曲して形成され、平行一対の側板部3aと側板部の上縁間を接続する頂板部3bとを有する。第2のアーム3は、第1のアーム2との枢支点を越えて第1のアーム2側へ延出している。第1のアーム2の一端部は、第2のアーム3の延出部分の側板3a間へ挿入され(図5)、したがって、伸長時に頂板部3bが、第1のアーム2の上縁に当接して伸長状態を維持する。この伸長状態における第1のアーム2と第2のアーム3との角度は、デッドポイントである180°をわずかに超える角度となるように設定されており、これにより、扉23の閉鎖方向の動きが確実にロックされる。なお、図示しないが、第1のアーム2と第2のアーム3の形状を入れ替えることができる。
【0013】
いま、図1(A)に示す扉23の閉鎖状態から、扉23を開くと、それの回転に従い、図1(B)に示すように、アーム2とアーム3が、軸受け部材5,9と共に、筐体22又は扉23に対して水平回転しながら、相互角度を広げる。そして、図1(C)に示す扉23の全開状態において、アーム2,3の角度が図2に示すように、180°をわずかに超える角度となった状態で、扉23がロックされる。この状態から、扉23を閉鎖するには、アーム2,3の枢着部をデッドポイントを越えるようにわずかに引き上げて両者間を屈曲させつつ扉23を押し回せばよい。
【符号の説明】
【0014】
1 ステー
2 第1のアーム
3 第2のアーム
4 枢ピン
5 第1の軸受部材
6 水平方向の枢ピン
7 取付座
8 垂直の枢ピン
9 第2の軸受部材
10 水平方向の枢ピン
11 取付座
12 垂直の枢ピン
13 支持部材
13a 水平取付片
21 キャビネット
22 筐体
22a 開口
23 扉
24 固定枠体
24a 下枠

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体の開口部を開閉する扉を開位置に保持するためのステーであって、互いに一端部が相対回動可能に枢着された第1及び第2の一対のアームを具備し、
前記第1及び第2のアームは、互いに垂直平面内で相対回転するように配置され、
前記第1のアームの他端部は、前記筐体の下部に水平回転可能に支持された第1の軸受部材に水平方向の枢ピンにより相対回転可能に連結され、
前記第2のアームの他端部は、前記扉の内側下部に水平回転可能に支持された第2の軸受部材に水平方向の枢ピンにより相対回転可能に連結され、
前記第1及び第2の一対のアームが、扉の閉回動時に、互いに上方に屈折し、扉の開回動時に筐体及び扉に対してそれぞれ水平回転しつつ相互の角度を増し、開放時に、ほぼ水平一直線上に伸長するように構成されることを特徴とする扉用ステー。
【請求項2】
前記筐体の開口部を囲む固定枠体を構成する水平の下枠上に第1の取付座が固着され、この第1の取付座上に、前記第1の軸受部材が垂直の枢ピンにより水平回転自在に支持され、
前記扉の内側面に支持部材が固着され、この支持部材の水平の取り付け面上に、第2の取付座が固着され、この第2の取付座上に、前記第2の軸受部材が垂直の枢ピンにより水平回転自在に支持されることを特徴とする請求項1に記載の扉用ステー。
【請求項3】
前記第1のアーム又は前記第2のアームの、いずれか一方が、他方のアームとの枢支点を越えて他方のアーム側へ延出し、かつ当該延出部の上縁の少なくとも一部に、伸長時に他方のアームの上縁に当接して伸長状態を維持する当接部を具備することを特徴とする請求項1又は2に記載の扉用ステー。
【請求項4】
筐体と、この筐体の開口を開閉する扉とを具備し、当該筐体と扉との間に請求項1に記載のステーが介設されることを特徴とするキャビネット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−87485(P2013−87485A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−228451(P2011−228451)
【出願日】平成23年10月18日(2011.10.18)
【出願人】(000005382)古河電池株式会社 (314)
【出願人】(000108708)タキゲン製造株式会社 (256)
【Fターム(参考)】