説明

手動式記録装置のガイド部材および手動式記録装置の記録方法

【課題】手動式記録装置において、記録開始位置の確認を容易にするとともに予め定められた軌跡に沿って記録装置を手動で移動させることにより、高品質な記録を容易に行うことを可能にするためになされたものである。
【解決手段】本発明の手動式記録装置のガイド部材においては、被記録媒体上に載置されるとともに記録装置が手動により移動される際にこれが当接して摺動することにより、その移動軌跡が規制されるよう設けて構成した。これにより高品質な記録を容易に行うことが可能となる。また、ガイド部材が設けられるシート材または板状部材に指標を設けることにより、記録開始位置を正確に合わせることができ、更に複数回走査して記録する場合といった場合には、正確に改行することができるといった効果を奏する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘッドの走査を手動によって行う記録装置に用いるガイド部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の手動式記録装置は、インクジェット方式或いは熱転写方式の記録ヘッドを有する記録部或いは記録装置本体を操作者が把持し、記録すべき媒体に記録ヘッドを対向させてこれを近接或いは密着させ、この状態で手動により走査するとともに記録ヘッドを作用させることにより、被記録媒体上に記録を行うよう構成されている。
この手動式記録装置においては、記録ヘッドの走査に伴って記録を行うものであり、このため記録ヘッドの走査速度を検出し、これに同期して記録ヘッドを選択的に駆動することが印字品質を向上させるために必要であり、従来は手動式記録装置の下部に駆動ローラを配置して、記録装置の下部が直接被記録媒体に摺動されないよう構成し、駆動ローラを被記録媒体に沿わせて移動させながら印字することにより記録を鮮明なものとしている。
【特許文献1】特開平11−115251号公報
【0003】
或いは、別の手段として、ヘッド部とともに移動する光学式運動検知手段により、手動で移動されるヘッド部の移動速度を算出し、記録ヘッドの制御部へフィードバックして印字結果を向上させるよう設けられている。
【特許文献2】特開2002−205387号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種の手動式記録装置においては、手動で直接被記録媒体に記録が行えるので、被記録媒体を記録装置の媒体搬送機構に挿入して搬送するタイプと比べて被記録媒体の種別を選ぶ必要がなく、どんなメディアに対しても容易に記録することができ、高い汎用性を有している。しかしながらその反面、記録ヘッドが装置の底部に設けられているために、記録開始位置の確認が困難であり、また、ストロークの長い記録を行う場合には、手動で記録装置を移動させる際に手が振れてしまい、印字結果が縒れてしまったり、また、この手動式記録装置により平面状の被記録媒体に対して複数行の記録を行うといった場合には、走査毎の改行幅を一定にすることが困難であり、品質の高い記録を行うには操作者の技量が必要となり、操作に不慣れな者にとっては非常に困難なものとなるといった不具合を生じていた。更に、被記録媒体に直接記録を行うため、記録に失敗した場合の損失が多大なものとなるといった不具合を生じていた。
本発明はこれら不具合を解消するためになされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の手動式記録装置のガイド部材においては、被記録媒体上に載置されるとともに、記録装置を手動により移動する際に手動式記録装置の溝部に当接して摺動させることにより、その移動軌跡が規制されるよう設けて構成した。
【発明の効果】
【0006】
本発明の手動式記録装置のガイド部材によれば、予め定められた軌跡に沿って記録装置を手動で移動させることができるので、高品質な記録を容易に行うことが可能となる。また、ガイド部材が設けられるシート材または板状部材に指標を設けることにより、記録開始位置を正確に合わせることができ、更に複数回走査して記録する場合といった場合には、正確に改行することができ、上書き或いは重ね書きといった記録も正確に行えるといった効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、図面に基づいて本発明の手動式記録装置のガイド部材を説明する。
先ず、図1は本発明に使用するこの種の手動式記録装置であるインクジェット方式のハンディプリンタを示す図であり、記録装置本体であるケース10、各種設定、データ入力ならびに表示を行う操作表示部11、被記録媒体に対向するよう装置本体10の底部に設けられるインクジェットヘッド12、インクジェットヘッド12の中心部分を示す位置決めのための指標13、記録装置本体10を被記録媒体上に載置した際に被記録媒体とインクジェットヘッド12との離反距離を一定とするとともに、記録装置本体1が手動により移動された際にケース10の底部が記録済みの被記録媒体と接触してこれを汚染しないよう設けられた凹状溝部のエッジ部14、光源と受光部よりなる移動検出部15により構成されている。このハンディプリンタ1は、例えばXyron社製「Design Runner(TM)」等といった上述のこの種の手動式記録装置であり、記録すべき印字データを操作表示部11より入力し、ケース10に設けられた指標13を目安にして被記録媒体上に記録装置本体1を載置する。更に操作表示部11より記録開始を設定した上で、操作者は記録装置本体10を把持して移動させる。このとき、記録装置本体1の底部に設けられた移動検出部15において、被記録媒体表面から反射される光源からの反射光を受光部により検出し、その出力より移動状態を算出し、これに応じてインクジェットヘッド12のインク吐出タイミングを制御して、被記録媒体上に記録を行うものである。
【実施例1】
【0008】
図2は本発明の手動式記録装置のガイド部材2を示す図であり、ガイド本体20と、このガイド本体20が取り付けられ固定されるシート材21とにより構成されている。
ガイド本体20の短手方向の幅は、これに使用する手動式記録装置の凹状溝部に嵌合するよう形成され、且つ本実施例においてはガイド本体20は長手方向に直線となるよう形成されている。これにより手動式記録装置1の移動軌跡は、ガイド本体20の長手方向に沿った直線方向に規制されるよう設けられている。
ガイド本体20には、手動式記録装置1のインクジェットヘッド12に対応した孔部200が設けられている。
また、このガイド本体20は、PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム等よりなる光透過性のシート材21上に固定されており、このシート材21には各指標211,212,213が形成されている。更にシート材21にも、ガイド本体20の孔部200に対応して孔部が設けられており、これによりガイド部材2に手動式記録装置1が載置されると、インクジェットヘッド12は直接被記録媒体の表面に対向するよう構成されている。
ガイド本体20の長手方向の一端部には、手動式記録装置1を初期位置に位置づけるための指標202が設けられており、操作者はこのガイド部材2を用いて記録を行う際には、先ず記録装置の位置決め用指標13をこのガイド本体20の指標202と合致するようにして、ガイド本体20のエッジ201を記録装置1の底部の凹状溝部(エッジ部14)に嵌合させて載置する。シート材21には、記録装置本体1をガイド本体20の指標にあわせて位置づけた初期位置より手動で移動させる際に、実際に記録が開始される位置を示す記録開始位置指標211が設けられており、記録を行う際には、操作者は被記録媒体上の記録を開始したい位置にこの記録開始位置指標211が位置付けられるようにして、ガイド本体2を被記録媒体上に載置することにより、記録開始位置を正確に設定することができるよう構成されている。
更に、シート材21には、ガイド本体20のエッジ201と平行となる水平方向の位置合わせ用指標212が、所定の間隔をもって複数形成されており、また、この指標212と直交する垂直方向の位置合わせ用指標213が、所定の間隔をもって複数形成されている。この水平および垂直方向の指標を用いることにより、被記録媒体に対して複数行の記録を行う場合に、操作者は既に記録した部分等にこれを合わせるようにしてガイド部材2を位置づけることができ、これにより各走査毎の改行幅を正確に一致させたり改行する幅を正確に設定する、或いは正確に上書きや重ね書きを行うことが可能となる。
【0009】
次に、本発明の手動式記録装置のガイド部材を用いた記録動作について説明する。
今、図3(a)に示すような、予め「水引」が印刷された市販の香典袋に、手動式記録装置により名前を記録する場合を考える。
この時、操作者は先ず、手動式記録装置1の操作表示部11を操作して、記録する文字列、フォント等のデータを入力する。このデータ入力が完了すると、操作者は被記録媒体である香典袋上にガイド部材2を載置する。この時、香典袋への名前の記録が、「水引」の真下でかつ袋の真中に行われるように、記録開始位置指標211が香典袋の水引の真下となるよう位置付けるとともに、香典袋に対してガイド本体20の孔部200が中央に且つ平行となるように、水平、垂直方向の位置合わせ指標212,213を確認しながら位置決めする。(図3(b))
香典袋に対するガイド部材2の位置決め、載置が完了すると、操作者は手動式記録装置1底部の凹状溝部のエッジ部14をガイド本体20のエッジ201に合わせて嵌合させ、更に記録装置本体1の位置決め指標13が、ガイド本体20の指標202と合致するようにこれを位置付ける。(図4(a))これにより、手動記録装置1の初期位置への位置決めが完了する。
【0010】
次に操作者は、操作表示部11より記録開始コマンドを入力するとともに、記録装置本体10を把持して、これを手動で移動する。この時、手動記録装置1のエッジ部14とガイド部材2のガイド本体20のエッジ201が合致しているので、記録装置1は正確にガイド本体20に摺動して直線状に移動する。
手動式記録装置1の移動検出部15は、この手動による記録装置本体10の移動を検出し、これに応じてインクジェットヘッド12のインク吐出タイミングを制御して記録を行う。この時、シート材21の記録開始位置指標211に対応する位置より正確に記録が開始されるので、この結果、香典袋には水引の真下から、且つ袋の中央部分に正確に名前を記録することができる。(図4(b))
【0011】
この実施例においては、ガイド部材2のシート材21をPETフィルム等の透光性の材料により形成することにより、被記録媒体上にこれを載置した際に被記録媒体上の図柄等とシート材21の各指標211,212,213との位置合わせを容易に行えるよう構成したが、本実施例のように、これに用いる手動式記録装置1が光源と受光素子よりなる移動検出部15を採用すると、例えば被記録媒体表面が写真などの印刷である場合には反射状態にバラツキが生じてしまい、記録装置本体1の移動検出が正確に行えず、記録品質の低下を招くといった不具合が生じることがある。このような素材に対しては、シート材21として光を透過しない材料、例えば白色等に着色されたフィルム材等を用いて、ガイド部材2を構成してもよい。この場合、移動検出部15の光源からの光をシート材21が良好に反射させることができるので、手動記録装置1の移動状態を良好に検出することができ、印字品質を向上させることが可能となる。
【実施例2】
【0012】
或いは、図5に示されるように、上述の実施例の通り光透過性を有する透明なPETフィルム等によりシート材21を形成するとともに、シート材21上における手動式記録装置1の移動検出部15の移動領域に対応する部分のみに、例えば白色等の着色を行い、光を透過しない光反射領域214を設けて構成してもよい。この場合、手動記録装置1の移動状態も良好に検出することができるとともに、被記録媒体とシート材21の各指標211,212,213の位置合わせも良好に行うことができるという効果を奏する。
【実施例3】
【0013】
更に、図5における光反射領域214を、光を透過しない帯状部材で形成し、その一端をシート材21に固定するよう設けても良い。この場合、ガイド部材2を被記録媒体上に載置して位置あわせを行う際には、この帯状部材214をシート材21から離反させておき、シート材21上の指標211,212,213を使用して位置合わせを行い、これが完了した後に帯状部材214をシート材21上に密着させ、その後手動記録装置1をガイド部材2上に載置する。この実施例によれば、ガイド部材2の位置決めをより正確に行えるとともに、手動記録装置1の移動状態も確実に検出できるという効果を奏する。
【実施例4】
【0014】
上述の実施例においては、光源と受光素子からなる移動検出部15を有した手動記録装置1を用いているが、例えば、この移動検出部15をレーザ照射とその干渉を利用して検出するエンコーダにより構成し、その移動距離検出のためのコードストリップをガイド部材2のシート材21(帯状部材214)上に形成して構成してもよい。この場合、手動記録装置1の移動状態をより高分解能に検出することが可能となる。
【実施例5】
【0015】
また、上述の実施例においては、ガイド部材2をシート材21上にガイド本体20を固定するよう構成したが、例えばプラスチック等の材料により一体に形成する、或いは薄いプラスチック材のような平板状部材にガイド本体20を固定するよう形成しても良い。
上述の実施例においては、ガイド部材2のガイド本体20は何れも直線状に設けられ、これにより手動式記録装置1の移動軌跡が直線状に規制されるよう構成されているが、これに限定されるものではなく、例えば円弧状に規制されるよう構成されてもよい。
また、上述の実施例においては、何れも手動式記録装置としてインクジェット方式の記録装置を用いているが、例えば熱転写型の手動式記録装置に本発明の手動式記録装置のガイド部材および手動式記録装置の記録方法を採用することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に用いる手動式記録装置の構成を示す図である。
【図2】本発明の手動式記録装置のガイド部材を示す図である。
【図3】本発明の手動式記録装置のガイド部材の使用状態を示す図である。
【図4】本発明の手動式記録装置のガイド部材の使用状態を示す図である。
【図5】本発明の手動式記録装置のガイド部材の別の実施例を示す図である。
【符号の説明】
【0017】
1 手動式記録装置
2 ガイド部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録装置本体を被記録媒体上で手動により移動させるとともに記録装置本体底部に設けられた記録ヘッドにより記録を行う手動式記録装置のガイド部材であって、
当該ガイド部材は、被記録媒体上に載置されるとともに、上記手動式記録装置が手動により移動される際に手動式記録装置の溝部が当接して摺動することによりその移動軌跡を規制するよう設けられることを特徴とする手動式記録装置のガイド部材。
【請求項2】
請求項1記載の手動式記録装置のガイド部材において、
上記ガイド部材は記録装置底部の溝部に嵌合するとともに、記録ヘッドと被記録媒体が直接対向するよう孔部が形成されることを特徴とする手動式記録装置のガイド部材。
【請求項3】
請求項1または2に記載の手動式記録装置のガイド部材において、
上記ガイド部材は、当該ガイド部材の孔部に対応する孔部が設けられた、被記録媒体上に載置されるシート材上に固定されることを特徴とする手動式記録装置のガイド部材。
【請求項4】
請求項3記載の手動式記録装置のガイド部材において、
上記シート材には、上記手動記録装置が所定の初期位置に位置づけられた際の記録開始位置を示す指標が設けられることを特徴とする手動式記録装置のガイド部材。
【請求項5】
請求項3記載の手動式記録装置のガイド部材において、
上記シート材には、手動式記録装置の移動軌跡に対して垂直又は平行な指標が設けられることを特徴とする手動式記録装置のガイド部材。
【請求項6】
請求項3記載の手動式記録装置のガイド部材において、
上記シート材には、手動式記録装置の移動軌跡に対して平行で且つ光を透過しない光反射領域が設けられることを特徴する手動式記録装置のガイド部材。
【請求項7】
請求項6記載の手動式記録装置のガイド部材において、
上記光反射領域は、手動式記録装置の移動軌跡に対して平行で且つ光を透過しない帯状部材よりなることを特徴とする手動式記録装置のガイド部材。
【請求項8】
請求項3記載の手動式記録装置のガイド部材において、
上記シート材には手動式記録装置に設けられたエンコーダ用のコードストリップが形成されることを特徴とする手動式記録装置のガイド部材。
【請求項9】
請求項3記載の手動式記録装置のガイド部材において、
上記シート材は光透過性の材料により形成されることを特徴とする手動式記録装置のガイド部材。
【請求項10】
請求項3記載の手動式記録装置のガイド部材において、
上記シート材は非光透過性の材料により形成されることを特徴とする手動式記録装置のガイド部材。
【請求項11】
請求項1または2に記載の手動式記録装置のガイド部材において、
上記ガイド部材は、当該ガイド部材の孔部に対応する孔部が設けられた、被記録媒体上に載置される平板状部材上に固定されることを特徴とする手動式記録装置のガイド部材。
【請求項12】
請求項11記載の手動式記録装置のガイド部材において、
上記平板状部材には、上記手動記録装置が所定の初期位置に位置づけられた際の記録開始位置を示す指標が設けられることを特徴とする手動式記録装置のガイド部材。
【請求項13】
請求項11記載の手動式記録装置のガイド部材において、
上記平板状部材には、手動式記録装置の移動軌跡に対して垂直又は平行な指標が設けられることを特徴とする手動式記録装置のガイド部材。
【請求項14】
請求項11記載の手動式記録装置のガイド部材において、
上記平板状部材には、手動式記録装置の移動軌跡に対して平行で且つ光を透過しない光反射領域が設けられることを特徴する手動式記録装置のガイド部材。
【請求項15】
請求項14記載の手動式記録装置のガイド部材において、
上記光反射領域は、手動式記録装置の移動軌跡に対して平行で且つ光を透過しない帯状部材よりなることを特徴とする手動式記録装置のガイド部材。
【請求項16】
請求項11記載の手動式記録装置のガイド部材において、
上記平板状部材には手動式記録装置に設けられたエンコーダ用のコードストリップが形成されることを特徴とする手動式記録装置のガイド部材。
【請求項17】
請求項11記載の手動式記録装置のガイド部材において、
上記平板状部材は光透過性の材料により形成されることを特徴とする手動式記録装置のガイド部材。
【請求項18】
請求項11記載の手動式記録装置のガイド部材において、
上記平板状部材は非光透過性の材料により形成されることを特徴とする手動式記録装置のガイド部材。
【請求項19】
記録装置本体を被記録媒体上で手動により移動させるとともに記録装置本体底部に設けられた記録ヘッドにより記録を行う手動式記録装置を用いた記録方法であって、
手動式記録装置の溝部に当接するガイド部材を被記録媒体上に載置し、このガイド部材に手動式記録装置の溝部を当接させた状態で手動により移動させて記録を行うこと特徴とする手動式記録装置の記録方法。
【請求項20】
請求項19記載の手動式記録装置の記録方法であって、
上記ガイド部材を手動式記録装置に設けられた溝部に嵌合させた状態で手動により移動させて記録を行うことを特徴とする手動式記録装置の記録方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−12748(P2008−12748A)
【公開日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−185238(P2006−185238)
【出願日】平成18年7月5日(2006.7.5)
【出願人】(000105062)グラフテック株式会社 (31)
【Fターム(参考)】