説明

手指装着型電極及びこれを備えた電気刺激装置

【課題】
通気性に優れ、指関節の屈曲動作が阻害され難く、患部に意図したタイミングで的確に刺激電流を付与できる手指装着型電極及びこれを備えた電気刺激装置を提供すること。
【解決手段】
患者の患部に刺激電流を付与して施療を行う電気刺激装置14に接続される手指装着型電極1であって、
電気絶縁性素材で形成され施療者の手指に接触装着される基材2と、 該基材2に設けられ前記手指を前記基材2に対して固定するための固定部6と、前記患部に押し当てられる前記基材面に少なくとも設けられる導電性部材5と、を備え、前記手指を前記基材2に固定した状態において該固定範囲を除く前記手指の指背側が露呈するようにしたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気刺激装置本体に接続される電極を医師や理学療法士など(以下、施療者という)の手指に装着し、施療者が手指で患者の患部を触診しながら刺激電流を付与して施療を行う手指装着型電極と、これを備えた電気刺激装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から低周波治療器などの電気刺激装置に用いられる手指装着型電極として、特許文献1〜2に示す指サック形状のものが一般に知られている。
特許文献1には、低周波発信器本体から導設の可撓性コードの遊端に付設され、かつ、手指によって患部に当付け可能な端子を、手指に対して嵌め込み装着並びに離脱自在な電気絶縁性の手指保護部材に固定保持させた低周波治療器用端子が記載されている。
【0003】
また、特許文献2には、電気絶縁性の布帛からなり、手指に装着可能な指サック形状の本体と、導電性の布帛からなり、本体の指腹部分の表面に張り付けられた皮膚接触電極部とを備えた低周波治療器用指サック型電極体が記載されている。
これらの従来技術によれば、施療者が患者に対して肩屈曲、肘屈伸、手関節掌背屈、按摩といった種々のリハビリ手技を実施するなかで、これらの手技を中断することなく患部に意図したタイミングで電気刺激を付与できるという利点がある。
【0004】
しかし、特許文献1では手指に装着する指サック形状の保護部材が手指全体を包囲するゴム製の素材で形成されており(第2図参照)、一方、特許文献2においても、同様に電極本体が布帛素材で手指全体を包み込む指サック形状(図3など参照)を呈しているため、通気性に優れず、指サック電極を手指に装着した状態で前述したリハビリ手技や患部に対する手指の接触離反の動作を繰り返す通電動作を行うことにより、指サック電極内で皮膚が発汗し蒸れて施療者に不快感を与えるという問題点を有していた。
また、指サック電極に採用する素材によっては指関節の屈曲動作が阻害されるといった問題点も抱えていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開昭57−70341号公報
【特許文献2】実用新案登録第3157837号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記問題点に鑑みてなされたもので、通気性に優れ、手指関節の屈曲動作が阻害され難く患部に意図したタイミングで的確に刺激電流を付与できる手指装着型電極及びこれを備えた電気刺激装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記問題点を解決するために、本発明は、患者の患部に刺激電流を付与し施療を行う電気刺激装置に接続される手指装着型電極であって、
電気絶縁性素材で形成され施療者の手指に接触装着される基材と、
該基材に設けられ前記手指を前記基材に対して固定するための固定部と、
前記患部に押し当てられる前記基材面に少なくとも設けられる導電性部材と、を備え、
前記手指を前記基材に固定した状態において該固定範囲を除く前記手指の指背側が露出するようにしたことを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、通気性に優れるので、手指装着型電極を装着した状態でリハビリ手技を行ったり、患部に対する手指の接触離反の動作を繰り返しても手指が蒸れ難く、しかも、通電部位を任意に変更することができるので、モーターポイントを探しやすく、意図したタイミングで意図した部位に任意に通電できるという従来の手指装着型電極のメリットを損なうこともない。
【0009】
また、前記基材は接触装着される前記手指の伸展方向に少なくとも延在しており、前記基材の幅寸法が前記手指の根元部分から先端部分に向かうに従い漸減することが好ましい。
【0010】
これによれば、基材が手指形状に沿う形状となり、手指から横外にはみ出す基材の端部分を低減することができ、狭小部位の患部をピンポイントで施療する上で一層好ましいものとなる。
【0011】
また、前記基材は防水性を有する素材を用いることが好ましい。
【0012】
これによれば、患者の汗等の水分の基材内部への侵入を抑止できるので、施療者に不快感を与える心配がなく、基材内部の清潔性を維持でき衛生上好ましいものとなる。
【0013】
また、前記導電性部材が設けられた位置に対応する前記基材面に吸水体が添設されることが好ましい。
【0014】
これによれば、吸水体に水を含水させて施療することで、患者への通電によるピリピリとした痛感を緩和できる。例えば、吸収体を厚みの薄い(2〜3mm程度の厚みの)スポンジとすることにより、施療者が手指で患部の筋収縮を実際に確かめながら施療することができ、施療上支障を来たさず好ましいものとなる。
【0015】
また、前記吸水体は前記基材に対して着脱交換可能に設けられることが好ましい。
【0016】
これによれば、手指装着型電極の繰り返し使用により吸水体が消耗劣化した場合に吸水体の交換が容易となり、また、未だ充分に使用余地のある基材や導電性部材などの他部材を無駄にすることなく有効活用できランニングコストを抑えることができ経済性に優れたものとなる。
【0017】
また、前記手指の指腹側の根元付近に接触する前記基材端部が手指先端方向に向かって凹んでいることが好ましい。
【0018】
これによれば、施療者が手指装着型電極を装着した状態で手指の接触離反の動作をする際に、基材端部が手指の指腹側の根元付近を圧迫し難いものとできる。
【0019】
また、前記施療者の手指個体差に応じて前記固定部は調整自在とされることが好ましい。
【0020】
これによれば、施療者の手指の太さ等、個体差に応じて固定部を調整できるので、手指を基体に確実に固定でき、施療する上で好ましいものとなる。
【0021】
また、露呈した前記手指の部位を前記基材に対して固定する第二の固定部を更に設けることができる。
【0022】
これによれば、手指装着型電極を中指や人差し指に接触装着して使用する場合、手指の伸展方向に延在する基材の寸法が長くなるが、露呈した手指の部位を基材に対して固定する第二の固定部を設けているため、施療中に基材が患者の体部位に突き当たり手指と離反する方向に反り返ったり、屈曲伸展動作を繰り返すことにより基材自体に曲げ癖がつき手指と基材とが密着し難くなるという不都合を抑制でき、手指の基体に対する固定がより一層確実になり、施療を行う上で好ましいものとなる。
【0023】
本発明は、上記の手指装着型電極と、該手指装型電極に電極コードを介して刺激電流を供給する電気刺激装置本体と、を備え、
前記手指に装着した手指装着型電極の導電性部材側の面を患者の患部に押し当てることで刺激電流を付与する電気刺激装置であることを特徴とする。
【0024】
手指装着型電極を電気刺激装置に接続することで、施療者の意図したタイミングで任意に患部に対して通電することが可能となる。
【発明の効果】
【0025】
本発明に係る手指装着型電極は、電気絶縁性素材で形成され施療者の手指に接触装着される基材と、該基材に設けられ前記手指を前記基材に対して固定するための固定部と、患部に押し当てられる前記基材面に少なくとも設けられる導電性部材と、を備え、前記手指を前記基材に固定した状態において該固定範囲を除く前記手指の指背側が露呈するようにしたものである。
従って、通気性に優れ、手指装着型電極を装着した状態でリハビリ手技を行ったり、患部に対する手指の接触離反の動作を繰り返しても電極内で手指が蒸れ難く、しかも、手指関節の屈曲動作が阻害され難いという優れた作用効果を奏するものである。
【0026】
また、本発明は、電極コードを介して手指装着型電極を電気刺激装置本体と接続し、施療者が手指装着型電極を患者の患部に押し当てる動作をすることにより刺激電流を付与できるので、施療者の意図したタイミングで的確に通電をすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の第一の実施形態に係る手指装着型電極の平面図である。
【図2】本発明の第一の実施形態に係る手指装着型電極の背面図である。
【図3】本発明の第一の実施形態に係る手指装着型電極の構造を説明する斜視分解図である。
【図4】本発明の第一の実施形態に係る手指装着型電極を施療者の左手人差し指に装着した状態の斜視図である。
【図5】本発明の第一の実施形態に係る電気刺激装置の説明図である。
【図6】本発明の第二の実施形態に係る手指装着型電極を施療者の左手人差し指に装着した状態の斜視図である。
【図7】本発明の第三の実施形態に係る手指装着型電極の説明図である。
【図8】本発明の第四の実施形態に係る手指装着型電極の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の第一の実施形態に係る手指装着型電極1の構造を図1〜5を参照して詳細に説明する。
手指装着型電極1は、電気絶縁性素材で形成され施療者の手指に接触装着される薄シート状の基材2と、一部分が基材2内部から基材2外面に延出する導電性部材5と、基材2に設けられ手指を基材2に対して固定するための固定部6とを備えている。
図1に示す基材2上面側が患者の患部に接触する側の面で、図2に示す基材2上面側が施療者の手指に接触装着される側の面である。尚、本実施形態では、図4に示すように施療者の左手の人差し指Fに手指装着型電極1を装着する態様例を説明する。
【0029】
基材2の素材としては、例えば、ポリエステル系の合成樹脂繊維、ウレタンシート、ナイロンシートなどの電気絶縁性及び防水性を有するものを採用することができる。
また、導電性部材5の素材としては、織物に銅、ニッケル、銀などの金属線を織り込んだ導電性織物、不織布に銅、ニッケル、銀などの金属を含浸させた導電性不織布のほか、合成ゴム等のゴム材料に導電性カーボンブラックまたは金属粉末を配合した導電性ゴムなどを適宜採用することができる。尚、基材2及び導電性部材5の各素材はこれらに限定されるものではない。
【0030】
図1〜2に示すように、基材2は、人差し指Fの伸展方向に延在する垂直部2aと、垂直部2aの基端側において垂直部2aから左右両方向に水平に延在する水平部2bとからなり、全体が平面視略T字形状を呈している。
【0031】
垂直部2a基端の側縁端部は、施療者が手指装着型電極1を装着し人差し指Fを患者の患部に対して接触離反させる動作の際に、側縁端部が人差し指Fの指腹側の根元付近に接触し根元付近を圧迫し難くなるように垂直部2a方向に向かって内側に凹む凹み部11が形成されている。
【0032】
図2における垂直部2a上面は、垂直部2aの基端側に施療者の人差し指Fの根元部分が配置され垂直部2aの延在方向に沿って人差し指Fの指腹側が押し当てられる部分であり、垂直部2aの延在方向の寸法は一般的な施療者の人差し指Fの長さに対応する寸法に設定されている。さらに、垂直部2aはその幅寸法が基端側から先端側(人差し指Fの根元部分から先端部分)に向かうに従い漸減する形状となっており、施療者の手指形状に沿うよう工夫されている。
よって、垂直部2aの左右側部が人差し指Fから横外にはみ出す部分を低減することができ、狭小部位の患部をピンポイントで施療する上で一層好ましいものとなる。
【0033】
図3に示すように、基材2は互いに同種素材で同一形状に形成される二枚の薄シート状の第一の基材3と第二の基材4が上から順に重層して構成される。
また、上側に配置された第一の基材3と、下側に配置された第二の基材4の間には平面視略L字片の導電性部材5が配置されている。
【0034】
導電性部材5の一方側片5aは第一の基材3と第二の基材4で挟持され、一方側片5a端部は、第一の基材3、第二の基材4、接続端子としてのホック9とともに圧接固定される。
一方、他辺側片5bの大半領域は第一の基材3の上下中央からやや基端側寄り位置に穿設された挿通孔16に挿通されて、第一の基材3と第二の基材4の間から第一の基材3の外面側に向けて延在し露出する構成となっている。
【0035】
導電性部材5と基材2(第一の基材3・第二の基材4)とは接着剤を介して接合される。第一の基材3と第二の基材4は、外周側縁がウェルダー溶着方法により溶着され基材2として一体化される。図1〜2中、28は溶着部分を示す。尚、基材2の製造方法はこれに限定されるものではなく、成型などにより製造することも可能である。
【0036】
また、図1、3に示すように導電性部材5の他辺側片5bの露出位置に対応する基材2(第一の基材3)の垂直部2a外面には、他辺側片5b全体を覆い隠すようにスポンジ素材でなる吸水体10が縫着により添設される。スポンジの代替としてフェルトなどの素材を用いても構わない。
【0037】
吸水体10の厚みは適度の吸水量を確保できるとともに施療者が患部を触診し刺激電流の付与による筋収縮を人差し指Fで体感できるように、2〜3mm程度とするのが好ましい。
【0038】
図1〜2に示すように、吸水体10が添設される側の基材2(第一の基材3)の水平部2bにおける一方端側外面には面状ファスナーの雌部材7が配設され、吸水体10が添設される側と反対側の基材2(第二の基材4)の外面であって雌部材7の配設位置と反対側の水平部2b端側外面には面状ファスナーの雄部材8が配設されている。
水平部2b、雌部材7及び雄部材8は施療者の人差し指Fを基材2に対し固定するための固定部6としての機能を担う。
尚、雌部材7と雄部材8の配設位置をそれぞれ入れ替えて止着できるように構成しても構わない。
【0039】
よって、基材2を図2の状態になし垂直部2aの延在面に沿うように人指し指Fの指腹側を載置して、水平部2b両端を指背側に曲折し人差し指F周囲に沿って巻き付け、雌部材7と雄部材8とを重ね合わせるように止着させることで、基材2に対して人差し指Fを固定することができる。
雌部材7と雄部材8の止着位置を適宜変更することで、施療者ごとの人差し指Fの太さ(個体差)に応じた調整が可能である。
フックやホックなどの部材により個体差の調整を行うようにしてもよい。
【0040】
図4に示すように、人差し指Fを手指装着型電極1に装着した状態において、固定部6で固定された人差し指Fの根元近傍を除く指背側が露呈する態様となっている。人差し指Fの第一関節26及び第二関節27に相当する指背側が露呈しているので、人差し指Fの屈曲伸展動作が阻害され難く、該動作の自由度を確保することができる。
【0041】
図5は本発明に係る電気刺激装置14を示しており、図中、12は電気刺激装置本体である。手指装着型電極1はホック9を介して電極コード15のクリップ部30と接続される。
手指装着型電極1と電極コード15との接続方法はホック9に限定されるものでなく、マグネット式、タブ式などの接続方法のほか、電極と電極コードが一体化されている電極コード一体型なども採用することができる。
【0042】
一方、13は公知の低周波治療器などにおいて一般的に使用されるゲル電極であって、円中心部にホック21が突設され、このホック21を介して電極コード22のクリップ部31と接続される。
電極コード15及び電極コード22は中途位置にて結束部材29で結束されて電極コネクタ20に接続されている。
【0043】
以下、第一の実施形態に係る手指装着型電極1の使用方法について、手首関節の背屈動作に障害を有する脳卒中患者に対する施療例を一例として説明する。
まず、電気刺激装置本体12の本体側コネクタ17に電極コネクタ20を差し込み、電極コード15・22と電気刺激装置本体12とを接続し、ゲル電極13のホック21に電極コード22を係着させる。詳細な説明は省略するが、電気刺激装置本体12に配備される種々のスイッチ群を操作して刺激電流強度や施療時間などの諸々の施療条件を患者ごとに設定する。
【0044】
続いて、吸水体10に水分を吸水させ、基材2を図2の状態(第二の基材4面が上側になる状態)になし、垂直部2aの延在方向に沿って左手人差し指Fの指腹側を上方から押し当てる。
この状態で水平部2b両端を指背側に曲折し人差し指F周囲に沿って巻き付け、面状ファスナーの雌部材7と雄部材8とを重ね合わせて垂直部2a基端部から水平部2bにわたる面が人差し指Fに密着するように止着することで人差し指Fを基材2に対して固定する。
このときホック9は指背側に位置し概ね上方向を指向しているので、ホック9に電極コード15のクリップ部30を係着させる。
【0045】
ゲル電極13を施療対象となる患者前腕の手関節背屈筋群(長橈側手根伸筋または短橈撓側手根伸筋)の筋腹上に装着する。
施療者は右手で患者の手首付近を支承しつつ手指装着型電極1を装着した左手の人差し指Fで吸水体10が添設される部分を患者前腕の手指伸筋群(総指伸筋)の筋腹上付近に接触させ、ゲル電極13と手指装着型電極1間に刺激電流を付与する。
【0046】
この刺激電流の付与により、手関節背屈筋群ないしは手指伸筋群の筋収縮が促され、この結果として手首関節の背屈動作が強要されることになる。
予め吸水体10に水を含水させているので、患者に対する刺激電流の付与によるピリピリとした痛感を緩和できる。
【0047】
手指装着型電極1を患者前腕から離反させれば刺激電流の付与が停止される。
施療者は手指伸筋群に対して手指装着型電極1を接触離反させる動作を繰り返し、手関節背屈筋群を収縮させ手関節の背屈動作を促進する施療を行う。
施療中はこの動作を数十回繰り返し行うことになるが、固定部6による人差し指Fの固定範囲を除いて指背側が露呈している構成となっているため、通気性に優れ、手指装着型電極1の装着状態でリハビリ手技を行ったり、接触離反の動作を繰り返した場合でも人差し指Fが蒸れ難いものとなっている。
【0048】
次に、図6を参照して本発明の第二の実施形態に係る手指装着型電極1を説明する。
尚、図6において図1乃至4と同一又は同等の構成要素については、同一符号を付記して、特に説明を要する場合を除いて構成要素の説明は省略する。
第二の実施形態は、第一の実施形態の手指装着型電極1の構成に、露呈した人差し指Fの部位を基材2に対して固定する第二の固定部18を付設したことを特徴とするものである。
【0049】
吸水体10の取着位置と反対側(第二の基材4の側)の垂直部2a面の先端側寄り位置には第二の固定部18としてのゴムバンド部材25が取着され、ゴムバンド部材25内に人差し指Fを通すことで露呈した人差し指Fの先端側の部位を垂直部2aに対して固定可能になっている。
よって、施療中に基材2が患者の体部位に突き当たり手指と離反する方向に反り返ったり、屈曲伸展動作を繰り返すことにより基材2自体に曲げ癖がつき手指と基材2とが密着し難くなるという好ましくない事象を防止でき、施療を行う上で好ましいものとなる。
【0050】
尚、第二の固定部18はゴムバンド部材25に限定されるものでなく、露呈した人差し指Fの部位を基材2に対して固定でき、人差し指Fの屈曲伸展動作を妨げるものでなければ如何なる態様や素材のものを採用しても構わない。
例えば、図示は省略するが、基材2先端部分に人差し指Fの爪先部分を挿嵌することで爪先部分を固定可能なカバー状部材からなる固定部を設けるようにすることも可能である。
【0051】
次に、図7を参照して本発明の第三の実施形態に係る手指装着型電極1を説明する。
尚、図7において図1乃至4と同一又は同等の構成要素については、同一符号を付記して、特に説明を要する場合を除いて構成要素の説明は省略する。
第一の実施形態では吸水体10を基材2に対して縫着し固定化した構造を説明したが、第三の実施形態は吸水体10を基材2に対して着脱交換可能に設けた構造を特徴とする。
【0052】
基材2(第一の基材3)の垂直部2a面には導電性部材5の他方側片5b延出位置の前付近から第一の基材3先端に亘って吸水体収容部19が形成される。
【0053】
吸水体収容部19は、垂直部2a基端近傍の面に開口形成される吸水体10を挿脱するための挿脱口23と、導電性部材5の他方側片5bの延出部分が視認可能な形状に開口形成される露出窓部24とから構成される。
挿脱口23から吸水体10を吸水体収容部19内へ挿通可能となっており、吸水体10は吸水体収容部19内奥の所定位置まで内挿することができる。
【0054】
吸水体10の外形形状は平面視で先細の涙状を呈しており、吸水体収容部19内奥の所定位置に吸水体10を装填した状態で、他方側片5b全体を上方から覆うように吸水体10の長手方向寸法が設定され、且つ露出窓部24の輪郭よりも若干幅広となるように幅方向寸法が設定されている。
吸水体10の両横側部は第一の基材3と第二の基材4の間に挟み込まれ圧接支持されているため、吸水体10を下方に向けて手指装着型電極1の使用を行っても吸水体収容部19から吸水体10が落下することはない。
【0055】
また、図示は省略するが、吸水体収容部19に吸水体10を装填した状態において、吸水体10は露出窓部24に臨む部分が基材2上面から僅かに突出し患者の皮膚面に当接可能となっている。
吸水体10を交換する場合は挿脱口23から使用済みの吸水体10を取出し、新品の吸水体10を入れ替えて内挿すればよい。
【0056】
従って、手指装着型電極1の繰り返し使用により吸水体10が消耗劣化した場合であっても吸水体10の交換が極めて容易なものとなり、また、未だ充分に使用余地のある基材2や導電性部材5などの他部材を無駄にすることなく有効活用でき、その結果としてランニングコストを抑えることができ経済性に優れたものとなる。
【0057】
次に、図8を参照して本発明の第四の実施形態に係る手指装着型電極1を説明する。尚、図8において図1乃至4と同一又は同等の構成要素については、同一符号を付記して、特に説明を要する場合を除いて構成要素の説明は省略する。第四の実施形態は、吸水体10を基材2に対して着脱交換可能に設けた別の構造例であって、吸水体10の一方面に形成されるポケット部32内に基材2の垂直部2aを挿脱可能に構成したものである。
【0058】
ポケット部32は、吸水体10に対して防水性の樹脂製シート33が垂直部2aの挿脱口に対応する周縁を除く周縁部において逢着されて形成される。施療中に垂直部2aから吸水体10が不用意に逸脱して落下しないよう、垂直部2aは樹脂製シート33と吸水体10に密着して挟持されている。吸水体10を基材2に装着する場合は、例えば、ポケット部32が上面となるように吸水体10を配置し、基材2の導電性部材5が下面を向くようにしたまま垂直部2aをポケット部32の内奥まで挿入すればよい。
【0059】
尚、本発明は前述した実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更が可能である。図示は省略するが、例えば、以下の構成を採用することができる。
【0060】
前述の第一の実施形態において、垂直部2aが自重により人差し指Fから離反する方向に垂下した結果、施療中に基材2が患者の体部位に引っ掛かり曲折破損するなどという好ましくない事象を防止するため、詳細な説明は省略するが、垂直部2a内方に人差し指Fに接近する方向に復元する特性を有する樹脂材料を埋設したり、または、バネ等の弾性体を埋設するように構成してもよい。
【0061】
また、人差し指Fの屈曲伸展動作をより円滑に行うようにするため、基材2における人差し指Fの第一関節26及び第二関節27付近に相当する部分を他の部分に対して薄肉とする凹凸条を基材2面の幅方向に形成するように構成してもよい。
【0062】
また、前述の第一の実施形態から第二の実施形態では手指装着型電極1を左手の人差し指Fに装着し施療する例を説明したが、本発明は基材の手指伸展方向の寸法や幅寸法などを適宜変更することで、親指、中指、薬指、小指の他の手指に装着して使用することも勿論可能である。
【0063】
また、施療者の左右両腕の手指に各々手指装着型電極を装着し、二つの手指装着型電極の間で刺激電流を流して施療できるように電気刺激装置を構成してもよい。
【0064】
また、第三の実施形態から第四の実施形態においては、吸水体10を基材2に対して着脱交換可能に設ける構造例を説明したが、本発明はこれらの構造に限定されるものではなく、吸水体10が着脱交換できれば如何なる構造を採用しても構わない。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明は、手指装着型電極の導電性部材側の面を患者の患部に押し当てることで刺激電流を付与し施療を行う手指装着型電極及びこれを備えた電気刺激装置に適用できるもので、産業上の利用可能性は非常に高いものといえる。
【符号の説明】
【0066】
1 手指装着型電極
2 基材
2a 垂直部
2b 水平部
3 第一の基材
4 第二の基材
5 導電性部材
6 固定部
7 雌部材
8 雄部材
10 吸水体
11 凹み部
12 電気刺激装置本体
14 電気刺激装置
15 電極コード
18 第二の固定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の患部に刺激電流を付与し施療を行う電気刺激装置に接続される手指装着型電極であって、
電気絶縁性素材で形成され施療者の手指に接触装着される基材と、
該基材に設けられ前記手指を前記基材に対して固定するための固定部と、
前記患部に押し当てられる前記基材面に少なくとも設けられる導電性部材と、を備え、
前記手指を前記基材に固定した状態において該固定範囲を除く前記手指の指背側が露呈するようにしたことを特徴とする手指装着型電極。

【請求項2】
前記基材は接触装着される前記手指の伸展方向に少なくとも延在しており、前記基材の幅寸法が前記手指の根元部分から先端部分に向かうに従い漸減することを特徴とする請求項1記載の手指装着型電極。

【請求項3】
前記基材は防水性を有することを特徴とする請求項1または2記載の手指装着型電極。

【請求項4】
前記導電性部材が設けられた位置に対応する前記基材面に吸水体が添設されることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一項に記載の手指装着型電極。

【請求項5】
前記吸水体は前記基材に対して着脱交換可能に設けられることを特徴とする請求項4記載の手指装着型電極。

【請求項6】
前記手指の指腹側の根元付近に接触する前記基材端部が手指先端方向に向かって凹んでいることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか一項に記載の手指装着型電極。

【請求項7】
前記施療者の手指個体差に応じて前記固定部は調整自在とされることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか一項に記載の手指装着型電極。

【請求項8】
露呈した前記手指の部位を前記基材に対して固定する第二の固定部を更に設けたことを特徴とする請求項1ないし7のいずれか一項に記載の手指装着型電極。

【請求項9】
請求項1ないし8のいずれか一項に記載の手指装着型電極と、該手指装型電極に電極コードを介して刺激電流を供給する電気刺激装置本体と、を備え、
前記手指に装着した手指装着型電極の導電性部材側の面を患者の患部に押し当てることで刺激電流を付与することを特徴とする電気刺激装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−31644(P2013−31644A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−138524(P2012−138524)
【出願日】平成24年6月20日(2012.6.20)
【出願人】(000103471)オージー技研株式会社 (109)
【出願人】(509346254)医療法人畏敬会 井野辺病院 (1)
【Fターム(参考)】