手摺
【課題】取付作業が容易で堅牢な構造を有し、中空の円形断面を有する左右の手摺桿端部それぞれを同時に挟持するブラケットを具備する手摺を提供すると共に、手摺桿内に電気配線を施すと同時にブラケットに電源接続口を装備した手摺を提供すること。
【解決手段】設置面に取り付けられる手摺におけるブラケット1の基体3には上向き保持円弧状縁8が形成され、基体に軸着される覆体4には必要に応じて電源接続器具19が設けられると共に上向き保持円弧状縁に対応する下向き保持円弧状縁15が形成され、手摺桿2,2は上向き保持円弧状縁と下向き保持円弧状縁に挟着されてブラケットに保持される。手摺桿内に挿設される電気配線20は電源接続器具に接続される。
【解決手段】設置面に取り付けられる手摺におけるブラケット1の基体3には上向き保持円弧状縁8が形成され、基体に軸着される覆体4には必要に応じて電源接続器具19が設けられると共に上向き保持円弧状縁に対応する下向き保持円弧状縁15が形成され、手摺桿2,2は上向き保持円弧状縁と下向き保持円弧状縁に挟着されてブラケットに保持される。手摺桿内に挿設される電気配線20は電源接続器具に接続される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建造物の壁面等に取り付けられるブラケットに手摺桿が固着される手摺、特にブラケットに電源接続器具等を装備できる手摺に関する。
【背景技術】
【0002】
建造物の壁面に手摺を設置する場合には、建造物にブラケットを螺子止めして取付け、次いで手摺桿をブラケットに螺子止め等により固定する手段が採用されているが、より部品点数を少なくし、また簡単な取付作業で手摺桿を固定するための手段として、ブラケット根部の一方に手摺桿を周回するような可撓部分を一体的に設けておき、ブラケットに手摺桿を固定する場合には、ブラケットの可撓部分を手摺桿に周回するように巻き付けると共に、可撓部分の端部をブラケット根部の他方に嵌合して螺子止めするようにした手摺構造が既に開発されている(例えば、特許文献1参照。)。しかしながらこのようなブラケットでは可撓部分が含まれるために、ブラケットと手摺桿部分の接合が緩む可能性が存在し、また可撓部分が長期間の使用によって破損する虞がある。またこの例のみならず一般的に手摺構造は、手摺本来の目的のみを追求して製造され、手摺以外の用途に使用することを考えた例は極めて少ない。
【0003】
【特許文献1】特許第3738398号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、取付作業が容易で堅牢な構造を有し、中空の円形断面を有する左右の手摺桿端部それぞれを同時に挟持するブラケットを具備する手摺を提供すると共に、手摺桿内に電気配線を施すと同時にブラケットに電源接続口を装備した手摺を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するために、本発明にかかる手摺について、中空の円形断面を有する手摺桿を保持するブラケットは、設置面に取り付けられる背板部両側から平行に前方に延びる両側板部それぞれに半円弧状に上方に開く上向き保持円弧状縁が形成された硬質材料製の基体と、該基体の前面を該両側板部外縁に沿って上方から下方に向けて覆う前板部が形成されると共に該前板部の上方両側が該基体の該両側板部上方に軸着され且つ該前板部両側の両突縁部にはそれぞれ該上向き保持円弧状縁に対向して半円弧状に下方に開く下向き保持円弧状縁が形成されると共に該前板部下部には該基体の該背板部下部に対する締着手段が配設される硬質材料製の覆体とを具備し、該締着手段の締め付けにより内部空間を保有した状態で該基体の該上向き保持円弧状縁と該覆体の該下向き保持円弧状縁との間に該手摺桿が挟着されて該手摺桿と該ブラケットとが一体的に固着されることを基本的な特徴とする。
【0006】
また手摺桿の筒内部には、電気配線が挿設されており、ブラケットにおける覆体の前板部には電源接続器具が設置され、該手摺桿の筒内部に挿設された電気配線が該ブラケットの該内部空間に収容された配線器具を介して該電源接続器具に接続されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、次のような効果を奏する。
A.基体の上向き保持円弧状縁と覆体の下向き保持円弧状縁とはブラケットの両側に形成されているので、ブラケットを貫通する手摺桿を固着する手摺の場合のみならず、左右の手摺桿の端部がそれぞれブラケットの内部空間に臨む位置に配設される手摺の場合にも、それぞれの手摺桿の端部は単独のブラケットにおける左右それぞれの上向き保持円弧状縁と左右それぞれの下向き保持円弧状縁とで固着されるので、ブラケットの内部空間で電気配線の接続を行う場合等に最適である。
B.ブラケットの基体及び覆体は全て硬質材料で形成されるから堅牢な構造を有する。
C.手摺桿は、締着手段の締め付けにより内部空間を保有した状態で基体の上向き保持円弧状縁と覆体の下向き保持円弧状縁との間に挟着されるので手摺桿とブラケットとは一体的に固着され、充分な結合状態を保持することが出来る。
D.取付作業が容易である。特に手摺桿をブラケットに固着するには、設置面に取り付けられたブラケットにおける基体の上向き保持円弧状縁に手摺桿を載置し、基体に軸着された覆体を被せると、基体の上向き保持円弧状縁と覆体の下向き保持円弧状縁との間に該手摺桿が挟持され、締着手段の締め付け作業のみで手摺桿とブラケットとは一体的に固着される。
E.ブラケットは基体と覆体の間に内部空間を保有するので、配線器具等の器具を収容することが可能である。
【0008】
F.手摺は階段の壁面に沿って設置される場合が少なくないが、階段等を掃除する場合に使用する電気掃除機の電源接続口は、従来階上や階下の床面に近接して配置されることが多く、特に長い階段の場合には電源接続口を求めて階段を登り降りしなければならない不便を生じていたが、手摺桿を給電に利用し、且つブラケットに電源接続口を装備して使用することにより、階段の途中にも電源接続口を設けることが出来るから、このような不便が解消される。
G.手摺桿の筒内部に電気配線が挿設され、またブラケットにおける覆体の前板部に電源接続器具が設置されるから、配線や器具の設置等による建造物の損傷なしに電源接続口を設置することが出来る。
H.電源接続器具が設置されたブラケットと設置されていないブラケットは同一の外形とされているから手摺全体の外見に違和感を生じない。
I.手摺桿の端縁には電気配線の位置を筒中央付近に規制する配線挿通孔を穿孔した絶縁材料製の端部キャップが嵌合され、電気配線の端部付近が端部キャップの配線挿通孔に挿通されているので、配線の乱雑化を排除し、不測の事故の発生をを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明を実施するための最良の形態について、以下実施例において、添付図面を参照しながら具体的に説明する。
【実施例】
【0010】
本発明の実施例について添付図面を参照して説明する。図1には本発明にかかる手摺の概要が示されている。即ち手摺は、建造物における壁面等の設置面Wに対して取り付けられた複数のブラケット1それぞれに円形断面の手摺桿2が保持される状態で設置されている。本発明では、後述するように、手摺桿2内に電気配線が施され、特定のブラケット1(図1において、中央のブラケット)に電源接続口が設けられ、例えば建造物の床F上において使用される電気掃除機等の電気機器E等に電力を供給することが出来るようにされた実施態様も含まれている。しかしながら手摺全体については共通な基本的構成を有しているので、先ずは手摺の基本的な態様について説明する。
【0011】
図2には、本発明の基本的な手摺の概要が示されている。即ち円形断面の手摺桿2は、ブラケット1における設置面Wに直接取り付けられる基体3と基体3に軸着される覆体4とによって挟着され保持されている。図3にはブラケット1の外観が、また図4乃至図6にはブラケット1付近の関連構成がより詳細に示されている。ブラケット1の基体3は金属や硬質合成樹脂等の硬質材料で製造され、設置面Wに取り付けられる背板部5両側から両側板部6,6が平行に前方に延びている。ブラケット1の背板部5は設置時にアンカーボルト7によって設置面Wに取り付けられる。ブラケット両側板部6,6それぞれの中央部位には半円弧状に上方に開く上向き保持円弧状縁8,8が形成されており、またそれぞれの上部には後述する軸着手段のための通孔9,9が穿設され、さらに背板部5の下部には後述する締着手段のための締着螺孔10が螺設されている。また上向き保持円弧状縁8,8には、手摺桿2の保持を補助するために延長縁11,11が延設されている。
【0012】
金属または硬質合成樹脂等の硬質材料製の覆体4には基体3の前面を両側板部6,6外縁に沿って上方から下方に向けて覆う前板部12が形成されている。そして前板部12の上方両側に向けて芯軸13が挿通され、芯軸13の両端はブラケット1における両側板部6,6の通孔9,9に挿通されて覆体4における前板部12の上方両側が基体3の両側板部6,6上方に対して軸着されている。この軸着手段は他の公知手段を使用することが可能である。前板部12両側の両突縁部14,14には上向き保持円弧状縁8,8に対向して半円弧状に下方に開く下向き保持円弧状縁15,15が形成されている。また前板部12下部には透孔16が設けられ基体3の背板部5下部の締着螺孔10に対して螺子17を締め付けるようにした締着手段が配設されている。このようにして基体3の背板部5および両側板部6,6および覆体4で囲まれたブラケット1の内部には内部空間18が形成される。
【0013】
合成樹脂被覆鋼管等で製造された手摺桿2は、アンカーボルト7によって設置面Wに取り付けられたブラケット1における基体3の上向き保持円弧状縁8,8に載置され、次いで基体3に軸着された覆体4を回動させて覆体4の下向き保持円弧状縁15,15を手摺桿2上面に係合させ、さらに覆体4の透孔16に螺子17を挿通して基体3の締着螺孔10に締め付けると、内部空間18を保有した状態で基体3の上向き保持円弧状縁8,8と覆体4の下向き保持円弧状縁15,15との間に手摺桿2が挟着されて手摺桿2とブラケット1とが一体的に固着され、このように簡単な取付作業で充分な結合状態を保持することが出来る。またブラケット1の内部空間18は、後述するように配線器具等を収容したり電気配線の接続を行う空間として役立つ。
【0014】
図7乃至図11には、手摺桿2に電気配線が挿設され、ブラケット1に電源接続口が設けられた実施態様が示されており、ブラケット1や手摺桿2の基本的な構成は前述の実施態様と同様であり、図7乃至図11に付された符号は、図1乃至図6に付された符号と同一箇所を示す。またこの実施態様の手摺取付作業も、配線作業を除いて前記した基本的な手摺の取付作業と同様に行われる。手摺は階段の壁面に沿って設置される場合が少なくないが、階段等を掃除する場合に使用する電気掃除機の電源接続口は、従来階上や階下の床面に近接して配置されることが多く、特に長い階段の場合には電源接続口を求めて階段を登り降りしなければならない不便を生じていた。しかしながら手摺桿2を給電に利用し、ブラケット1を電源接続口として使用することにより階段の途中にも電源接続口を設けることが出来るから、このような不便が解消される。この実施態様のブラケット1は、図8に示されるように、覆体4の前板部12に電源プラグ差込器具のような電源接続器具19が設置された点で前述の基本的なブラケット1と相違する。ブラケット1は基体3と覆体4の間に内部空間18を保有するので、電源接続器具19や他の配線器具を収容することが可能である。通常電源接続口が必要な箇所に電源接続器具19を設置したブラケット1を準備して手摺の設置作業を行うが、覆体4と基体3との軸着箇所を取り外し可能としたブラケット1を用意しておけば、電源接続器具19が設置されていない覆体4を、電源接続器具19が設置されている覆体4に交換することによって、電源接続器具19が設置されていなかったブラケット1の個所について、手摺を設置した後でも電源接続口を設置することが可能となる。また手摺が設置された場合に、電源接続器具19が設置されたブラケット1と設置されていないブラケット1とは同一の外形とされているから手摺全体の外見に違和感を生じさせない。
【0015】
この実施態様の手摺桿2は、前述の基本的な手摺桿2とその外形は同様であるが、手摺桿2の筒内部には、電気配線20が挿設されている。図7、図9乃至図11に示されているように、ブラケット1を挟む左右の手摺桿2,2は、それらの端部がそれぞれブラケット1の内部空間18に臨む位置に配設されている。このような場合にも、基体3の上向き保持円弧状縁8,8および覆体4の下向き保持円弧状縁15,15はブラケット1の両側に形成されているので、それぞれの手摺桿2,2を単独のブラケット1で固着することが出来る。したがってそれぞれの手摺桿2,2から内部空間18に引き出された電気配線20の接続を行う場合等に最適である。また手摺桿2の端縁には電気配線20の位置を筒中央付近に規制する配線挿通孔21が穿孔された絶縁材料製の端部キャップ22が嵌合されており、電気配線20の端部付近が端部キャップ22の配線挿通孔21に挿通されているので、配線の乱雑化を排除し、不測の事故の発生を防止している。
【0016】
ブラケット1の内部空間18に引き出された電気配線20は、内部空間18に収容された2個のコネクタ23,23に接続され、これらコネクタ23,23を経由して更に一方の手摺桿2の電気配線20から他方の手摺桿2の電気配線20へ接続されると共に、電源接続器具19に接続される。このようにブラケット1内に接続器具を収納し、また配線を接続するのに充分な内部空間18が与えられるので外部に配線等が露出することなく体裁のよい手摺が完成する。そして手摺桿2の筒内部に電気配線20が挿設され、またブラケット1における覆体4の前板部12に電源接続器具19が設置されるから、配線や器具の設置等による建造物の損傷なしに電源接続口を設置することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】手摺の概要を示す斜視図である。
【図2】基本的な態様の手摺の概要を示す一部分解斜視図である。
【図3】基本的な態様のブラケットを示す斜視図である。
【図4】基本的な態様における手摺の縦断面図である。
【図5】図4におけるA−A線断面図である。
【図6】図4におけるB−B線断面図である。
【図7】電気配線が施される態様の手摺の概要を示す一部分解斜視図である。
【図8】電源接続装置が装着されたブラケットを示す斜視図である。
【図9】電気配線が施される態様における手摺の縦断面図である。
【図10】図9におけるA−A線断面図である。
【図11】図9におけるB−B線断面図である。
【符号の説明】
【0018】
1 ブラケット
2 手摺桿
3 基体
4 覆体
5 背板部
6 側板部
8 上向き保持円弧状縁
12 前板部
14 突縁部
15 下向き保持円弧状縁
18 内部空間
19 電源接続器具
20 電気配線
21 配線挿通孔
22 端部キャップ
【技術分野】
【0001】
本発明は、建造物の壁面等に取り付けられるブラケットに手摺桿が固着される手摺、特にブラケットに電源接続器具等を装備できる手摺に関する。
【背景技術】
【0002】
建造物の壁面に手摺を設置する場合には、建造物にブラケットを螺子止めして取付け、次いで手摺桿をブラケットに螺子止め等により固定する手段が採用されているが、より部品点数を少なくし、また簡単な取付作業で手摺桿を固定するための手段として、ブラケット根部の一方に手摺桿を周回するような可撓部分を一体的に設けておき、ブラケットに手摺桿を固定する場合には、ブラケットの可撓部分を手摺桿に周回するように巻き付けると共に、可撓部分の端部をブラケット根部の他方に嵌合して螺子止めするようにした手摺構造が既に開発されている(例えば、特許文献1参照。)。しかしながらこのようなブラケットでは可撓部分が含まれるために、ブラケットと手摺桿部分の接合が緩む可能性が存在し、また可撓部分が長期間の使用によって破損する虞がある。またこの例のみならず一般的に手摺構造は、手摺本来の目的のみを追求して製造され、手摺以外の用途に使用することを考えた例は極めて少ない。
【0003】
【特許文献1】特許第3738398号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、取付作業が容易で堅牢な構造を有し、中空の円形断面を有する左右の手摺桿端部それぞれを同時に挟持するブラケットを具備する手摺を提供すると共に、手摺桿内に電気配線を施すと同時にブラケットに電源接続口を装備した手摺を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するために、本発明にかかる手摺について、中空の円形断面を有する手摺桿を保持するブラケットは、設置面に取り付けられる背板部両側から平行に前方に延びる両側板部それぞれに半円弧状に上方に開く上向き保持円弧状縁が形成された硬質材料製の基体と、該基体の前面を該両側板部外縁に沿って上方から下方に向けて覆う前板部が形成されると共に該前板部の上方両側が該基体の該両側板部上方に軸着され且つ該前板部両側の両突縁部にはそれぞれ該上向き保持円弧状縁に対向して半円弧状に下方に開く下向き保持円弧状縁が形成されると共に該前板部下部には該基体の該背板部下部に対する締着手段が配設される硬質材料製の覆体とを具備し、該締着手段の締め付けにより内部空間を保有した状態で該基体の該上向き保持円弧状縁と該覆体の該下向き保持円弧状縁との間に該手摺桿が挟着されて該手摺桿と該ブラケットとが一体的に固着されることを基本的な特徴とする。
【0006】
また手摺桿の筒内部には、電気配線が挿設されており、ブラケットにおける覆体の前板部には電源接続器具が設置され、該手摺桿の筒内部に挿設された電気配線が該ブラケットの該内部空間に収容された配線器具を介して該電源接続器具に接続されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、次のような効果を奏する。
A.基体の上向き保持円弧状縁と覆体の下向き保持円弧状縁とはブラケットの両側に形成されているので、ブラケットを貫通する手摺桿を固着する手摺の場合のみならず、左右の手摺桿の端部がそれぞれブラケットの内部空間に臨む位置に配設される手摺の場合にも、それぞれの手摺桿の端部は単独のブラケットにおける左右それぞれの上向き保持円弧状縁と左右それぞれの下向き保持円弧状縁とで固着されるので、ブラケットの内部空間で電気配線の接続を行う場合等に最適である。
B.ブラケットの基体及び覆体は全て硬質材料で形成されるから堅牢な構造を有する。
C.手摺桿は、締着手段の締め付けにより内部空間を保有した状態で基体の上向き保持円弧状縁と覆体の下向き保持円弧状縁との間に挟着されるので手摺桿とブラケットとは一体的に固着され、充分な結合状態を保持することが出来る。
D.取付作業が容易である。特に手摺桿をブラケットに固着するには、設置面に取り付けられたブラケットにおける基体の上向き保持円弧状縁に手摺桿を載置し、基体に軸着された覆体を被せると、基体の上向き保持円弧状縁と覆体の下向き保持円弧状縁との間に該手摺桿が挟持され、締着手段の締め付け作業のみで手摺桿とブラケットとは一体的に固着される。
E.ブラケットは基体と覆体の間に内部空間を保有するので、配線器具等の器具を収容することが可能である。
【0008】
F.手摺は階段の壁面に沿って設置される場合が少なくないが、階段等を掃除する場合に使用する電気掃除機の電源接続口は、従来階上や階下の床面に近接して配置されることが多く、特に長い階段の場合には電源接続口を求めて階段を登り降りしなければならない不便を生じていたが、手摺桿を給電に利用し、且つブラケットに電源接続口を装備して使用することにより、階段の途中にも電源接続口を設けることが出来るから、このような不便が解消される。
G.手摺桿の筒内部に電気配線が挿設され、またブラケットにおける覆体の前板部に電源接続器具が設置されるから、配線や器具の設置等による建造物の損傷なしに電源接続口を設置することが出来る。
H.電源接続器具が設置されたブラケットと設置されていないブラケットは同一の外形とされているから手摺全体の外見に違和感を生じない。
I.手摺桿の端縁には電気配線の位置を筒中央付近に規制する配線挿通孔を穿孔した絶縁材料製の端部キャップが嵌合され、電気配線の端部付近が端部キャップの配線挿通孔に挿通されているので、配線の乱雑化を排除し、不測の事故の発生をを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明を実施するための最良の形態について、以下実施例において、添付図面を参照しながら具体的に説明する。
【実施例】
【0010】
本発明の実施例について添付図面を参照して説明する。図1には本発明にかかる手摺の概要が示されている。即ち手摺は、建造物における壁面等の設置面Wに対して取り付けられた複数のブラケット1それぞれに円形断面の手摺桿2が保持される状態で設置されている。本発明では、後述するように、手摺桿2内に電気配線が施され、特定のブラケット1(図1において、中央のブラケット)に電源接続口が設けられ、例えば建造物の床F上において使用される電気掃除機等の電気機器E等に電力を供給することが出来るようにされた実施態様も含まれている。しかしながら手摺全体については共通な基本的構成を有しているので、先ずは手摺の基本的な態様について説明する。
【0011】
図2には、本発明の基本的な手摺の概要が示されている。即ち円形断面の手摺桿2は、ブラケット1における設置面Wに直接取り付けられる基体3と基体3に軸着される覆体4とによって挟着され保持されている。図3にはブラケット1の外観が、また図4乃至図6にはブラケット1付近の関連構成がより詳細に示されている。ブラケット1の基体3は金属や硬質合成樹脂等の硬質材料で製造され、設置面Wに取り付けられる背板部5両側から両側板部6,6が平行に前方に延びている。ブラケット1の背板部5は設置時にアンカーボルト7によって設置面Wに取り付けられる。ブラケット両側板部6,6それぞれの中央部位には半円弧状に上方に開く上向き保持円弧状縁8,8が形成されており、またそれぞれの上部には後述する軸着手段のための通孔9,9が穿設され、さらに背板部5の下部には後述する締着手段のための締着螺孔10が螺設されている。また上向き保持円弧状縁8,8には、手摺桿2の保持を補助するために延長縁11,11が延設されている。
【0012】
金属または硬質合成樹脂等の硬質材料製の覆体4には基体3の前面を両側板部6,6外縁に沿って上方から下方に向けて覆う前板部12が形成されている。そして前板部12の上方両側に向けて芯軸13が挿通され、芯軸13の両端はブラケット1における両側板部6,6の通孔9,9に挿通されて覆体4における前板部12の上方両側が基体3の両側板部6,6上方に対して軸着されている。この軸着手段は他の公知手段を使用することが可能である。前板部12両側の両突縁部14,14には上向き保持円弧状縁8,8に対向して半円弧状に下方に開く下向き保持円弧状縁15,15が形成されている。また前板部12下部には透孔16が設けられ基体3の背板部5下部の締着螺孔10に対して螺子17を締め付けるようにした締着手段が配設されている。このようにして基体3の背板部5および両側板部6,6および覆体4で囲まれたブラケット1の内部には内部空間18が形成される。
【0013】
合成樹脂被覆鋼管等で製造された手摺桿2は、アンカーボルト7によって設置面Wに取り付けられたブラケット1における基体3の上向き保持円弧状縁8,8に載置され、次いで基体3に軸着された覆体4を回動させて覆体4の下向き保持円弧状縁15,15を手摺桿2上面に係合させ、さらに覆体4の透孔16に螺子17を挿通して基体3の締着螺孔10に締め付けると、内部空間18を保有した状態で基体3の上向き保持円弧状縁8,8と覆体4の下向き保持円弧状縁15,15との間に手摺桿2が挟着されて手摺桿2とブラケット1とが一体的に固着され、このように簡単な取付作業で充分な結合状態を保持することが出来る。またブラケット1の内部空間18は、後述するように配線器具等を収容したり電気配線の接続を行う空間として役立つ。
【0014】
図7乃至図11には、手摺桿2に電気配線が挿設され、ブラケット1に電源接続口が設けられた実施態様が示されており、ブラケット1や手摺桿2の基本的な構成は前述の実施態様と同様であり、図7乃至図11に付された符号は、図1乃至図6に付された符号と同一箇所を示す。またこの実施態様の手摺取付作業も、配線作業を除いて前記した基本的な手摺の取付作業と同様に行われる。手摺は階段の壁面に沿って設置される場合が少なくないが、階段等を掃除する場合に使用する電気掃除機の電源接続口は、従来階上や階下の床面に近接して配置されることが多く、特に長い階段の場合には電源接続口を求めて階段を登り降りしなければならない不便を生じていた。しかしながら手摺桿2を給電に利用し、ブラケット1を電源接続口として使用することにより階段の途中にも電源接続口を設けることが出来るから、このような不便が解消される。この実施態様のブラケット1は、図8に示されるように、覆体4の前板部12に電源プラグ差込器具のような電源接続器具19が設置された点で前述の基本的なブラケット1と相違する。ブラケット1は基体3と覆体4の間に内部空間18を保有するので、電源接続器具19や他の配線器具を収容することが可能である。通常電源接続口が必要な箇所に電源接続器具19を設置したブラケット1を準備して手摺の設置作業を行うが、覆体4と基体3との軸着箇所を取り外し可能としたブラケット1を用意しておけば、電源接続器具19が設置されていない覆体4を、電源接続器具19が設置されている覆体4に交換することによって、電源接続器具19が設置されていなかったブラケット1の個所について、手摺を設置した後でも電源接続口を設置することが可能となる。また手摺が設置された場合に、電源接続器具19が設置されたブラケット1と設置されていないブラケット1とは同一の外形とされているから手摺全体の外見に違和感を生じさせない。
【0015】
この実施態様の手摺桿2は、前述の基本的な手摺桿2とその外形は同様であるが、手摺桿2の筒内部には、電気配線20が挿設されている。図7、図9乃至図11に示されているように、ブラケット1を挟む左右の手摺桿2,2は、それらの端部がそれぞれブラケット1の内部空間18に臨む位置に配設されている。このような場合にも、基体3の上向き保持円弧状縁8,8および覆体4の下向き保持円弧状縁15,15はブラケット1の両側に形成されているので、それぞれの手摺桿2,2を単独のブラケット1で固着することが出来る。したがってそれぞれの手摺桿2,2から内部空間18に引き出された電気配線20の接続を行う場合等に最適である。また手摺桿2の端縁には電気配線20の位置を筒中央付近に規制する配線挿通孔21が穿孔された絶縁材料製の端部キャップ22が嵌合されており、電気配線20の端部付近が端部キャップ22の配線挿通孔21に挿通されているので、配線の乱雑化を排除し、不測の事故の発生を防止している。
【0016】
ブラケット1の内部空間18に引き出された電気配線20は、内部空間18に収容された2個のコネクタ23,23に接続され、これらコネクタ23,23を経由して更に一方の手摺桿2の電気配線20から他方の手摺桿2の電気配線20へ接続されると共に、電源接続器具19に接続される。このようにブラケット1内に接続器具を収納し、また配線を接続するのに充分な内部空間18が与えられるので外部に配線等が露出することなく体裁のよい手摺が完成する。そして手摺桿2の筒内部に電気配線20が挿設され、またブラケット1における覆体4の前板部12に電源接続器具19が設置されるから、配線や器具の設置等による建造物の損傷なしに電源接続口を設置することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】手摺の概要を示す斜視図である。
【図2】基本的な態様の手摺の概要を示す一部分解斜視図である。
【図3】基本的な態様のブラケットを示す斜視図である。
【図4】基本的な態様における手摺の縦断面図である。
【図5】図4におけるA−A線断面図である。
【図6】図4におけるB−B線断面図である。
【図7】電気配線が施される態様の手摺の概要を示す一部分解斜視図である。
【図8】電源接続装置が装着されたブラケットを示す斜視図である。
【図9】電気配線が施される態様における手摺の縦断面図である。
【図10】図9におけるA−A線断面図である。
【図11】図9におけるB−B線断面図である。
【符号の説明】
【0018】
1 ブラケット
2 手摺桿
3 基体
4 覆体
5 背板部
6 側板部
8 上向き保持円弧状縁
12 前板部
14 突縁部
15 下向き保持円弧状縁
18 内部空間
19 電源接続器具
20 電気配線
21 配線挿通孔
22 端部キャップ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空の円形断面を有する手摺桿を保持するブラケットは、設置面に取り付けられる背板部両側から平行に前方に延びる両側板部それぞれに半円弧状に上方に開く上向き保持円弧状縁が形成された硬質材料製の基体と、該基体の前面を該両側板部外縁に沿って上方から下方に向けて覆う前板部が形成されると共に該前板部の上方両側が該基体の該両側板部上方に軸着され且つ該前板部両側の両突縁部にはそれぞれ該上向き保持円弧状縁に対向して半円弧状に下方に開く下向き保持円弧状縁が形成されると共に該前板部下部には該基体の該背板部下部に対する締着手段が配設される硬質材料製の覆体とよりなり、該締着手段の締め付けにより内部空間を保有した状態で該基体の該上向き保持円弧状縁と該覆体の該下向き保持円弧状縁との間に該手摺桿が挟着されて該手摺桿と該ブラケットとが一体的に固着されることを特徴とする手摺。
【請求項2】
該ブラケットの両側に別体の該手摺桿が配設され、それぞれの該手摺桿端部が該ブラケットの該内部空間に臨む位置に配設され、該基体の双方の該上向き保持円弧状縁と該覆体の双方の該下向き保持円弧状縁との間にそれぞれの該手摺桿端部が挟着されてそれぞれの該手摺桿と該ブラケットとが一体的に固着されることを特徴とする請求項1記載の手摺。
【請求項3】
該手摺桿の筒内部には、電気配線が挿設されていることを特徴とする請求項1記載の手摺。
【請求項4】
該手摺桿の筒内部には電気配線が挿設されると共に、該手摺桿端部が該ブラケットの該内部空間に臨む位置に配設され、且つ該手摺桿端縁には該電気配線の位置を筒中央付近に規制する配線挿通孔が穿孔された絶縁材料製の端部キャップが嵌合され、該電気配線の端部付近が該端部キャップの該配線挿通孔に挿通されていることを特徴とする請求項1記載の手摺。
【請求項5】
該ブラケットにおける該覆体の該前板部には電源接続器具が設置され、該手摺桿の筒内部に挿設された電気配線が該ブラケットの該内部空間に収容された配線器具を介して該電源接続器具に接続されていることを特徴とする請求項1記載の手摺。
【請求項1】
中空の円形断面を有する手摺桿を保持するブラケットは、設置面に取り付けられる背板部両側から平行に前方に延びる両側板部それぞれに半円弧状に上方に開く上向き保持円弧状縁が形成された硬質材料製の基体と、該基体の前面を該両側板部外縁に沿って上方から下方に向けて覆う前板部が形成されると共に該前板部の上方両側が該基体の該両側板部上方に軸着され且つ該前板部両側の両突縁部にはそれぞれ該上向き保持円弧状縁に対向して半円弧状に下方に開く下向き保持円弧状縁が形成されると共に該前板部下部には該基体の該背板部下部に対する締着手段が配設される硬質材料製の覆体とよりなり、該締着手段の締め付けにより内部空間を保有した状態で該基体の該上向き保持円弧状縁と該覆体の該下向き保持円弧状縁との間に該手摺桿が挟着されて該手摺桿と該ブラケットとが一体的に固着されることを特徴とする手摺。
【請求項2】
該ブラケットの両側に別体の該手摺桿が配設され、それぞれの該手摺桿端部が該ブラケットの該内部空間に臨む位置に配設され、該基体の双方の該上向き保持円弧状縁と該覆体の双方の該下向き保持円弧状縁との間にそれぞれの該手摺桿端部が挟着されてそれぞれの該手摺桿と該ブラケットとが一体的に固着されることを特徴とする請求項1記載の手摺。
【請求項3】
該手摺桿の筒内部には、電気配線が挿設されていることを特徴とする請求項1記載の手摺。
【請求項4】
該手摺桿の筒内部には電気配線が挿設されると共に、該手摺桿端部が該ブラケットの該内部空間に臨む位置に配設され、且つ該手摺桿端縁には該電気配線の位置を筒中央付近に規制する配線挿通孔が穿孔された絶縁材料製の端部キャップが嵌合され、該電気配線の端部付近が該端部キャップの該配線挿通孔に挿通されていることを特徴とする請求項1記載の手摺。
【請求項5】
該ブラケットにおける該覆体の該前板部には電源接続器具が設置され、該手摺桿の筒内部に挿設された電気配線が該ブラケットの該内部空間に収容された配線器具を介して該電源接続器具に接続されていることを特徴とする請求項1記載の手摺。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2010−37750(P2010−37750A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−199399(P2008−199399)
【出願日】平成20年8月1日(2008.8.1)
【出願人】(000110479)ナカ工業株式会社 (125)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年8月1日(2008.8.1)
【出願人】(000110479)ナカ工業株式会社 (125)
【Fターム(参考)】
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