説明

手袋

【課題】 手袋内装部材と防水インナーと手袋外皮部材の各指先部分の止着を確実に行ない、同止着部分に良好な防水性と耐久性のある止着強度を確保する。
【解決手段】 手袋外皮部材1と、手袋内装部材3と、これらの間に介在される手袋形の防水インナー2とを具備する手袋であって、防水インナー2の各指先部の内面と外面とに各々縫着用テープ4を接着すると共に、内面側の縫着用テープ4に設けた突き出し部41と、手袋内装部材3の指先部内側との間、及び外面側の縫着用フープ4に設けた突き出し部41と手袋外皮部材1の指先部外側との間を各々に縫着し、手袋内装部材3の引き出されるのを防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は防水機能を具備した手袋に関し、さらに詳しくは手袋外皮部材、防水インナー、手袋内装部材の3層から構成される手袋の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の手袋の中には、外皮となる手袋外皮部材の内側に保温性を有する手袋内装部材を内装し、これらの部材の間に防水フィルム、防水シート等を手袋状に形成した防水インナーを介在させ、手袋外皮部材を浸透して浸透した水分を防水インナーにて遮断し、手袋内装部材に浸透するのを防止するように構成したものがある。
上記したように手袋外皮部材と防水インナーと手袋内装部材との3層からなる手袋は、手に装着した状態から外す際に、手袋内装部材や防水インナーが引き抜いた手と共に裏返しになって引き出されてしまうことがある。このような不具合を回避するために、従来、上記したような3層構造を有する手袋は、3層の各部材同士を接着して一体化することによりこの不具合を回避する工夫が施されたものがある。
3層の各部材を接着する方法としては、特許文献1に開示されるように接着剤を用いて多数の接着部分を点在させ、各部材を一体化させたものがある。この手袋の場合、点在させた接着部分を確実に接着させることが難しく、一部の接着が不十分であったり、使用を続けると接着部分に引っ張り力が加わって剥離してしまったりすることがあり、確実な接着性や耐久性の点で問題があった。
【0003】
また、同様に構成される従来の手袋の中には、防水インナーと手袋内装部材の引き抜けを防止する手段として、3層の部材の指先部分を一体的に止着したものがある(特許文献2)。
この手袋は、防水インナーの指先部分の縁を高周波溶着する際に縫い代となる小片を融着し、この小片の外側の突出部分を手袋外皮部材の指先部分に縫着すると共に、同小片の内側の突出部分を手袋内装部材の指先部分に縫着することにより、3層の部材の指先部分を一体的に止着して成る。この手袋は各部材同士を縫製と融着により止着しているので、防水の点や止着力の確保の点で優れている。
しかしながら、上記したように止着部材となる小片は、防水インナーに高周波溶着していることから、使用を重ねるに連れて小片と防水インナーとの溶着部の角部や境界部分が弱って破けてしまうことがあり、ここから水が浸入してしまうことがあった。
【0004】
また、同様に、防水インナーを被覆した手袋内装部材の指先に突出させた縫い代を手袋外皮部材の各指先に縫着した後に、同手袋外皮部材を裏返して手袋を構成するものとして特許文献3の手袋もあるが、防水インナーを被覆した手袋内装部材の各指先と、裏返した手袋外皮部材の指先同士を突き合わせて縫着する作業は大変であり、製造時に手間がかかる。また、縫着作業の後に手袋外皮部材を裏返しにする際には、5本の指先が縫着された状態であるから縫着部分に無理な力が加わり、比較的弱い防水インナーの指先部分が破けて防水機能に支障を来す可能性もあった。また、使用中にも防水インナーの指先部分に繰り返して負荷が加わるため、比較的短期間に防水インナーの指先部分が破けてしまうこともあった。この問題は前記した特許文献2の手袋も同様である。
【特許文献1】特開平257005号公報
【特許文献2】特開2005−307404号公報
【特許文献3】特開2003−27316号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記したような従来事情に鑑みてなされたものであり、その目的とする処は、上記した如き構成の手袋において、手袋内装部材と防水インナーと手袋外皮部材の各指先部分の止着を確実に行ない、同止着部分に良好な防水性と耐久性のある止着強度を確保することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記目的を達成するために下記の技術的手段を採用した。
第1発明の手袋は、
手袋外皮部材と、その内側に内装される手袋内装部材と、これら両部材の間に介在される手袋形の防水インナーとを具備する手袋であって、
前記防水インナーの各指先部の内面と外面とに各々縫着用テープを接着すると共に、内面側の縫着用テープに設けた突き出し部と、手袋内装部材の指先部外側との間、及び外面側の縫着用テープに設けた突き出し部と手袋外皮部材の指先部内側との間を各々に縫着したものである。
【0007】
第2発明の手袋は、上記請求項1記載の手袋において、片面に接着層を有する縫着用テープを二つ折りにして、その折り返し部分の接着層同士を接着して突き出し部と成し、且つ同テープの両端側の接着層を防水インナーの指先部に接着することにより、縫着用テープを防水インナーに接着すると共に、突き出し部を突出形成したものである。
【0008】
第3発明の手袋は、上記請求項2記載の手袋において、内面側及び外面側の縫着用テープの接着位置を防水インナー指先部の内外同一箇所に合致せしめて成るものである。
【0009】
第4発明の手袋は、上記請求項1乃至請求項3記載の手袋において、防水インナーの指先部に接着した縫着用テープの突き出し部と手袋外皮部材の指先部内面とを縫着糸にて縫着すると共に、その縫着部の間に縫着糸により連絡される適宜長さの連絡部を設けて成るものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の手袋によれば、下記のような優れた作用、効果が期待できる。
第1発明の手袋は、防水インナーの各指先部の内面と外面とに各々縫着用テープを接着し、その内面側の縫着用テープに設けた突き出し部と、手袋内装部材の指先部外側との間を縫着すると共に、外面側の縫着用フープに設けた突き出し部と手袋外皮部材の指先部内側との間を各々に縫着したものである。よって、特に強度の必要な手袋外皮部材と縫着用テープの間、及び手袋内装部材との間を縫着関係により確実に止着すると共に、耐久的な防水性を要求される防水インナーと各縫着用テープとの間を引き裂かれないように接着関係により止着して、3層の各部材の指先部分を一体的に止着できる。その結果、手を引き抜く際に手袋内装部材と防水インナーが引き出されてしまう現象を防止すると共に、指先部分において確実に止着強度を確保し、且つ耐久的で良好な防水性を維持することが可能となる。
【0011】
第2発明の手袋は、上記請求項1記載の手袋において、片面に接着層を有する縫着用テープの接着層同士を接着して同縫着用テープが重なり合って成る突き出し部を構成し、該突き出し部の一端部から各々に延出せしめた2枚の縫着用テープの接着層を防水インナーの指先部に各々接着することにより、上記突き出し部を防水インナーの指先部から突出形成したものである。よって、突き出し部から延出する両縫着用テープの接着部分を防水インナーに広い面積を介して確りと接着することができると共に、同防水インナーから縫着代となる突き出し部を任意の長さにて突出させることができるようになり、縫着関係による止着と接着による止着とを良いバランスを保って維持することができる。また、防水インナーに対する接着作業や手袋外皮部材や手袋内装部材に対する縫着作業もとても簡単に行なうことができ、製造時の作業効率の向上にも寄与する。
【0012】
第3発明の手袋は、上記請求項1又は請求項2記載の手袋において、内面側及び外面側の縫着用テープの接着位置を防水インナー指先部の内外同一箇所に合致せしめて成るものであるから、両縫着用テープを引っ張るように負荷が加わった際にも、この負荷が合致する接着面に均等に加わるようになり、防水インナーが片寄って引かれて裂けてしまうような不具合を効果的に防止することができる。
【0013】
第4発明の手袋は、上記請求項1乃至請求項3記載の手袋において、防水インナーの指先部に接着した縫着用テープの突き出し部と手袋外皮部材の指先部内面とを縫着糸にて縫着し、その縫着部の間に縫着糸により連絡される適宜長さの連絡部を設けて成るものである。よって、防水インナーを被覆した手袋内装部材と、裏返した状態の手袋外皮部材の各指先同士を止着した状態において、対応する指先同士が適宜な長さの縫着糸から成る連絡部を介して止着されることになる。その結果、製造時において、裏返しの状態の手袋外皮部材をひっくり返して3層を重ね合わせる際に防水インナーの指先部に無理な力が加わることがなくなり、余裕をもってこの作業を行なうことができる。また、手袋の使用中も上記連絡部に生じる余裕により、防水インナーに接着される縫着用テープが引かれて防水インナーに無理な力が加わるようなことを防止でき、止着力の耐久性を向上することもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の手袋を実施するための最良の形態を図1乃至図4に基づいて説明する。
図1は本発明を実施した手袋Aである。この手袋Aは3層構造であり、丈夫な外皮となる手袋外皮部材1と、防水層となる防水インナー2と、保温性の有る内装材となる手袋内装部材3とから構成してある。
手袋外皮部材1は比較的丈夫な合成繊維布等から成り、手の甲や指の各部位の形状に裁断した後、各々の部材の縁同士を縫製して手袋形に構成してある。また、手袋外皮部材1を縫製する際には裏返しとなる状態を維持しつつ縫製作業を進めることになり、各部材の縫い合わせ部分に沿っては適宜幅の縫い代11が突出する状態となる(図3)。尚、手袋外皮部材1の甲側の内面にはスポンジ材等の緩衝材を縫着してもよい。
【0015】
手袋内装部材3は上記手袋外皮部材1の内部に内装されるボアやフリース等の保温性の高い布を手袋形に縫製して構成してある。手袋内装部材3は手袋外皮部材1の内側に防水層となる防水インナー2を介してフィットする状態で内装される。
防水層となる防水インナー2はポリウレタン樹脂等の防水性を有する合成樹脂シート、若しくは透湿防水性を有する合成樹脂シート等を手形に裁断し、これらの手形シートを2枚重ね合わせた状態で差し入れ口を除く周囲を高周波溶着して手袋型に形成してある。尚、透湿防水性を有する合成樹脂シートを用いて防水インナーを構成した場合、防水性を発揮しつつ通気性も有するので使用時に手が蒸れない利点がある。また、上記防水インナー2はディッピング加工により一体成形してもよく、この場合、良好な防水性を維持することができる。
上記したように構成した防水インナー2は後述する縫着用テープ4を各指先部分の内外両面に接着し、これらの縫着用テープ部4を手袋外皮部材1の指先部、及び手袋内装部材3の指先部に各々縫着して各部材の指先部分を一体的に止着する(図1)。
縫着用テープ4は丈夫な布製の粘着テープであり、粘着力の強いものを用いる。縫着用テープ4は適宜な長さに切断し、中央部で折り曲げて接着面同士を適宜な幅、例えば1cm程度接着して突き出し部となる縫着代41を形成し、該縫着代41から2枚の接着代42が延出した状態とする(図4)。
【0016】
上記したように形成した縫着用テープ4は2枚の接着代42により防水インナー2外面の各指先を挟むように接着する(図2)。即ち、防水インナー2の全ての指先部分に縫着用テープ4を接着し、その先端から縫着代41が突出する形となる。次いで、防水インナー2を裏返し、内面を外側とする。そして上記したと同様に防水インナー2内面の各指先を縫着用テープ4の2枚の接着代42で挟むように接着する。この際、2枚の接着代42は、前述したように外面側の各指先に接着した縫着用テープ4の接着代42の接着位置と出来るだけ正確に一致させ、防水インナー2の層を挟んで内外両縫着用テープ4の接着代42同士がぴったりと接着されるように構成する(図1)。これにより両縫着用テープ4間に負荷が加わった際に防水インナー2が引かれて破けてしまうような問題を効果的に防止することができる。
【0017】
上記したように構成される手袋Aを実際に製造する際には、防水インナー2を裏返しの状態とし、この防水インナー2の各指先に接着した内側の縫着用テープ4の縫着代41を手袋内装部材3の対応する各指先の縫い代部分に直接縫着する。このように内側の各縫着用テープ4を縫着した後、裏返してあった防水インナー2を反対に返して元の状態に戻し、手袋内装部材3の表面に被覆した状態とする。
次いで、裏返した状態にある手袋外皮部材1と上記したように防水インナー2を被覆した手袋内装部材3の対応する指先同士を向かえ合わせにして保つ(図3,図4)。次いで防水インナー2の各指先に突出する外側の縫着用テープ4の縫着代41を縫い付けた後、縫い糸を適宜長さ引き伸ばして対応する手袋外皮部材1の指先部分の縫い代11に縫い付ける。すなわち、防水インナー2の指先から突出する外側の縫着用テープ4と、手袋外皮部材1の指先とは適宜な長さの縫い糸からなる連絡部5を介して止着されることになる。上記した連絡部5を構成する縫い糸は1cm〜3cm程度が好ましいが、この連絡部5の長さは適宜に変更してもよい。また、連絡部5の縫い糸は副数本縒った状態に構成すると強度の点でも取り扱い性の点でも良好である。
【0018】
各指の縫着が終えたならば、図3の状態から裏返し状態にある手袋外皮部材1を反対に返して表向きに直し、同時に手袋内装部材3の表面に被覆した状態とする。この作業を行なう際に上記した連絡部5の余裕が活かされ、防水インナー2の指先部分の接着部位に無理な負荷を与えるのを防止できる。その後、手の差し入れ口の縫製作業等に移行する。
このように3層が重なり合った手袋Aの各指先部分は内外の両縫着用テープ4と連絡部5の糸を介して止着されることとなる。よって、手袋Aの装着に際して生じる手袋内装部材3と防水インナー2の引き出しはその止着関係により防止され、快適に使用することができる。
また、指を引き抜く際に手袋内装部材3の指先が連絡部5の余裕分、手袋内装部材3及び防水インナー2の指先がごく僅かではあるが引き抜かれる方向へずれるが、このずれが防水インナー2の指先に負荷を与える現象を回避し得る。また、上記したように生じる手袋内装部材3と防水インナー2の指先のずれは次に指を入れる際に正常な状態にもどるので手袋Aの装着には全く問題にはならない。
【0019】
上記したように構成した手袋Aは、仮に手袋外皮部材1の層を通過して水が浸入しても2層目の防水インナー2にてこれを完全に止めることができるので、水が手袋内装部材3まで浸透して気持ちの悪い思いをすることもない。また、防水の破れやすい指先部分の接着も内外両縫着用テープ4の接着代42同士を合致させ、広い面積を介して接着してあるので、負荷に強く、長期にわたり良好な防水性を維持することができる。
【0020】
尚、縫着用テープの縫着代及び接着代の幅や長さ、形状は任意に変更してもよい。
また、上記した実施例の手袋Aにおいては、外側の縫着用テープ4と手袋外皮部材1の指先部の縫い代との間に連絡部5を設けたが、本発明の手袋にあっては、外側の縫着用テープ4の縫着代41を手袋外皮部材1内側の指先部の縫い代に対して直接に縫着してもよい。
上記実施例の手袋Aは縫着用テープ4として片面に粘着層を有する接着テープを用いたが、縫着用テープの接着はこれに限定するものではなく、接着剤を使用して接着しても、若しくは高周波溶着により接着してもよい。さらに、縫着用テープの縫着代及び接着代の幅や長さ、形状は任意に変更してもよい。
さらに、上記した手袋Aでは縫着糸から成る連絡部5を防水インナー2外面側の縫着用テープ4と手袋外皮部材1の内側との間に設けたが、この連絡部は同様に、防水インナー内面
側の縫着用テープ4と手袋内装部材3の指先部との間に設けてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の手袋を一部切欠して示す側面図。
【図2】3層手袋を構成する手袋外皮部材、防水インナー、手袋内装部材を示す正面図。
【図3】防水インナーを被覆した手袋内装部材と、手袋外皮部材の各指先を縫着した状態を示す側面図。
【図4】縫着用テープを介して止着した防水インナーを被覆した手袋内装部材と、手袋外皮部材の指先部分を示す斜視図。
【符号の説明】
【0022】
A・・・手袋
1・・・手袋外皮部材
2・・・防水インナー
3・・・手袋内装部材
4・・・縫着用テープ
5・・・連絡部
41・・・縫着代
42・・・接着代

【特許請求の範囲】
【請求項1】
手袋外皮部材と、その内側に内装される手袋内装部材と、これら両部材の間に介在される手袋形の防水インナーとを具備する手袋であって、
前記防水インナーの各指先部の内面と外面とに各々縫着用テープを接着すると共に、内面側の縫着用テープに設けた突き出し部と、手袋内装部材の指先部外側との間、及び外面側の縫着用テープに設けた突き出し部と手袋外皮部材の指先部内側との間を各々に縫着したことを特徴とする手袋。
【請求項2】
片面に接着層を有する縫着用テープの接着層同士を接着して同縫着用テープが重なり合って成る突き出し部を構成し、該突き出し部の一端部から各々に延出せしめた2枚の縫着用テープの接着層を防水インナーの指先部に各々接着することにより、上記突き出し部を防水インナーの指先部から突出形成したことを特徴とする請求項1記載の手袋。
【請求項3】
内面側及び外面側の縫着用テープの接着位置を防水インナー指先部の内外同一箇所に合致せしめて成る請求項1又は2記載の手袋。
【請求項4】
防水インナーの指先部に接着した縫着用テープの突き出し部と手袋外皮部材の指先部内面とを縫着糸にて縫着すると共に、その縫着部の間に縫着糸により連絡される適宜長さの連絡部を設けて成る請求項1乃至3記載の何れか一項記載の手袋。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2007−321308(P2007−321308A)
【公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−154188(P2006−154188)
【出願日】平成18年6月2日(2006.6.2)
【出願人】(000000550)オカモト株式会社 (118)
【Fターム(参考)】