説明

手袋

【課題】 左手用と右手用の形状が異なる手袋では、装着する際に取り違えれば作業時間が長くなり、作業効率が低下する。立体形状を保ちにくい薄手のゴム手袋、塩化ビニール製手袋などで、その傾向は顕著である。また、もし仮に左手用と右手用の手袋を取り違えた場合、作業効率の低下が起こる。
【解決手段】 左手用と右手用の手袋で異なる着色を施すことで、左手用と右手用の手袋が目視で容易に判別できるようにし、取り違えることによる時間の浪費や判別にかかる時間を低減するとともに、取り違える可能性を低減し、取り違えたまま作業することによる作業効率の低下を未然に防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、水や薬品から手を保護するために用いられる手袋についてのものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、手を保護する意味で、いろいろな手袋が用いられている。繊維製手袋、ゴム手袋、樹脂製手袋、樹脂やゴムの積層された手袋、金属製手袋などが用いられている。また、左手用手袋と右手用手袋の形状が異なっているものが多い。それらの手袋は、生産性の面からか、意匠性の面からか、左手用と右手用の彩色は同じである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
手袋の機能を十分に活用し作業効率を最適化するには、当然のことながら、左手用手袋は左手に、右手用手袋は右手にはめる必要がある。それらの手袋は、生産性の要請からか、意匠性の要請からか、左手用と右手用の彩色は同じである。装着する際には左手用か、右手用かを判別する作業が必要となるが、通常、親指の位置や向きにより左手用・右手用を判別する。しかし、保管している方向、重ね方などによって、ほかの指と誤認しやすかったり親指が見えていなかったり、左手用と右手用の手袋を取り違える可能性が高くなる場合がある。特に立体形状を保ちにくい手袋についてはその傾向が顕著となる。
【0004】
取り違えた場合、正しく装着しなおすことで手袋の機能上の問題は生じないが、時間の浪費は避けられない。また、時間の浪費を避けるために、左手用と右手用の手袋を正確に判別しようとすると、そのこと自体で時間が浪費される。装着回数が少ない場合、時間の浪費は無視できるほどであるが、延べ回数つまり人数掛ける回数を考慮すると、時間の浪費は無視できない。
【0005】
取り違えたまま装着し作業した場合、作業ミスが増え、作業効率の低下が起こる。また、左手用と右手用の手袋で彩色が同じであるので、装着している本人以外の人が取り違えを認知することは困難である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
左手用手袋と右手用手袋が異なった彩色とすることにより、右手用の手袋と左手用の手袋が容易に判別できるようにする。また、装着にかかる時間を低減するとともに、右手用の手袋と左手用を取り違えたままになることによる作業効率の低下を防止する。また、装着している本人以外の人が取り違えていることを認知しやすくする。
上記の作業効率の低下は、これまで見過ごされてきた。そのことに容易ならざる着眼ができて初めて本発明は着想することができる。また、手袋は左手用と右手用で同じような彩色を施すことが常識となっており、その固定概念が本発明が着想されることを困難にしてきた。
通常、左手用手袋と右手用手袋を判別する際に、親指の位置や手袋の形状をよりどころとして判別を行う。しかしながら、通常の親指とほかの指の違いはあまりない。そのうえ、右手の親指と左手の親指の違いはさらに少ない。そのため、心理学でいう重畳効果により、親指を判別することには困難が伴う。重畳効果とは、個性のないものの寄り集まりがかえって意識に残らなくなる現象のことである。
その重畳効果を回避するという心理学上の効果を利用し、左手用手袋と右手用手袋を判別する効率を向上させる具体的な方法を示したものが、本発明である。
請求項1に示す彩色が異なるとは、左手用手袋と右手用手袋で異なった色による着色が一部にでもあることを示す。つまり、本発明の手袋、左手用と右手用で全体的に異なった色で着色された手袋であってもよい。全体的には同じ色であるが、少なくとも片方が部分的に異なる着色が施されている手袋であってもよい。部分的に異なる着色とは、着色部分の形状、色、有無の少なくとも1つが異なっていることを示す。全体的には同じ色であるが、部分的に着色されている部分の形状が異なる手袋であってもよい。当然、全体的に異なった色で着色された手袋に、部分的に異なる着色が施されている手袋でもよい。
請求項1に示す形状が異なるとは、右手専用、左手専用に形状が設計されている手袋のことを指す。右手・左手共用のものは、形状がばらついていたとしても本発明は含まない。
生産コストの面から、全体的に異なる色で着色された手袋が好ましい。
【0007】
彩色の方法としては、素材に着色する方法、塗装する方法、何かを張り付ける方法がある。生産コストの面からは、素材に着色する方法が好ましい。
本発明は左手用と右手用の形状が異なる手袋において、効果が顕著である。形状が異ならない手袋の場合、通常の使用方法では左用と右用の区別はなく、取り違えは起こらないからである。
【0008】
また、本発明は、立体形状を保ちにくい手袋において効果が顕著である。なぜならば、手袋が自重、若しくは上にのった物の過重で平たく圧縮され、左手用手袋と右手用手袋を判別するために重要な役割を果たす親指の部分がより目立ちにくくなるためである。立体形状を保ちにくい手袋の例として、肉1.0mm以下のゴム状の手袋、繊維系の手袋があげられる。ゴム状の手袋としては、肉厚1.0mm以下のニトリルゴム手袋、天然ゴム手袋、軟質塩化ビニル樹脂性、EPDMゴム製の手袋があげられる。繊維系の手袋としては、アラミド繊維製手袋、ウレタン繊維製手袋などが例示される。ゴム状手袋の肉厚が0.5mm以下の場合、さらに立体形状を保つことが困難となり、本発明の効果が大きくなる。
ただし、肉厚が5ミクロン以下の場合には力学強度が不足し、本発明の手袋として好ましくない。また、装着した状態で水中に付けた時、速やかに水が浸透するような手袋、たとえば、毛糸や木綿の手袋は本発明の手袋として好ましくない。
【0009】
本発明は、目視により、左用と右用の手袋を彩色により容易に判別することを目的としているため、意匠性が必要な分野には不向きである。たとえば、日常生活用で用いる防寒用の手袋などは本発明には含まない。意匠性よりも作業効率が必要な用途である保護手袋、たとえば、水、洗剤、薬品、糞尿、汚物、食品から手を保護する用途や、塩分、バイ菌、体液、そのほか汚れを、手から混入させたくない用途においての使用が好ましい。具体的に例示すると、台所用の手袋、耐水性手袋、耐酸性手袋、耐アルカリ性手袋、耐溶剤性手袋が例示できる。
【発明の効果】
【0010】
請求項1の発明においては、左手用手袋と右手用手袋を効率よく判別することを可能にしている。
請求項2の発明においては、左手用手袋と右手用手袋の判別が困難である、立体形状を保ちにくい手袋においても、効率よく左手用手袋と右手用手袋を判別することを可能にしている。
請求項3の発明においては、意匠性よりも作業効率が重視される保護手袋において効率よく左手用手袋と右手用手袋を判別することを可能にしている。
請求項4の発明においては、請求項1の効果を、より安価に得ることを可能にしている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
彩色の方法としては、素材に着色する方法、塗装する方法、何かを張り付ける方法がある。生産コストの面からは、素材に着色する方法が好ましい。着色する色については、さまざまな色素・顔料・染料を使って多様な色を設定することは可能であるが、保護手袋に一般に使用されている、白、緑、ピンク、紫、赤、青、黄色、オレンジ色、無着色、の中から選択することが好ましい。
色の濃淡によっても異なった彩色とすることはできるが、視認性に劣り、好ましくない。ほとんど色が付いていない状態まで、色を薄くすれば視認性は良くなり本発明の効果は得られるが、それは、上記に例示した無着色、もしくは白に着色した場合と同様の効果が得られているにすぎない。
【0012】
以下の実施例に具体例をあげて本発明を実施する方法を例示するが、本発明がこれに限定されることはない。
【実施例】
(実施例1)
右手用手袋として、塩化ビニール系手袋である、さわやかビニール厚手、Mサイズ、ピンク(株式会社ダンロップホームプロダクツ製)の右手用を使用し、左手用手袋として塩化ビニール系手袋である、さわやかビニール厚手、Mサイズ、グリーン(株式会社ダンロップホームプロダクツ製)の左手用を使用した。
(比較例1)
右手用、左手用とも、塩化ビニール系手袋である、さわやかビニール厚手、Mサイズ、ピンク(株式会社ダンロップホームプロダクツ製)を使用した。
(比較例2)
右手用、左手用とも、塩化ビニール系手袋である、さわやかビニール厚手、Mサイズ、グリーン(株式会社ダンロップホームプロダクツ製)を使用した。
【0013】
(選択の容易さを評価する方法)
2つの手袋をまとめて丸め、1.5mの高さから外部から目視できない箱(50cm×50cm×50cm)の中に落とす。そののち、3秒間だけ覗きこみ、その後10秒以内に2つの手袋の相対位置(左右、もしくは、奥と手前、もしくは、上下)とどちらが右手用手袋かを返答する。これらのこと10回繰り返し、正解した回数を数える。手袋が複雑に絡まったまま、相対位置がはっきりとしない場合は無効としてその回数を数える。
正解した回数が多いほど、左手用手袋と右手用手袋を判別が容易であり、判別に要する時間の浪費も少ないと考えられる。
試行1,2,3,4は、上記の10回の判別を4回繰り返したことを示す。
表1に示すように、彩色が異なる手袋の場合には、正解した回数は同色の手袋よりも高くなっている。
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0014】
水や薬品に対する保護手袋などを利用する産業、及び、家庭における作業効率の向上が見込まれる。また、手袋の製造者においては、付加価値を高めた手袋を生産することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
左手用と右手用の形状が異なる手袋において、右手用の彩色と左手用の彩色が異なる手袋
【請求項2】
立体形状が保つことが困難である、請求項1に記載の手袋
【請求項3】
保護手袋として使用する、請求項1に記載の手袋
【請求項4】
彩色が単一の色である、請求項1の手袋

【公開番号】特開2009−185435(P2009−185435A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−56995(P2008−56995)
【出願日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【出願人】(508069741)
【Fターム(参考)】