説明

手関節サポーター

【課題】 着用者の手関節の安定性を向上して、スポーツ時の着用者の動作を補助することができる手関節サポーターを提供する。
【解決手段】 手関節サポーター10は、着用者の前腕に当該筒状編地を締着させる第1のアンカー部2と、着用者の手の第1指21を挿通させ、当該第1指21の基節骨21bに対応する部分を周回する第2のアンカー部3と、第1のアンカー部2及び第2のアンカー部3間に編成され、着用者の手掌側の第2のアンカー部3から、着用者の手背側を経由して、着用者の豆状骨26に対応する部分を通り、着用者の手掌側を経由して、着用者の手掌側の第1のアンカー部2まで延在する、螺旋状の編地からなる第1の支持部4と、筒状編地のうち第1のアンカー部2、第2のアンカー部3及び第1の支持部4を除く編地であり、当該編地の伸縮抵抗が第1の支持部4の伸縮抵抗よりも小さいベース生地部1と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、着用者の体表に密着して手関節を補助する手関節サポーターに関し、特に、着用者の手関節の安定性を向上して、スポーツ時の着用者の動作を補助し、疲労を軽減することができるテーピング機能を具備する手関節サポーターに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の手首拘束用サポーターは、略筒状に形成されて周方向及び長手方向のうち少なくとも周方向に伸縮可能であって前腕部の手首近傍から少なくとも第2指から第5指の付け根付近まで覆い得るサポーター本体と、サポーター本体に形成された第1指用開口部と、ポケットに挿入したサポーター本体の第5指側に長手方向に沿って延在する支持体と、を有し、該支持体は、少なくとも装着される前腕部の手首近傍から豆状骨部位を亘って掌の第5指側の側部にまで延在し得るように設けられている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−549号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の手首拘束用サポーターは、手首に打撲、捻挫、腱鞘炎を発症した場合の保存療法として、手首の動きを拘束するためのサポーターであり、第1指、手の甲及び掌側に支持体を備えない。特に、従来の手首拘束用サポーターは、支持体が、外力又は荷重が付加されたときに撓むものも含まれるが、その撓みによって固定感が失われない程度のものとされ、例えば、合成樹脂、金属、炭素繊維、グラスファイバー、木材等で形成されている。
【0005】
このため、従来の手首拘束用サポーターは、略筒状のサポーター本体を形成した後に、支持体をサポーター本体に、縫い付け、或いは鋲留め、貼着、粘着等により付設する工程が必要であり、製造工程が複雑であるという課題がある。
【0006】
この発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、サポーター本体と別体である支持体をサポーター本体に配設する製造工程が不要であると共に、着用者の手関節の安定性を向上して、スポーツ(特に、バスケットボール)時の着用者の動作を補助することができる手関節サポーターを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に係る手関節サポーターにおいては、筒状編地の一端を周回して編成され、着用者の前腕に当該筒状編地を締着させる第1のアンカー部と、筒状編地の他端の一側を突出させ、当該突出させた部分に着用者の手の第1指を挿通させる小筒体を形成し、当該小筒体により第1指の基節骨に対応する部分を周回する第2のアンカー部と、筒状編地における第1のアンカー部及び第2のアンカー部間に編成され、着用者の手掌側の第2のアンカー部から、着用者の手背側を経由して、着用者の豆状骨に対応する部分を通り、着用者の手掌側を経由して、着用者の手掌側の第1のアンカー部まで延在する、編地からなる第1の支持部と、筒状編地のうち第1のアンカー部、第2のアンカー部及び第1の支持部を除く編地であり、当該編地の伸縮抵抗が第1の支持部の伸縮抵抗よりも小さいベース生地部と、を備えるものである。
【発明の効果】
【0008】
この発明に係る手関節サポーターにおいては、手関節の撓屈及び尺屈並びに背屈及び掌屈の制動を行なうことで、着用者の手関節の安定性を向上して、スポーツ時の着用者の動作を補助し、疲労を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】(a)は第1の実施形態に係る左手用の手関節サポーターの概略構成を示す正面図であり、(b)は図1(a)に示す手関節サポーターの背面図であり、(c)は図1(a)に示す手関節サポーターの左側面図であり、(d)は図1(a)に示す手関節サポーターの右側面図であり、(e)は図1(a)に示す手関節サポーターの平面図であり、(f)は図1に示す手関節サポーターの底面図である。
【図2】(a)は図1に示す手関節サポーターの着用状態を示す左手の手掌側から見た正面図であり、(b)は図1に示す手関節サポーターの着用状態を示す左手の手背側から見た背面図であり、(c)は図1に示す手関節サポーターの着用状態を示す左手の第1指側から見た左側面図である。
【図3】(a)は手の関節及び骨を説明するための説明図であり、(b)は前腕の手掌側の浅在筋肉を説明するための説明図であり、(b)は前腕の手背側の浅在筋肉を説明するための説明図である。
【図4】(a)は被験者1のドリブル動作における手関節の背屈及び掌屈の実験結果を示すグラフであり、(b)は被験者2のドリブル動作における手関節の背屈及び掌屈の実験結果を示すグラフである。
【図5】(a)は被験者1のドリブル動作における手関節の撓屈及び尺屈の実験結果を示すグラフであり、(b)は被験者2のドリブル動作における手関節の撓屈及び尺屈の実験結果を示すグラフである。
【図6】(a)は被験者1のシュート動作における手関節の背屈及び掌屈の実験結果を示すグラフであり、(b)は被験者2のシュート動作における手関節の背屈及び掌屈の実験結果を示すグラフである。
【図7】(a)は被験者1のシュート動作における手関節の撓屈及び尺屈の実験結果を示すグラフであり、(b)は被験者2のシュート動作における手関節の撓屈及び尺屈の実験結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(本発明の第1の実施形態)
【0011】
図1及び図2において、手関節サポーター10は、靴下編機(例えば、株式会社村田製作所製の編み機種「ラムダアンフィニー(針数:144本、シリンダー径:3 1/2インチ、1インチ間の針の本数:36ゲージ)」)により丸編で編み立てられる筒状編地からなり、着用者の体表に密着して着用者の手関節を補助するサポーターである。
【0012】
なお、図1及び図2においては、左手用の手関節サポーター10を図示しているが、右手用の手関節サポーター10については、左手用の手関節サポーター10における各部位の位置を対称の位置に変更するだけであり、左手用の手関節サポーター10と同様であるので、図示を省略する。
【0013】
手関節サポーター10は、表糸、裏糸及びゴム糸を編糸とし、平編、リブ編、タック編、浮き編又はパイル編などで編成されてなる編地であるベース生地部1に対して、異なる編み立てを施すことで、テーピング機能などの所望の機能性を具備する。なお、本実施形態に係るベース生地部1は、筒状編地のうち後述する第1のアンカー部2、第2のアンカー部3及び第1の支持部4を除く編地であり、1×1鹿の子により編成してなる編地(以下、鹿の子編地と称す)である。
【0014】
なお、鹿の子編地とは、コース方向及びウェール方向に、平編とタック(あるコースで編み目を脱出させずに、その後のコースで複数ループを脱出させる組織)とが交互に、又は数コースごとに表れる編地である。このため、ベース生地部1には、平編とタックとを併用することで、編地の表面に隆起や透かし目を作ることができ、鹿の子のような網目柄が表れる。
【0015】
手関節サポーター10は、筒状編地の一端10aを周回して編成され、着用者の前腕に手関節サポーター10を締着させる第1のアンカー部2を備える。
【0016】
この第1のアンカー部2は、手関節サポーター10(筒状編地)の周方向Hにおける伸縮抵抗が、手関節サポーター10の周方向Hにおけるベース生地部1の伸縮抵抗より大きく編成されている。すなわち、素材に伸長を与えない状態から一定の伸長を与えた場合の張力をFとして、手関節サポーター10の周方向Hにおけるベース生地部1の張力をFH1とし、手関節サポーター10の周方向Hにおける第1のアンカー部2の張力をFH2とした場合に、第1のアンカー部2がベース生地部1と比較して、手関節サポーター10の周方向Hに強い締付力を持つような、FH2>FH1という大小関係を有する。
【0017】
具体的な編地として、第1のアンカー部2は、鹿の子編地を、手関節サポーター10の一端10aで手関節サポーター10の内側に折り返してベース生地部1との境界で他の糸(例えば、ウーリーナイロン糸)で縫製した二重の鹿の子編地(以下、二重鹿の子編地と称す)にすることにより、ベース生地部1に対して、手関節サポーター10の周方向Hにおける伸縮抵抗を大きくすることができる。
【0018】
このように、第1のアンカー部2は、着用者の前腕を周回して編成され、手関節サポーター10の周方向Hにおける伸縮抵抗が、手関節サポーター10の周方向Hにおけるベース生地の伸縮抵抗より大きいことにより、着用者の前腕に手関節サポーター10を固定し、手関節の背屈(伸展)及び掌屈(屈曲)時における手関節サポーター10の位置ずれを抑制することができる。また、第1のアンカー部2は、後述する第1の支持部4が連結され、この第1の支持部4のアンカーとしても機能する。
【0019】
また、手関節サポーター10は、筒状編地の他端10bの一側を突出させ、当該突出させた部分に着用者の手の第1指(母指、親指)21を挿通させる小筒体を形成し、当該小筒体により第1指21の基節骨21b(図3(a)参照)に対応する部分を周回する第2のアンカー部3を備える。
【0020】
なお、本実施形態に係る第2のアンカー部3は、平編により編成してなる編地(以下、平編地と称す)とし、平編地の縁をマイクロテープ3a(非常に細いナイロン糸とポリウレタンとによって織られている織りゴム)で挟み込み縫い付けている(バインダー)。
【0021】
また、本実施形態に係る第2のアンカー部3は、手関節サポーター10となる筒状編地に切れ目を入れて裁断縁を筒状編地の内側に折り返してミシンにより縫製されているが、筒状編地を裁断することなく編み立てにより編成してもよい。特に、第2のアンカー部3を構成する縫製部分は、伸縮性の高い縫糸を用い、ミシンの運針数を増やして、柔軟な蛇腹にし、着用者の第1指21に与える押圧力を緩和させることが好ましい。
【0022】
この第2のアンカー部3は、着用者の手の第1指21を挿通することにより、着用者の手関節に対して手関節サポーター10を位置決めすると共に、手関節サポーター10の周方向Hの回転移動や長さ方向Lの平行移動を抑制して位置ずれを防止することができる。また、第2のアンカー部3は、第1の支持部4が連結され、この第1の支持部4のアンカーとしても機能する。
【0023】
また、手関節サポーター10は、筒状編地における第1のアンカー部2及び第2のアンカー部3間に編成され、着用者の手掌(手の平)側の第2のアンカー部3から、着用者の手背(手の甲)側を経由して、着用者の豆状骨26に対応する部分を通り、着用者の手掌側を経由して、着用者の手掌側の第1のアンカー部2まで延在する、螺旋状の編地からなる第1の支持部4を備える。
【0024】
なお、本実施形態に係る第1の支持部4は、手関節サポーター10の長さ方向Lにおける伸縮抵抗が、手関節サポーター10の長さ方向Lにおけるベース生地部1の伸縮抵抗より大きく編成されている。すなわち、手関節サポーター10の長さ方向Lにおけるベース生地部1の張力をFL1とし、手関節サポーター10の長さ方向Lにおける第1の支持部4の張力をFL4とした場合に、第1の支持部4がベース生地部1と比較して、手関節サポーター10の長さ方向Lに強い締付力を持つような、FL4>FL1という大小関係を有する。
【0025】
また、本実施形態に係る第1の支持部4は、手関節サポーター10の長さ方向Lにおける伸縮抵抗が、手関節サポーター10の周方向Hにおける伸縮抵抗より大きく編成されている。すなわち、手関節サポーター10の周方向Hにおける第1の支持部4の張力をFH4とした場合に、手関節サポーター10の周方向Hと比較して、手関節サポーター10の長さ方向Lに強い締付力を持つような、FL4>FH4という大小関係を有する。
【0026】
具体的には、第1の支持部4を、4×2タック編と添え糸編とを併用した編地(以下、タック編・添え糸編地と称す)にすることにより、手関節サポーター10の周方向Hに対して、手関節サポーター10の長さ方向Lにおける伸縮抵抗を大きくすることができると共に、鹿の子編地のベース生地部1に対して、手関節サポーター10の長さ方向Lにおける伸縮抵抗を大きくすることができる。
【0027】
ここで、タック編地とは、生地を編成するときに、一時ある編み目を作らないで、次のコースを編むときに一緒に編み目を作る編地である。
【0028】
なお、タック編・添え糸編地では、タック編の地編糸の他に他の編糸(例えば、ウーリーナイロン糸)を添えて給糸することで、手関節サポーター10の長さ方向Lにおける第1の支持部4の伸縮を適度に抑えており、第1の支持部4とベース生地部1との境界において他の編糸をカットしている(カットボス)。
【0029】
このように、第1の支持部4は、手関節サポーター10の長さ方向Lにおける伸縮抵抗が、手関節サポーター10の長さ方向Lにおけるベース生地の伸縮抵抗より大きく、着用者の手の第1指21を外転させる方向に力が生じるように螺旋状に編成される。これにより、第1の支持部4は、着用者の無意識のうちに手の第1指21を外転させ、手掌に対して第1指21を開いた状態に維持することができる。また、第1の支持部4は、着用者の手関節の撓屈及び尺屈を制限し、手関節の安定性を確保することができると共に、手関節に位置する腱に掛かる負荷を軽減することができる。
【0030】
特に、バスケットボールの競技又は練習時に手関節サポーター10を着用することで、第1の支持部4は、シュート時における手関節の前後の動き(背屈、掌屈)及び左右の動き(撓屈、尺屈)の振れを抑制し、手関節を背屈及び内転させる尺側手根伸筋31(図3(c)参照)、手関節を掌屈及び外転させる撓側手根屈筋32(図3(b)参照)、並びに、手関節を掌屈及び内転させる尺側手根屈筋33(図3(c)参照)の作用を補助して、着用者への疲労の蓄積を軽減することができる。
【0031】
なお、手関節サポーター10は、着用者の手掌を完全に被覆してしまうと、着用者は手関節サポーター10の編地を介してボール(特に、バスケットボール)を扱うため、ボールコントロールに悪影響があり、競技又は練習中のプレーの妨げになると共に、編地がボールとの摩擦により破損する恐れがある。
【0032】
このため、本実施形態に係る手関節サポーター10は、着用者の手の第2指22、第3指23、第4指24及び第5指25を挿通させ、当該第1指21、第2指22、第3指23、第4指24及び第5指25の手根中手関節27(図3(a)参照)に対応する部分並びに着用者の第1中手骨21a及び第2中手骨22a間(図3(a)参照)に対応する部分を周回し、筒状編地の他端10bとなる縁端部5を備える。
【0033】
これにより、縁端部5を備える手関節サポーター10は、図2(a)に示すように、着用者の手掌の大部分を露出させることになり、着用者の手部におけるボールとの接触面積を確保し、競技又は練習中のプレーの妨げにならず、手関節サポーター10の破損を防止することができる。
【0034】
なお、本実施形態に係る縁端部5は、ベース生地部1(鹿の子編地)、第2のアンカー部3(平編地)及び第1の支持部4(タック編地)の縁をマイクロテープ(非常に細いナイロン糸とポリウレタンとによって織られている織りゴム)で挟み込み縫い付けている(バインダー)。
【0035】
また、本実施形態に係る手関節サポーター10は、第1のアンカー部2の正面(図1(a)参照)及び背面(図1(b)参照)側の略中央に、手関節サポーター10の長さ方向Lの伸縮抵抗が手関節サポーター10の周方向Hの伸縮抵抗よりも大きい第2の支持部2aを備える。また、第2の支持部2aは、手関節サポーター10の長さ方向Lの伸縮抵抗が、当該第2の支持部2aを除く第1のアンカー部2(以下、他の領域2bと称す)における手関節サポーター10の長さ方向Lの伸縮抵抗よりも大きく編成されている。
【0036】
すなわち、手関節サポーター10の長さ方向Lにおける第2の支持部2aの張力をFL2aとし、手関節サポーター10の周方向Hにおける第2の支持部2aの張力をFH2aとした場合に、手関節サポーター10の周方向Hと比較して、手関節サポーター10の長さ方向Lに強い締付力を持つような、FL2a>FH2bという大小関係を有する。
また、手関節サポーター10の長さ方向Lにおける他の領域2bの張力をFL2bとした場合に、第2の支持部2aが他の領域2bと比較して、手関節サポーター10の長さ方向Lに強い締付力を持つような、FL2a>FL2b(FL2)という大小関係を有する。
【0037】
具体的には、第2の支持部2aとして、第1のアンカー部2の二重鹿の子編地のうち表地側の鹿の子編地の一部をタック編・添え糸編地にすることにより、手関節サポーター10の周方向Hに対して、手関節サポーター10の長さ方向Lにおける伸縮抵抗を大きくすることができると共に、二重鹿の子編地の第1のアンカー部2(他の領域2b)に対して、手関節サポーター10の長さ方向Lにおける伸縮抵抗を大きくすることができる。
【0038】
このように、第2の支持部2aは、第1のアンカー部2の正面及び背面側の略中央に編成され、手関節サポーター10の長さ方向Lの伸縮抵抗が手関節サポーター10の周方向Hの伸縮抵抗よりも大きく、手関節サポーター10の長さ方向Lの伸縮抵抗が、第1のアンカー部2(他の領域2b)における手関節サポーター10の長さ方向Lの伸縮抵抗よりも大きい。これにより、第2の支持部2aは、着用者の手関節の背屈及び掌屈を制限し、手関節の安定性を確保することができると共に、手関節に位置する腱に掛かる負荷を軽減することができる。
【0039】
特に、バスケットボールの競技又は練習時に手関節サポーター10を着用することで、第2の支持部2aは、手関節の背屈を伴うボールキープから手関節の掌屈(手首の返し)を伴うシュートまでの手首の可動において、手関節の背屈及び掌屈の振れを抑制し、手関節を背屈及び外転させる長撓側手根伸筋34並びに短撓側手根伸筋35(図3(c)参照)、並びに、手関節を掌屈及び内転させる尺側手根屈筋33(図3(c)参照)の作用を補助して、着用者への疲労の蓄積を軽減することができる。
【0040】
なお、第2の支持部2aが手関節サポーター10の長さ方向Lにおける第1のアンカー部2を横断すると、第2の支持部2aによる締付力が強くなりすぎ、手関節の掌屈及び背屈を必要以上に制動する恐れがある。このため、本実施形態に係る第2の支持部2aは、手関節サポーター10の周方向Hに沿って延在する領域を複数並設させることにより、手関節の掌屈及び背屈の可動域の調整を図っている。
【0041】
なお、本実施形態においては、鹿の子編、タック編及び平編に用いられる地編糸として、糸の番手が30/−であり、綿とポリエステルからなる混紡糸(例えば、三山株式会社製「リッチハウス」)である2本掛けの表糸と、糸の番手が30/75であり、ポリウレタン弾性糸を軸に長繊維をカバーリングした加工糸(FTY:Filament Twisted Yarn)である裏糸と、ポリウレタンの芯糸にポリエステルの巻き糸を巻きつけたカバーリング・ヤーン(例えば、オペロンテックス株式会社製「ST6700」)であるゴム糸とを用いているが、この材質に限られるものではない。
【0042】
例えば、表糸としては、綿、毛(カシミヤ、ラム、アンゴラなど)、絹若しくは麻などの天然繊維、アクリルなどの化学繊維、又は吸汗、速乾若しくは体温調整機能を持つ素材などを、手関節サポーター10のコスト又は着用者のニーズに合わせて選択することが好ましい。また、裏糸としては、抗菌、防臭又は消臭素材を、手関節サポーター10のコスト又は着用者のニーズに合わせて選択することが好ましい。
【0043】
また、タック編・添え糸編地(第1の支持部4、第2の支持部2a)におけるウーリーナイロン糸(柄糸)は、糸の番手が100/2の編み本数2本からなる。
【0044】
つぎに、本実施形態に係る手関節サポーター10の作用効果を検証した検証試験について、図4〜図7を用いて説明する。
検証試験では、二人の被験者(健常男性、四肢に既往歴なし)の右手に、右手用の手関節サポーター10を着用させた場合(以下、着用時と称す)と着用させない場合(以下、非着用時と称す)とにおいて、バスケットボールのドリブル動作及びシュート動作を行なわせ、三次元動作解析により、手関節の背屈及び掌屈並びに撓屈及び尺屈による角度の軌跡を測定した。
【0045】
なお、三次元動作解析には、VICON社製の3次元動作分析システム「VICON MX」を用いた。
【0046】
図4において、横軸は、所定回数の突きの時間(ドリブル時間:100%)に対する各突きの時間の割合(百分率)[%]を示しており、縦軸は、ドリブル動作に伴う手関節の角度[°]を示しており、橈骨を基準軸(0°)として、正の領域が手関節の背屈になり、負の領域が手関節の掌屈になる。
【0047】
また、図4(a)においては、突き9回のドリブル動作を、着用時に2度測定(図4(a)に示す実線)し、非着用時に1度測定(図4(a)に示す破線)した結果を示している。また、図4(b)においては、突き9回のドリブル動作を、着用時に3度測定(図4(b)に示す実線)し、非着用時に2度測定(図4(b)に示す破線)した結果を示している。
【0048】
図4に示すように、着用時の場合は、非着用時の場合と比較して、振動波形の振幅が小さく、振動中心に対して対称な波形に近づいているため、手関節サポーター10を着用することで、手関節の背屈及び掌屈の振れを抑制し、ドリブル動作における手首の上下の無駄な動きを減少させ、手関節を効率よく作用させていることがわかる。
【0049】
図5において、横軸は、所定回数の突きの時間(ドリブル時間:100%)に対する各突きの時間の割合(百分率)[%]を示しており、縦軸は、ドリブル動作に伴う手関節の角度[°]を示しており、前腕の中央線を基準軸(0°)として、正の領域が手関節の撓屈になり、負の領域が手関節の尺屈になる。
【0050】
また、図5(a)においては、突き9回のドリブル動作を、着用時に2度測定(図5(a)に示す実線)し、非着用時に1度測定(図5(a)に示す破線)した結果を示している。また、図5(b)においては、突き18回のドリブル動作を、着用時に3度測定(図5(b)に示す実線)し、非着用時に2度測定(図5(b)に示す破線)した結果を示している。
【0051】
図5に示すように、着用時の場合は、非着用時の場合と比較して、振動中心に対して対称な波形に近づいており、特に、図5(b)に示す被験者2の着用時の場合は、被験者2の非着用時の場合と比較して、振動波形の振幅が顕著に小さくなっている。このため、手関節サポーター10を着用することで、手関節の撓屈及び尺屈の振れを抑制し、ドリブル動作における手首の左右の無駄な動きを減少させ、手関節を効率よく作用させていることがわかる。
【0052】
図6において、横軸は、1回のシュート時間(100%)に対する経過時間の割合(百分率)[%]を示しており、縦軸は、シュート動作に伴う手関節の角度[°]を示しており、橈骨を基準軸(0°)として、正の領域が手関節の背屈になり、負の領域が手関節の掌屈になる。
【0053】
また、図6(a)においては、シュート動作を、着用時に1度測定(図6(a)に示す実線)し、非着用時に2度測定(図6(a)に示す破線)した結果を示している。また、図6(b)においては、シュート動作を、着用時に2度測定(図6(b)に示す実線)し、非着用時に1度測定(図6(b)に示す破線)した結果を示している。
【0054】
図6に示すように、着用時の場合は、非着用時の場合と比較して、顕著な変化が見られないため、手関節サポーター10を着用することで、シュート動作における手関節の背屈及び掌屈を妨げることなく、非着用時と同様のシュート力を維持することができる。
【0055】
図7において、横軸は、1回のシュート時間(100%)に対する経過時間の割合(百分率)[%]を示しており、縦軸は、シュート動作に伴う手関節の角度[°]を示しており、前腕の中央線を基準軸(0°)として、正の領域が手関節の撓屈になり、負の領域が手関節の尺屈になる。
【0056】
また、図7(a)においては、シュート動作を、着用時に1度測定(図7(a)に示す実線)し、非着用時に2度測定(図7(a)に示す破線)した結果を示している。また、図7(b)においては、シュート動作を、着用時に2度測定(図7(b)に示す実線)し、非着用時に1度測定(図7(b)に示す破線)した結果を示している。
【0057】
図7に示すように、着用時の場合は、非着用時の場合と比較して、初期状態(0%)の角度に対する正の領域及び負の領域における角度の最大変位が小さくなっているため、手関節サポーター10を着用することで、手関節の撓屈及び尺屈の振れを抑制し、シュート動作における手首の左右の無駄な動きを減少させ、手関節を効率よく作用させていることがわかる。
【符号の説明】
【0058】
1 ベース生地部
2 第1のアンカー部
2a 第2の支持部
2b 他の領域
3 第2のアンカー部
3a マイクロテープ
4 第1の支持部
5 縁端部
10 手関節サポーター
10a 一端
10b 他端
21 第1指
21a 第1中手骨
21b 基節骨
22 第2指
22a 第2中手骨
23 第3指
24 第4指
25 第5指
26 豆状骨
27 手根中手関節
31 尺側手根伸筋
32 撓側手根屈筋
33 尺側手根屈筋
34 長撓側手根伸筋
35 短撓側手根伸筋

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状編地からなり、着用者の体表に密着して手関節を補助する手関節サポーターにおいて、
前記筒状編地の一端を周回して編成され、前記着用者の前腕に当該筒状編地を締着させる第1のアンカー部と、
前記筒状編地の他端の一側を突出させ、当該突出させた部分に前記着用者の手の第1指を挿通させる小筒体を形成し、当該小筒体により前記第1指の基節骨に対応する部分を周回する第2のアンカー部と、
前記筒状編地における前記第1のアンカー部及び第2のアンカー部間に編成され、前記着用者の手掌側の前記第2のアンカー部から、前記着用者の手背側を経由して、前記着用者の豆状骨に対応する部分を通り、前記着用者の手掌側を経由して、前記着用者の手掌側の前記第1のアンカー部まで延在する、編地からなる第1の支持部と、
前記筒状編地のうち前記第1のアンカー部、第2のアンカー部及び第1の支持部を除く編地であり、当該編地の伸縮抵抗が前記第1の支持部の伸縮抵抗よりも小さいベース生地部と、
を備えることを特徴とする手関節サポーター。
【請求項2】
前記請求項1に記載の手関節サポーターにおいて、
前記第1の支持部が、螺旋状の編地からなることを特徴とする手関節サポーター。
【請求項3】
前記請求項1又は2に記載の手関節サポーターにおいて、
前記第1の支持部は、前記筒状編地の長さ方向の伸縮抵抗が前記筒状編地の周方向の伸縮抵抗よりも大きいことを特徴とする手関節サポーター。
【請求項4】
前記請求項1乃至3のいずれかに記載の手関節サポーターにおいて、
前記着用者の手の第2指、第3指、第4指及び第5指を挿通させ、当該第1指、第2指、第3指、第4指及び第5指の手根中手関節に対応する部分並びに前記着用者の第1中手骨及び第2中手骨間に対応する部分を周回し、前記筒状編地の他端となる縁端部を備えることを特徴とする手関節サポーター。
【請求項5】
前記請求項1乃至4のいずれかに記載の手関節サポーターにおいて、
前記第1のアンカー部の正面及び背面側の略中央に、前記筒状編地の長さ方向の伸縮抵抗が前記筒状編地の周方向の伸縮抵抗よりも大きい第2の支持部を備え、
前記第2の支持部における前記筒状編地の長さ方向の伸縮抵抗が、当該第2の支持部を除く前記第1のアンカー部における前記筒状編地の長さ方向の伸縮抵抗よりも大きいことを特徴とする手関節サポーター。
【請求項6】
前記請求項5に記載の手関節サポーターにおいて、
前記第2の支持部が、前記筒状編地の周方向に沿って延在する領域を複数並設させてなることを特徴とする手関節サポーター。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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