説明

打ち抜き加工品の製造方法

【課題】本発明は、打ち抜いた金属箔への糊残りの発生が抑制された打ち抜き加工品の製造方法を提供する。
【解決手段】金属箔10の一面に合成樹脂シート21上にポリウレタン系樹脂100重量部と、燐酸エステル0.1〜3重量部とを含む易剥離接着剤層22が積層一体化されてなる転写用フィルム20をその易剥離接着剤層21によって剥離可能に貼着させ、且つ上記金属箔10の他面に接着フィルム30が貼着一体化されてなる積層体を用意した後、上記金属箔10をその他面側から所望形状に打ち抜き、しかる後、上記接着フィルム30上に基板を貼着一体化した上で、上記転写用フィルム20を打ち抜いた上記金属箔10から剥離、除去することを特徴とする打ち抜き加工品の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、打ち抜き加工品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、所望形状に打ち抜いた金属箔を基板の少なくとも一方の面に貼着一体化した打ち抜き加工品が様々な用途に用いられている。例えば、メッシュ状に打ち抜いた金属箔を合成樹脂からなる基板に貼着一体化してなる打ち抜き加工品が電磁波をシールドするためのディスプレイ用光学フィルタに用いられている。
【0003】
このような打ち抜き加工品を製造するには、まず、金属箔の一面に転写用フィルムを剥離可能に貼着し、金属箔の他面に接着フィルムを貼着一体化した後、上記金属箔をその他面側から所望形状に打ち抜き、その後、上記接着フィルム上に基板を貼着一体化した上で転写用フィルムを剥離除去することにより行われる。
【0004】
転写用フィルムは、打ち抜き加工時における金属箔の汚染防止や傷付き防止のために用いられる。打ち抜き加工品の製造に用いられる転写用フィルムとしては易剥離接着剤層が積層一体化された合成樹脂シートが用いられ、この易剥離接着剤層により転写用フィルムが金属箔の一面に剥離可能に貼着される。易剥離接着剤層には、ホットメルトワックスやアクリル系接着剤などが用いられている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−292958号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の打ち抜き加工品の製造方法では、打ち抜いた金属箔から転写用フィルムを剥離除去する際に、金属箔の他面に易剥離接着剤層の一部が残留する、いわゆる糊残りが発生する問題があった。糊残りが生じている打ち抜いた金属箔では外観や導電性が低下するなどの問題を招くため、残留している易剥離接着剤層を除去するための洗浄工程が必要となり、従来の方法では煩雑な作業が強いられていた。
【0007】
したがって、本発明は、打ち抜いた金属箔への糊残りの発生が抑制された打ち抜き加工品の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、金属箔の一面に合成樹脂シート上にポリウレタン系樹脂100重量部と、燐酸エステル0.1〜3重量部とを含む易剥離接着剤層が積層一体化されてなる転写用フィルムをその易剥離接着剤層によって剥離可能に貼着させ、且つ上記金属箔の他面に接着フィルムが貼着一体化されてなる積層体を用意した後、上記金属箔をその他面側から所望形状に打ち抜き、しかる後、上記接着フィルム上に基板を貼着一体化した上で、上記転写用フィルムを打ち抜いた上記金属箔から剥離、除去することを特徴とする打ち抜き加工品の製造方法により上記課題を解決する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の方法に用いられる転写用フィルムは、易剥離接着剤層が適度な接着力を有することから、製造工程においては金属箔を確実に接着保持することができると共に、製造工程終了後には金属箔から糊残りせずに容易に剥離することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】金属箔の一面に転写用フィルムが貼着され、上記金属箔の他面に接着フィルムが貼着一体化された積層体の縦断側面図。
【図2】金属箔10の他面側から所望形状に切り込みAを形成した積層体の縦断側面図。
【図3】接着フィルム及び金属箔を打ち抜き加工した後の積層体の縦断側面図。
【図4】打ち抜き加工した接着フィルムに基板を貼着一体化した積層体の縦断側面図。
【図5】本発明の方法により得られる打ち抜き加工品の縦断側面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
まず、本発明の方法を図1〜5を用いて説明する。図1〜5は、本発明の方法における各製造工程を示す概念図である。
【0012】
本発明の方法では、図1に示すように、金属箔10の一面に、合成樹脂シート21上に易剥離接着剤層22が積層一体化された転写用フィルム20を易剥離接着剤層22によって剥離可能に貼着し、且つ金属箔10の他面に、接着フィルム30を貼着一体化することにより、転写用フィルム20、金属箔10、及び接着フィルム30がこの順で積層されてなる積層体を得る。
【0013】
次に、図2に示すように、トムソン刃などの汎用の切断刃(図示せず)を用いて、積層体にその金属箔10の他面側から所望形状に切り込みAを形成する。この時、接着フィルム30、金属箔10及び易剥離接着剤層22はその厚み方向に完全に打ち抜かれているが、合成樹脂シート21はその厚み方向に完全に打ち抜かれないように切断刃の切り込み量を制御し、接着フィルム30、金属箔10及び易剥離接着剤層22に所望形状を有する切り込みAを形成する。その後、切断した金属箔10及び接着フィルム30の不要部分を除去することにより、図3に示すように、打ち抜いた金属箔10及び接着フィルム30を得る。
【0014】
そして、図4に示すように、打ち抜いた接着フィルム30上に基板40を貼着一体化した後、転写用フィルム20を打ち抜いた金属箔10から剥離、除去することにより、図5に示すような打ち抜き加工品を得ることができる。
【0015】
上述の要領で転写用フィルム20の易剥離接着剤層22に切断刃によって切り込みAを形成するにあたって、易剥離接着剤層22に切断刃を食い込ませる際、切断刃が易剥離接着剤層22の表面に当接し易剥離接着剤層22中に食い込み始めるまでの間、易剥離接着剤層22は切断刃によって金属箔10から離間する方向に押圧され、その結果、易剥離接着剤層22と金属箔10との間に剥離力が生じる虞れがあるが、本発明の方法に用いられる転写用フィルム20では適度な接着力及び硬さを有する易剥離接着剤層22を用いていることから、切断刃を転写用フィルム20の易剥離接着剤層22中に容易に食い込ませて切り込みAを形成することができ、上述の打ち抜き工程において、切り込みAの形成部分にて転写用フィルム20の易剥離接着剤層22が金属箔10から剥離するようなことはなく、転写用フィルム20の易剥離接着剤層22と金属箔10とは良好な接着状態を保つことができ、金属箔10及び易剥離接着剤層22との界面に打ち抜きカスなどのゴミが入るのを抑制できる。また、積層体に食い込ませた切断刃を積層体から引き抜く際にも易剥離接着剤層22からの接着剤の糸引きが発生せず、接着剤の糸引きによって積層体、特に打ち抜きにより露出する金属箔10の側面が汚染されることはない。さらに、打ち抜き工程終了後には転写用フィルム20を金属箔10から糊残りせず且つ金属箔10に損傷を与えることなく容易に剥離することができる。したがって、本発明の方法により得られる打ち抜き加工品は洗浄工程などを行うことなく、所望の用途へ直接使用することができる。
【0016】
転写用フィルムに用いられる合成樹脂シートとしては、ポリエステル系樹脂を含むシートが好ましく挙げられる。ポリエステル系樹脂シートであれば、金属箔の打ち抜き加工時に損傷を受け難く、打ち抜き加工性に優れる転写用フィルムを提供することができる。
【0017】
ポリエステル系樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、及びポリエチレンナフタレート(PEN)が挙げられ、なかでもポリエチレンテレフタレートが好ましく挙げられる。ポリエチレンテレフタレートを含むシートは、金属箔の打ち抜き加工時に損傷を特に受け難い。
【0018】
合成樹脂シートの厚さは、50〜250μmが好ましく、75〜150μmがより好ましい。合成樹脂シートの厚さが50μm未満であると打ち抜き加工時に損傷を受け易くなり、合成樹脂シートの厚さが250μmを超えると転写用フィルムの可撓性が低下して、打ち抜いた金属箔から転写用フィルムを剥離除去するのが困難となる恐れがある。
【0019】
合成樹脂シートの易剥離接着剤層が形成される面には、コロナ放電処理又は大気圧プラズマ処理を行うのが好ましく、これらの処理により易剥離接着剤層に対する合成樹脂シートの接着性を向上させることができる。
【0020】
次に、本発明の方法に用いられる転写用フィルムは、上述した合成樹脂シート上に積層一体化されてなる易剥離接着剤層を有する。易剥離接着剤層は、ポリウレタン系樹脂、及び燐酸エステルを含む。
【0021】
ポリウレタン系樹脂はポリオールとポリイソシアネートとを反応させることにより得られる。ポリウレタン系樹脂としては、例えば、ポリエステルポリオールと、ポリイソシアネートとを反応させてなるポリエステル系ポリウレタン系樹脂が用いられる。
【0022】
ポリエステルポリオールは、公知のエステル化反応、すなわち、多塩基酸と多価アルコールとの縮合反応や、多塩基酸のアルキルエステルと多価アルコールとのエステル交換反応により得ることができる。
【0023】
多塩基酸またはそのアルキルエステルとしては、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、ダイマー酸などの脂肪族ジカルボン酸;ヘキサヒドロフタル酸、テトラヒドロフタル酸などの脂環式ジカルボン酸;フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸など、またはこれらのジアルキルエステルや酸無水物(無水フタル酸など)、またはこれらの混合物などが挙げられる。
【0024】
多価アルコールとしては、例えば、アルカンジオール(例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、3,3’−ジメチロールヘプタン、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、12−ヒドロキシステアリルアルコール、水添ダイマージオールなどの炭素数2〜40アルカンまたは脂肪族低分子ジオールなど)、ポリオキシアルキレングリコール(例えば、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリオキシエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシテトラメチレングリコールなどのポリ(オキシアルキレン)グリコールまたはアルキレンオキシドの共重合体など)、ビスフェノールAまたは水添ビスフェノールAのアルキレンオキシド付加体、3官能以上のポリオール(例えば、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトールなど)、または、それらの混合物などが挙げられる。
【0025】
ポリイソシアネートとしては、例えば、1,3−または1,4−キシリレンジイソシアネートもしくはその混合物(XDI)、1,3−または1,4−テトラメチルキシリレンジイソシアネートもしくはその混合物(TMXDI)、ω,ω’−ジイソシアネート−1,4−ジエチルベンゼンなどの芳香脂肪族ポリイソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、1,2−、2,3−または1,3−ブチレンジイソシアネート、2,4,4−または2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートなどの脂肪族ポリイソシアネートが挙げられる。これらは、単独または2種以上併用してもよい。
【0026】
ポリイソシアネートのイソシアネート当量(アミン当量)は、100〜1500が好ましく、120〜1000であるのが好ましい。
【0027】
易剥離接着剤層に用いられる燐酸エステルとしては、モノステアリル燐酸エステル、ジオクチル燐酸エステル、トリラウリル燐酸エステル、及び下記一般式(1)で示される燐酸エステルなどが挙げられる。
【0028】
【化1】


(式中、Rは炭素数8〜14のアルキル基を示し、mは1又は2である。)
【0029】
易剥離接着剤層における燐酸エステルの含有量は、ポリウレタン系樹脂100重量部に対して、0.1〜3重量部に限定されるが、0.5〜1重量部が好ましい。燐酸エステルの含有量が0.1重量部未満であると易剥離接着剤層の接着力が高すぎて、転写用フィルムを金属箔から剥離する際に、金属箔に易剥離接着剤層が糊残りしたり金属箔に損傷を与える恐れがある。また、燐酸エステルの含有量が3重量部を超えると、易剥離接着剤層の接着力が低下する恐れがある。
【0030】
易剥離接着剤層の厚さは、1.5〜4μmが好ましく、2〜3μmがより好ましい。このような厚さを有する易剥離接着剤層は、製造工程においては金属箔を確実に接着保持することができると共に、打ち抜き工程終了後には金属箔から糊残りせずに容易に剥離することができる。
【0031】
合成樹脂シート上に積層一体化された易剥離接着剤層を形成するには、例えば、ポリウレタン系樹脂の原料となるポリオール及びポリイソシアネート、燐酸エステル、並びに有機溶剤を含む原料組成物を合成樹脂シート上に塗工した後に乾燥させることにより原料組成物層を得、その後、この原料組成物層を硬化させることにより行われる。
【0032】
有機溶剤としては、例えば、酢酸エチル、ジエチルエーテル、ベンゼン、及びトルエン等が挙げられる。原料組成物の塗工方法としては、グラビアシリンダー等を用いたロールコーティング法、ドクターナイフ法、エアーナイフ・ノズルコーティング法、バーコーティング法、スプレーコーティング法、ディップコーティング法などが用いられる。
【0033】
合成樹脂シート上に塗工した原料組成物に好ましくは60〜95℃、より好ましくは70〜90℃の温度の熱風を吹きつけることによって、上記原料組成物を乾燥させて有機溶剤を除去し、原料組成物層を得ることができる。熱風の吹きつけは、0.1〜0.5分間行えばよい。
【0034】
また、原料組成物層の硬化は、合成樹脂シート上に形成した原料組成物層を25〜60℃の温度環境下に24〜72時間放置することにより行われるのが好ましい。
【0035】
上述の通りにして原料組成物層中に存在するポリオールとポリイソシアネートとを反応させてポリウレタン系樹脂を形成することにより原料組成物層を硬化させ、金属箔に対して適度な接着力を有する易剥離接着剤層が得られる。
【0036】
次に、本発明の方法により打ち抜かれる金属箔を構成する金属としては、用途に応じて決定すればよく特に制限されず、例えば、銅、アルミニウム、ニッケル、及び鉄などが挙げられる。
【0037】
金属箔の厚さは、7〜100μmが好ましく、15〜35μmがより好ましい。また、本発明の方法では、異なる金属からなる複数の金属箔を積層して用い、この積層した金属箔を打ち抜くこともできる。この場合、積層した金属箔の合計の厚さが、上記範囲内となるようにするのが好ましい。
【0038】
次に、金属箔の一面に貼着一体化する接着フィルムは、打ち抜いた金属箔を他の基板に貼着一体化するために用いられる。このような接着フィルムを構成する材料としては、特に制限されないが、熱融着性樹脂が好ましく挙げられる。熱融着性樹脂として、具体的には、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂、及びポリアクリロニトリル系樹脂等が挙げられる。接着フィルムの厚さは、1〜50μmであればよい。
【0039】
そして、打ち抜いた金属箔を転写する基板を構成する材料としては、得られる打ち抜き加工品が用いられる用途に応じて決定すればよいが、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリイミド、及びポリアミドなどの合成樹脂、アルミニウム、鉄、及びステンレスなどの金属が挙げられる。基板の厚さは、打ち抜き加工品が用いられる用途に応じて決定すればよいが、0.5〜3.0mmが好ましい。
【0040】
図1に示すような転写用フィルム20、金属箔10、及び接着フィルム30がこの順で積層されてなる積層体を作製する場合、例えば、まず、合成樹脂シート21上に原料組成物層22'を形成し、この原料組成物層22'を金属箔10の一面に積層した後、上記金属箔10の他面に接着フィルム30を貼着一体化し、原料組成物層22'を硬化させることにより、金属箔10に貼着された易剥離接着剤層22を得る方法が好ましく用いられる。なお、原料組成物層22'の形成と硬化させる方法は、上述の通りである。
【0041】
原料組成物層22'を硬化させる前に、合成樹脂シート21上に形成された原料組成物層22'と、金属箔10との積層体を、好ましくは30〜150℃、より好ましくは80〜150℃に加熱した一対のラミネートロール間に挿入して積層体を押圧することにより、原料組成物層22'と金属箔10との密着性を向上させるのが好ましい。
【0042】
また、熱融着性樹脂を含む接着フィルムを用いる場合、接着フィルムと金属箔との貼着一体化は、接着フィルムを接着剤により金属箔の他面に貼着することにより行われるのが好ましい。このような接着剤としては、特に制限されず公知のドライラミネート用接着剤が用いられる。ドライラミネート用接着剤としては、例えば、ポリエステルポリオール、ポリウレタンポリオールなどのポリオールと、ポリイソシアネートとからなる2液硬化型ポリウレタン系接着剤が挙げられる。接着剤は、打ち抜いた金属箔の他面に塗布してもよく、接着フィルムの金属箔と対向する面全面に塗布してもよい。
【0043】
図5に示すように打ち抜いた金属箔10を基板40に転写するには、図4に示すように金属箔10と共に打ち抜いた接着フィルム30上に基板40を貼着一体化した後、金属箔10から転写用フィルム20を剥離除去すればよい。
【0044】
接着フィルム30と基板40とを貼着一体化するには、接着フィルム30の種類に応じて行えばよい。例えば、熱融着性樹脂からなる接着フィルム30を用いた場合には、打ち抜いた接着フィルム30上に基板40を積層した後、これらを80〜150℃に加熱すればよい。その後、打ち抜いた金属箔10から転写用フィルム20を剥離除去することにより、打ち抜き加工品を得ることができる。
【0045】
本発明の打ち抜き加工品が用いられる用途としては、特に制限されず、例えば、プラズマディスプレイパネル(PDP)などのディスプレイ用光学フィルタ、有機EL素子、プリント回路基板、多層回路基板、太陽電池基板、マルチチップモジュール、およびLSI等を構成する電極などが挙げられる。
【実施例】
【0046】
以下に、本発明を実施例を用いてより具体的に説明するが、本発明はこれに限定されない。
【0047】
(実施例1)
ポリオールとして、固形分が50重量%である2液硬化型ポリウレタン接着剤の主剤(タケラック(登録商標)A616 三井化学株式会社製)と、ポリイソシアネートとして、固形分100%のイソシアネート系硬化剤(タケネート(登録商標)A65 三井化学株式会社製)を、重量比(ポリオール:ポリイソシアネート)16:1として混合して十分に撹拌した後、得られた混合物に燐酸エステル(ゼレックUN デュポン株式会社製)をポリオール及びポリイソシアネートの総量100重量部に対して1重量部となるように添加し、原料組成物を得た。この原料組成物を、140線のグラビアシリンダーを用いたロールコーティング法により、ポリエチレンテレフタレートシート21(厚さ100μm)のコロナ処理面に乾燥後の固形分が2.0g/m2となるよう塗布し、80℃の熱風を0.2分間吹きつけることにより乾燥させ、原料組成物層22'(厚さ2μm)を形成した。
【0048】
次に、アルミニウム箔10(厚さ30μm)の一面に、ポリエチレンテレフタレートシート21に形成された原料組成物層22'を、ポリエチレンテレフタレートシート21と原料組成物層22'とが対向するように積層した後、これらを30℃に加熱している一対のラミネートロール間に挿入することにより、アルミニウム箔10と原料組成物層22'とを密着させた。次に、アルミニウム箔10の他面に、ポリオレフィン系熱融着性樹脂からなる接着フィルム30を、ポリオールとして固形分が50重量%である2液硬化型ポリウレタン接着剤の主剤(タケラック(登録商標)A616 三井化学株式会社製)と、ポリイソシアネートとして固形分100%のイソシアネート系硬化剤(タケネート(登録商標)A65 三井化学株式会社製)とからなるポリウレタン系接着剤により貼着一体化し、これにより得られた積層体を40℃の温度環境下で48時間放置して、ポリオールとポリイソシアネートとを反応させてポリウレタン系樹脂を形成させることにより原料組成物層22'を硬化させて、アルミニウム箔10と貼着された易剥離接着剤層22を形成した(図1)。
【0049】
そして、上記積層体のアルミニウム箔10の他面側(接着フィルム30積層面側)からトムソン刃を食い込ませた後(図2)、トムソン刃を解放してアルミニウム箔10及び接着フィルム30の不要部分を除去することにより、アルミニウム箔10及び接着フィルム30を所定の形状に打ち抜いた(図3)。その後、打ち抜いた接着フィルム30上にアルミニウムからなる基板40(厚さ2mm)を積層した後(図4)、これらを120℃で10分間加熱することによって接着フィルム30の熱融着により接着フィルム30と基板40とを貼着一体化し、転写用フィルム20を打ち抜いたアルミニウム箔10から剥離除去することにより、基板40上に所定の形状に打ち抜かれた接着フィルム30及びアルミニウム箔10がこの順で積層一体化された打ち抜き加工品を得た(図5)。
【0050】
(実施例2)
混合物に燐酸エステルを添加する量をポリオール及びポリイソシアネートの総量100重量部に対して0.5重量部となるように添加した以外は、実施例1と同様にして積層体を得た。
【0051】
(比較例1)
ポリエチレン系ホットメルトワックス(軟化点90℃、製品名スコッチウェルド3764、3M社製)をポリエチレンテレフタレートシート21(厚さ100μm)のコロナ処理面に固形分で8g/m2となるように塗布して易剥離接着剤層22(厚さ10μm)を形成し、アルミニウム箔10(厚さ30μm)の一面に、ポリエチレンテレフタレートシート21に形成された易剥離接着剤層22を貼着させた後、アルミニウム箔10の他面に、ポリオレフィン系熱融着性樹脂からなる接着フィルム30を、ポリオールとして固形分が50重量%である2液硬化型ポリウレタン接着剤の主剤(タケラック(登録商標)A616 三井化学株式会社製)と、ポリイソシアネートとして固形分100%のイソシアネート系硬化剤(タケネート(登録商標)A65 三井化学株式会社製)とからなるポリウレタン系接着剤により貼着一体化することにより積層体を得た。このようにして得られた積層体を用いて、実施例1と同様にして打ち抜き加工品を得た。
【0052】
(比較例2)
ポリプロピレン系ホットメルトワックス(軟化点150℃、製品名スコッチウェルド3797、3M社製)をポリエチレンテレフタレートシート21(厚さ100μm)のコロナ処理面に固形分で8g/m2となるように塗布して易剥離接着剤層22(厚さ10μm)を形成し、アルミニウム箔10(厚さ30μm)の一面に、ポリエチレンテレフタレートシート21に形成された易剥離接着剤層22を貼着させた後、アルミニウム箔10の他面に、ポリオレフィン系熱融着性樹脂からなる接着フィルム30を、ポリオールとして固形分が50重量%である2液硬化型ポリウレタン接着剤の主剤(タケラック(登録商標)A616 三井化学株式会社製)と、ポリイソシアネートとして固形分100%のイソシアネート系硬化剤(タケネート(登録商標)A65 三井化学株式会社製)とからなるポリウレタン系接着剤により貼着一体化することにより積層体を得た。このようにして得られた積層体を用いて、実施例1と同様にして打ち抜き加工品を得た。
【0053】
(評価)
易剥離接着剤層の剥離強度、転写用フィルムの打ち抜き加工性、転写用フィルムによる糊残りの有無、打ち抜いた金属箔に対する転写用フィルムの剥離性を下記手順に従って評価した。結果を表1に示す。
【0054】
(剥離強度)
転写用フィルム、アルミニウム箔及び接着フィルムを有する積層体を打ち抜く前に、易剥離接着剤層のアルミニウム箔に対する接着強度(N/15mm)をJIS K7127に準拠して測定した。
【0055】
(打ち抜き加工性)
アルミニウム箔にトムソン刃を食い込ませて切り込みAを形成する際に、転写用フィルムの易剥離接着剤層からアルミニウム箔が剥離するかを目視により確認した。表1において、易剥離接着剤層からアルミニウム箔が剥離しなかった場合を「○」とし、易剥離接着剤層からアルミニウム箔の少なくとも一部又は全部が剥離した場合を「×」とした。
【0056】
(糊残り)
打ち抜いたアルミニウム箔から転写用フィルムを剥離除去する際に、アルミニウム箔に易剥離接着剤層の一部が残留する糊残りの発生の有無を目視により確認した。表1において、アルミニウム箔に対して糊残りが発生しなかったものを「○」とし、アルミニウム箔に対して糊残りが発生したものを「×」とした。
【0057】
(剥離性)
打ち抜いたアルミニウム箔を基板上に貼着一体化した後、転写用フィルムを剥離除去する際に、打ち抜いたアルミニウム箔への損傷の発生の有無を目視により評価した。表1において、転写用フィルムを打ち抜いたアルミニウム箔から剥離除去する際に容易に剥離でき、打ち抜いたアルミニウム箔が基板から剥離したり、打ち抜いたアルミニウム箔にシワが入ったりしなかった場合を「○」とし、易剥離接着剤層の接着力が高すぎて転写用フィルムを打ち抜いたアルミニウム箔から剥離除去する際に打ち抜いたアルミニウム箔が基板から剥離したり、打ち抜いたアルミニウム箔にシワが入ったりした場合を「×」とした。
【0058】
【表1】

【符号の説明】
【0059】
10 金属箔
20 転写用フィルム
21 合成樹脂シート
22 易剥離接着剤層
30 接着フィルム
40 基板
A 切り込み

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属箔の一面に合成樹脂シート上にポリウレタン系樹脂100重量部と、燐酸エステル0.1〜3重量部とを含む易剥離接着剤層が積層一体化されてなる転写用フィルムをその易剥離接着剤層によって剥離可能に貼着させ、且つ上記金属箔の他面に接着フィルムが貼着一体化されてなる積層体を用意した後、上記金属箔をその他面側から所望形状に打ち抜き、しかる後、上記接着フィルム上に基板を貼着一体化した上で、上記転写用フィルムを打ち抜いた上記金属箔から剥離、除去することを特徴とする打ち抜き加工品の製造方法。
【請求項2】
合成樹脂シートが、ポリエステル系樹脂を含むことを特徴とする請求項1に記載の打ち抜き加工品の製造方法。
【請求項3】
ポリエステル系樹脂がポリエチレンテレフタレートであることを特徴とする請求項2に記載の打ち抜き加工品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−86468(P2013−86468A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−231895(P2011−231895)
【出願日】平成23年10月21日(2011.10.21)
【出願人】(596111276)積水フイルム株式会社 (133)
【出願人】(000000158)イビデン株式会社 (856)
【Fターム(参考)】