説明

抗曲げ性磁性プラスチックフィルム及びそれを用いた磁性カード

【課題】実用上の磁気吸着力を満たすことが出来、取り外す場合の剥離抵抗が適度なフィルム状磁石を提供する。
【解決手段】磁性材料粉末とバインダーとしての有機高分子(熱可塑性プラスチック)を主たる組成物とし、厚みが150〜300μmで、片持梁試験による数値が2〜12mmである抗曲げ性を有し、直径10mmの丸棒に沿わせて曲げたときに亀裂を生じない可撓性を有し、磁気吸着状態で剥離時に剥離力が広範囲に及ぶ抗曲げ性磁性プラスチックフィルムとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁性フィルム及びそれを用いた磁性カードなどに関するものである。
該磁性フィルムは、主として表面に不透明の書き込み、印字、印刷可能な表示可能層を設けて、表装ないし表示を施して各種カード、ステッカーなどとして用いる磁性プラスチックフィルムであって、冷蔵庫、スチール棚、ホワイトボードなど磁石の被着体となるものに磁気貼着することができる硬質磁性(永久磁石)プラスチックフィルムと、同じ用途に使用されるが、逆に磁石面に磁気吸着される軟質磁性(磁石の被着体となる)プラスチックフィルムとがある。
【0002】
発明の技術分野をより具体的に述べれば、夫々、ステッカー、表示物、絵画印刷物や、ポストカード(絵葉書)名刺、トレーディングカード等に使用することができる抗曲げ性の磁性プラスチックフィルム及び抗曲げ性の磁性プラスチックフィルムを用いた磁性カードに関する。
【背景技術】
【0003】
本発明は、従来の磁性材料粉末を少量のバインダーである有機高分子エラストマーに練り込んだボンド磁石(ゴム磁石)及び磁石の被着体である磁性フィルムに関するものである。
従来のゴム磁石は、バインダーである有機高分子エラストマーが非磁性体であるので、ボンド磁石中に占める比率は少ないほど磁気特性が優れたものに成る。しかし、一方ボンド磁石の物性が硬く脆いものに成り又、成形加工も困難に成るので特定の高充填性の優れた有機高分子エラストマーを用いる必要がある。
【0004】
又、磁性材料粉末は等方性(どちらの方向から磁界を印加しても同様な磁気特性を得られるもの)と異方性(特定の方向から磁界を印加すると優れた磁気特性が得られる)があり、等方性磁性材料粉末を用いる場合はバインダーに対する磁性材料粉の充填量(練込み量)に比例して磁気特性が増加するが、異方性磁性材料粉末の場合は磁粉の結晶磁化容易軸を揃えるなどの配向処理に好ましい充填量があり、等方性のように充填量のみで決まらないが、実用的には添加剤の添加などで略同様の充填率で用いられている。
【0005】
優れたフィルム状ボンド磁石(ゴム磁石)を得るには、磁気特性、物性(可撓性・硬度・伸び)の優れたシート状ボンド磁石が得られる高充填性の良いバインダー(有機高分子エラストマー)を用いることが必要である。(特許文献1)はストリップ状のボンド磁石についてではあるが、フィルム状ボンド磁石に応用できる技術であって、ここで特定するクロロスルホネーテッド・ポリエチレン、ポリイソブチレン、クロリネーテット・ポリエチレン(塩素化ポリエチレン)のいずれか1種又は2種以上を用いることでフエライト系磁性粉末を略70容積%まで高充填することを可能にしている。
【0006】
又、エチレン・ビニルエステル共重合体(実用的には特定の高酢酸ビニル、高分子量のエチレン・酢酸ビニルエステル共重合体)を用いて、フエライト系磁性粉末を略80容積%まで高充填することを可能にしている。そして可撓性、耐熱性の優れた磁石組成物が提案されている。(特許文献2)
【0007】
又、エチレン・アクリルアクリレート共重合体系エラストマーなどとポリアミド樹脂との特定量の混合物を用いて、フエライト系磁性粉末を72容積%まで高充填することを可能にしている。そして可撓性、耐熱性に優れた磁石組成物が提案されている。(特許文献3)
【0008】
又、エチレン・メチルアクリレート共重合体とエチレン・アクリルアクリレート共重合体と特定のエチレン・エチルアクリレート共重合体の特定量を用いて、磁性粉体を略70容積%まで高充填することを可能にしている。そして耐熱性に優れた可撓性磁石組成物が提案されている。(特許文献4)
【0009】
又、スチレン・ブタジエンランダム共重合体の水素添加物を用いて、磁性材料粉末など無機物粉末を略70容積%まで高充填することを可能にしている。そして無機物の高充填成形品が提案されている。(特許文献5)
【0010】
一般的に、磁石の磁力は磁石材料の磁気特性(最大エネルギー積・BHmaxで代表される)に左右されるが、片面又は両面に多極着磁を施したシート状磁石やフィルム状磁石の吸着力は、磁気特性の他にシート状磁石やフィルム状磁石の厚みに適した着磁極間とすることが重要であることが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特公昭47−48356
【特許文献2】特公昭53−16120
【特許文献3】特公平04−26522
【特許文献4】特開2004−356485
【特許文献5】特開2004−352904
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従来、フィルム状磁石のバインダーには前記したように磁石材料粉末を高充填できる特定のエラストマーや樹脂を使用していたが、これらは汎用樹脂の価格に比べ高価で、更に近時は塩素フリー、再生プラスチックの利用、低価格品の要望が強く、それに応えるため汎用樹脂(プラスチック)をバインダーとする技術開発が必要になってきた。汎用樹脂をバインダーとするには、磁石材料粉末の充填量を従来よりも大幅に低くする必要があり、磁力、磁気吸着力の低下を招くという課題を生じる。本発明はこのフィルム状磁石の磁気吸着力についての課題を解決するものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するため、種々研究を重ねた結果、磁力(磁気特性)、着磁方式が同じでも、剥離時の吸着力は剥離時の磁性フィルムの抗曲げ性により異なることに着目し本発明を成すに至った。
即ち、定型のフィルム状ゴム磁石の背面に金属板や硬質プラスチック板を裏打ちして曲がらないようにして吸着させた後、取り外す場合には、定型のフィルム状ゴム磁石の着磁面の全面の吸着力に抗して力を加えないと取り外せない。それに対して、従来の定型のフィルム状ゴム磁石単体又は、柔らかいフィルムで裏打ちしたものは、取り外す場合には、フィルム状ゴム磁石が曲がるので、微粘着剤処理をした軟質フィルムの90°剥離試験に於ける形態に似た剥離と成るので、剥離を生じていく部分だけの吸着力に抗して力を加えればよく、小さい力で取り外すことが出来る。つまり従来のフィルム状ゴム磁石は、カード等として貼着する用途としては少しの外力で剥離されやすく不利である。
【0014】
フィルム状磁石単体が曲がらないもの、又は背面に金属板や硬質プラスチック板を裏打ちして曲がらないものは、使用時に不都合な場合が多く、適度の抗曲げ性を有する磁性プラスチックフィルム、即ち、特定の抗曲げ性と特定の可撓性(抗折力)を有する磁性プラスチックフィルムにすることで、磁気吸着状態で取り外す場合に剥離力が広範囲に及ぶことになり、実用上の磁気吸着力を満たすことが出来る。つまり磁気吸着状態で、部分的浮き上がりなどを生じることなく、取り外す場合の剥離抵抗も適度のものとなる。
【0015】
図1(a)は、磁気吸着した従来のフィルム状ゴム磁石の剥離する状態を示し、図1(b)は、磁気吸着した曲がらないフィルム状ゴム磁石を取り外す状態を示し、図1(c)は、磁気吸着した本発明の磁性フィルムの剥離する状態を示す。
なお、図中、2は鉄板等の強磁性体でなる被着体、1は従来タイプのゴム磁石フィルム、11は不曲性(曲がらない)磁性フィルム、12は後述する本発明の抗曲げ性磁性プラスチックフィルム(永久磁石タイプ)を表している。
そして、F1、F2、F3は夫々の剥離する力を示し、a1、a2、a3は夫々取り外す場合の剥離抵抗に寄与する範囲を示すが、a1とa3は剥離に伴って順次移動し、a2は不動で1度に着磁面前面の吸着力に抗した取り外し力を要することになる。
【0016】
一方、同時に全面にかかる荷重としては、フィルム状ゴム磁石の自重や実用上の衝撃に対する必要吸着力(垂直吸着力)は、略自重の6倍以上あれば良い事が経験的に知られ、従来のフィルム状ゴム磁石の吸着力に比べ遥かに小さい吸着力でよい(表1参照)。
つまり剥離吸着力で、従来の使用実績のあるゴム磁石と略同等であれば良い。
【0017】
更に詳しく課題を解決するための手段を述べると、
(1)磁性材料粉末とバインダーとしての有機高分子(熱可塑性プラスチック)を主たる組成物とする磁性プラスチックフィルムであって、磁性プラスチックフィルムの厚みが150〜300μmで、下記の片持梁試験による数値が2〜12mmである抗曲げ性を有し、直径10mmの丸棒に沿わせて曲げたときに亀裂を生じない可撓性を有し、磁気吸着状態で剥離時に剥離力が広範囲に及ぶことを特徴とする抗曲げ性磁性プラスチックフィルムとする。
【0018】
(片持梁試験)23°C〜27°C°の室温おいて、磁性フィルムの生産時の流れ方向に沿って長手方向となるように採取した25mm×70mmの試験試料を、長手方向に30mm宙に浮かせるように片持梁状態に固定し、その先端部に7×25mmの面積で2gの荷重を取り付けた時の試験開始2秒後における先端の下降距離を測定する。
【0019】
(2)前記、組成物中の熱可塑性プラスチックが、ポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂及びこれらと共重合可能な樹脂との共重合体の中から選ばれた、1種又は2種以上であることを特徴とする前記(1)項記載の抗曲げ性磁性プラスチックフィルムとする。
【0020】
(3)前記、組成物中の熱可塑性プラスチックが、ポリオレフィン樹脂であるポリプロピレン、ポリエチレン、及びこれらと共重合可能なポリマーとの共重合体の中から選ばれた、1種又は2種以上であることを特徴とする前記(1)項〜(2)項記載の抗曲げ性磁性プラスチックフィルムとする。
【0021】
(4)前記、(1)項〜(3)項いずれかに記載の抗曲げ性磁性プラスチックフィルムの片面又は両面に、不透明の書き込み、印字、印刷可能な表示可能層を塗布によって形成したことを特徴とする前記(1)項〜(3)項記載の抗曲げ性磁性プラスチックフィルムとする。
【0022】
(5)前記、磁性材料粉末が硬質磁性材料粉末であるフエライト系磁石材料粉末(ストロンチュウムフエライト、バリュウムフエライトなど)、希土類系磁石材料粉末(サマリュウム・コバルト、サマリュウ・鉄・窒素、ネオジュウム・鉄・ホウ素など)、の中から選ばれた1種又は2種以上であり、片面又は両面に極間が0.8〜2mmの多極着磁を施したことを特徴とする(1)項〜(4)項記載のいずれかの抗曲げ性磁性プラスチックフィルムとする。
【0023】
(6)前記、磁性材料粉末が軟質磁性材料粉末であるセンダスト粉末、四三酸化鉄粉末、Mn−Znフエライト粉末、鉄粉末より選ばれた1種又はこれらの混合物であることを特徴とする(1)項〜(4)項記載の抗曲げ性磁性プラスチックフィルムとする。
【0024】
(7)前記、(4)〜(6)項記載の表示可能層の片面又は両面に、模様、文字などを印刷したことを特徴とする抗曲げ性磁性プラスチックフィルム製カードとする。
【発明の効果】
【0025】
(1)硬質磁性(永久磁石タイプ)・抗曲げ性磁性プラスチックフィルムについて。
1.本発明の抗曲げ性プラスチックフィルムは、特定の抗曲げ性であることによって、硬質磁性の磁気特性(残留磁束密度、保磁力、最大エネルギー積)が従来のゴム磁石フィルムに比べ、劣ったものであっても、磁気吸着状態での剥離抵抗(吸着力)が優れたものが得られる。
2.この事によって、磁性材料粉末の充填量を減量できるので、高充填性の劣る汎用樹脂及び汎用樹脂の再生樹脂も使用でき、更に薄層磁性フィルムの高速生産が可能となり、経済性効果が大きい。
3.特定の抗曲げ性であるので、片面に、表示可能層を塗布によって形成してもカール性が殆ど生じない利点がある。
4.更に両面を、表示可能層を塗布によって形成することによって、カール性を生じない他に、両面を表示、表装及び両面着磁を施すことによって、表裏二面を利用することで、表示、表装の変更が容易であるので、カード類の応用に好適であり経済的である。
【0026】
(2)軟質磁性(磁石の被着体となる)・抗曲げ性磁性プラスチックフィルムについて。
本発明の抗曲げ性プラスチックフィルムは、特定の抗曲げ性であることによって、軟質磁性の磁気特性である透磁率、飽和磁束密度(本発明では磁石との吸着力で評価)が従来の軟質磁性ゴムフィルムに比べ、劣ったものであっても、磁気吸着状態での剥離抵抗(剥離吸着力)の優れたものが得られる。
【0027】
又、着磁を要しないので、取り扱い時に磁気障害を懸念する機器に接しても磁気障害の心配が無いこと、磁石タイプのように両面使用の場合であっても磁気吸着力の低下を生じない利点がありカード用などに極めて好適である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】磁気吸着状態の磁性フィルムを剥離する時の変形と剥離抵抗に寄与する範囲を示す側面図であり、(a)従来タイプのゴム磁石フィルム、(b)不曲性(曲がらない)磁性フィルム、(c)本発明の抗曲げ性磁性プラスチックフィルムを示す。
【図2】抗曲性を試験する片持梁型試験装置を示す側面図を示す。
【図3】本発明の硬質磁性(永久磁石)の抗曲げ性磁性プラスチックフィルムの、両面に書き込み、印字、印刷可能な不透明層を設け、片面に多極着磁を施した、抗曲げ性磁性プラスチックフィルムを示す。
【図4】本発明の硬質磁性(永久磁石)の抗曲げ性磁性プラスチックフィルムの、両面に表示可能層を設け、両面に多極着磁を施した、抗曲げ性磁性プラスチックフィルムの側面図を示す。
【図5】本発明の軟質磁性(磁石の被着体となる)の抗曲げ性磁性プラスチックフィルムの両面に表示可能層を設けた、抗曲げ性磁性プラスチックフィルムの側面図を示す。
【図6】本発明の硬質磁性(永久磁石)の抗曲げ性磁性プラスチックフィルムの、両面に表示可能層を設け、片面に多極着磁を施した、抗曲げ性磁性プラスチックフィルムを用いた磁性カードを、被着体に磁気吸着した側面図を示す。
【図7】本発明の硬質磁性(永久磁石)の抗曲げ性磁性プラスチックフィルムの、両面に表示可能層を設け、両面に多極着磁を施した、抗曲げ性磁性プラスチックフィルムを用いた磁性カードを、被着体に磁気吸着した側面図を示す。
【図8】本発明の軟質磁性(磁石の被着体となる)の抗曲げ性磁性プラスチックフィルムの、両面に表示可能層を設けた、抗曲げ性磁性プラスチックフィルムを用いた、磁性カードを、被着体である多極着磁を施した磁石シートに磁気吸着した側面図を示す。
【図9】垂直吸着力測定装置に試験試料をセットした状態の側面図を示す。
【図10】剥離吸着力測定装置に試験試料をセットした状態の側面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施の形態を図3〜図8に基づいて説明する。
実施例は大別して、〔1〕抗曲げ性磁性プラスチックフィルム(永久磁石タイプ)と〔2〕磁石の被着体タイプの抗曲げ性磁性プラスチックフィルムに分けられる。
〔1〕抗曲げ性磁性プラスチックフィルム(永久磁石タイプ)について
(1)、図3は、本発明の実施の形態を示す断面図を表したものである。P1は、本発明の両面に表示可能層を設け、片面に多極着磁を施した抗曲げ性磁性プラスチックフィルム(永久磁石タイプ)である。
【0030】
なお、12は抗曲げ性磁性プラスチックフィルムであり、15は表面側の表示可能層(書き込み、印字、印刷可能な不透明層)であり、16は磁気吸着側の表示可能層であり、NSNS・・は、着磁を施した磁極を表す。
【0031】
抗曲げ性磁性プラスチックフィルム12は、永久磁石材料である硬質磁性材料粉末とバインダーである少量の特定のプラスチックから主体に構成される組成物を加熱混合後、厚み150〜300μmのフィルム状に成形後、表示可能層を設け磁界を印加して着磁したものであり、片持梁試験、可撓性試験において特定の値を有するものである。
【0032】
なお、組成物中の硬質磁性材料粉末の充填量は、多くの場合35〜50容積量%程度が適量である。
また、厚みは、150μmより薄いと磁気吸着力が不足となる場合があり、300μmより厚いと磁気吸着力が用途的に過大で又、取り扱いが嵩張るので好ましくない。
【0033】
そして、前記の片持梁試験において、先端部の下降距離は、2〜12mmであることが好ましく2mm未満であると平坦な被着体であっても平坦性が劣る場合に、その面に沿って密着出来なくなる場合を生じる可能性が大きく磁気吸着力の低下が大きくなり、12mmを超えると表示可能層を設けた場合に、場合によってはカールを生じる可能性が大きくなるので好ましくない。
また、可撓性が10mmの丸棒に沿わせて曲げた時に、亀裂を生じるものは、実用時に場合によっては、亀裂を生じるので好ましくない。
【0034】
さらに、この抗曲げ性磁性プラスチックフィルム12に用いる硬質磁性材料粉末(磁石材料粉末)として、フエライト系(ストロンチュウムフエライト、バリュウムフエライトなど)、希土類系(Sm―Co系、Nd―Fe−B系、Sm―Fe−N系など)などが挙げられる。
また、用いられる有機高分子であるバインダーとしては、ポリオレフィン樹脂(ポリプロピレン、ポリエチレン)ポリアミド樹脂(6ナイロン、12ナイロン)ポリエステル系樹脂(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート)、及び、これらと共重合可能な樹脂との共重合体などの熱可塑性プラスチックが挙げられる。
【0035】
各種硬質磁性材料中、フエライト系は金属酸化物であるので、酸化劣化を生じないので磁性フィルム成型加工条件の影響を受け難いこと、安価であることから抗曲げ性磁性プラスチックフィルム用途して好適である。又、各種バインダー中、ポリプロピレンが、加工性、物性、及び経済性の点で好ましい。
【0036】
ポリプロピレンをバインダーとする場合は、低密度ポリエチレンを硬さ調整の目的で適量併用出来る。また、極性を付与して接着性を改善すること、及び磁性材料との濡れ性、相溶性を改善する目的で、不飽和カルボン酸変性オレフィン又は共重合体、例えば無水マレイン酸変性ポリプロピレン、無水マレイン酸変性ポリエチレン、無水マレイン酸変性エチレン・ポリプロピレン共重合体などの添加が好ましく、ポリプロピレンとポリエチレンの併用に当たっては、無水マレイン酸変性エチレン・ポリプロピレン共重合体の添加が好ましい。それらの添加量は、バインダー全量に対して5〜10重量%程度が好ましい。
【0037】
表示可能層15,16としては、無機粉末等を含有した塗料を塗布した塗膜、合成紙、無機粉末等を含有したプラスチックフィルムが挙げられる。この中で、無機粉末等を含有した塗料を塗布の場合は、必要最少限の塗布が可能であり、磁石に対するエアーギャップの影響が少なくなることから磁性フィルムの厚みを薄く出来るので重量を軽減することに通じるので好ましい。又、塗膜は歪を殆ど生じないのでカール性の心配が殆ど無く好ましい。
【0038】
無機粉末等を含有した塗料としては、ポリエステル系SS16−611(東洋インキ(株)製)、ポリエステル系PALマット8,ポリエステル系RAM,ウレタンアクリル系ULA等(セイコーアドバンス(株)製)が挙げられ、塗料の磁性フィルムへの塗布は、ブレードコーター、バーコーター、コンマコーター、グラビヤコーター、ロールコーター、リバースロールコーター等公知の方法で行う事が出来る。
【0039】
又、表示可能層16で示す着磁面側の厚みは、15μm〜100μmが好ましく、更に好ましくは15μm〜60μmである。15μmよりも薄いと可撓性磁性フィルムの自然色に対する隠蔽力不足となり商品価値が低下し、100μmより厚くなると磁石のエアーギャップ大となり磁気吸着力の低下が大きく不利である。
【0040】
表示可能層の両面又は非磁気吸着面側の表面にインキジェット等のインキ受理層を塗布しても良い。又、インクジェット受理層を設ける場合は、インクジェット受理層の厚みを2μm〜20μmが望ましく、2μmより薄いとインクの受理能不足となり、20μmより厚いと必要以上の受理能となり不経済である。
【0041】
インキ受理層の形成に用いる処理剤としては、特に制限はなく市販のものが使用できるが、インクジェット受理層の形成に用いる処理剤としては、例えば、パテラコールIJ−150R(無機質充填剤含有ウレタン樹脂系ディスパーシヨン)DIC(株)製、RSI−100(無機質充填剤含有ハイブリット樹脂系ディスパーシヨン)DIC(株)製、MZ−477、MZ−480、(無機質充填剤含有アクリル樹脂系ディスパーシヨン)高松油脂(株)製が挙げられる。又、塗布装置としては公知のものが使用できるが、例えば、エアナイフコーター、ブレードコーター、バーコーター、コンマコーター、グラビヤコーター、ロールコーター、リバースロールコーター、カーテンコーター等が挙げられる。
【0042】
名刺、トレーディングカード、ポストカード(絵葉書)、クッキングカードなどの用途に用いる抗曲げ性磁性フィルム(永久磁石タイプ)の仕様としては、硬質磁性材料をフエライト系磁石材料粉末、バインダーをポリプロピレンとし、抗曲げ性磁性フィルムの厚みを150μm〜300μm、表示可能層の厚みは15μm〜60μmであり、多極着磁の極間が0.8〜2.5mm、垂直吸着力が3g/cm〜10g/cmであることが望ましい。
【0043】
硬質磁性材料をフエライト系磁石材料粉末、バインダーをポリプロピレンとするのは前記の通り加工性、物性と経済性の点から好ましく、抗曲げ性磁性フィルム(永久磁石タイプ)の厚みを150μm〜300μm、とするのは150μmより薄いと抗曲げ性と磁気吸着力が不足する場合を生じ、300μmより厚いと磁気吸着力過多となり不経済となるからである。又、表示可能層の厚みを15μm〜60μmとするのは、15μmより薄いと隠ぺい力不足となり60μmより厚いと磁石のエアーギャップ、自重、総厚みへの影響が大きくなり不経済となるからである。
【0044】
又、多極着磁の極間を0.8mm〜2.5mmとするのは、0.8mmより狭いと極間で着磁する装置の作製が困難となって不経済であり、2.5mmより広いと、厚みに対する適正極間の範囲を逸脱するので吸着力の発現が低下する。又、垂直磁気吸着力を、3g/cm〜10g/cmとするのは、3g/cmより弱いと用途的に吸着力不足に成る場合があり、10g/cmより強いと用途的に過大であり不経済となるからである。
【0045】
(2)、図4は、本発明の他の実施の形態を示す断面図を表したものである。P2は、本発明の両面に書き込み、印字、印刷可能な不透明層を設け、両面に多極着磁を施した抗曲げ性磁性プラスチックフィルム(永久磁石タイプ)である。
そのうち、抗曲げ性磁性プラスチックフィルム13は、両面に多極着磁を施した以外は、前記の抗曲げ性磁性プラスチックフィルム(永久磁石タイプ、片面多極着磁)12と同じである。
【0046】
尚、本発明は、図3、図4に示したような両面に表示可能層を設けたものの他に、図は省略しているが、片面(表面)に表示可能層を設け、裏面に多極着磁を施したものも可能であり、用途によって使い分けられる。
【実施例1】
【0047】
(1)抗曲げ性磁性プラスチックフィルムの作成
(配合)(配合No1)
・ポリプロピレン(プライムポリプロ、E−203GP)(株)プライムポリマー製
〔樹脂〕・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・100重量部
・無水マレイン酸変性ポリオレフィン(モディック、F534A)三井化学(株)製[気脂〕 〔相溶化剤〕・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・8重量部
・ステアリン酸カルシユウム)(SC−100)堺化学(株)製〔滑剤〕0.2重量部
・3,9‐ビス[2‐〔3‐(3‐ターシャリーブチル‐4‐ヒドロオキシ‐5‐メチルフエニルオキシ)プロピオニルオキシ〕‐1,‐1‐ジメチルエチル]‐2,4,8,10‐テトラオキサスピロ〔5・5〕ウンデカン(スミライザーGA‐80)住友化学(株)製〔酸化防住止剤〕・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・0.13重量部
・ペンタエリスリトールテトラキス(3‐ラウリルチオプロピオネイト)(スミライザーTP‐D)住友化学(株)製 〔酸化防止剤〕・・・・・・・・・・・0.37重量部
・等方性ストロンチュウムフエライト粉末(HM403)フィージャーマグネティックス社製〔硬質磁性材料〕・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・437重量部

磁性材料粉の充填量 80.1重量%(41.3容積%)

【0048】
(ペレットの作成)
上記配合に従ってブレンダーにて攪拌混合したものを、KCK80型混練押出機で240°C〜270°Cで混練して紐状に押出し、ハンマー型粉砕機で粉砕ペレットを作成する。
(抗曲げ性磁性プラスチックフィルムの作成)
前記ペレットを用いてφ65mm単軸押出機(L/D18)にフイッシュテール型ダイス(400mm幅)を付けて、240°C〜270°Cで300μm厚のフィルムを押出し、その直後にφ12インチ2本ロール圧延機(表面温度40°C〜60°C)にて230μm厚の抗曲げ性磁性プラスチックフィルムを作成する。
【0049】
(2)表示可能層の形成
前記フィルムの片面にコロナ放電処理を施した後、無機質白色粉末等を含有するポリエステル系樹脂塗料SS16−611(東洋インキ(株)製)をコンマコーターを用いて、ドライ30μm厚に成るように塗布し60°C〜90°C×12分乾燥炉を通して乾燥する。
(3)着磁
前記フィルムの他の片面に、公知の永久磁石型着磁ロール(極間2mmピッチ多極)に接触させて連続多極着磁を施す。此れによって磁石タイプの片面に表示可能層を設けて他の片面に多極着磁を施した抗曲げ性磁性フィルムを得る。
【実施例2】
【0050】
実施例1(配合No1)に於けるポリプロピレン(E−203GP)100重量部中30重量部を再生ポリプロピレンに置換して(配合No2とする)実施例1と同様にして抗曲げ性磁性フィルムを作成し、実施例1と同様にして表示可能層を形成後、他の片面に実施例1と同様にして着磁を施す。此れによって磁石タイプの抗曲げ性磁性フィルムを得る。
【実施例3】
【0051】
(1)抗曲げ性磁性プラスチックフィルムの作成
(配合)(配合No3)
・ポリプロピレン(プライムポリプロ、E−203GP)(株)プライムポリマー製
〔樹脂〕・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・75重量部
・ポリエチレン(ノバテックLD LF440HB)日本ポリエチレン(株)製
〔樹脂〕・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・25重量部
・無水マレイン酸変性ポリオレフィン(モディック、F534A)三井化学(株)製
〔樹脂〕〔相溶化剤〕・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・8重量部
・ステアリン酸カルシユウム)(SC−100)堺化学(株)製〔滑剤〕0.2重量部
・3,9‐ビス[2‐〔3‐(3‐ターシャリーブチル‐4‐ヒドロオキシ‐5‐メチルフエニルオキシ)プロピオニルオキシ〕‐1,‐1‐ジメチルエチル]‐2,4,8,10‐テトラオキサスピロ〔5・5〕ウンデカン(スミライザーGA‐80)住友化学(株)製〔酸化防住止剤〕・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・0.13重量部
・ペンタエリスリトールテトラキス(3‐ラウリルチオプロピオネイト)(スミライザーTP‐D)住友化学(株)製 〔酸化防止剤〕・・・・・・・・・・・0.37重量部
・等方性ストロンチュウムフエライト粉末(HM403)フィージャーマグネティックス社製〔硬質磁性材料〕・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・435重量部

磁性材料粉の充填量 80.0重量%(41.3容積%)

【0052】
(ペレットの作成)
上記配合に従ってブレンダーにて攪拌混合したものを、KCK80型混練押出機で240°C〜270°Cで混練して紐状に押出し、ハンマー型粉砕機で粉砕ペレットを作成する。
(抗曲げ性磁性プラスチックフィルムの作成)
前記ペレットを用いてφ65mm単軸押出機(L/D18)にフイッシュテール型ダイス(400mm幅)を付けて、240°C〜270°Cで300μm厚のフィルムを押出し、その直後にφ12インチ2本ロール圧延機(表面温度40°C〜60°C)にて230μm厚の抗曲げ性磁性プラスチックフィルムを作成する。
【0053】
(2)表示可能層の形成
前記フィルムの片面にコロナ放電処理を施した後、無機質白色粉末等を含有するポリエステル系樹脂塗料SS16−611(東洋インキ(株)製)をコンマコーターを用いて、ドライ30μm厚に成るように塗布し60°C〜90°C×12分乾燥炉を通して乾燥する。次いで更に、無機質粉末等を含有するウレタン系樹脂インキジェット受理層用塗料パテラコールIJ−150R(DIC(株)製)を、コンマコーターを用いてドライ20μm厚に成るように塗布し60°C〜90°C×12分乾燥炉を通して乾燥する。
(3)着磁
実施例1と同様にする。此れによって片面に表示可能層を設けて他の片面に多極着磁を施した抗曲げ性磁性プラスチックフィルムを得る。
【実施例4】
【0054】
実施例3の(配合No3)に於けるポリプロピレン(E−203GP)75重量部中30重量部を再生ポリプロピレンに置換した配合(配合No4とする)にて、実施例3と同様にして抗曲げ性磁性プラスチックフィルムを作成し、実施例3と同様にして表示可能層の形成をした後に、他の面を同様にして表示可能層を設ける。又、実施例1と同様にして着磁を施した後に、他の面を同様にして着磁を施す。此れによって、両面に表示可能層と多極着磁を施した磁石タイプの抗曲げ性磁性プラスチックフィルムを得る。
【実施例5】
【0055】
(1)抗曲げ性磁性プラスチックフィルムの作成
(配合)(配合No5)
・ポリプロピレン(プライムポリプロ、E−203GP)(株)プライムポリマー製
〔樹脂〕・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・30重量部
・ポリエチレン(ノバテックLD LF440HB)日本ポリエチレン(株)製
〔樹脂〕・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・70重量部
・無水マレイン酸変性ポリオレフィン(モディック、F534A)三井化学(株)製
〔樹脂〕〔相溶化剤〕・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・8重量部
・ステアリン酸カルシユウム)(SC−100)堺化学(株)製〔滑剤〕0.2重量部
・3,9‐ビス[2‐〔3‐(3‐ターシャリーブチル‐4‐ヒドロオキシ‐5‐メチルフエニルオキシ)プロピオニルオキシ〕‐1,‐1‐ジメチルエチル]‐2,4,8,10‐テトラオキサスピロ〔5・5〕ウンデカン(スミライザーGA‐80)住友化学(株)製〔酸化防住止剤〕・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・0.13重量部
・ペンタエリスリトールテトラキス(3‐ラウリルチオプロピオネイト)(スミライザーTP‐D)住友化学(株)製 〔酸化防止剤〕・・・・・・・・・・・0.37重量部
・等方性ストロンチュウムフエライト粉末(HM403)フィージャーマグネティックス社製〔硬質磁性材料〕・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・430重量部

磁性材料粉の充填量 79.8重量%(41.3容積%)

【0056】
(ペレットの作成)
上記配合に従ってブレンダーにて攪拌混合したものを、KCK80型混練押出機で240°C〜270°Cで混練して紐状に押出し、ハンマー型粉砕機で粉砕ペレットを作成する。
(抗曲げ性磁性プラスチックフィルムの作成)
前記ペレットを用いてφ65mm単軸押出機(L/D18)にフイッシュテール型ダイス(400mm幅)を付けて、240°C〜270°Cで300μm厚のフィルムを押出し、その直後にφ12インチ2本ロール圧延機(表面温度40°C〜60°C)にて230μm厚の抗曲げ性磁性プラスチックフィルムを作成する。
【0057】
(2)表示可能層の形成
前記フィルムの片面にコロナ放電処理を施した後、無機質白色粉末等を含有するポリエステル系樹脂塗料SS16−611(東洋インキ(株)製)をコンマコーターを用いて、ドライ30μm厚に成るように塗布し60°C〜90°C×12分乾燥炉を通して乾燥する。次いで更に、無機質粉末等を含有するウレタン系樹脂インキジェット受理層用塗料パテラコールIJ−150R(DIC(株)製)を、コンマコーターを用いてドライ20μm厚に成るように塗布し60°C〜90°C×12分乾燥炉を通して表示可能層の形成をした後に、他の面を同様にして表示可能層を設ける。又、実施例1と同様にして着磁を施した後に、他の面を同様にして着磁を施す。此れによって、両面に表示可能層と多極着磁を施した磁石タイプの抗曲げ性磁性プラスチックフィルムを得る。
【実施例6】
【0058】
(1)抗曲げ性磁性プラスチックフィルムの作成
(配合)(配合No6)
・ポリエチレンテレフタレート(IP‐120B)・・・・・・・・・・100重量部
(株)ベルポリエステルプロダックツ社製 〔樹脂〕
・ポリエチレングリコール(PEG♯200)日油(株)製 〔可塑剤〕・15重量部
・モンタン酸とブチレングリコールとのエステル化合物とモンタン酸カルシュウムの混合ワックス(リコワックスOP)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1重量部
クラリアントジャパン(株)製〔滑剤〕
・2,2’,6,6’‐テトライソプロピルジフエニルカルボイミド・・・・2重量部
(ビスカルボイミド)ライン・ケミー社製 〔加水分解防止剤〕
・3,9‐ビス[2‐〔3‐(3‐ターシャリーブチル‐4‐ヒドロオキシ‐5‐メチルフエニルオキシ)プロピオニルオキシ〕‐1,‐1‐ジメチルエチル]‐2,4,8,10‐テトラオキサスピロ〔5・5〕ウンデカン(スミライザーGA‐80)住友化学(株)製〔酸化防止剤〕 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・0.13重量部
・ペンタエリスリトールテトラキス(3‐ラウリルチオプロピオネイト)0.37重量部
(スミライザーTP-D)住友化学(株)製 〔酸化防止剤〕
・OP‐56(異方性・機械配向型ストロンチュウムフエライト)DOWAエフテック(株)製〔硬質磁性材料〕・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・331重量部

磁性材料粉の充填量 73.6重量%(41.3容積%)

【0059】
(ペレットの作成)
IP‐120Bペレットを140°C×4時間熱風乾燥機にて攪拌乾燥処理を行なう。
上記配合に従ってブレンダーにて攪拌混合したものを、KCK80型混練押出機で260°C〜290°Cで混練して紐状に押出し、ハンマー型粉砕機で粉砕ペレットを作成する。
(抗曲げ性磁性プラスチックフィルムの作成)
前記ペレットを用いてφ65mm単軸押出機(L/D18)にフイッシュテール型ダイス(400mm幅)を付けて、260°C〜290°Cで250μm厚のフィルムを押出し、その直後にφ12インチ2本ロール圧延機(表面温度60°C〜80°C)にて150μm厚の抗曲げ性磁性プラスチックフィルムを作成する。この2本ロール圧延機にて圧延時に、ストロンチュウムフエライトが機械配向型であるので磁化容易軸(結晶C軸)がフィルムの厚み方向に配向される。
【0060】
・表示可能層の形成及び着磁
実施例3と同様にして、表示可能層の形成をした後に、他の面を同様にして表示可能層を設ける。又、実施例1と同様にして着磁を施した後に、他の面を同様にして着磁を施す。此れによって、両面に表示可能層と多極着磁を施した磁石タイプの抗曲げ性磁性プラスチックフィルムを得る。
【実施例7】
【0061】
(1)抗曲げ性磁性プラスチックフィルムの作成
(配合)(配合No7)
・ポリプロピレン(プライムポリプロ、J106MG)(株)プライムポリマー製
〔樹脂〕・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・100重量部
・無水マレイン酸変性ポリオレフィン(モディック、F534A)三井化学(株)製
〔樹脂〕〔相溶化剤〕・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・8重量部
・ステアリン酸カルシユウム)(SC−100)堺化学(株)製〔滑剤〕0.2重量部
・3,9‐ビス[2‐〔3‐(3‐ターシャリーブチル‐4‐ヒドロオキシ‐5‐メチルフエニルオキシ)プロピオニルオキシ〕‐1,‐1‐ジメチルエチル]‐2,4,8,10‐テトラオキサスピロ〔5・5〕ウンデカン(スミライザーGA‐80)住友化学(株)製〔酸化防住止剤〕・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・0.13重量部
・ペンタエリスリトールテトラキス(3‐ラウリルチオプロピオネイト)(スミライザーTP‐D)住友化学(株)製 〔酸化防止剤〕・・・・・・・・・・・0.37重量部
・等方性ストロンチュウムフエライト粉末(HM403)フィージャーマグネティックス社製〔硬質磁性材料〕・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・437重量部

磁性材料粉の充填量 80.1重量%(41.3容積%)

【0062】
(ペレットの作成)
上記配合に従ってブレンダーにて攪拌混合したものを、KCK80型混練押出機で240°C〜270°Cで混練して紐状に押出し、ハンマー型粉砕機で粉砕ペレットを作成する。
(抗曲げ性磁性プラスチックフィルムの作成)
前記ペレットを用いてφ65mm単軸押出機(L/D18)にフイッシュテール型ダイス(400mm幅)を付けて、240°C〜270°Cで300μm厚のフィルムを押出し、その直後にφ12インチ2本ロール圧延機(表面温度40°C〜60°C)にて230μm厚の抗曲げ性磁性フィルムの原反を作成する。
【0063】
(2)表示可能層の形成
前記フィルムの片面をコロナ放電処理を施した後、無機質白色粉末等を含有するポリエステル系樹脂塗料SS16−611(東洋インキ(株)製)をコンマコーターを用いて、ドライ30μm厚に成るように塗布し60°C〜90°C×12分乾燥炉を通して乾燥し表示可能層を形成後、他の面を同様にして)表示可能層を設ける。
(3)着磁
実施例1と同様にして着磁を施した後、他の面を同様にして着磁を施す。此れによって永久磁石タイプの両面に表示可能層を設けて両面に多極着磁を施した抗曲げ性磁性プラスチックフィルムを得る。
【実施例8】
【0064】
(1)抗曲げ性磁性プラスチックフィルムの作成
(配合)(配合No8)
・グリコール変性ポリエチレンテレフタレート(PET‐G6763)イーストマンケミカル社製〔樹脂〕・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・100重量部
・ポリエチレングリコール(PEG♯200)日油(株)製〔可塑剤〕・・30重量部
・モンタン酸とブチレングリコールとのエステル化合物とモンタン酸カルシュウムの混合ワックス(リコワックスOP)クラリアントジャパン(株)製〔滑剤〕・・・1重量部
・2,2’,6,6’‐テトライソプロピルジフエニルカルボイミド(ビスカルボイミド)ライン・ケミー社製〔加水分解防止剤〕・・・・・・・・・・・・・・・2重量部
・3,9‐ビス[2‐〔3‐(3‐ターシャリーブチル‐4‐ヒドロオキシ‐5‐メチルフエニルオキシ)プロピオニルオキシ〕‐1,‐1‐ヂメチルエチル]‐2,4,8,10‐テトラオキサスピロ〔5・5〕ウンデカン(スミライザーGA‐80)住友化学(株)製〔酸化防止剤〕・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・13重量部
・ペンタエリスリトールテトラキス(3‐ラウリルチオプロピオネイト)(スミライザーTP‐D)住友化学(株)製〔酸化防止剤〕・・・・・・・・・・・・0.37重量部
・等方性ストロンチュウムフエライト粉末(HM403)フィージャーマグネティックス社製〔硬質磁性材料〕・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・331重量部

磁性材料粉の充填量 73.6重量%(41.3容積%)

【0065】
(ペレットの作成)
・PET‐G6763のペレットを、140°C×4時間熱風乾燥機にて乾燥処理を行なう。
・上記配合に従ってブレンダーにて攪拌混合したものを、KCK80型混練押出機で230°C〜260°Cで混練して紐状に押出し、ハンマー型粉砕機で粉砕ペレットを作成する。
(抗曲げ性磁性プラスチックフィルムを作成)
・前記ペレットを用いてφ65mm単軸押出機(L/D18)にフイッシュテール型ダイス(400mm幅)を付けて、230°C〜260°Cで350μm厚のフィルムを押出し、その直後にφ12インチ2本ロール圧延機(表面温度50°C〜70°C)にて300μm厚の抗曲げ性磁性プラスチックフィルムを作成する。
【0066】
(2)表示可能層の形成と着磁
実施例3と同様にして、片面に表示可能層の形成をした後に、他の片面に実施例1と同様にして着磁を施す。此れによって、片面に表示可能層を設け他の片面に多極着磁を施した磁石タイプの抗曲げ性磁性プラスチックフィルムを得る。
【実施例9】
【0067】
(1)抗曲げ性磁性プラスチックフィルムの作成
(配合)(配合No9)
・6−ナイロン樹脂(Nylon1011FB)宇部興産(株)製〔樹脂〕90重量部
・エチレンメタアクリレート共重合体(ベイマックG)デュポン社製・・・10重量部
〔エラストマー〕
・置換ジフエニルアミン(ナウガード445)ユニロイヤル社製〔酸化防止剤〕1重量部
・ステアリン酸カルシュウム(SC−100)堺化学(株)製〔滑剤〕・・・1重量部
・モンタン酸とブチレングリコールとのエステル化合物とモンタン酸カルシュウムの混合ワックス(リコワックスOP)クラリアントジャパン(株)製〔滑剤〕・・・1重量部
・等方性ストロンチュウムフエライト(HM403)フィージャーマグネティックス社製〔硬質磁性材料〕・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・330重量部

磁性材料粉の充填量 76.2重量%(41.0容積%)

【0068】
(ペレットの作成)
Nylon1011FBのペレットを100°C×4時間熱風乾燥機にて乾燥処理を行なう。
上記配合に従ってブレンダーにて攪拌混合したものを、KCK80型混練押出機で230°C〜260°Cで混練して紐状に押出し、ハンマー型粉砕機で粉砕ペレットを作成する。
(抗曲げ性磁性プラスチックフィルムの作成)
前記ペレットを用いてφ65mm単軸押出機(L/D18)にフイッシュテール型ダイス(400mm幅)を付けて、230°C〜260°Cで300μm厚のフィルムを押出し、その直後にφ12インチ2本ロール圧延機(表面温度40°C〜60°C)にて200μm厚の抗曲げ性磁性プラスチックフィルムを作成する。
【0069】
(2)表示可能層の形成
前記フィルムの片面に、無機質粉末等を含有するポリエステル系樹脂塗料PALマット8―120ホワイト(セイコーアドバンス(株)製)をコンマコーターを用いて、ドライ30μm厚に成るように塗布し60°C〜90°C×12分乾燥炉を通して乾燥する。次に、他の面を同様にして処理する。次いで更に、無機質粉末等を含有するウレタン系樹脂インキジェット受理層用塗料パテラコールIJ−150R(DIC(株)製)を、コンマコーターを用いてドライ20μm厚に成るように塗布し60°C〜90°C×12分乾燥炉を通して乾燥する。
(3)着磁
実施例7と同様に行なう。此れによって永久磁石タイプの両面に表示可能層を設けて両面に多極着磁を施した抗曲げ性磁性プラスチックフィルムを作成する。
(比較例1)
【0070】
(1)可撓性磁性フィルムの作成
(配合)(配合No19)(従来のゴム磁石の代表例)
・塩素化ポリエチレン(エラスレン301A)昭和電工(株)製〔エラストマー〕
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・100重量部
・エポキシ化大豆油(W100EL)DIC(株)製・・・・・・・・・・・5重量部
・ステアリン酸カルシュウム(SC−100)堺化学(株)製・・・・・・・1重量部
・ジラウリルチオプロピオネート(スミライザーTPL−R)住友化学(株)製
0.3重量部
・等方性ストロンチュウムフエライト粉末(HM403)フィージャーマグネティックス社製〔硬質磁性材料〕・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・711重量部

磁性材料粉の充填量 87.0重量%(59.1容積%)

【0071】
(ペレットの作成)
上記配合に従って加圧ニーダー(40L)にて120°C×15分混練後、冷却した後ハンマー型粉砕機で粉砕ペレットを作成する。
【0072】
(フィルムの作成)
上記ペレットをφ18インチ2本ロール圧延機(表面温度75°C)にてペレット圧延を行い230μm厚のフィルムを作成する。
【0073】
(2)表示可能層の形成と着磁
前記フィルムの片面に、実施例1と同様にしてドライ30μm厚の表示可能層を形成する。次に、実施例1と同様に着磁する。
(比較例2)
【0074】
比較例1と同様にしてフィルムを作成し、実施例1と同様にして表示可能層を形成後、他の片面を同様にして表示可能層を形成する。又、実施例1と同様にして着磁を施した後、他の片面を同様にして着磁を施す。
(比較例3)
【0075】
(1)可撓性磁性フィルムの作成
(配合)(配合No20)
・塩素化ポリエチレン(エラスレン301A)昭和電工(株)製〔エラストマー〕
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・100重量部
・エポキシ化大豆油(W100EL)DIC(株)製・・・・・・・・・・・5重量部
・ステアリン酸カルシュウム(SC−100)堺化学(株)製・・・・・・・1重量部
・ジラウリルチオプロピオネート(スミライザーTPL−R)住友化学(株)製
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・0.3重量部
・等方性ストロンチュウムフエライト粉末(HM403)フィージャーマグネティックス社製〔硬質磁性材料〕・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・346重量部

磁性材料粉の充填量 76.5重量%(41.3容積%)

【0076】
(ペレットの作成)
上記配合に従って加圧ニーダー(40L)にて120°C×15分混練後、冷却した後ハンマー型粉砕機で粉砕ペレットを作成する。
【0077】
(可撓性磁性フィルムの作成)
上記ペレットをφ18インチ2本ロール圧延機(表面温度70°C)にてペレット圧延を行い230μm厚の可撓性磁性フィルムを作成する。
【0078】
(2)表示可能層の形成
前記フィルムの片面に、実施例1と同様にして表示可能層を形成する。次に、実施例1と同様に着磁する。
(比較例4)
【0079】
比較例3と同様にしてフィルムを作成し、実施例1と同様にして表示可能層を形成後、他の片面を同様にして表示可能層を形成する。又、実施例1と同様にして着磁を施した後、他の片面を同様にして着磁を施す。
【0080】
次に、〔2〕磁石の被着体タイプの抗曲げ性磁性プラスチックフィルムについて、実施例10〜18にて説明する。
図5は、本発明の磁石の被着体タイプの実施の形態を示す断面図を表したものである。
PS1は、本発明の両面に表示可能層を設けた抗曲げ性磁性プラスチックフィルム(磁石の被着体タイプ)である。
14は、軟質磁性でなる抗曲げ性磁性プラスチックフィルム(磁石の被着体タイプ)を示し、15は、表面側の表示可能層(書き込み、印字、印刷可能な不透明層)であり、16も、磁気吸着側の表示可能層である。
【0081】
抗曲げ性磁性プラスチックフィルム(磁石の被着体タイプ)は、前記の抗曲げ性磁性プラスチックフィルム(永久磁石タイプ)の硬質磁性材料粉末を軟質磁性材料粉末に置換した組成物(配合)とした以外は抗曲げ性磁性プラスチックフィルム(永久磁石タイプ)と同様にして製造することが出来る。即ち、磁性材料粉末の充填量、抗曲げ性磁性プラスチックフィルムの厚み、塗布厚み、抗曲げ性、可撓性についての範囲は、抗曲げ性磁性プラスチックフィルム(永久磁石タイプ)と同様である。但し、実施例16〜18は磁性材料の性能が優れるので減量しているが、抗曲げ性、可撓性について特定の範囲内に入っている。
【実施例10】
【0082】
・実施例1の配合(配合No1)における硬質磁性材料であるストロンチュウムフエライト(HM403)を、軟質磁性材料である四三酸化鉄(BL−10、チタン工業(株)製)に置換した配合(配合No1S)とする。
・磁性材料粉の充填量 80.2重量%(41.3容積%)
・配合の他は実施例1と同様にする。但し着磁は不要である。
【実施例11】
【0083】
・実施例2の配合(配合No2)における硬質磁性材料であるストロンチュウムフエライト(HM403)を、軟質磁性材料である四三酸化鉄(BL−10、チタン工業(株)製)に置換した配合(配合No2S)とする。
磁性材料粉の充填量 80.2重量%(41.3容積%)
配合の他は実施例2と同様にする。但し着磁は不要である。
【実施例12】
【0084】
・実施例3の配合(配合No3)におけるにおける硬質磁性材料であるストロンチュウムフエライト(HM403)を、軟質磁性材料である四三酸化鉄(BL−10、チタン工業(株)製)に置換した配合(配合No3S)とする。
・磁性材料粉の充填量 80.2重量%(41.3容積%)
・配合の他は実施例3と同様にする。但し着磁は不要である。
【実施例13】
【0085】
・実施例4の配合(配合No4)におけるにおける硬質磁性材料であるストロンチュウムフエライト(HM403)を、軟質磁性材料である四三酸化鉄(BL−10、チタン工業(株)製)に置換した配合(配合No4S)とする。
・磁性材料粉の充填量 80.2重量%(41.3容積%)
・配合の他は実施例4と同様にする。但し着磁は不要である。
【実施例14】
【0086】
・実施例5の配合(配合No5)におけるにおける硬質磁性材料であるストロンチュウムフエライト(HM403)を、軟質磁性材料である四三酸化鉄(BL−10、チタン工業(株)製)に置換した配合(配合No5S)とする。
・磁性材料粉の充填量 79.8重量%(41.3容積%)
・配合の他は実施例4と同様にする。但し着磁は不要である。
【実施例15】
【0087】
・実施例6の配合(配合No6におけるにおける硬質磁性材料である異方性ストロンチュウムフエライト(OP−56)を、軟質磁性材料であるMn−Znフエライト(BSF547、戸田工業(株)製)に置換した配合(配合No6S)とする。
・磁性材料粉の充填量 73.6重量%(41.3容積%)
・配合の他は実施例5と同様にする。但し着磁は不要である。
【実施例16】
【0088】
・実施例7の配合(配合No7)におけるにおける硬質磁性材料であるストロンチュウムフエライト(HM403)を、軟質磁性材料であるセンダスト粉末(SFR,日本アトマイズ工業(株)製)に置換した(配合No7S)とする。
・磁性材料粉の充填量 79.3重量%(37.0容積%)
・配合の他は実施例7と同様にする。但し着磁は不要である。
【実施例17】
【0089】
・実施例8の配合(配合No8)におけるにおける硬質磁性材料であるストロンチュウムフエライト(HM403)を、軟質磁性材料であるセンダスト粉末(SFR,日本アトマイズ工業(株)製)に置換した(配合No8S)とする。
・磁性材料粉の充填量 73.4重量%(37.0容積%)
・配合の他は実施例6と同様にする。但し着磁は不要である。
【実施例18】
【0090】
・実施例9の配合(配合No9)における硬質磁性材料であるストロンチュウムフエライト(HM403)を、軟質磁性材料である鉄粉(RDL−300A、パウダーテック(株)製)に置換した配合(配合No9S)とする。
・磁性材料粉の充填量 80.5重量%(37.0容積%)
・配合の他は実施例9と同様にする。但し着磁は不要である。
(比較例5)
【0091】
・比較例1の配合(配合No19)におけるにおける硬質磁性材料であるストロンチュウムフエライト(HM403)を、軟質磁性材料である四三酸化鉄(BL−10、チタン工業(株)製)に置換した配合(配合No19S)とする。
・磁性材料粉の充填量 87.0重量%(59.1容積%)
・配合の他は比較例1と同様にする。但し着磁は不要である。
(比較例6)
【0092】
・比較例3の配合(配合No20)におけるにおける硬質磁性材料であるストロンチュウムフエライト(HM403)を、軟質磁性材料である四三酸化鉄(BL−10、チタン工業(株)製)に置換した配合(配合No20S)とする。
・磁性材料粉の充填量 76.5重量%(41.3容積%)
・配合の他は比較例3と同様にする。但し着磁は不要である。
【0093】
次に抗曲げ性磁性プラスチックフィルムを用いた磁性カードについて述べる。
図6のP1aは、本発明の両面に表示可能層を設け片面に多極着磁を施した抗曲げ性磁性プラスチックフィルム(永久磁石タイプ)を用いた磁性カードであり、被着体である強磁性体板(例えば塗装鉄板)B1に磁気吸着させた状態を示す断面模式図である。
【0094】
図7のP2aは、本発明の両面に表示可能層を設け両面に多極着磁を施した抗曲げ性磁性プラスチックフィルムの(永久磁石タイプ)を用いた磁性カードであり、被着体である強磁性体板(例えば塗装鉄板)B1に磁気吸着させた状態を示す断面模式図である。
【0095】
図8のPS1aは、本発明の両面に表示可能層を設けた抗曲げ性磁性プラスチックフィルム(磁石の被着体タイプ)を用いた磁性カードであり、被着体である多極着磁を施した磁石板(例えば多極着磁を施したシート状磁石を張合せた板)B2に磁気吸着させた状態を示す断面模式図である。
【0096】
図6、図7、図8の表面の模様、表示などの記載は省略している。又、本発明には図示していないが、抗曲げ性磁性プラスチックフィルムの片面に表示可能層を設け、他の片面に多極着磁を施したものも可能であり、用途によって使い分ければ良い。
【0097】
磁性カードの製作は、前記「課題を解決するための手段」の(4)〜(6)項いずれか1項に記載の抗曲げ性磁性プラスチックフィルムに適宜印刷加工を施した後、所定のカードサイズに裁断することで得られ、永久磁石タイプは抗曲げ性磁性プラスチックフィルム製造後に着磁処理をしても良く、又、印刷処理後に行なうことも出来る。
【0098】
次に、性能評価試験方法等について説明する。
1)抗曲げ性磁性フィルムの成形加工性
フィルムの成形時の機械への負荷、成形フィルムの表面性、厚み分布、耳つれ、中弛みなどを観察する。
◎:特に良好、○:良好、△:やや劣る、×:悪い、に評価する
【0099】
2)可撓性磁性フィルムの可撓性
21〜25°Cの室温で3時間以上放置したものを、フィルムの縦方向と横方向から夫々20mm×100mmの短冊形の試験試料を採集して、直径10mmの丸棒に沿わせて曲げた時の状態を観察する。
○:亀裂を生じない、△:表面に微細なクラックを生じる、×:折れる、に評価する。
【0100】
3)抗曲げ性(片持梁試験)
23°C〜27°C°の室温おいて、図2に示す片持梁試験装置Z1を使用し、磁性フィルムの生産時の流れ方向に沿って長手方向となるように採取した25mm×70mmの試験試料5を、上面が基準板3に接触した状態で、かつ、長手方向に30mm宙に浮かせるように、試験試料固定具4にて片持梁状態に固定し、この試験試料5の先端部に7×25mmの面積で2gの荷重7を両面テープでなる粘着テープ23を用いて取り付ける。
そして、試験開始までは基準板に指で支えて基準位置から試験を開始し、試験開始2秒後の先端の下降距離Hを測定する。
なお、図2中の、6は試験装置架台、51は下降した試験試料7の状態を示す。
【0101】
4)抗曲げ性磁性フィルムの吸着力
4)−1.垂直吸着力(鉄板との吸着力)
図9に示す垂直吸着力測定装置Z2を使用し、23〜27°Cの室温で3時間以上放置した、1辺が約50mmの正方形の試料片17の非測定面を、平滑なプラスチック板でなる被着体19の表面に、両面テープでなる粘着テープ23を用いて貼着した状態で、多極着磁された測定面に、背面中央に引掛けを設けた1辺が40mmの正方形の平滑な鉄板(2mm厚)でなる吸着部材18を磁気吸着させた時の垂直方向に引き離すに要する力を、吸着部材18背面に設けた引掛け部に糸24を介してバネ秤22を取り付けて測定し、g/cmを算出する。
【0102】
4)−2.剥離吸着力(端部から剥離するに要する力)(鉄板との吸着力)
図10に示す剥離吸着力測定装置Z2を使用し、23〜27°Cの室温で3時間以上放置した、50mm×70mmの長方形の試料片17を、平滑な鋼板でなる被着体20(2mm厚)に磁気吸着させて、50mm長の1辺のみに端部の中央に糸が端部から出るように糸24(φ0.5〜0.6mm)を5mm×10mm(10mmの辺を試料の端部に沿わす)の寸法に切り取ったセロテープ(登録商標)21を用いて固定し、バネ秤22で引き上げて剥離に要する力を測定してg/cmを算出する。
【0103】
4)−3.磁石面との垂直吸着力(磁石の被着体タイプの垂直吸着力)
前述した4)−1.垂直吸着力の測定に用いた、図9に示す垂直吸着力測定装置Z2を使用して測定する。
但し、その場合とは、試料片17と、被着体19の形態が異なったものとなる。
即ち、0.4mm厚で2.5mmピッチの多極着磁を施したシート状磁石の着磁面に、0.12mm厚のプラスチィックフィルムをラミネートしたもので、鉄板との磁気吸着力が15g/cmのものを、1辺を約50mmの正方形として平滑なプラスチック板に両面テープにて貼合せたものを標準とした被着体19とする。
此れに対して23〜27°Cの室温で3時間以上放置した、1辺が40mmの正方形の試料片17を、背面中央に引掛け部を設けた平滑なプラスチック板製の吸着部材18の内面に図示しない両面テープにて貼合せる。
なお、この試験においては、23で示される粘着テープは使用しない。
そして、吸着部材18の背面の引掛け部に糸24を介してバネ秤22を取り付けて測定し、g/cmを算出する。
【0104】
4)−4、磁石面との剥離吸着力(磁石の被着体タイプの剥離吸着力)
前述した4)−2.剥離吸着力の測定に用いた、図10に示す剥離吸着力測定装置Z3を使用して測定する。
但し、その場合とは、試料片17と、被着体20の形態が異なったものとなる。
即ち、0.4mm厚で2.5mmピッチの多極着磁を施したシート状磁石の着磁面に、0.12mm厚のプラスチィックフィルムをラミネートしたもので、鉄板との磁気吸着力が15g/cmのものを、70mm×90mmの長方形として平滑なプラスチック板に両面テープにて貼合せたものを標準とした被着体20とする。
此れに対して23〜27°Cの室温で3時間以上放置した50mm×70mmの長方形の試料片17を磁気吸着させて、50mm長の1辺のみに端部の中央に糸が端部から出るように糸24(φ0.5〜0.6mm)を5mm×10mm(10mmの辺を試料の端部に沿わす)の寸法に切り取ったセロテープ(登録商標)21を用いて固定し、バネ秤22で引き上げて剥離に要する力を測定してg/cmを算出する。
【0105】
5)最大エネルギー積(BHmax)
21〜25°Cの室温で3時間以上放置した試料について、JIS C2501永久磁石試験方法に準拠してBHトレーサーを用いて測定する。
【0106】
次に試験結果について説明する。
各実施例及び比較例について各試験を行いその結果を表に纏めた。
そのうち、(表1)は、抗曲げ性磁性プラスチックフィルム(永久磁石タイプ)の各実施例及び各比較例の物性と試験結果とを一覧表にしたものである。
また、(表2)は、抗曲げ性磁性プラスチックフィルム(磁石の被着タイプ)の各実施例及び各比較例の物性と試験結果とを一覧表にしたものである。
なお、(表1)並びに(表2)に使用している略記は、次のとおりである。

*1)(等)フ:等方性ストロンチュウムフエライト粉末
*2)(異)フ:異方性ストロンチュウムフエライト粉末
*3)PP:ポリプロピレン100重量部中30重量部の再生品を使用
*4)PP:ポリプロピレン75重量部中30重量部の再生品を使用
*5)PP:ポリプロピレン・高剛性グレード
*6)BHmax:最大エネルギー積(MGOe)
PP:ポリプロピレン、
PP/PE:ポリプロピレンにポリエチレン併用
PE/PP:ポリエチレンにポリプロピレン併用
PET:ポリエチレンテレフタレート
PET‐G:グリコール変性ポリエチレンテレフタレート
6N:6ナイロン
CPE:塩素化ポリエチレン・エラストマー
(塗布厚の表示例)30:片面にドライ30μm塗布
(塗布厚の表示例)30/30:両面にドライ30μm塗布を示す
(塗布厚の表示例)30+20:片面にドライ30μm塗布後、インキジェット用
表示可能層をドライ20μm塗布を示す(他も同様にして示す)
(垂直吸着力の表示例)4/4:両面が其々4g/cm
(剥離吸着力の表示例)0.9/0.9:両面が其々0.9g/cmを示す(他も同様にして示す)

【表1】

【表2】

【0107】
表示可能層を設け着磁を施した抗曲げ性磁性プラスチックフィルム(永久磁石タイプ)について、(表1)で説明すると、比較例1と2の配合No19は従来の等方性フエライト系ゴム磁石の代表的配合であり、比較例1と2の差異は塗布面と着磁面に於いて片面処理と両面処理にあり、塗布面の差異による他の性能への影響はないが、吸着力に於いては、既に知られているように両面着磁品は片面着磁品の65%程度になる。比較例3と4の配合No20は等方性フエライト磁石材料粉末の充填量を59.1容積%から41.3容積%に低下したもので、当然フィルムの腰が柔らかく抗曲げ性が大きく低下して剥離吸着力が著しく低下している。又、当然に磁気特性(BHmaxも低下している。)
【0108】
上記に比べ、各実施例は抗曲げ性値が2mm〜12mmの範囲内であるので、フエライト磁石材料粉末などの磁性材料の充填量が低く磁気特性も低いにも係わらず、従来のゴム磁石(比較例1)の剥離吸着力と略同等の値を示している。そして片面着磁と両面着磁の差による吸着力の差は既に知られているように両面着磁は低い値となっている。又、塗布厚と両面塗布の影響として実施例3と4の比較に於いて、塗布厚50μm両面で抗曲げ性が向上していることが分かる。
【0109】
次に、表示可能層を設け着磁を施した抗曲げ性磁性プラスチックフィルム(磁石の被着体タイプ)について、(表2)で説明すると、各実施例、各比較例は抗曲げ性磁性プラスチックフィルム(磁石タイプ)の配合中の硬質磁性材料粉末を軟質磁性材料粉末に置き換えたものである。但し実施例16〜18(配合No7S〜9S)は軟質磁性材料の性能が優れるので、充填量を37容積%としている。
【0110】
従って、抗曲げ性の発現及び剥離吸着力への効果などは抗曲げ性磁性プラスチックフィルム(永久磁石タイプ)と同様である
特に優れる性能としては、着磁を必要としないので磁石タイプのように片面使いと両面使いによる得られる吸着力の差を生じない事が大きい利点である。
【0111】
以上の試験結果の他に、各実施例及び比較例について、名刺サイズ(55×90mm)と郵便はがきサイズ(100×148mm)のものを作成して、磁石タイプについては前記試験方法4−1.に用いた鉄板と同じもの、磁石の被着体タイプについては4−2.に用いた磁石ボードと同じものに、其々磁気吸着させて指触にて剥離抵抗、ずらし抵抗を調べた。
【0112】
永久磁石タイプの各実施例のものは、比較例1に比べて同様であり、比較例2に比べて優れた吸着力が感じられ実用的に問題ないと考えられる。又、磁石の被着体タイプの各実施例のものは、比較例3に比べて同様であり、比較例4に比べて優れた吸着力が感じられ実用的に問題ないと考えられる。
此のことでも分かるように、本発明の抗曲げ性磁性プラスチックフィルムは、従来の磁性材料の高充填組成物によるものに比べて磁性材料の低充填組成物であるが、特定の抗曲げ性によって剥離抵抗が従来のものと同等である。つまり、本発明によって汎用樹脂を用いて塩素フリー、再生樹脂の利用による経済性にも優れた磁性フィルムを提供することが出来る。
【産業上の利用可能性】
【0113】
ステッカー、掲示物、絵画印刷物、トレーディングカード、ポストカード(絵葉書)、案内書などに広く利用して、スチールロッカー、スチールデスク、冷蔵庫、又は、マグネット掲示板に容易に貼着又は剥離することができる。
【符号の説明】
【0114】
F1、F2、F3 剥離する力
a1、a2、a3 剥離抵抗に寄与する範囲
H 試験試料の下降距離
P1 本発明の両面に表示可能層を設けて片面に多極着磁を施した抗曲げ性磁性プラスチックフィルム
P2 本発明の両面に表示可能層を設けて両面に多極着磁を施した抗曲げ性磁性プラスチックフィルム
PS1 本発明の両面に表示可能層を設けた抗曲げ性磁性プラスチックフィルム(磁石の被着体タイプ)
P1a 本発明の両面に表示可能層を設けて片面に多極着磁を施した抗曲げ性磁性プラスチックフィルムを使用した磁性カード
P2a 本発明の両面に表示可能層を設けて両面に多極着磁を施した抗曲げ性磁性プラスチックフィルムを使用した磁性カード
PS1a 本発明の両面に表示可能層を設けた抗曲げ性磁性プラスチックフィルム(磁石の被着体タイプ)を使用した磁性カード
Z1 片持梁試験装置
Z2 垂直吸着力測定装置
Z3 剥離吸着力測定装置
B1 抗曲げ性磁性プラスチックフィルム(永久磁石タイプ)に対する被着体
B2 抗曲げ性磁性プラスチックフィルム(磁石の被着体タイプ)に対する被着体
N 磁石のN極
S 磁石のS極
1 従来タイプのゴム磁石フィルム、
2 被着体(強磁性体・鉄板など)
3 基準板
4 試験試料固定具
5 試験試料
6 試験装置架台
7 荷重
11 不曲性(曲がらない)磁性フィルム
12 抗曲げ性磁性プラスチックフィルム(永久磁石タイプ 片面着磁)
13 抗曲げ性磁性プラスチックフィルム(永久磁石タイプ 両面着磁)
14 抗曲げ性磁性プラスチックフィルム(磁石の被着体タイプ)
15 表面側の表示可能層
16 磁気吸着面側の表示可能層
17 試験試料
18 吸着部品
19 被着体
20 被着体
21 セロテープ(登録商標)
22 バネ秤
23 粘着テープ
24 糸
51 下降した試験試料


【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁性材料粉末とバインダーとしての熱可塑性プラスチックを主たる組成物とする磁性プラスチックフィルムであって、磁性プラスチックフィルムの厚みが150〜300μmで、下記の片持梁試験による数値が2〜12mmmである抗曲げ性を有し、直径10mmの丸棒に沿わせて曲げたときに亀裂を生じない可撓性を有し、磁気吸着状態で剥離時に剥離力が広範囲に及ぶことを特徴とする抗曲げ性磁性プラスチックフィルム。

(片持梁試験)
23°C〜27°C°の室温おいて、磁性フィルムの生産時の流れ方向に沿って長手方向となるように採取した25mm×70mmの試験試料を、長手方向に30mm宙に浮かせるように片持梁状態に固定し、その先端部に7×25mmの面積で2gの荷重を取り付けた時の試験開始2秒後における先端の下降距離を測定する。
【請求項2】
前記、組成物中の熱可塑性プラスチックが、ポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂及びこれらと共重合可能な樹脂との共重合体の中から選ばれた、1種又は2種以上であることを特徴とする請求項1記載の抗曲げ性磁性プラスチックフィルム。
【請求項3】
前記、組成物中の熱可塑性プラスチックが、ポリオレフィン樹脂であるポリプロピレン、ポリエチレン、及びこれらと共重合可能なプラスチックとの共重合体の中から選ばれた、1種又は2種以上であることを特徴とする請求項1〜2記載の抗曲げ性磁性プラスチックフィルム。
【請求項4】
前記、請求項1〜3いずれかに記載の抗曲げ性磁性プラスチックフィルムの片面又は両面に、不透明の書き込み、印字、印刷可能な表示可能層を塗布によって形成したことを特徴とする請求項1〜3記載の抗曲げ性磁性プラスチックフィルム。
【請求項5】
前記、磁性材料粉末が硬質磁性材料粉末であるフエライト系磁石材料粉末(ストロンチュウムフエライト、バリュウムフエライト)、希土類系磁石材料粉末(サマリュウム・コバルト、サマリュウ・鉄・窒素、ネオジュウム・鉄・ホウ素)、の中から選ばれた1種又は2種以上であり、片面又は両面に極間が0.8〜2mmの多極着磁を施したことを特徴とする請求項1〜4記載のいずれかの抗曲げ性磁性プラスチックフィルム。
【請求項6】
前記、磁性材料粉末が軟質磁性材料粉末であるセンダスト粉末、四三酸化鉄粉末、Mn−Znフエライト粉末、鉄粉末より選ばれた1種又はこれらの混合物であることを特徴とする請求項1〜4記載の抗曲げ性磁性プラスチックフィルム。
【請求項7】
前記、請求項4〜6記載の表示可能層の片面又は両面に、模様、文字などを印刷したことを特徴とする抗曲げ性磁性プラスチックフィルム製カード。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−138537(P2012−138537A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−291493(P2010−291493)
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【出願人】(000110893)ニチレイマグネット株式会社 (24)