説明

抗TNFα抗体および使用方法

【課題】TNFα活性を阻害する抗TNFα抗体を中和することは、TNFα媒介性疾患の処置および/若しくは診断において有用であり、効果的な抗TNFα抗体を提供する。
【解決手段】インフリキシマブの改変抗体は、TNFαに結合しかつインフリキシマブより少ないマウス由来アミノ酸残基を有するTNFα抗体となる。更に、TNFα抗体をコードする核酸、これらの核酸を含有するベクター、宿主細胞、組成物、ならびにTNFα抗体の作成および使用方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗TNFα抗体および治療薬としてのそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
治療的タンパク質の有効性は、該治療的タンパク質に対する望ましくない免疫反応により制限され得る。モノクローナル抗体について、ヒト抗マウス抗体(HAMA)応答を低下させるための試みにおいて多数の技術が開発された。一般に、これらのアプローチは、ヒトの遺伝情報を増大させる一方で最終抗体構築物中のマウスの遺伝情報を減少させることを目的とする。こうしたアプローチの例は、キメラ、ヒト化および完全にヒトのモノクローナル抗体(mAb)である。
【0003】
キメラ抗体は、マウス免疫グロブリン(Ig)可変領域およびヒトIg定常領域のような異なる動物種に由来する領域を含有する。インフリキシマブ(商標名REMICADE(R)の下で販売される)は、ヒト腫瘍壊死因子−α(TNFα)を特異的に結合するキメラIgG1κモノクローナル抗体である。インフリキシマブはヒト定常領域およびマウス可変領域を有する。インフリキシマブのH鎖可変領域(V)は119アミノ酸を有し;L鎖可変領域(V)は107アミノ酸を有する。特許文献1、特許文献2、特許文献3および特許文献4(それらの全部は引用することにより本明細書に組み込まれる)を参照されたい。
【0004】
TNFαは多様な細胞により産生され得るが、しかし、活性化されたマクロファージがこの因子の最も豊富な供給源を構成する(非特許文献1)。TNFαは17kDのタンパク質サブユニットの可溶性ホモ三量体である(非特許文献2)。TNFαの膜結合型の26kDの前駆体もまた存在する(非特許文献3)。
【0005】
TNFαは、好中球およびリンパ球の接着を増大させる血管内皮細胞上の凝血原活性を誘導すること、ならびにマクロファージ、好中球および血管内皮細胞からの血小板活性化因子の遊離を刺激することのような、組織傷害をもたらす炎症前作用を引き起こす(非特許文献4;非特許文献5:非特許文献6)。
【0006】
TNFα、および緊密に関連するサイトカインTNFβ(リンホトキシンとしてもまた知られる)の多数の生物学的効果は、2種のTNF膜受容体すなわちp55およびp75受容体により媒介される(非特許文献7;非特許文献8)。タンパク質分解性切断により派生されるTNF受容体の細胞外ドメインはTNFの機能を阻害する(非特許文献9)。TNFαは、感染、免疫障害、腫瘍性病変、自己免疫性病変、および移植片対宿主病変と関連する(非特許文献10;非特許文献11;非特許文献12)。TNFαの調節不全およびとりわけ過剰産生は、敗血症、脳性マラリア、ならびに、多発性硬化症、関節リウマチ(RA)、全身性エリテマトーデスおよびクローン病のような自己免疫疾患、ならびに癌を包含する多様なヒト疾患に関与している(非特許文献13に総説される)。TNFαは、癌、感染性病変および他の異化状態における悪液質を媒介し得る(非特許文献14に総説される)。
【0007】
TNFα活性を阻害する抗TNFα抗体を中和することは、TNFα媒介性疾患の処置および/若しくは診断において有用である。インフリキシマブは、強直性脊椎炎、クローン病、乾癬性関節炎および関節リウマチの処置に米国で承認されている。それは、多様な免疫性および自己免疫性病変の他の障害若しくは症状、ならびに全身性エリテマトーデス、サイロイドーシス(thyroidosis)、移植片対宿主病、強皮症、糖尿病、グ
レーヴズ病、サルコイドーシス、慢性炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎、播種性血管内凝固、アテローム硬化症および川崎病の病変のような炎症性疾患もまた効果的に処置し得る。特許文献5、特許文献6および特許文献7(それらの全部は引用することにより本明細書に組み込まれる)を参照されたい。
【0008】
インフリキシマブに対する抗体が若干の処置された患者で観察されたことが報告された(非特許文献15;非特許文献16)。従って、処置される患者での抗インフリキシマブ抗体の発生を潜在的に減少させるために、該分子中に存在するマウスアミノ配列の量を低下させることが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第6,277,969号明細書
【特許文献2】米国特許第6,284,471号明細書
【特許文献3】米国特許第6,790,444号明細書
【特許文献4】米国特許第6,835,823号明細書
【特許文献5】米国特許第5,656,272号明細書
【特許文献6】米国特許第5,698,195号明細書
【特許文献7】米国特許第5,919,452号明細書
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Vassalli、Ann.Rev.Immunol.10:411−452(1992)
【非特許文献2】Smithら、J.Biol.Chem.262:6951−6954(1987)
【非特許文献3】Krieglerら、Cell 53:45−53(1988)
【非特許文献4】Poberら、J.Immunol.136:1680−1687(1986)
【非特許文献5】Poberら、J.Immunol.138:3319−3324(1987)
【非特許文献6】Camussiら、J.Exp.Med.166:1390−1404(1987)
【非特許文献7】Hohmannら、J.Biol.Chem.264:14927−14934(1989)
【非特許文献8】Engelmannら、J.Biol.Chem.265:1531−1536(1990)
【非特許文献9】Kohnoら、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.87:8331−8335(1990)
【非特許文献10】Ceramiら、Immunol.Today 9:28−31(1988)
【非特許文献11】Oliffら、Cell 50:555−563(1987)
【非特許文献12】Piguetら、J.Exp.Med.166:1280−1289(1987)
【非特許文献13】ZhangとTracey、The Cytokine Handbook、Thomson AW(編).pp 517−548(1998)
【非特許文献14】Traceyら、Ann.N.Y.Acad.Sci.587:325−331(1990)
【非特許文献15】Targanら、N.Engl.J.Med.337:1029−1035(1997)
【非特許文献16】Mainiら、Arthritis Rheum.41:1552−1563(1998)
【発明の概要】
【0011】
本発明の一局面は、配列番号2に示される配列を有するポリペプチドを含んでなるポリペプチドである。
【0012】
本発明の別の局面は、配列番号3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、131、132、133、134、135、136、137、138、139、140、141、142、143、144、145、146、147、148、149、150、151、152、153、154、155、156、157、158、159、160、161、162、163、164、165、166、167、168、169、170、171、172、173、174、175、176、177、178、179、180、181、182、183、184、185、186、187、188、189若しくは190に示される配列を有するポリペプチドを含んでなるポリペプチドである。
【0013】
本発明の別の局面は、配列番号191、192、193、194、195、196、197、198、199、200、201、202、203、204、205、206、207、208、209、210、211、212、213、214、215、216、217、218、219、220、221、222、223、224、225、226、227、228、229、230、231、232、233、234、235、236、237、238、239、240、241、242、243、244、245、246、247、248、249、250、251、252、253、254、255、256、257、258、259、260、261、262、263、264、265、266、267、268、269、270、271、272、273、274、275、276、277、278、279、280、281、282、283、284、285、286、287、288、289、290、291、292、293、294、295、296、297、298、299、300、301、302、303、304、305、306、307、308、309、310、311、312、313、314、315、316、317、318、319、320、321、322、323、324、325、326、327、328、329、330、331、332、333、334、335、336、337、338、339、340、341、342、343、344、345、346、347、348、349、350、351、352、353、354、355、356、357、358、359、360、361、362、363、364、365、366、367、368、369、370、371、372、373、374、375、376、377若しくは378に示される配列、または相補配列を有するポリヌクレオチドを含んでなるポリヌクレオチドである。
【0014】
本発明の別の局面は、配列番号3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、4
0、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、131、132、133、134、135、136、137、138、139、140、141、142、143、144、145、146、147、148、149、150、151、152、153、154、155、156、157、158、159、160、161、162、163、164、165、166、167、168、169、170、171、172、173、174、175、176、177、178、179、180、181、182、183、184、185、186、187、188、189若しくは190に示されるアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドを含んでなるポリヌクレオチドである。
【0015】
[発明の詳細な記述]
本明細で引用される、限定されるものでないが特許および特許出願を挙げることができる全部の刊行物は、完全に示されるかのように引用することにより本明細書に組み込まれる。一文字アミノ酸記号を当業者により理解されるとおりに本明細書で使用する。
【0016】
本明細書で使用されるところの「免疫グロブリン」という用語は、免疫グロブリン遺伝子により実質的にコードされる1種若しくはそれ以上のポリペプチドよりなるタンパク質を指す。本明細書で使用されるところの「抗体」という用語は、抗原、ならびに、限定されるものでないが酵素的切断(例えばパパイン若しくはペプシン消化による)、ペプチド合成または組換え技術を挙げることができるいずれかの既知技術により提供されるそれらの生物学的に活性のフラグメント、領域若しくは誘導体と相互作用若しくは別の方法で会合することが可能である免疫グロブリンファミリーの1タンパク質を指す。抗体の生物学的に活性のフラグメント、領域の例は、限定されるものでないがFab、Fab’、F(ab’)およびFvを挙げることができる。これらのフラグメントは、無傷の抗体のFcフラグメントを欠き、無傷の抗体より循環からより迅速に消失しかつより小さい非特異的組織結合を有し得る。「誘導体」という用語は、免疫グロブリン分子に機能的に似ている改変された抗体を包含する。例示的一改変は、細菌毒素のような細胞傷害性タンパク質の付加であり得る。
【0017】
本明細書で使用されるところの「抗原」という用語は、抗体と相互作用することが可能である物質を指し、そして、本発明の情況でTNFαであることを意味している。TNFαは可溶性TNFα若しくは膜結合TNFαでありうる。本明細書で使用されるところの「TNFα抗体」という用語は、TNFの部分を結合しかつTNF受容体へのTNFαの結合を阻害することが可能な抗体を包含する。
【0018】
本発明は、TNFαに結合しかつインフリキシマブより少ないマウス由来アミノ酸残基を有するTNFα抗体を提供する。本発明は、TNFα抗体をコードする核酸、これらの核酸を含有するベクター、宿主細胞、組成物、ならびにTNFα抗体の作成および使用方法もまた提供する。
【0019】
TNFα抗体のポリペプチドおよび組成物
本発明は、全般として、式I(配列番号2):
EVQLXESGGG LVQPGGSLRL SCX23ASX262728FS NHX33MNWVRQA PGKGLEWIGE IRSKSX565758
AT X61YAESVKGRF IISRDX76NX787980 LX82LEMNSLKT EDTAEYYCAX100 NYYGSTX107DYW GQGTLVTVS
(I)
式中、
はV若しくはTであり;X23はA若しくはRであり;X26はG若しくはQであり;X27はF若しくはSであり;X28はI若しくはTであり;X33はW若しくはYであり;X56はI若しくはSであり;X57はN若しくはYであり;X58はS若しくはGであり;X61はH若しくはSであり;X76はD若しくはGであり;X78はK若しくはGであり;X79はN若しくはTであり;X80はS若しくはDであり;X82はY若しくはTであり;X100はR若しくはQであり;およびX107はY若しくはPである、
に示される配列を有するポリペプチドを含んでなるTNFα抗体に関する。
【0020】
より具体的には、本発明は、ヒトで抗インフリキシマブ抗体を生成することがより少なくありそうである、TNFαに対する抗体に関する。
【0021】
該TNFα抗体の可変領域は、枠組み領域においてヒト免疫グロブリン配列若しくはヒト免疫グロブリン生殖系列配列と有意の同一性を有する。ヒト免疫グロブリン配列は、NCBI(http://ncbi.nlm.nih.gov/)のもののようなデータベースに見出し得る。ヒト免疫グロブリン生殖系列配列は、例えばhttp://vbase.mrc−cpe.cam.ac.uk/に見出し得る。例示的H鎖可変領域アミノ酸配列は、配列番号3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、131、132、133、134、135、136、137、138、139、140、141、142、143、144、145、146、147、148、149、150、151、152、153、154、155、156、157、158、159、160、161、162、163、164、165、166、167、168、169、170、171、172、173、174、175、176、177、178、179、180、181、182、183、184、185、186、187、188、189若しくは190に示される。例示的L鎖可変領域配列は、配列番号380に示される。
【0022】
H鎖定常領域は、IgA、IgD、IgE、IgG、IgM、ならびにG1、G2、G3およびG4のようなそれらのサブタイプを包含するヒトH鎖の既知のクラス若しくはアイソタイプのいずれにも由来し得る。H鎖アイソタイプは抗体の多様なエフェクター機能の原因であるため、H鎖定常領域の選択は、補体固定若しくは抗体依存性細胞傷害(ADCC)のような所望のエフェクター機能により導かれることができる。例示的一H鎖定常領域アミノ酸配列は配列番号382に示される。L鎖定常領域は、ヒトL鎖アイソタイプκ若しくはλいずれかに由来し得る。例示的一L鎖定常領域アミノ酸配列は配列番号383に示される。
【0023】
本発明のTNFα抗体は、広範なアフィニティーでTNFαを結合し得る。例示的TNFα抗体は、インフリキシマブのアフィニティーに類似の若しくはそれより大きいアフィニティーでTNFαを結合する。TNFαに対するTNFα抗体のアフィニティーは、いずれかの適する方法、例えばBiacore若しくはKinExA器械類を使用する方法、ELISAおよび競合結合アッセイを使用して実験で決定し得る。
【0024】
本発明のTNFα抗体は、TNFαとTNF受容体の間の相互作用を阻害若しくは低下させることが可能である。これらのTNFα抗体は、細胞傷害性、有糸分裂誘発、サイトカイン誘導および接着分子の誘導のような広範なin vitroアッセイにおいてTNFα活性を中和する。
【0025】
本発明のTNFα抗体は、多様な免疫性および自己免疫性病変ならびに炎症性疾患の障害若しくは症状を処置するのに有用である。TNF関連の病変および疾患は、限定されるものでないが、以下、すなわち
(A)全身性エリテマトーデス、関節リウマチ、サイロイドーシス、移植片対宿主病、強皮症、糖尿病、グレーヴズ病などのような、急性および慢性の免疫性および自己免疫性病変;
(B)限定されるものでないが、(悪液質、自己免疫障害、AIDS認知症複合症および感染症のような続発症を包含する)AIDSのような、急性若しくは慢性の細菌感染、急性および慢性の寄生虫および/または細菌、ウイルス若しくは真菌感染性疾患から生じる敗血症症候群、悪液質、循環虚脱およびショックを挙げることができる感染症;
(C)サルコイドーシス、慢性炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎およびクローン病のような慢性の炎症性病変、ならびに限定されるものでないが播種性血管内凝固、アテローム硬化症および川崎病の病変を挙げることができる血管の炎症性病変を包含する、慢性の炎症性病変および血管炎症性病変のような炎症性疾患;
(D)限定されるものでないが、多発性硬化症および急性横断性脊髄炎のような脱髄性疾患;皮質脊髄系の病変のような錐体外路および小脳の障害;基底核の障害若しくは小脳の障害;ハンチントン舞踏病および老人性舞踏病のような運動亢進性運動障害;CNSのドパミン受容体を阻害する薬物により誘発されるもののような薬物誘発性運動障害;パーキンソン病のような運動低下性運動障害;進行性核上性麻痺;小脳の構造的病変のような小脳および脊髄小脳障害;脊髄小脳変性(脊髄性運動失調、フリートライヒ運動失調、小脳皮質変性、多系統変性(メンセル、デジェリーヌ−トーマス、シャイ−ドレーガーおよびマシャド−ヨーゼフ);ならびに全身障害(レフサム病、無β−リポ蛋白血症、運動失調、末梢血管拡張症およびミトコンドリアの多系統障害);多発性硬化症、急性横断性脊髄炎のような脱髄核(demyelinating core)障害;神経原性筋萎縮症(筋萎縮性側索硬化症、乳児の脊髄性筋萎縮症および若年性脊髄性筋萎縮症のような前角細胞変性)のような運動単位の障害;アルツハイマー病;中年のダウン症候群;びまん性レヴィー小体病;レヴィー小体型の老年認知症;ウェルニッケ−コルサコフ症候群;慢性アルコール症;クロイツフェルト−ヤコブ病;亜急性硬化性汎脳炎、ハレルフォルデン−シュパッツ症候群;ならびにボクサー認知症、またはそれらのいずれかの部分集合を挙げることができる神経変性疾患;
(E)限定されるものでないが白血病(急性、慢性骨髄球性、慢性リンパ球性および/若しくは骨髄異形成症候群);リンパ腫(ホジキン、および悪性リンパ腫(バーキットリンパ腫若しくは菌状息肉腫)のような非ホジキンリンパ腫))を挙げることができる、TNF分泌性腫瘍を伴う悪性病変若しくはTNFが関わる他の悪性病変;ならびに
(F)アルコール誘発性肝炎
を挙げることができる。
【0026】
従って、本発明の別の局面は、最低1種のTNFα抗体および当該技術分野で既知の製薬学的に許容できる担体若しくは希釈剤を含んでなる製薬学的組成物である。担体若しく
は希釈剤は、溶液、懸濁液、乳液、コロイド若しくは粉末であり得る。
【0027】
本発明のTNFα抗体は、治療的若しくは予防的有効量で製薬学的組成物として処方される。「有効量」という用語は、一般に、効果的な治療、すなわちそのための処置が探求された症状若しくは障害の部分的若しくは完全な緩和に必要な抗体の量を指す。上述された症状若しくは障害の発症の見込みを低下させることを意図している予防的処置が、有効な治療の定義内に包含される。
【0028】
該組成物は、場合によっては、TNF関連の病状若しくは疾患を処置するのに有用な最低1種のさらなる化合物、タンパク質若しくは組成物を含み得る。例えば、抗リウマチ薬、抗炎症薬、抗腫瘍薬、放射線療法、免疫抑制薬、ならびに多様な疾患および状態を処置するための細胞傷害性薬物との組合せを企図している。この点に関して、抗リウマチ薬は、オーラノフィン、アザチオプリン、クロロキン、D−ペニシラミン、金チオリンゴ酸ナトリウム、ヒドロキシクロロキン、Myocrisinおよびスルファサルジン、メトトレキサートの最低1種であり得る。抗炎症薬は、ペンタサ、メサラジン、アサコール、リン酸コデイン、ベノリレート、フェンブフェン、ナプロシン、ジクロフェナク、エトドラクならびにインドメタシン、アスピリンおよびイブプロフェンの最低1種であり得る。
【0029】
核酸、ベクターおよび細胞株
本発明の別の局面は、最低1種のTNFα抗体をコードするポリヌクレオチドを含んでなるか、それに相補的か、若しくはそれと有意の同一性を有する単離された核酸分子である。本発明の他の局面は、最低1種の単離されたTNFα抗体をコードする核酸分子を含んでなる組換えベクター、ならびに該核酸分子からタンパク質を発現することが可能である細胞株および生物体を包含する。該核酸、発現ベクターおよび細胞株は、一般に、本発明のTNFα抗体を製造するのに使用しうる。
【0030】
一態様において、本発明の核酸組成物は、配列番号3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、131、132、133、134、135、136、137、138、139、140、141、142、143、144、145、146、147、148、149、150、151、152、153、154、155、156、157、158、159、160、161、162、163、164、165、166、167、168、169、170、171、172、173、174、175、176、177、178、179、180、181、182、183、184、185、186、187、188、189若しくは190に示されるアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含んでなる。例示的核酸配列は、配列番号191、192、193、194、195、196、197、198、199、200、201、202、203、204、205、206、207、208、209、210、211、212、213、214、215、216、217、218、219、220、221、222、223、224、225、226、227、228、229、230、231、232、233、234、235、236、237、238、239、240、241、242、243、244、245、246、247、248
、249、250、251、252、253、254、255、256、257、258、259、260、261、262、263、264、265、266、267、268、269、270、271、272、273、274、275、276、277、278、279、280、281、282、283、284、285、286、287、288、289、290、291、292、293、294、295、296、297、298、299、300、301、302、303、304、305、306、307、308、309、310、311、312、313、314、315、316、317、318、319、320、321、322、323、324、325、326、327、328、329、330、331、332、333、334、335、336、337、338、339、340、341、342、343、344、345、346、347、348、349、350、351、352、353、354、355、356、357、358、359、360、361、362、363、364、365、366、367、368、369、370、371、372、373、374、375、376、377若しくは378に示されるポリヌクレオチドを含んでなる。
【0031】
典型的には、本発明の核酸は、本発明のTNFα抗体ポリペプチドの製造のための発現ベクターで使用される。本発明の範囲内のベクターは、CMVプロモーターに駆動されるベクター、例えばpcDNA3.1、pCEP4およびそれらの誘導体のようなウイルスプロモーターに駆動されるベクター、バキュロウイルス発現ベクター、ショウジョウバエ発現ベクター、およびヒト免疫グロブリン遺伝子プロモーターのような哺乳動物遺伝子プロモーターにより駆動される発現ベクターを包含する真核生物発現のための必要な要素を提供する。他の例は、T7プロモーターに駆動されるベクター、例えばpET41、乳糖プロモーターに駆動されるベクター、およびアラビノース遺伝子プロモーターに駆動されるベクターのような原核生物発現ベクターを包含する。
【0032】
本発明はTNFα抗体を発現する細胞株にもまた関する。宿主細胞は原核生物若しくは真核生物細胞であり得る。例示的真核生物細胞は、限定されるものでないが、COS−1、COS−7、HEK293、BHK21、CHO、BSC−1、HepG2、653、SP2/0、NS0、293、HeLa、骨髄腫、リンパ腫細胞、若しくはそれらのいずれかの誘導体を挙げることができる哺乳動物細胞である。最も好ましくは、宿主細胞はHEK293、NS0、SP2/0若しくはCHO細胞である。本発明の細胞株は最低1種のTNFα抗体を安定に発現しうる。該細胞株は、当該技術分野で公知である安定若しくは一過性トランスフェクション手順により生成しうる。
【0033】
本発明はさらに、TNFα抗体が検出可能な若しくは回収可能な量で発現される条件下で細胞株を培養することを含んでなる、最低1種のTNFα抗体の発現方法を提供する。本発明は、TNFα抗体が検出可能な若しくは回収可能な量で発現されるようなin vitro若しくはin situの条件下で、TNFα抗体をコードする核酸を翻訳することを含んでなる、最低1種のTNFα抗体の生成方法もまた提供する。本発明は、上の方法により製造されるTNFα抗体もまた包含する。
【0034】
TNFα抗体は、限定されるものでないがプロテインA精製、硫酸アンモニウム若しくはエタノール沈殿、酸抽出、陰イオン若しくは陽イオン交換クロマトグラフィー、ホスホセルロースクロマトグラフィー、疎水性相互者王クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、ヒドロキシルアトパタイトクロマトグラフィーおよびレクチンクロマトグラフィーを挙げることができる公知の方法により回収かつ精製し得る。高速液体クロマトグラフィー(HPLC)もまた精製に使用し得る。
【0035】
使用方法
該TNFα抗体は、とりわけ研究試薬および治療薬として有用である。一局面において
、本発明は、最低1種のTNFα抗体をそれの必要な哺乳動物に提供することを含んでなる、TNFαとTNF受容体の間の相互作用の低下若しくは阻害方法に関する。TNFα抗体がTNFαの生物学的活性を中和し、そして従ってTNFαのアンタゴニストとして機能する。「アンタゴニスト」という用語は最も広範な意味で使用され、そして、TNFαの1種若しくはそれ以上の生物学的活性を直接若しくは間接的に部分的に若しくは完全に打ち消す、低下させる若しくは阻害することが可能である分子を包含する。
【0036】
本発明は、さらに、治療上有効な量の最低1種のTNFα抗体の製薬学的組成物をそれの必要な患者に投与することを含んでなる、最低1種のTNFα関連の状態若しくは疾患の症状の低下若しくはその処置方法を提供する。上述されたとおり、こうした組成物は、有効量の最低1種のTNFα抗体および製薬学的に許容できる担体若しくは希釈剤を含んでなる。所定の治療(治癒的であろうと予防的であろうと)の有効量は、一般に、投与手段、標的部位および投与される他の薬剤を包含する多くの多様な因子に依存することができる。従って、処置用量は、安全性および有効性を至適化するように滴定される必要があることができる。
【0037】
本発明の方法を使用する処置に適する状態および疾患は、限定されるものでないが、上で詳細に列挙されたところの多様な免疫障害、自己免疫性病変および炎症性疾患を挙げることができる。これらの方法は、場合によっては、該疾患を処置するのに使用されるいずれかの標準的治療との共投与若しくは併用療法をさらに含み得る。
【0038】
投与様式は、製薬学的有効量の本発明のTNFα抗体を宿主に送達するためのいかなる適する経路でもあり得る。例えば、TNFα抗体は、皮下、筋肉内、皮内、静脈内若しくは鼻内投与のような非経口投与、または当該技術分野で既知のいずれかの他の手段を介して送達し得る。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】TNFα抗体C7(配列番号3)およびインフリキシマブ(配列番号1)のV領域のアライメントを示す。同一アミノ酸は「−」により示す。保存的アミノ酸変化は太字で示す。
【図2】C7(配列番号380)およびインフリキシマブ(配列番号379)のV領域のアライメントを示す。同一アミノ酸は「−」により示す。保存的アミノ酸変化は太字で示す。
【図3】C7およびインフリキシマブのELISA滴定曲線を示す。
【0040】
本発明は以下の実施例を参照してさらに記述される。これらの実施例は単に本発明の局面を具体的に説明するためであり、そして本発明の制限として意図していない。
【0041】
[実施例]
【実施例1】
【0042】
TNFα抗体の生成
Fabライブラリーを、インフリキシマブ配列および構造に基づく基準の組合せに基づき設計した。設計の目標は、ヒト免疫グロブリン配列に対する高い相同性をもつインフリキシマブの活性に少なくとも同等なTNFα結合活性をもつ分子であった。例えば、ライブラリーメンバーの選択の1基準は、相同なヒト対照物とのHおよびL鎖双方についての枠組みおよび相補性決定領域(CDR)中の配列の同一性若しくは類似性であった。NCBIのヒト免疫グロブリンデータベース(ncbi.nlm.nih.gov)およびヒト生殖系列免疫グロブリンデータベース(vbase.mrc−cpe.cam.ac.uk)を使用した。これらの基準に基づき、Vポリペプチドを、17部位の1個若しく
は組合せでの置換を伴い設計した。これらのVの組合せを、配列番号380に示されるアミノ酸配列(コードする核酸配列は配列番号381に示される)を有する一置換Vポリペプチドと組み合わせた。合成Fab DNAライブラリーは米国特許第6,521,427号明細書に記述される方法に従って生成した。
【0043】
FabライブラリーをpTrcHis2A(カタログ番号V365−20、Invitrogen、カリフォルニア州カールズバッド)にクローン化した。タンパク質を大腸菌(E.coli)で発現させ、そして固相ELISAを使用してヒトTNFαへのFab結合を評価した。簡潔には、96ウェルプレートを、炭酸−重炭酸緩衝液、pH9.4中1μg/mlのrHuTNF−α(Biosource、カリフォルニア州カマリロ)で4℃で一夜被覆した。0.05%(w/v)Tween−20を含むPBSで洗浄した後、ウェルをPBS中1%(w/v)BSAで室温で1時間ブロッキングした。洗浄した後に、アッセイ緩衝液(10mM PBS中1%BSAおよび0.05%Tween−20)で希釈した形質転換した大腸菌(E.coli)細胞ライセートとともに、プレートを室温で2時間インキュベートした。多様な濃度のインフリキシマブ(0.5、1および2ng/ml)を、陽性抗ヒトκ L鎖ビオチン/抗ペンタヒスチジンビオチン対照として使用した。プレートを洗浄し、そして、アッセイ緩衝液で2000倍希釈したビオチン結合ImmunoPureヤギ抗ヒトκ鎖(カタログ番号31780、Pierce Biotechnology、イリノイ州ロックフォード)およびペンタヒスチジンビオチン複合物(カタログ番号34440、QIAGEN、カリフォルニア州バレンシア)と室温で1時間インキュベートした。別の洗浄段階後に、アッセイ緩衝液で4000倍希釈した100μL/ウェルのストレプトアビジンPOD(カタログ番号1089153、Roche Applied Science、インジアナ州インジアナポリス)でプレートを室温で1時間プロービングした。プレートをさらに洗浄し、そしてその後3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン(TMB、カタログ番号34028、Pierce Biotechnology)と30分間インキュベートした。基質の発色を100μL/ウェルのTMB停止溶液(カタログ番号50−85−05、KPL、メリーランド州ゲイサーズバーグ)の添加により停止し、そして、自動プレート分光光度計を介して吸光度を450nmで測定した。
【0044】
バックグラウンド値の最低2倍の光学密度値をもつ188クローンをさらに特徴付けした。これらのクローンのVアミノ酸配列をそれぞれ配列番号3ないし190に示す。Vアミノ酸配列は配列番号380に示す。簡潔には、タンパク質濃度を測定し、そしてTNFα ELISAでの滴定曲線を各クローンについて生成した。50ng/mlで開始する二検体での8点滴定により連続希釈曲線を生成した。クローンをそれらのEC50に従って等級付けした。選択したFabクローンの可変領域を、インフリキシマブの定常領域を含む哺乳動物構築物にサブクローニングした。
【実施例2】
【0045】
TNFα抗体の配列分析
実施例1で記述されたとおり選択した新規TNFα抗体の1種(C7)のV領域(配列番号3)の枠組み部分は、ヒト生殖系列配列(VH3 3−72およびJH4)に同一である。図1に示されるとおり、インフリキシマブに比較した場合、枠組み領域中の83アミノ酸のうち61個が同一である。異なる23位置のうち、それらの14個(太字で示される)は保存的アミノ酸変化である。
【0046】
同様に、C7のV領域の枠組み部分はヒト生殖系列配列(Vk1 A10およびJk3)に同一である。図2に示されるとおり、インフリキシマブに比較した場合、枠組み領域中の80アミノ酸のうち63個が同一である。異なる17位置のうち、それらの13個(太字で示される)は保存的アミノ酸変化である。
【実施例3】
【0047】
抗体C7のTNFαへの結合
完全長抗体を、TNFα結合を確認するため、実施例1に記述されたところの固相ELISA結合アッセイで使用した。図3は、C7のELISA滴定曲線がインフリキシマブのものに匹敵することを示す。
【0048】
C7を、TNFαへのC7およびインフリキシマブの結合定数を比較するためのBiacoreアッセイでもまた使用した。該結果(示されない)は、TNFαへのC7の結合アフィニティー(K=70pM)がインフリキシマブのもの(K=170pM)より2倍以上より高いことを示した。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明によれば、商標名REMICADE(R)の下で販売されているインフリキシマブの望ましくない免疫反応の低減した改変抗TNFα抗体が提供される。したがって、少なくとも医薬製造産業で利用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号3に示される配列を有するポリペプチドおよび配列番号380に示される配列を有するポリペプチドを含んでなる抗TNFα抗体。
【請求項2】
請求項1に記載のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含んでなるポリヌクレオチド。
【請求項3】
有効量の請求項1に記載の抗TNFα抗体、および製薬学的に許容できる担体若しくは希釈剤を含んでなる製薬学的組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−34481(P2013−34481A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−204815(P2012−204815)
【出願日】平成24年9月18日(2012.9.18)
【分割の表示】特願2008−525034(P2008−525034)の分割
【原出願日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【出願人】(503054122)セントカー・インコーポレーテツド (74)
【Fターム(参考)】