説明

折板屋根緑化用仕切構造

【課題】平坦でない折板屋根上でも、安価に且つ優れた施工性で設置することができると共に、給水パイプを収納して折板屋根緑化の美観を高めることができる折板屋根緑化用仕切構造を提供する。
【解決手段】山部1と谷部2が交互に繰り返し、山部1の頂面から上方に突出する突出部3を有する折板屋根R上に設けられる緑化エリアと緑化エリア以外のエリアとを仕切る折板屋根緑化用仕切構造であって、折板屋根Rの山部1上面に載置され、緑化エリアの外側に設けられる下地材40と、下地材40の少なくとも上面を覆う上板部61と、下地材40の緑化エリアとは反対側の側面を覆う側板部62とを有し、複数の下地材40の上に架け渡して設けられるカバー部材60と、下地材40とカバー部材60で形成される空間を通るようにして、折板屋根Rの突出部3の上に架け渡して配設される給水パイプP1とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、折板屋根上に設けられる緑化エリアを仕切る折板屋根緑化用仕切構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、都市の緑化対策の重要性が認識されつつあり、平坦でない折板屋根においても緑化が図られている。そして、斯様な折板屋根上の緑化エリアと緑化されていないエリアを仕切る折板屋根緑化用の仕切構造も提案されている。
【0003】
例えば特許文献1には、折板屋根の山部に架橋するようにして下地材を山部頂面に載置し、下地材上に給水パイプを配設し、配設した給水パイプを仕切部材(見切材)の押圧片でカバーする仕切構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−89437号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、折板屋根に緑化を施す場合、仮に乾燥に強い植栽を施したとしても異常気象時に給水が必要となる可能性があるため、給水パイプは不可欠となるが、仕切部材内に給水パイプを配設しない技術を使用した場合には、別途給水パイプを配設するための設備が必要となり、コストアップ及び美観を損ねる原因となる。
【0006】
また、特許文献1の仕切構造によれば、上記不具合を解消できるものの、折板屋根の給水パイプを配設する箇所を下地材により平坦な面に形成する必要があるため、施工性に劣り、コストアップになるという不具合があった。
【0007】
本発明は上記不具合を解消するために提案するものであって、平坦でない折板屋根上でも、安価に且つ優れた施工性で設置することができると共に、給水パイプを収納して折板屋根緑化の美観を高めることができる折板屋根緑化用仕切構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の折板屋根緑化用仕切構造は、山部と谷部が交互に繰り返し、山部頂面から上方に突出する突出部を有する折板屋根上に設けられる緑化エリアと緑化エリア以外のエリアとを仕切る折板屋根緑化用仕切構造であって、前記折板屋根の山部上面に載置され、前記緑化エリアの外側に設けられる下地材と、前記下地材の少なくとも上面を覆う上板部と、前記下地材の前記緑化エリアとは反対側の側面を覆う側板部とを有し、複数の前記下地材上に架け渡して設けられるカバー部材と、前記下地材と前記カバー部材で形成される空間を通るようにして、前記折板屋根の前記突出部上に架け渡して配設される給水パイプと、を備えることを特徴とする。
この構成によれば、平坦でない折板屋根上でも、安価に且つ優れた施工性で設置することができると共に、給水パイプを収納して折板屋根緑化の美観を高めることができる。また、給水パイプを折板屋根のハゼ部等の突出部上に配設することにより、カバー部材或いは下地材に外部から外力が加わったとしても、給水パイプ自体に影響を与えることを防止することができ、安定した給水パイプの設置状態を確保し、長期に亘って安定した給水を行うことができる。
【0009】
本発明の折板屋根緑化用仕切構造は、前記下地材の底面に、前記突出部を収納する切欠部が形成されていることを特徴とする。
この構成によれば、切欠部に突出部を収納することにより、下地材を安定して設置することができる。
【0010】
本発明の折板屋根緑化用仕切構造は、前記下地材の上面と、前記折板屋根の前記突出部の流れ方向に沿う面とが開口されていることを特徴とする。
この構成によれば、折板屋根の突出部の流れ方向と直交する方向に給水パイプを容易に設置することができる。
【0011】
本発明の折板屋根緑化用仕切構造は、前記側板部が、下端において前記突出部の上面に当接する、又は前記突出部の上面よりも上方に位置することを特徴とする。
この構成によれば、側面部が突出部と干渉することを防止できると共に、下地材や給水パイプを必要な範囲でより確実に覆うことができる。
【0012】
本発明の折板屋根緑化用仕切構造は、前記カバー部材の前記緑化エリア側の側面に、前記緑化エリアの上面まで垂下する垂下板部が設けられていることを特徴とする。
この構成によれば、カバー部材を下地材により安定して設置することができると共に、下地材や給水パイプを必要な範囲でより確実に覆うことができる。
【0013】
本発明の折板屋根緑化用仕切構造は、前記垂下板部の下端近傍から前記緑化エリア内へ突出する水平片が設けられていることを特徴とする。
この構成によれば、切芝等を水平片上に載置することにより、切芝に元々ついている土壌などが折板屋根上に落下すること等を防止することができる。また、例えば植栽基盤に給水パイプを設置するための凹部を設ける構成を採用すると、水平片を給水パイプに当接する等により、給水パイプを確実に植栽基盤の凹部に入り込んだ状態で位置決めすることができる。
【0014】
本発明の折板屋根緑化用仕切構造は、前記水平片に、緑化エリア外側端から上方に屈曲延設する垂直片が設けられ、前記垂直片が、前記下地材の前記緑化エリア側の側面と、前記カバー部材の垂下板部との間に介在するように設けられることを特徴とする。
この構成によれば、水平片と垂直片とから構成される落下防止材等の部材を安定して設置することができる。
【0015】
本発明の折板屋根緑化用仕切構造は、前記下地材が、前記折板屋根の山部頂面に接着して固定されていることを特徴とする。
この構成によれば、下地材を折板屋根の山部頂面に簡単に固定することができる。
【0016】
本発明の折板屋根緑化用仕切構造は、山部と谷部が交互に繰り返し、山部頂面から上方に突出する突出部を有する折板屋根上に設けられる緑化エリアと緑化エリア以外のエリアとを仕切る折板屋根緑化用仕切構造であって、前記折板屋根の突出部に固定状態で配置され、前記緑化エリアの外側に設けられる下地材と、前記下地材の少なくとも上面を覆う上板部と、前記下地材の前記緑化エリアとは反対側の側面を覆う側板部とを有し、複数の前記下地材上に架け渡して設けられるカバー部材と、前記下地材と前記カバー部材で形成される空間を通るようにして、前記折板屋根の前記突出部上に架け渡して配設される給水パイプと、を備えることを特徴とする。
この構成においても、平坦でない折板屋根上でも、安価に且つ優れた施工性で設置することができると共に、給水パイプを収納して折板屋根緑化の美観を高めることができる。また、この構成により、カバー部材或いは下地材に外部から外力が加わったとしても、給水パイプ自体に影響を与えることを防止することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の折板屋根緑化用仕切構造は、平坦でない折板屋根上でも、安価に且つ優れた施工性で設置することができると共に、給水パイプを収納して折板屋根緑化の美観を高めることができる。また、給水パイプを折板屋根のハゼ部等の突出部上に配設することにより、カバー部材或いは下地材に外部から外力が加わったとしても、給水パイプ自体に影響を与えることを防止することができ、安定した給水パイプの設置状態を確保し、長期に亘って安定した給水を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】(a)は実施例1の折板屋根緑化用仕切部材を示す平面図、(b)は実施例1の折板屋根緑化用仕切部材を示す正面図、(c)は実施例1の折板屋根緑化用仕切部材を示す側面図。
【図2】(a)は実施例1の植栽基盤と育成材の施工状況を示す平面説明図、(b)は実施例1の植栽基盤と育成材の施工状況を示す正面説明図、(c)は実施例1の植栽基盤と育成材の施工状況を示す側面説明図。
【図3】(a)は実施例1の下地材の施工状況を示す平面説明図、(b)は実施例1の下地材の施工状況を示す正面説明図、(c)は実施例1の下地材の施工状況を示す側面説明図。
【図4】(a)は実施例1の給水パイプの施工状況を示す平面説明図、(b)は実施例1の給水パイプの施工状況を示す正面説明図、(c)は実施例1の給水パイプの施工状況を示す側面説明図。
【図5】(a)は実施例1の落下防止部材とカバー部材の施工状況を示す平面説明図、(b)は実施例1の落下防止部材とカバー部材の施工状況を示す正面説明図、(c)は実施例1の落下防止部材とカバー部材の施工状況を示す側面説明図。
【図6】(a)は実施例1の切芝の施工状況を示す平面説明図、(b)は実施例1の切芝の施工状況を示す正面説明図、(c)は実施例1の切芝の施工状況を示す側面説明図。
【図7】図1のA部拡大図。
【図8】(a)他のカバー部材の例を示す下地材及びカバー部材の取付前の斜視図、(b)は他のカバー部材の例を示す下地材の取付後の斜視図、(c)は他のカバー部材の例を示す下地材及びカバー部材の取付後の斜視図。
【図9】(a)は他の第1例のカバー部材及び下地材を示す斜視説明図、(b)は他の第2例のカバー部材及び下地材を示す斜視説明図、(c)は他の第3例のカバー部材及び下地材を示す斜視説明図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の折板屋根緑化用仕切構造に関する具体的な実施形態について説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、各実施例の各構成要件を組み合わせ或いは組み替える構成や、各実施例の各構成要件を削除するなど本発明の要旨の範囲内の全ての構成が含まれる。
【0020】
〔実施例1〕
本発明の実施例1の折板屋根緑化用仕切構造は、図1に示すように、山部1と谷部2が交互に繰り返して設けられ、山部1の頂面にカシメ結合された上方に突出する突出部3であるハゼ部を有する折板屋根R上に、隣り合う山部1のピッチと略同一の幅を有する緑化ユニットGを碁盤目状に載置して形成される緑化エリアに設けられるものであり、この緑化エリアと緑化エリア以外エリアを仕切部材Wで仕切る折板屋根緑化用仕切構造である。
【0021】
実施例1における緑化ユニットGは、図1及び図2に示すように、側面10aと底面10bを有する上面開口の略箱型からなる植栽基盤10と、植栽基盤10内に収納される育成材20と、育成材20上に載置される切芝などの植栽マット30とで構成されている。
【0022】
図2に示すように本実施例の植栽基盤10は、底面10bに折板屋根Rの流れ方向(折板屋根Rの突出部3の延びる方向(図中のY方向))に直交する4本のリブ12が立設され、リブ12の頂面には排水用の穴12aが複数穿設され、リブ12で囲まれた空間(貯水空間)に水分を貯留可能な構成となっている。また、隣り合う2側面10aの上端には、外方に屈曲延設し、隣の植栽基盤10の側面10aを覆う突出片13が形成されており、リブ12に平行な対向する2側面10aの上部には、後述する給水パイプを配設可能な凹部(側面凹部ともいう)14が形成されている。尚、植栽基盤10は、合成樹脂、発泡体、鋼板、木製、陶器製、石製など適宜であるが、ガルバニウム鋼板の絞り加工で成形すると、安価で高強度な植栽基盤10となり好適である。
【0023】
育成材20は、上面20aと下面20bを有し、外周において側面20cを形成する略平板形状に形成されており、上面20aにおいては凹状部21が10個形成され、平面視略同一位置に下面20bにおいて突出部22が形成されており、育成材20相互を重ね合わせた際に、突出部22が凹状部21に入り込み、積み重ねの際の嵩を低くすることができると共に、位置決め効果を発揮し、安定した積み重ねが可能となるように構成されている。尚、育成材20は、例えばパーライト、バーミキュウライト、ピートモス、バーク堆肥、チャフコン、木質腐朽有機物、ゼオライト、下水或いは浄水場から発生する汚泥、或いは汚泥の焼却灰などを単体で、或いは複数種類を混合して、更には根腐れ防止用の硅酸塩白土等を植物の種類、環境等に応じて適宜選定し、これらを保水性、排水性を良好にするためにバランス良く配合した粒状の軽量育成材、或いはこれらをバインダーで固化したブロック状のもの、或いはウレタン、ロックウール、スポンジやヤシガラ等の繊維材等の軽量育成材など適宜である。また、植栽基盤10の側面凹部14に対応する箇所には凹溝23が形成され、後述する給水パイプを配設可能な構成となっている。また、植栽基盤10内に育成材20を収納した場合、突出部22が植栽基盤10のリブ12で囲まれた貯水空間に位置するように形成されており、貯留された水分を吸水し、植物への水分供給が可能な構成となっている。
【0024】
植栽基盤10及び育成材20などを折板屋根Rに載置する場合、図2に示すように、先ず、折板屋根Rの山部1頂面に両面テープ或いは接着剤、粘着剤等の固定手段5を設け、その上に、育成材20を収納した植栽基盤10をリブ12が折板屋根Rの流れ方向に直交するように配置し、且つ山部1頂面のハゼ部分(突出部3)に挟まれるような位置に載置することにより、折板屋根Rと植栽基盤10の底面10bとを固定状態とする。尚、図2から明らかなように平面視において、植栽基盤10の底面10bの面積がリブ12の部分より大きくなっているため、接着強度を確保できると共に、貯水量も十分に確保することが可能である。
【0025】
この際、一の植栽基盤10の突出片13が、隣り合う他の植栽基盤10の側面10a上端に位置するように隣接して敷設することにより、植栽基盤10の間から折板屋根(ハゼ部分を含む)Rが目視不能な状態になっている。また、この際、突出片13が隣り合う他の植栽基盤10の育成材20上まで延びていることから、育成材20の隣り合う2辺が突出片13により押えられ、育成材20が風などにより飛散することを防止することが可能になっている。
【0026】
また、仕切構造の仕切部材Wを構成する下地材40は、折板屋根Rの山部1上面に載置され、緑化エリアの外側に設けられる。本例の下地材40は、図3に示すように、その上面が、折板屋根Rの突出部3の流れ方向(図中のY方向)に直交する方向に沿って開口されている断面略コ字形であり、底面40aと、底面40aから上方に屈曲延設してなる緑化エリア側及び緑化エリアと反対側の2側面40b、40bと、2側面40b、40bの上端を互いに向き合うように屈曲延設してなる上面を構成する固定片40c、40cとを備えている。この下地材40は、植栽基盤10の外側に接するよう配置され、且つ折板屋根Rの山部1頂面の固定手段5上に載置され、接着等で固定されている。また、底面40a及び2側面40b、40bの下部側に一連の切欠部40dが形成されており、切欠部40dにハゼ部(突出部3)を収納可能になっている。また、下地材40は、突出部3の流れ方向に沿う面が開口している(図3(c)参照)。
【0027】
また、図4に示すように折板屋根Rの流れ方向(Y方向)に直交する方向には、塩ビ管などからなる主給水パイプP1が突出部3であるハゼ部上に架け渡して設けられている。主給水パイプP1は、下地材40の2側面40b、40b相互間に配設され(一方の側面40bと、他方の側面40bとの間に配設され)、下地材40と後述するカバー部材60で形成される空間を通るようにして設けられる。主給水パイプP1からは植栽基盤10側にT字又はL字で分岐した(T字又はL字の分岐管Bを介して分岐した)副給水パイプP2が延びて配設されており、副給水パイプP2は折板屋根Rの流れ方向に1直線上になっている植栽基盤10の凹部14及び育成材20の凹溝23内に配設されている。尚、副給水パイプP2は、多孔質パイプ、ドリップチューブ、しみ出しパイプ等適宜である。
【0028】
また、図5に示すように、水平片51と水平片51の緑化エリア外側端から上方に屈曲延設する垂直片52とを有する断面略L字形の落下防止材50が、植栽基盤10に収納された育成材20上に載置される。具体的には、水平片51が育成材20上に載置され、垂直片52が下地材40の緑化エリア側の側面40bの外面に接するように配置される。更に、複数の下地材40を架け渡すように、且つ落下防止材50の垂直片52の上方を覆うように長尺のカバー部材60が載置され、カバー部材60と下地材40の固定片40cをビス等の固定部材80(図7参照)で固定することにより、図1に示す折板屋根緑化用の仕切構造となる。尚、仕切構造の施工の際には、図2、図3、図4、図5の順で施工することが好ましい。
【0029】
カバー部材60は、複数の下地材40上に架け渡すようにして設けられ、下地材40の固定片40cの上面に載置され、下地材40の少なくとも上面を覆う上板部61と、上板部61の緑化エリア側と反対側の端縁を下方に屈曲延設してなり、下地材40の緑化エリアとは反対側の側面40bを覆う側板部62と、上板部61の緑化エリア側の端縁を下方に屈曲延設してなり、カバー部材60の緑化エリア側の側面で緑化エリアの上面又は上面近傍まで垂下する垂下板部63とを備えている。
【0030】
また、図7に示すように、落下防止材50の垂直片52は、下地材40の緑化エリアの側の側面40bと、カバー部材60の垂下板部63との間に介在して設けられ、その水平片51は、垂下板部63の下端近傍から緑化エリア内に突出するようにして設けられている。また、側板部62は、その下端において突出部3の上面に当接する、又は突出部3の上面よりも上方に位置するようにすると良好であり、本例の側板部62は、突出部3であるハゼ部の上端よりも僅かに上方に位置する程度の長さを有している。また、カバー部材60と下地材40は、カバー部材60の上板部61と下地材40の固定片40cとを重ねて、ビス等の固定部材80による固定によって結合固定されている。
【0031】
その後、図6に示すように、育成材20上に切芝などの植栽マット30を載置することにより緑化エリアが形成される。尚、本実施例では切芝について説明したが、本発明の植栽マット30は、どのようなものであっても良く、例えば、タマリュウ、セダム、地被類、コケ、キリンソウ等をマット状にしたもの、或いは育成材20の上面の凹状部21内に苗を植え付ける構成、或いは育成材20上に植物の種子をまく、或いは育成材20内に種子を混合させておくなど適宜である。尚、緑化エリアの外端縁近傍においては、切芝を落下防止部材50の水平片51上に載置していることから、切芝にもともとついている土壌などが折板屋根上に落下するなどを未然に防止していると共に、水平片51の存在により副給水パイプP2が確実に植栽基盤10の凹部14に入り込んだ状態で位置決めがなされる。
【0032】
尚、実施例1の図は、緑化エリアの一部を図示したに過ぎないものであり、植栽基盤10(緑化ユニットG)を6個設置した例を図示しているが、実際はより広範囲に緑化エリアが広がっており、図示上は省略している。また、仕切構造において、側面図から明らかなように側面側が開放しているように図示しているが、実際は別途蓋を被せるなどして開放を塞ぐと好適である。
【0033】
以上、本発明の実施例1の折板屋根緑化用仕切構造を使用することにより、平坦でない折板屋根Rを平坦にするための部材を準備及び施工する必要が無いため、安価で施工性が良い、給水パイプを収納可能な折板屋根緑化用仕切構造を提供することが可能となる。また、給水パイプを折板屋根Rのハゼ部等の突出部3上に配設することにより、カバー部材60或いは下地材40に外部から外力が加わったとしても、給水パイプ自体に影響を与えることを防止することができ、安定した給水パイプの設置状態を確保し、長期に亘って安定した給水を行うことができる。
【0034】
〔実施例の変形例等〕
本明細書開示の発明には、解決手段に記載の各発明や実施形態等(実施例1等)の構成のほかに、これらの部分的な構成を本明細書開示の他の構成に変更して特定したもの、或いはこれらの構成に本明細書開示の他の構成を付加して特定したもの、或いはこれらの部分的な構成を部分的な作用効果が得られる限度で削除して特定した上位概念化したものも含まれ、例えば下記の変形例も包含される。尚、下記の変形例において、上述した実施例1で示した構成と同様の構成(及び相当する構成)については、説明の便宜上、同じ符号を付している。
【0035】
例えば落下防止材50は、必須条件ではなく、これが無い構成としてもよい。また、図8に示すように、カバー部材60の垂下板部63に落下防止材50の水平片51に相当する水平片64を一体に形成する構成とすると、施工性が向上して好適である。尚、下地材40自体は、実施例1と同一構成となっている。
【0036】
また、下地材40及びカバー部材60は、本発明の趣旨を逸脱しない限度で、どのような形状及び構成であってもよく、例えば図9(a)に示すように、カバー部材60を、落下防止材50が無い構成とし、下地材を2分割体として、突出部3であるハゼ部を挟んで両側にコ字形の下地材41を設ける構成としてもよい。この構成により、ハゼ部(突出部3)の形状、大きさにかかわらず、下地材41を取り付ける事が可能となると共に、切欠部40d(図3参照)などの穴あけ加工が不要となり、コストダウン効果を発揮できる。
【0037】
また、図9(b)に示すように、カバー部材70を緑化エリア側と緑化エリアの反対側とで2分割となる分割体(断面視L字型の板状の分割体)としてもよく、また、下地材42も、山部1上に載置される底片42aと、側面42bと、上面42cで構成し、及び底片42a及び側面42bに切欠部42dを設ける構成であってもよい。すなわち、下地材42は、矩形板状の上面42cと、上面42cの両端から下方に屈曲延設した一対の側面42bと、一対の側面42bの下端を互いに向き合うように屈曲延設した底片42aとを備えている。また、底片42a及び側面42bには、切欠部42dが設けられている。この構成によれば、下地材42の上面42cが広いため、上方から目視できない固定部材80による固定を、大まかな位置であっても固定部材80の固定作業を行うことが可能となり、作業性が向上する。また、カバー部材70上方からの力が加わったとしても、カバー部材70と上面42cとで支持することができ、全体として、強度アップにつながる。尚、この場合、主給水パイプP1は、突出部3であるハゼ部上に架け渡しされ、且つ上面42cの下側の空間を通るように設置される。
【0038】
また、図9(c)に示すように、カバー部材60の上板部61に溝65を複数設け、表面積を広くすることによる放熱効果を高める、或いは給水パイプ或いは溝65を目印として固定部材80を固定するような形状としてもよく、下地材43も4分割体(断面視コ字型の板状の分割体)としてもよい。この構成により、給水パイプの配設本数に応じて下地材43を兼用することが可能となると共に、形状が単純であることから、安価に製造することが可能であり、材料費も削減することができる。尚、図9(a)の下地材41は、2つ使用する必要は無く、片側の1つであっても良い。更に、図9(c)の下地材43も同様に、強度が持てば1つであっても良いが、好適には2つ以上である。
【0039】
また、下地材40は、必ずしも折板屋根Rの山部1上面に載置されている必要はなく、例えば、突出部3がハゼ部である場合に、通常のハゼ掴みを折板屋根Rの突出部3の流れ方向に2つ所定間隔を開けて固定配置し、2つのハゼ掴みの間に給水パイプを配設し、その上面をカバー部材で覆うと共に、そのカバー部材とハゼ掴みとを固定手段で固定する構成であってもよい(この場合、給水パイプが架け渡される各突出部3に、2つのハゼ掴み配置される)。この構成においても、上記実施例と同様、給水パイプは、ハゼ掴みとカバー部材とで形成される空間を通り、且つ突出部3上に架け渡して配設される。
【0040】
また、上記実施例は、植栽基盤10と育成材20、植物(切芝などの植栽マット30)からなる緑化ユニットGによる緑化エリアについて説明したが、本発明の緑化エリアは、緑化が施されておればどのような植栽基盤、育成材、植物であっても良く、ユニットである必要もなく、客土タイプ、パレットタイプ、コンテナタイプの緑化など、全ての工法が含まれる。
【0041】
また、本発明は、給水パイプP1、P2に限らず、通気パイプ、電線、通信線などを下地材40とカバー部材60で覆われた空間に配設しても良く、給水パイプP1、P2以外のものを配設しても良い。
【0042】
また、実施例では、折板屋根Rと下地材40、或いは折板屋根Rと植栽基盤10を固定手段5として接着或いは両面テープで固定しているが、本発明は既存のハゼ掴みを使用するなど適宜である。
【0043】
また、固定手段80は、ビスに限定されるものではなく、接着材、粘着材等、或いは下地材40とカバー部材60の結合、嵌合等適宜である。
【0044】
また、隣り合う植栽基盤10相互を連結する構成を付加しても良く、耐風圧強度が増すこととなる。更に、基盤は間隔をあけて設置しても良い。
【0045】
また、本発明の折板屋根Rはハゼタイプに限定されず、ボルトタイプ、カバータイプの折板屋根Rなど、山部1に突出部3を有するもので、且つ山部1に下地材40を載置可能な全ての折板屋根が対象となる。
【0046】
また、植栽基盤10内に育成材20を収納して、その上にデッキ材などを設ける構成であってもよく、より美観に優れた緑化エリアを形成することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明は、例えば折板屋根の緑化に利用することができる。
【符号の説明】
【0048】
R…折板屋根
1…山部、2…谷部、3…突出部
5…固定手段
G…緑化ユニット
10…植栽基盤、10a…側面、10b…底面、12…リブ、12a…穴、13…突出片、14…凹部(側面凹部)
20…育成材、20a…上面、20b…下面、20c…側面、21…凹状部、22…突出部、23…凹溝
30…植栽マット
W…仕切部材
40…下地材、40a…底面、40b…側面、40c…固定片、40d…切欠部
41…下地材
42…下地材、42a…底片42、42b…側面、42c…上面、42d…切欠部
43…下地材
50…落下防止材、51…水平片、52…垂直片
60…カバー部材、61…上板部、62…側板部、63…垂下板部、64…水平片、65…溝
70…カバー部材
80…固定部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
山部と谷部が交互に繰り返し、山部頂面から上方に突出する突出部を有する折板屋根上に設けられる緑化エリアと緑化エリア以外のエリアとを仕切る折板屋根緑化用仕切構造であって、
前記折板屋根の山部上面に載置され、前記緑化エリアの外側に設けられる下地材と、
前記下地材の少なくとも上面を覆う上板部と、前記下地材の前記緑化エリアとは反対側の側面を覆う側板部とを有し、複数の前記下地材上に架け渡して設けられるカバー部材と、
前記下地材と前記カバー部材で形成される空間を通るようにして、前記折板屋根の前記突出部上に架け渡して配設される給水パイプと、
を備えることを特徴とする折板屋根緑化用仕切構造。
【請求項2】
前記下地材の底面に、前記突出部を収納する切欠部が形成されていることを特徴とする請求項1記載の折板屋根緑化用仕切構造。
【請求項3】
前記下地材の上面と、前記折板屋根の前記突出部の流れ方向に沿う面とが開口されていることを特徴とする請求項1又は2記載の折板屋根緑化用仕切構造。
【請求項4】
前記側板部が、下端において前記突出部の上面に当接する、又は前記突出部の上面よりも上方に位置することを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の折板屋根緑化用仕切構造。
【請求項5】
前記カバー部材の前記緑化エリア側の側面に、前記緑化エリアの上面まで垂下する垂下板部が設けられていることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の折板屋根緑化用仕切構造。
【請求項6】
前記垂下板部の下端近傍から前記緑化エリア内へ突出する水平片が設けられていることを特徴とする請求項5記載の折板屋根緑化用仕切構造。
【請求項7】
前記水平片に、緑化エリア外側端から上方に屈曲延設する垂直片が設けられ、前記垂直片が、前記下地材の前記緑化エリア側の側面と、前記カバー部材の垂下板部との間に介在するように設けられることを特徴とする請求項6記載の折板屋根緑化用仕切構造。
【請求項8】
前記下地材が、前記折板屋根の山部頂面に接着して固定されていることを特徴とする請求項1〜7の何れかに記載の折板屋根緑化用仕切構造。
【請求項9】
山部と谷部が交互に繰り返し、山部頂面から上方に突出する突出部を有する折板屋根上に設けられる緑化エリアと緑化エリア以外のエリアとを仕切る折板屋根緑化用仕切構造であって、
前記折板屋根の突出部に固定状態で配置され、前記緑化エリアの外側に設けられる下地材と、
前記下地材の少なくとも上面を覆う上板部と、前記下地材の前記緑化エリアとは反対側の側面を覆う側板部とを有し、複数の前記下地材上に架け渡して設けられるカバー部材と、
前記下地材と前記カバー部材で形成される空間を通るようにして、前記折板屋根の前記突出部上に架け渡して配設される給水パイプと、
を備えることを特徴とする折板屋根緑化用仕切構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−67584(P2012−67584A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−176552(P2011−176552)
【出願日】平成23年8月12日(2011.8.12)
【出願人】(000162135)共同カイテック株式会社 (66)
【Fターム(参考)】